JP2022132044A - スパンボンド不織布および芯鞘型複合繊維 - Google Patents

スパンボンド不織布および芯鞘型複合繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】 柔軟性や肌触りに優れ、地合が均一であり、実用に供しうる十分な強度を有し、かつ生産性に優れたスパンボンド不織布を提供すること。【解決手段】 ポリオレフィン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布であって、前記の芯鞘型複合繊維の芯成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが1g/10分~100g/10分であり、鞘成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが芯成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートよりも5g/10分~200g/10分大きい、スパンボンド不織布。【選択図】 なし

Description

本発明は、柔軟性や肌触りに優れ、地合が均一であり、実用に供しうる十分な強度を有し、かつ生産性に優れたポリオレフィンスパンボンド不織布に関するものである。
一般に、紙おむつや生理用ナプキン等の衛生材料用の不織布には、肌触り、柔軟性および高い生産性が求められている。特に、紙おむつのトップシートは肌に直接触れる素材であることから、これらの要求が高い用途の一つである。
このように、肌触りや柔軟性を向上させる手段として、従来から弾性率や摩擦係数がポリプロピレンよりも低い、ポリエチレンを用いる検討がなされている。例えば、密度の異なる直鎖状低密度ポリエチレンを混合した樹脂組成物からなるポリエチレンスパンボンド不織布が提案されている(特許文献1参照。)。
また別に、密度が0.930~0.965g/cmで、平均単繊維径が8.0~16.5μmのポリエチレン繊維からなり、温度が230℃で6.23rad/secにおける複素粘度が90Pa・sec以下であるポリエチレンスパンボンド不織布が提案されている(特許文献2参照。)。
確かに、これらの不織布はポリエチレン樹脂の特性により、高い柔軟性を有するものであった。
特開2008-274445号公報 特開2019-26954号公報
しかしながら、ポリエチレン樹脂からなるスパンボンド不織布は、従来から十分な強度を付与することが大きな課題であり、特許文献1や特許文献2に開示された方法でも、実用に供しうる強度を実現することが困難であった。
そこで、本発明の目的は、柔軟性や肌触りに優れ、地合が均一であり、実用に供しうる十分な強度を有し、かつ生産性に優れたスパンボンド不織布を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、柔軟性や肌触りに優れ、かつ優れた紡糸安定性と熱接着性を兼ね備えた芯鞘型複合繊維を提供することにある。
本発明のスパンボンド不織布は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布であって、前記の芯鞘型複合繊維の芯成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが1g/10分~100g/10分であり、鞘成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが芯成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートよりも5g/10分~200g/10分大きい。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、ポリエチレン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布であって、前記の鞘成分のポリオレフィン系樹脂と、前記の芯成分のポリオレフィン系樹脂とが、いずれもポリエチレン系樹脂である。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記の芯鞘型複合繊維の固体密度が0.935g/cm以上0.970g/cm以下である。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記のスパンボンド不織布が示差走査型熱量測定法で100℃以上150℃以下に単一の融解ピーク温度を有する。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布であって、前記の鞘成分のポリオレフィン系樹脂と、前記の芯成分のポリオレフィン系樹脂とが、いずれもポリプロピレン系樹脂である。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記のスパンボンド不織布が示差走査型熱量測定法で120℃以上200℃以下に単一の融解ピーク温度を有する。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記のスパンボンド不織布の目付あたりの横方向の引張強力が0.20(N/25mm)/(g/m)以上である。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記のスパンボンド不織布の目付あたりの縦方向の5%伸長時応力が0.20(N/25mm)/(g/m)以上である。
また、本発明の芯鞘型複合繊維は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維であって、前記の芯鞘型複合繊維の芯成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが1g/10分~100g/10分であり、鞘成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが芯成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートよりも5g/10分~200g/10分大きい。
本発明の芯鞘型複合繊維の好ましい態様によれば、ポリエチレン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維であって、前記の鞘成分のポリオレフィン系樹脂と、前記の芯成分のポリオレフィン系樹脂とが、いずれもポリエチレン系樹脂である。
本発明の芯鞘型複合繊維の好ましい態様によれば、前記のポリエチレン系樹脂の固体密度が0.935g/cm以上0.970g/cm以下である。
本発明の芯鞘型複合繊維の好ましい態様によれば、前記の芯鞘型複合繊維が示差走査型熱量測定法で100℃以上150℃以下に単一の融解ピーク温度を有する。
本発明の芯鞘型複合繊維の好ましい態様によれば、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維であって、前記の鞘成分のポリオレフィン系樹脂と、前記の芯成分のポリオレフィン系樹脂とが、いずれもポリプロピレン系樹脂である。
本発明の芯鞘型複合繊維の好ましい態様によれば、前記の芯鞘型複合繊維が示差走査型熱量測定法で120℃以上200℃以下に単一の融解ピーク温度を有する。
本発明によれば、柔軟性や肌触りに優れ、地合が均一であり、実用に供しうる十分な強度を有し、かつ生産性に優れたスパンボンド不織布が得られる。これらの特性から、本発明のスパンボンド不織布は、特に衛生材料用途として好適に用いることができる。
また、本発明によれば、柔軟性や肌触りに優れ、かつ優れた紡糸安定性と熱接着性を兼ね備えた芯鞘型複合繊維が得られる。本発明の芯鞘型複合繊維を用いてなるスパンボンド不織布は、前記の優れた特性を有する。
本発明のスパンボンド不織布は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布であって、前記の芯鞘型複合繊維の芯成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが1g/10分~100g/10分であり、鞘成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが芯成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートよりも5g/10分~200g/10分大きい。
このようにすることにより、柔軟性や肌触りに優れ、地合が均一であり、実用に供しうる十分な強度を有し、かつ生産性に優れたスパンボンド不織布とすることができる。
また、本発明の芯鞘型複合繊維は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維であって、前記芯鞘型複合繊維の芯成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが1g/10分~100g/10分であり、鞘成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが芯成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートよりも5g/10分~200g/10分大きい。
このようにすることにより、柔軟性や肌触りに優れ、かつ優れた紡糸安定性と熱接着性を兼ね備えた芯鞘型複合繊維とすることができ、本発明の芯鞘型複合繊維を用いてなるスパンボンド不織布は、柔軟性や肌触りに優れ、地合が均一であり、実用に供しうる十分な強度を有し、かつ生産性に優れたスパンボンド不織布とすることができる。
以下に、これら本発明の構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではない。
[ポリオレフィン系樹脂]
本発明の芯鞘型複合繊維はポリオレフィン系樹脂を主成分としてなる。また本発明のスパンボンド不織布は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維からなる。
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂などが挙げられる。中でも、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。ポリエチレン系樹脂を用いることにより、柔軟性や肌触りに優れた芯鞘型複合繊維ならびにスパンボンド不織布とすることができる。また、ポリプロピレン系樹脂を用いることにより、柔軟性や肌触りに優れ、かつ強度に優れた芯鞘型複合繊維ならびにスパンボンド不織布とすることができる。
ポリエチレン系樹脂とは、繰り返し単位としてエチレン単位を有する樹脂を意味し、エチレンの単独重合体もしくはエチレンと各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。中でも、紡糸安定性や強度の低下を防ぐため、エチレンの単独重合体が好ましい。
エチレンと各種α-オレフィンとの共重合体を用いる場合、共重合成分としては、紡糸安定性に優れることから、ヘプテンやオクテンが好ましく、オクテンがより好ましい。また、共重合比率は、紡糸安定性や強度の低下を防ぐため、5mol%以下とすることが好ましく、3mol%以下とすることがより好ましく、1mol%以下とすることがさらに好ましい。
本発明で用いられるポリエチレン系樹脂について、エチレンの単独重合体の割合が60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。このようにすることで良好な紡糸性を維持し、かつ強度を向上させることができる。
本発明で用いられるポリエチレン系樹脂としては、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(以下、HDPEと略すことがある。)、または直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEと略すことがある。)などが挙げられる。紡糸性が優れていることから、LLDPEが好ましく用いられる。
一方、ポリプロピレン系樹脂とは、繰り返し単位としてプロピレン単位を有する樹脂を意味し、プロピレンの単独重合体もしくはプロピレンとエチレン、各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。中でも、紡糸安定性や強度の低下を防ぐため、プロピレンの単独重合体が好ましい。
プロピレンと各種α-オレフィンとの共重合体を用いる場合、共重合成分としては、紡糸安定性に優れることから、エチレンやブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、共重合比率は、紡糸安定性や強度の低下を防ぐため、15mol%以下とすることが好ましく、10mol%以下とすることがより好ましく、5mol%以下とすることがさらに好ましい。
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂について、プロピレンの単独重合体の割合が60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。このようにすることで良好な紡糸性を維持し、かつ強度を向上させることができる。
また、本発明に係るポリオレフィン系樹脂は2種以上の混合物であってもよく、またポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-4-メチル-1-ペンテンなどの他のポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、低融点ポリエステル、および低融点ポリアミド等の熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を用いることもできる。ただし、主となるポリオレフィン(ポリオレフィン系樹脂中、最も大きな質量%を占めるポリオレフィンのことを指す)の特性を十分に発現させるため、混合する他の熱可塑性樹脂の比率は5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、帯電助剤、紡曇剤、ブロッキング防止剤、ポリエチレンワックスを含む滑剤、結晶核剤、および顔料等の添加物、あるいは他の重合体を必要に応じて添加することができる。
本発明で用いられるポリエチレン系樹脂の融点(Tmr)は、100℃~150℃であることが好ましい。この融点(Tmr)を好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上とすることにより、実用に耐え得る耐熱性を得やすくなる。また、融点を好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは135℃以下とすることにより、口金から吐出された糸条を冷却し易くなり、繊維同士の融着を抑制し細い繊維径でも安定した紡糸が行い易くなる。ここでポリエチレン系樹脂の融点(Tmr)とは、ポリエチレン系樹脂を示差走査型熱量測定法(DSC)によって測定して得られる、最大の融解ピーク温度を指す。
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂の融点(Tmr)は、120℃~200℃であることが好ましい。この融点(Tmr)を好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上とすることにより、実用に耐え得る耐熱性を得やすくなる。また、融点を好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは170℃以下とすることにより、口金から吐出された糸条を冷却し易くなり、繊維同士の融着を抑制し細い繊維径でも安定した紡糸が行い易くなる。ここでポリプロピレン系樹脂の融点(Tmr)とは、ポリプロピレン系樹脂を示差走査型熱量測定法(DSC)によって測定して得られる、最大の融解ピーク温度を指す。
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと略すことがある。)は、1g/10分~300g/10分であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂のMFRを好ましくは1g/10分以上とし、より好ましくは10g/10分以上とし、さらに好ましくは30g/10分以上とすることにより、細い繊維径でも安定して紡糸することができ、肌触りに優れ、地合が均一であり、かつ実用に供しうる十分な強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。一方、ポリオレフィン系樹脂のMFRを好ましくは300g/10分以下とすることにより、単糸強度の低下を抑制するとともに、熱接着時に過度に軟化しやすくなり熱ロールに貼り付くなどの操業上の問題が発生することを防ぐことができる。
このポリオレフィン系樹脂のMFRは、ASTM D1238(A法)によって測定される値を採用する。この規格によれば、ポリエチレンは荷重:2.16kg、温度:190℃にて、ポリプロピレンは荷重:2.16kg、温度:230℃にて測定することが規定されており、本発明に係るポリオレフィン系樹脂も同様の荷重、温度で測定することとする。
もちろん、MFRの異なる2種類以上の樹脂を任意の割合でブレンドして、本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂のMFRを調整することもできる。この場合、主となるポリオレフィン系樹脂(ポリオレフィン系樹脂中、最も大きな質量%を占めるポリオレフィン系樹脂のことを指す)に対してブレンドする樹脂のMFRは、10g/10分~1000g/10分であることが好ましく、より好ましくは20g/10分~800g/10分、さらに好ましくは30g/10分~600g/10分である。このようにすることにより、ブレンドしたポリオレフィン系樹脂に部分的に粘度斑が生じることを防ぎ、単繊維径や単繊維繊度を均一化したり、細い繊維でも安定して紡糸したりすることができる。
また、本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂には、ポリオレフィン系樹脂を分解してMFRを低下させるようなもの、例えば、過酸化物、特に、ジアルキル過酸化物等の遊離ラジカル剤などを添加しないことが好ましい。このようにすることにより、不均一な分解やゲル化に起因する部分的な粘度斑の発生を防ぎ、単繊維繊度を均一化したり、細い繊維でも安定して紡糸したりすることができる。また分解ガスによる気泡で紡糸性が悪化することを防ぐこともできる。
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂には、肌触りや柔軟性を向上させるために、炭素数23以上50以下の脂肪酸アミド化合物が含有されていることが好ましい態様である。
ポリオレフィン系樹脂に混合される脂肪酸アミド化合物の炭素数を好ましくは23以上とし、より好ましくは30以上とすることにより、脂肪酸アミド化合物が過度に繊維表面に露出することを抑制し、紡糸性と加工安定性に優れたものとし、高い生産性を保持することができる。一方、脂肪酸アミド化合物の炭素数を好ましくは50以下とし、より好ましくは42以下とすることにより、脂肪酸アミド化合物が繊維表面に移動しやすくなり、スパンボンド不織布に滑り性と柔軟性を付与することができる。
本発明で使用される炭素数23以上50以下の脂肪酸アミド化合物としては、飽和脂肪酸モノアミド化合物、飽和脂肪酸ジアミド化合物、不飽和脂肪酸モノアミド化合物、および不飽和脂肪酸ジアミド化合物などが挙げられる。
具体的には、炭素数23以上50以下の脂肪酸アミド化合物として、テトラドコサン酸アミド、ヘキサドコサン酸アミド、オクタドコサン酸アミド、ネルボン酸アミド、テトラコサペンタエン酸アミド、ニシン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、ジステアリルセバシン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、およびヘキサメチレンビスオレイン酸アミドなどが挙げられ、これらは複数組み合わせて用いることもできる。
本発明では、これらの脂肪酸アミド化合物の中でも、高い滑り性や柔軟性を付与することができ、紡糸性にも優れることから、特に飽和脂肪酸ジアミド化合物であるエチレンビスステアリン酸アミドが好ましく用いられる。
本発明では、このポリオレフィン系樹脂に対する脂肪酸アミド化合物の添加量は、0.01質量%~5質量%であることが好ましい態様である。脂肪酸アミド化合物の添加量を好ましくは0.01質量%~5質量%とし、より好ましくは0.1質量%~3質量%とし、さらに好ましくは0.1質量%~1質量%とすることにより、紡糸性を維持しながら適度な滑り性と柔軟性を付与することができる。ここでいう添加量とは、本発明のスパンボンド不織布を構成するポリエチレン系樹脂全体に対して添加した脂肪酸アミド化合物の質量パーセントを言う。例えば、芯鞘型複合繊維を構成する鞘部成分のみに脂肪酸アミド化合物を添加する場合でも、芯鞘成分全体量に対する添加割合を算出している。
ポリオレフィン系樹脂からなる繊維に対する脂肪酸アミド化合物の添加量を測定する方法としては、例えば、前記の繊維から添加剤を溶媒抽出し、液体クロマトグラフ質量分析(LS/MS)などを用いて定量分析する方法が挙げられる。このとき抽出溶媒は脂肪酸アミド化合物の種類に応じて適宜選択されるものであるが、例えばエチレンビスステアリン酸アミドの場合には、クロロホルム-メタノール混液などを用いる方法が一例として挙げられる。
本発明で用いられるポリエチレン系樹脂の固体密度は、0.935g/cm~0.970g/cmであることが好ましい。ポリエチレン系樹脂の固体密度を、好ましくは0.935g/cm以上とし、より好ましくは0.940g/cm以上とし、さらに好ましくは0.945g/cm以上とすることにより、熱接着時に過度に軟化しやすくなり熱ロールに貼り付くなどの操業上の問題が発生することを防ぐことができる。またポリエチレン系樹脂の固体密度を、好ましくは0.970g/cm以下とし、より好ましくは0.965g/cm以下とし、さらに好ましくは0.960g/cm以下とすることにより、紡糸性を向上させ、細い繊度でも安定して紡糸することができる。
[ポリオレフィン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維]
本発明の芯鞘型複合繊維は、前記のポリオレフィン系樹脂を主成分として、また本発明のスパンボンド不織布を構成する芯鞘型複合繊維は、前記のポリオレフィン系樹脂を主成分として用いることができる。このようにすることにより、柔軟性や肌触りに優れ、かつ優れた紡糸安定性と熱接着性を兼ね備えた芯鞘型複合繊維とすることができる。
そして、本発明の芯鞘型複合繊維ならびに本発明のスパンボンド不織布を構成する芯鞘型複合繊維は、芯成分のポリオレフィン系樹脂のMFRが1g/10~100g/10分である。芯成分のポリオレフィン系樹脂のMFRが1g/10分以上、好ましくは10g/10分以上、より好ましくは30g/10分以上であることにより、細い繊維径でも安定して紡糸することができ、肌触りに優れ、地合が均一であり、かつ実用に供しうる十分な強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。一方、ポリオレフィン系樹脂のMFRが100g/10分以下、好ましくは80g/10分以下、より好ましくは60g/10分以下であることにより、芯鞘型複合繊維の単糸強度の低下を抑制し、実用に供しうる十分な強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。
本発明の芯鞘型複合繊維ならびに本発明のスパンボンド不織布を構成する芯鞘型複合繊維は、鞘成分のポリオレフィン系樹脂のMFRが、芯成分のポリオレフィン系樹脂のMFRよりも5g/10分~200g/10分大きい。鞘成分のポリオレフィン系樹脂のMFRを、芯成分のポリオレフィン系樹脂のMFRよりも5g/10分以上、好ましくは10g/10分以上、より好ましくは20g/10分以上大きくすることにより、紡糸時に芯成分に紡糸応力を集中させ、芯成分の配向を促進させるとともに、鞘成分の配向を抑制させることができる。一方、鞘成分のポリオレフィン系樹脂のMFRが、芯成分のポリオレフィン系樹脂のMFRよりも200g/10分以下、好ましくは120g/10分以下、より好ましくは80g/10分以下とすることで、芯鞘型複合繊維の単糸強度を向上させることができるとともに、熱接着時の急激な軟化を抑制して、製造時においても熱ロールへの貼りつきを抑制できる。
なお、海島型複合繊維の芯成分または鞘成分のポリオレフィン系樹脂のMFRを測定・解釈などするときは、「鞘成分」とあるのを「海成分」と、「芯成分」とあるのを「島成分」と読み替えた上で、測定などを行うこととする。
本発明の芯鞘型複合繊維は、前記の芯鞘型複合繊維の表層の軟化温度Tss(℃)と芯鞘型複合繊維の内層の軟化温度Tsc(℃)とが下記の式(a)を満足することが好ましい
(Tss+5)≦Tsc≦(Tss+30) ・・・(a)。
本発明において、芯鞘型複合繊維の表層の軟化温度Tss(℃)と芯鞘型複合繊維の内層の軟化温度Tsc(℃)とは、ナノスケール熱機械分析法(nanoscale-Thermomechanical Analysis;nano-TMA)により、以下の手順によって算出される値のことである。このnano-TMAはサブミクロン領域での熱分析が可能であり、原子間力顕微鏡(AFM)のプローブ(カンチレバー)に加熱ヒーターを備えた温度センサーを取り付けた装置を使用するものである。
(1)芯鞘型複合繊維を試料台に固定し、繊維直径方向の中央付近に、加熱ヒーターを備えた温度センサー付きのAFMプローブを固定する。
(2)プローブを25℃から150℃まで、昇温速度10℃/秒で昇温し、プローブの高さ変化(a.u.)を測定する。
(3)プローブの高さ変化から試料中へプローブが針入する温度(軟化温度(℃))を測定し、低温から観測された順にTs1、Ts2、Ts3・・・とする。
(4)同様の測定を20本の繊維で行い、Ts1の平均値の小数点以下第二位を四捨五入し、芯鞘型複合繊維の表層の軟化温度Tss(℃)とする。またTs2の平均値の小数点以下第二位を四捨五入し、内層の軟化温度Tsc(℃)とする。なお、AFMプローブの接触位置により一部の芯鞘型複合繊維でTs2が観測されないことがあるが、この場合は観測されたTs2のみを平均し、内層の軟化温度Tsc(℃)を求める。
この芯鞘型複合繊維の表層の軟化温度Tss(℃)と芯鞘型複合繊維の内層の軟化温度Tsc(℃)との関係について、芯鞘型複合繊維の内層の軟化温度Tsc(℃)が好ましくは(Tss+5)℃以上(すなわち、前記の式(a)において、(Tss+5)≦Tsc、以下、同様である)、より好ましくは(Tss+7)℃以上、さらに好ましくは(Tss+10)℃以上であることにより、熱接着時に繊維表層を形成する成分のみを軟化させることができる。そして、このようにすることにより、繊維内層の配向を残留させつつ、繊維同士を強固に熱接着させることができるため、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。一方、芯鞘型複合繊維の内層の軟化温度Tsc(℃)が好ましくは(Tss+30)℃以下(すなわち、前記の式(a)において、Tsc≦(Tss+30)、以下、同様である)、より好ましくは(Tss+25)℃以下、さらに好ましくは(Tss+20)℃以下であることにより、熱接着時に繊維表層が過度に軟化し熱ロールに貼り付くなどの操業上の問題が発生することを防ぐことができる。
本発明の芯鞘型複合繊維は、示差走査型熱量測定法(DSC)で単一の融解ピーク温度Tm(℃)を有することが好ましい。なお、本発明において、「芯鞘型複合繊維が示差走査型熱量測定法で単一の融解ピーク温度Tm(℃)を有する」とは、下記の測定方法の(3)に記載の融解吸熱ピークが、実質的に1つのピークしか観測されないことを言う。このようにすることにより、芯鞘型複合繊維を、例えば、スパンボンド不織布を構成する繊維として用いる場合には、熱接着時に低融点成分が溶融し熱ロールに貼り付くなどの操業上の問題を発生させることなく、繊維同士を十分な温度で強固に熱接着させることができるため、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布が得られ易くなる。
ここで示差走査型熱量測定法(DSC)により得られる芯鞘型複合繊維の融解ピーク温度Tm(℃)は、以下の手順によって算出される値を採用するものとする。
(1)芯鞘型複合繊維の繊維片を試料量0.5mg~5mgサンプリングする。
(2)示差走査型熱量測定法(DSC)を用い、昇温速度20℃/分で、常温から温度200℃まで昇温しDSC曲線を得る。
(3)DSC曲線から融解吸熱ピークのピークトップ温度を読み取り、融解ピーク温度Tm(℃)とする。
そして、本発明の芯鞘型複合繊維は、ポリエチレン系樹脂を主成分とする場合、下記の式(b1)および(c)を満足することが好ましい。ポリプロピレン系樹脂を主成分とする場合、下記の式(b2)および(c)を満足することが好ましい
100≦Tm≦150 ・・・(b1)
120≦Tm≦200 ・・・(b2)
(Tm-40)≦Tss≦(Tm-10) ・・・(c)
このようにすることで、実用に耐え得る耐熱性と強度を有し、かつ紡糸安定性と操業安定性に優れる芯鞘型複合繊維を得ることができる。
まず、式(b1)に関し、ポリエチレン系樹脂を主成分とする芯鞘複合繊維の場合、示差走査型熱量測定法(DSC)による芯鞘型複合繊維の融解ピーク温度Tm(℃)については、100℃以上150℃以下(すなわち、100≦Tm≦150)であることが好ましい。融解ピーク温度Tm(℃)が100℃以上(すなわち、前記の式(b)において、100≦Tm、以下、同様である)、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であることにより、実用に耐え得る耐熱性を付与することができる。また、融解ピーク温度Tm(℃)が150℃以下(すなわち、前記の式(b)において、Tm≦150、以下、同様である)、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは135℃以下であることにより、口金から吐出された糸条を冷却し易くなり、繊維同士の融着を抑制し細い繊維径でも安定した紡糸が行い易くなる。
また、式(b2)に関し、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする芯鞘複合繊維の場合、示差走査型熱量測定法(DSC)による芯鞘型複合繊維の融解ピーク温度Tm(℃)については、120℃以上200℃以下(すなわち、120≦Tm≦200)であることが好ましい。融解ピーク温度Tm(℃)が120℃以上(すなわち、前記の式(b)において、120≦Tm、以下、同様である)、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上であることにより、実用に耐え得る耐熱性を付与することができる。また、融解ピーク温度Tm(℃)が200℃以下(すなわち、前記の式(b)において、Tm≦200、以下、同様である)、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは170℃以下であることにより、口金から吐出された糸条を冷却し易くなり、繊維同士の融着を抑制し細い繊維径でも安定した紡糸が行い易くなる。
次に、式(c)に関し、前記の芯鞘型複合繊維の表層の軟化温度Tss(℃)が、(Tm-40)℃以上かつ(Tm-10)℃以下(すなわち、(Tm-40)≦Tss≦(Tm-10))であることが好ましい。前記の表層の軟化温度Tss(℃)が好ましくは(Tm-40)℃以上(すなわち、前記の式(c)において、(Tm-40)≦Tss、以下、同様である)、より好ましくは(Tm-35)℃以上、さらに好ましくは(Tm-30)℃以上であることにより、熱接着時に繊維表層が過度に軟化し熱ロールに貼り付くなどの操業上の問題が発生することを防ぐことができる。一方、前記の表層の軟化温度Tss(℃)が好ましくは(Tm-10)℃以下(すなわち、前記の式(c)において、Tss≦(Tm-10)、以下、同様である)、より好ましくは(Tm-15)℃以下、さらに好ましくは(Tm-20)℃以下であることにより、熱接着時に繊維同士を強固に熱接着させることができ、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。
さらに、本発明の芯鞘型複合繊維は、芯鞘型複合繊維は軟化が進行した後に溶融するため、前記の芯鞘型複合繊維の内層の軟化温度Tsc(℃)は示差走査型熱量測定法(DSC)による融解ピーク温度Tm(℃)よりも小さくなる(すなわち、Tsc<Tm)。そして、前記の芯鞘型複合繊維の内層の軟化温度Tsc(℃)が、(Tm-20)℃以上かつ(Tm-1)℃以下(すなわち、(Tm-20)≦Tsc(℃)≦(Tm-1))であることが好ましい。内層の軟化温度Tsc(℃)が好ましくは(Tm-20)℃以上、より好ましくは(Tm-15)℃以上、さらに好ましくは(Tm-10)℃以上であることにより、繊維内層の強度を向上させ、熱接着後に実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。一方、前記の内層の軟化温度Tsc(℃)が、好ましくは(Tm-1)℃以下、より好ましは(Tm-3)℃以下、さらに好ましくは(Tm-5)℃以下であることにより、熱接着時に繊維同士を強固に熱接着させることができ、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。
本発明の芯鞘型複合繊維ならびに本発明のスパンボンド不織布を構成する芯鞘型複合繊維の複合形態としては、例えば、同心芯鞘型、偏心芯鞘型および海島型などの複合形態を用いることができる。中でも、紡糸性に優れ、熱接着により繊維同士を均一に接着させることができることから、芯鞘型の複合形態とすることが好ましく、同心芯鞘型の複合形態とすることがより好ましい態様である。
本発明の芯鞘型複合繊維は、鞘成分が配向パラメータOfsを有し、芯成分が配向パラメータOfcを有し、OfsはOfcよりも小さいことが好ましい。このようにすることにより、熱接着時に繊維内層の配向を残留させつつ、繊維表層のみを軟化させ繊維同士を強固に熱接着させることができるため、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。
ここで、本発明における配向パラメータとは、数値が大きいほど分子鎖が特定の方向に配向していることを示し、数値が小さいほど分子鎖がランダムに配向していることを示す指標(単位なし)である。なお、この配向パラメータは完全にランダムに配向しているとき、ポリエチレン系樹脂では1.2、ポリプロピレン系樹脂では1.0となる。そして、本発明において、芯鞘型複合繊維の鞘成分が配向パラメータOfsを有する、あるいは、芯鞘型複合繊維の芯成分が配向パラメータOfcを有するとは、以下の方法で測定される配向パラメータOfs、Ofcが1.2以上である状態を指す。なお、本発明では海島型複合繊維も芯鞘型複合繊維に含まれるものとし、海島型複合繊維の場合においては、配向パラメータOfs、Ofcを測定・解釈などするときは、「鞘成分」とあるのを「海成分」と、「芯成分」とあるのを「島成分」と読み替えた上で、測定などを行うこととする。
<ポリエチレン系樹脂の場合>
(1)芯鞘型複合繊維の試料をビスフェノール系エポキシ樹脂で樹脂包埋する。
(2)樹脂が硬化した後、ミクロトームにより切片を切り出す。切片厚みは2μmとする。この際、切断面が楕円形となるよう繊維軸から傾けて切断し、以降では楕円形の短軸の厚みが一定厚を示す箇所を選択して測定する。なお、切断角度が4°以内とすることで、2μmの膜厚内では繊維軸と平行と見なすことができる。
(3)芯鞘型複合繊維の切片の繊維表層から中心部にかけて、繊維軸と平行な偏光を入射し、ラマンスペクトルのライン測定を行う。
(4)芯成分、鞘成分それぞれの位置における1130cm-1付近および1060cm-1付近のラマンバンド強度I1130およびI1060を算出し、その強度比から、以下の式(d)に基づいて配向パラメータを算出する。芯成分が独立した複数の領域に分割されている場合は、すべての領域で配向パラメータを測定し、最も高い値を採用する
配向パラメータ=I1130/I1060 ・・・(d)
(5)芯鞘型複合繊維の軸方向に場所を変えて3箇所で同様の測定を行い、配向パラメータの平均値を算出し、小数点以下第二位を四捨五入する。
<ポリプロピレン系樹脂の場合>
(1)芯鞘型複合繊維の試料をビスフェノール系エポキシ樹脂で樹脂包埋する。
(2)樹脂が硬化した後、ミクロトームにより切片を切り出す。切片厚みは2μmとする。この際、切断面が楕円形となるよう繊維軸から傾けて切断し、以降では楕円形の短軸の厚みが一定厚を示す箇所を選択して測定する。なお、切断角度が4°以内とすることで、2μmの膜厚内では繊維軸と平行と見なすことができる。
(3)非融着部の芯鞘型複合繊維の切片の繊維表層から中心部にかけて、繊維軸方向(平行方向)および繊維軸方向に直交する方向(垂直方向)の偏光を入射し、ラマンスペクトルのライン測定を行う。
(4)非融着部の芯鞘型複合繊維の芯成分、鞘成分それぞれの位置において、平行方向、垂直方向のそれぞれについて、810cm-1付近および840cm-1付近のラマンバンド強度I810およびI840を算出し、その強度比I810/I840を算出する。
(5)以下の式(a)に基づいて配向パラメータを算出する。芯成分が独立した複数の領域に分割されている場合は、すべての領域で配向パラメータを測定し、最も高い値を採用する
配向パラメータ=(I810/I840平行/(I810/I840垂直 (a)
(6)芯鞘型複合繊維の繊維軸方向に場所を変えて3箇所で同様の測定を行い、配向パラメータの平均値を算出し、小数点以下第二位を四捨五入する。
本発明の芯鞘型複合繊維は、鞘成分の配向パラメータOfsが2.0~8.0であることが好ましい。鞘成分の配向パラメータOfsが好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上であることにより、熱接着時に繊維表層が過度に軟化し熱ロールに貼り付くなどの操業上の問題が発生することを防ぐことができる。一方、鞘成分の配向パラメータOfsが好ましくは8.0以下、より好ましくは7.0以下、さらに好ましくは6.0以下であることにより、熱接着時に繊維表層が軟化しやすくなり、繊維同士を強固に熱接着させることができるため、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。
本発明の芯鞘型複合繊維は、芯成分の配向パラメータOfcが6.0~18.0であることが好ましい。芯成分の配向パラメータOfcが好ましくは6.0以上、より好ましくは7.0以上、さらに好ましくは8.0以上であることにより、繊維内層の強度を向上させ、熱接着後に実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。また熱接着時に繊維表層が過度に軟化し熱ロールに貼り付くなどの操業上の問題が発生することを防ぐことができる。一方、芯成分の配向パラメータOfcが好ましくは18.0以下、より好ましくは16.0以下、さらに好ましくは14.0以下であることにより、紡糸時の繊維内層への過度な延伸応力集中を抑え、紡糸安定性を向上させることができる。
本発明の芯鞘型複合繊維は、芯成分に対する鞘成分の配向比率(Ofs/Ofc)が0.10~0.90であることが好ましい。芯成分に対する鞘成分の配向比率(Ofs/Ofc)が好ましくは0.10以上、より好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.20以上であることにより、紡糸時に芯成分が存在する繊維内層に過度に延伸応力が集中し、紡糸安定性が低下することを防ぐことができる。一方、芯成分に対する鞘成分の配向比率(Ofs/Ofc)が好ましくは0.90以下、より好ましくは0.70以下、さらに好ましくは0.50以下であることにより、熱接着時に繊維表層のみを軟化させることができる。このようにすることにより、繊維内層の配向を残留させつつ、繊維同士を強固に熱接着させることができるため、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。
本発明の芯鞘型複合繊維ならびに本発明のスパンボンド不織布を構成する芯鞘型複合繊維は、平均単繊維繊度が0.5dtex~3.0dtexであることが好ましい。平均単繊維繊度を好ましくは0.5dtex以上とし、より好ましくは0.6dtex以上とし、さらに好ましくは0.7dtex以上とすることにより、紡糸性の低下を防ぎ、生産安定性に優れたスパンボンド不織布とすることができる。一方、平均単繊維繊度を好ましくは3.0dtex以下とし、より好ましくは2.4dtex以下とし、さらに好ましくは2.0dtex以下とすることにより、肌触りに優れ、地合が均一であり、かつ実用に供しうる十分な強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。
本発明の芯鞘型複合繊維ならびに本発明のスパンボンド不織布を構成する芯鞘型複合繊維は、平均単繊維径が8~20μmであることが好ましい。平均単繊維径を好ましくは8μm以上とし、より好ましくは9μm以上とし、さらに好ましくは10μm以上とすることにより、紡糸性の低下を防ぎ、生産安定性に優れたスパンボンド不織布とすることができる。一方、平均単繊維径を好ましくは20μm以下とし、より好ましくは18μm以下とし、さらに好ましくは16μm以下とすることにより、肌触りに優れ、地合が均一であり、かつ実用に供しうる十分な強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。
なお、本発明においては、前記の芯鞘型複合繊維の平均単繊維径(μm)は、以下の手順によって算出される値を採用するものとする。
(1)芯鞘型複合繊維について、マイクロスコープまたは走査型電子顕微鏡で500~2000倍の表面写真を撮影し、異なる計100本の芯鞘型複合繊維の幅(直径)を測定する。芯鞘型複合繊維の断面が異形の場合には断面積を測定し、同一の断面積を有する正円の直径を求める。
(2)測定した100本の直径の値の平均し、小数点以下第二位を四捨五入して平均単繊維径(μm)とする。
また本発明、前記のスパンボンド不織布を構成する芯鞘型複合繊維の平均単繊維径(μm)は、以下の手順によって算出される値を採用するものとする。
(1)スパンボンド不織布からランダムに小片サンプル(100×100mm)を10個採取する。
(2)マイクロスコープまたは走査型電子顕微鏡で500~2000倍の表面写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の非融着部の芯鞘型複合繊維の幅(直径)を測定する。芯鞘型複合繊維の断面が異形の場合には断面積を測定し、同一の断面積を有する正円の直径を求める。
(3)測定した100本の直径の値の平均し、小数点以下第二位を四捨五入して平均単繊維径(μm)とする。
本発明の複合繊維ならびに本発明のスパンボンド不織布を構成する複合繊維がポリエチレン系樹脂を主成分とする場合、その複合繊維の固体密度が、0.930g/cm~0.970g/cmであることが好ましい。ポリエチレン系樹脂の固体密度を、好ましくは0.935g/cm以上とし、より好ましくは0.940g/cm以上とし、さらに好ましくは0.945g/cm以上とすることにより、熱接着時に過度に軟化しやすくなり熱ロールに貼り付くなどの操業上の問題が発生することを防ぐことができる。またポリエチレン系樹脂の固体密度を、好ましくは0.970g/cm以下とし、より好ましくは0.965g/cm以下とし、さらに好ましくは0.960g/cm以下とすることにより、紡糸性を向上させ、細い繊度でも安定して紡糸することができる。
なお、本発明においては、前記の複合繊維の固体密度(g/cm)は、以下の手順によって算出される値を採用するものとする。
(1)複合繊維の試験片をエタノールに浸して洗浄し、大気中で乾燥する。
(2)複合繊維の試験片について、水-エタノール混合液系を用いて、浮沈法により密度を求める。
(3)同様の測定を異なる試験片を用いて5回行い、測定した密度の値(g/cm)を平均し、小数点以下第四位を四捨五入して複合繊維の固体密度(g/cm)とする。
また、前記のスパンボンド不織布を構成する複合繊維の固体密度(g/cm)は、以下の手順によって算出される値を採用するものとする。
(1)スパンボンド不織布からランダムに小片を5枚採取する。
(2)小片をエタノールに浸して洗浄し、大気中で乾燥する。
(3)スパンボンド不織布の小片について、水-エタノール混合液系を用いて、浮沈法により密度を求める。
(4)同様の測定を5枚の小片で行い、測定した密度の値(g/cm)を平均し、小数点以下第四位を四捨五入して複合繊維の固体密度(g/cm)とする。
本発明の芯鞘型複合繊維ならびに本発明のスパンボンド不織布を構成する芯鞘型複合繊維は、鞘成分の質量比率が20質量%~80質量%であることが好ましい。鞘成分の質量比率が好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であることにより、熱接着時に鞘成分同士が強固に融着し、実用に供しうる十分な強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。一方、鞘成分の比率が好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下であることにより、高配向である芯成分の割合を増やし、芯鞘型複合繊維の単糸強度を向上させ、実用に供しうる十分な強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。
本発明の芯鞘型複合繊維ならびに本発明のスパンボンド不織布を構成する芯鞘型複合繊維の断面形状としては、丸断面、扁平断面、およびY型やC型などの異形断面を用いることができる。中でも、扁平断面や異形断面のような構造由来の曲げにくさがなく、ポリオレフィン系樹脂の持つ柔軟性を生かしたスパンボンド不織布とすることができることから、丸断面が好ましい態様である。また断面形状として中空断面を適用することもできるが、紡糸性に優れ、細い繊維径でも安定して紡糸できることから、中実断面が好ましい態様である。
[スパンボンド不織布]
本発明のスパンボンド不織布は、前記のポリオレフィン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維からなり、前記芯鞘型複合繊維の芯成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが1g/10分~100g/10分であり、鞘成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが芯成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートよりも5g/10分~200g/10分大きい。
このようにすることにより、柔軟性や肌触りに優れ、地合が均一であり、実用に供しうる十分な強度を有し、かつ生産性に優れたポリオレフィンスパンボンド不織布とすることができる。
本発明のスパンボンド不織布は、融着部と非融着部とを有することが好ましい。このようにすることにより、ポリオレフィン系樹脂由来の柔軟性や肌触りを保持しつつ、実用に供しうる十分な強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。融着部とは芯鞘型複合繊維同士が融着している箇所を指し、非融着部とは芯鞘型複合繊維同士が融着しておらず断面形状を保持している箇所を指す。
本発明のスパンボンド不織布は、前記の非融着部の芯鞘型複合繊維の表層の軟化温度Tss(℃)と前記の非融着部の芯鞘型複合繊維の内層の軟化温度Tsc(℃)とが下記の式(a)を満足することが好ましい
(Tss+5)≦Tsc≦(Tss+30) ・・・(a)。
本発明のスパンボンド不織布において、前記の非融着部の芯鞘型複合繊維の表層の軟化温度Tss(℃)、前記の非融着部の芯鞘型複合繊維の内層の軟化温度Tsc(℃)は、それぞれ、スパンボンド不織布の非融着部から芯鞘型複合繊維を20本採取した後、前記の芯鞘型複合繊維の表層の軟化温度Tss(℃)、芯鞘型複合繊維の内層の軟化温度Tsc(℃)の手順に従って測定・算出されるものである。
よって、このスパンボンド不織布の非融着部の芯鞘型複合繊維の表層の軟化温度Tss(℃)とスパンボンド不織布の非融着部の芯鞘型複合繊維の内層の軟化温度Tsc(℃)との関係については、前記の芯鞘型複合繊維の表層の軟化温度Tss(℃)と芯鞘型複合繊維の内層の軟化温度Tsc(℃)との関係と同じであり、芯鞘型複合繊維の内層の軟化温度Tsc(℃)が(Tss+5)℃以上(すなわち、前記の式(a)において、(Tss+5)≦Tsc、以下、同様である)、好ましくは(Tss+7)℃以上、より好ましくは(Tss+10)℃以上であることにより、熱接着時に繊維表層を形成する成分のみを軟化させることができる。そして、このようにすることにより、繊維内層の配向を残留させつつ、繊維同士を強固に熱接着させることができるため、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。一方、芯鞘型複合繊維の内層の軟化温度Tsc(℃)が(Tss+30)℃以下(すなわち、前記の式(a)において、Tsc≦(Tss+30)、以下、同様である)、好ましくは(Tss+25)℃以下、より好ましくは(Tss+20)℃以下であることにより、熱接着時に繊維表層が過度に軟化し熱ロールに貼り付くなどの操業上の問題が発生することを防ぐことができる。
また、本発明のスパンボンド不織布は、示差走査型熱量測定法(DSC)で単一の融点ピーク温度Tm(℃)を有することが好ましい。なお、本発明において、「スパンボンド不織布が示差走査型熱量測定法で単一の融解ピーク温度Tm(℃)を有する」とは、下記の測定方法の(3)に記載の融解吸熱ピークが、実質的に1つのピークしか観測されないことを言う。このようにすることにより、熱接着時に低融点成分が溶融し熱ロールに貼り付くなどの操業上の問題を発生させることなく、繊維同士を十分な温度で強固に熱接着させることができるため、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布が得られ易くなる。
ここで示差走査型熱量測定法(DSC)により得られるスパンボンド不織布の融解ピーク温度Tm(℃)は、以下の手順によって算出される値を採用するものとする。
(1)スパンボンド不織布の繊維片を試料量0.5~5mgサンプリングする。
(2)示差走査型熱量測定法(DSC)を用い、昇温速度20℃/分で、常温から温度200℃まで昇温しDSC曲線を得る。
(3) DSC曲線から融解吸熱ピークのピークトップ温度を読み取り、スパンボンド不織布の融解ピーク温度Tm(℃)とする。
前記の芯鞘型複合繊維を、スパンボンド不織布を構成する繊維として用いる場合には、スパンボンド不織布から採取される芯鞘型複合繊維のTmと、スパンボンド不織布のTmとは、同じ値を示すものと考えることができる。
そして、本発明のスパンボンド不織布は、ポリエチレン系樹脂を主成分とする芯鞘複合繊維からなる場合、下記の式(b1)および(c)を満足することが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする芯鞘複合繊維からなる場合、下記の式(b2)および(c)を満足することが好ましい
100≦Tm≦150 ・・・(b1)
120≦Tm≦200 ・・・(b2)
(Tm-40)≦Tss≦(Tm-10) ・・・(c)
このようにすることで、実用に耐え得る耐熱性と強度を有し、かつ紡糸安定性と操業安定性に優れるスパンボンド不織布を得ることができる。
まず、式(b1)に関し、ポリエチレン系樹脂を主成分とする芯鞘複合繊維からなる場合、示差走査型熱量測定法(DSC)によるスパンボンド不織布の融解ピーク温度Tm(℃)については、100℃以上150℃以下(すなわち、100≦Tm≦150)であることが好ましい。融解ピーク温度Tm(℃)を100℃以上(すなわち、前記の式(b)において、100≦Tm、以下、同様である)、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であることにより、実用に耐え得る耐熱性を付与することができる。また、融解ピーク温度Tm(℃)を150℃以下(すなわち、前記の式(b)において、Tm≦150、以下、同様である)、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは135℃以下であることにより、口金から吐出された糸条を冷却し易くなり、繊維同士の融着を抑制し細い繊維径でも安定した紡糸が行い易くなる。
また、式(b2)に関し、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする芯鞘複合繊維からなる場合、示差走査型熱量測定法(DSC)によるスパンボンド不織布の融解ピーク温度Tm(℃)については、120℃以上200℃以下(すなわち、120≦Tm≦200)であることが好ましい。融解ピーク温度Tm(℃)を120℃以上(すなわち、前記の式(b)において、120≦Tm、以下、同様である)、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上であることにより、実用に耐え得る耐熱性を付与することができる。また、融解ピーク温度Tm(℃)を200℃以下(すなわち、前記の式(b)において、Tm≦200、以下、同様である)、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは170℃以下であることにより、口金から吐出された糸条を冷却し易くなり、繊維同士の融着を抑制し細い繊維径でも安定した紡糸が行い易くなる。
次に、式(c)に関し、前記の芯鞘型複合繊維の表層の軟化温度Tss(℃)が、(Tm-40)℃以上かつ(Tm-10)℃以下(すなわち、(Tm-40)≦Tss≦(Tm-10))であることが好ましい。前記の表層の軟化温度Tss(℃)が好ましくは(Tm-40)℃以上(すなわち、前記の式(c)において、(Tm-40)≦Tss、以下、同様である)、より好ましくは(Tm-35)℃以上、さらに好ましくは(Tm-30)℃以上であることにより、熱接着時に繊維表層が過度に軟化し熱ロールに貼り付くなどの操業上の問題が発生することを防ぐことができる。一方、前記の表層の軟化温度Tss(℃)が好ましくは(Tm-10)℃以下(すなわち、前記の式(c)において、Tss≦(Tm-10)、以下、同様である)、より好ましくは(Tm-15)℃以下、さらに好ましくは(Tm-20)℃以下であることにより、熱接着時に繊維同士を強固に熱接着させることができ、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。
本発明のスパンボンド不織布は、その非融着部の芯鞘型複合繊維の鞘成分が配向パラメータOfsを有し、芯成分が配向パラメータOfcを有し、OfsはOfcよりも小さいことが好ましい。このようにすることにより、熱接着時に繊維内層の配向を残留させつつ、繊維表層のみを軟化させ繊維同士を強固に熱接着させることができるため、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。
ここで、本発明における配向パラメータとは、前記のとおり数値が大きいほど分子鎖が特定の方向に配向していることを示し、数値が小さいほど分子鎖がランダムに配向していることを示す指標(単位なし)である。なお、この配向パラメータは完全にランダムに配向しているとき、ポリエチレン系樹脂では1.2、ポリプロピレン系樹脂では1.0となる。そして、本発明において、スパンボンド不織布の非融着部の芯鞘型複合繊維の鞘成分が配向パラメータOfsを有する、あるいは、スパンボンド不織布の非融着部の芯鞘型複合繊維の芯成分が配向パラメータOfcを有するとは、以下の方法で測定される配向パラメータOfs、Ofcが1.2以上である状態を指す。なお、本発明では海島型複合繊維も芯鞘型複合繊維に含まれるものとし、海島型複合繊維の場合においては、前記の芯鞘型複合繊維の場合と同様、配向パラメータOfs、Ofcを測定・解釈などするとき、「鞘成分」とあるのを「海成分」と、「芯成分」とあるのを「島成分」と読み替えた上で、測定などを行うこととする。
<ポリエチレン系樹脂の場合>
(1)スパンボンド不織布の試料をビスフェノール系エポキシ樹脂で樹脂包埋する。
(2)樹脂が硬化した後、スパンボンド不織布の非融着部の中央付近(周囲の融着部から概ね等距離となる箇所)が切断面となるようミクロトームにより切片を切り出す。切片厚みは2μmとする。切断角度が繊維軸から4°以内である箇所を選択して以降の測定を行う。
(3)非融着部の芯鞘型複合繊維の切片の繊維表層から中心部にかけて、繊維軸と平行な偏光を入射し、ラマンスペクトルのライン測定を行う。
(4)非融着部の芯鞘型の芯成分、鞘成分それぞれの位置における1130cm-1付近および1060cm-1付近のラマンバンド強度I1130およびI1060を算出し、その強度比から、以下の式(d)に基づいて配向パラメータを算出する。芯成分が独立した複数の領域に分割されている場合は、すべての領域で配向パラメータを測定し、最も高い値を採用する
配向パラメータ=I1130/I1060 ・・・(d)
(5)スパンボンド不織布の異なる非融着部について3箇所で同様の測定を行い、配向パラメータの平均値を算出し、小数点以下第二位を四捨五入する。
<ポリプロピレン系樹脂の場合>
(1)スパンボンド不織布の試料をビスフェノール系エポキシ樹脂で樹脂包埋する。
(2)樹脂が硬化した後、スパンボンド不織布の非融着部の中央付近(周囲の融着部から概ね等距離となる箇所)が切断面となるようミクロトームにより切片を切り出す。切片厚みは2μmとする。切断角度が繊維軸から4°以内である箇所を選択して以降の測定を行う。
(3)非融着部の芯鞘型複合繊維の切片の繊維表層から中心部にかけて、繊維軸方向(平行方向)および繊維軸方向に直交する方向(垂直方向)の偏光を入射し、ラマンスペクトルのライン測定を行う。
(4)非融着部の芯鞘型複合繊維の芯成分、鞘成分それぞれの位置において、平行方向、垂直方向のそれぞれについて、810cm-1付近および840cm-1付近のラマンバンド強度I810およびI840を算出し、その強度比I810/I840を算出する。
(5)以下の式(a)に基づいて配向パラメータを算出する。芯成分が独立した複数の領域に分割されている場合は、すべての領域で配向パラメータを測定し、最も高い値を採用する
配向パラメータ=(I810/I840平行/(I810/I840垂直 (a)
(6)スパンボンド不織布の異なる非融着部について3箇所で同様の測定を行い、配向パラメータの平均値を算出し、小数点以下第二位を四捨五入する。
なお、予め非融着部の中央付近(周囲の融着部から概ね等距離となる箇所)の繊維片をサンプリングし、前記の芯鞘型複合繊維における配向パラメータの測定と同様の手順で測定することもできる。
本発明のスパンボンド不織布は、前記の非融着部の芯鞘型複合繊維の鞘成分の配向パラメータOfsが2.0~8.0であることが好ましい。非融着部の芯鞘型複合繊維の鞘成分の配向パラメータOfsが好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上であることにより、熱接着時に繊維表層が過度に軟化し熱ロールに貼り付くなどの操業上の問題が発生することを防ぐことができる。一方、非融着部の芯鞘型複合繊維の鞘成分の配向パラメータOfsが好ましくは8.0以下、より好ましくは7.0以下、さらに好ましくは6.0以下であることにより、熱接着時に繊維表層が軟化しやすくなり、繊維同士を強固に熱接着させることができるため、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。
本発明のスパンボンド不織布は、前記の非融着部の芯鞘型複合繊維の芯成分の配向パラメータOfcが6.0~18.0であることが好ましい。非融着部の芯鞘型複合繊維の芯成分の配向パラメータOfcが好ましくは6.0以上、より好ましくは7.0以上、さらに好ましくは8.0以上であることにより、繊維内層の強度を向上させ、熱接着後に実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。また熱接着時に繊維表層が過度に軟化し熱ロールに貼り付くなどの操業上の問題が発生することを防ぐことができる。一方、非融着部の芯鞘型複合繊維の芯成分の配向パラメータOfcが好ましくは18.0以下、より好ましくは16.0以下、さらに好ましくは14.0以下であることにより、紡糸時の繊維内層への過度な延伸応力集中を抑え、紡糸安定性を向上させることができる。
本発明のスパンボンド不織布は、前記の非融着部の芯鞘型複合繊維の芯成分に対する鞘成分の配向比率(Ofs/Ofc)が0.10~0.90であることが好ましい。非融着部の芯鞘型複合繊維の芯成分に対する鞘成分の配向比率(Ofs/Ofc)が好ましくは0.10以上、より好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.20以上であることにより、紡糸時に繊維内層に過度に延伸応力が集中し、紡糸安定性が低下することを防ぐことができる。一方、非融着部の芯鞘型複合繊維の芯成分に対する鞘成分の配向比率(Ofs/Ofc)が好ましくは0.90以下、より好ましくは0.70以下、さらに好ましくは0.50以下であることにより、熱接着時に繊維表層のみを軟化させることができる。このようにすることにより、繊維内層の配向を残留させつつ、繊維同士を強固に熱接着させることができるため、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。
さらに、本発明のスパンボンド不織布は、前記の融着部の芯鞘型複合繊維において、鞘成分の配向パラメータObsが1.2~3.0であることが好ましい。鞘成分の配向パラメータObsが1.2のとき、分子鎖は完全にランダムに配向している状態であり、これよりも小さい値となることはない。一方、鞘成分の配向パラメータObsが好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.0以下であることにより、繊維表層を形成する鞘成分同士が強固に熱接着し、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。
本発明のスパンボンド不織布は、前記の融着部の芯鞘型複合繊維において、芯成分の配向パラメータObcが2.0~10.0であることが好ましい。芯成分の配向パラメータObcが好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上であることにより、芯成分の強度を向上させ、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。また熱接着時に繊維表層が過度に軟化し熱ロールに貼り付くなどの操業上の問題が発生することを防ぐことができる。一方、芯成分の配向パラメータObcが好ましくは10.0以下、より好ましくは9.0以下、さらに好ましくは8.0以下であることにより、紡糸時の芯成分への過度な延伸応力集中を抑え、紡糸安定性を向上させることができる。
本発明のスパンボンド不織布の融着部の芯鞘型複合繊維における鞘成分の配向パラメータObsおよび芯成分の配向パラメータObcは、以下の手順によって算出される値を採用するものとする。
<ポリエチレン系樹脂の場合>
(1)スパンボンド不織布の試料をビスフェノール系エポキシ樹脂で樹脂包埋する。
(2)樹脂が硬化した後、スパンボンド不織布の融着部の中央付近が切断面となるようミクロトームにより切片を切り出す。切片厚みは2μmとする。切断角度が繊維軸から4°以内である箇所を選択して以降の測定を行う。なお、繊維軸の方向の判別が困難である場合は、同一点において偏光方位を15度ずつ回転させて各方位で偏光ラマンスペクトルを取得し、配向パラメータが最大を示す方位を繊維軸方向とする。
(3)融着部の芯鞘型複合繊維の切片の中心部において、繊維軸と平行な偏光を入射し、ラマンスペクトルのライン測定を行う。
(4)融着部の芯鞘型複合繊維の鞘成分、芯成分それぞれの位置における1130cm-1付近および1060cm-1付近のラマンバンド強度I1130およびI1060を算出し、その強度比から、以下の式(d)に基づいて配向パラメータを算出する。芯成分が独立した複数の領域に分割されている場合は、すべての領域で配向パラメータを測定し、最も高い値を採用する
配向パラメータ=I1130/I1060 ・・・(d)
(5)スパンボンド不織布の異なる融着部について3箇所で同様の測定を行い、配向パラメータの平均値を算出し、小数点以下第二位を四捨五入する。
<ポリプロピレン系樹脂の場合>
(1)スパンボンド不織布の試料をビスフェノール系エポキシ樹脂で樹脂包埋する。
(2)樹脂が硬化した後、スパンボンド不織布の融着部の中央付近が切断面となるようミクロトームにより切片を切り出す。切片厚みは2μmとする。切断角度が繊維軸から4°以内である箇所を選択して以降の測定を行う。なお、繊維軸の方向の判別が困難である場合は、同一点において偏光方位を15度ずつ回転させて各方位で偏光ラマンスペクトルを取得し、配向パラメータが最大を示す方位を繊維軸方向とする。
(3)融着部の芯鞘型複合繊維の切片の繊維表層から中心部にかけて、繊維軸方向(平行方向)および繊維軸方向に直交する方向(垂直方向)の偏光を入射し、ラマンスペクトルのライン測定を行う。
(4)融着部の芯鞘型複合繊維の芯成分、鞘成分それぞれの位置において、平行方向、垂直方向のそれぞれについて、810cm-1付近および840cm-1付近のラマンバンド強度I810およびI840を算出し、その強度比I810/I840を算出する。
(5)以下の式(a)に基づいて配向パラメータを算出する。芯成分が独立した複数の領域に分割されている場合は、すべての領域で配向パラメータを測定し、最も高い値を採用する
配向パラメータ=(I810/I840平行/(I810/I840垂直 (a)
(6)スパンボンド不織布の異なる融着部について3箇所で同様の測定を行い、配向パラメータの平均値を算出し、小数点以下第二位を四捨五入する。
本発明のスパンボンド不織布は、少なくとも片面のKES法による表面粗さSMDが1~3μmであることが好ましい。KES法による表面粗さSMDが好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.3μm以上、さらに好ましくは1.6μm以上であることにより、スパンボンド不織布が過度に緻密化して風合いが悪化したり、柔軟性が損なわれたりすることを防ぐことができる。一方、KES法による表面粗さSMDが好ましくは3.0μm以下、より好ましくは2.8μm以下、さらに好ましくは2.5μm以下であることにより、表面が滑らかでざらつき感が小さく、肌触りに優れたスパンボンド不織布とすることができる。
なお、本発明においてKES法による表面粗さSMDは、以下のように測定される値を採用するものとする。
(1)スパンボンド不織布から幅200mm×200mmの試験片を、スパンボンド不織布の幅方向等間隔に3枚採取する。
(2)試験片を試料台にセットする。
(3)10gfの荷重をかけた表面粗さ測定用接触子(素材:φ0.5mmピアノ線、接触長さ:5mm)で試験片の表面を走査して、表面の凹凸形状の平均偏差を測定する。
(4)上記の測定を、すべての試験片の縦方向(不織布の長手方向)と横方向(不織布の幅方向)で行い、これらの計6点の平均偏差を平均して小数点以下第二位を四捨五入し、表面粗さSMD(μm)とする。
本発明のスパンボンド不織布のKES法による摩擦係数MIUは、0.01~0.30であることが好ましい。摩擦係数MIUが好ましくは0.30以下、より好ましくは0.20以下、さらに好ましくは0.15以下であることにより、不織布表面の滑り性を向上させ、肌触りに優れたスパンボンド不織布とすることができる。一方、摩擦係数MIUが好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上であることにより、紡糸した糸条を捕集コンベアに捕集する際に糸条同士が滑り地合均一性が悪化することを防ぐことができる。
なお、本発明においてKES法による摩擦係数MIUは、以下のように測定される値を採用するものとする。
(1)スパンボンド不織布から幅200mm×200mmの試験片を、スパンボンド不織布の幅方向等間隔に3枚採取する。
(2)試験片を試料台にセットする。
(3)50gfの荷重をかけた接触摩擦子(素材:φ0.5mmピアノ線(20本並列)、接触面積:1cm)で試験片の表面を走査して、摩擦係数を測定する。
(4)上記の測定を、すべての試験片の縦方向(不織布の長手方向)と横方向(不織布の幅方向)で行い、これらの計6点の平均偏差を平均して小数点以下第四位を四捨五入し、摩擦係数MIUとする。
本発明のスパンボンド不織布のMFRは、1g/10分~300g/10分であることが好ましい。スパンボンド不織布のMFRが好ましくは1g/10分以上、より好ましくは10g/10分以上、さらに好ましくは30g/10分以上であることにより、細い繊維径でも安定して紡糸することができ、肌触りに優れ、地合が均一であり、かつ実用に供しうる十分な強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。一方、スパンボンド不織布のMFRが好ましくは300g/10分以下であることにより、強度の低下を抑制するとともに、熱接着時に過度に軟化しやすくなり熱ロールに貼り付くなどの操業上の問題が発生することを防ぐことができる。
本発明に係るスパンボンド不織布のMFRは、ASTM D1238 (A法)によって測定される値を採用する。この規格によれば、ポリエチレンは荷重:2.16kg、温度190℃にて、ポリプロピレンは荷重:2.16kg、温度230℃にて、測定することが規定されている。
本発明のスパンボンド不織布の目付は、10g/m~100g/mであることが好ましい。目付が好ましくは10g/m以上、より好ましくは13g/m以上、さらに好ましくは15g/m以上であることにより、実用に供し得る十分な強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。一方、目付が好ましくは100g/m以下、より好ましくは50g/m以下、さらに好ましくは30g/m以下であることにより、衛生材料用の不織布としての使用に適した柔軟性を有するスパンボンド不織布とすることができる。
なお、本発明において、スパンボンド不織布の目付は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量」に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(1)20cm×25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3枚採取する。
(2)標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量る。
(3)その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表する。
本発明のスパンボンド不織布の厚みは、0.05mm~1.50mmであることが好ましい。厚みが好ましくは0.05mm~1.50mm、より好ましくは0.08mm~1.00mm、さらに好ましくは0.10mm~0.80mmであることにより、柔軟性と適度なクッション性を備え、衛生材料用のスパンボンド不織布として、特に紙おむつ用途での使用に適したスパンボンド不織布とすることができる。
なお、本発明において、スパンボンド不織布の厚さ(mm)は、JIS L1906:2000「一般長繊維不織布試験方法」の「5.1」に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(1)直径10mmの加圧子を使用し、荷重10kPaで不織布の幅方向等間隔に1mあたり10点の厚さを0.01mm単位で測定する。
(2)上記10点の平均値の小数点以下第三位を四捨五入する。
また、本発明のスパンボンド不織布の見掛密度は、0.05g/cm~0.30g/cmであることが好ましい。見掛密度が好ましくは0.30g/cm以下、より好ましくは0.25g/cm以下、さらに好ましくは0.20g/cm以下であることにより、繊維が密にパッキングしてスパンボンド不織布の柔軟性が損なわれることを防ぐことができる。一方、見掛密度が好ましくは0.05g/cm以上、より好ましくは0.08g/cm以上、さらに好ましくは0.10g/cm以上であることにより、毛羽立ちや層間剥離の発生を抑え、実用に耐え得る十分な強度や取り扱い性を備えたスパンボンド不織布とすることができる。
なお、本発明において、見掛密度(g/cm)は、上記の四捨五入前の目付と厚みから、次の式に基づいて算出し、小数点以下第三位を四捨五入したものとする
見掛密度(g/cm)=[目付(g/m)]/[厚さ(mm)]×10-3
本発明のスパンボンド不織布の剛軟度は、60mm以下であることが好ましい。剛軟度が好ましくは60mm以下、より好ましくは50mm以下、さらに好ましくは40mm以下であることにより、衛生材料用のスパンボンド不織布として、特に紙おむつ用途での使用に適した優れた柔軟性を得ることができる。また、剛軟度が極端に低いと取り扱い性に劣るため、剛軟度は10mm以上であることが好ましい。
本発明のスパンボンド不織布の目付あたりの横方向の引張強力は、0.20(N/25mm)/(g/m)以上であることが好ましく、0.20(N/25mm)/(g/m)~2.00(N/25mm)/(g/m)であることがより好ましい。目付あたりの引張強力が好ましくは0.20(N/25mm)/(g/m)以上、より好ましくは0.25(N/25mm)/(g/m)以上、さらに好ましくは0.30(N/25mm)/(g/m)以上であることにより、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。一方、目付あたりの横方向の引張強力が好ましくは2.00(N/25mm)/(g/m)以下であることにより、スパンボンド不織布の柔軟性が低下したり、風合いが損なわれたりすることを防ぐことができる。なお、スパンボンド不織布の引張強力は縦方向と横方向があるが、一般的には横方向の引張強力の方が縦方向の引張強力よりも小さくなることから、目付あたりの横方向の引張強力を0.2~2.00(N/25mm)/(g/m)であることにより、縦方向においても実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。
なお、本発明において、スパンボンド不織布の目付あたりの横方向の引張強力は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.3 引張強さ及び伸び率(ISO法)」に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(1)25mm×200mmの試験片を、長片側が不織布の横方向(不織布の幅方向)となるように、不織布の幅1m当たり3枚採取する。
(2)試験片をつかみ間隔100mmで引張試験機にセットする。
(3)引張速度100mm/分で引張試験を実施し、最大強力を測定する。
(4)各試験片で測定した最大強力の平均値を求め、次の式に基づいて目付あたりの引張強力を算出し、小数点以下第三位を四捨五入する
目付あたりの横方向の引張強力((N/25mm)/(g/m))=[最大強力の平均値(N/25mm)]/目付(g/m)。
本発明のスパンボンド不織布の目付あたりの縦方向の5%伸長時応力は、0.20(N/25mm)/(g/m)以上であることが好ましく、0.20(N/25mm)/(g/m)~2.00(N/25mm)/(g/m)であることがより好ましい。目付あたりの縦方向の5%伸長時応力が好ましくは0.20(N/25mm)/(g/m)以上、より好ましくは0.25(N/25mm)/(g/m)以上、さらに好ましくは0.30(N/25mm)/(g/m)以上であることにより、スパンボンド不織布の生産時や衛生材料用途としての加工時の張力による伸びを抑制し、高い歩留まりで安定して生産することができる。また目付あたりの縦方向の5%伸長時応力が好ましくは2.00(N/25mm)/(g/m)以下であることにより、スパンボンド不織布の柔軟性が低下したり、風合いが損なわれたりすることを防ぐことができる。
なお、本発明において、スパンボンド不織布の目付あたりの縦方向の5%伸長時応力は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.3 引張強さ及び伸び率(ISO法)」に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(1)25mm×200mmの試験片を、長片側が不織布の縦方向(不織布の長手方向)となるように、不織布の幅1m当たり3枚採取する。
(2)試験片をつかみ間隔100mmで引張試験機にセットする。
(3)引張速度100mm/分で引張試験を実施し、5%伸長時の応力(5%モジュラス)を測定する。
(4)各試験片で測定した5%モジュラスの平均値を求め、次の式に基づいて目付あたりの縦方向の5%モジュラスを算出し、小数点以下第三位を四捨五入する
目付あたりの縦方向の5%モジュラス((N/25mm)/(g/m))=[5%モジュラスの平均値(N/25mm)]/目付(g/m)。
[スパンボンド不織布の製造方法]
次に、本発明のスパンボンド不織布を製造する方法の好ましい態様について、具体的に説明する。
本発明のスパンボンド不織布は、スパンボンド法により製造される長繊維不織布である。スパンボンド法は、生産性や機械的強度に優れている他、短繊維不織布で起こりやすい毛羽立ちや繊維の脱落を抑制することができる。また、捕集したスパンボンド不織繊維ウェブあるいは熱圧着したスパンボンド不織布(どちらもSと表記する)を、SS、SSSおよびSSSSと複数層積層することにより、生産性や地合均一性が向上するため好ましい態様である。
スパンボンド法では、まず溶融した熱可塑性樹脂を紡糸口金から長繊維として紡出し、これをエジェクターにより圧縮エアで吸引延伸した後、移動するネット上に繊維を捕集して不織繊維ウェブを得る。さらに得られた不織繊維ウェブに熱接着処理を施し、スパンボンド不織布が得られる。
紡糸口金やエジェクターの形状は特に制限されないが、例えば、丸形や矩形等、種々の形状のものを採用することができる。なかでも、圧縮エアの使用量が比較的少なくエネルギーコストに優れること、糸条同士の融着や擦過が起こりにくく、糸条の開繊も容易であることから、矩形口金と矩形エジェクターの組み合わせが好ましく用いられる。
本発明では、ポリオレフィン系樹脂を押出機において溶融し、計量して紡糸口金へと供給し、長繊維として紡出する。ポリオレフィン系樹脂を溶融し紡糸する際の紡糸温度は、180℃~250℃であることが好ましく、より好ましくは190℃~240℃であり、さらに好ましくは200℃~230℃である。紡糸温度を上記範囲内とすることにより、安定した溶融状態とし、優れた紡糸安定性を得ることができる。
紡出された長繊維の糸条は、次に冷却される。紡出された糸条を冷却する方法としては、例えば、冷風を強制的に糸条に吹き付ける方法、糸条周りの雰囲気温度で自然冷却する方法、および紡糸口金とエジェクター間の距離を調整する方法等が挙げられ、またはこれらの方法を組み合わせる方法を採用することができる。また、冷却条件は、紡糸口金の単孔あたりの吐出量、紡糸温度および雰囲気温度等を考慮して適宜調整して採用することができる。
次に、冷却固化された糸条は、エジェクターから噴射される圧縮エアによって牽引され、延伸される。
紡糸速度は、3000m/分~6000m/分であることが好ましく、より好ましくは3500m/分~5500m/分であり、さらに好ましくは4000m/分~5000m/分である。紡糸速度を3000m/分~6000m/分とすることにより、高い生産性を有することになり、また繊維の配向結晶化が進み、高強度の長繊維を得ることができる。前述したとおり、本発明のポリエチレン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維は、紡糸安定性に優れ、速い紡糸速度でも安定して生産することができる。
続いて、得られた長繊維を、移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブを得る。
本発明では、前記の不織繊維ウェブに対して、ネット上でその片面から熱フラットロールを当接して仮接着させることも好ましい態様である。このようにすることにより、ネット上を搬送中に不織繊維ウェブの表層がめくれたり吹き流れたりして地合が悪化することを防いだり、糸条を捕集してから熱圧着するまでの搬送性を改善することができる。
続いて、得られた不織繊維ウェブを、融着させることにより融着部を形成させ、意図するスパンボンド不織布を得ることができる。
不織繊維ウェブを融着させる方法は特に制限されないが、例えば、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、および上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど、各種ロールにより熱融着させる方法、ホーンの超音波振動により熱融着させる方法、および不織繊維ウェブに熱風を貫通させて芯鞘型複合繊維の表面を軟化または融解させ、繊維交点同士を熱融着させるなどの方法が挙げられる。
なかでも、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、または片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロールを用いることが好ましい。このようにすることで、生産性良く、スパンボンド不織布の強度を向上させる融着部と、風合いや肌触りを向上させる非融着部と、を設けることができる。
熱エンボスロールの表面材質としては、十分な熱圧着効果を得て、かつ片方のエンボスロールの彫刻(凹凸部)が他方のロール表面に転写することを防ぐため、金属製ロールと金属製ロールを対にすることが好ましい態様である。
このような熱エンボスロールによるエンボス接着面積率は、5~30%であることが好ましい。接着面積を好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、さらに好ましくは10%以上とすることにより、スパンボンド不織布として実用に供し得る強度を得ることができる。一方、接着面積を好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下とすることにより、衛生材料用のスパンボンド不織布として、特に紙おむつ用途での使用に適した適度な柔軟性を得ることができる。超音波接着を用いる場合でも、接着面積率は同様の範囲であることが好ましい。
ここでいう接着面積とは、接着部がスパンボンド不織布全体に占める割合のことを言う。具体的には、一対の凹凸を有するロールにより熱接着する場合は、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とが重なって不織繊維ウェブに当接する部分(接着部)のスパンボンド不織布全体に占める割合のことを言う。また、凹凸を有するロールとフラットロールにより熱接着する場合は、凹凸を有するロールの凸部が不織繊維ウェブに当接する部分(接着部)のスパンボンド不織布全体に占める割合のことを言う。また、超音波接着する場合は、超音波加工により熱溶着させる部分(接着部)のスパンボンド不織布全体に占める割合のことを言う。熱接着時に接着部に十分な熱が加わり、接着部の芯鞘型複合繊維全体が融着している場合、接着部と融着部の面積は等しいと見なすことができる。
熱エンボスロールや超音波接着による接着部の形状は特に制限されないが、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、正六角形および正八角形などを用いることができる。また接着部は、スパンボンド不織布の長手方向(搬送方向)と幅方向にそれぞれ一定の間隔で均一に存在していることが好ましい。このようにすることにより、スパンボンド不織布の強度のばらつきを低減することができる。
熱接着時の熱エンボスロールの表面温度は、使用している熱可塑性樹脂の融点(以降、Tm(℃)と記載することがある)に対し30℃低い温度から10℃高い温度(すなわち、(Tm-30℃)~(Tm+10℃))とすることが好ましい態様である。熱ロールの表面温度を熱可塑性樹脂の融点に対し好ましくは-30℃(すなわち、(Tm-30℃)、以下同様)以上とし、より好ましくは-20℃(Tm-20℃)以上とし、さらに好ましくは-10℃(Tm-10℃)以上とすることにより、強固に熱接着させ実用に供しうる強度のスパンボンド不織布を得ることができる。また、熱エンボスロールの表面温度を熱可塑性樹脂の融点に対し好ましくは+10℃(Tm+10℃)以下とし、より好ましくは+5℃(Tm+5℃)以下とし、さらに好ましくは+0℃(Tm+0℃)以下とすることにより、過度な熱接着を抑制し、衛生材料用のスパンボンド不織布として、特に紙おむつ用途での使用に適した適度な柔軟性を得ることができる。
熱接着時の熱エンボスロールの線圧は、50N/cm~500N/cmとすることが好ましい。ロールの線圧を好ましくは50N/cm以上とし、より好ましくは100N/cm以上とし、さらに好ましくは150N/cm以上とすることにより、強固に熱接着させ実用に供しうる強度のスパンボンド不織布を得ることができる。一方、熱エンボスロールの線圧を好ましくは500N/cm以下とし、より好ましくは400N/cm以下とし、さらに好ましくは300N/cm以下とすることにより、衛生材料用のスパンボンド不織布として、特に紙おむつ用途での使用に適した適度な柔軟性を得ることができる。
また本発明では、スパンボンド不織布の厚みを調整することを目的に、上記の熱エンボスロールによる熱接着の前および/あるいは後に、上下一対のフラットロールからなる熱カレンダーロールにより熱圧着を施すことができる。上下一対のフラットロールとは、ロールの表面に凹凸のない金属製ロールや弾性ロールのことであり、金属製ロールと金属製ロールを対にしたり、金属製ロールと弾性ロールを対にしたりして用いることができる。
また、ここで弾性ロールとは、金属製ロールと比較して弾性を有する材質からなるロールのことである。弾性ロールとしては、例えば、ペーパー、コットンおよびアラミドペーパー等のいわゆるペーパーロールや、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂および硬質ゴム、およびこれらの混合物からなる樹脂製のロールなどが挙げられる。
本発明のスパンボンド不織布は、柔軟性や肌触りに優れ、地合が均一であり、実用に供しうる十分な強度を有し、かつ生産性に優れることから、衛生材料、医療材料、生活資材および工業資材等に幅広く用いることができる。特に衛生材料では使い捨ておむつ、生理用品および湿布材の基布等、医療材料では防護服やサージカルガウン等として好適に用いることができる。
次に、実施例に基づき、本発明のスパンボンド不織布について具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前記の方法に基づいて測定を行ったものである。
[測定方法]
(1)樹脂のメルトフローレート(MFR)(g/10分):
ポリエチレン系樹脂のMFRは、荷重が2.16kgで、温度が190℃の条件で、ポリプロピレン系樹脂のMFRは、荷重が2.16kgで、温度が230℃の条件で測定した。
(2)スパンボンド不織布を構成する芯鞘型複合繊維の平均単繊維径(μm):
株式会社キーエンス製電子顕微鏡「VHX-D500」を用いて、前記の方法により測定した。
(3)スパンボンド不織布を構成する複合繊維の固体密度(g/cm):
複合繊維の固体密度は、前記の方法により測定した。
(4)紡糸速度(m/分):
上記の平均単繊維径と使用する樹脂の固体密度から、長さ10000m当たりの質量を平均単繊維繊度(dtex)として、小数点以下第二位を四捨五入して算出した。平均単繊維繊度と、各条件で設定した紡糸口金単孔から吐出される樹脂の吐出量(以下、単孔吐出量と略記する。)(g/分)から、次の式に基づき、紡糸速度を算出した
紡糸速度(m/分)=(10000×[単孔吐出量(g/分)])/[平均単繊維繊度(dtex)]。
(5)芯鞘型複合繊維の軟化温度(℃)およびスパンボンド不織布の非融着部の芯鞘型複合繊維の軟化温度(℃):
測定装置にはAnalysis Instruments社製Nano-TA装置「Nano-TA2」を、AFM装置にはPACIFIC NANOTECHNOLOGY社製「Nano-R」を、プローブにはAnalysis Instruments社製「PNI-AN2-300」を使用し、前記の方法により測定した。測定条件は、次のとおりで実施した。
・測定手法:nano-TMA(ナノ熱機械分析)
・測定温度:25~150℃
・昇温速度:10℃/秒(600℃/分)
・測定環境:大気中。
(6)芯鞘型複合繊維の配向パラメータ、スパンボンド不織布の非融着部の芯鞘型複合繊維の配向パラメータ、およびスパンボンド不織布の熱融着部の芯鞘型複合繊維の配向パラメータ:
測定装置には、愛宕物産株式会社製トリプルラマン分光装置「T-64000」を用いて、前記の方法により測定した。測定条件は、次のとおりで実施した。
・測定モード:顕微ラマン(偏光測定)
・対物レンズ:×100
・ビーム径:1μm
・光源:Arレーザー/514.5nm
・レーザーパワー:100mW
・回折格子:Single1800gr/mm
・クロススリット:100μm
・検出器:CCD/Jobin Yvon 1024×256。
(7)スパンボンド不織布の融解ピーク温度Tm(℃):
測定装置にはPerkin-Elmer社製「DSC8500」を使用し、前記の方法により測定した。測定条件は、次のとおりで実施した。
・装置内雰囲気:窒素(20mL/分)
・温度・熱量校正:高純度インジウム(Tm=156.61℃、ΔHm=28.70J/g)
・温度範囲:20℃~200℃
・昇温速度:20℃/分
・試料量:約0.5~4mg
・試料容器:アルミニウム製標準容器。
(8)スパンボンド不織布の縦方向の剛軟度(mm):
スパンボンド不織布の剛軟度は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.7 剛軟度(JIS法及びISO法)」の「6.7.4 ガーレ法」に記載の方法に準じて、不織布の縦方向(長手方向)の測定を行った。なお、いずれのスパンボンド不織布も、縦方向(長手方向)の剛軟度の方が横方向(幅方向)の剛軟度よりも大きかった。縦方向の剛軟度は50mm以下を合格とした。
(9)スパンボンド不織布の目付あたりの引張強力および目付あたりの5%伸長時応力(N/25mm/(g/m)):
測定装置には株式会社エー・アンド・デイ(A&D)製「RTG-1250」を使用し、前記の方法により測定した。目付あたりの横方向の引張強力は0.2(N/25mm)/(g/m)以上を合格とし、目付あたりの横方向の5%伸長時応力は0.2(N/25mm)/(g/m)以上を合格とした。
(実施例1)
メルトフローレート(MFR)が30g/10分、融点が128℃、固体密度0.955g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のホモポリマーからなるポリエチレン系樹脂を芯成分とし、MFRが60g/10分、融点が127℃、固体密度0.940g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のホモポリマーからなるポリエチレン系樹脂を鞘成分として使用し、それぞれ押出機で溶融し、孔径φが0.40mmで、孔深度が8mmの紡糸口金から、紡糸温度が220℃、単孔吐出量が0.50g/分で、鞘成分比率50質量%の同心芯鞘型複合繊維を紡出した。紡出した糸条を冷却固化した後、これをエジェクターにおいて圧縮エアによって牽引、延伸し、移動するネット上に捕集し、ポリエチレン系長繊維からなるスパンボンド不織繊維ウェブを形成した。なお、形成した不織繊維ウェブを構成する芯鞘型複合繊維の特性は、平均単繊維径は11.6μm、固体密度は0.949g/cmであり、これから換算した紡糸速度は5000m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。
引き続き、形成した不織繊維ウェブを、以下の上ロール、下ロールから構成される上下一対の熱エンボスロールを用いて、線圧:300N/cm、熱接着温度:120℃の条件で熱接着し、目付20g/mのスパンボンド不織布を得た。
(上ロール):金属製で水玉柄の彫刻がなされた、接着面積率16%のエンボスロール
(下ロール):金属製フラットロール
得られたスパンボンド不織布は地合が均一で、肌触りに優れたものであった。評価した結果を表1に示す。
(実施例2)
エジェクターの圧縮エアの流量を低減したこと以外は実施例1と同じ方法により、スパンボンド不織布を得た。形成したスパンボンド不織繊維ウェブを構成する繊維の特性は、平均単繊維径は13.7μm、固体密度は0.948g/cmであり、これから換算した紡糸速度は3600m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。得られたスパンボンド不織布は地合が均一で、肌触りに優れたものであった。評価した結果を表1に示す。
(実施例3)
MFRが80g/10分、融点が127℃、固体密度0.940g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のホモポリマーからなるポリエチレン系樹脂を芯成分とし、MFRが200g/10分、融点が122℃、固体密度0.935g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のホモポリマーからなるポリエチレン系樹脂を鞘成分として使用し、熱接着温度:110℃の条件で熱接着したこと以外は実施例1と同じ方法により、スパンボンド不織布を得た。形成したスパンボンド不織繊維ウェブを構成する繊維の特性は、平均単繊維径は13.7μm、固体密度は0.938g/cmであり、これから換算した紡糸速度は3600m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。得られたスパンボンド不織布は地合が均一で、肌触りに優れたものであった。評価した結果を表1に示す。
(実施例4)
MFRが30g/10分、融点が130℃、固体密度0.960g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン(HDPE)のホモポリマーからなるポリエチレン系樹脂を芯成分とし、MFRが100g/10分、融点が130℃、固体密度0.950g/cmの高密度ポリエチレン(HDPE)のホモポリマーからなるポリエチレン系樹脂を鞘成分として使用したこと以外は実施例2と同じ方法により、スパンボンド不織布を得た。形成したスパンボンド不織繊維ウェブを構成する繊維の特性は、平均単繊維径は13.7μm、固体密度は0.955g/cmであり、これから換算した紡糸速度は3600m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。得られたスパンボンド不織布は地合が均一で、肌触りに優れたものであった。評価した結果を表1に示す。
(比較例1)
MFRが30g/10分、融点が128℃、固体密度0.955g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のホモポリマーからなるポリエチレン系樹脂のみを使用して単成分で紡糸したこと以外は実施例2と同じ方法により、スパンボンド不織布を得た。形成したスパンボンド不織繊維ウェブを構成する繊維の特性は、平均単繊維径は13.9μm、固体密度は0.955g/cmであり、これから換算した紡糸速度は3500m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れが多発し不良であった。得られたスパンボンド不織布について評価した結果を表1に示す。
(比較例2)
MFRが60g/10分、融点が127℃、固体密度0.940g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のホモポリマーからなるポリエチレン系樹脂のみを使用して単成分で紡糸し、熱接着温度を115℃としたこと以外は実施例2と同じ方法により、スパンボンド不織布を得た。形成したスパンボンド不織繊維ウェブを構成する繊維の特性は、平均単繊維径は13.7μm、固体密度は0.940g/cmであり、これから換算した紡糸速度は3600m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。なお、熱接着温度を120℃とすると、熱エンボスロールへの貼り付きによりシート切れが発生し、生産不可であった。得られたスパンボンド不織布について評価した結果を表1に示す。
(比較例3)
特許文献2(特開2019-26954号公報)に開示された方法を参考に、MFRが100g/10分、融点が115℃、固体密度0.933g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のホモポリマーからなるポリエチレン系樹脂のみを使用し、単成分で紡糸したこと以外は実施例2と同じ方法により、スパンボンド不織布を得た。形成したスパンボンド不織繊維ウェブを構成する繊維の特性は、平均単繊維径は15.2μm、固体密度は0.933g/cmであり、これから換算した紡糸速度は3500m/分であり、特許文献2の実施例1と同等であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。得られたスパンボンド不織布について評価した結果を表1に示す。
(比較例4)
MFRが30g/10分、融点が128℃、固体密度0.955g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のホモポリマーからなるポリエチレン系樹脂を芯成分とし、MFRが300g/10分、融点が115℃、固体密度0.930g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のホモポリマーからなるポリエチレン系樹脂を鞘成分として使用したこと以外は実施例2と同じ方法により、不織繊維ウェブを得た。続いて、形成した不織布繊維ウェブを実施例2と同じ方法により熱接着したが、熱エンボスロールへの貼り付きによりシート切れが発生し、生産不可であった。スパンボンド不織繊維ウェブを構成する繊維の特性は、平均単繊維径は13.7μm、固体密度は0.943g/cmであり、これから換算した紡糸速度は3600m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。得られたスパンボンド不織繊維ウェブについて評価した結果を表1に示す。
Figure 2022132044000001
実施例1~4の、ポリエチレン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維からなり、芯成分のポリエチレン系樹脂のメルトフローレートが1g/10分~100g/10分であり、鞘成分のポリエチレン系樹脂のメルトフローレートが芯成分のポリエチレン系樹脂のメルトフローレートよりも5g/10分~200g/10分大きいスパンボンド不織布は、柔軟性や肌触りに優れ、地合が均一であり、実用に供しうる十分な強度を有し、かつ生産性に優れたものであった。
一方、比較例1~3に示す単一のポリエチレン系樹脂からなるスパンボンド不織布や比較例4の鞘成分のポリエチレン系樹脂のメルトフローレートが芯成分のポリエチレン系樹脂のメルトフローレートよりも200g/10分を超えて大きいスパンボンド不織布は、目付あたりの横方向の引張強力や目付あたりの縦方向の5%伸長時応力が低く、強度に劣るものであった。

Claims (14)

  1. ポリオレフィン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布であって、前記芯鞘型複合繊維の芯成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが1g/10分~100g/10分であり、鞘成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが芯成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートよりも5g/10分~200g/10分大きい、スパンボンド不織布。
  2. ポリエチレン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布であって、前記鞘成分のポリオレフィン系樹脂と、前記芯成分のポリオレフィン系樹脂とが、いずれもポリエチレン系樹脂である、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
  3. 前記芯鞘型複合繊維の固体密度が0.935g/cm以上0.970g/cm以下である、請求項2に記載のスパンボンド不織布。
  4. 前記スパンボンド不織布が示差走査型熱量測定法で100℃以上150℃以下に単一の融解ピーク温度を有する、請求項2または3のいずれかに記載のスパンボンド不織布。
  5. ポリプロピレン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布であって、前記鞘成分のポリオレフィン系樹脂と、前記芯成分のポリオレフィン系樹脂とが、いずれもポリプロピレン系樹脂である、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
  6. 前記スパンボンド不織布が示差走査型熱量測定法で120℃以上200℃以下に単一の融解ピーク温度を有する、請求項5に記載のスパンボンド不織布。
  7. 前記スパンボンド不織布の目付あたりの横方向の引張強力が0.20(N/25mm)/(g/m)以上である、請求項1~6のいずれかに記載のスパンボンド不織布。
  8. 前記スパンボンド不織布の目付あたりの縦方向の5%伸長時応力が0.20(N/25mm)/(g/m)以上である、請求項1~7のいずれかに記載のスパンボンド不織布。
  9. ポリオレフィン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維であって、前記芯鞘型複合繊維の芯成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが1g/10分~100g/10分であり、鞘成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが芯成分のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートよりも5g/10分~200g/10分大きい、芯鞘型複合繊維。
  10. ポリエチレン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維であって、前記鞘成分のポリオレフィン系樹脂と、前記芯成分のポリオレフィン系樹脂とが、いずれもポリエチレン系樹脂である、請求項9に記載の芯鞘型複合繊維。
  11. 前記ポリエチレン系樹脂の固体密度が0.935g/cm以上0.970g/cm以下である、請求項10に記載の芯鞘型複合繊維。
  12. 前記芯鞘型複合繊維が示差走査型熱量測定法で100℃以上150℃以下に単一の融解ピーク温度を有する、請求項10または11に記載の芯鞘型複合繊維。
  13. ポリプロピレン系樹脂を主成分とする芯鞘型複合繊維であって、前記鞘成分のポリオレフィン系樹脂と、前記芯成分のポリオレフィン系樹脂とが、いずれもポリプロピレン系樹脂である、請求項9に記載の芯鞘型複合繊維。
  14. 前記芯鞘型複合繊維が示差走査型熱量測定法で120℃以上200℃以下に単一の融解ピーク温度を有する、請求項13に記載の芯鞘型複合繊維。

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