JP2018048554A - 樹脂成形体とその製造方法、並びにキッチンカウンター、浴室用床パン、便器及び洗面化粧台 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】樹脂構造体と、樹脂構造体の少なくとも一部の表面に設けられた溶射セラミック皮膜と、を含む。
【選択図】図1B
Description
また、特許文献2に開示されたシンクは、ステンレス等の金属からなる母材に、琺瑯ガラスからなる被覆層を形成する際に、800℃以上の温度で焼成する必要があり、高価になるという問題がある。
実施形態1.
本発明に係る実施形態1の樹脂成形体1は、シンク一体型キッチンカウンターであり、カウンター11とシンク12とが一体で構成されている。実施形態1の樹脂成形体1は、例えば、注型成形により、カウンター部とシンク部が一体で成形された構造体である樹脂構造体10と、樹脂構造体10の上面に設けられた溶射セラミック皮膜10cとを備える。
したがって、実施形態1の樹脂成形体1によれば、軽量でかつ耐久性の高いキッチンカウンターを提供できる。
また、溶射セラミック皮膜10cは、後述するように、溶射ガンにより溶射することにより形成することができる。これにより、カウンター11とシンク12との屈曲した境界又はシンク12の底部の角などに均一の膜厚でかつ滑らかに形成することができ、美観に優れた樹脂成形体を提供することができる。
さらに、実施形態1の樹脂成形体1は、溶射セラミック皮膜10cによって、例えば、大理石風の模様を再現したり、大理石のような質感を持たせたりすることが可能になり、美観及びデザイン性を向上させることができる。
以下、樹脂成形体1について詳細に説明する。
実施形態1の樹脂成形体1において、樹脂構造体10は、例えば、調理台である板状のカウンター部と槽状のシンク部とが例えば、注型成形により一体で作製される。樹脂構造体10の樹脂材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。また、樹脂構造体10は、無機フィラーを含んでいてもよい。無機フィラーを含むことにより、樹脂構造体10の熱膨張率を低下させ,後に堆積させる溶射セラミック皮膜の熱膨張率に近づけることができるとともに,樹脂構造体10の耐熱性を高めることができる。
実施形態1の樹脂成形体1において、図2に示すように、溶射セラミック皮膜10cは、偏平なセラミック粒子100が隣接間で融着して堆積した被膜である。この溶射セラミック皮膜10cは、後述するように、加熱されて溶融又は軟化した多数のセラミック粒子が樹脂構造体10の表面に衝突して順次堆積することにより形成される。この溶射セラミック皮膜10cのセラミック材料としては、アルミナ(Al2O3)、ムライト(Al2O3−SiO2)、チタニヤ(TiO2)等を用いることができる。溶射セラミック皮膜10cの膜厚は、特に限定されるものではないが、例えば、0.01〜3.0mmの範囲、好ましくは、0.05〜1.0mmの範囲、より好ましくは、0.2〜0.5mmの範囲に設定される。
実施形態1の樹脂成形体1において、樹脂構造体10と溶射セラミック皮膜10cの間に、必要に応じてセラミック下地層10aを含んでいてもよい。セラミック下地層10aは、例えば、溶射セラミック皮膜10cに比較して、充填密度の低い、例えば、空孔の多いセラミック層からなる。また、セラミック下地層10aとして、セラミック粒子を添加分散させた樹脂層を用いてもよい。セラミック下地層10aは、溶射時の熱が樹脂構造体10に伝達されるのを抑制し、樹脂の溶融又は劣化を抑制する。また、溶射後は、溶射セラミック皮膜10cと樹脂構造体10の熱膨張率の差に起因する応力を緩和することができ、セラミック下地層10aの剥離を防止し、樹脂成形体1の耐久性を向上させることができる。セラミック下地層10aのセラミック材料としては、ムライト、アルミナ、チタニア等を用いることができる。セラミック下地層10aは、気孔率を増加させた溶射法により形成することができる。あるいは、上記セラミック粒子を樹脂バインダで混合し、塗布することにより形成することができる。
樹脂構造体成形工程
本製造方法では、まず、樹脂構造体10を成形により作製する。例えば、実施形態1のキッチンカウンター用の樹脂成形体1では、例えば、型締めした金型のキャビティー内にモノマー樹脂を注入して硬化させて作製する(注型成形)。尚、樹脂構造体10の成形方法は、注型成形に限定されず、例えば、プレス成形又は射出成形により成形してもよい。
次に、樹脂構造体10表面のうちの少なくとも溶射セラミック皮膜10cを形成する部分を粗面化する(図3(b))。具体的には、サンドブラスト、エッチング、サンドペーパーによる研磨を用いて、例えば、表面粗さが、Rz=1〜100μm好ましくは、Rz=5〜50μmより好ましくは、Rz=10〜30μmになるように粗面化する。以上のような方法により粗面化することにより、例えば、樹脂成形体1のようにシンク一体型キッチンカウンターであって、カウンター11とシンク12とにわたって樹脂成形体1の上面全体を粗面化するような場合であっても均一な面粗さで粗面化できる。
また、この粗面化により、樹脂構造体10とセラミック下地層10a間、溶射セラミック皮膜10cを樹脂構造体10上に直接形成する場合には樹脂構造体10と溶射セラミック皮膜10c間の密着性を高くできる。さらに、上述の範囲の表面粗さになるように粗面化することにより、樹脂構造体10とセラミック下地層10a間、樹脂構造体10と溶射セラミック皮膜10c間の密着性をさらに高くできる。
次に、粗面化した樹脂構造体10表面に、セラミック下地層10aを形成する(図3(c))。セラミック下地層10aは、溶射セラミック皮膜10cに比較して、充填密度が低い(言い換えれば、気孔率の高い)セラミック層であり、例えば、20〜50%により形成する。セラミック下地層10aの気孔率は、例えば、30%〜40%の範囲に設定する。
また、セラミック下地層10aはセラミック粒子を樹脂バインダと混合し、塗布することにより形成することもできる。前記、樹脂バインダは、エポキシ樹脂やアクリル樹脂により形成することができる。この、樹脂バインダとセラミック粒子の混合物を、スプレー塗装、コーターによる塗布、刷毛塗り等により粗面化した樹脂構造体10表面に配設することができる。乾燥後の樹脂バインダのセラミック粒子に対する体積配合比率は0.5〜50%、好ましくは5〜30%により形成する。
そして、セラミック下地層10aの上から溶射ガン7により溶融又は軟化させたセラミック粒子を衝突させてセラミック粒子を堆積させることにより溶射セラミック皮膜10cを形成する。溶射方法としては、フレーム溶射、アーク溶射、レーザー溶射、プラズマ溶射など、溶射対象、作業環境等を考慮して種々の溶射方法から選択することができる。
溶射工程では、複数の溶射ガン7を用いて同時に異なるセラミック粒子を溶射して溶射セラミック皮膜10cを形成するようにしてもよい。このようにすると、例えば、表面の色彩に変化を持たせて装飾性を向上させることができる。また、溶射工程では、複数の溶射ガンを用いて交互に異なるセラミック粒子を溶射して溶射セラミック皮膜10cを形成するようにしてもよい。このようにすると、例えば、耐食性と耐熱性などの複数の機能を併せ持った溶射セラミック皮膜を形成することができる。
溶射により形成した溶射セラミック皮膜10cの気孔に樹脂を含浸(充填)させて硬化する(封孔処理)。含浸させる樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂やシリコーン樹脂等を使用することができる。この封孔処理は、溶射により溶射セラミック皮膜10cを形成すると、溶射直後の皮膜には、例えば、1〜10%の気孔率で気孔が存在する。このような気孔が存在すると、腐食の原因となる物質が気孔を通って樹脂構造体10に達して樹脂構造体10が腐食する可能性がある。封孔処理は、これを防止するために行う。また、溶射セラミック皮膜10cの気孔すなわち間隙部に樹脂を含むと、気孔が塞がれるので、間隙部が汚染されることがなく清掃が容易である。
しかしながら、本発明では、樹脂構造体10の上面の少なくとも一部に溶射セラミック皮膜10cを設けるようにしてもよい。例えば、樹脂成形体1では、樹脂構造体10のキッチンカウンター部の上面のみに溶射セラミック皮膜10cを設けるようにしてもよいし、シンク部の上面のみに溶射セラミック皮膜10cを設けるようにしてもよい。
しかしながら、本発明において、セラミック下地層10aは必要に応じて形成されるものであり、任意である。
例えば、樹脂構造体10を耐熱性の高い樹脂を用いて構成することにより、樹脂構造体10の熱劣化を抑えてセラミック下地層10aを省略することができる。
また、溶射工程において、溶射するセラミック粒子の粒径を小さくしたり溶融又は軟化を維持しつつセラミック粒子の温度を抑えることにより、樹脂構造体10の熱劣化を抑え、セラミック下地層10aを省略することができる。
しかしながら、本発明において、樹脂は、セラミック粒子100間の間隙に必要に応じて充填されるものであり、任意である。
例えば、樹脂構造体10及び溶射セラミック皮膜10cのセラミック粒子100を耐薬品性の高い樹脂により構成することにより、樹脂成形体1の耐久性を向上させて、セラミック粒子100間の樹脂充填をなくしてもよい。
また、セラミック粒子100間に樹脂を充填することなく、溶射セラミック皮膜10cの表面を樹脂コートするようにしてもよい。
本発明に係る実施形態2の樹脂成形体2は、図4Aに示すように、浴室用床パンであり、洗い場側の洗場床部21と排水部22とが一体で構成されている。実施形態2の樹脂成形体2は、図4B及び図4Cに示すように、例えば、プレス成形により、洗場部と排水部が一体で成形された構造体である樹脂構造体20と、樹脂構造体20の上面に設けられた溶射セラミック皮膜20cとを備える。尚、図4B及び図4Cにおいて、25の符号を付して示しているのは、浴室用床パンを支える支持部である。
また、実施形態2の樹脂成形体2において、溶射セラミック皮膜20cは、実施形態1の溶射セラミック皮膜10cと同様、セラミック粒子間の間隙部に充填された樹脂を含んでいてもよい。
さらに、実施形態2の樹脂成形体2において、実施形態1と同様、必要に応じてセラミック下地層を含んでいてもよい。
本発明に係る実施形態3の樹脂成形体3は、図5Aに示すように、便器であり、ボウル部31と排水口部32と外側支持部33とが一体で構成されている。実施形態3の樹脂成形体3は、図5Bに示すように、例えば、射出成形により、ボウル部と排水口部と外側支持部とが一体が一体で成形された構造体である樹脂構造体30と、樹脂構造体30の上面に設けられた溶射セラミック皮膜30cとを備える。
また、実施形態3の樹脂成形体3において、溶射セラミック皮膜30cは、実施形態1の溶射セラミック皮膜10cと同様、セラミック粒子間の間隙部に充填された樹脂を含んでいてもよい。
さらに、実施形態3の樹脂成形体3において、実施形態1と同様、必要に応じてセラミック下地層を含んでいてもよい。
本発明に係る実施形態4の樹脂成形体4は、図6Aに示すように、洗面カウンターであり、カウンター部41と洗面ボウル部42とが一体で構成されている。実施形態4の樹脂成形体4は、図6B及び図6Cに示すように、例えば、注型成形により、カウンター部と洗面ボウル部が一体で成形された構造体である樹脂構造体40と、樹脂構造体40の上面に設けられた溶射セラミック皮膜40cとを備える。
また、実施形態4の樹脂成形体4において、溶射セラミック皮膜40cは、実施形態1の溶射セラミック皮膜10cと同様、セラミック粒子間の間隙部に充填された樹脂を含んでいてもよい。
さらに、実施形態4の樹脂成形体4において、実施形態1と同様、必要に応じてセラミック下地層を含んでいてもよい。
しかしながら、本発明に係る樹脂成形体は、実施形態1〜4の具体例に限定されるものではなく、例えば、水回りの住宅設備機器に広く適用することができ、これにより、軽量で耐久性が高く、安価な住宅設備機器を提供することができる。
このようにすると、溶射時における樹脂構造体の反り又は変形を抑制することができる。
7 溶射ガン
10,20,30,40 樹脂構造体
10a セラミック下地層
10c,20c,30c,40c 溶射セラミック皮膜
11 カウンター
12 シンク
21 洗場床部
22 排水部
31 ボウル部
32 排水口部
33 外側支持部
41 カウンター部
42 洗面ボウル部
51 補強リブ
100 セラミック粒子
102 樹脂
Claims (8)
- 樹脂構造体と、
前記樹脂構造体の少なくとも一部の表面に設けられた溶射セラミック皮膜と、
を含む浴室用床パン。 - 前記樹脂構造体は洗場床部である請求項1に記載の浴室床パン。
- 前記樹脂構造体は、無機フィラーを含む請求項1又は2に記載の浴室用床パン。
- 前記樹脂構造体と溶射セラミック皮膜の間に、前記溶射セラミック皮膜と比較して、充填密度が低いセラミック層もしくはセラミック粒子を添加分散させた樹脂層を有する請求項1〜3のいずれかに記載の浴室用床パン。
- 前記樹脂構造体は、溶射セラミック皮膜が設けられた表面と対向する裏面に、補強リブを有する請求項1〜4のいずれかに記載の浴室床パン。
- 前記溶射セラミック皮膜の間隙部に樹脂を含む請求項1〜5のいずれかに記載の浴室床パン。
- 前記樹脂は、フッ素または珪素を含む請求項6に記載の浴室床パン。
- 前記溶射セラミック皮膜の表面は、研磨面である請求項1〜7のいずれかに記載の浴室床パン。
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