JP2013127093A - リン酸塩処理性に優れた高強度鋼板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Si含有量の高い場合でも、優れたリン酸塩処理性の得られる高強度鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】焼鈍後の鋼板表面を、非酸化性の酸を用いた酸洗により、0.1g/m以上除去することを特徴とするリン酸塩処理性に優れた高強度鋼板の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車用鋼板に最適なリン酸塩処理性に優れた高強度鋼板、特にSi含有量の高い高強度鋼板の製造方法に関する。
近年、地球環境の保全という観点から、自動車の燃費改善が求められている。また、衝突時における乗員保護の観点から、自動車車体の安全性の向上も要求されている。そのため、自動車車体の軽量化および強化を目的として、自動車部品への高強度鋼板の適用が積極的に進められている。
一方、自動車用部品として用いられる鋼板は、プレス成形後、塗装下地処理としてリン酸塩処理を施されるのが一般的である。しかし、高強度鋼板では、強化元素として安価なSiが使用される場合が多く、軟質鋼板と比較してリン酸塩処理性に劣ることが大きな課題の一つとなっている。
一般の軟質鋼板においても、連続焼鈍時の冷却を水冷や気水冷却で行った場合などにリン酸塩処理性が悪化することが知られており、軟質鋼板のリン酸塩処理性向上技術に関しては、以下に挙げるように多くの検討がなされている。
特許文献1〜10には、鋼板表面にFe以外の金属元素、例えば、Ni、Co、Ti、Mn、Cu、Mo、W等を付着させる方法が、特許文献11には、鋼板表面にFe−Pめっきを施す方法が、特許文献12には有機酸、無機酸あるいはそれらの塩を含有した冷却剤により鋼板を冷却する方法が、特許文献13には連続焼鈍時の冷却終了後に、鋼板にホウ酸水溶液を接触させる方法が開示されている。
特開昭58−55535号公報 特開昭56−116883号公報 特開昭58−66666号公報 特開昭59−159987号公報 特開昭61−149492号公報 特開昭61−23794号公報 特開平3−75382号公報 特開平3−86302号公報 特開平3−126879号公報 特開平7−278843号公報 特開昭61−136694号公報 特開平1−139728号公報 特開平2−270969号公報。
しかしながら、上記の方法は、いずれもSi含有量の低い一般の軟質鋼板においてリン酸塩処理性を向上させるには効果的であるが、Si含有量の高い高強度鋼板に対しては十分に効果的ではなかった。
本発明は、Si含有量の高い場合でも、優れたリン酸塩処理性の得られる高強度鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
従来から、Si含有量の高い高強度鋼板のリン酸塩処理性が劣るのは、焼鈍時に鋼板表面に生成されるSi系酸化物によると考えられている。実際、本発明者らは、Si含有量の高い高強度鋼板を用い、500Vという低加速電圧で、リン酸塩処理前後の鋼板表面を、同一視野でSEM観察したところ、Si系酸化物の存在が、リン酸塩結晶の生成を阻害し、リン酸塩処理性を劣化させていることを実証できた。そこで、こうしたSi系酸化物を効果的に除去する方法について検討したところ、硝酸、もしくは塩酸、もしくは硝酸と塩酸を混合した酸、もしくはフッ酸、もしくはフッ酸と他の酸を混合した酸により酸洗することが効果的であることを見出した。
なお、本発明の鋼板のSi含有量としては、0.05質量%から6質量%の範囲が対象となる。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
[1]焼鈍後の鋼板表面を、非酸化性の酸を用いた酸洗により、0.1g/m以上除去することを特徴とするリン酸塩処理性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[2]焼鈍後の鋼板表面を、酸化性の酸を用いた酸洗により、0.1g/m以上除去した後、非酸化性の酸で酸洗することを特徴とするリン酸塩処理性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[3]請求項1または2に記載の酸洗処理を行った後、鋼板表面にNi、Ni−P、ZnおよびZn−Oの何れかをめっきすることを特徴とするリン酸塩処理性に優れた高強度鋼板の製造方法。
本発明により、Si含有量の高い場合でも、優れたリン酸塩処理性の得られる高強度鋼板を製造できるようになった。また、本発明は、安価なSiを使用できるので、高強度鋼板の低コスト化にとっても極めて有益である。
上述したように、本発明者らは、Si含有量の高い高強度鋼板のリン酸塩処理性が劣るのが、焼鈍時に鋼板表面に生成されるSi系酸化物によることを実証し、フッ酸などの非酸化性の酸で酸洗することにより、このSi系酸化物を効果的に除去できるとともに、リン酸塩処理性に優れた鋼板を得られることを見出した。以下にその詳細について説明する。
鋼板表面に生成されるSi系酸化物は、硝酸などの酸化性の酸でも除去できるが、鋼板を激しくエッチングするため、鋼板表面を荒らし、表面外観を著しく損なう。またSi酸化物を除去できても、このような表面のリン酸塩処理性は良好ではない。
一方、本発明であるフッ酸などの非酸化性の酸による酸洗では、鋼板を著しくエッチングすることなく、Si系酸化物を除去できる。酸の濃度、酸洗温度、酸洗時間などは、特に限定されないが、例えば、純水4:フッ酸(50質量%)1の混合液で酸洗した場合、Siの含有されたほとんどの高強度鋼板に対し、室温で10s程度の酸洗により、Si系酸化物を完全に除去することができた。
なお、非酸化性の酸としては、フッ酸以外に塩酸、希硫酸も使用することができる。
なお、非酸化性の酸は有機物を除去する効果に劣るため、有機物系の汚れによるリン酸塩処理性の劣化が問題になる場合は、非酸化性の酸による酸洗に先立って、濃硫酸、硝酸などの酸化性の酸により軽酸洗する必要がある。または、非酸化性の酸に、適量の酸化性の酸を混合した混酸で酸洗することもできる。混合する酸の濃度は、特に規定されないが、例えばフッ酸水溶液に50g/リットルの濃度で塩酸、硫酸、硝酸などの酸を混合すればよい。
Si含有量の高い高強度鋼板によっては、フッ酸やフッ酸と他の酸が混合された酸で酸洗すると、リン酸塩結晶生成の核となる鋼板表面の析出物や不純物なども一緒に除去され、リン酸塩結晶が粗大化して、鋼板表面で均一なリン酸塩処理性が得られなくなる場合がある。このような場合は、フッ酸またはフッ酸と他の酸を混合した酸により酸洗した後、Ni、Ni−P、ZnおよびZn−Oの何れかをめっきするとリン酸塩結晶の粗大化を防止することができる。
なお、酸洗により0.1g/m以上除去すれば、鋼板表面のSi酸化物は十分除去できる。
製鉄所で、直火加熱タイプの連続焼鈍により製造された表1に示す成分の冷延鋼板A〜Cを、硫酸、硝酸、もしくはフッ酸を用いて酸洗した。その後、リン酸塩処理を行い、表2に示す試料No.1〜21を作製した。酸洗には純水で希釈した酸を用い、それぞれの濃度は、硫酸:125g/リットル、硝酸:165g/リットル、フッ酸:純水4:フッ酸(50質量%)1である。酸洗は0.5s〜10s実施し、酸洗時間により酸洗減量を調節した。酸洗減量を、処理前後の鋼板重量から算出した。リン酸塩処理は、日本ペイント社製サーフダイン2800HMシステムを用いて、本システム指示の建浴および処理条件に従って実施した。なお、脱脂時間はスプレー120s、水洗は40s、表面調整は浸漬30s、化成処理は浸漬120℃で行った。ここで、化成処理液の全酸度は25.1、遊離酸度は0.9、トナー値は3.0、浴温は43℃とした。
リン酸塩処理性については、目視観察および走査型電子顕微鏡(以降、SEMと呼ぶ)観察により次のように評価した。
目視評価では、均一な外観であるものを○、不均一な外観であるものを×とした。SEM評価では、微細なリン酸塩結晶が下地鋼板を緻密に被覆しているものを○、10μm以上の粒径のリン酸塩結晶が存在し、若干のスケ(下地鋼板の認められる部位)があるものを△、スケが顕著であるものを×とした。
目視評価:○およびSEM評価:○の場合をリン酸塩処理性が良好であるとした。
表2に結果を示す。本発明例においては、目視評価においても、SEM評価においても、良好なリン酸塩処理性を示すことがわかる。
なお、オールラジアントチューブタイプの連続焼鈍で製造した鋼板A〜Cを、表2に示す発明例4〜6と同一条件で製造して、上述のようなリン酸塩処理性を調査したところ、フッ酸で酸洗してもSEM評価が△であった。この場合、酸洗後に付着量20mg/mのNiめっき、Ni−PめっきやZn−Oめっきを施すことによりSEM評価を○にすることができた。
Figure 2013127093
Figure 2013127093

Claims (3)

  1. 焼鈍後の鋼板表面を、非酸化性の酸を用いた酸洗により、0.1g/m以上除去することを特徴とするリン酸塩処理性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  2. 焼鈍後の鋼板表面を、酸化性の酸を用いた酸洗により、0.1g/m以上除去した後、非酸化性の酸で酸洗することを特徴とするリン酸塩処理性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の酸洗処理を行った後、鋼板表面にNi、Ni−P、ZnおよびZn−Oの何れかをめっきすることを特徴とするリン酸塩処理性に優れた高強度鋼板の製造方法。
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