JP2018052068A - 積層フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数回の塗布工程及び複数回の熱処理工程を経ることなく得られ、オリゴマー封止性能及び帯電防止性能の双方に優れたフィルムを提供すること。
【解決手段】高分子フィルムの少なくとも一方の面に、アモルファス構造の金属酸化物を含有する金属酸化物含有層を備え、該金属酸化物含有層が単層構造からなり、150℃で2時間加熱処理したフィルム表面から抽出されるオリゴマー量が5.0mg/m以下である、積層フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、高分子フィルムに塗布層を積層した積層フィルムに関し、特に、高温に晒された際のオリゴマー封止性能が良好であり、かつ、帯電防止性能にも優れた積層フィルムに関するものである。
フラットパネルディスプレイ等の用途に供されるフィルムに求められるフィルム特性の一つとして、オリゴマー封止性能が挙げられる。ここで、オリゴマー封止性能とは、その基材フィルム由来のオリゴマーがフィルムの表面に析出することを抑制する性能を意味する。更に、品質や加工/検査速度を向上させる観点からは、上記のオリゴマー封止性能に加えて、帯電防止性能も求められる。
十分なオリゴマー封止性能を有さないフィルムは、その製造過程において加熱が行われた際に、フィルム内部に含まれているオリゴマーが表面に析出・凝集して、光学特性を低下させる可能性が有る。
帯電防止性が低い(または無い)場合には、静電気により工程内で埃がフィルムに吸着して欠陥を発生させる可能性が有る。
本件出願人は、オリゴマー封止性能をフィルムに付与する技術として、高分子フィルムの一方の面に、オリゴマー封止作用を有する四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含有する塗布剤を塗布した後、熱処理を行って塗布層を形成し、その後、更に、アルミニウム、チタンおよびジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む塗布剤を塗布した後、再度熱処理を行ってアンカー層を形成する技術を開示している(特許文献1)。
特許文献1の技術は、上記のように、塗布工程と熱処理工程を繰り返して、塗布層とアンカー層を形成するものである。
このため、製造効率向上や環境負荷低減等の観点から、より少ない工程数で、特許文献1と同等の機能を有するフィルムを実現する技術が期待されていた。
特開2011−93173号公報
本発明の目的は、上記の期待に応え、複数回の塗布工程及び複数回の熱処理工程を経ることなく得られるフィルムであって、オリゴマー封止性能及び帯電防止性能の双方に優れたフィルムを提供することである。
上記の課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、高分子フィルムの少なくとも一方の面に、塗布層として、特定の構造を有する金属酸化物含有層を形成することによって上記課題を解決することができることを見出し、以下の発明を完成させた。本発明は、以下の[1]〜[11]を提供する。
[1]高分子フィルムの少なくとも一方の面に、アモルファス構造の金属酸化物を含有する金属酸化物含有層を備え、該金属酸化物含有層が単層構造からなり、150℃で2時間加熱処理したフィルム表面から抽出されるオリゴマー量が5.0mg/m以下である、積層フィルム。
[2]前記金属酸化物含有層が、さらに、結晶構造の金属酸化物を含有する[1]に記載の積層フィルム。
[3]前記金属酸化物含有層の厚みが、0.005μm〜5.0μmである、[1]または[2]に記載の積層フィルム。
[4]ヘーズが20%以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の積層フィルム。
[5]前記金属酸化物含有層に、亜鉛化合物を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の積層フィルム。
[6]前記金属酸化物含有層に、インジウム、スズ、アルミニウム、ジルコニウム、珪素、及びチタン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の積層フィルム。
[7]前記高分子フィルムがポリエステルフィルムである、[1]〜[6]のいずれかに記載の積層フィルム。
[8]前記金属酸化物が酸化亜鉛である、[1]〜[7]のいずれかに記載の積層フィルム。
[9]前記金属酸化物含有層の上に粘着、離型、その他の機能層を有する、[1]〜[8]のいずれかに記載の積層フィルム。
[10]高分子フィルムの少なくとも一方の面に、金属元素を有する化合物を含む塗布液を塗布後、200℃以下の温度で乾燥させて、アモルファス構造の金属酸化物を含有する金属酸化物含有層を形成する、積層フィルムの製造方法。
[11]前記塗布液に、少なくとも1種類の低分子アミン化合物、ピリジン化合物、ジケトン化合物、ジオール化合物、及びアセチレン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、[10]に記載の積層フィルムの製造方法。
上記構成からなる本発明によれば、複数回の塗布工程及び複数回の熱処理工程を経ることなく、オリゴマー封止性能及び帯電防止性能の双方に優れたフィルムを実現することができる。
積層フィルムの概略図である。
以下、本発明の一実施形態における積層フィルムを詳述する。
本発明の積層フィルムは、図1に示すように、高分子フィルム1及び金属酸化物含有層2を含む。
(高分子フィルム)
高分子フィルムは、基材フィルムのみからなる単層構造でも、基材フィルムの上に層を重ねた多層構造でもよい。
基材フィルムの材質としては、耐熱性に優れるポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミドなどが挙げられる。その中でも、ポリエステルフィルムはコスト、耐熱性、平面性、光学特性、強度などの物性が優れており、特に好ましい。
ポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸のようなジカルボン酸またはそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなグリコールとを溶融重縮合させて製造されるポリエステルである。これらの酸成分とグリコール成分とからなるポリエステルは、通常行われている方法を任意に使用して製造することができる。
例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下、加熱して重縮合させる方法が採用される。その目的に応じ、脂肪族ジカルボン酸を共重合しても構わない。
ポリエステルとしては、代表的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられるが、その他に上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
高分子フィルムを多層構造のポリエステルフィルムとする場合は、表層と内層、あるいは両表層や各層を目的に応じ異なるポリエステルとすることができる。
また添加剤を高分子フィルム中に加える場合、単層フィルムに加えたり、多層フィルムの一部の層のみに加えたりすることもできる。例えば、高分子フィルムを3層構成とし、内層には粒子を加えず、一方もしくは両方の外層に粒子を加えることで、易滑性と透明性を両立することができる。
高分子フィルムを構成する基材フィルムとしては、オリゴマーの含有量が少ないポリエステルフィルムを用いることが好ましい。
オリゴマーの含有量の少ないポリエステルとは、環状三量体が0.7重量%以下であるようなポリエステルを指す。特に好ましくは、環状三量体が0.5重量%以下である。
環状三量体が0.7重量%以下であると、ポリエステルフィルムを高温で加熱した場合に、オリゴマーが高分子フィルム表面に析出してくる現象を効果的に抑制することができる。
なお、単にオリゴマー含有量を少なくすれば、それに応じて析出量が減るわけではない。例えば、高分子フィルム表面に粘着剤層などが設けられた状態で加熱する場合は、0.5重量%程度を境に析出量が大幅に低減される。
高分子フィルムが単層構造である場合は、高分子フィルムは、環状三量体の含有量が0.5重量%以下のポリエステル80重量%以上から構成されることが好ましい。
高分子フィルムが多層構造である場合は、下引き層に接する基材フィルムの環状三量体の含有量が0.5重量%以下のポリエステル80重量%以上から構成されることが好ましい。
本明細書において、下引き層とは、多層構造の高分子フィルムにおいて、基材フィルムの表面に形成された層であり、更に上層に積層される層との密着性を向上させたり、帯電防止性を持たせたり、高分子フィルム内から低分子成分が染み出すことを防止する機能を有する層を意味する。下引き層は、全不揮発成分に対する架橋剤の比率が70重量%以上である下引き層形成用塗布液を、基材フィルムに塗布し、乾燥して得られる。この下引き層形成用塗布液中には、その他の成分を含有していても構わない。
また、高分子フィルムが多層構造であって、フィルムの表層をオリゴマー含有量の少ないポリエステルとする場合は、この表層の厚さは好ましくは4μm以上であり、より好ましくは5μm以上である。表層の厚みが厚いほど、オリゴマーの析出が抑制される。一方、表層の厚みが上記範囲より薄い場合には、十分なオリゴマーの析出抑制効果が得られない場合がある。
高分子フィルムには、フィルムの走行性を確保したり、キズが入ることを防いだりする等の目的で粒子を含有させることができる。このような粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、さらに、ポリエステル製造工程時の析出粒子等を用いることができる。
用いる粒子の粒径や含有量はフィルムの用途や目的に応じて選択されるが、平均粒径(d50)に関しては、通常0.01μm〜3μm、好ましくは0.02μm〜2.5μm、さらに好ましくは0.03μm〜2μmの範囲である。平均粒径を0.01μm以上とすることで、表面粗度が小さすぎて十分な易滑性が得られない、という不具合を回避することができる。平均粒径を3.0μm以下とすることで、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎたり、粒子がフィルム表面から脱落しやすくなったりする現象を回避することができる。
粒子含有量については、粒子を含有するポリエステル層に対し、通常0.0003〜1.0重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の範囲である。粒子含有量を0.0003重量%以上とすることで、フィルムに十分な易滑性を付与することができる。粒子含有量を1.0重量%以下とすることで、フィルムに十分な透明性を付与することができる。
なおフィルムの透明性、平滑性などを特に高めたい場合には、実質的に粒子を含有しない構成とすることもできる。また、適宜、各種安定剤、潤滑剤、帯電防止剤等をフィルム中に加えることもできる。
高分子フィルムの製膜方法としては、通常知られている製膜法を採用でき、特に制限はない。例えば、まず溶融押出によって得られたシートを、ロール延伸法により、70〜145℃で2〜6倍に延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルムを得、次いで、テンター内で先の延伸方向とは直角方向に80〜160℃で2〜6倍に延伸し、さらに、150〜250℃で1〜600秒間熱処理を行うことでフィルムが得られる。さらにこの際、熱処理のゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。
高分子フィルムの膜厚としては特に限定は無いが加工時の取扱いのし易さから、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましい。また、500μm以下が好ましく、300μm以下が好ましく、250μm以下がさらに好ましい。
高分子フィルムの加熱収縮率としては、180℃で5分間加熱した際の収縮率は、MD(長さ)方向において、2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下がより好ましく、1.0%以下がさらに好ましい。180℃で5分間加熱した際の収縮率は、TD(幅)方向で、1.0%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。
下引き層は、インラインコーティングにより形成してもよい。下引き層を形成することで加工工程は増えるが、より高い性能の積層フィルムを作ることが可能である。下引き層は、全不揮発成分に対する架橋剤の比率が70重量%以上である塗布液を塗布し、乾燥して得ることが好ましい。なお塗布液中には、その他の成分を含有していても構わない。
ここで述べる架橋剤とは、特に熱で反応する架橋性樹脂のことであり、例えばアミノ樹脂系、イソシアネート系、オキサゾリン系、エポキシ系などが挙げられる。他のポリマー骨格に反応性基を持たせた、ポリマー型架橋反応性化合物も含まれる。
特に、オキサゾリン系の架橋剤を使用することで、オリゴマー析出の抑制と、良好な外観の下引き層を両立することができる。
また、特に2種類以上の架橋剤を併用すると、加熱時にポリエステルフィルムから析出するオリゴマーが抑制される効果が高くなり好ましい。これはおそらく、下引き層用塗布液を塗布及び乾燥して下引き層が形成される際に、反応速度の異なる架橋剤が存在することで、より効果的に塗布層の空隙を埋め、オリゴマーの析出を抑制する層となるためと推測される。
種々の組み合わせを検討した結果、オキサゾリン系、エポキシ系を併用する、ないし、アミノ樹脂系、オキサゾリン系、エポキシ系を併用すると、特に得られる効果が高い。
オキサゾリン系の架橋剤としては、分子内にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適であるが、他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば構わない。また本発明におけるオキサゾリン系架橋剤は、オキサゾリン基の含有量として、0.5〜10mmol/g、好ましくは3〜9mmol/g、より好ましくは5〜8mmol/gの範囲である。特に2種類以上の架橋剤を併用する場合に、上記範囲であるオキサゾリン系架橋剤を選定することで、得られる効果が高い。
エポキシ系の架橋剤は、分子内にエポキシ基を有する化合物のことであり、例えば、エピクロロヒドリンとエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
アミノ樹脂系の架橋剤の中でも、メラミン樹脂のアミノ基をメチロール化し、さらにそのメチロール基の一部をメチル化したものが、水溶性で取扱いがよく、反応性も高く、また下引き層と基材フィルムとの密着性や塗布層の耐久性に優れた高分子フィルムが得られる。
なお、かかる架橋成分を含有する場合、同時に架橋を促進するための成分、例えば架橋触媒などを併用することができる。
下引き層を設けるための塗布液中には、必要に応じて上記述べた成分以外を含むことができる。例えば、界面活性剤、その他のバインダー、粒子、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等である。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
下引き層の厚さは、最終的に、二軸延伸ポリエステルフィルム上の皮膜厚さとして、通常0.003μm〜1μmの範囲である。好ましくは0.005μm〜0.5μm、さらに好ましくは0.01μm〜0.2μmの範囲である。厚さを0.003μm以上とすることによって、フィルムから析出するオリゴマー量を十分に少なくすることができる。厚さを1μm以下とすることによって、下引き層の外観の悪化やブロッキングしやすくなるなどの問題を、確実に回避することができる。
下引き層の厚みは、塗布フィルムをルテニウム化合物やオスミウム化合物等の重金属を用いて染色を行い、超薄切片法により塗布フィルムの断面を調整した後、透過型電子顕微鏡にて塗布フィルム断面の塗布層を複数個所観測し、その実測値を平均することで確認することができる。
基材フィルムに下引き層用の塗布液を塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター等のような技術が挙げられる。
なお、下引き層用の塗布液の基材フィルムへの塗布性、接着性を改良するため、塗布前に基材フィルムに化学処理やコロナ放電処理、プラズマ処理等を施してもよい。
(金属酸化物含有層)
高分子フィルムの少なくとも一方の面には、導電性の金属酸化物含有層を備えている。この金属酸化物含有層は、アモルファス構造の金属酸化物を含有する。
金属酸化物含有層の形成方法は特に限定されないが、例えば、金属元素を有する化合物を含む塗布液(以下、前駆体溶液という)を、高分子フィルムの少なくとも一方の面に塗布後、200℃以下の温度で乾燥させて形成することができる。
前記の金属元素は、Zn、Mo、In、Sb、Sn、Ga、Ge、Cu、Ag、Ti、Cd、Te、Se、W、Ceから選ばれる少なくとも1種の金属元素であることが好ましく、1種のみを用いても良く、2種以上を混合してもよい。
特に、Znは反応性が良好であり、低温加工でも高い導電性やオリゴマー封止性を得やすい。また、2種類以上の金属元素を混合することで、金属酸化物層の導電性を高めたり、過剰な結晶化を抑制し、導電性やオリゴマー封止性の低下を抑制する効果が期待できる。
Znを有する化合物の具体例としては、ジンクジアセテート、ジンクジナイトレート、ジンクジアセチルアセトネート、ジエチルジンク、ジンクジイソプロポキシド、ジンクヘキサフルオロアセチルアセトネート、ジンクジヒドロキシド、ジンクジクロライド等が例示される。また、上記化合物の水和物を用いてもよい。
金属酸化物含有層の表面固有抵抗値および/またはオリゴマー封止性を向上させるために、上記の前駆体溶液中に、In、Sn、Al、Zr、Si、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属元素を有する化合物を添加してもよい。これらのうち1種のみを用いても良く、2種以上を混合してもよい。
表面固有抵抗は、1×1013Ω以下であることが好ましく、1×1012Ω以下であることがより好ましく、1×1010Ω以下であることがさらに好ましい。表面固有抵抗を1×1013Ω以下とすることにより、塵埃等の付着異物防止性の低下による透明性および視認性の悪化を回避することができる。また、表面固有抵抗を1×1013Ω以下とすることにより、ハンドリング性の低下を回避することができ、より精巧な後加工を十分に行うことができる。
Inを有する化合物の具体例としては、インジウムアセテート、インジウムターシャリーブトキシド、インジウムアセチルアセトネート、インジウムトリクロライド、インジウムトリヒドロキシドなどが例示される。
Snを有する化合物の具体例としては、ジブチンスズビス(アセチルアセトネート)、スズターシャリーブトキシド、スズクロライド、スズヒドロキシドなどが例示される。
Alを有する化合物の具体例としては、アルミニウムトリス(アセチルアセトネ−ト)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム−ジ−n−ブトキシド−モノエチルアセトアセテート、アルミニウム−ジ−イソ−プロポキシド−モノメチルアセトアセテート、アルミニウムトリクロライド、アルミニウムトリヒドロキシドなどが例示される。
Zrを有する化合物の具体例としては、例えば、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムクロライドなどが例示される。
Siを有する化合物の具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3, 4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、5−ヘキセニルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシランなどが例示される。
Tiを有する化合物の具体例としては、例えば、チタニウムジイソプロポキシドビスアセテート、チタニウムブトキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウムメトキシド、チタニウムオキサイドアセチルアセトネート、チタニウムプロポキシド、チタニウムターシャリーブトキシド、チタニウムテトラヒドロフルフリルオキサイドなどが例示される。
前駆体溶液の溶解性、分散性、及び前駆体溶液中の化合物の加水分解により形成される金属水酸化物の溶解性、分散性を高めることを目的として、前駆体溶液にアミン化合物、ピリジン化合物、ジケトン化合物、ジオール化合物、アセチレン化合物を添加することが好ましい。
ここで添加される化合物は、金属酸化物含有層の形成を阻害しないために、前駆体溶液の乾燥時に揮発させることができる低分子であることが好ましい。添加される化合物の沸点は、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、170℃以下で有ることがさらに好ましく、150℃以下であることがより一層好ましい。アミン化合物、ピリジン化合物、ジケトン化合物、ジオール化合物、アセチレン化合物の具体例としては、モノエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、2,6−ルチジン、グリシン、アセチルアセトン、エチレングリコール、2−プロプチン−1−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、トリメチル(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールなどが挙げられる。1種のみを用いても良く、2種以上を混合してもよい。
求核性の低いアミン化合物(ジイソプロピルエチルアミンなど)及び/又はピリジン化合物(2,6−ルチジンなど)と、ジオール化合物及び/又はアセチレン化合物の混合は、シリコーン離型層の形成など、次工程の反応を阻害する可能性が低く、且つ前駆体溶液の溶解性を高められるため、特に好ましい。
この際、加水分解・縮合反応促進を目的として、触媒を併用すると好適である。触媒の具体例としては、酢酸、酪酸、マレイン酸、クエン酸などの有機酸類、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸などの無機酸類、トリエチルアミンなどの塩基性化合物類、テトラブチルチタネート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジオレート、ジフェニル錫ジアセテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)錫、ジブチル錫ベンジルマレート等などの有機金属塩類、KF、NHFなどのフッ素元素含有化合物などを挙げられる。上記触媒は単独で使用しても良くあるいは2種類以上を併用してもよい。その中でも、特に塗膜耐久性が良好となる点で有機金属塩類が好ましく、さらに好ましくは触媒活性が長時間持続可能な点で錫触媒を用いるのが好ましい。また、錫触媒以外にも、チタン、ジルコニウム、ランタノイドなどの金属を含むアルコキシド、キレート、アシレート等を触媒としても用いてもよい。
さらに金属酸化物含有層の固着性、滑り性改良を目的として、無機系粒子を含有してもよく、具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、バリウム塩等が挙げられる。
また、表面固有抵抗値の向上を目的に、導電性を有する金属、金属酸化物の粒子、またはフィラー等が含有されてもよい。ドーパントとして、ホウ素化合物、リン化合物などの不純物を添加してもよい。
また、必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、染料等が含有されてもよい。
その他、本発明の要旨を越えない範囲において、分散性改良、造膜性改良等を目的として、有機溶剤を使用することができる。使用する有機溶剤は一種類のみでもよく、適宜、二種類以上を使用してもよい。
前駆体溶液の塗布量は、乾燥後の厚みが、0.005μm〜5.0μm、好ましくは0.010μm〜2.0μm、さらに好ましくは0.20μm〜1.0μmの範囲となるように調整する。塗布量を0.005μm以上とすることにより、塗布厚みの均一性を十分確保することができ、熱処理後、塗布層表面から析出するオリゴマー量を確実に低減させることができる。塗布量を5.0μm以下とすることにより、クラック等の不具合を確実に回避することができ、コスト抑制の効果も得られる。
前駆体溶液の塗布は、下引き層用塗布液を塗布する方法と同様の方法で行うことができる。インラインコーティングを用いても良く、一旦製造したフィルム上に塗布する、いわゆるオフラインコーティングを用いてもよい。
前駆体溶液を塗布後に200℃以下の温度で乾燥させて金属酸化物含有層を形成する際の乾燥温度は、好ましくは60〜200℃、より好ましくは80℃〜190℃、さらに好ましくは100℃〜180℃、特に好ましくは120℃〜160℃である。
乾燥時間は、好ましくは3秒〜600秒間、より好ましくは5秒〜300秒間、さらに好ましくは10秒〜180秒間、特に好ましくは15秒〜120秒間である。
必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。
金属酸化物含有層を形成する際の熱エネルギーが不十分であると、前駆体溶液中の前駆体の反応が十分に進まず、表面固有抵抗値が高くなり、オリゴマーの析出量が増大するため好ましくない。
一方、金属酸化物含有層を形成する際の熱エネルギーが過剰になると、金属酸化物含有層の結晶性が高くなりすぎ(すなわち金属酸化物含有層中において、結晶構造の金属酸化物の割合が過剰になり)、膜にクラックが発生しやすくなることで、表面固有抵抗値が高くなり、オリゴマーの析出量が増大するため好ましくない。
本発明では、高分子フィルム上に形成された金属酸化物含有層が、アモルファス構造の金属酸化物を含むように加える熱量を調整することで、上記のようなエネルギーの過不足に起因する問題(表面固有抵抗値が高くなり、オリゴマーの析出量が増大する問題)を解消している。
金属酸化物含有層の結晶化の度合い(すなわち金属酸化物含有層中における、結晶構造の金属酸化物の割合)は、導電性とオリゴマー封止性などのバランスを考慮して選択される。
金属酸化物含有層がアモルファス構造の金属酸化物を含むことは、X線回折ピークのブロードニングやAFMによる表面形状観察から評価することが可能である。
結晶化の度合いは、石英基板などに金属酸化物含有層を形成し、溶媒を乾燥させただけの未結晶化サンプルと、高温・長時間アニールにより結晶化を完了させたサンプルとの比較により評価することが可能である。
(離型層)
図1に示すように、金属酸化物含有層2上に離型層3を設けてもよい。
離型層としては、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、付加型、縮合型、紫外線硬化型、電子線硬化型、無溶剤型等何れの硬化反応タイプでも用いることができる。
具体例を挙げると、信越化学工業(株)製のKS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、ダウコーニング・アジア(株)製のDKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、東芝シリコーン(株)製のYSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、東レ・ダウコーニング(株)製のSD7220、SD7226、SD7229等が挙げられる。さらに離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。
離型層を設ける方法としては、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
離型層の他に、ハードコート層、粘着層、反射防止膜、バリア膜、セルフアッセンブルモノレイヤーなど、その他の機能層を設けてもよい。
離型層の塗布量は、離型層形成後の乾燥被膜として、通常0.01〜1g/mの範囲である。離型層の塗布量は、塗料の重量濃度と塗布面積、塗料の使用量から計算できる。
塗布量を0.01g/m以上とすることにより、均一な離型性を確保することができる。塗布量を1g/m以下とすることにより、ブロッキングなどの問題を回避することができる。
なお、離型層の厚みを前述のように透過型電子顕微鏡にて断面から確認し、比重で割ることで塗布量を求めることもできる。一般的に硬化性シリコーンの比重は0.9〜1.2程度が多い。厚み0.1μmの離型層の塗布量は、比重1の時0.1g/mである。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(1)表面固有抵抗値の測定:
三菱化学アナリテック製の表面抵抗計(MC−HT800)を用い、下記の方法で2回の測定を行い、その平均値を採用した。
23℃、50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後、印可電圧500Vまたは250Vで1分後のフィルム表面の表面固有抵抗値を測定する。表面固有抵抗値が低いほど、帯電防止性が良好であるといえる。
(2)積層フィルム表面から抽出されるオリゴマーの測定:
金属酸化物含有層を形成する塗布液を塗布、乾燥した高分子フィルムを空気中、150℃で2時間加熱する。その後、熱処理をした該フィルムを上部が開いている縦横10cm、高さ3cmの箱の内面にできるだけ密着させて箱型の形状とする。この時、塗布層が箱の内側に来るようにする。次いで、上記の方法で作成した箱の中にDMF(ジメチルホルムアミド)10mlを入れて3分間放置した後、DMFを回収する。回収したDMFを液体クロマトグラフィー(島津製作所製:LC−2010C HT)に供給して、DMF中のオリゴマー量を求め、この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面オリゴマー量(mg/m)とする。
DMF中のオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。標準試料の作成は、あらかじめ分取したオリゴマー(環状三量体)を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解し作成した。標準試料の濃度は、0.001〜0.01mg/mlの範囲が好ましい。なお、液体クロマトグラフの条件は下記の通りとした。
移動層A:アセトニトリル
移動層B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製『MCI GEL ODS 1HU』
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
[実施例1]
酢酸亜鉛二水和物1.0g、エタノールアミン0.28g、2−メトキシエタノール10gからなる溶液を、バーコーター(No.4バー)を用いて、38μm厚の2軸延伸PETフィルム上に塗布した後、オーブンで150℃、30秒間乾燥し、酸化亜鉛層付きのPETフィルムを作成した。
得られた積層フィルムは透明性も高く、均一なアモルファス構造の酸化亜鉛を含む酸化亜鉛含有層が形成されたと考えられる。酸化亜鉛層の膜厚を断面SEMにより測定したところ、3点平均で90nmであった。
[実施例2]
酢酸亜鉛二水和物1.0g、シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン)0.1g、エタノールアミン0.28g、2−メトキシエタノール10gからなる溶液を、バーコーター(No.4バー)を用いて、38μm厚の2軸延伸PETフィルム上に塗布した後、オーブンで150℃、30秒間乾燥し、酸化亜鉛層付きのPETフィルムを作成した。
[実施例3]
酢酸亜鉛二水和物1.0g、シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン)0.1g、ジブチルスズアセテート0.003g、エタノールアミン0.28g、2−メトキシエタノール10gからなる溶液を、バーコーター(No.4バー)を用いて、38μm厚の2軸延伸PETフィルム上に塗布した後、オーブンで150℃、30秒間乾燥し、酸化亜鉛層付きのPETフィルムを作成した。
[実施例4]
酢酸亜鉛二水和物1.0g、シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン)0.1g、ジブチルスズアセテート0.003g、アルミニウムトリスアセチルアセトネート0.04g、エタノールアミン0.28g、2−メトキシエタノール10gからなる溶液を、バーコーター(No.4バー)を用いて、38μm厚の2軸延伸PETフィルム上に塗布した後、オーブンで150℃、30秒間乾燥し、酸化亜鉛層付きのPETフィルムを作成した。
酸化亜鉛層の膜厚を断面SEMにより測定したところ、3点平均で125nmであった。
[実施例5]
乾燥温度を160℃にした以外は、実施例1と同様に酸化亜鉛層付きのPETフィルムを作成した。
[実施例6]
乾燥温度を160℃にした以外は、実施例2と同様に酸化亜鉛層付きのPETフィルムを作成した。
[実施例7]
乾燥温度を160℃にした以外は、実施例3と同様に酸化亜鉛層付きのPETフィルムを作成した。
[実施例8]
乾燥温度を160℃にした以外は、実施例4と同様に酸化亜鉛層付きのPETフィルムを作成した。
[比較例1]
酸化亜鉛層をコートしていないPETフィルムをオリゴマー封止性評価のための比較例とした。
[実施例9]
乾燥温度を130℃、乾燥時間を3分間にした以外は、実施例1と同様に酸化亜鉛層付きのPETフィルムを作成した。
[実施例10]
酢酸亜鉛二水和物0.9g、ドーパントとして塩化アルミニウム0.1g、エタノールアミン0.28g、2−メトキシエタノール10gからなる溶液を、バーコーター(No.4バー)を用いて、38μm厚の2軸延伸PETフィルム上に塗布した後、オーブンで130℃、3分間アニールした。
表1および表2に、得られた酸化亜鉛層付きPETフィルムの評価結果をまとめた(表1:酸化亜鉛フィルム表面固有抵抗値、表面オリゴマー量、ヘーズ値、表2:酸化亜鉛フィルム表面固有抵抗値、ヘーズ値)。
ヘーズは20%以下であることが好ましい。より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下であり、特に好ましくは3%以下である。ヘーズが過度に大きくなると、光学用途においては、外観上使用しがたくなる場合があるが、20%以下とすることで、良好な外観とすることができる。本明細書において、ヘーズは、JIS−K7136に準じて、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−2000により測定した値を意味する。
作成した酸化亜鉛層付きPETフィルムの表面固有抵抗値を測定したところ、塗布形成した酸化亜鉛層は導電性を示した。また、150℃で2時間の加熱後も表面のオリゴマー量は低く抑えられており、良好な帯電防止性とオリゴマー封止性を1回のコートで、かつ200℃以下の低い乾燥温度で得られることが分かった。

* 測定範囲外(>1014Ω/□)
積層フィルムの特性は乾燥条件によって変化し、150℃で30秒間加熱した実施例1と160℃で30秒間熱した実施例5の比較では、表面固有抵抗値は150℃で30秒間加熱した実施例1が良好であった。また、フィルムのヘーズも実施例1の方が良好な結果が得られた。
乾燥温度が異なることによってフィルム特性に大きく差が出ることについて、その機構は完全に明確ではないが、恐らく金属酸化物含有層(上記実施例では、酸化亜鉛層)の膜質(結晶性)と、高分子フィルムと金属酸化物含有層との熱膨張係数の違いが影響を与えていると考えられる。
通常では、高温で加熱した方が金属酸化物含有層の結晶性が高まり、膜の導電性が高まることで表面固有抵抗値が低抵抗化すると予想される。しかし、結晶性の高い膜は膨張収縮に対して機械的に弱くなると考えられ、温度が高すぎると金属酸化物含有層に極微小なクラックが生じ、これにより表面固有抵抗値の高抵抗化やヘーズの上昇やオリゴマー封止性能の低下といった問題を生じると考えられる。
本発明では、乾燥温度や乾燥時間や前駆体溶液の調整により、金属酸化物含有層が、アモルファス構造を含むものとして、上記の問題を解消した。
塗布液にシランカップリング剤やスズ触媒、アルミ化合物を添加することで、積層フィルムの特性を変化、向上させることが可能である。
シランカップリング剤(実施例2)を添加した場合、やや表面固有抵抗値が上昇するが、オリゴマー封止性に向上が見られた。一方、ヘーズが大きく上昇している。
スズ触媒を更に添加することで(実施例3)、やや表面固有抵抗値が上昇するが、よりオリゴマー封止性に向上が見られた。ヘーズは余り変化しなかった。
さらにアルミ化合物を添加することで(実施例4)、表面固有抵抗値は上昇するが、シランカップリング剤の添加により上昇したヘーズが大きく低下した。
塗布層の乾燥を160℃で30秒間(実施例5〜8)とした場合、添加物有りの方が、表面固有抵抗値が低かった。耐熱性が向上していると考えられる。
塗布層の乾燥を130℃で3分間(実施例9)とした場合、より低い表面固有抵抗が得られた。しかし、乾燥時の熱量不足のためかヘーズ上昇が見られた。
一方、アルミ化合物(塩化アルミニウム)を添加した実施例10では、ヘーズ上昇が抑えられている。また、最も低い表面固有抵抗値が得られた。低抵抗化の機構は明確でないが、アルミおよび/または塩素による金属酸化物含有層へのドーピングの効果と予想される。
1 高分子フィルム
2 金属酸化物含有層
3 離型層

Claims (11)

  1. 高分子フィルムの少なくとも一方の面に、アモルファス構造の金属酸化物を含有する金属酸化物含有層を備え、
    該金属酸化物含有層が単層構造からなり、
    150℃で2時間加熱処理したフィルム表面から抽出されるオリゴマー量が5.0mg/m以下である、積層フィルム。
  2. 前記金属酸化物含有層が、さらに、結晶構造の金属酸化物を含有する、請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記金属酸化物含有層の厚みが、0.005μm〜5.0μmである、請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. ヘーズが20%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. 前記金属酸化物含有層に、亜鉛化合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  6. 前記金属酸化物含有層に、インジウム、スズ、アルミニウム、ジルコニウム、珪素、及びチタン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  7. 前記高分子フィルムがポリエステルフィルムである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  8. 前記金属酸化物が酸化亜鉛である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  9. 前記金属酸化物含有層の上に機能層を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  10. 高分子フィルムの少なくとも一方の面に、金属元素を有する化合物を含む塗布液を塗布後、200℃以下の温度で乾燥させて、アモルファス構造の金属酸化物を含有する金属酸化物含有層を形成する、積層フィルムの製造方法。
  11. 前記塗布液に、少なくとも1種類の低分子アミン化合物、ピリジン化合物、ジケトン化合物、ジオール化合物、及びアセチレン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項10に記載の積層フィルムの製造方法。
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