JP6589590B2 - Ptp用多層シート及びそれを用いたptp包装体 - Google Patents
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Description
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂からなる層(I)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂からなる層(II)、及び厚みが0.15〜5μmであるトップコート層(III)の少なくとも3層を有し、(I)/(II)/(III)の順に積層されてなる多層シートであり、前記層(III)面を相対させ、JIS K7125に準拠して測定した静摩擦係数が0.8未満であることを特徴とするPTP用多層シートによって達成される。
本発明のシートは、熱可塑性樹脂からなる層(I)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂からなる層(II)、及び、厚みが0.15〜5μmであるトップコート層(III)の少なくとも3層で構成される。
<熱可塑性樹脂>
本発明のシートの層(I)を構成する熱可塑性樹脂としては、従来公知の一般に使用される樹脂を用いることができ、特に制限はないが、具体的には、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのポリビニルアルコール系樹脂、などが挙げられる。中でも本発明においては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましい樹脂として挙げられ、特にはポリ塩化ビニル系樹脂が好適に用いられる。
これら塩化ビニル系共重合体において、共重合体に占める塩化ビニル単量体の割合は、60〜99質量%であることが好ましい。共重合体中の塩化ビニル以外の構成単位の含有量が多くなると、機械的特性が低下する傾向がある。
層(I)は、圧延法により製造することができる。具体的には、4本カレンダロールなどの圧延装置によりポリ塩化ビニル系樹脂と各種添加剤のブレンド物を圧延、シート化する。その後、引取ロールで引き取られ、複数本の冷却ロールで次第に冷却され、所定の厚みのシートが得られる。
<ポリ塩化ビニリデン系樹脂>
本発明のシートの層(II)を構成するポリ塩化ビニリデン系樹脂としては、具体的には、塩化ビニリデン単量体、あるいは、各種モノマーとの共重合体を使用することができる。共重合モノマーの具体例としては、塩化ビニルやアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸や、αメチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物や、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステルや、アクリル酸グリシジルメタクリル酸エステルや、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミドが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
層(II)を複数層積層する場合、単一のポリ塩化ビニリデン系樹脂を複数積層しても構わないが、異なる2種以上のポリ塩化ビニリデン系樹脂を交互に各々1層以上積層することで層(II)を構成することがより好ましい。これにより本発明のシートはさらに、防湿性や耐衝撃性、透明性のバランスや錠剤の取り出し性に優れたものとなる。
異なる2種以上のポリ塩化ビニリデン系樹脂を交互に各々1層以上積層することで、層(II)を構成する場合、具体的には、1046cm−1/1070cm−1の吸光度比が1.05〜1.40であるポリ塩化ビニリデン系樹脂からなる層(II)−1と、1046cm−1/1070cm−1の吸光度比が0.80〜1.05であるポリ塩化ビニリデン系樹脂からなる層(II)−2を交互に各々1層以上、好ましくは各々2層以上、さらに好ましくは各々3層以上積層することが好ましい。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂のラテックスを、乾燥後の塗布量が約8g/m2となるように二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、OPPフィルムという)に塗布する。次いで、80℃で15秒間乾燥した後、40℃で16時間熱処理を施す。次にフーリエ変換赤外分光光度計を用いて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂が塗布されたOPPフィルムの1200〜800cm−1のスペクトルを測定する。得られたスペクトルにおいて、1100cm−1と850cm−1を線で結び、この線をベースとして1046cm−1と1070cm−1のピーク強度を測定し、吸光度比(1046cm−1の吸光度/1070cm−1の吸光度)を算出した。なお、吸光度比が大きい方が結晶化度が高いことを示す。
本発明のシートは、トップコート層として、以下に説明する層(III)を備えるものであることが重要である。
本発明のシートの層(III)としては、透明であり、かつ製膜後に塗布面同士を相対させ接触した際にブロッキングしない性質を持つ成分を選択することが重要であり、具体的には、ガラス転移点が保管環境における温度以上である樹脂、あるいは、結晶性の高い樹脂を用いるとよい。またさらに前記樹脂層には、適度に硬質な粒子状、繊維状、あるいは繊維素と呼ばれる物資を一定の割合で添加することが好ましい。層の表面に前記物質が適度に露出することで、表面同士のブロッキング防止効果をより高めることができる。このような層(III)を備えることで、包装体とした際のスタッキングによる接着やブロッキングが起こらない本発明のシートが得られる。しかも層(III)を備えた本発明のシートは、透明性も良好で、防湿性や耐衝撃性、錠剤取り出し性も損なわれないため、優れた品質バランスを持つ包装体を得ることができる。
前記物質の添加量としては、層(III)全体に対して10〜80質量%の範囲であることが望ましい。かかる範囲より少ないとブロッキング防止効果が発現しにくく、またかかる範囲より多いと透明性が損なわれてしまったり、添加物質の脱離が発生しやすくなる。
本発明のシートは、製品の意匠性や二次加工性等を高める目的で、シート表面にエンボス加工や、艶消し加工等の加工を行ってもよい。この場合、一旦鏡面状のシートを作成してからエンボスロールや艶消しロールで加工を施すようにしても、押出成形の際にキャストロールをエンボスロールや艶消しロールに変更して成形するようにしてもよい。本発明の趣旨を損なわない限り、シート表面に帯電防止剤、シリコーン、ワックスなどをコーティングすることも、印刷層を設けることも可能である。なお、印刷層の形成手段は現在公知の任意の手段を採用できる。
本発明のシートの全厚みは、特に限定するものではないが、例えば加工性、実用性を考慮した場合、0.1mm以上、0.4mm以下であることが好ましく、0.15mm以上、0.35mm以下であることがより好ましく、0.2mm以上、0.3mm以下であることがさらに好ましい。シートの厚みが0.1mm以上であれば、好適なシートの剛性、防湿性が得られる。一方、シートの厚みが0.4mm以下であれば、PTPとして使用する際に薬剤の取り出しで不具合を生じることがない。
本発明のシートは、層(III)面を相対させ、JIS K7125に準拠して測定した静摩擦係数が0.8未満であることが重要である。静摩擦係数は0.6未満であることが好ましく、0.5未満であることがより好ましい。静摩擦係数が上記範囲であれば、層(III)を凸側にしてポケットを成形し、凸側を相対させ交互に重ねた状態で保管しても、シート同士が接着しないため好ましい。
なお、本発明のシートの静摩擦係数は、層(III)面の表面平滑性、剛性等により調整することができる。
本発明のシートは、層(III)面を相対させ、JIS K7125に準拠して測定した動摩擦係数が、0.4未満であることが好ましい。動摩擦係数は0.3未満であることがより好ましい。動摩擦係数が上記範囲であれば、静摩擦係数同様に層(III)を凸側にしてポケットを成形し、凸側を相対させ交互に重ねた状態で保管しても、シート同士が接着しないため好ましい。
なお、本発明のシートの動摩擦係数は、層(III)面の表面平滑性、剛性等により調整することができる。
本発明のシートは、層(III)を凸側にしてポケットを成形し、凸側を相対させ交互に重ねた状態で接触させて300秒経過後にシート同士が接着しないことが好ましい。この要件を満たすものであれば、実用上、包装体どうしが接着することがないPTP包装体を得ることができる。
なお、本発明において、ブロッキング性は、次の方法にて評価する。
本発明のシートを、PTP用成形装置としてCKD株式会社製FBP−300Eを用いて、シート加熱温度125℃、ポケットサイズΦ10mm、深さ4.5mmの条件にて、層(III)が凸部外側となるよう加熱成形を行った後、厚さ20μmのアルミ箔でシールし、PTPシートを作成する。その後、作成したPTPシートを、シートの長手方向37mm、幅方向110mmの切片に切り出し、シートの凸面同士を相対させて静置し、300秒経過後に片方のシートを持ち上げ、もう片方のシートが接着されているかを確認する。これらの操作を別々のシートを用いて3度行い、接着された場合が1回以下であるものを合格とする。
本発明のシートは、スタッキングしても包装体どうしが接着することがなく、安全性に優れ、防湿性や錠剤の取り出し性、耐衝撃性や透明性にも優れているため、これら品質を必要とするPTP包装体に好適に使用することができる。PTP包装体は一般的に、内容物を収納する底材と、密封するための蓋材とが、融着、接着されて構成される。本発明のシートは主として底材として好適に用いることができる。なお、蓋材としては一般的にPTP包装に使用される材料、例えば、アルミニウム箔やフィルム等、従来公知のものを用いることができる。また、PTP包装体の内容物は、錠剤やカプセル剤等、ポケット部に収納できるものであれば、特に限定されない。
(1)静摩擦係数・動摩擦係数
作成したシートの層(III)面を相対させ、JIS K7125に準拠して、静摩擦係数、動摩擦係数を測定した。
IS K7105に基づき、反射・透過率計(株式会社村上色彩技術研究所「HR−100」)を用いて、全光線透過率を測定した。
作成したシートを、PTP用成形装置としてCKD株式会社製FBP−300Eを用いて、シート加熱温度125℃、ポケットサイズΦ10mm、深さ4.5mmの条件にて、層(III)が凸部外側となるよう加熱成形を行った後、厚さ20μmのアルミ箔でシールし、PTPシートを作成した。その後、作成したPTPシートを、シートの長手方向37mm、幅方向110mmの切片に切り出し、シートの凸面同士を相対させて静置し、300秒経過後に片方のシートを持ち上げ、もう片方のシートが接着されているかを確認した。これらの操作を別々のシートを用いて3度行い、接着された場合が1回以下であるものを合格(○)とした。
層(I)として、硬質PVCシート(三菱樹脂社製:ビニホイルC−0459、厚み=0.25mm)を用いた。層(I)の片面にアンカーコート剤(三井化学製:タケラックA−616とタケネートA−65の16:1混合希釈物)をグラビアコーターを用いて塗工し、乾燥させた後、層(II)としてポリ塩化ビニリデン系樹脂1(旭化成ケミカルズ社製:サランラテックスL580C、吸光度比=0.96)とポリ塩化ビニリデン系樹脂2(旭化成ケミカルズ社製:サランラテックスL574A、吸光度比=1.10)とを交互にグラビアコーターを用いて繰り返し塗工し、乾燥させた。層(II)として層(I)上に1/2/1/2/1/2と6層積層した。乾燥後の層(II)全体の厚みは0.035mmであった。さらに層(II)表面に、層(III)として、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体及び脂肪酸セルロースを含むトップコート液(DICグラフィックス株式会社製、商品名:VG−S メジューム)を用いて、グラビアコーターにて塗工し、乾燥させ、積層シートを得た。これについて評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1の層(III)を、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体及び脂肪酸セルロースを含むトップコート液(DICグラフィックス株式会社製、商品名:VG−S メジューム(M)SA)に代えた以外は、実施例1と同様にシートを作成し、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2の層(III)の厚みを変更した以外は、実施例2と同様にシートを作成し、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2の層(III)の厚みを変更した以外は、実施例2と同様にシートを作成し、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1の層(III)の厚みを変更した以外は、実施例1と同様にシートを作成し、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1の層(III)を、高分子量熱可塑性ポリエステル樹脂を含むトップコート液(DIC株式会社製、商品名:ファインテックス ES−2200X)98質量%、及び平均粒子径0.8μmの架橋アクリル単分散粒子(綜研化学株式会社製、商品名:MX−80H3wT)2質量%の混合液に代えた以外は、実施例1と同様にシートを作成し、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1の層(III)を、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体及びアクリルを含むトップコート液(富士インキ工業株式会社製、商品名:MPX メヂュームN)に代えた以外は、実施例1と同様にシートを作成し、評価を行った。結果を表1に示す。
層(III)を設けなかった以外は、実施例1と同様にシートを作成し、評価を行った。結果を表2に示す。
実施例2の層(III)の厚みを変更した以外は、実施例2と同様にシートを作成し、評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1の層(III)を、微粒子型ポリウレタン樹脂を含むトップコート液(DIC株式会社製、商品名:U001ハイドランAP−40F)に代えた以外は、実施例1と同様にシートを作成し、評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1の層(III)を、フッ素重合体を含むトップコート液(明成化学工業株式会社製、商品名:アサヒガードE−070)に代えた以外は、実施例1と同様にシートを作成し、評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1の層(III)を、水系アクリル樹脂を含むトップコート液(東亜合成株式会社製、商品名:ジュリマー FC−80)に代えた以外は、実施例1と同様にシートを作成し、評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1の層(III)を、スチレンアクリル系エマルジョン(BASFジャパン株式会社製、商品名:PDX−7326)に代えた以外は、実施例1と同様にシートを作成し、評価を行った。結果を表2に示す。
Claims (5)
- 熱可塑性樹脂からなる層(I)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂からなる層(II)、及び厚みが0.15〜5μmである繊維状物質を含むトップコート層(III)の少なくとも3層を有し、(I)/(II)/(III)の順に積層されてなる多層シートであり、前記層(III)面を相対させ、JIS K7125に準拠して測定した静摩擦係数が0.8未満であることを特徴とするPTP用多層シート。
- 前記繊維状物質が、ガラス繊維および/またはセルロース類である請求項1に記載のPTP用多層シート。
- 前記多層シートを、層(III)を凸側にしてポケットを成形し、凸側を相対させ交互に重ねた状態で接触させ、300秒経過後にシート同士が接着しないことを特徴とする請求項1または2に記載のPTP用多層シート。
- 前記層(II)の乾燥後厚みが10〜150μmであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のPTP用多層シート。
- 請求項1から4のいずれかに記載のPTP用多層シートを用いて形成されたPTP包装体。
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