JP2022117395A - 医薬品包装用シート、プレススルーパッケージ包装用底材、プレススルーパッケージ包装材、及びシート - Google Patents

医薬品包装用シート、プレススルーパッケージ包装用底材、プレススルーパッケージ包装材、及びシート Download PDF

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Takayuki Watanabe
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Tomoyuki Shirakawa
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Abstract

【課題】錠剤やカプセル剤等のPTPの成形ポケットへの充填性、錠剤やカプセル剤等のPTPの成形ポケットからの取り出し性が向上し、かつ熱成形性が向上した医薬品包装用シートを提供する。【解決手段】医薬品包装用シートは、基材層(I)と、少なくとも一方の表面層に、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を含む表面層(II)を有し、前記表面層(II)をJIS B0601:2013に準拠して接触式表面粗さ計で測定した表面性状パラメータが以下の(1)で示す要件を満たす。(1)局部傾斜の二乗平均平方根(RΔq)が、0.02以上【選択図】なし

Description

本発明は、医薬品包装用シート、プレススルーパッケージ包装用底材、プレススルーパッケージ包装材、及びシートに関する。
医薬品や食品等の包装分野においては、カプセル剤や錠剤等の固形剤、粒状の食品等を包装するためにプレススルーパッケージ(以下「PTP」と称することがある)が広く使用されている。
PTPとは、例えば、透明のシートを加熱した後、圧空成形、真空成形等を施すことによりカプセルや錠剤等の固形物を収納するポケット部を形成し、ポケット部にカプセル等を収納した後、例えばアルミ箔のように手で容易に引き裂いたり、開封したりできる材質の箔やフィルムを蓋材として貼り合せて一体化した形態の包装である。PTPによれば、透明なシートのポケットに収納された固形剤や食品等を開封前に直接肉眼で確認でき、開封する際には、ポケット部の固形剤等を指で押して蓋材を押し破ることにより、内容物を容易に取り出すことができる。
PTPに用いられるシートの原料としては、ポリ塩化ビニル系樹脂(以下「PVC」と称することがある)が良好な熱成形性、常温での剛性、耐衝撃性、透明性を有するため、従来から使用されてきた。ところが、PVCからなるシートでは防湿性が十分ではない場合があるため、より防湿性が要求される内容物を包装する場合、PVCの代替としてポリプロピレン系樹脂(以下「PP」と称することがある)が使用されている。
また近年は、PTPにさらなる防湿性の向上が求められており、透明性及び防湿性に優れる材料の一つとしてとして、環状オレフィンポリマー(以下「COP」と称することがある)や、環状オレフィンコポリマー(以下「COC」と称することがある)が注目されている。しかしながら、COPやCOCからなるシートは、透明性、防湿性、機械的強度、成形性等に優れる反面、耐衝撃性やカプセルや錠剤の取り出し性に乏しくなる場合がある。
さらに、COPやCOCからなるシートと同様に防湿性に優れたPTP用のシートとして、PVCやPPからなる基材シートにポリ塩化ビニリデン系共重合樹脂(以下「PVDC」と称することがある)のラテックス分散液を塗布したシートが提案されている。
しかし、このPVDCのラテックス分散液が塗布、積層されたシートは、ブロッキングを起こしやすく、ロール状にしたときにシート同士が密着して、巻きズレを起こす場合がある。そこで、このシートのブロッキングを防止するために、各種フィラーを配合したPVDCのラテックス分散液を塗布、積層したシートが提案されている。
例えば特許文献1では、合成樹脂、天然物質、または無機材料から製造された粒子をPVDC中に含有させる方法が提案されている。
また、特許文献2では、繊維状物質を含むトップコート層を積層したシートが提案されている。
特表2008-504380号公報 特開2017-88239号公報
従来知られていたPTPに用いられる医薬品包装用シートは、特許文献1に示されるように、シート自体の滑り性やブロッキングを防止するために、フィラーやワックスなどの滑剤を配合したPVDCのラテックス分散液を基材シートに塗布積層させて、塗布表面に滑り性を付与させている。しかし、錠剤やカプセル剤等のPTPの成形ポケットへの充填性、あるいは錠剤やカプセル剤等のPTPの成形ポケットからの取り出し性の向上については考慮されておらず、シート自体の滑り性付与では、充分でないことが多かった。
一方、圧空成形、真空成形等を施すことによりカプセルや錠剤等の固形物を収納するポケット部を成形する。この成形工程直前の事前予備加熱工程の際に、シートを予熱用加熱板(以下「加熱板」と称する)に密着させた後に、シートが加熱板から容易に剥離しなかった結果、シートが変形したり破断したりする場合があった。あるいはシートを事前予備加熱した後、突き出し型(以下、「プラグ」と称する場合がある)でポケット部を成形した時に、プラグがシートのポケット部から容易に離脱しなかった結果、プラグ抜け、脱落、プラグの変形、破損といった不具合が起きるという問題もあった。
また、PVDCのラテックス分散液にフィラーを配合した場合に、フィラーの分散性が不安定でフィラー同士の凝集や沈降が起きて、基材シートにラテックス分散液を安定して塗布できない場合があった。
そこで本発明の目的は、錠剤やカプセル剤等のPTPの成形ポケットへの充填性や、錠剤やカプセル剤等のPTPの成形ポケットからの取り出し性が向上し、さらには、PTPのポケット部を成形する工程において、加熱板からのシートの剥離、シートポケット部からのプラグの離脱を容易とするために、熱成形性を向上させた、医薬品包装用シート、プレススルーパッケージ包装用底材、プレススルーパッケージ包装材、及びシートを提供することにある。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]基材層(I)と、少なくとも一方の表面層に、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を含む表面層(II)を有し、前記表面層(II)をJIS B0601:2013に準拠して接触式表面粗さ計で測定して得た表面性状パラメータが以下の(1)で示す要件を満たす、医薬品包装用シート。
(1)局部傾斜の二乗平均平方根(RΔq)が、0.02以上
[2]前記表面層(II)の厚さが3~50μmである、上記[1]に記載の医薬品包装用シート。
[3]前記表面層(II)に、フィラーを含む、上記[1]又は[2]に記載の医薬品包装用シート。
[4]前記フィラーの平均粒径が0.5~30μmである、上記[3]に記載の医薬品包装用シート。
[5]前記フィラーが無機フィラーである、上記[3]又は[4]に記載の医薬品包装用シート。
[6]前記表面層(II)がポリ塩化ビニリデン系樹脂を主成分として含み、全体を100質量%としたとき、フィラーの含有量が0.2~2質量%である、上記[3]~[5]のいずれか一項に記載の医薬品包装用シート。
[7]前記表面層(II)を構成するポリ塩化ビニリデン系樹脂のラテックス分散液と前記フィラーのpHが、以下式(A)で求められるΔpHが8以下である、上記[3]~[6]のいずれか一項に記載の医薬品包装用シート。
ΔpH=|フィラーのpH-ラテックス分散液のpH|・・・(A)
[8]前記基材層(I)の厚さが50~500μmであり、ポリ塩化ビニル系樹脂またはポリオレフィン系樹脂を主成分として含む、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の医薬品包装用シート。
[9]前記表面性状パラメータが以下の(2)の要件を満たす、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の医薬品包装用シート。
(2)平均長さ(RSm)が、0.05~0.18nm
[10]前記表面性状パラメータが以下の(3)の要件を満たす、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の医薬品包装用シート。
(3)スキューネス(Rsk)が、0.3以上
[11]前記表面性状パラメータが以下の(4)の要件を満たす、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の医薬品包装用シート。
(4)クルトシス(Rku)が、8.5~20.0
[12]前記表面層(II)がコーティングにより形成される上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の医薬品包装用シート。
[13]上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の医薬品包装用シートを用いてなるプレススルーパッケージ包装用底材。
[14]表面層(II)が凹側になるようにしてポケット部を形成した上記[13]に記載のプレススルーパッケージ包装用底材。
[15]上記[14]に記載のプレススルーパッケージ包装用底材と、蓋材とを備えるプレススルーパッケージ包装材。
[16]基材層(I)と、少なくとも一方の表面層に、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を含む表面層(II)を有するシートであって、前記表面層(II)をJIS B0601:2013に準拠して接触式表面粗さ計で測定して得た表面性状パラメータが以下の(1)で示す要件を満たし、凹部よりなるポケット部を有する成形品に用いるシート。
(1)局部傾斜の二乗平均平方根(RΔq)が、0.02以上
本発明が提案する医薬品包装用シート、プレススルーパッケージ包装用底材、プレススルーパッケージ包装材、及びシートは、基材層(I)と、少なくとも一方の表面層に、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を含む表面層(II)を備えたシートであり、表面層(II)の表面が適度に凹凸を有することにより、例えば錠剤やカプセル剤等と表面層(II)との接触面積が減少し、表面層(II)上における錠剤やカプセル剤等の滑り性を向上させることができる。さらにはPTPのポケット部を成形する工程において、加熱板からのシートの剥離、シートポケット部からのプラグの離脱を容易とし、熱成形性を向上させることができる。
以下、医薬品包装用シート、プレススルーパッケージ包装用底材、及びプレススルーパッケージ包装材について説明する。ただし、本発明の範囲は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「主成分とする」とは、主成分として含有される成分が有する作用効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらにこの用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、構成成分全体の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であって、100質量%以下の範囲を占める成分である。
本発明において、「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」および「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
本発明は、基材層(I)と、少なくとも一方の表面層に、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を含む表面層(II)を有し、前記表面層(II)をJIS B0601:2013に準拠して接触式表面粗さ計で測定して得た表面性状パラメータが以下の(1)で示す要件を満たす、医薬品包装用シートに関するものである。
(1)局部傾斜の二乗平均平方根(RΔq)が、0.02以上
<基材層(I)>
本発明における基材層(I)は、医薬品包装用シートに良好な熱成形性、常温での剛性、耐衝撃性、および透明性を確保するための層である。医薬品包装用シートに良好な熱成形性を確保するために、前記基材層(I)は熱可塑性樹脂を主成分として形成されることが好ましい。また、当該シートに良好な常温での剛性、耐衝撃性、および透明性を確保するために、前記基材層(I)の厚さは50~500μmであるのが好ましく、100~300μmであるのがより好ましい。基材層(I)の厚さが50μm以上であれば、医薬品包装用シートに十分な剛性や耐衝撃性を確保できるので好ましい。また、基材層(I)の厚さが500μm以下であれば、医薬品包装用シートに良好な透明性を確保できるので好ましい。
<熱可塑性樹脂>
本発明の基材層(I)は熱可塑性樹脂を主成分として形成されてなることが好ましいが、熱可塑性樹脂としては、従来公知の一般に使用される樹脂を用いることができ、特に限定されるものではないが、具体的には、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよいが、2種以上を併用してもよい。
中でも本発明においては、ポリ塩化ビニル系樹脂またはポリオレフィン系樹脂が好ましい樹脂として挙げられ、特にポリ塩化ビニル系樹脂が好適に用いられる。したがって、基材層(I)は、ポリ塩化ビニル系樹脂またはポリオレフィン系樹脂を主成分として含むことが好ましく、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分として含むことがより好ましい。
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルと共重合可能なその他の単量体との共重合体、塩化ビニル系重合体以外の重合体に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体などを挙げることができる。
前記塩化ビニルと共重合可能な単量体は、分子中に反応性二重結合を有するものであればよく、具体的には例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのα-オレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェニルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のエステル類、スチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル類、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどのN-置換マレイミド類などを挙げることができ、これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら塩化ビニル系共重合体において、共重合体に占める塩化ビニル単量体由来の構成単位の割合は、60~99質量%であることが好ましい。共重合体中の塩化ビニル以外の構成単位の含有量を一定値以下として塩化ビニル単量体の割合を60質量%以上とすると、機械的特性が良好となる傾向がある。
前記グラフト共重合体における塩化ビニル系重合体以外の重合体は、塩化ビニルをグラフト共重合できるものであればよい。具体的には例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート・一酸化炭素共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどを挙げることができ、これらは単独でも2種以上の組み合わせで用いてもよい。
<その他の成分>
本発明の基材層(I)は、本発明の効果を損なわない範囲で、基材層(I)を好ましく構成する熱可塑性樹脂以外のその他の成分を含有してもよい。例えば、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、顔料、染料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤などが挙げられる。また、耐衝撃改良剤として、ゴム、エラストマー等を添加してもよい。
<基材層(I)の製造方法>
基材層(I)の製造方法は、特に限定されるものではないが、塩化ビニル系樹脂を用いた場合、基材層(I)は、カレンダ圧延法や押出法により、製造することができる。例えば、カレンダ圧延法とは、具体的には、通常4~6本カレンダロールなどの圧延装置によりポリ塩化ビニル系樹脂と各種添加剤のブレンド物を圧延、シート化する。その後、引取ロールで引き取られ、複数本の冷却ロールで次第に冷却され、所定の厚さとしたシート(基材シート)を基材層(I)とする。
<表面層(II)>
本発明の表面層(II)は、少なくともポリ塩化ビニリデン系樹脂を含むが、表面層(II)の表面は、適度に凹凸を有することで、例えば錠剤やカプセル剤等と表面層(II)との接触面積を減少させて、表面層(II)上における錠剤やカプセル剤等の滑り性を向上させる役割を果たすものである。表面層(II)は、医薬品包装用シートにおいて最表面を構成するとよい。
表面層(II)は、さらにフィラーを含有することが好ましく、ポリ塩化ビニリデン系樹脂とフィラーから形成されるとよい。表面層(II)は、フィラーを含有することで、表面に適度な凹凸を付与しやすくなり、滑り性をより一層向上させることができる。
なお、表面層(II)は、フィラーを含有しなくてもよいが、その場合には、表面層(II)を公知の手法で粗面化するとよい。具体的には、エンボス、マットロールなどの凹凸面を有する部材を表面層(II)に押し当てるなど、機械的な手法により形成すればよい。また、表面層(II)は、フィラーを含有する場合でも、これら機械的な手法により、付加的に凹凸が付されてもよい。
<ポリ塩化ビニリデン系樹脂>
本発明の表面層(II)を構成するポリ塩化ビニリデン系樹脂としては、具体的には、塩化ビニリデン単量体、あるいは、各種モノマーとの共重合体を使用することができる。共重合モノマーの具体例としては、塩化ビニルやアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸や、αメチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物や、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステルや、アクリル酸グリシジルメタクリル酸エステルや、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミドが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の表面層(II)は、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を主成分として含むことが好ましい。
本発明の表面層(II)がポリ塩化ビニリデン系樹脂で構成されることにより、優れた防湿性や透明性を確保することができる。表面層(II)は、後述する方法で形成させた層の1層で構成されてもよいが、2層以上の複数層で構成されていてもよい。2層以上の複数層を積層して、表面層(II)の厚さを厚くすれば、本医薬品包装用シートの防湿性能が高まるので好ましい。2層以上の複数層の場合、各層は、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を含有する層であるが、各層はさらにフィラーを含有することが好ましい。
ただし、表面層(II)が2層以上の複数層で構成され、かつ表面層(II)がフィラーを含有する場合、少なくとも最表面層がポリ塩化ビニリデン系樹脂とフィラーを含有する層であるとよい。そして、最表面層から、フィラーが含有される層のうち最も基材側の層までを表面層(II)とする。また、表面層(II)を構成する各層は、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を主成分として含むことが好ましい。
表面層(II)を複数層積層する場合、単一のポリ塩化ビニリデン系樹脂で構成された層を複数層積層することができるが、異なるポリ塩化ビニリデン系樹脂で構成された層を2種以上積層することもできる。これにより本医薬品包装用シートは、防湿性、耐衝撃性、透明性、および錠剤の取り出し性のバランスに優れたものとなるので、より好ましい。
異なるポリ塩化ビニリデン系樹脂で構成された層を2種以上積層することにより、表面層(II)を形成する場合、具体的には、1046cm-1/1070cm-1の吸光度比が1.05~1.80であるポリ塩化ビニリデン系樹脂からなる表面層(II)-1と、1046cm-1/1070cm-1の吸光度比が0.80~1.05であるポリ塩化ビニリデン系樹脂からなる表面層(II)-2を交互に各々1層以上、好ましくは各々2層以上、さらに好ましくは各々3層以上積層することが好ましい。
表面層(II)-1の1046cm-1/1070cm-1の吸光度比のより好ましい範囲は1.06~1.70であり、さらに好ましい範囲は1.07~1.65である。表面層(II)-1の吸光度比がかかる下限値以上となると、十分な防湿性を付与することができる。一方、吸光度比がかかる上限値以下となると、結晶化度が高くなりすぎることが防止され、透明性の低下が防止できる。
また、表面層(II)-2の1046cm-1/1070cm-1の吸光度比のより好ましい範囲は0.82~1.04であり、さらに好ましい範囲は0.85~1.03である。表面層(II)-2の吸光度比がかかる下限値以上の場合、防湿性が良好となる。一方、吸光度比がかかる上限値以下である場合、十分な耐衝撃性が得られる。
なお、1046cm-1/1070cm-1の吸光度比は、以下の方法で算出する。
各層を構成するポリ塩化ビニリデン系樹脂のラテックスを、乾燥後の塗布量が約8g/mとなるように二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下「OPPフィルム」と称する)に塗布する。次いで 、80℃で15秒間乾燥した後、40℃で16時間熱処理を施す。次にフーリエ変換赤外分光光度計(以下「FT-IR」と称することがある)を用いて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂が塗布されたOPPフィルムの1200~800cm-1のスペクトルを測定する。なおFT-IRの測定は、ダイヤモンドATR法により行う。得られたスペクトルにおいて、1100cm-1と850cm-1を線で結び、この線をベースとして1046cm-1と1070cm-1のピーク高さをそれぞれの吸光度として測定し、吸光度比(1046cm-1の吸光度/1070cm-1の吸光度)を算出する。なお、吸光度比が大きいほど結晶化度が高いことを示す。
表面層(II)の厚さは3~50μmであることが好ましく、5~40μmであることがより好ましい。表面層(II)の厚さが3μm以上であれば、医薬品包装用シートに良好な防湿性を確保できるので好ましい。また、表面層(II)の厚さが50μm以下であれば、医薬品包装用シートに良好な透明性を確保できるので好ましい。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂の製造方法は、特に限定はされないが、従来公知の方法、例えば乳化重合法などを採用することができる。なお、ポリ塩化ビニリデン系樹脂としては、旭化成ケミカルズ社やソルベイ社などから市販されており、例えば、旭化成ケミカルズ社製「サランラテックス」シリーズなどが挙げられる。
<フィラー>
本発明に用いられるフィラーは、表面層(II)の表面に適度な凹凸を付与することで、例えば錠剤やカプセル剤等と表面層(II)との接触面積を減少させて、表面層(II)上における錠剤やカプセル剤等の滑り性を向上させる役割を果たす。
本発明に用いられるフィラーとしては、上記の役割を果たすものであれば特に限定されるものではないが、例えば有機フィラー、無機フィラー等が挙げられる。有機フィラーとしては、木粉、パルプ粉等のセルロース系粉末や、ポリマービーズ、ポリマー中空粒子等から選ばれた少なくとも1種が用いられることが好ましい。
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、ヒドロキシアパタイト、二酸化ケイ素(シリカ)、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ガラス粉、アスベスト粉、ゼオライト、珪酸白土等から選ばれた少なくとも1種が用いられることが好ましい。
表面層(II)の表面に前記フィラーにより、適度な凹凸を付与することで、例えば錠剤
やカプセル剤等と表面層(II)との接触面積が減少し、表面層(II)上における錠剤やカ
プセル剤等の滑り性が向上した、医薬品包装用シートを得ることができる。
また、このような医薬品包装用シートを用いてなるプレススルーパッケージ包装用底材において、表面層(II)が凹側になるようにポケットを形成した場合、錠剤やカプセル剤等のポケットへの充填性や、あるいは錠剤やカプセル剤等のポケットからの取り出し性が向上するので好ましい。
本発明に用いられるフィラーとしては、上記のとおり表面層(II)の表面に前記フィラーが適度に凹凸を付与するものであれば、特に限定されるものでは無いが、例えば屈折率が表面層(II)を構成するポリ塩化ビニリデン系樹脂に近いものほど、透明性の良好な医薬品包装用シートを得られやすくなるので好ましい。かかる点からポリ塩化ビニリデン系樹脂の屈折率が1.60~1.63であるならば、用いられるフィラーは屈折率が1.40~1.80であるものが好ましく、さらに好ましくは屈折率が1.50~1.70のフィラーである。フィラーの屈折率が1.40以上であれば、またフィラーの屈折率が1.80以下であれば、表面層(II)を構成するポリ塩化ビニリデン系樹脂との屈折率差が小さく保たれるので、ポリ塩化ビニリデン系樹脂とフィラーとの界面で生じる散乱反射が抑制されて、本医薬品包装用シートの透明性が良好になるので好ましい。
このようなフィラーの具体例としては、ポリスチレン系樹脂、ナイロン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等から形成されてなるポリマービーズに代表される有機フィラーや、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アルミノケイ酸塩に代表される無機フィラーを挙げることができる。
フィラーとしては、無機フィラーを使用することがより好ましい。無機フィラーを使用することで、錠剤やカプセル剤等の滑り性を向上させやすくなる。また、無機フィラーは、表面層(II)を形成させる工程で受ける熱や、医薬品包装用シートとして使用される際の環境において、安定しているのでより好ましい。
表面層(II)においてフィラーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いられるフィラーとしては、PVDCのラテックス分散液に配合した場合に、分散安定性が良好で、フィラー同士の凝集や沈降が起きるものでなければ、基材シートにラテックス分散液を安定して塗布できるので好ましい。かかる点から、フィラーのpHは、PVDCのラテックス分散液のpHに近いものが好ましく、以下の式(A)で求められるΔpHが8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましい。
ΔpH=|フィラーのpH-PVDCのラテックス分散液のpH|・・・(A)
ΔpHが8以下であれば、PVDCのラテックス分散液に対するフィラーの分散安定性を確保できるので好ましい。また仮にフィラー同士の凝集や沈降が起きる場合でも、配合から凝集、沈降までに10時間程度を要し、塗料として使用する場合は実用上の問題はないので好ましい。
また、ΔpHは5以下であれば、配合から1ヶ月経っても、PVDCのラテックス分散液中で、フィラー同士の凝集や沈降が起きることがなく、分散安定性が良好なので、さらに好ましい。
さらに、ΔpHが8以下と小さくなりフィラーが凝集しないことで、表面層(II)においてフィラーの先端同士が合体などしにくくなりフィラーが適度に凹凸を付与しやすく、中でもΔpHが5以下であればRSmを小さくしやすい。
ΔpHは、下限については特に限定されず0以上であればよい。
ここでフィラーのpHは、イオン交換水を用いて4質量%スラリーとしたときの値である。また、フィラーのpH及びPVDCのラテックス分散液のpHは、pH試験紙により測定できる。
なお、ラテックス分散液のpHは、特に限定されないが、例えば1~7、好ましくは1~5である。また、フィラーのpHは、特に限定されないが、例えば1~12、好ましくは2~6である。
本発明に用いられるフィラーは、平均粒径が0.5~30μmの範囲が好ましい。平均粒径が上記範囲内であることで、フィラーにより適度に凹凸を付与させて後述する各種の表面粗さパラメータを所定の範囲内に調整しやすくなる。また、PVDCのラテックス分散液に対する良好な分散安定性を確保する点からも、フィラーの平均粒径は上述した範囲内であることが好ましい。
これら観点から平均粒径は、0.7~20μmであることがより好ましく、1.0~15μmであることがさらに好ましい。
なお、平均粒径は、例えばレーザー回折式粒子径分布測定装置により求めた粒度分布における体積平均径のことを意味する。
また、表面層(II)の厚さに応じて、適切な平均粒径を備えたものを選んで用いるのが好ましい。かかる点から、用いるフィラーの平均粒径Dは、表面層(II)の厚さをTとすると、0.15T~3Tの範囲にあるのが好ましく、0.2T~2.5Tの範囲内にあるのがより好ましく、0.3T~2Tの範囲にあるのがさらに好ましい。フィラーの平均粒径Dが0.15T以上であれば、表面層(II)の表面に前記フィラーが適度に凹凸を付与しやすくなり、後述する表面形状パラメータを所定の範囲内に調整しやすくなる。また、フィラーの平均粒径Dが3T以下であれば、表面層(II)を構成するポリ塩化ビニリデン系樹脂にフィラーが強固に保持されて、それが表面層(II)から脱落することを防ぐことができるので好ましい。
フィラーの形状は、特に限定されず、球形であってもよいし、多角形状であってもよいし、球形に近いが多少の角部を有する形状であってもよい。また、フィラーの形状が多角形状、又は球形に近いが多少の角部を有する形状である場合、フィラーはいわゆる定形フィラーと呼ばれるものでもよい。定形フィラーとは、粒子の形状が互いに相似で一定していることを意味する。角部を有する定形フィラーを使用することで、表面層(II)においてフィラーにより付与される凸部が鋭く、かつ凸付与部の距離が互いに一定に保ちやすくなり、後述するRΔq、Rsk、Rku、RSmなどの各種表面形状パラメータを好適な範囲に調整しやすくなる。上記定形フィラーとしては、水澤化学社製の「ミズパールK」シリーズなどが挙げられる。一方で、球形のフィラーとしては、水澤化学社製の「シルトンJC」シリーズなどが挙げられる。また、これらのフィラーは表面層(II)を構成するポリ塩化ビニリデン系樹脂との密着性や分散性を向上させるため、表面処理を施してもよい。
本表面層(II)におけるフィラーの含有量としては、上記のとおり表面層(II)の表面に前記フィラーにより適度に凹凸を付与させることができれば、特に限定されるものではないが、表面層(II)を構成する全成分を100質量%としたとき、フィラーの含有量は0.2~2質量%であることが好ましく、0.4~1.5質量%であることがさらに好ましい。フィラーの含有量が0.2質量%以上であれば、表面層(II)の表面に前記フィラーにより適度に凹凸を付与させることができ、表面形状パラメータを所望の範囲内に調整しやすくなる。また、フィラーの含有量が2質量%以下であれば、本医薬品包装用シートの透明性が得られやすくなるので好ましい。
<その他の成分>
本発明の表面層(II)は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリ塩化ビニリデン系樹脂およびフィラー以外のその他の成分を含有してもよい。例えば酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、相溶化剤、滑剤、核剤およびその他の添加剤を含有してもよい。
<局部傾斜の二乗平均平方根(RΔq)>
上記のとおり、本発明における表面層(II)は、表面に適度に凹凸を有するすることで、例えば錠剤やカプセル剤等と表面層(II)との接触面積を減少させて、表面層(II)上における錠剤やカプセル剤等の滑り性を向上させる役割を果たすものである。ここで、適度な凹凸を定量的に示す指標としては、局部傾斜の二乗平均平方根(RΔq)が挙げられる。二乗平均平方根(RΔq)は、表面層(II)をJIS B0601:2013に準拠して接触式表面粗さ計で測定して得られる、粗さ曲線から求められた表面性状パラメータである。本発明では、局部傾斜の二乗平均平方根(RΔq)が、以下の要件(1)を満たす。
(1)局部傾斜の二乗平均平方根(RΔq)が、0.02以上
局部傾斜の二乗平均平方根(以下「RΔq」と称する)は、基準長さにおける局部傾斜dz/dxの二乗平均平方根を表すもので、即ち、凸部の局所的な傾斜角の大きさを、言い換えると表面の凸部の険しさを表すものである。RΔqが大きいほど、フィラーなどにより形成される凹凸の凸部が鋭いことを示唆し、錠剤やカプセル剤等と表面層(II)との接触面積を減少させることができ、それにより、錠剤やカプセル剤等のPTPの成形ポケットへの充填性、あるいは錠剤やカプセル剤等のPTPの成形ポケットからの取り出し性が向上する。
さらにはRΔqが大きいほど、成形時において、加熱板やプラグ等と表面層(II)との接触面積を減少させることができ、それにより、加熱板からのシートの剥離や、シートポケット部からのプラグの離脱が容易になり、PTPのポケット部を成形する工程における熱成形性が向上する。
一方で、RΔqが0.02未満となると、錠剤やカプセル剤等の充填性及び取り出し性を十分に向上させることが難しい。また、PTPのポケット部を成形する工程における熱成形性を十分に向上させることが難しい。
RΔqは0.02~0.20であることが好ましく、0.028~0.20であることがより好ましく、0.03~0.10であることがさらに好ましい。RΔqが0.02以上であれば、フィラーなどによって付与される凸部の鋭さが十分確保されるので、錠剤、カプセル剤、加熱板及びプラグ等と、表面層(II)との接触面積を十分に減少させることができるため好ましい。また、RΔqが0.20以下であれば、フィラーなどによって付与される凸部が鋭くなりすぎることを防止して、カプセル錠の傷付き、錠剤の削れや解砕などの不具合を防止できる。
<平均長さ(RSm)>
本医薬品包装用シートは、表面層(II)の表面性状パラメータがさらに以下の(2)の要件を満たすことが好ましい。
(2)平均長さ(RSm)が、0.05~0.18nm
なお、(2)で示す平均長さ(RSm)、後述するスキューネス(Rsk)、クルトシス(Rku)及び平均高さ(Rc)は、表面層(II)をJIS B0601:2013に準拠して接触式表面粗さ計で測定して得られる、粗さ曲線から求められた表面性状パラメータである。
平均長さ(以下「RSm」と称する)は、基準長さにおける、断面曲線要素の長さXsの平均を表すもので、表面からの凸部の高さではなく、横方向の大きさ、言い換えると凸部間の粗密の程度を表すもので、RSmが小さいほど凸部が緻密に存在している状態を示唆する。かかる点からRSmは0.05~0.17nmであることが好ましく、0.08~0.16nmであることがより好ましく、0.10~0.15nmであることがさらに好ましい。RSmが0.05nm以上であれば、フィラーなどによって付与される凸部先端同士の間隔が十分確保されるので、凸部先端同士が合体して、あたかも鈍い先端を備えた凸部かのように作用することがないでの好ましい。即ち、錠剤、カプセル剤、加熱板及びプラグ等と、表面層(II)との接触面積が増加することがないので好ましい。一方で、RSmが0.18nm以下であれば、上記したRΔqが大きいことも相まって先端の鋭い凸部が緻密に存在して、錠剤やカプセル剤等のPTPへの充填性や取り出し性、さらにPTPのポケット部を成形する工程における熱成形性が向上する。
<スキューネス(Rsk)>
本医薬品包装用シートは、表面層(II)の表面性状パラメータが以下の(3)の要件を満たすことが好ましい。
(3)スキューネス(Rsk)が、0.3以上
スキューネス(以下Rskと称する)は二乗平均平方根高さRqの三乗によって無次元化した基準長さにおいて、Z(x)の三乗平均を表すもので、平均線を中心としたときの山部と谷部の対称性を、即ち歪度(わいど)を表すものである。
言い換えると、Rskは高さ分布に関するパラメータで、正の値であれば高さ分布が平均線に対して下側に偏って山部がより鋭い状態にあることを示唆し、また負の値であれば高さ分布は平均線に対して上側に偏って山部がより鈍い状態にあることを示唆する。かかる点から、Rskは0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましく、1.5以上であることがよりさらに好ましい。
Rskが0.3以上であれば、山部即ちフィラーなどによって付与される凸部が鋭く、錠剤、カプセル剤、加熱板及びプラグ等と、表面層(II)との接触面積を十分に減少させることができるので好ましい。
また、Rskは、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.5以下がさらに好ましい。Rskが5.0以下であると、フィラーなどによって付与される凸部が鋭くなりすぎることを防止して、カプセル錠の傷付き、錠剤の削れや解砕などの不具合を防止できる。
<クルトシス(Rku)>
本医薬品包装用シートは、表面層(II)の表面性状パラメータが以下の(4)の要件を満たすことが好ましい。
(4)クルトシス(Rku)が、8.5~20.0
クルトシス(以下「Rku」と称する)は二乗平均平方根高さRqの四乗によって無次元化した基準長さにおいて、Z(x)の四乗平均を表すもので、表面の鋭さの尺度である尖度を意味し、端的に言えば、フィラーなどによって付与される凸部先端の鋭さを表すものと言える。
本発明における表面層(II)は、表面に適度に凹凸を有することで、例えば、錠剤、カプセル剤、加熱板及びプラグ等と、表面層(II)との接触面積を減少させて、表面層(II)上における錠剤やカプセル剤等の滑り性を向上させたり、PTPのポケット部を成形する工程において、加熱板やプラグ等に対する表面層(II)の滑り性を向上させる役割を果たすものである。
かかる点から、表面の鋭さを表すRkuは8.5~20.0であるのが好ましく、10.0~15.0であるのがより好ましい。Rkuが8.5以上であれば、錠剤、カプセル剤、加熱板及びプラグ等と、表面層(II)との接触面積を十分に減少させることができるので好ましい。またRkuが20.0以下であれば、尖度が高くなりすぎるのを防止して、カプセル錠の傷付き、錠剤の削れや解砕などの不具合を防止できる。
<高さ平均(Rc)>
本医薬品包装用シートは、表面層(II)の表面性状パラメータが以下の(5)の要件を満たしてもよい。
(5)高さ平均(Rc)が0.30nm以上
高さ平均(Rc)は、表面層(II)の表面に付与される凸部の高さの平均を示すものであり、表面層(II)が一定以上の高さ平均(Rc)を有することで、表面層(II)に対する錠剤やカプセル剤の滑り性、及び、加熱板やプラグに対する表面層(II)の滑り性を良好にしやすくなる。高さ平均(Rc)は以上の観点から0.40nm以上が好ましく、0.70nm以上がさらに好ましい。また、高さ平均(Rc)は、例えば3nm以下であればよく、好ましくは2nm以下である。
<表面層(II)の製造方法>
本発明の医薬品包装用シートにおいて、表面層(II)は、コーティングにより形成できる。表面層(II)を形成する具体的な方法としては、表面層(II)を構成する、ポリ塩化ビニリデン系樹脂などの成分を溶解あるいは分散させた塗料を、公知の方法で塗布する方法を挙げることができる。
塗料としては、ポリ塩化ビニリデン系樹脂及びフィラーが分散された分散液が好ましく使用できる。また、塗料には、ポリ塩化ビニリデン系樹脂及びフィラー以外にも上記したその他の成分が溶解あるいは分散していてもよい。
上記分散液は、特に限定されないが、ポリ塩化ビニリデン系樹脂のラテックス分散液と、フィラーを水に分散させたスラリー液とを混合し、攪拌することで得ることができる。この際、ラテックス分散液とフィラーのpHの差を上記の通り低くすることで、塗料におけるフィラーの分散性、安定性などが良好になる。
ラテックス分散液におけるポリ塩化ビニリデン系樹脂の濃度は、特に限定されないが、例えば30~70質量%程度である。また、フィラーを水に分散させたスラリー液のフィラーの濃度は、例えば1~10質量%程度である。
塗料は、基材層(I)を構成するための基材シートに直接塗布してもよいし、基材層(I)の上に、中間層、アンカーコート層などの他の層が設けられる場合には、基材シートの上に設けられた他の層の上に塗布するとよい。
塗料を塗布する方法としては、例えば、エアナイフコーター、ロールコーター、グラビアコーター、リバースグラビアコーター、ダイコーター、あるいはドクターブレードコーターを用いて塗布する方法を挙げることができる。塗布後、用いた塗料に応じた方法により、表面層(II)を形成する。具体的には、加熱による乾燥により表面層(II)を形成すればよい。
また、表面層(II)がフィラーを含有しない場合などにおいては、形成した表面層(II)に対して、エンボス、マットロールなどの凹凸面を有する部材を表面層(II)に押し当てることなどして凹凸を形成してもよい。
<その他の層>
本発明の医薬品包装用シートは、基材層(I)と少なくとも一方の表面層に、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を含む表面層(II)を有してなるものであるが、基材層(I)と表面層(II)との間に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の層を少なくとも一層設けることができる。
例えば、基材層(I)と表面層(II)との間の接着性を、より向上させるためアルキルチタネート系化合物、ポリイソシアネート系化合物、ポリアルキレンイミン系化合物、ポリウレタン系樹脂等から構成されるアンカーコート層(III)を、基材層(I)と表面層(II)との間に設けることができる。
アンカーコート層(III)の厚さは、特に限定されないが、例えば0.4~20μm、好ましくは1~10μmである。
アンカーコート層は、アンカーコート層(III)を形成するための成分又はその前駆体を含むアンカーコート剤を基材シートなどに塗布し、必要に応じて乾燥、硬化などすることで形成できる。
また、表面層(II)がフィラーを含有する場合には、基材層(I)と表面層(II)との間に、フィラーを含有しないポリ塩化ビニリデン樹脂から形成された中間層(IV)を設ければ、本医薬品包装用シートの透明性を損なうことなく、防湿性を向上させることができるので好ましい。中間層(IV)は、ポリ塩化ビニリデン樹脂のみからなってもよいが、ポリ塩化ビニリデン系樹脂およびフィラー以外のその他の成分を適宜含有してもよい。その他の成分を含有する場合にも、ポリ塩化ビニリデン系樹脂は中間層(IV)の主成分となるとよい。中間層(IV)に使用されるポリ塩化ビニリデン樹脂、及びその他の成分は、表面層(II)の説明で列挙されたものを適宜選択して使用するとよい。中間層は、1層単層でもよいし、2層以上の複数層で構成されていてもよい。
中間層の厚さは、特に限定されないが、例えば2~50μm、好ましくは10~40μmである。
医薬品包装用シートにおいて中間層(IV)を設けると、錠剤やカプセル剤等のPTPの成形ポケットからの取り出し性、又は成形ポケットへの充填性が低下しやすい傾向にあるが、本発明では表面層(II)が上記の通り所定の表面形状パラメータを有することで、上記取り出し性及び充填性が比較的良好になる。
中間層(IV)は、例えば基材層(I)を構成する基材シートの上に、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を含む塗料を公知の方法で塗布し、適宜乾燥することで形成するとよい。塗料としては、ポリ塩化ビニリデン系樹脂のラテックス分散液を使用すればよい。塗料には、適宜その他の成分が配合されていてもよい。また、基材シートの上にアンカーコート層(III)が設けられる場合には、アンカーコート層(III)上に塗布すればよい。
<積層構成>
本医薬品包装用シートの好ましい積層構成として、次の積層構成を挙げることができる。基材層(I)/表面層(II)の2層構成、基材層(I)/アンカーコート層(III)/表面層(II)とする3層構成、さらには、基材層(I)/アンカーコート層(III)/中間層(IV)/表面層(II)とする4層構成などを挙げることができる。
<医薬品包装用シートの全厚さ>
医薬品包装用シートの全厚さは、特に限定するものではないが、例えば加工性、実用性を考慮した場合、0.1~0.4mmであることが好ましく、0.15~0.35mmであることがより好ましく、0.18~0.3mmであることがさらに好ましい。シートの厚さが0.1mm以上であれば、好適なシートの剛性、防湿性が得られる。一方、シートの厚さが0.4mm以下であれば、PTPとして使用する際に医薬品の取り出しで不具合を生じにくくなり、透明性も良好となる。
<全光線透過率>
医薬品包装用シートの全光線透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率が70%以上であることで、医薬品包装用シートの透明性を確保しやすくなる。また、医薬品包装用シートの全光線透過率は、高ければ高いほどよく100%以下であればよいが、実用的には例えば97%以下である。
<ヘーズ>
医薬品包装用シートのヘーズは、25%以下であることが好ましく、22%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。ヘーズが25%以下であることで、医薬品包装用シートの透明性を確保しやすくなる。また、医薬品包装用シートのヘーズは、低ければ低いほどよく、特に限定しないが例えば、0.5%以上であればよい。
なお、全光線透過率は、JIS K-7361-1(1997)、ヘーズは、JIS K7136(2000)に準拠した方法で測定できる。
<医薬品包装用シートとその加工>
本発明の医薬品包装用シートは、真空成形、圧空成形、圧空真空成形、プレス成形、その他の熱成形によって、各種形状の成形体に形成することができる。医薬品包装用シートは、例えば、包装用成形体、特にPTP包装用底材、ブリスターパッケージ等の包装用成形体を製造する際に好適に利用することができる。
PTP包装用底材は、例えば、医薬品包装用シートの表面層(II)が凹側になるようにしてポケット部を形成したものである。これにより、PTP包装用底材は、凹部よりなるポケット部の内面は滑り性が良好な表面層(II)によって形成されるので、ポケット部からのカプセル剤又は錠剤の取り出しや、ポケット部へのカプセル剤又は錠剤の充填が容易となる。加えて、PTPのポケットを成形する工程において、ポケット部の内面が滑り性の良好な表面層(II)によって形成されるので、ポケット部からのプラグの離脱も容易となる。
例えば、PTP包装用底材の成形シートを製造する場合には、成形前に加熱板で本発明の医薬品包装用シートを加熱軟化させ、成形型にて当該シートを挟み、圧空を注入して成形型の凹型に沿わせてシート面内に多数のポケット部(例えば、直径約9mm、深さ約4mm)を成形するようにすればよい。また、必要に応じて圧空注入時に適切なタイミングでプラグを上昇および下降させて成形性を補助すればよい。
医薬品包装用シートには、その基材層(I)の表面のうち表面層(II)が設けられる面とは反対側の表面に、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、プラスチックフィルム(例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム)等を積層することも可能である。アルミニウム箔又は各種フィルムなどは、表面層(II)が設けられる面とは反対側の表面に積層されるとよい。
上記のアルミニウム箔又は各種フィルムは、医薬品包装用シートに対して熱成形を施すと共に、医薬品包装用シートに積層するとよい。また、医薬品包装用シートに、その基材(I)の表面層(II)が設けられる面とは反対側の表面にアルミニウム箔又は各種フィルムなどを積層して複合シートを形成した後、これを熱成形することも可能である。
また、製品の意匠性や二次加工性等を高める目的で、シート表面にエンボス加工や、艶消し加工等の加工を行ってもよい。この場合、一旦鏡面状のシートを作成してからエンボスロールや艶消しロールで加工を施すようにしても、押出成形の際にキャストロールをエンボスロールや艶消しロールに変更して成形するようにしてもよい。本発明の趣旨を損なわない限り、シート表面に帯電防止剤、シリコーン、ワックス等をコーティングすることも、傷付着防止等の目的で表面保護シートを用いて被膜を形成することも、印刷層を設けることも可能である。なお、印刷層の形成手段は現在公知の任意の手段を採用可能である。
また、上記PTP包装用底材は、蓋材と組み合わされることにより、PTP包装材とすることができる。蓋材は、PTP包装用底材の裏面のポケット部が形成された部分以外に貼り合わされてポケット内部を密閉することが可能になる。蓋材は、アルミニウム箔などでもよいし、アルミニウム箔に1層又は2層以上の樹脂フィルムを積層させた積層フィルムでもよい。蓋材は、適宜接着剤などによりPTP包装用底材に貼り合わされてもよい。ポケット部には、カプセル剤、錠剤などの医薬品が収納される。
本発明の医薬品包装用シートは、例えば、医薬品包装分野においてカプセル剤や錠剤等の固形剤、粒状の医薬品等を包装するためのPTP包装に使用することができる。
本発明では、上記で医薬品包装用シートとして説明したシート(以下、単に「シート(X)」という)は、医薬品包装用以外にも使用可能であり、別の実施形態として、ポケット部を有する成形品に使用できる。ポケット部を有する成形品は、上記で説明したとおり、シート(X)を成形して、表面層(II)が凹側になるようにしてポケット部を形成したものである。成形品は、ポケット部に、食品などの医薬品以外のカプセルや錠剤等の固形剤、粒状の物質などが収納されるとよく、収納された物質を包装する包装用として使用されるとよい。
ポケット部を有する成形品は、例えばPTP包装用底材として使用されるものであり、上記の通り、蓋材と組み合わされることにより、PTP包装材とすることができる。
また、シート(X)は、医薬品包装用シートと同様に、上記の通り、アルミニウム箔又は各種フィルムなどが、表面層(II)が設けられる面とは反対側の表面に積層されるとよく、アルミニウム箔又は各種フィルムが表面に積層されたうえで、成形されて成形品として使用してもよい。さらには、シート(X)には、適宜各種の加工が施されたり、被膜が形成されたり、印刷層が形成されたりしてもよい。
なお、シート(X)の詳細な構成、シート(X)の製造方法、シート(X)の加工、PTP包装用底材、PTP包装材の詳細な説明は、上記の医薬品包装用シートにおいて説明したとおりであり、その詳細は省略する。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
<測定及び評価方法>
実施例及び比較例で得たサンプルの測定方法及び評価方法について以下に説明する。以下では、基材層(I)(基材シート)の成形時あるいは基材層(I)(基材シート)に表面層(II)を塗布する際の引取り(流れ)方向をMD、その直交方向をTDと表示する。
(1)ラテックス分散液およびフィラーのpH
各pHの測定は、pHのレンジに応じて、次のとおり各種pH試験紙(Merck社製)を用いて行った。なお、フィラーについては、イオン交換水を用いて4質量%のスラリー液とし、3時間静置後の液を測定して、フィラーのpHとした。試験は、各試験紙の発色部に各液を2~3滴下して行った。
・pH0~6.0:pHインジケーターストリップ 酸性域用
・pH5.0~10.0:pHインジケーターストリップ 中性域用
・pH7.5~14:pHインジケーターストリップ アルカリ性域用
(2)全光線透過率及びヘーズ
次の装置、規格を用いて、表面層(II)側より、測定光を入射して、全光線透過率およびヘーズを測定した。
・測定装置:NDH-5000型(日本電色工業社製)
・測定規格:全光線透過率:JIS K-7361-1(1997)に準拠
ヘーズ:JIS K7136(2000)に準拠
(3)表面粗さパラメータ
次の装置、設定条件を用いて、表面層(II)の各表面粗さパラメータを測定した。
・測定装置:サーフコーダ ET4000A((株)小坂研究所製)
・粗さ解析システム:i-star((株)小坂研究所製)
・測定規格:JIS B0601:2013およびISO 4287:1997に準拠
・触針先端径:0.5μmR
・カットオフ:0.8mm
・フィルター:ガウス
・測定長さ:8mm
・レベリング:前後2点
・start-up:カットオフ×1
・データ:16,000ポイント
・ドライブスピード:0.2mm/s
・測定荷重:100μN
(4)最小滑落角度
ペーパーカッター565型(ダーレー社製)の押切部にアルミ板を固定して、その上にシートサンプルを表面層(II)が上になるように、両面テープで貼り合わせた。
押切部の上昇度合いを調整して、アルミ板とペーパーカッター設置面とが形成する角度が15~30度の範囲で2.5度刻みになるように設定し、後述する錠剤、あるいはカプセル剤が表面層(II)を滑落する最小の角度を調べて、最小滑落角度とした。最小滑落角度が小さいほど、表面層(II)の滑り性は良好であり、以下の評価基準で評価した。
〇(good):錠剤及びカプセル剤のいずれも最小滑落角度が20°以下であった。
×(poor):錠剤及びカプセル剤の少なくともいずれか一方で最小滑落角度が20°より大きかった。
最小滑落角度の測定に使用した錠剤及びカプセル剤は以下の通りであった。
錠剤:フスタゾール糖衣錠10mg Y-HU10(ニプロESファーマ社製)
カプセル剤:2ピースカプセル(クオリカプス社製;6.5mm径×18mmシール長)に小麦粉を封入して、0.35g±0.02gの質量にしたもの
なお、錠剤、あるいはカプセル剤が滑落する方向がシートサンプルのMDとなるように、試験を行った。また、カプセル剤が転がり落ちるのを防ぐため、表面層(II)上に幅10mmの滑落ガイドを設けて、そのガイド内を滑落させるように試験を行った。試験は、25℃、50%RHに空調した室内で行った。
(5)熱成形性
次の装置、設定条件により、PTPのポケット部を成形する工程における、加熱板やプラグに対する表面層(II)の剥離の容易さが維持される、加熱板(下側)の上限温度を調べた。剥離可能な上限温度が高いほど表面層(II)の滑り性は良好で熱成形性に優れており、以下の評価基準で評価した。
・成形装置:ブリスター包装機 FBP-300E型(CKD社製)
・成形回数:75ショット/min
・成形ブロー圧力:0.3MPa
・成形ポケット深さ:4.5mm
・成形試験回数:35ショット
・プラグ設定温度:20℃
・加熱板設定温度
上側(基材層(I)側):120℃に固定
下側(表面層(II)側):110、115、120℃の3水準に調整
〇:下側設定温度が120℃でも、加熱板やプラグに対する表面層(II)の剥離が容易で、シートの変形や破断、およびプラグ抜けや変形、破損が起こらなかった。
△:下側設定温度が115℃で、加熱板やプラグに対する表面層(II)の剥離が容易でシートの変形や破断、およびプラグ抜けや変形、破損が起こらなかった。
×:下側設定温度が115℃で、加熱板やプラグに対する表面層(II)の剥離が容易でシートの変形や破断、およびプラグ抜けや変形、破損といった不具合が起こった。(ただし、下側設定温度が110℃の時は、不具合発生はなかった)
<原料>
実施例及び比較例で使用した原料について以下に説明する。
・硬質PVCシート-A:品名「ビニホイルC-0459」(三菱ケミカル社製、厚さ200μm)
・アンカーコート剤:タケラックA-616(三井化学社製)/タケネートA-65(三井化学社製)=16/1の質量比で混合した組成物からなる脂肪族エステル系ポリウレタン系接着剤。
・PVDCラテックス分散液-1:旭化成ケミカルズ社製のPVDCラテックス:L1(品名:サランラテックスL574A)、PVDC濃度=60質量%、吸光度比=1.10、pH=3
・PVDCラテックス分散液-2:旭化成ケミカルズ社製PVCラテックス:L2、PVDC濃度=60質量%、吸光度比=1.10、pH=2
・PVDCラテックス分散液-3:旭化成ケミカルズ社製PVDCラテックス:L3(品名:サランラテックスL580C)、PVDC濃度=60質量%、吸光度比=0.96、pH=3
・フィラー-1:品名「ミズパールK500L」(水澤化学社製、二酸化ケイ素(シリカ)、平均粒径5μm)
・フィラー-2:品名「シルトンJC50」(水澤化学社製、アルミノケイ酸塩、平均粒径5μm)
・スラリー-1:イオン交換水にフィラー-1(ミズパールK500L)が4質量%になるよう配合した後、プロペラ撹拌機を用いて約500rpmで1時間混合して、スラリー-1とした。スラリー-1のpHは5であった。
・スラリー-2:イオン交換水にフィラー-2(シルトンJC50)が4質量%になるよう配合した後、プロペラ撹拌機を用いて約500rpmで1時間混合して、スラリー-2とした。スラリー-2のpHは10であった。
・ラテックス混合液-1:PVDCラテックス分散液-1/スラリー-1=15/2の質量比で配合した後、プロペラ撹拌機を用いて約200rpmで15分混合して、ラテックス混合液-1とした。
・ラテックス混合液-2:PVDCラテックス分散液-1/スラリー-2=15/3の質量比で配合した後、プロペラ撹拌機を用いて約200rpmで15分混合して、ラテックス混合液-2とした。
・ラテックス混合液-3:PVDCラテックス分散液-2/スラリー-1=15/2の質量比で配合した後、プロペラ撹拌機を用いて約200rpmで15分混合して、ラテックス混合液-3とした。
<実施例1>
基材層(I)として硬質PVCシート-Aを用い、その片面にアンカーコート剤を塗布し、乾燥させて、厚さ2μmのアンカーコート層(III)を形成した。そのアンカーコート層側に表面層(II)の厚さが5μmとなるように、ラテックス混合液-1をバーコーターで塗布後、乾燥固化させて、表面層(II)を形成させて、基材層(I)/アンカーコート層(III)/表面層(II)の構成を有するシートサンプルを得た。ラテックス混合液-1の乾燥は、60℃に設定した乾燥器内で3分行った。得られたシートサンプルについて、全光線透過率、ヘーズ、表面層(II)の各表面性状パラメータ、および最小滑落角度の評価を行った。
<実施例2>
実施例1において、ラテックス混合液-1の代わりにラテックス混合液-2を用いた点を除いて、実施例1と同様にしてシートサンプルを得た。得られたシートサンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。
<実施例3>
基材層(I)として硬質PVCシート-Aを用い、実施例1と同様にアンカーコート層を形成した。そのアンカーコート層側に中間層(IV)の厚さが10μmとなるように、PVDCラテックス分散液-1をグラビアコーターで塗布後、乾燥固化させて、中間層(IV)を形成させた後、その上にPVDCラテックス分散液-1をグラビアコーターで塗布後、乾燥固化させて、中間層(IV)を総厚が20μmとなるよう形成させた。さらにその上に、表面層(II)の厚さが5μmとなるように、ラテックス混合液-1をグラビアコーターで塗布後、乾燥固化させて、表面層(II)を形成させて、基材層(I)/アンカーコート層(III)/中間層(IV)/中間層(IV)/表面層(II)の構成のシートサンプルを得た。PVDCラテックス分散液-1及びラテックス混合液-1の乾燥は、80℃に設定した乾燥炉内で1.5分行った。得られたシートサンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。
<実施例4>
実施例3において、PVDCラテックス分散液-1の代わりにPVDCラテックス分散液-2を用いた点と、ラテックス混合液-1の代わりにラテックス混合液-3を用いた点を除いて、実施例3と同様にしてシートサンプルを得た。得られたシートサンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。
<実施例5>
基材層(I)として硬質PVCシート-Aを用い、実施例1と同様にアンカーコート層を形成した。そのアンカーコート層側に、PVDCラテックス分散液-3をグラビアコーターで塗布後、乾燥固化させて、厚さが7μmとなるように中間層(IV)-2を形成させた後、その上にPVDCラテックス分散液-1をグラビアコーターで塗布後、乾燥固化させて、厚さが7μmとなるように中間層(IV)-1を形成させる操作を、この順番でさらに5回繰り返して中間層(IV)の総厚が49μmとなるよう形成させた。さらにその上に、ラテックス混合液-1をグラビアコーターで塗布後、乾燥固化させて、厚さが6μmとなるように表面層(II)を形成させて、基材層(I)/アンカーコート層(III)/中間層(IV)-2/中間層(IV)-1/中間層(IV)-2/中間層(IV)-1/中間層(IV)-2/中間層(IV)-1/中間層(IV)-2/表面層(II)の構成のシートサンプルを得た。PVDCラテックス分散液-1、PVDCラテックス分散液-3及びラテックス混合液-1の乾燥は、85℃に設定した乾燥炉内で0.5分行った。得られたシートサンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。また、熱成形性の評価も行った。
<比較例1>
実施例1において、ラテックス混合液-1の代わりにPVDCラテックス分散液-1を用いた点を除いて、実施例1と同様にしてシートサンプルを得た。得られたシートサンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。
<比較例2>
実施例3において、ラテックス混合液-1の代わりにPVDCラテックス分散液-1を用いた点を除いて、実施例3と同様にしてシートサンプルを得た。得られたシートサンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。
<比較例3>
実施例4において、ラテックス混合液-3の代わりにPVDCラテックス分散液-2を用いた点を除いて、実施例4と同様にしてシートサンプルを得た。得られたシートサンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。
<比較例4>
実施例5において、ラテックス混合液-1の代わりにPVDCラテックス分散液-1を用いた点を除いて、実施例5と同様にしてシートサンプルを得た。得られたシートサンプルについて、実施例5と同様の評価を行った。
Figure 2022117395000001


表1に示す結果より明らかなように、実施例1~5のシートは、局部傾斜の二乗平均平方根(RΔq)を0.02以上とすることで、最小滑落角度が小さくなり、錠剤やカプセル剤等のPTPの成形ポケットへの充填性、及び成形ポケットからの取り出し性が優れたものとなっていることがわかる。さらに実施例5のシートにおいて、PTP成形時の熱成形性にも優れていることが確認された。
従って、局部傾斜の二乗平均平方根(RΔq)を0.02以上とした、実施例1~5のシートは、医薬品包装用シートとして好適に用いることができる。
一方で、比較例1~4では、局部傾斜の二乗平均平方根(RΔq)が小さくなることで、最小滑落角度が大きくなり、錠剤やカプセル剤等のPTPの成形ポケットへの充填性、及び成形ポケットからの取り出し性が不十分となる。また、比較例4のシートにおいて、PTP成形時の熱成形性も実施例5に比べて不十分であることが確認された。
本発明の医薬品包装用シート、およびそれを用いて製造したプレススルーパッケージ包装用底材、プレススルーパッケージ包装材は、医薬品である錠剤やカプセル剤等のPTPへの充填性や取り出し性が優れたものとなるので、医薬品用として好適に用いることができる。また、本発明のシートは、凹部よりなるポケット部を有する成形品に成形して、食品などの医薬品用以外にも用いることができる。

Claims (16)

  1. 基材層(I)と、少なくとも一方の表面層に、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を含む表面層(II)を有し、前記表面層(II)をJIS B0601:2013に準拠して接触式表面粗さ計で測定して得た表面性状パラメータが以下の(1)で示す要件を満たす、医薬品包装用シート。
    (1)局部傾斜の二乗平均平方根(RΔq)が、0.02以上
  2. 前記表面層(II)の厚さが3~50μmである、請求項1に記載の医薬品包装用シート。
  3. 前記表面層(II)に、フィラーを含む、請求項1又は2に記載の医薬品包装用シート。
  4. 前記フィラーの平均粒径が0.5~30μmである、請求項3に記載の医薬品包装用シート。
  5. 前記フィラーが無機フィラーである、請求項3又は4に記載の医薬品包装用シート。
  6. 前記表面層(II)がポリ塩化ビニリデン系樹脂を主成分として含み、全体を100質量%としたとき、フィラーの含有量が0.2~2質量%である、請求項3~5のいずれか一項に記載の医薬品包装用シート。
  7. 前記表面層(II)を構成するポリ塩化ビニリデン系樹脂のラテックス分散液と前記フィラーのpHが、以下式(A)で求められるΔpHが8以下である、請求項3~6のいずれか一項に記載の医薬品包装用シート。
    ΔpH=|フィラーのpH-ラテックス分散液のpH|・・・(A)
  8. 前記基材層(I)の厚さが50~500μmであり、ポリ塩化ビニル系樹脂またはポリオレフィン系樹脂を主成分として含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬品包装用シート。
  9. 前記表面性状パラメータが以下の(2)の要件を満たす、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬品包装用シート。
    (2)平均長さ(RSm)が、0.05~0.18nm
  10. 前記表面性状パラメータが以下の(3)の要件を満たす、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬品包装用シート。
    (3)スキューネス(Rsk)が、0.3以上
  11. 前記表面性状パラメータが以下の(4)の要件を満たす、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬品包装用シート。
    (4)クルトシス(Rku)が、8.5~20.0
  12. 前記表面層(II)がコーティングにより形成される請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬品包装用シート。
  13. 請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬品包装用シートを用いてなるプレススルーパッケージ包装用底材。
  14. 表面層(II)が凹側になるようにしてポケット部を形成した請求項13に記載のプレススルーパッケージ包装用底材。
  15. 請求項14に記載のプレススルーパッケージ包装用底材と、蓋材とを備えるプレススルーパッケージ包装材。
  16. 基材層(I)と、少なくとも一方の表面層に、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を含む表面層(II)を有するシートであって、前記表面層(II)をJIS B0601:2013に準拠して接触式表面粗さ計で測定して得た表面性状パラメータが以下の(1)で示す要件を満たし、凹部よりなるポケット部を有する成形品に用いるシート。
    (1)局部傾斜の二乗平均平方根(RΔq)が、0.02以上

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