JP2018044240A - 耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 Download PDF

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【課題】引張強度1180MPa以上を有する耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板及びその製造方法を提供する。【解決手段】酸洗後の鋼板表面の算術平均粗さRaが0.5μm以上5.0μm以下となる条件で、鋼板に対し酸洗を施す酸洗処理工程と、導電性高分子及びアニオンからなる皮膜を酸洗処理後の鋼板表面に形成する皮膜付与工程とを有する。皮膜付与工程は、導電性高分子モノマー及び電解質を溶解させた浴中において、鋼板を陽極として電気分解する。【選択図】なし

Description

本発明は、耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板およびその製造方法に関するものである。詳しくは、主として自動車、建材用の強度部材に好適な鋼板であって、耐遅れ破壊特性が要求される、1180MPa(約120kgf/mm)以上の引張強度を有する高強度鋼板およびその製造方法に関するものである。
従来から、自動車用鋼板として、板厚の精度や平担度に関する要求から冷延鋼板が用いられている。さらに、近年は、自動車のCO排出量の低減及び衝突安全性確保の観点から、車体材料の高強度化によって薄肉化を図り、車体そのものを軽量化しかつ高強度化する要望が高まっている。そのために高強度鋼板の自動車への適用が促進されている。
一方、鋼板の高強度化に伴う問題点の一つとして、遅れ破壊という現象が生じやすくなることが知られている。遅れ破壊とは、高強度鋼板が引張強度以下の静的荷重が付加された状態において、ある時間が経過後に外見上ほとんど塑性変形を伴うことなく、突然脆性的な破壊を生じる現象である。この現象は1180MPa以上の引張強度を有する高強度鋼において特に顕著となる。
上記遅れ破壊は、自動車用鋼板の場合、所定の形状にプレス加工された鋼板成形品の接合部等において生じる残留応力と、このような応力集中部における鋼の水素脆性により生じることが知られている。この水素脆性の起因となる水素は、ほとんどの場合、鋼板の腐食に伴い鋼板表面において発生した水素が鋼中に侵入し、鋼板内部を拡散すると考えられている。
このような高強度鋼板における遅れ破壊を防止するための技術として、特許文献1では、鋼板の組織や成分を調整し、鋼板の水素感受性を弱めることで遅れ破壊発生を抑制する技術が開示されている。しかしながら、このような手法を用いた場合には、遅れ破壊の発生を遅らせることは可能であるが、外部環境から鋼板内部に侵入する水素量は変化しないことから、遅れ破壊自体を防止することはできない。したがって、遅れ破壊の本質的な抑制には、鋼板内部への水素侵入量自体の低減が必要である。このような観点から、特許文献2には、冷延鋼板にNi又はNi基合金メッキを施すことにより、鋼板内部への水素侵入量を低減し、遅れ破壊を抑制する技術が開示されている。
特開2004−231992号公報 特開平7−54194号公報 特開2006−63364号公報
しかしながら、特許文献2に記載のように、Ni又はNi基合金を電気メッキした場合、メッキ時に陰極である鋼板表面において発生した水素が鋼板内に残存し、遅れ破壊を引き起こす可能性がある。また、鋼板表面にメッキしたままで、プレス加工に供した場合、加工時にメッキ層が損傷し、素地鋼板が露出した部位において目的とする効果が得られないことも懸念される。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、主として自動車、建材用の強度部材に好適な鋼板であって、引張強度1180MPa以上を有する耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討および研究を重ねた。その結果、鋼板表面に導電性高分子を主成分とする皮膜を形成することにより鋼板への水素侵入量を大幅に抑制し、鋼板の遅れ破壊を効果的に抑制できることを見出した。また、皮膜形成前の素地鋼板を好ましくは強酸化性溶液中であらかじめ酸洗し、素地鋼板表面を不働態化し、かつ表面粗さを適切な範囲に調整することで、皮膜付与を効率良く行うことができ、加えて皮膜密着性の安定化が可能であることを見出した。
本発明は上記知見に基づくものであり、特徴は以下の通りである。
[1]引張強度が1180MPa以上を有する鋼板に対し、酸洗後の鋼板表面の算術平均粗さRaが0.5μm以上5.0μm以下となる条件で、鋼板に対し酸洗を施す酸洗処理工程と、導電性高分子及びアニオンからなる皮膜を酸洗処理後の鋼板表面に形成する皮膜付与工程とを有することを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[2]前記皮膜付与工程は、導電性高分子モノマー及び電解質を溶解させた浴中において、鋼板を陽極として電気分解することを特徴とする上記[1]に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[3]前記導電性高分子モノマーは、一置換ピロールまたは一置換アニリンであり、前記一置換ピロールは、5員環の1−位にハメット則の置換基定数(σ値)が負である置換基、または、3−位にハメット則のσ値が正である置換基を有し、前記一置換アニリンは、6員環のオルト位にハメット則のσ値が負である置換基を有することを特徴とする上記[2]に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[4]前記導電性高分子モノマーは、一置換ピロールまたは一置換アニリンであり、前記一置換ピロールは、5員環の1−位にメチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基のいずれか、または、3−位にアセチル基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基のいずれかを有し、前記一置換アニリンは、6員環のオルト位にメチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基のいずれかを有することを特徴とする上記[2]または[3]に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[5]前記酸洗処理工程における酸洗浴は、硝酸および/または硝弗酸からなることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[6]前記酸洗処理工程後、前記皮膜付与工程前に、鋼板に対し、Ni、Cu、Snの少なくとも一つをめっきするプレめっき工程を有することを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[7]引張強度が1180MPa以上の鋼板であって、少なくとも片面に、導電性高分子及びアニオンからなる皮膜を有し、皮膜剥離後の算術平均粗さRaが0.5μm以上5.0μm以下であることを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
[8]前記導電性高分子は、単位構造として、一置換ピロールまたは一置換アニリンを有し、前記一置換ピロールは、5員環の1−位にハメット則の置換基定数(σ値)が負である置換基、または、3−位にハメット則のσ値が正である置換基を有し、前記一置換アニリンは、6員環のオルト位にハメット則のσ値が負である置換基を有することを特徴とする上記[7]に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
[9]前記導電性高分子は、単位構造として、一置換ピロールまたは一置換アニリンを有し、前記一置換ピロールは、5員環の1−位にメチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基のいずれか、または、3−位にアセチル基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基のいずれかを有し、前記一置換アニリンは、6員環のオルト位にメチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基のいずれかを有することを特徴とする上記[7]または[8]に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
[10]前記皮膜の膜厚が0.5μm以上20μm以下であることを特徴とする上記[7]〜[9]のいずれかに記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
[11]前記皮膜が下式を満たすことを特徴とする上記[7]〜[10]のいずれかに記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
{皮膜の膜厚(μm)}>{皮膜剥離後の鋼板の算術平均粗さRa(μm)}
[12]前記鋼板は、NiまたはCuまたはSnを付着量10mg/m以上2000mg/m以下で有していることを特徴とする上記[7]〜[11]のいずれかに記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
なお、本発明において、高強度鋼板とは、引張強度TSが1180MPa以上の鋼板である。また、本発明の高強度鋼板は、冷延鋼板、熱延鋼板のいずれも含むものである。
本発明によれば、引張強度(以下、TSと称することもある)1180MPa以上を有する耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板が得られる。
図1は、通電時間と皮膜膜厚との関係を示す図である。 図2は、遅れ破壊評価用試験片を模式的に示す図である。 図3は、複合サイクル腐食試験の工程を示す説明図である。
以下、本発明について具体的に説明する。なお、以下の説明において、鋼成分組成の各元素の含有量の単位は「質量%」であり、以下、特に断らない限り単に「%」で示す。
本発明の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法は、酸洗後の鋼板表面の算術平均粗さRaが0.5μm以上5.0μm以下となる条件で、鋼板に対し酸洗を施す酸洗処理工程と、導電性高分子を主成分とする皮膜(以下、導電性高分子皮膜と称す)を酸洗処理後の鋼板表面に形成する皮膜付与工程とを有することを特徴とする。
本発明において用いられる導電性高分子とは、π電子共役系を有する有機分子(単量体)の重合反応により得られる高分子であり、代表的な例として、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどが挙げられる。このような導電性高分子はアニオンをドープし、部分的な酸化状態とすることにより、半導体〜金属レベルの導電性を示す。導電性高分子を鋼板上に付与した場合、素地である鋼板(以下、素地鋼板と称する)よりも貴な酸化還元電位を有することから、素地鋼板が陽極となって界面に緻密な不動態皮膜を形成する。この不動態皮膜は、表面に付着した塩化物イオン等の腐食因子を遮断することにより、素地鋼板の腐食を抑制する。さらに、導電性高分子皮膜はピット等の損傷部においても素地鋼板の防食能を示すことが知られている。損傷部における皮膜界面では、上記のような導電性高分子と素地鋼板の間において酸化還元反応を起こし、素地鋼板では不働態皮膜を生じる。一方、還元された導電性高分子は、水膜中の溶存酸素を還元することで元の状態に戻る。以上のように、導電性高分子皮膜は皮膜損傷部においても、全体として可逆的な酸化還元反応に基づき素地鋼板の不働態化によって防食に寄与する。したがって、導電性高分子を付与した高強度鋼板では、皮膜損傷を受けやすい加工部においても、素地鋼板内部への水素侵入量が低減され、優れた耐遅れ破壊特性を示すことになる。
以上のような導電性高分子皮膜は、単量体溶液中において電解重合することで、素地鋼板表面上に直接析出させることができる。この電解重合の際、素地鋼板は陽極であり、表面において水素が発生しないため、電気Niメッキをする際などに懸念される鋼板内部への水素侵入は生じない。この点においても、遅れ破壊防止の観点から有用であるといえる。
一方、このような導電性高分子皮膜は、素地鋼板に対する密着性に劣ることが欠点である。皮膜密着性が劣る場合、鋼板をプレス等で加工した際、皮膜に傷が入るだけでなく、大面積の剥離が生じる恐れがある。素地鋼板が大面積で露出した場合、上述した導電性高分子による防食能が及ばない領域が生じる可能性がある。
素地鋼板への導電性高分子皮膜の密着性に劣る要因として、単量体分子内に水素結合可能な官能基が少ないことが考えられる。しかしながら、水素結合部位を増やすために、単量体分子へ多数の置換基を導入した場合、原料コスト増につながるだけでなく、分子量増加の影響が勝り水溶性を損ない、上記電解重合において水溶液が使用不可になることも懸念される。
このような密着性に劣るという課題に対して、特許文献3では、水素結合を有する官能基の多いシランカップリング剤を有機樹脂皮膜と下地鋼の界面に存在させることで導電性高分子皮膜の素地鋼板への密着性を改善している。しかし、特許文献3に記載の方法では、電解重合による鋼板への皮膜付与が困難なだけでなく、シランカップリング剤からなる界面層の存在により、導電性高分子皮膜が素地鋼板に直接接していないため、皮膜損傷部における防食能を示さない可能性がある。
これに対して、本発明では、皮膜付与の前に素地鋼板を好ましくは強酸化性溶液中で酸洗することによって、素地鋼板の表面を不動態化するとともに、算術平均粗さRaを所定の範囲に調整している。これにより、例えば電界重合法で導電性高分子皮膜を効率良く形成させることができる。また、導電性高分子皮膜の密着性が顕著に安定化する。これは、素地鋼板表面が微小な凹凸を有するために、導電性高分子皮膜と素地鋼板の界面においてアンカー効果が生じ、その結果、密着性が向上すると推定される。導電性高分子皮膜が素地鋼板と直接接するため、皮膜損傷部における防食能を損なうことなく密着性を安定化できる点で優れている。
次に、本発明に係る耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の素地となる鋼板について説明する。本発明の素地鋼板は、引張強度1180MPa以上の鋼板である。引張強度が1180MPaよりも低い鋼板を素地鋼板とした場合も本発明の効果は発現するが、引張強度が1180MPaよりも低い鋼板では本質的に遅れ破壊が発生しにくいことから、発明の効果が顕著に発現しない。引張強度が1180MPa以上であれば、素地鋼板の化学組成および鋼組織は特に限定されず、また圧延方法等についても特に限定されない。鋼板の板厚についても特に限定されないが、好ましくは0.5〜2.5mm程度である。
次に、本発明の耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼板の製造方法について説明する。
通常の方法で製造された熱延鋼板または冷延鋼板に対して、酸洗後の鋼板表面の算術平均粗さRaが0.5μm以上5.0μm以下となる条件で、鋼板に対し酸洗を施す。次いで、導電性高分子を主成分とする皮膜を形成する。
酸洗処理工程と続く皮膜付与工程は連続設備で行っても、別々の設備で行っても構わない。以下、詳細に説明する。
酸洗処理工程
素地鋼板表面の粗さを適切な範囲に調整し、かつ鋼板表面を不働態化させる目的で酸洗処理を施す。酸洗処理工程は、酸洗後の素地鋼板表面の算術平均粗さRaが0.5μm以上5.0μm以下となる条件で行う。酸洗後の素地鋼板のRaが0.5μm未満の場合、続く皮膜付与工程後に形成した導電性高分子皮膜の密着性が不安定となり、加工において皮膜の剥離が生じやすく、本発明の目的である耐遅れ破壊特性が十分に得られない可能性がある。一方、Raが5.0μmを超えても、更なる密着性向上効果が得られないだけでなく、皮膜付与後の表面粗さが大きくなりプレス加工時に金型が損傷を受けやすくなる可能性がある。以上から、酸洗後の素地鋼板の算術平均粗さRaは0.5μm以上5.0μm以下とする。好ましくは、1.0μm以上2.0μm以下である。
Raが2.0μmを超える場合は調質圧延等の工程によって鋼板に付与することは難しい。しかし、本発明では、酸洗処理工程で素地鋼板を強酸化性溶液へ浸漬することでFeの溶解に伴い2.0μmを超える高い粗さを付与することが可能である。
酸洗処理工程における酸洗浴としては、硝酸および/または硝弗酸からなることが好ましい。例えば、10〜30質量%の硝酸や硝弗酸(フッ化水素酸:約1質量%、硝酸:30質量%の混合水溶液)などの硝酸イオンを含有する強酸化性溶液があげられる。このような強酸化性溶液を酸洗浴として用いれば素地鋼板のRaを所定の範囲に調整しつつ、短時間で十分に不働態化させ、後の皮膜付与工程でFeの溶解反応を抑制して通電後速やかに皮膜を析出させることができる。経済的に有利である。
酸洗処理を行う場合、酸洗液の温度は20〜30℃とし、酸洗時間を30〜300秒として行うのが好ましい。
皮膜付与工程
皮膜付与工程では、導電性高分子からなる皮膜を酸洗処理後の鋼板表面に形成する。なお、導電性高分子からなるとは、例えば導電性高分子モノマー及びドーパントとして作用するアニオン(以下、ドーパントアニオンと称す場合がある)を含んだ電解質を溶解させた浴中において、鋼板を陽極として電気分解することにより皮膜を鋼板表面に付与する場合に、導電性高分子とドーパントとなるアニオンの質量比の合計が、皮膜全体の50%以上となることである。制御の容易さや所要時間の観点から、例えば、導電性高分子モノマー及び電解質としてドーパントアニオンからなる塩を含む溶液中(浴中)、素地鋼板を陽極として電気分解(以下、略して電解と称す)することが好ましい。電解は定電流法によって行うことが好ましい。
陽極である素地鋼板表面でFeの陽極溶解反応が導電性高分子モノマーの酸化反応に優先して生じるため、鋼板表面へ効率良く導電性高分子皮膜を形成させることが難しい。そこで、本発明では、前述のように、予め酸洗処理を施し素地鋼板表面を不働態化させておくことで、続く皮膜付与工程におけるFeの陽極溶解反応を抑制させる。
皮膜の主成分となる導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリパラフェニレンオキシド、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリセレノフェン及びこれらの誘導体があげられる。これらの中でも、ポリピロール、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェンは高い電気伝導度を有し、素地鋼板界面での不動態化能が高いことから、優れた防食能を示す。素地鋼板を陽極とした電解重合による皮膜付与は水溶液中で行うことが好ましいことから、水溶性が比較的高いポリピロール、ポリアニリン及びその誘導体のモノマーを用いることが好ましい。
導電性高分子モノマーとして、ハメット則の置換基定数σの値が所定の値(正もしくは負)である置換基が適切な位置に導入された置換ピロール(ピロール誘導体)または一置換アニリン(アニリン誘導体)を用いることで、電解重合時の電極活性を高め、重合された皮膜の耐遅れ破壊特性をさらに向上させることができる。
置換基定数σは置換基の電子効果に依存した固有の値であり、置換基の種類やオルト、メタ、パラといった置換様式によっても異なる。置換基定数σと置換基導入による芳香族化合物の活性化自由エネルギー変化ΔΔGは、ΔΔG=−2.3RTρσ(ρは反応の性質に依存する定数)の直線的関係で結ばれることが経験的に知られており、σが正ならば芳香族の共役系に対して電子吸引性、負ならば電子供与性を示す。したがって、適切な置換基修飾の導入により電解重合時のモノマー及び重合後の皮膜における電気化学特性を向上させることが可能である。
一置換ピロールにおいては、5員環の1−位にハメット則の置換基定数(σ値)が負である置換基(電子供与性基)、または、3−位にハメット則のσ値が正である置換基(電子求引性基)を有している場合に、無置換の場合に比べ電極活性がより高くなる。さらに、重合後の皮膜における酸化-還元電位もより貴になることで鋼板の陽極反応がさらに抑制され鋼中への水素侵入量が低減されるため、耐遅れ破壊特性が向上する。
一置換アニリンにおいては、6員環のオルト位にハメット則のσ値が負である置換基(電子供与性基)を導入することで上記と同様の効果が得られる。
一方、上記置換基がかさ高く立体障害が大きい場合、重合時のモノマー及び重合された皮膜の構造変化の自由度が低下し、上述したような電気化学特性の向上が小さい場合がある。したがって、電気供与性、電子求引性によらず、メチル基、エチル基、アセチル基といった立体的に小さい置換基がより好ましい。
以上より、本発明において用いる導電性高分子モノマーとしては、5員環の1−位にハメット則の置換基定数(σ値)が負である置換基、または、3−位にハメット則のσ値が正である置換基一置換ピロール、または、6員環のオルト位にハメット則のσ値が負である置換基を有する一置換アニリンであることが好ましい。さらに好ましくは、5員環の1−位にメチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基のいずれか、または3−位にアセチル基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基のいずれかを有する一置換ピロール、または、6員環のオルト位にメチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基のいずれかを有する一置換アニリンである。
次に、本発明における導電性高分子皮膜に含まれるアニオンについて説明する。導電性高分子は、ドーパントのない状態では半導体であり、高い導電性を発現するためには、ドーパント添加により部分的に酸化状態とし、正孔を生成させることが必要である。そのため、本発明では、素地鋼板を陽極とした上記電解重合による皮膜付与を行う場合は、浴中にドーパントとして作用するアニオン原料となる電解質を含むこととする。ドーパントとしては、例えば、ハロゲン化物イオンやオキソ酸イオン、ルイス酸イオンなどを用いることができる。皮膜付与工程では、導電性高分子モノマー溶液中に上記のようなアニオンからなる塩を電解質として含ませることで、ドープされた状態の導電性高分子皮膜を析出させることができる。このような塩の具体例としては、NaCl、KCl、NHCl、NaBr、KBr、NHBr、NaI、KI、NHI等のハロゲン化物塩、MoCl、BF、BCl、PF 等の金属ハロゲン化物塩、NaSO、KSO4、NaNO、Na(CHCOO)、KK(CHCOO)等のオキソ酸塩、HMo24、HMo26、HPW1240等のポリオキソ金属酸などが挙げられる。
プレめっき工程
酸洗処理工程後、皮膜付与工程前に、鋼板に対し、Ni、Cu、Snの少なくとも一つをめっきするプレめっき工程を有することが好ましい。酸洗後の素地鋼板表面は所定のRaに調整され、さらに不働態化された状態にあるが、酸洗処理工程前の素地鋼板表面の不均一性により局所的に不働態化されていない部分が生じる可能性がある。このような不働態化されない部分では、後の皮膜付与工程においてFeの陽極溶解反応が優先的に生じ、導電性高分子皮膜が形成されず皮膜欠陥の原因となる可能性がある。このような皮膜欠陥発生を抑制する目的で、酸洗処理後、皮膜付与工程前の素地鋼板に対し、必要に応じてFeよりも貴な標準酸化還元電位をもつNi、Cu、Snの少なくとも一つをめっき(プレめっき)処理を施すことが好ましい。このプレめっき処理では、酸洗処理工程後、素地鋼板の局所的に不働態化されていない部分にFeよりも貴な酸化還元電位をもつ金属めっき層を優先的に形成することができる。これにより、皮膜付与工程においてFeの陽極溶解反応がより生じにくくなるため、皮膜欠陥発生がより一層抑制される。
プレめっき処理に用いる金属は、Feよりも貴な酸化還元電位をもつことが必要であり、Ni、Cu、Snを好適に用いることができる。この他にFeよりも貴な電位を持つ金属として、Ag、Pt、Au等の金属が挙げられるが、めっき成分として用いる際のコスト増が著しいことから好ましくない。
プレめっき処理の方法としては、電解めっき法があげられる。Ni、CuおよびSnはいずれもFeよりも貴な酸化還元電位をもつ金属であることから、無電解めっき法を用いることもできる。例えば、二価Snイオン30g/L、フェノールスルホン酸5g/L(硫酸換算)、硫酸60g/Lの組成からなる溶液中へ素地鋼板を浸漬させることで、浸漬時間に応じた付着量のSnめっきを形成させることができる。また、素地鋼板を陰極として電解することにより、より高効率でめっき層を形成させることもできる。
以上により、本発明の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板が得られる。本発明の破壊特性に優れた高強度鋼板は、鋼板の少なくとも片面に、好適にはドーパントアニオンを有し、導電性高分子を主成分とする皮膜を有し、皮膜剥離後の算術平均粗さRaが0.5以上5.0μm以下である。皮膜の膜厚が0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。また、皮膜が{皮膜の膜厚(μm)}>{皮膜剥離後の鋼板の算術平均粗さRa(μm)}を満たすことが好ましい。また、鋼板は、NiまたはCuまたはSnを付着量10mg/m以上2000mg/m以下で有していることが好ましい。
鋼板の引張強度(TS)は1180MPa以上とする。前述した通り、TSが1180MPa未満の鋼板では、本質的に遅れ破壊が生じにくく、本発明の効果が得にくく、コスト増のみを生じ経済的不利となる。したがって、本発明で用いる鋼板はTS1180MPa以上とする。
皮膜剥離後のRaは0.5μm以上5.0μm以下である。前述したように、本発明では素地鋼板表面に微細な凹凸を付与することによって皮膜(導電性高分子皮膜)の密着性を向上させている。皮膜剥離後の算術平均粗さRaが0.5μm未満である場合、皮膜との密着性が十分でなく、加工時に皮膜の剥離が生じやすく、本発明の目的である耐遅れ破壊特性が十分に得られない可能性がある。また、素地鋼板のRaが5.0μmを超える場合、更なる密着性向上が得られないだけでなく、皮膜を剥離しない状態のRaも大きくなり、プレス加工時に金型が損傷を受けやすくなる可能性がある。よって、皮膜剥離後のRaは0.5μm以上5.0μm以下とする。好ましくは、1.0μm以上2.0μm以下である。Raを測定するにあたって、皮膜の剥離方法は特に限定されないが、例えば、ポリアニリンを主成分とする皮膜の場合、加熱したトルエン中に溶解させる方法を用いることができる。
皮膜の主成分である導電性高分子は、単位構造として、一置換ピロールまたは一置換アニリンを有し、一置換ピロールの場合は、5員環の1−位にハメット則の置換基定数(σ値)が負である置換基、または、3−位にハメット則のσ値が正である置換基を有し、一置換アニリンの場合は、6員環のオルト位にハメット則のσ値が負である置換基を有することが好ましい。上述の通り、ピロールの場合は1−位に電子供与性基(σが負)、または3−位に電子求引性基(σが正)、アニリンの場合はオルト位に電子供与性基(σが負)を有している場合、無置換に比べ、皮膜付与後の電位がさらに貴になり、耐遅れ破壊特性が向上する。この効果は置換基が皮膜の構造変化に及ぼす立体障害が小さいほど顕著なことから、電子供与性基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基のいずれか、電子求引性基としてはアセチル基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基のいずれかであることがより好ましい。
皮膜の膜厚は0.5μm以上20μm以下が好ましい。なお、本発明では、皮膜の板厚方向断面において、任意の方法で観察された10視野において測定される膜厚の平均値をもって、膜厚と定義する。皮膜の観察方法としては、皮膜表面と素地鋼板界面を認識可能な像が得られるものであれば、特に限定されないが、膜厚範囲である0.5〜20μmスケールの観察を考えると、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いることが好ましい。膜厚が0.5μm未満では、素地鋼板表面を均一に被覆することが難しく、加工部における皮膜の損傷や剥離が大きくなり、本発明の目的である耐遅れ破壊特性が十分に得られない場合がある。一方、膜厚20μmを超えて厚膜化しても、更なる耐遅れ破壊特性向上が得られず、コスト増による経済的不利となるため好ましくない。よって、皮膜の膜厚は0.5μm以上20μm以下とする。好ましくは1.0μm以上10.0μm以下である。
皮膜が{皮膜の膜厚(μm)}>{皮膜剥離後の鋼板の算術平均粗さRa(μm)}を満たすことが好ましい。前述した密着性向上効果は、皮膜厚(μm)が素地鋼板の算術平均粗さRa(μm)より大きい場合に顕著である。
鋼板は、NiまたはCuまたはSnを付着量10mg/m以上2000mg/m以下で有していることが好ましい。皮膜と素地鋼板の界面においてNi、Cu、Snを有していることが好ましい。皮膜と素地鋼板の界面においてNi、Cu、Snのいずれかを有していることにより酸洗処理工程で生じた不働態皮膜の微小欠陥部位を被覆保護でき、皮膜付与後も表面電位の貴化により腐食による水素発生量が減少する為、耐遅れ破壊特性がさらに向上する。このような効果を得るためには10mg/m以上必要である。一方、2000mg/m超えの付着量ではさらなる効果が得られずコスト増のみ生じることから、付着量は10mg/m以上2000mg/m以下、さらに好ましくは50mg/m以上1000mg/m以下である。
以下、本発明を、実施例に基いて具体的に説明する。
C:0.191%、Si:0.4%、Mn:1.56%、P:0.011%、S:0.001%、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有し、TS:1470MPa、板厚:1.6mmの冷延鋼板を素地鋼板として使用し、導電性高分子皮膜を陽極電解により形成させた。ただし、使用可能な素地鋼板が本実施例における成分及び板厚に限定されるわけではない。
素地鋼板表面をトルエン-エタノールの混合液で超音波脱脂した後、浴温30℃の14質量%硝酸溶液中に上記素地鋼板を240秒浸漬させた場合(酸洗処理有り)と浸漬させない場合(酸洗処理なし)のそれぞれについて、ピロール0.5mol/L、硫酸ナトリウム0.1mol/Lの組成からなる水溶液中において、+15mA/cmの電流密度で陽極電解を行った。次いで、得られた鋼板の皮膜の膜厚を以下のようにして求めた。15mm×18mmに切り出した試験片を樹脂に埋め込み、機械研磨を行い断面観察用試験片とし、走査型電子顕微鏡SEMを用いて異なる位置から10視野を観察し、各視野において測定された皮膜の膜厚を平均値した値を皮膜の膜厚(μm)として用いた。
上記により得られた皮膜の膜厚と通電時間から、酸洗処理有りの場合と酸洗処理なしの場合の皮膜形成速度を比較した。結果を表1及び図1に示す。
Figure 2018044240
表1及び図1より、酸洗処理工程における素地鋼板の不働態化処理が後の皮膜付与工程における皮膜形成の高効率化に有効であることがわかる。
実施例1に示す素地鋼板を供試材として用いた。素地鋼板表面をトルエン-エタノールの混合液で超音波脱脂した後、表2に示す酸化性溶液中に0〜300秒浸漬させた。次いで、一部の素地鋼板に対しNi、Cu、Snのいずれかのプレめっき処理を施した。Niめっきには硫酸Ni浴、Cuめっきにはピロリン酸銅浴、Snめっきにはフェノールスルホン酸浴を用いた。その後、表2に示す電解質およびモノマーをそれぞれ濃度が0.1mol/Lおよび0.5mol/Lとなるよう溶解させた水溶液中において、素地鋼板を陽極、ステンレス鋼板を陰極として+15mA/cmの定電流電解を行うことにより、発明例及び比較例の鋼板を得た。得られた鋼板の皮膜の膜厚は実施例1同様、SEMを用いて10視野から測定された皮膜の膜厚の平均値を用いた。また、プレめっきの付着量はNi、Cu、Snいずれの場合も、皮膜を水酸化カリウムの2−プロパノール熱溶液中に溶解させ、ICP質量分析により求めた。
以上のようにして得られた各鋼板について、皮膜の密着性と耐遅れ破壊特性を以下の方法にて評価した。算術平均粗さRaは、JIS B 0601に準拠し、触針式表面粗さ計を用いて測定した。なお、皮膜を形成しない鋼板(比較例1、2、3)と酸化性溶液へ浸漬しない鋼板(比較例4、5)についても同様の特性評価を行った。
(1)密着性
得られた鋼板をそれぞれ幅35mm×長さ100mmにせん断し、幅が30mmになるまで研削加工を施し、試験片を作製した。この試験片に対して、3点曲げ試験機を用いて曲げ加工を施した。この曲げ加工では、曲げの曲率を5Rとした。曲げ加工後の曲げ内側部分の皮膜について、JISK5600に準拠する方法により、幅35mm×長さ20mmの面積で碁盤目状にカットし、テープ剥離試験を行い、剥離面積率を下式、
皮膜剥離面積率={(剥離後のテープに付着した皮膜面積)/(剥離前の皮膜面積:35mm×20mm)}×100
により求め、この皮膜剥離面積率について、以下の基準により加工性を評価した。この評価では○、△を良好とした。
〇:皮膜剥離面積率5%未満
△:皮膜剥離面積率5%以上、20%未満
×:皮膜剥離面積率20%以上
(2)耐遅れ破壊特性
上記と同様にして研削加工を施した試験片を作製し、図2に示す試験片を曲げ半径5.0mmでV字形状に曲げて、治具2〜5で拘束し、試験片形状を固定することで遅れ破壊評価用試験片を得た。このようにして作製した遅れ破壊評価用試験片に対し、図3に示すサイクルの乾湿繰り返し試験を行い、最大28サイクルまで実施した。毎サイクル開始時に、目視によって割れ発生の有無を調査することで、割れサイクル数を決定した。本試験では、各発明例および比較例の鋼板につき、3検体ずつ評価を実施し、その割れサイクル数の平均値を用い、以下の基準により耐遅れ破壊特性を評価した。なお、表2中に示しているが、皮膜を付与しない比較例の場合は10サイクルであったことから、15サイクル以上である○、△を良好とした。表1中の割れサイクル数29以上とは、本実施例において、試験期間中に割れが発生しなかったことを示す。
〇:20サイクル以上
△:15サイクル以上20サイクル未満
×:15サイクル未満
以上により得られた結果を、条件、皮膜の膜厚、皮膜剥離後の算術平均粗さRaと併せて表2に示す。
Figure 2018044240
本発明で規定する皮膜を有し、かつ皮膜剥離後の鋼板表面の算術平均粗さRaが本発明の範囲内である、発明例1〜25は、いずれも加工後の皮膜密着性に優れ、さらに耐遅れ破壊特性が良好な結果であった。
一方、酸化性溶液による素地鋼板への粗さ付与のみを行った、皮膜を有さない比較例2、3では、鋼板ままである比較例1と比べて耐遅れ破壊特性の有意差は認められなかった。また、酸洗処理を施すことなく、皮膜付与のみを行った比較例4、5では皮膜密着性及び耐遅れ破壊特性が劣っていた。
さらに、式{皮膜の膜厚(μm)}>{皮膜剥離後の鋼板の算術平均粗さRa(μm)}を満たす発明例1、2、5、7、10〜14及び16〜21では、皮膜密着性が特に優位な結果であった。
加えて、Ni、Cu、Snのいずれかのプレめっき処理を施した発明例4〜8及び14では、プレめっきを施しておらず他の条件が同等である発明例3及び13に比べ、耐遅れ破壊特性がさらに優位であった。
また、本発明において、導電性高分子モノマーとして、より好ましい置換様式を満たす一置換ピロールまたは一置換アニリンを用いた発明例22〜25は、他の条件がほぼ同等で無置換の導電性高分子モノマーを用いた場合に比べ、耐遅れ破壊特性がさらに優位であった。
本発明の高強度鋼板は、プレス成形,曲げ加工等による成形後も優れた耐遅れ破壊特性が維持されるため、自動車、建材用の強度部材に好適である。

Claims (12)

  1. 引張強度が1180MPa以上を有する鋼板に対し、酸洗後の鋼板表面の算術平均粗さRaが0.5μm以上5.0μm以下となる条件で、鋼板に対し酸洗を施す酸洗処理工程と、
    導電性高分子及びアニオンからなる皮膜を酸洗処理後の鋼板表面に形成する皮膜付与工程とを有することを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  2. 前記皮膜付与工程は、導電性高分子モノマー及び電解質を溶解させた浴中において、鋼板を陽極として電気分解することを特徴とする請求項1に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  3. 前記導電性高分子モノマーは、一置換ピロールまたは一置換アニリンであり、
    前記一置換ピロールは、5員環の1−位にハメット則の置換基定数(σ値)が負である置換基、または、3−位にハメット則のσ値が正である置換基を有し、
    前記一置換アニリンは、6員環のオルト位にハメット則のσ値が負である置換基を有することを特徴とする請求項2に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  4. 前記導電性高分子モノマーは、一置換ピロールまたは一置換アニリンであり、
    前記一置換ピロールは、5員環の1−位にメチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基のいずれか、または、3−位にアセチル基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基のいずれかを有し、
    前記一置換アニリンは、6員環のオルト位にメチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基のいずれかを有する
    ことを特徴とする請求項2または3に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  5. 前記酸洗処理工程における酸洗浴は、硝酸および/または硝弗酸からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  6. 前記酸洗処理工程後、前記皮膜付与工程前に、鋼板に対し、Ni、Cu、Snの少なくとも一つをめっきするプレめっき工程を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  7. 引張強度が1180MPa以上の鋼板であって、少なくとも片面に、導電性高分子及びアニオンからなる皮膜を有し、皮膜剥離後の算術平均粗さRaが0.5μm以上5.0μm以下であることを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
  8. 前記導電性高分子は、単位構造として、一置換ピロールまたは一置換アニリンを有し、前記一置換ピロールは、5員環の1−位にハメット則の置換基定数(σ値)が負である置換基、または、3−位にハメット則のσ値が正である置換基を有し、
    前記一置換アニリンは、6員環のオルト位にハメット則のσ値が負である置換基を有することを特徴とする請求項7に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
  9. 前記導電性高分子は、単位構造として、一置換ピロールまたは一置換アニリンを有し、前記一置換ピロールは、5員環の1−位にメチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基のいずれか、または、3−位にアセチル基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基のいずれかを有し、
    前記一置換アニリンは、6員環のオルト位にメチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基のいずれかを有する
    ことを特徴とする請求項7または8に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
  10. 前記皮膜の膜厚が0.5μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
  11. 前記皮膜が下式を満たすことを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
    {皮膜の膜厚(μm)}>{皮膜剥離後の鋼板の算術平均粗さRa(μm)}
  12. 前記鋼板は、NiまたはCuまたはSnを付着量10mg/m以上2000mg/m以下で有していることを特徴とする請求項7〜11のいずれか一項に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
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