JP2018044146A - ビニル・シス−ポリブタジエンゴム - Google Patents

ビニル・シス−ポリブタジエンゴム Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、カーボンブラック増加や繊維、樹脂の配合をせずとも、加工性を損なうことなく、引張応力を向上させることが出来るゴムを提供することを目的とする。【解決手段】 本発明は、シス−1,4−ポリブタジエンゴムとシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂で構成されるビニル・シス−ポリブタジエンゴムであって、ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの架橋体のAFM観察により得たヤング率マッピング像の解析の結果、シス−1,4−ポリブタジエンゴムを示す低ヤング率部とシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを示す高ヤング率部と補強されたゴムを示す中ヤング率部の主に3成分で構成されていて、中ヤング率部の面積率(φIF)が0.05以上0.50以下であることを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴムに関する。【選択図】なし

Description

本発明は、マトリックスであるシス−1,4−ポリブタジエンゴムと補強成分であるシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂からなるビニル・シス−ポリブタジエンゴムに関するものである。
ポリブタジエンは、いわゆるミクロ構造として、1,4−位での重合で生成した結合部分(1,4−構造)と1,2−位での重合で生成した結合部分(1,2−構造)とが分子鎖中に共存する。1,4−構造は、更にシス構造とトランス構造の二種に分けられる。一方、1,2−構造は、ビニル基を側鎖とする構造をとる。
1,3−ブタジエンを重合して得られたシス−1,4−構造含有率の高い、いわゆる高シス−1,4−ポリブタジエンは、タイヤその他のゴム製品の天然ゴムに代わる原料として大量に製造されており、シス−1,4−構造含有率を高めるための数多くの報告がある。高シス−1,4−ポリブタジエンから得られたゴム製品の物理的性質が、特に反撥弾性の良いこと、発熱量の小さいこと、耐摩耗性の優れていることなどの点で天然ゴムからのゴム製品よりも優れていることが、高シス−1,4−ポリブタジエンの多量に使用されている理由の一つである。しかしながら、高シス−1,4−ポリブタジエンは得られたゴム製品の引張、引裂強度および屈曲亀裂特性に劣るという欠点を有している。
特にタイヤのサイドウォールやビードに配置するゴム部材には、高強度のゴムが使用される。強度を向上させる方法としては、カーボンブラックの配合量を多くしたゴム組成物、ノボラック型フェノール樹脂を配合したゴム組成物(特許文献1、2)、アラミド短繊維を配合したゴム組成物(特許文献3)ナイロン短繊維とオレフィン系樹脂を配合したゴム組成物(特許文献4)、セルロースのような植物繊維を配合したゴム組成物(特許文献5、6)などの使用が知られている。
しかし、カーボンブラックの増加や樹脂、繊維等を配合する事で、それぞれ繰返し変形時の発熱が大きくなり、耐久性・耐疲労性が低下する場合があるとともに、加工性が悪化するといった問題もあった。また、繊維を使用する場合、高強度を引き出すために、繊維をマトリックス中に高分散させる技術が必要であった。
特公昭57−30856号公報 特開平5−98081号 特開2001−164052号公報 特開平7−315014号公報 特開2013−166914号公報 特開2013−35903号公報
本発明は、カーボンブラック増加や繊維、樹脂の配合をせずとも、加工性を損なうことなく、引張応力を向上させることが出来るゴムを提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、
シス−1,4−ポリブタジエンゴムからなるマトリックス中に、補強成分となるシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂が分散しており、架橋体を作製した時に補強されたゴム(界面相)が形成される、その課題を解決し得るビニル・シス−ポリブタジエンゴムが得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、
[1]
シス−1,4−ポリブタジエンゴムとシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂で構成されるビニル・シス−ポリブタジエンゴムであって、
ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの架橋体のAFM観察により得たヤング率マッピング像の解析の結果、シス−1,4−ポリブタジエンゴムを示す低ヤング率部とシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを示す高ヤング率部と補強されたゴムを示す中ヤング率部の主に3成分で構成されていて、中ヤング率部の面積率(φIF)が0.05以上0.50以下であることを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴム、
[2]
前記ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの架橋体のAFM観察により得たヤング率マッピング像の解析の結果、中ヤング率部面積率と高ヤング率部面積率(φSPB)の比(φIF/φSPB)が1.0以上3.0以下であることを特徴とする前記項1に記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム、
[3]
前記ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの架橋体のAFM観察により得たヤング率マッピング像の解析の結果、ヤング率ヒストグラムのメインピークの半値幅が0.5MPa以上5MPa以下であることを特徴とする前記項1又は前記項2に記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム、
[4]
前記ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの架橋体に200%歪みを与えて伸張させた状態でAFM観察して得たヤング率マッピング像の解析の結果、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを示す高ヤング率部が伸張方向に伸びた形状を示し、高ヤング率部のアスペクト比が未伸張状態と比較して1.5倍以上であることを特徴とする前記項1〜前記項3にいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム、
[5]
前記ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの架橋体のAFM観察により得たヤング率マッピング像の解析の結果、「低ヤング率部+中ヤング率部」の平均ヤング率と「低ヤング率部」の平均ヤング率の差が0.5MPa以上10MPa以下であることを特徴とする前記項1又は前記項2に記載するビニル・シス−ポリブタジエンゴム、
を提供するものである。
本発明によれば、加工性を損なうことなく、引張応力を向上させることが出来るビニル・シス−ポリブタジエンゴムを提供することができる。
実施例1のヤング率ヒストグラム。 実施例1のヤング率マッピング像。 実施例1の200%歪みを与えて観察したヤング率マッピング像。 実施例2のヤング率ヒストグラム。 実施例2のヤング率マッピング像。 実施例2の200%歪みを与えて観察したヤング率マッピング像。 比較例1のヤング率ヒストグラム。 比較例2のヤング率ヒストグラム。
本願発明のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法は、以下の工程を含んでいる。
(製造工程1)
まず、製造工程1は、1,3−ブタジエンをシス−1,4−重合する工程であり、1,3−ブタジエンと炭化水素を主成分とする不活性有機溶媒に溶解させた混合溶液を調製し、当該混合溶液に水、有機アルミニウム化合物及び可溶性コバルト化合物からなる触媒を添加して、1,3−ブタジエンをシス−1,4−重合する。
使用する炭化水素を主成分とする不活性有機溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、ブタン、ヘプタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、上記のオレフィン化合物やシス−2−ブテン、トランス−2−ブテン等のオレフィン系炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン等の炭化水素系溶媒、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。1,3−ブタジエンモノマーそのものを重合溶媒として用いてもよい。
中でも、トルエン、シクロヘキサン、あるいは、シス−2−ブテンとトランス−2−ブテンとの混合物などが好適に用いられる。
次に得られた混合溶液中の水の濃度を調節する。水は前記混合溶液中の有機アルミニウムクロライド1モル当たり、好ましくは0.1〜1.0モル、特に好ましくは0.2〜1.0モルの範囲である。この範囲以外では触媒活性が低下したり、シス−1,4−構造含有率が低下したり、分子量が異常に低下又は高くなったり、重合時のゲルの発生を抑制することができず、このため重合槽などへのゲルの付着が起り、更に連続重合時間を延ばすことができないので好ましくない。水の濃度を調節する方法は公知の方法が適用できる。
水の濃度を調節して得られた溶液には有機アルミニウム化合物を添加する。有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウムやジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムブロマイド、アルキルアルミニウムセスキクロライド、アルキルアルミニウムセスキブロマイド、アルキルアルミニウムジクロライド等である。
具体的な化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムを挙げることができる。
さらに、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのような有機アルミニウムハロゲン化合物、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキハイドライドのような水素化有機アルミニウム化合物も含まれる。これらの有機アルミニウム化合物は、二種類以上併用することができる。有機アルミニウム化合物の使用量の具体例としては、1,3−ブタジエンの1モル当たり0.1ミリモル以上、特に0.5〜50ミリモルが好ましい。
次いで、有機アルミニウム化合物を添加した混合媒体に可溶性コバルト化合物を添加してシス−1,4−重合する。可溶性コバルト化合物としては、炭化水素系溶媒を主成分とする不活性媒体又は液体1,3−ブタジエンに可溶なものであるか又は、均一に分散できる、例えばコバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナートなどコバルトのβ−ジケトン錯体、コバルトアセト酢酸エチルエステル錯体のようなコバルトのβ−ケト酸エステル錯体、コバルトオクトエート、コバルトナフテネート、コバルトベンゾエートなどの炭素数6以上の有機カルボン酸のコバルト塩、塩化コバルトピリジン錯体、塩化コバルトエチルアルコール錯体などのハロゲン化コバルト錯体などを挙げることができる。可溶性コバルト化合物の使用量は1,3−ブタジエンの1モル当たり0.001ミリモル以上、特に0.005ミリモル以上であることが好ましい。また可溶性コバルト化合物に対する有機アルミニウムクロライドのモル比(Al/Co)は10以上であり、特に50以上であることが好ましい。また、可溶性コバルト化合物以外にもニッケルの有機カルボン酸塩、ニッケルの有機錯塩、有機リチウム化合物、ネオジウムの有機カルボン酸塩、ネオジウムの有機錯塩を使用することも可能である。
シス−1,4−重合する温度は0℃を超える温度〜100℃、好ましくは10〜100℃、更に好ましくは20〜100℃までの温度範囲で1,3−ブタジエンをシス−1,4−重合する。重合時間(平均滞留時間)は10分〜2時間の範囲が好ましい。シス−1,4−重合後のポリマー濃度は5〜26重量%となるようにシス−1,4−重合を行うことが好ましい。重合槽は1槽、又は2槽以上の槽を連結して行われる。重合は重合槽(重合器)内にて溶液を攪拌混合して行う。重合に用いる重合槽としては高粘度液攪拌装置付きの重合槽、例えば特公昭40−2645号に記載された装置を用いることができる。
本発明のシス−1,4−重合時に公知の分子量調節剤、例えばシクロオクタジエン、アレン、メチルアレン(1,2−ブタジエン)などの非共役ジエン類、又はエチレン、プロピレン、ブテン−1などのα−オレフィン類を使用することができる。又重合時のゲルの生成を更に抑制するために公知のゲル化防止剤を使用することができる。シス−1,4−構造含有率が一般に90%以上、特に95%以上であることが好ましい。
製造工程1で得られるBRのムーニー粘度は15〜80、特に15〜50が好ましい。
(製造工程2)
次に、製造工程2は、製造工程1で得られた重合反応混合物中の1,3−ブタジエンを、1,2−重合する工程である。製造工程1で得られた重合体溶液中に二硫化炭素、一般式AlRで表せる有機アルミニウム化合物及び可溶性コバルト化合物からなる触媒を添加して、1,3−ブタジエンを1,2−重合する。その際に、製造工程1で得られた重合体溶液中に1,3−ブタジエンを添加しても添加しなくてもよい。一般式AlRで表せる有機アルミニウム化合物としてはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリフェニルアルミニウムなどを好適に挙げることができる。有機アルミニウム化合物は1,3−ブタジエン1モル当たり0.1ミリモル以上、特に0.5〜50ミリモル以上である。二硫化炭素は特に限定されないが水を含まないものであることが好ましい。二硫化炭素の濃度は20ミリモル/L以下、特に好ましくは0.01〜10ミリモル/Lである。二硫化炭素の代替として公知のイソチオシアン酸フェニルやキサントゲン酸化合物を使用してもよい。また、二硫化炭素は製造工程1で予め加えておいても良い。
1,2−重合する温度は−5〜100℃が好ましく、特に−5〜80℃未満が好ましい。1,2−重合する際の重合系には前記のシス重合液100重量部当たり1〜50重量部,好ましくは1〜20重量部の1,3−ブタジエンを添加することで1,2−重合時のシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンの収量を増大させることができる。重合時間(平均滞留時間)は10分〜2時間の範囲が好ましい。1,2−重合後のポリマー濃度は9〜29重量%となるように1,2−重合を行うことが好ましい。重合槽は1槽、又は2槽以上の槽を連結して行われる。重合は重合槽(重合器)内にて重合溶液を攪拌混合して行う。1,2−重合に用いる重合槽としては1,2−重合中に更に高粘度となり、ポリマーが付着しやすいので高粘度液攪拌装置付きの重合槽、例えば特公昭40−2645号公報に記載された装置を用いることができる。
重合反応が所定の重合率に達した後、常法に従って公知の老化防止剤を添加することができる。老化防止剤の代表としてはフェノール系の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、リン系のトリノニルフェニルフォスファイト(TNP)、硫黄系の4.6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(TPL)などが挙げられる。単独でも2種以上組み合わせて用いてもよく、老化防止剤の添加はビニル・シス−ポリブタジエンゴム100重量部に対して0.001〜5重量部である。次に重合停止剤を重合系に加えて停止する。例えば重合反応終了後、重合停止槽に供給し、この重合溶液にメタノール、エタノールなどのアルコール、水などの極性溶媒を大量に投入する方法、塩酸、硫酸などの無機酸、酢酸、安息香酸などの有機酸、塩化水素ガスを重合溶液に導入する方法などの、それ自体公知の方法である。次いで通常の方法に従い生成したビニル・シス−ポリブタジエンゴムを分離、洗浄、乾燥する。
このようにして得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴムのシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂含有率を示す沸騰n−ヘキサン不溶分の割合(HI)は、5〜40重量%、さらに5〜25重量%のとき、ゴム組成物の硬度や引張応力を向上させ、加工性を担保することが出来るため好ましい。
本ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造工程としては、製造工程1、製造工程2の順番で行うことが好ましい。
本発明により得られるビニル・シス−ポリブタジエンゴムに配合剤を加えて混練したゴム組成物は、加硫すると引張応力が向上する。特に引張応力の向上が著しく、補強効果が大幅に改善される。また高剛性であるため、カーボンやシリカ等の補強材使用量の低減が容易になり、タイヤの軽量化による低燃費化が可能となる。
また、本発明により得られるビニル・シス−ポリブタジエンゴムに配合剤を加えて混練したゴム組成物は、従来のゴムを用い、硬度を合わせたゴム組成物と比較した時に、押出特性(押出量、寸法安定性)や、ロールミル収縮性、せん断特性(ムーニー粘度など)などに代表される加工性を改良することが出来る。
本発明により得られるビニル・シス−ポリブタジエンゴムと天然ゴム、合成ゴム若しくはこれらの任意の割合のブレンドゴムからなる群から選ばれたゴム100重量部に対して、ゴム補強剤を10〜100重量部を配合することにより、ゴム組成物を製造することもできる。
前記のブレンドゴムとしては、ハイシスポリブタジエンゴム、ローシスポリブタジエンゴム(BR)、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、乳化重合若しくは溶液重合スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
また、これらゴムの誘導体、例えば錫化合物で変性されたポリブタジエンゴムやエポキシ変性、シラン変性、マレイン酸変性された上記ゴムなども用いることができ、これらのゴムは単独でも、二種以上組み合わせて用いても良い。
前記のゴム補強剤としては、各種のカーボンブラック以外に、ホワイトカーボン、活性化炭酸カルシウム、超微粒子珪酸マグネシウム等の無機補強剤やシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ハイスチレン樹脂、フェノール樹脂、リグニン、変性メラミン樹脂、クマロンインデン樹脂及び石油樹脂等の有機補強剤があり、特に好ましくは、粒子径が90nm以下、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が70ml/100g以上のカーボンブラックで、例えば、FEF、FF、GPF、SAF、ISAF、SRF、HAF等が挙げられる。また、シリカとしては、乾式法による無水ケイ酸及び湿式法による含水ケイ酸や合成ケイ酸塩などが挙げられる。
本発明により得られるビニル・シス−ポリブタジエンゴムに配合剤を加えて混練したゴム組成物は、前記各成分を通常行われているバンバリー、オープンロール、ニーダー、二軸混練り機などを用いて混練りすることで得られる。混練温度は、当該ビニル・シス−ポリブタジエンゴムに含有されるシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂の融点より低い必要がある。このシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂の融点より高い温度で混練すると、ビニル・シス−ポリブタジエンゴム中の繊維状形態を持つシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂が溶けて球状の粒子等に変形してしまうから好ましくない。
本発明により得られるビニル・シス−ポリブタジエンゴムに配合剤を加えて混練した組成物には、必要に応じて、加硫剤、加硫助剤、老化防止剤、充填剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸など、通常ゴム業界で用いられる配合剤を混練してもよい。
本発明により得られるビニル・シス−ポリブタジエンゴムはタイヤ用ゴムとして有用であり、サイドウォール、または、トレッド、スティフナー、ビードフィラー、インナーライナー、カーカスなどに、その他、ホース、ベルトその他の各種工業用品等の剛性、機械的特性及び破壊特性が要求されるゴム用途に使用される。また、プラスチックスの改質剤として使用することもできる。
次に、本発明において、上記のように製造したビニル・シス−ポリブタジエンゴムの特徴を示すことになる構造解析方法を説明する。それは、構造解析に好適な架橋体を作製する評価工程1と、その架橋体をAFM観察により構造解析する評価工程2からなる。
(評価工程1)架橋体の作製
本発明において、ビニル・シス−ポリブタジエンゴムをAFM観察する際に、目的のゴムの架橋体を作製する必要がある。架橋体とは、ゴムに対して、架橋剤および通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを配合し、所望の温度、圧力で加熱加圧して架橋させたゴム組成物を指す。架橋体を作製することで、1,4−シスポリブタジエンゴムのみならず、1,4−シスポリブタジエンゴムとシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂の界面で共架橋されることで、補強されたゴム(界面相)が生成され、高強度が発現する。また、架橋体を作製することは、AFM観察のしやすさの観点からも必要な工程である。
用いる架橋剤としては、特に制限されないが、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄;一塩化硫黄、二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄;ジクミルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシドなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(AMBN)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(ADVN)、2,2’−アゾビス−4−アゾビスシアノバレリックアシッド(塩)(ACVA)などのアゾ系ラジカル開始剤;p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムなどのキノンジオキシム;トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、4,4’−メチレンビス−o−クロロアニリンなどの有機多価アミン化合物;メチロール基をもったアルキルフェノール樹脂;酸化マグネシウムなどの金属酸化物などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましい。
硫黄架橋剤の使用量は、状況に応じて適宜選定すればよいが、ゴム成分100質量部に対して、硫黄分として、0.1〜10質量部の範囲が好ましく、さらに0.1〜3質量部が好ましい。
本発明で使用できる加硫促進剤は、特に限定されるものではないが、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系、あるいは1,3−ジフェニルグアニジン等のグアニジン系の加硫促進剤等を挙げることができ、その配合量は、ゴム100質量部に対し、0.1〜5.0質量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜3.0質量部である。
更に、本発明のゴム組成物で使用できる老化防止剤としては、例えばN−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、ジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物等を挙げることができる。その使用量は、ゴム100質量部に対して、0.1〜6.0質量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜3.0質量部である。
架橋体作製時の架橋剤および各種薬品のゴムへの配合方法に関して、特に制限されないが、例えば、バンバリーミキサー、2軸ロール、インターナルミキサーなどの混練り機を用いて混練りすることにより調製することができる。
ゴムと架橋剤および各種薬品との配合時の混練温度は、0〜120℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。混練時間は、30秒〜30分が好ましく、1分〜10分がより好ましい。
上記方法で得られた配合物の加熱方法としては、特に制約されないが、得られた配合物をシート状とし、加熱プレスする方法が好ましい。加熱する際の温度は、通常120〜200℃であり、加熱プレスする時間は、通常1〜100分である。加熱プレスにより架橋が進行し、目的とする架橋体が得られる。
(評価工程2)AFM観察による構造評価
AFMは、走査型プローブ顕微鏡の一種であって、試料とプローブ(探針)間の原子間力を利用して、試料表面の情報を得る走査型プローブ顕微鏡であり、試料とカンチレバーに備えられたプローブとの距離を変えながら、プローブに働く力(カンチレバーのたわみ量)を測定して、試料表面の形状や弾性率など様々な物理化学的特性を評価することができる。
使用可能なAFMとして、BrukerAXS社製MultiMode8、日立ハイテクサイエンス社製E−sweep、アサイラムインスツルメンツ製MFP−3DAFMファミリー等が例示されるが、これらの機種に限定されるものではない。
AFM観察に使用する試料片の形状及び大きさは、AFMの試料台に設置可能なサイズのものであれば特に限定されない。架橋体の成形にはクライオミクロトーム、ナイフ、はさみ、カミソリ等が適宜使用される。特にクライオミクロトームを用いることは、最も平滑な表面を試料片上に成形することが出来ることため、AFM観察に好適である。
AFM観察において、AFM装置が備える適切な測定モードが使用される。AFMの代表的な測定モードとして、コンタクトモード、タッピングモード及びノンコンタクトモードが挙げられる。試料片の表面の微少領域の硬さが測定されるフォースモジュレーションモードや、試料片の表面における弾性率やヤング率の分布が測定可能なフォースボリュームモードが選択されてもよい。特に好ましい測定モードは、試料片の微小領域の力学的特性の差を画像化できるフォースボリュームモード、あるいは高速でフォースカーブを計測してその値から実際の触圧をフィードバックするピークフォースQNMモードである。フォースボリュームモードやピークフォースQNMモードでは、試料片の表面の微小領域毎に弾性率が測定されることによって、弾性率のマッピング像およびヒストグラムの分布曲線が得られる。本願明細書において、マッピング像を「ヤング率マッピング像」、ヒストグラムを、「ヤング率ヒストグラム」と称する。
複数の成分で構成される材料を観察した場合のヤング率ヒストグラムは、それに対応した複数の分布曲線の重なり合いで形成される。その場合、ヤング率ヒストグラムを複数のガウス関数によりフィッティングすることで、構成成分を分けることが出来る。ビニル・シス−ポリブタジエンゴムは、マトリックスであるシス−1,4−ポリブタジエンゴムと補強成分であるシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂、および補強されたゴム(界面相)からなる。ガウスフィッティングすることで、ヤング率ヒストグラムをシス−1,4−ポリブタジエンに対応する低ヤング率部、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂に対応する高ヤング率部、補強されたゴム(界面相)に対応する中ヤング率部に分けることが出来る。
低ヤング率部は、マトリックスであるシス−1,4−ポリブタジエンゴムであることから最も面積率の高い部分であるとともに、ヤング率ヒストグラムの中でメインピークをなし、最もシャープなピークである。ヤング率0〜10MPaの範囲に位置する。高ヤング率部は最も高ヤング率側の10〜1000MPaの範囲に位置するブロードなピークである。中ヤング率部は、低ヤング率部と高ヤング率部に挟まれた複数のブロードなピークから成る。
各成分のピークの面積率から、シス−1,4−ポリブタジエンゴム成分の割合(φBR)、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂の割合(φSPB)、補強されたゴムの割合(φIF)を求めることが出来る。
補強されたゴム(界面相)を示す中ヤング率部の量は、架橋体やゴム組成物の硬度や強度に寄与する。φIFが0.05以上あるとゴム組成物の硬度や強度を向上させることが出来る。また、φIFが0.50以下だと、加工性を担保することが出来、好ましい。
φSPBは、ビニル・シス−ポリブタジエンゴム中に含まれるシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂の含有率、沸騰n−ヘキサン不溶分の割合(HI)と対応する。
中ヤング率部面積率と高ヤング率部面積率の比(φIF/φSPB)は、マトリックスであるシス−1,4−ポリブタジエンゴムと、補強成分であるシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂との親和性を示し、φIF/φSPBが大きな値ほど補強されたゴム(界面相)を多く生成する性質を表す。ゴム組成物の硬度や引張応力を向上させ、加工性を担保出来る範囲としては、φIF/φSPBが0.5〜10.0が好ましく、1.0〜5.0がより好ましく、特に1.5〜3.0が好ましい。
また、ヤング率ヒストグラムのメインピークの半値幅が、大きいほどゴム組成物の硬度や引張応力を向上させることができる。ゴム組成物の硬度や引張応力を向上させ、加工性を担保出来る範囲としては、0.5MPa〜10MPaが好ましく、0.5MPa〜5MPaがより好ましい。
架橋体に、ある一定の歪みを加えた際に、ビニル・シス−ポリブタジエンゴム中の補強成分であるシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂を示す高ヤング率部が伸張方向に配向し、かつ伸びた形状を示す。シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂が変形する挙動は、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂とシス−1,4−ポリブタジエンゴムが、補強されたゴム(界面相)によって強固に結合されていることを示唆するものである。未伸張状態の高ヤング率部のアスペクト比に対して、歪みを印加した際の高ヤング率部のアスペクト比が、1.5倍以上あることがゴム組成物の引張応力を向上させる上で好ましい。
「低ヤング率部+中ヤング率部」の平均ヤング率と「低ヤング率部」の平均ヤング率の差を求めることで、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂によって補強されたゴムの補強性の度合いを表すことが出来る。ゴム組成物の硬度や引張応力を向上させ、加工性を担保出来る範囲として、「低ヤング率部+中ヤング率部」の平均ヤング率と「低ヤング率部」の平均ヤング率の差が0.5MPa〜50MPaが好ましく、0.5MPa以上10MPa以下であることがより好ましい。
以下に本発明に基づく実施例について具体的に記載する。
(1)AFMの測定条件
AFMによる測定は、走査型プローブ顕微鏡(NanoScopeV、BrukerA
XS社製)を用い、ピークフォースQNMモードで測定した。AFMのカンチレバーは、OMCL−TR800PSA(ばね定数公称値0.57N/m、オリンパス社製)を用いた。また、測定サイズは3×3μm、測定点数は1辺当たり256点で、全サイズの合計点数を65536点とした。ポアソン比は0.5と仮定し、全フォースカーブを解析することで、ヤング率を算出し、ヤング率マッピング像およびヤング率ヒストグラムを得た。ヤング率マッピング像において、低ヤング率部を灰色、中ヤング率部を白、高ヤング率部を黒で示した。また、伸張状態でのAFM観察は、200%歪みを与えた状態で試料を固定して実施した。高ヤング率部のアスペクト比は、複数個ある高ヤング率部の縦、横の長さを測定し、その平均の値から求めた。
(2)引張試験
引張応力(M100);JIS K6251に従い、架橋体の100%歪みにおける引張応力を測定した。数値が大きい程引張応力が高いことを示す。
(製造例1)ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの合成
ヘリカル羽根を備えチッソ置換を終えた1.9Lステンレス製オートクレーブに、1,3−ブタジエン、2−ブテン及びシクロヘキサンの重量比が39:24:37からなる混合液(FB)を1.0L導入した。撹拌スピードは500回転/分とした。水31mgを添加し、25℃で30分間保持した。次に二硫化炭素(CS)のシクロヘキサン溶液(0.25M)1.0ml、1,5−シクロオクタジエン(COD)2.1ml、及びジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)のシクロヘキサン溶液(2.0M)1.5mlを添加し、25℃で5分間反応させた。その後、溶液を45℃に昇温し、直ちにオクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(10.0mM)0.5mlを添加して、45℃で20分間シス−1,4−重合を行った。次に、トリエチルアルミニウム(TEA)のシクロヘキサン溶液(2.0M)1.95ml、オクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(0.1M)0.36mlを添加し、45℃で20分間1,2−重合を行った。反応停止は、「イルガノックス」(登録商標)1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を0.2wt%含有するn−ヘプタンとエタノールの1:1混合溶液を2.0ml、及びナフトキノンのエタノール溶液(0.2M)を2.0ml加えて行った。次にオートクレーブを氷水で冷やしながら放圧し、圧力が常圧に戻った後、重合物をバットに回収し、100℃で3時間真空乾燥し、ビニル・シス−ポリブタジエンゴムを得た。沸騰n−ヘキサン不溶分の割合(HI)は11.5%であった。
(製造例2)ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの合成
ヘリカル羽根を備えチッソ置換を終えた1.9Lステンレス製オートクレーブに、1,3−ブタジエン、2−ブテン及びシクロヘキサンの重量比が39:24:37からなる混合液(FB)を1.0L導入した。撹拌スピードは500回転/分とした。水31mgを添加し、25℃で30分間保持した。次に二硫化炭素(CS)のシクロヘキサン溶液(0.25M)1.0ml、1,5−シクロオクタジエン(COD)2.1ml、及びジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)のシクロヘキサン溶液(2.0M)1.5mlを添加し、25℃で5分間反応させた。その後、溶液を45℃に昇温し、直ちにオクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(10.0mM)0.5mlを添加して、45℃で20分間シス−1,4重合を行った。次に、トリエチルアルミニウム(TEA)のシクロヘキサン溶液(2.0M)1.95ml、オクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(0.1M)0.3mlを添加し、45℃で20分間1,2−重合を行った。反応停止は、「イルガノックス」(登録商標)1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を0.2wt%含有するn−ヘプタンとエタノールの1:1混合溶液を2.0ml、及びナフトキノンのエタノール溶液(0.2M)を2.0ml加えて行った。次にオートクレーブを氷水で冷やしながら放圧し、圧力が常圧に戻った後、重合物をバットに回収し、100℃で3時間真空乾燥し、ビニル・シス−ポリブタジエンゴムを得た。沸騰n−ヘキサン不溶分の割合(HI)は18.0%であった。
(製造例3)ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの合成
ヘリカル羽根を備えチッソ置換を終えた1.9Lステンレス製オートクレーブに、1,3−ブタジエンを0.45L、シクロヘキサンを0.55L導入した。撹拌スピードは500回転/分とした。水31mgを添加し、25℃で30分間保持した。次に1,5−シクロオクタジエン(COD)2.3ml、及びジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)のシクロヘキサン溶液(2.0M)1.5mlを添加し、25℃で5分間反応させた。その後、溶液を45℃に昇温し、直ちにオクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(10.0mM)0.4mlを添加して、45℃で20分間シス−1,4重合を行った。次に、トリエチルアルミニウム(TEA)のシクロヘキサン溶液(2.0M)2.0ml加え、溶液を60℃に昇温し、二硫化炭素(CS)のシクロヘキサン溶液(0.25M)1.0ml、オクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(10.0mM)1.0mlを添加し、60℃で20分間1,2−重合を行った。反応停止は、「イルガノックス」(登録商標)1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を0.2wt%含有するn−ヘプタンとエタノールの1:1混合溶液を2.0ml、及びナフトキノンのエタノール溶液(0.2M)を2.0ml加えて行った。次にオートクレーブを氷水で冷やしながら放圧し、圧力が常圧に戻った後、重合物をバットに回収し、100℃で3時間真空乾燥し、ビニル・シス−ポリブタジエンゴムを得た。沸騰n−ヘキサン不溶分の割合(HI)は9.9%であった。
(製造例4)ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの合成
ヘリカル羽根を備えチッソ置換を終えた1.9Lステンレス製オートクレーブに、1,3−ブタジエンを0.45L、シクロヘキサンを0.55L導入した。撹拌スピードは500回転/分とした。水31mgを添加し、25℃で30分間保持した。次に1,5−シクロオクタジエン(COD)2.3ml、及びジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)のシクロヘキサン溶液(2.0M)1.5mlを添加し、25℃で5分間反応させた。その後、溶液を45℃に昇温し、直ちにオクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(10.0mM)0.4mlを添加して、45℃で20分間シス−1,4重合を行った。次に、トリエチルアルミニウム(TEA)のシクロヘキサン溶液(2.0M)2.0ml加え、溶液を60℃に昇温し、二硫化炭素(CS)のシクロヘキサン溶液(0.25M)1.0ml、オクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(0.1M)0.3mlを添加し、60℃で20分間1,2−重合を行った。反応停止は、「イルガノックス」(登録商標)1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を0.2wt%含有するn−ヘプタンとエタノールの1:1混合溶液を2.0ml、及びナフトキノンのエタノール溶液(0.2M)を2.0ml加えて行った。次にオートクレーブを氷水で冷やしながら放圧し、圧力が常圧に戻った後、重合物をバットに回収し、100℃で3時間真空乾燥し、ビニル・シス−ポリブタジエンゴムを得た。沸騰n−ヘキサン不溶分の割合(HI)は14.5%であった。
(製造例5)ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの合成
ヘリカル羽根を備えチッソ置換を終えた1.9Lステンレス製オートクレーブに、1,3−ブタジエンを0.45L、シクロヘキサンを0.55L導入した。撹拌スピードは500回転/分とした。水31mgを添加し、25℃で30分間保持した。次に1,5−シクロオクタジエン(COD)2.3ml、及びジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)のシクロヘキサン溶液(2.0M)1.5mlを添加し、25℃で5分間反応させた。その後、溶液を45℃に昇温し、直ちにオクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(10.0mM)0.4mlを添加して、45℃で20分間シス−1,4重合を行った。次に、トリエチルアルミニウム(TEA)のシクロヘキサン溶液(2.0M)2.0ml加え、溶液を60℃に昇温し、二硫化炭素(CS)のシクロヘキサン溶液(0.25M)2.0ml、オクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(0.1M)0.8mlを添加し、60℃で25分間1,2−重合を行った。反応停止は、「イルガノックス」(登録商標)1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を0.2wt%含有するn−ヘプタンとエタノールの1:1混合溶液を2.0ml、及びナフトキノンのエタノール溶液(0.2M)を2.0ml加えて行った。次にオートクレーブを氷水で冷やしながら放圧し、圧力が常圧に戻った後、重合物をバットに回収し、100℃で3時間真空乾燥し、ビニル・シス−ポリブタジエンゴムを得た。沸騰n−ヘキサン不溶分の割合(HI)は22.2%であった。
(実施例1)
2軸ロールを用いて、製造例1で得たビニル・シス−ポリブタジエンゴム100部に対し、亜鉛華3部、ステアリン酸2部、老化防止剤としてN−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(商品名「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製)1部、硫黄1.5部、加硫促進剤としてN−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーNS」、大内新興化学工業社製)1部を添加し、50℃で5分間混練した。この混練物を160℃にて40分プレス加硫し、2mm厚シートの架橋体を作製した。2mm厚シートから試料片を切り出し、クライオミクロトームを用いて試料片の先端を切削することで、AFM観察用の平滑表面を作製した。この試料片をAFM内に設置して観察することで、ヤング率マッピング像およびヤング率ヒストグラムを取得した。結果を表1、図1および図2に示す。また200%歪みを与えた状態でAFM観察したヤング率マッピング像を図3に示す。200%歪みにおけるSPBのアスペクト比に対する未伸張のSPBのアスペクト比は2.5倍であった。
(実施例2)
製造例2で得たビニル・シス−ポリブタジエンゴムを用いた以外は、実施例1と同様に架橋体およびその試料片を作製し、AFM観察により、ヤング率マッピング像およびヤング率ヒストグラムを取得した。結果を表1、図4および図5に示す。また200%歪みを与えた状態でAFM観察したヤング率マッピング像を図6に示す。200%歪みにおけるSPBのアスペクト比に対する未伸張のSPBのアスペクト比は2.0倍であった。
(実施例3)
製造例3で得たビニル・シス−ポリブタジエンゴムを用いた以外は、実施例1と同様に架橋体およびその試料片を作製し、AFM観察により、ヤング率マッピング像およびヤング率ヒストグラムを取得した。結果を表1に示す。
(実施例4)
製造例4で得たビニル・シス−ポリブタジエンゴムを用いた以外は、実施例1と同様に架橋体およびその試料片を作製し、AFM観察により、ヤング率マッピング像およびヤング率ヒストグラムを取得した。結果を表1に示す。
(実施例5)
製造例5で得たビニル・シス−ポリブタジエンゴムを用いた以外は、実施例1と同様に架橋体およびその試料片を作製し、AFM観察により、ヤング率マッピング像およびヤング率ヒストグラムを取得した。結果を表1に示す。
(比較例1)
宇部興産(株)製ブタジエンゴム「UBEPOL BR14H」を用いた以外は、実施例1と同様に架橋体およびその試料片を作製し、AFM観察により、ヤング率ヒストグラムを取得した。結果を表1および図7に示す。
(比較例2)
JSR(株)製イソプレンゴム「IR2200」を用いた以外は、実施例1と同様に架橋体およびその試料片を作製し、AFM観察により、ヤング率ヒストグラムを取得した。結果を表1および図8に示す。
AFM観察の結果、HIとφSPBが近い値を示し、対応していることが分かる。またφIFが0.05〜0.50、φIF/φSPBが1.0〜3.0、メインピークの半値幅が0.5〜5.0の範囲内に入っており、(200%歪みにおけるSPBのアスペクト比)/(未伸張のSPBのアスペクト比)が1.5倍以上になっている。さらに「低ヤング率部+中ヤング率部」の平均ヤング率と「低ヤング率部」の平均ヤング率の差が0.5MPa以上10MPa以下の範囲であった。その結果、補強成分であるシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂およびそれによって補強されたゴム(界面相)を含有しない比較例1および比較例2に対して、ビニル・シス−ポリブタジエンゴムを使用した実施例1および実施例2は引張応力(M100)が向上した。

Claims (5)

  1. シス−1,4−ポリブタジエンゴムとシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂で構成されるビニル・シス−ポリブタジエンゴムであって、
    ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの架橋体のAFM観察により得たヤング率マッピング像の解析の結果、シス−1,4−ポリブタジエンゴムを示す低ヤング率部とシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを示す高ヤング率部と補強されたゴムを示す中ヤング率部の主に3成分で構成されていて、中ヤング率部の面積率(φIF)が0.05以上0.50以下であることを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
  2. 前記ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの架橋体のAFM観察により得たヤング率マッピング像の解析の結果、中ヤング率部面積率と高ヤング率部面積率(φSPB)の比(φIF/φSPB)が1.0以上3.0以下であることを特徴とする請求項1に記載するビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
  3. 前記ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの架橋体のAFM観察により得たヤング率マッピング像の解析の結果、ヤング率ヒストグラムのメインピークの半値幅が0.5MPa以上5MPa以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載するビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
  4. 前記ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの架橋体に200%歪みを与えて伸張させた状態でAFM観察して得たヤング率マッピング像の解析の結果、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを示す高ヤング率部が伸張方向に伸びた形状を示し、高ヤング率部のアスペクト比が未伸張状態と比較して1.5倍以上であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載するビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
  5. 前記ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの架橋体のAFM観察により得たヤング率マッピング像の解析の結果、「低ヤング率部+中ヤング率部」の平均ヤング率と「低ヤング率部」の平均ヤング率の差が0.5MPa以上10MPa以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載するビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
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