以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<イオン含有量>
本発明は、樹脂と有機発光材料を含有する樹脂組成物であって、前記樹脂組成物における固形分中のハロゲン化物イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンの合計量を15ppm以下にすることによって、前記樹脂組成物から成形した色変換シートの耐久性を大幅に向上させたことを特徴とする。
本発明の樹脂組成物は、製造過程に由来するイオン性不純物を含むが、これらを除去することが耐久性を向上させるために重要である。製造過程とは、例えば重合時における触媒、溶媒、界面活性剤、生成時のイオン交換処置が挙げられる。
優れた耐久性を得るためには、前記イオンの合計量は、15ppm以下が必要であり、10ppm以下が好ましく、5ppm以下がより好ましく、1ppm以下が特に好ましい。15ppm以上であると、発光材料との相互作用やラジカル発生により、酸化反応が促進され発光強度を著しく低下させる。また、前記製造過程によりイオン不純物が混入しやすい環境であることから、樹脂組成物中のイオン不純物を全て取り除くのは不可能であるが、
現実的には0.1ppm以上が好ましい。0.1ppm未満まで低下させようとすると、製造コストが増加する場合がある。
本発明の樹脂組成物中の樹脂および有機発光材料を精製することによって、イオンの合計量を前記の範囲に低下させることができる。
前記有機発光材料中の前記イオンは、イオン交換水、シリカゲルによる処理により除去することが好ましい。前記樹脂中の前記イオンは、再沈殿処理、イオン交換樹脂による処理により除去することができる。
また、前記イオンの中でも、色変換シートの耐久性にはナトリウムイオン、ハロゲン化物イオンの影響が大きいことから、ナトリウムイオンは、5ppm以下が好ましく、1ppm以下が好ましい。ハロゲン化物イオンについても5ppm以下が好ましく、1ppm以下が好ましい。
本発明の樹脂組成物中のイオン不純物含有量(イオン濃度)を測定する方法としては、ICP発光分析、ICPに質量分析を組み合わせたIPC−MS分析や、イオン交換樹脂を充填剤として用いるイオンクロマトグラフィーによる方法などが挙げられるが、本発明において樹脂組成物中の固形分に占めるイオン濃度を測定する方法としてはイオン交換樹脂をカラム充填剤として用いたイオンクロマトグラフィーによる方法が挙げられる。具体的には、樹脂組成物10gにトルエン30mLを加え、1時間振盪機で振盪の後、メンブレンフィルター(PVDF孔径0.45μmメルク製)および固相抽出用カートリッジ(ジーエルサイエンス製InertSep Slim−J PLS−3)を通して処理した。得られたトルエン溶液に、超純水30mLを加え1時間振盪機で振盪の後、水相を逆相カートリッジ(東ソー製TSKgel ODS−120H)に通して処理し、得られた水溶液を、以下の条件で分析した。
測定条件
アニオン
装置 Dionex製ICS−3000
試料注入量 100μL
溶離液 KOHグラジエント
分離カラム 2mmΦ×250mm Ion Pac AS23
検出器 電気伝導度計
カチオン
装置 Dionex製DX−500
試料注入量 100μL
溶離液 10mMメタンスルホン酸
分離カラム 2mmΦ×250mm Ion Pac CS14
検出器 電気伝導度計。
<有機発光材料>
本発明の樹脂組成物は、少なくとも1種の有機発光材料を含有する。ここで、本発明における発光材料とは、何らかの光が照射されたときに、その光とは異なる波長の光を発する材料のことをいう。
高効率な色変換を達成するためには、量子収率の高い発光特性を示す材料が好ましい。無機蛍光体、蛍光顔料、蛍光染料、量子ドット等の公知の発光材料が挙げられるが、中でも、有機発光材料が好ましく、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデン等の縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9−シラフルオレン、9,9’−スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピリジン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン等のヘテロアリール環を有する化合物やその誘導体、ボラン誘導体、1,4−ジスチリルベンゼン、4,4’−ビス(2−(4−ジフェニルアミノフェニル)エテニル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−(スチルベン−4−イル)−N−フェニルアミノ)スチルベン等のスチルベン誘導体、芳香族アセチレン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、アルダジン誘導体、ピロメテン誘導体、ジケトピロロ[3,4−c]ピロール誘導体、クマリン6、クマリン7、クマリン153などのクマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体、インドシアニングリーン等のシアニン系化合物、フルオレセイン・エオシン・ローダミン等のキサンテン系化合物やチオキサンテン系化合物、ポリフェニレン系化合物、ナフタルイミド誘導体、フタロシアニン誘導体およびその金属錯体、ポルフィリン誘導体およびその金属錯体、ナイルレッドやナイルブルー等のオキサジン系化合物、ヘリセン系化合物、およびN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミン等の芳香族アミン誘導体、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、及びレニウム(Re)等の有機金属錯体化合物等が好適なものとして挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。さらに、前記有機発光材料は、本発明の樹脂組成物の中に少なくとも1種含まれていればよく、2種以上含まれていてもよい。
前記有機発光材料は、蛍光発光材料であっても、リン光発光材料であっても良いが、高い色純度を達成するためには、蛍光発光材料が好ましい。これらの中でも熱的安定性および光安定性が高いことから、縮合アリール環を有する化合物やその誘導体が好ましい。また、溶解性や分子構造の多様性の観点からは、配位結合を有する化合物が好ましい。半値幅が小さく、高効率な発光が可能である点で、フッ化ホウ素錯体などのホウ素を含有する化合物も好ましい。
中でも、高い蛍光量子収率を与え、耐久性が良好である点で、ピロメテン誘導体が好ましく、より好ましくは、一般式(1)で表される化合物である。
<一般式(1)で表される化合物>
本発明の樹脂組成物は、発光材料として一般式(1)で表される化合物を含有する。
XはC−R7またはNである。R1〜R9はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環の中から選ばれる。
上記の全ての基において、水素は重水素であってもよい。以下に説明する化合物またはその部分構造においても同様である。
また、以下の説明において例えば炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基とは、アリール基に置換した置換基に含まれる炭素数も含めて6〜40であり、炭素数を規定している他の置換基もこれと同様である。
また、上記の全ての基において、置換される場合における置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基が好ましく、さらには、各置換基の説明において好ましいとする具体的な置換基が好ましい。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは、水素原子または重水素原子が置換したことを意味する。
以下に説明する化合物またはその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、上記と同様である。
アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示す。さらに置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、好ましくは1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、3以上20以下の範囲である。
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミドなどの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基などの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。
アルキニル基とは、例えば、エチニル基などの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基など、エーテル結合を介した芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールエーテル基における芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
アリール基とは、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ベンゾフェナントリル基、ベンゾアントラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ベンゾフルオランテニル基、ジベンゾアントラセニル基、ペリレニル基、ヘリセニル基などの芳香族炭化水素基を示す。
中でも、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基が好ましい。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは6以上40以下、より好ましくは6以上30以下の範囲である。
R1〜R9が置換もしくは無置換のアリール基の場合、アリール基としてはフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基がより好ましい。さらに好ましくは、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基であり、フェニル基が特に好ましい。
それぞれの置換基がさらにアリール基で置換される場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基がより好ましい。特に好ましくは、フェニル基である。
ヘテロアリール基とは、例えば、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、カルボリニル基、インドロカルバゾリル基、ベンゾフロカルバゾリル基、ベンゾチエノカルバゾリル基、ジヒドロインデノカルバゾリル基、ベンゾキノリニル基、アクリジニル基、ジベンゾアクリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基などの、炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する環状芳香族基を示す。ただし、ナフチリジニル基とは、1,5−ナフチリジニル基、1,6−ナフチリジニル基、1,7−ナフチリジニル基、1,8−ナフチリジニル基、2,6−ナフチリジニル基、2,7−ナフチリジニル基のいずれかを示す。ヘテロアリール基は置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上40以下、より好ましくは2以上30以下の範囲である。
R1〜R9が置換もしくは無置換のヘテロアリール基の場合、ヘテロアリール基としてはピリジル基、フラニル基、チオフェニル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基が好ましく、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基、キノリニル基がより好ましい。特に好ましくは、ピリジル基である。
それぞれの置換基がさらにヘテロアリール基で置換される場合、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基が好ましく、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基、キノリニル基がより好ましい。特に好ましくは、ピリジル基である。
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選ばれる原子を示す。
カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられ、これら置換基はさらに置換されてもよい。
アミノ基とは、置換もしくは無置換のアミノ基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基が挙げられる。アリール基、ヘテロアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、キノリニル基が好ましい。これら置換基はさらに置換されてもよい。炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上50以下、より好ましくは6以上40以下、特に好ましくは6以上30以下の範囲である。
シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基などのアルキルシリル基や、フェニルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリナフチルシリル基などのアリールシリル基を示す。ケイ素上の置換基はさらに置換されてもよい。シリル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上30以下の範囲である。
シロキサニル基とは、例えばトリメチルシロキサニル基などのエーテル結合を介したケイ素化合物基を示す。ケイ素上の置換基はさらに置換されてもよい。
ボリル基とは、置換もしくは無置換のボリル基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリールエーテル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基が挙げられ、中でもアリール基、アリールエーテル基が好ましい。
ホスフィンオキシド基とは、−P(=O)R10R11で表される基である。R10R11はR1〜R9と同様の群から選ばれる。
また、任意の隣接する2置換基(例えば一般式(1)のR1とR2)が互いに結合して、共役または非共役の縮合環を形成していてもよい。縮合環の構成元素としては、炭素以外にも窒素、酸素、硫黄、リンおよびケイ素から選ばれる元素を含んでいてもよい。また、縮合環がさらに別の環と縮合してもよい。
一般式(1)で表される化合物は、高い蛍光量子収率を示し、かつ、発光スペクトルのピーク半値幅が小さいため、効率的な色変換と高い色純度を達成することができる。
さらに、一般式(1)で表される化合物は、適切な置換基を適切な位置に導入することで、発光効率・色純度・熱的安定性・光安定性・分散性などのさまざまな特性・物性を調整することができる。
例えば、R1、R3、R4およびR6が全て水素の場合に比べ、R1、R3、R4およびR6の少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基や置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合の方が、より良い熱的安定性および光安定性を示す。
R1、R3、R4およびR6の少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基である場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基といった炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、さらに熱的安定性に優れることから、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が好ましい。さらに濃度消光を防ぎ発光量子収率を向上させるという観点では、立体的にかさ高いtert−ブチル基がより好ましい。また合成の容易さ、原料入手の容易さという観点から、メチル基も好ましく用いられる。
R1、R3、R4およびR6の少なくとも1つが置換もしくは無置換のアリール基である場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基が好ましく、さらに好ましくは、フェニル基、ビフェニル基であり、フェニル基が特に好ましい。
R1、R3、R4およびR6の少なくとも1つが置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール基としてはピリジル基、キノリニル基、チオフェニル基が好ましく、ピリジル基、キノリニル基がより好ましい。特に好ましくは、ピリジル基である。
R1、R3、R4およびR6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基である場合、樹脂や溶媒への溶解性が良好なため、好ましい。アルキル基としては、合成の容易さ、原料入手の容易さという観点から、メチル基が好ましい。
R1、R3、R4およびR6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、より良い熱的安定性および光安定性を示すため好ましく、R1、R3、R4およびR6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基であることがより好ましい。
複数の性質を向上させる置換基もあるが、全てにおいて十分な性能を示す置換基は限られている。特に高発光効率と高色純度の両立が難しい。そのため、複数種類の置換基を導入することで、発光特性や色純度などにバランスの取れた化合物を得ることが可能である。
特に、R1、R3、R4およびR6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基の場合、例えば、R1≠R4、R3≠R6、R1≠R3またはR4≠R6などのように、複数種類の置換基を導入することが好ましい。ここで≠は、異なる構造の基であることを示す。色純度に影響を与えるアリール基と効率に影響を与えるアリール基を同時に導入することができるため、細やかな調節が可能となる。
中でも、R1≠R3またはR4≠R6であることが、発光効率と色純度をバランスよく向上させる点において、好ましい。色純度に影響を与えるアリール基を両側のピロール環にそれぞれ1つ以上導入し、それ以外の位置に効率に影響を与えるアリール基を導入することができるため、両方の性質を最大限に向上させることができる。R1≠R3またはR4≠R6である場合、耐熱性と色純度の点から、R1=R4およびR3=R6であることがより好ましい。
主に色純度に影響を与えるアリール基としては、電子供与性基で置換されたアリール基が好ましい。電子供与性基とは、有機電子論において、誘起効果や共鳴効果により、置換した原子団に、電子を供与する原子団である。電子供与性基としては、ハメット則の置換基定数(σp(パラ))として、負の値をとるものが挙げられる。ハメット則の置換基定数(σp(パラ))は、化学便覧基礎編改訂5版(II−380頁)から引用することができる。
電子供与性基の具体例としては、例えば、アルキル基(メチル基のσp:−0.17)やアルコキシ基(メトキシ基のσp:−0.27)、アミノ基(―NH2のσp:−0.66)などが挙げられる。特に、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、メトキシ基がより好ましい。分散性の観点からは、tert−ブチル基、メトキシ基が特に好ましく、分子同士の凝集による消光を防ぐ。置換基の置換位置は特に限定されないが、光安定性を高めるには結合のねじれを抑える必要があるため、ピロメテン骨格との結合位置に対してメタ位またはパラ位に結合させることが好ましい。
主に効率に影響を与えるアリール基としては、tert−ブチル基、アダマンチル基、メトキシ基などのかさ高い置換基を有するアリール基が好ましい。
R1、R3、R4およびR6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基の場合、それらは、それぞれ以下のAr−1〜Ar−6から選ばれることが好ましい。この場合、R1、R3、R4およびR6の好ましい組み合わせとしては、表1−1〜表1−11に示すような組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
R2およびR5は、水素、アルキル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、アリール基が好ましいが、熱的安定性の観点からアルキル基または水素が好ましく、発光スペクトルにおいて狭い半値幅を得やすい点で水素がより好ましい。
R8およびR9は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フッ素、含フッ素アルキル基、含フッ素ヘテロアリール基または含フッ素アリール基が好ましく、励起光に対して安定でより高い蛍光量子収率が得られることから、フッ素または含フッ素アリール基であることがより好ましい。合成の容易さから、フッ素であることがさらに好ましい。
ここで、含フッ素アリール基とはフッ素を含むアリール基であり、例えばフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基およびペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。含フッ素ヘテロアリール基とは、フッ素を含むヘテロアリール基であり、例えばフルオロピリジル基、トリフルオロメチルピリジル基およびトリフルオロピリジル基などが挙げられる。含フッ素アルキル基とは、フッ素を含むアルキル基であり、トリフルオロメチル基やペンタフルオロエチル基などが挙げられる。
XはC−R7であることが、光安定性の観点から好ましい。
XがC−R7であるとき、一般式(1)で表される化合物の耐久性、すなわち発光強度の経時的な低下には、置換基R7が大きく影響する。すなわちR7が水素である場合、この水素の反応性が高く、容易に空気中の水分や酸素と反応してしまい分解を引き起こす。また、R7が例えばアルキル基のような分子鎖の運動の自由度が大きい置換基である場合は、確かに反応性は低下するが、組成物中で化合物同士が経時的に凝集し、結果的に濃度消光による発光強度の低下を招く。したがって、R7は剛直で、かつ運動の自由度が小さく凝集を引き起こしにくい基であることが好ましく、具体的には、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基のいずれかであることが好ましい。
より高い蛍光量子収率を与え、より熱分解しづらい点、また光安定性の観点から、XがC−R7であり、R7が置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。アリール基としては、発光波長を損なわないという観点から、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましい。
さらに光安定性を高めるには、R7とピロメテン骨格の炭素−炭素結合のねじれを適度に抑える必要がある。過度にねじれが大きいと、励起光に対する反応性が高まるなど、光安定性が低下する。このような観点から、R7としては、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のターフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のターフェニル基であることがより好ましい。特に好ましくは、置換もしくは無置換のフェニル基である。
また、R7は適度にかさ高い置換基であることが好ましい。R7がある程度のかさ高さを有することで分子の凝集を防ぐことができ、発光効率や耐久性がより向上する。
このようなかさ高い置換基のさらに好ましい例としては、下記一般式(2)で表される構造が挙げられる。
rは、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基からなる群より選ばれる。kは1〜3の整数である。kが2以上である場合、rはそれぞれ同じでも異なっても良い。
より高い蛍光量子収率を与えられる点で、rは置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。アリール基の中でも特にフェニル基、ナフチル基が好ましい例として挙げられる。rがアリール基である場合、一般式(2)のkは1もしくは2であることが好ましく、分子の凝集をより防ぐ観点からkは2であることがより好ましい。さらに、rの少なくとも1つがアルキル基で置換されていることが好ましい。この場合のアルキル基としては、熱的安定性の観点からメチル基、エチル基およびtert−ブチル基が特に好ましい例として挙げられる。
また、蛍光波長や吸収波長を制御したり、溶媒との相溶性を高めたりする点では、rは置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基またはハロゲンであることが好ましく、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、メトキシ基がより好ましい。分散性の観点からは、tert−ブチル基、メトキシ基が特に好ましく、分子同士の凝集による消光を防ぐ。
また、一般式(1)で表される化合物の別の態様として、R1〜R7のうち少なくともひとつが電子吸引基であることが好ましい。特に、(1)R1〜R6のうち少なくともひとつが電子吸引基であること、(2)R7が電子吸引基であること、または(3)R1〜R6のうち少なくともひとつが電子吸引基であり、かつ、R7が電子吸引基であること、が好ましい。ピロメテン骨格に電子吸引基を導入することで、ピロメテン骨格の電子密度を大幅に下げることができる。これにより、酸素に対する安定性がより向上し、耐久性をより向上させることができる。
電子吸引基とは、電子受容性基とも呼称し、有機電子論において、誘起効果や共鳴効果により、置換した原子団から、電子を引き付ける原子団である。電子吸引基としては、ハメット則の置換基定数(σp(パラ))として、正の値をとるものが挙げられる。ハメット則の置換基定数(σp(パラ))は、化学便覧基礎編改訂5版(II−380頁)から引用することができる。
なお、フェニル基も正の値をとる例もあるが、本願の電子吸引基にフェニル基は含まれない。
電子吸引基の例として、例えば、−F(σp:+0.20)、−Cl(σp:+0.28)、−Br(σp:+0.30)、−I(σp:+0.30)、−CO2R12(σp:R12がエチル基の時+0.45)、−CONH2(σp:+0.38)、−COR12(σp:R12がメチル基の時+0.49)、−CF3(σp:+0.51)、−SO2R12(σp:R12がメチル基の時+0.69)、−NO2(σp:+0.81)等が挙げられる。R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のシクロアルキル基を表す。これら各基の具体例としては、上記と同様の例が挙げられる。
好ましい電子吸引基としては、フッ素、含フッ素アリール基、含フッ素ヘテロアリール基、含フッ素アルキル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のエステル基、置換もしくは無置換のアミド基、置換もしくは無置換のスルホニル基またはシアノ基が挙げられる。これらは化学的に分解しにくいからである。
より好ましい電子吸引性基としては、含フッ素アルキル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のエステル基またはシアノ基が挙げられる。濃度消光を防ぎ発光量子収率を向上させる効果につながるからである。特に好ましいのは、置換もしくは無置換のエステル基である。
一般式(1)で表される化合物の特に好ましい例の一つとして、R1、R3、R4およびR6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基であって、さらにXがC−R7であり、R7が置換のアリール基、特に好ましくは一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。
また、一般式(1)で表される化合物の特に好ましい例の別の一つとして、R1、R3、R4およびR6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、上述のAr−1〜Ar−6から選ばれ、さらにXがC−R7であり、R7が置換のアリール基、特に好ましくはメトキシ基で置換されたアリール基である場合が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物の一例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
一般式(1)で表される化合物は、例えば特表平8−509471号公報や特開2000−208262号公報に記載の方法で製造することができる。すなわち、ピロメテン化合物と金属塩を塩基共存下で反応することにより目的とするピロメテン系金属錯体が得られる。
また、ピロメテン−フッ化ホウ素錯体の合成については、J.Org.Chem.,vol.64,No.21,pp7813−7819(1999)、Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.,vol.36,pp1333−1335(1997)などに記載されている方法を参考に製造することができる。例えば、下記一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物をオキシ塩化リン存在下、1,2−ジクロロエタン中で加熱した後、下記一般式(5)で表される化合物をトリエチルアミン存在下、1,2−ジクロロエタン中で反応させる方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。ここで、R1〜R9は前記と同様である。Jはハロゲンを表す。
さらに、アリール基やヘテロアリール基の導入の際は、ハロゲン化誘導体とボロン酸あるいはボロン酸エステル化誘導体とのカップリング反応を用いて炭素−炭素結合を生成する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。同様に、アミノ基やカルバゾリル基の導入の際にも、例えば、パラジウムなどの金属触媒下でのハロゲン化誘導体とアミンあるいはカルバゾール誘導体とのカップリング反応を用いて炭素−窒素結合を生成する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明の樹脂組成物は、一般式(1)で表される化合物以外に、必要に応じてその他の化合物を適宜含有することができる。例えば、励起光から一般式(1)で表される化合物へのエネルギー移動効率を更に高めるために、ルブレンなどのアシストドーパントを含有してもよい。また、一般式(1)で表される化合物の発光色以外の発光色を加味したい場合は、前述の有機発光材料を添加することができる。その他、有機発光材料以外でも、無機蛍光体、蛍光顔料、蛍光染料、量子ドットなどの公知の発光材料を組み合わせて添加することも可能である。
本発明の樹脂組成物は、波長430nm以上520nm以下の範囲の励起光を用いることによりピーク波長が500nm以上580nm以下の領域に観測される発光を呈する発光材料(以下「発光材料(a)」という)を含むことが好ましい。以後、ピーク波長が500nm以上580nm以下の領域に観測される発光を「緑色の発光」という。一般に、励起光のエネルギーが大きいほど材料の分解を引き起こしやすいが、波長430nm以上520nm以下の範囲の励起光は比較的小さい励起エネルギーであるため、樹脂組成物中の発光材料の分解を引き起こすことなく、色純度の良好な緑色の発光が得られる。
本発明の樹脂組成物は、(a)波長430nm以上520nm以下の範囲の励起光を用いることによりピーク波長が500nm以上580nm以下の発光を呈する発光材料、および(b)波長430nm以上520nm以下の範囲の励起光または発光材料(a)からの発光のいずれかまたは両方により励起されることにより、ピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光を呈する発光材料(以下「発光材料(b)」という)、を含むことが好ましい。以後、ピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光を「赤色の発光」という。
波長430nm以上520nm以下の範囲の励起光の一部は本発明の色変換シートを一部透過するため、発光ピークが鋭い青色LEDを使用した場合、青・緑・赤の各色において鋭い形状の発光スペクトルを示し、色純度の良い白色光を得ることができる。その結果、特にディスプレイにおいては色彩がいっそう鮮やかな、より大きな色域が効率的に作ることができる。また、照明用途においては、現在主流となっている青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせた白色LEDに比べ、特に緑色領域と赤色領域の発光特性が改善されるため、演色性が向上し好ましい白色光源となる。
発光材料(a)としては、クマリン6、クマリン7、クマリン153等のクマリン誘導体、インドシアニングリーン等のシアニン誘導体、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、カルボキシフルオレセインジアセテート等のフルオレセイン誘導体、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン誘導体、ジイソブチル−4,10−ジシアノペリレン−3,9−ジカルボキシレート等のペリレン誘導体、他にピロメテン誘導体、スチルベン誘導体、オキサジン誘導体、ナフタルイミド誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体、アゾール誘導体、アントラセン等の縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、芳香族アミン誘導体、有機金属錯体化合物等が好適なものとして挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。
これらの化合物の中でも、ピロメテン誘導体は高い蛍光量子収率を与え、耐久性が良好なので特に好適な化合物であり、中でも一般式(1)で表される化合物は、色純度の高い発光を示すことから好ましい。
発光材料(b)としては、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチルリル)−4H−ピラン等のシアニン誘導体、ローダミンB・ローダミン6G・ローダミン101・スルホローダミン101などのローダミン誘導体、1−エチル−2−(4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−ピリジニウム−パークロレートなどのピリジン誘導体、N,N'−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6,7,12−テトラフェノキシペリレン−3,4:9,10−ビスジカルボイミド等のペリレン誘導体、他にポルフィリン誘導体、ピロメテン誘導体、オキサジン誘導体、ピラジン誘導体、ナフタセンやジベンゾジインデノペリレン等の縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、有機金属錯体化合物等が好適なものとして挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。
これらの化合物の中でも、ピロメテン誘導体は高い蛍光量子収率を与え、耐久性が良好なので特に好適な化合物であり、中でも一般式(1)で表される化合物は、色純度の高い発光を示すことから好ましい。
本発明の樹脂組成物における発光材料の含有量は、化合物のモル吸光係数、蛍光量子収率および励起波長における吸収強度、ならびに作製するシートの厚みや透過率にもよるが、通常は樹脂の100重量部に対して、1.0×10−4重量部〜30重量部であり、1.0×10−3重量部〜10重量部であることがさらに好ましく、1.0×10−2重量部〜5重量部であることが特に好ましい。
また樹脂組成物に、緑色の発光を呈する発光材料(a)と、赤色の発光を呈する発光材料(b)とを両方含有する場合、緑色の発光の一部が赤色の発光に変換されることから、前記発光材料(a)の含有量waと、発光材料(b)の含有量wbが、wa≧wbの関係であることが好ましく、それぞれの材料の含有比率はwa:wb=1000:1〜1:1であり、500:1〜2:1であることがさらに好ましく、200:1〜3:1であることが特に好ましい。ただし、waおよびwbは樹脂成分の重量に対する重量パーセントである。
<樹脂>
樹脂は、連続相を形成するものであり、成型加工性、透明性、耐熱性等に優れる材料であれば良く、例えばアクリル系、メタクリル系、ポリケイ皮酸ビニル系、ポリイミド系、環ゴム系等の反応性ビニル基を有する光硬化型レジスト材料、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂(シリコーンゴム、シリコーンゲル等のオルガノポリシロキサン硬化物(架橋物)を含む)、ウレア樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリイミド樹脂、シクロオレフィン、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、脂肪族エステル樹脂、芳香族エステル樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂などの公知のものを用いることができる。これらの樹脂の中でも、透明性、耐熱性などの観点から、シクロオレフィン、脂肪族ポリオレフィン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂またはこれらの混合物を好適に用いることができる。更には、シクロオレフィン、脂肪族ポリオレフィンのような脂環式構造を有する樹脂が特に好ましい。本発明の樹脂組成物に含有する有機発光材料は、樹脂官能基や吸湿水分に由来するラジカルにより、ラジカル酸化を受けやすく、分解・劣化することがある。このため、有機発光材料が含有する樹脂組成物に含まれる成分は、有機官能基が少ないものや吸湿性がより小さいものが好ましい。前記樹脂は脂環式構造を有することで、樹脂構造が剛直であり、自由体積が小さい。そのため、吸湿性が低く、有機発光材料の耐久性を向上させることができる。
脂環式構造を有する樹脂とは、主鎖および/または側鎖に脂環式構造を有する重合体である。脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロオレフィン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられる。なかでも、耐久性の観点から、シクロオレフィン構造が好ましい。
これらのような構造を有する樹脂のうち、主鎖および/または側鎖の少なくとも一部にシクロオレフィン構造を有する樹脂が好ましい。以下、このような樹脂をシクロオレフィン樹脂と称する。
脂環式構造は主鎖にあっても良いし、側鎖にあっても良いが、吸湿性を抑制する観点から主鎖に脂環式構造を有するものが好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、特に限定されないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこれらの範囲内であることで、前記有機発光材料との相溶性を確保しつつ、高い耐久性を得ることができる。
脂環式構造を有する樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、さらに500,000以下、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下である。重量平均分子量が上記範囲内にあれば、有機発光材料との相溶性が良好であり、かつ、より高い耐久性の樹脂組成物が得られる。
本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)によって測定した値である。具体的には、サンプルを孔径0.45μmメンブレンフィルターで濾過後、GPC(東ソー(株)製HLC−82A)(展開溶剤:シクロヘキサン、展開速度:1.0ml/分、カラム:東ソー株式会社製 TSKgelG2000HXL)を用いてポリスチレン換算により求められる値である。
脂環式構造を有する樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50〜200℃が好ましく、100〜160℃がより好ましい。前記範囲内であれば、該組成物から形成される色変換シートにおいて、より高い耐久性を得ることができる。
ガラス転移点は、市販の測定器[例えば、セイコー電子工業社製の示差走査熱量計(商品名 DSC6220 昇温速度 0.5℃/min)]によって、測定可能である。
本発明の樹脂組成物に含まれる樹脂の具体例としては、(I)ノルボルネン樹脂、(II)単環のシクロオレフィン樹脂、(III)環状共役ジエン樹脂、(IV)ビニル脂環式炭化水素系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、耐久性の観点から、ノルボルネン樹脂および、単環のシクロオレフィン樹脂が好ましく、樹脂構造の主鎖および/または側鎖の少なくとも一部に(I)および/または(II)を有するシクロオレフィン樹脂がより好ましい。
なお、本明細書において、これらの樹脂は、重合反応生成物だけでなく、その水素化物も意味するものである。
(I)ノルボルネン樹脂
ノルボルネン樹脂は、ノルボルネン系モノマーの重合体又はその水素化物である。ノルボルネン系樹脂としては、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環重合体、これらの開環重合体の水素化物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加重合体などが挙げられる。なかでも、耐久性の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物が好ましい。
ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基などが挙げられる。
置換基を有するノルボルネン系モノマーとしては、8−メトキシカルボニル−テトラシロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系モノマーは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとしては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などが挙げられる。
ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能なその他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。
ノルボルネン系モノマーの開環重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環重合体は、モノマー成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合させることにより合成することができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒等が挙げられる。ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。 ノルボルネン系モノマーの付加重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加重合体は、モノマー成分を、公知の付加重合触媒の存在下で重合させることにより合成することができる。付加重合触媒としては、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
(II)単環のシクロオレフィン系樹脂
単環の環状オレフィン系樹脂としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの、単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体が挙げられる。
これらの付加重合体の合成方法は特に限定されず、公知の方法を適宜利用することができる。
(III)環状共役ジエン樹脂
環状共役ジエン系樹脂としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−または1,4−付加重合した重合体及びその水素化物などを用いることができる。
これらの付加重合体の合成方法は特に限定されず、公知の方法を適宜利用することができる。
(IV)ビニル脂環式炭化水素樹脂
ビニル脂環式炭化水素樹脂としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系モノマーの重合体の芳香環部分の水素化物;などが挙げられる。また、ビニル脂環式炭化水素モノマーやビニル芳香族モノマーと、これらのモノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。かかる共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。
これらの樹脂の合成方法は特に限定されず、公知の方法を適宜利用することができる。また、脂環式構造を有する樹脂として、市販品を利用することもできる。市販品としては、三井化学(株)製APEL(登録商標)例えば、APL5014DP、APL6011T、APL6013T、APL6015T、APL5514ML、APL6013T、JSR(株)製ARTON(登録商標)例えば、D5450、D4540、D4531、D4531F、D4532、D4520、F5023、F4520、G7810、RH5200、FX4727、ポリプラスチックス(株)製TOPAS(登録商標)例えば、TOPAS6017S、TOPAS6015S、TOPAS6013S、TOPAS6013F、TOPAS6013M、TOPAS5013S、TOPAS5013F、TOPAS8007F、TOPAS8007S、TOPAS8007X、TOPAS9506F、TOPAS9903Dなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の樹脂組成物に含有する樹脂は、脂環式構造を有する樹脂と異なる樹脂を併用することができる。脂環式構造を有する樹脂と異なる樹脂の具体例は前述の通りあり、これらの共重合樹脂を用いてもよく、2種類以上を混合してもよい。これらの樹脂の中でも、透明性、耐熱性などの観点から、アクリル樹脂を好適に用いることもできる。
<その他添加剤>
本発明の樹脂組成物には、特定の3級アミン、カテコール誘導体およびニッケル化合物のうち少なくとも1種類以上を含有することができる。前記化合物を含有することで、該組成物に含まれる有機発光材料の劣化を防ぎ、耐久性を向上させることができる。前記化合物は、光安定化剤、特に一重項酸素クエンチャーとしての役割を持つ。
一重項酸素クエンチャーは、酸素分子が光のエネルギーにより活性化してできた一重項酸素をトラップして不活性化する材料である。該組成物中に、一重項酸素クエンチャーが共存することで、有機発光材料が一重項酸素により劣化することを防ぐことができる。
一重項酸素は、ローズベンガルやメチレンブルーのような色素の三重項励起状態と、基底状態の酸素分子の間で電子とエネルギーの交換が起こることで生じることが知られている。本発明の樹脂組成物は、含有される有機発光材料が励起光により励起され、励起光とは異なる波長の光を発光することで光の色変換を行う。この励起−発光のサイクルが繰り返されるため、生じた励起種と、該組成物中に含まれる酸素との相互作用により一重項酸素が生成する確率は高まる。そのため、有機発光材料と一重項酸素の衝突確率も高まるため、発光材料の劣化が進みやすい。
そこで、特定の3級アミン、カテコール誘導体およびニッケル化合物のうち少なくとも1種類以上を含むことにより、発生した一重項酸素を速やかに不活性化させ、有機発光材料の耐久性を向上させることができる。
光源からの光や有機発光材料の発光を阻害しないため、前記3級アミン、カテコール誘導体およびニッケル化合物は可視域での吸光係数が小さいことが好ましい。具体的には、波長400nm以上800nm以下の波長域全域で、モル吸光係数εが1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。さらに好ましくは200以下であり、100以下であることが特に好ましい。
3級アミンとは、アンモニアのN−H結合がすべてN−C結合に置き換わった構造を持つ化合物を示す。窒素原子上の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
窒素原子上の置換基としては、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基が光安定性の観点から好ましく、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基がより好ましい。
この場合のアリール基としては、光源からの光や発光材料の発光を阻害しないため、フェニル基またはナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。また、窒素原子上のアリール基が増加すると、可視域の吸収が増加する懸念があるため、窒素原子上の3つの置換基のうち、アリール基は2つ以下が好ましく、1つ以下であることがより好ましい。
窒素原子上の3つの置換基のうち、少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基である場合、より効率的に一重項酸素をトラップすることができるため、好ましい。中でも、3つの置換基のうち2つ以上が置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましい。
好ましい3級アミンとしては、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2.]オクタン、トリ−n−ブチルアミン、N,N−ジエチルアニリン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
カテコール誘導体とは、レゾルシノールやヒドロキノン等の異性体を含む、ベンゼン環状に2つ以上の水酸基を有する化合物を示す。これらの化合物は、ベンゼン環上の水酸基が1つであるフェノール誘導体と比較して、より効率的に一重項酸素をトラップすることができる。
ベンゼン環上の置換基としては、水酸基以外にも、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
中でも、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、ハロゲンが光安定性の観点から好ましく、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、ハロゲンがより好ましい。さらに、一重項酸素クエンチャーとの反応後の変色が小さいことから、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、ハロゲンがより好ましい。特に好ましくは置換もしくは無置換のアルキル基である。
ベンゼン環上の水酸基の位置としては、少なくとも2つの水酸基が隣接することが好ましい。これは、レゾルシノール(1,3−置換)やヒドロキノン(1,4−置換)に比べて光酸化されにくいためである。また、酸化された後も可視域の吸収が小さいため、該組成物の変色を防ぐことができる。
好ましいカテコール誘導体としては、4−tert−ブチルベンゼン−1,2−ジオール、3,5−ジ−tert−ブチルベンゼン−1,2−ジオール等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
ニッケル化合物とは、ニッケルを含む化合物であり、塩化ニッケルなどの無機塩やビスアセチルアセトナトニッケルなどの錯体、カルバミン酸ニッケル塩などの有機酸塩等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。ここで、有機酸とは、カルボキシル基、スルホニル基、フェノール性水酸基、チオール基を有する有機化合物を示す。
中でも、該組成物中で均一に分散する点で、錯体および有機酸塩が好ましい。
一重項クエンチャーとして好適に用いることができるニッケル錯体および有機酸のニッケル塩としては、例えば、アセチルアセトナート系ニッケル錯体、ビスジチオ−α−ジケトン系ニッケル錯体、ジチオレート系ニッケル錯体、アミノチオレート系ニッケル錯体、チオカテコール系ニッケル錯体、サリチルアルデヒドオキシム系ニッケル錯体、チオビスフェノレート系のニッケル錯体、インドアニリン系ニッケル化合物、カルボン酸系ニッケル塩、スルホン酸系ニッケル塩、フェノール系ニッケル塩、カルバミン酸系ニッケル塩、ジチオカルバミン酸系ニッケル塩等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
合成の容易さ、および安価である点で、有機酸のニッケル塩が好ましい。
さらに、可視域におけるモル吸光係数が小さく、光源や前記有機発光材料の発光を吸収することがないため、スルホン酸系ニッケル塩が好ましい。さらに、より良い一重項クエンチ効果を示す点で、アリールスルホン酸のニッケル塩がより好ましく、幅広い種類の溶媒への溶解性の観点からは、アルキルスルホン酸のニッケル塩が好ましい。
アリールスルホン酸のアリール基としては、置換もしくは無置換のフェニル基が好ましく、溶媒への溶解性および分散性の観点から、アルキル基で置換されたフェニル基がより好ましい。
本発明の樹脂組成物に用いることができる前記3級アミン、カテコール誘導体およびニッケル化合物の添加量は、化合物のモル吸光係数、蛍光量子収率および励起波長における吸収強度、ならびに作製するシートの厚みや透過率にもよるが、通常は樹脂の100重量部に対して、1.0×10−3重量部以上30重量部以下であり、1.0×10−2重量部以上15重量部以下であることがさらに好ましく、1.0×10−1重量部以上10重量部以下であることが特に好ましい。
また、ニッケル化合物の場合、添加量が過剰に大きくなるとシートなどへの加工成形時に強度や熱安定性などに悪影響を与えるため、その添加量は樹脂の100重量部に対して、1.0×10−3重量部以上15重量部以下であり、1.0×10−2重量部以上10重量部以下であることがさらに好ましく、1.0×10−1重量部以上10重量部以下であることが特に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、前記有機発光材料、樹脂成分以外に、酸化防止剤、加工および熱安定化剤、紫外線吸収剤等の耐光性安定化剤およびシランカップリング剤などを含有することができる。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤を挙げることができるが特に限定されるものではない。また、これらの酸化防止剤は単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
加工および熱安定化剤としては、トリブチルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリエチルホスフィン、ジフェニルブチルホスフィン等のリン系安定化剤を挙げることができるが特に限定されるものではない。また、これらの安定化剤は単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
耐光性安定化剤としては、例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類を挙げることができるが特に限定されるものではない。また、これらの耐光性安定化剤は単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
本発明の樹脂組成物におけるこれらの添加剤の含有量は、化合物のモル吸光係数、蛍光量子収率および励起波長における吸収強度、ならびに作製するシートの厚みや透過率にもよるが、通常は樹脂成分の100重量部に対して、1.0×10−3重量部以上30重量部以下であり、1.0×10−2重量部以上15重量部以下であることがさらに好ましく、1.0×10−1重量部以上10重量部以下であることが特に好ましい。
<溶媒>
本発明の樹脂組成物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、流動状態の樹脂の粘度を調整でき、有機発光材料の発光および耐久性に過度な影響を与えないものであれば、特に限定されない。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンジルアルコール、p−クレゾール、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、ヘキサン、アセトン、テルピネオール、テキサノール、メチルセルソルブ、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、2−メトキシエタノール、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アニソール、フルフラール、エチルメチルケトン、γ-ブチルラクトン、などが挙げられる。また、これらの溶媒を2種類以上混合して使用することもできる。前記溶媒の中で特にトルエンは、有機発光材料と樹脂の両方を溶解し、有機発光材料の劣化に影響を与えず、乾燥後の残存溶媒が少ない点で好適に用いられる。
<含有水分率>
本発明の樹脂組成物の含有水分率は、1重量%以下であることが好ましく、0.001重量%以上0.5重量%以下であることがより好ましく、0.001重量%以上0.05重量%以下が特に好ましい。前記樹脂組成物の含有水分率が、上記範囲内であれば、前記樹脂組成物に含まれる有機発光材料の分解・劣化要因となるラジカルの発生を抑制することができ、高い耐久性を得ることができる。なお、上記含有水分率は、カールフィッシャー法にて測定した値である。具体的には、前記樹脂組成物1gを、Metrohm製カールフィッシャー水分計852Titrando(電量法KF水分計)に入れて測定する。
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法について、以下説明する。なお、以下は一例であり、これらに限定されない。前述した有機発光材料、樹脂、溶剤などを所定量混合する。上記の成分を所定の組成になるよう混合した後、ホモジナイザー、自公転型攪拌機、3本ローラー、ボールミル、遊星式ボールミル、ビーズミルなどの撹拌・混練機で均質に混合分散することで、樹脂組成物が得られる。混合分散後、もしくは混合分散の過程で、真空もしくは減圧条件下で脱泡することも好ましく行われる。また、ある特定の成分を事前に混合することや、エージングなどの処理をしても構わない。エバポレーターによって溶剤を除去して所望の固形分濃度にすることも可能である。
<色変換シートの作製方法>
本発明の樹脂組成物は、シート状に加工して用いることもできる。色変換シートは、樹脂組成物を、基材上に塗布し、乾燥させることで得ることができる。このとき、樹脂組成物は色変換シートにおいて色変換層に該当する。色変換シートは、色変換層のみからなるものであってもよいし、他の層を含むものであってもよい。
塗布は、リバースロールコーター、ブレードコーター、リップダイコーター、スリットダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、リバースロールコーター、ブレードコーター、キスコーター、スクリーン印刷、ナチュラルロールコーター、エアーナイフコーター、ロールブレードコーター、バリバーロールブレードコーター、トゥーストリームコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、アプリケーター、ディップコーター、カーテンコーター、スピンコーター、ナイフコーターなどにより行うことができるが、これらに限定されない。色変換層の膜厚の均一性を得るためには、スリットダイコーターで塗布することが好ましい。
色変換層の乾燥は、熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の一般的な加熱装置を用いて行うことができる。この場合、加熱硬化条件は、通常、40〜200℃で1分〜3時間、好ましくは80℃〜150℃で2分〜1時間である。色変換シートは、樹脂組成物を硬化して得られる層を含んでいればその構成に限定はない。
色変換層の厚みは、耐熱性を高める観点からは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましい。膜厚の測定方法は、JIS K7130(1999)プラスチック−フィルム及びシート−厚さ測定方法における機械的走査による厚さの測定方法A法に基づいて測定される膜厚(平均膜厚)のことをいう。
<乾燥減量>
本発明の樹脂組成物を製膜して得られる色変換シートは、シート中に含有する揮発性成分の割合が1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。前記範囲内であることで前記樹脂組成物に含まれる有機発光材料の分解・劣化要因となるラジカルの発生を抑制することができ、高い耐久性を得ることができる。
前記揮発性成分量(乾燥減量A)は、JISK0067−1992の化学製品の減量及び残分試験方法で行った。
具体的には、乾燥前のシートとはかり瓶の質量をW1とし、105℃の乾燥オーブンで2時間乾燥後、デシケーターに移して放冷し、乾燥後のシートとはかり瓶の質量をW2、はかり瓶の質量をW3として、下記式にて乾燥減量Aを算出した。
A(%)=(W1−W2)/(W1−W3)×100 。
<基材>
基材としては、特に制限無く公知の金属、フィルム、ガラス、セラミック、紙などを使用することができる。具体的には、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅、鉄などの金属板や箔、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、アラミド、シリコーン、ポリオレフィン、熱可塑性フッ素樹脂で、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)などのプラスチックのフィルム、α−ポリオレフィン樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂およびこれらとエチレンの共重合樹脂からなるプラスチックのフィルム、プラスチックがラミネートされた紙、またはプラスチックによりコーティングされた紙、金属がラミネートまたは蒸着された紙、金属がラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルムなどが挙げられる。また、基材が金属板の場合、表面にクロム系やニッケル系などのメッキ処理やセラミック処理されていてもよい。
これらの中でも、色変換シートの作製や成形のし易さからガラスや樹脂フィルムが好ましく用いられる。また、フィルム状の基材を取り扱う際に破断などの恐れがないように強度が高いフィルムが好ましい。それらの要求特性や経済性の面で樹脂フィルムが好ましく、これらの中でも、経済性、取り扱い性の面でPET、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリプロピレンからなる群より選ばれるプラスチックフィルムが好ましい。また、色変換フィルムを押し出し機により200℃以上の高温で圧着成形することもできる。この場合は、耐熱性の面でポリイミドフィルムが好ましい。シートの剥離のし易さから、基材は、あらかじめ表面が離型処理されていてもよい。
基材の厚さは特に制限はないが、下限としては25μm以上が好ましく、38μm以上がより好ましい。また、上限としては5000μm以下が好ましく、3000μm以下がより好ましい。
<バリア層>
色変換シートには、対してガスバリア性を付与し、色変換層の耐久性を向上させる目的で、バリア層が適宜用いることができる。例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウムなど、またはこれらの混合物、またはこれらに他の元素を添加した金属酸化物薄膜、あるいはポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂などの各種樹脂から成る膜を挙げることができるが、これらに限定されない。また、水分に対してバリア機能を有する膜としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデンと塩化ビニル、塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合物、フッ素系樹脂などの各種樹脂から成る膜を挙げることができるが、これらに限定されない。
また、色変換シートの要求される機能に応じて、反射防止機能、防眩機能、反射防止防眩機能、ハードコート機能(耐摩擦機能)、帯電防止機能、防汚機能、電磁波シールド機能、赤外線カット機能、紫外線カット機能、偏光機能、調色機能を有した補助層をさらに設けることもできる。
<発光体>
本発明において発光体とは、光を発する機構を備えたものであれば特に制限はない。本発明の樹脂組成物または色変換シートを用いた発光体は、青色LED光源と、樹脂組成物または色変換シートを含むものであることが好ましい。青LEDの発光ピーク波長は400〜500nmであることが好ましい。
色変換シートを用いる場合は、発光特性、信頼性を向上させるために、青LEDと色変換シートの間に樹脂層を形成させることが好ましい。
本発明の樹脂組成物を用いた発光体の好ましい例として、青色LEDとリフレクターを有する発光体であって、リフレクターにより形成された凹部に、青色LEDと、本発明の樹脂組成物を有する発光体が挙げられる。このような発光体は、例えば、リフレクターにより形成された凹部に、発光ピーク波長が400〜500nmの範囲にある青色LEDを配置し、さらに本発明の樹脂組成物をディスペンスして色変換層を形成することにより、製造することができる。
青色LEDを有する発光体の別の好ましい例として、青色LEDの発光面上に本発明の色変換シートを有する発光体が挙げられる。
このような発光体は、予め樹脂組成物を含む色変換シートを作製し、LED上に貼り付けることで製造することができる。また、色変換シートとLEDとの間には、さらに樹脂層を有してもよい。
色変換シートの厚みは、耐熱性を高める観点からは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましい。色変換シートにおいてそれぞれの層の間には、必要に応じて接着層を設けても良い。接着層としては、色変換シートの発光および耐久性に過度な影響を与えないものであれば、特に制限無く公知の材料を用いることができる。強固な接着が必要な場合、光硬化材料や熱硬化材料、嫌気性硬化材料、熱可塑性材料を好ましく用いることができるが、中でも、熱硬化材料がより好ましく、特に、0℃〜150℃での硬化が可能である材料が好ましい。
接着層の厚みは特に制限はないが、0.01〜100μmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜25μmである。さらに好ましくは、0.05〜5μmであり、特に好ましくは、0.05〜1μmである。
<発光体の製造方法>
本発明の樹脂組成物を有する発光体の製造方法について説明する。なお、以下の説明は一例であり、製造方法はこれらに限られない。
ディスペンス法により色変換層を形成する場合の発光体の製造方法の一つは、まず公知の方法で作成した基板およびリフレクターが形成されたパッケージにLEDを配置し配線する。LEDチップが発光面側に電極を有する場合には、LEDチップを、発光面を上にしてダイボンド材などで回路基板に固定した後、LEDチップ上面の電極と回路基板の配線をワイヤーボンディングで接続する。また、LEDチップが発光面の反対面に電極パッドを有するフリップチップタイプである場合には、LEDチップの電極面を回路基板の配線と対抗させ、一括接合で接続する。
次に前述の方法にて樹脂組成物を作製し、ディスペンサー等を用いてリフレクターにより形成された凹部に注入する。次に樹脂組成物を加熱することにより色変換層を形成する。このとき、色変換層を形成した後、公知の封止材をディスペンスし熱硬化させることにより封止樹脂層を形成してもよい。また、樹脂組成物を加熱乾燥させる工程の前に、樹脂組成物中に溶け込んだ水分、酸素を除去するため真空雰囲気化で静置する工程を経ることも好適に行われる。樹脂組成物および、封止樹脂の熱硬化工程は大気中で行ってもよいし、窒素などの不活性ガス雰囲気化で行ってもよい。
本発明の樹脂組成物を有する色変換シートを用いた発光体の製造方法の一つは、まず所望の大きさに色変換シートを個片化し、個片化された色変換シートをピックアップし、LEDに貼り付ける方法である。このとき、色変換シートは半硬化状態でもよいし、あらかじめ硬化されていてもよい。LEDに色変換シートを貼り付けてからLEDをパッケージに配置、配線してもよいし、LEDをパッケージに配置してから色変換シートを貼り付けてもよい。
また色変換シートを、表面にLEDが形成された半導体ウエハに貼り付けた後、半導体ウエハを個別のLEDチップに切断し、LEDをパッケージに実装する方法もある。
<励起光>
励起光の種類は、前記有機発光材料が吸収可能な波長領域に発光を示すLEDが好適な励起光であり、ディスプレイや照明用途では、青色光の色純度を高められる点で、400〜500nmの範囲の励起光を持つ青色LEDがさらに好適な励起光である。
<照明>
本発明の発光体を用いた照明には特に制限はなく、例えば、建築物の空間に用いられる照明、車などにおけるルールライトやヘッドライトなどの照明、カメラのフラッシュなどの照明、ディスプレイのバックライトやフロントライトなどの照明などが挙げられる。
<バックライトユニット>
本発明の樹脂組成物を有するバックライトユニットは、発光波長ピークが400〜500nmの範囲にあるLED、有機発光材料および樹脂を有する。また、輝度を向上させる目的で、さらに輝度上昇フィルム(BEF、BEFRP、DBEF)や、色純度を高める目的で、さらにカラーフィルターを含む構成を取っても良い。
本発明におけるバックライトユニットは、ディスプレイ、インテリア、標識、看板などの用途に使用できる。
<ディスプレイ>
本発明の樹脂組成物を有するバックライトユニットは、ディスプレイに適用することができる。前記バックライトユニットは、と高耐久性であるためディスプレイ用途に適している。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。下記実施例および比較例において、用いた原料を示す。化合物G−1、G−2、R−1は以下に示す化合物である。
<1H−NMRの測定>
化合物の1H−NMRは、超伝導FTNMR EX−270(日本電子(株)製)を用い、重クロロホルム溶液にて測定を行った。
<発光スペクトルの測定>
化合物の発光スペクトルは、F−2500形分光蛍光光度計(日立製作所(株)製)を用い、化合物をトルエンに1×10−6mol/Lの濃度で溶解させ、波長460nmで励起させた際の発光スペクトルを測定した。
<含有水分率の測定>
樹脂組成物1gを、Metrohm製カールフィッシャー水分計852Titrando(電量法KF水分計)に入れて測定した。
<乾燥減量の算出>
前記揮発性成分量(乾燥減量A)は、JISK0067−1992の化学製品の減量及び残分試験方法で行った。
具体的には、乾燥前のシートとはかり瓶の質量をW1とし、105℃の乾燥オーブンで2時間乾燥後、デシケーターに移して放冷し、乾燥後のシートとはかり瓶の質量をW2、はかり瓶の質量をW3として、下記式にて乾燥減量Aを算出した。
A(%)=(W1−W2)/(W1−W3)×100 。
<色変換特性の測定>
各色変換シートおよび青色LED素子(ProLight社製;型番PM2B−3LBE−SD、発光ピーク波長:460nm)を搭載した発光体に、10mAの電流を流してLEDを点灯させ、分光放射輝度計(CS−1000、コニカミノルタ社製)を用いて、発光スペクトル、ピーク波長における発光強度および色度を測定した。なお、各色変換シートと青色LED素子との距離を3cmとした。
<耐久性のテスト>
各色変換シートおよび青色LED素子(ProLight社製;型番PM2B−3LBE−SD、発光ピーク波長:460nm)を搭載した発光体に、10mAの電流を流してLEDチップを点灯させ、温度50%湿度60%RHに調整された部屋に静置した。次に、分光放射輝度計(CS−1000、コニカミノルタ社製)を用いて初期輝度を測定した。なお、各色変換シートと青色LED素子との距離を3cmとした。青色LED素子からの光を連続照射し、1000時間後に再度輝度を測定し、初期値から変化率を算出し、以下の基準で耐久性を評価した。
S:変化率5%未満
A:変化率5%以上10%未満
B:変化率10%以上20%未満
C:変化率20%以上30%未満
D:変化率30%以上。
合成例1
化合物G−1の合成方法
3,5−ジブロモベンズアルデヒド(3.0g)、4−t−ブチルフェニルボロン酸(5.3g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.4g)、炭酸カリウム(2.0g)をフラスコに入れ、窒素置換した。ここに脱気したトルエン(30mL)および脱気した水(10mL)を加え、4時間還流した。反応溶液を室温まで冷却し、有機層を、分液した後に飽和食塩水で洗浄した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を留去した。得られた反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、3,5−ビス(4−t−ブチルフェニル)ベンズアルデヒド(3.5g)を白色固体として得た。
3,5−ビス(4−t−ブチルフェニル)ベンズアルデヒド(1.5g)と2,4−ジメチルピロール(0.7g)を反応溶液に入れ、脱水ジクロロメタン(200mL)およびトリフルオロ酢酸(1滴)を加えて、窒素雰囲気下、4時間撹拌した。2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(0.85g)の脱水ジクロロメタン溶液を加え、さらに1時間撹拌した。反応終了後、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体(7.0mL)およびジイソプロピルエチルアミン(7.0mL)を加えて、4時間撹拌した後、さらに水(100mL)を加えて撹拌し、有機層を分液した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を留去した。得られた反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、下記に示す化合物G−1を0.4g得た(収率18%)。
1H−NMR(CDCl3,ppm):7.95(s,1H)、7.63−7.48(m,10H)、6.00(s,2H)、2.58(s,6H)、1.50(s,6H)、1.37(s,18H)。
なお、化合物G−1の発光スペクトルにおける最大放射強度を示すピーク波長は、528nmであった。
合成例2
化合物R−1の合成方法
4−(4−t−ブチルフェニル)−2−(4−メトキシフェニル)ピロール300mg、2−メトキシベンゾイルクロリド201mgとトルエン10mlの混合溶液を窒素気流下、120℃で6時間加熱した。室温に冷却後、エバポレートした。エタノール20mlで洗浄し、真空乾燥した後、2−(2−メトキシベンゾイル)−3−(4−t−ブチルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)ピロール260mgを得た。
次に、2−(2−メトキシベンゾイル)−3−(4−t−ブチルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)ピロール260mg、4−(4−t−ブチルフェニル)−2−(4−メトキシフェニル)ピロール180mg、メタンスルホン酸無水物206mgと脱気したトルエン10mlの混合溶液を窒素気流下、125℃で7時間加熱した。室温に冷却後、水20mlを注入し、ジクロロメタン30mlで抽出した。有機層を水20mlで2回洗浄し、エバポレートし、真空乾燥した。
次に、得られたピロメテン体とトルエン10mlの混合溶液を窒素気流下、ジイソプロピルエチルアミン305mg、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体670mgを加え、室温で3時間攪拌した。水20mlを注入し、ジクロロメタン30mlで抽出した。有機層を水20mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートした。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、赤紫色粉末0.27gを得た。得られた粉末の1H−NMR分析結果は次の通りであり、上記で得られた赤紫色粉末がR−1であることが確認された。
1H−NMR(CDCl3,ppm):1.19(s,18H)、3.42(s,3H)、3.85(s,6H)、5.72(d,1H)、6.20(t,1H)、6.42−6.97(m,16H),7.89(d,4H)。
なお、化合物R−1の発光スペクトルにおける最大放射強度を示すピーク波長は、635nmであった。
<樹脂>
合成例3
B−1の合成方法
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に、トルエン120mlを仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換し、酸素不含とした後、内温を75℃に上げた。アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.05gをトルエン5mlに溶かした溶液を全量添加した後、内温を74〜76℃に保ちながら、メタクリル酸エチル60ml、アクリル酸メチル30ml、メタクリル酸メチル5ml、アクリル酸2−ヒドロキシエチル5mlの混合溶液を2時間かけて反応系内に滴下した。さらに、内温74〜76℃で5時間保温し、樹脂B−1溶液を得た。
合成例4
B−2の合成方法
B−1で得た樹脂溶液220mlを1:1の割合で調液した水とエタノール溶液2.2L中に滴下させた。その後析出した固形物を回収し、100℃で24時間乾燥させ、B−2を得た。
合成例5
B−3の合成方法
20gのB−2をトルエン40mlに溶解し、1:1の割合で調液した水とエタノール溶液400mlに滴下させ、その後析出した固形物を回収し、再びトルエン40mlに溶解し、同様に水とエタノールで析出を行う作業を計4回繰り返した。析出した固形物を回収後、100℃で24時間乾燥させ、B−3を得た。
C−1:“TOPAS5013S” (シクロオレフィン樹脂、ポリプラスチック(株)製)
D−1:“KC7000F” (アクリル樹脂、三共化成(株))。
実施例1
樹脂として樹脂B−3を100重量部に対して、有機発光材料(a)として化合物G−1を0.25重量部、有機発光材料(b)として化合物R−1を0.005重量部、溶媒としてトルエンを400重量部加え、50℃に加熱攪拌した後、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスターKK−400”(クラボウ製)を用い、1000rpmで20分間撹拌・脱泡して樹脂組成物を得た。樹脂組成物の含有水分率を測定した結果、0.5重量%であった。
スリットダイコーターを用いて、上記樹脂組成物を“セラピール”BLK(東レフィルム加工製)上に塗布し、100℃で30分加熱、乾燥して膜厚20μmの色変換シートを得た。
この樹脂組成物の固形分中のイオン濃度合計は0.5ppm、含有水分率は0.02重量%、色変換シートを用いた発光体について、乾燥減量および耐久性を測定したところ、乾燥減量は0.05質量%であり、耐久性評価の結果、初期値からの変化率は8.0%で、評価Aであった。
実施例2
樹脂をB−2に変えたこと以外、実施例1と同様にして色変換シートを作成した。
この樹脂組成物の固形分中のイオン濃度合計は6ppm、含有水分率は0.02重量%、色変換シートを用いた発光体について、乾燥減量および耐久性を測定したところ、乾燥減量は0.05質量%であり、耐久性評価の結果、初期値からの変化率は15.2%で、評価Bであった。
実施例3
樹脂をB−1に変えたこと以外、実施例1と同様にして色変換シートを作成した。
この樹脂組成物の固形分中のイオン濃度合計は14ppm、含有水分率は0.02重量%、色変換シートを用いた発光体について、乾燥減量および耐久性を測定したところ、乾燥減量は0.05質量%であり、耐久性評価の結果、初期値からの変化率は26.3%で、評価Cであった。
実施例4
溶媒をトルエンとシクロヘキサノン(25/75)の比率に変えたこと以外、実施例1と同様にして色変換シートを作成した。
この樹脂組成物の固形分中のイオン濃度合計は0.5ppm、含有水分率は0.2重量%、色変換シートを用いた発光体について、乾燥減量および耐久性を測定したところ、乾燥減量は0.4質量%であり、耐久性評価の結果、初期値からの変化率は13.4%で、評価Bであった。
実施例5
溶媒をトルエンとシクロヘキサノン(10/90)の比率に変えたこと以外、実施例1と同様にして色変換シートを作成した。
この樹脂組成物の固形分中のイオン濃度合計は0.5ppm、含有水分率は0.8重量%、色変換シートを用いた発光体について、乾燥減量および耐久性を測定したところ、乾燥減量は0.8質量%であり、耐久性評価の結果、初期値からの変化率は24.2%で、評価Cであった。
実施例6
乾燥条件を85℃で30分に変えたこと以外、実施例1と同様にして色変換シートを作成した。
この樹脂組成物の固形分中のイオン濃度合計は0.5ppm、含有水分率は0.02重量%、色変換シートを用いた発光体について、乾燥減量および耐久性を測定したところ、乾燥減量は0.3質量%であり、耐久性評価の結果、初期値からの変化率は12.1%で、評価Bであった。
実施例7
乾燥条件を70℃で30分に変えたこと以外、実施例1と同様にして色変換シートを作成した。
この樹脂組成物の固形分中のイオン濃度合計は0.5ppm、含有水分率は0.02重量%、色変換シートを用いた発光体について、乾燥減量および耐久性を測定したところ、乾燥減量は0.7質量%であり、耐久性評価の結果、初期値からの変化率は22.5%で、評価Cであった。
実施例8
有機発光材料(a)をG−2に変えたこと以外、実施例1と同様にして色変換シートを作成した。
この樹脂組成物の固形分中のイオン濃度合計は0.5ppm、含有水分率は0.02重量%、色変換シートを用いた発光体について、乾燥減量および耐久性を測定したところ、乾燥減量は0.05質量%であり、耐久性評価の結果、初期値からの変化率は23.3%で、評価Cであった。
実施例9
樹脂をC−1に変えたこと以外、実施例1と同様にして色変換シートを作成した。
この樹脂組成物の固形分中のイオン濃度合計は0.5ppm、含有水分率は0.01重量%、色変換シートを用いた発光体について、乾燥減量および耐久性を測定したところ、乾燥減量は0.05質量%であり、耐久性評価の結果、初期値からの変化率は1.3%で、評価Sであった。
比較例1
樹脂をD−1に変えたこと以外、実施例1と同様にして色変換シートを作成した。
この樹脂組成物の固形分中のイオン濃度合計は36ppm、含有水分率は0.02重量%、色変換シートを用いた発光体について、乾燥減量および耐久性を測定したところ、乾燥減量は0.05質量%であり、耐久性評価の結果、初期値からの変化率は42.2%で、評価Dであった。
実施例1〜9の色変換シートにおいて、固形分中のイオン濃度合計が15ppm以下、樹脂組成物の含有水分率が1重量%以下、シート中の乾燥減量が1質量%以下であるため、耐久性が良好な結果となった。
比較例1では、固形分中のイオン濃度合計が15ppm以上となるため、有機発光材料との相互作用やラジカルが発生しやすく、酸化反応の促進により発光強度が著しく低下したと考えられる。