JP2018043507A - Ptp用多層シート、及びそれを用いたptp - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリ塩化ビニル系樹脂(A)層を基材とし、基材の少なくとも一方の面に、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層を積層してなるPTP用多層シートであって、前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層は、(B)−1層と(B)−2層の各1層を1セットとして、これを少なくとも1セット以上基材上に積層してなり、基材に最も近いセットに対する次に積層するセットの厚み比が0.3〜0.75の範囲であり、かつ、基材に最も近いセットの(B)−1層と(B)−2層の厚みが各々7〜20μmの範囲であることを特徴とするPTP用多層シート。
【選択図】図1
Description
上記のような最近の要求品質を全て満たすことが可能なシート、すなわち、低コストで生産することができ、生産性や加工性にも優れ、錠剤の取り出し易さ(押出性)や透明性、耐衝撃性に優れ、しかも、OD錠のような高い防湿性を求められる内容物の包装用としても使用できるPTP用シートは、未だ得られていないのが現状であった。
本発明に用いるポリ塩化ビニル系樹脂(A)としては、任意の平均重合度の塩化ビニル系樹脂を用いることができ、好ましくは600〜1,300である。平均重合度が600以上であれば、十分な機械強度を得ることができる。一方、平均重合度が1,300以下であれば、溶融粘度の増加に伴う発熱が生じることなく、分解による着色の発生を生じることが少ない。
このような観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の平均重合度は、前述の範囲の中でも特に600以上或いは1,100以下であるのがより一層好ましく、その中でも650以上或いは900以下であるのがさらに好ましい。
なお、前記塩化ビニル系単独重合体、及び、塩化ビニル系共重合体は、任意の方法、例えば乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで重合することができる。
例えば、前記ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の熱安定性を向上するためにCa−Zn系安定剤を配合することもできる。Ca−Zn系安定剤とは、カルシウムの脂肪酸塩と亜鉛の脂肪酸塩の混合物である。 脂肪酸の具体例としては、ベヘニン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、安息香酸等があげられ、目的に応じて2種以上組み合わせて使用することも可能である。また、その他アルキル錫マレー、アルキル錫ラウレート、アルキル錫メルカプト、錫メルカプト酸エステルなどの安定剤も使用することができる。
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)層の形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、押出成形、カレンダー成形、プレス成形などの方法にて形成することができる。またポリ塩化ビニル系樹脂(A)層の厚みは、一般に50〜250μm程度の範囲で適宜選択することができる。
本発明に用いるポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)としては、塩化ビニリデン単量体、あるいは、各種モノマーとの共重合体を使用することができる。共重合モノマーの具体例としては、塩化ビニルや、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸や、αメチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物や、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルエチルなどの(メタ)アクリル酸エステルや、アクリル酸グリシジルメタクリル酸エステルや、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミドがあげられ、これらを単独、又は、2種以上組み合わせて使用することができる。前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)の製造方法としては特に限定されないが、公知の方法、例えば乳化重合法などを採用することができる。ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)の市販品の具体例としては、旭化成ケミカルズ(株)社の商品名「サランラテックス」シリーズやSolvay社の商品名「Diofan」シリーズ等があげられる。
本発明において、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層は、(B)−1層と(B)−2層の各1層を1セットとして、これを少なくとも1セット以上基材上に積層してなり、基材に最も近いセットに対する、次に積層するセットの厚み比が0.3〜0.75の範囲であり、かつ、基材に最も近いセットの(B)−1層と(B)−2層の厚みが各々7〜20μmの範囲であることが重要である。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層の形成方法は、特に制限されるものではないが、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)層上に、バーコート、グラビアコート、スプレーコート、カーテンコート、エアナイフコート、ダイコート、ロールコート、スライドコートなどの方法で塗布し、乾燥工程を経ることで、形成することができる。また、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)層との接着力を向上させる目的で、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)層とポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層との間に、例えばイソシアネート系、ウレタン系、ポリオール系などのアンカーコート剤を用いて、アンカーコート層を設けてもよい。
PTP用シートの防湿性は、用途により適宜選択されるものであるが、本発明は、より高い防湿性が求められる用途にも適用可能なシートを提供できることを特徴の1つとしている。防湿性は水蒸気透過率で評価することができ、本シートは、JIS K7129Bに準拠し、40℃、90%RH雰囲気下で測定した水蒸気透過率が0.3g/m2・day以下であることが好ましく、0.25g/m2・day以下であることが実用上より好ましい。水蒸気透過率が上記範囲であれば、例えばOD錠用などの高い防湿性を求められる用途にも用いることが可能である。
シートの耐落下衝撃性は、防湿性と密接な関係がある。これは、落下などによりシートが衝撃を受けた際、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層に割れや欠けやクラックが発生すると、シートの防湿性は低下してしまうためである。この観点から、本シートは、耐衝撃落下試験を実施して不良がないことが、実用上求められる。
なお、本発明における耐衝撃落下試験は、次のように行う。本シートを、PTP用成形装置としてCKD株式会社製FBP−300Eを用いて、シート加熱温度125℃、ポケットサイズΦ10mm、深さ4.5mmの条件にて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層が凸部外側となるよう加熱成形を行った後、錠剤を入れ、厚さ20μmのアルミ箔でシールし、錠剤入りPTPサンプルを作成する。この錠剤入りPTPサンプルを、温度5℃環境下にて24時間保管後、試験個数100個について、2mの高さからコンクリート面に落下させ、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層の状態を目視にて確認し、割れや欠け等の生じた不良サンプル数を測定する。
本シートは、PTPとした際の錠剤等の内容物の取り出し易さ(押出性)が、官能性評価試験にて2点以上であることが好ましく、3点以上がより好ましい。押出性は、消費者の使用感につながる指標である。消費者に好まれるか否かは、包装体内容物の商品価値を左右する重要な要素となるため、パッケージに求められる機能の中でも重要視される要素の1つである。例えば昨今は、競争の厳しいジェネリック医薬品の分野では、押出性の指標が上記範囲を満たすものであることが、PTPシートの品質の1つとして求められている。
なお、本発明における押出性の評価方法は官能性試験による。具体的には、後述する実施例に記載の方法で行う。評価点は高い方が押出性は良好ということである。
本シートは、JIS B0601に準拠して測定した、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層表面の表面粗さ(10点平均粗さ:Rz)が、2.0μm以上4.0μm以下であることが好ましい。表面粗さが上記範囲内であれば、シートが滑りすぎて蛇行やスリップを生じることもなく、また逆に、シートが滑らず引っ掛かりが生じるなどのトラブルが起こらず、PTP成形時の搬送性は良好なものとなる。
本シートは、JIS K7361に準拠して測定したヘイズが、20%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましい。PTPは、蓋材に製品名などが印字されている場合が多く、ヘイズが15%を超えると、対象の印刷物がやや見えにくくなり、20%を超えると、一目で視認することが難しくなる。
本シートは、真空成形、圧空成形、圧空真空成形、プレス成形、その他の熱成形によって、各種形状の成形体に形成することができ、PTP包装の包装用成形体を好適に製造し利用することができる。
(1)水蒸気透過率
実施例で得られたシートについて、JIS K7129Bに基づき、MOCON社製 水蒸気透過率測定装置PERMATRAN−W 1/50を用いて、40℃、90%RHの雰囲気下にて、水蒸気透過率を測定し、下記基準にて評価した。
◎:0.22以下
○:0.22超0.25以下
△:0.25超0.3以下
×:0.3超
実施例で得られたシートを、PTP用成形装置としてCKD株式会社製FBP−300Eを用いて、シート加熱温度125℃、ポケットサイズΦ10mm、深さ4.5mmの条件にて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層が凸部外側となるよう加熱成形を行った後、錠剤を入れ、厚さ20μmのアルミ箔でシールし、錠剤入りPTPサンプルを作成する。
この錠剤入りPTPサンプルを、温度5℃環境下にて24時間保管後、試験個数100個について、2mの高さからコンクリート面に落下させ、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層の状態を目視にて確認し、割れや欠け等の生じた不良サンプル数を測定し、下記基準にて評価した。
○:不良サンプルなし
×:不良サンプルあり
上記と同様に錠剤入りPTPを作成する。この錠剤入りPTPについて、被験者として年齢10代から60代の男女各5名、計60名にて、実際にPTPから錠剤を押し出し、取り出して貰うモニタリング試験を行った。各被験者によって評価点の平均値を押出性として評価した。評価点の基準は以下のとおりである。
0点:取り出せない
1点:極めて取り出し難い
2点:やや取り出し難い
3点:取り出し易くも取り出し難くもない
4点:やや取り出し易い
5点:極めて取り出し易い
JIS B0601に準拠し、ミツトヨ社製 サーフテスト SV2100M4を用いて、PVDC層表面の表面粗さ(10点平均粗さ:Rz)を測定し、下記基準にて評価した。
○:2.0〜4.0
×:2.0未満、または4.0を超える
JIS K7136に準拠し、日本電色社製 ヘーズメーター NDH−7000を用いて、ヘイズ値を測定した。
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)層:
(A)−1:硬質PVCシート(ビニホイルC−0459、厚み=0.09mm)
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層:
(B)−1:旭化成ケミカルズ社製「サランラテックスL574A」(吸光度比=1.10)
(B)−2:旭化成ケミカルズ社製「サランラテックスL580C」(吸光度比=0.96)
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層形成1セット目:(A)−1を基材とし、バーコーターを用いて、塗布量15g/m2にて(B)−1を塗布し、80℃で60秒間乾燥させた。マイクロメーターにて乾燥後膜厚を測定したところ10μmであった。この(B)−1層上に、バーコーターを用いて、塗布量15g/m2にて(B)−2を塗布し、80℃で60秒間乾燥させた。(B)−2層の乾燥後膜厚は10μmであった。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層形成2セット目:上記1セット目で形成した(B)−2層上に、バーコーターを用いて、塗布量7.5g/m2にて(B)−1を塗布し、80℃で60秒間乾燥させた。この(B)−1層の乾燥後膜厚は5μmであった。さらにこの(B)−1層上に、バーコーターを用いて、塗布量7.5g/m2にて(B)−2を塗布し、80℃で60秒間乾燥させた。この(B)−2層の乾燥後膜厚は5μmであった。
このようにして得られたシートについて評価を行った。結果を表1に示す。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層形成2セット目の(B)−1層と(B)−2層を、各々、塗布量を10.5g/m2、乾燥後膜厚を7μmとした以外は、実施例1と同様にシートを作成した。このシートについて評価を行った。結果を表1に示す。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層形成1セット目の(B)−1層と(B)−2層を、各々、塗布量を10.5g/m2、乾燥後膜厚を7μmとした以外は、実施例1と同様にシートを作成した。このシートについて評価を行った。結果を表1に示す。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層形成1セット目の(B)−1層と(B)−2層を、各々、塗布量を7.5g/m2、乾燥後膜厚を5μmとした。このセットをさらに3回行い、計4セット実施した。このシートについて評価を行った。結果を表2に示す。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層形成2セット目の(B)−1層と(B)−2層を、各々、塗布量3.8g/m2、乾燥後膜厚を2.5μmとした以外は、実施例1と同様にシートを作成した。このシートについて評価を行った。結果を表2に示す。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層形成1セット目の(B)−1層と(B)−2層を、各々、塗布量7.5g/m2、乾燥後膜厚を5μmとし、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層形成2セット目の(B)−1層と(B)−2層を、各々、塗布量15g/m2、乾燥後膜厚10μmとした以外は、実施例1と同様にシートを作成した。このシートについて評価を行った。結果を表2に示す。
PVDC層形成2セット目の(B)−1層と(B)−2層を、各々、塗布量12g/m2、乾燥後膜厚8μmとした以外は、実施例1と同様にシートを作成した。このシートについて評価を行った。結果を表2に示す。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層形成1セット目の(B)−1層と(B)−2層を、各々、塗布量37.5g/m2、乾燥後膜厚25μmとし、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層形成2セット目の(B)−1層と(B)−2層を、各々、塗布量11.3g/m2、乾燥後膜厚7.5μmとした以外は、実施例1と同様にシートを作成した。このシートについて評価を行った。結果を表2に示す。
Claims (4)
- ポリ塩化ビニル系樹脂(A)層を基材とし、基材の少なくとも一方の面に、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層を積層してなるPTP用多層シートであって、
前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)層は、(B)−1層と(B)−2層の各1層を1セットとして、これを少なくとも1セット以上基材上に積層してなり、基材に最も近いセットに対する次に積層するセットの厚み比が0.3〜0.75の範囲であり、かつ、基材に最も近いセットの(B)−1層と(B)−2層の厚みが各々7〜20μmの範囲であることを特徴とするPTP用多層シート。 - 前記(B)−1層は、1046cm−1/1070cm−1の吸光度比が1.05〜1.40であるポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)−1を用いてなり、前記(B)−2層は、1046cm−1/1070cm−1の吸光度比が0.80〜1.05であるポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)−2を用いてなることを特徴とする請求項1に記載のPTP用多層シート。
- JIS K7129Bに準拠して、40℃、90%RH雰囲気下で測定した際の、水蒸気透過率が0.25g/m2・day以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のPTP用多層シート。
- 請求項1から3のいずれかに記載のPTP用多層シートを用いてなるPTP。
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