JP2014172656A - Ptp用多層シートおよびそれを用いた包装体 - Google Patents

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Abstract

【課題】
防湿性と耐衝撃性、カプセルや錠剤の取り出し性に優れたPTP用多層シートを提供する。
【解決手段】
厚みが0.05mm以上、0.12mm以下であるポリ塩化ビニル系樹脂(A)からなる層(X)を最外層に少なくとも1層有し、厚みが0.05mm以上、0.15mm以下であるポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)からなる層(Y)を内層に少なくとも1層以上有し、かつ、全層の合計厚みが0.20mm以上、0.32mm以下、透湿度が0.35g/(m・24時間)以下であり、PTP成形した後のPTP押し出し力のピーク1、及び、ピーク2の強度が共に45N以上、60N以下であることを特徴とするPTP用多層シート。
【選択図】 なし

Description

本発明は防湿性と耐衝撃性、カプセルや錠剤の取り出し性に優れたPTP用多層シートに関する。
医薬品や食品等の包装分野においては、カプセルや錠剤等の固形剤、粒状の食品等を包装するためにPTP(プレススルーパッケージ)が広く使用されている。
PTPとは、例えば、透明のシートを加熱した後、圧空成形、真空成形等を施すことによりカプセルや錠剤等の固形物を収納するポケット部を形成し、ポケット部にカプセル等を収納した後、例えばアルミ箔のように手で容易に引き裂いたり、開封したりできる材質の箔やフィルムを蓋材として貼り合せて一体化した形態の包装である。PTPによれば、透明なシートのポケットに収納された固形剤や食品等を開封前に直接肉眼で確認でき、開封する際には、ポケット部の固形剤等を指で押して蓋材を押し破ることにより、内容物を容易に取り出すことができる。
PTPに用いられるシートの原料としては、ポリ塩化ビニル系樹脂(以下「PVC」ということもある)が良好な熱成形性、常温での剛性、耐衝撃性、透明性を有するため、従来から使用されてきた。ところが、PVCでは防湿性が十分ではない場合があるため、より防湿性が要求される内容物を包装する場合、PVCの代替としてポリプロピレン系樹脂(以下「PP」ということもある)が使用されている。
しかしながら、PPは、PVCと比較して防湿性に優れるものの、近年はさらなる防湿性の向上が求められており、透明性、防湿性に優れる材料として、環状オレフィンポリマー(以下「COP」ということもある)や、環状オレフィンコポリマー(以下「COC」ということもある)がPVCやPPの代替材料候補の一つとして注目されている。一方、COPやCOCは、透明性、防湿性、機械的強度、成形性等に優れる反面、耐衝撃性が不足していたり、カプセルや錠剤の取り出し性が悪かったりする問題が指摘されている。
また、COPやCOCと同様に防湿性に優れたPTPとして、PVCやPPからなるシートにポリ塩化ビニリデン系共重合樹脂(以下「PVDC系共重合樹脂」ということもある)のラテックスを塗布したシートが提案されているが、防湿性を高めるためにPVDC系共重合樹脂中のPVDCの割合を高くした場合、COPやCOCと同様に耐衝撃性が不足する場合がある。そこで、このような問題点の改良するため、PVDC系共重合樹脂からなる層の両側にPVCからなる層を設けたシートが提案されている。
例えば、特許文献1には、塩化ビニリデン単量体91〜99質量%と、塩化ビニリデンと共重合可能な1種以上の単量体9〜1質量%とから共重合されるポリ塩化ビニリデン系樹脂層を含み、かつ多層シートの両外層が硬質塩化ビニル樹脂層からなるPTP用の多層シートが提案されている。
特開2005−112426号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている技術においては、防湿性には優れているものの、耐衝撃性やカプセルや錠剤の取り出し性に関しては特に言及されておらず、PTP用シートとして実用に耐え得るかを判断することは困難である。
そこで本発明の目的は、このような従来技術の課題に鑑み、防湿性、耐衝撃性、カプセルや錠剤の取り出し性に優れたPTP用多層シートを提供することにある。
本発明は、厚みが0.05mm以上、0.12mm以下であるポリ塩化ビニル系樹脂(A)からなる層(X)を最外層に少なくとも1層有し、厚みが0.05mm以上、0.15mm以下であるポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)からなる層(Y)を内層に少なくとも1層以上有し、かつ、全層の合計厚みが0.20mm以上、0.32mm以下、透湿度が0.35g/(m・24時間)以下であり、PTP成形した後のPTP押し出し力のピーク1、及び、ピーク2の強度が共に45N以上、60N以下であることを特徴とするPTP用多層シートを提案するものである。
本発明が提案するPTP用多層シートは、防湿性、耐衝撃性、カプセルや錠剤の取り出し性に優れるため、PTPの中でも特に防湿性が要求される用途に好適に用いることができる。
以下、本発明の実施形態の一例としてのPTP用多層シート(以下、「本シート」とも称する)について説明する。但し、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
<ポリ塩化ビニル系樹脂(A)>
本発明の層(X)に用いるポリ塩化ビニル系樹脂(A)としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体(「塩化ビニル系単独重合体」と称する)のほか、塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体(以下、「塩化ビニル系共重合体」とする)、この塩化ビニル系共重合体以外の重合体に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体(以下、塩化ビニル系グラフト共重合体)などを挙げることができる。
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)は、任意の平均重合度のものを用いることができ、好ましくは600〜1300である。平均重合度が600以上であれば、十分な機械強度を得ることができる。一方、平均重合度が1300以下であれば、溶融粘度の増加に伴う発熱が生じることなく、分解による着色の発生を生じることが少ない。
このような観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の平均重合度は、前述の範囲の中でも特に600以上或いは1100以下であるのがより一層好ましく、その中でも650以上或いは900以下であるのがさらに好ましい。
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)が共重合体である場合、共重合体中の塩化ビニル以外の構成単位の含有量が多くなると機械的特性が低下するため、塩化ビニル系共重合体中に占める塩化ビニルの割合が60〜99質量%であることが好ましい。
なお、前記塩化ビニル系単独重合体、及び、塩化ビニル系共重合体は、任意の方法、例えば乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで重合することができる。
塩化ビニルと共重合可能な単量体としては、分子中に反応性二重結合を有するものであればよい。例えばエチレン、プロピレン、ブチレンなどのα−オレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェニルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のエステル類、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル類、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのN−置換マレイミド類などを挙げることができ、これらは単独、又は、2種以上の組み合わせで用いることができる。
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)がグラフト共重合体である場合、塩化ビニル系共重合体以外の重合体としては、塩化ビニルをグラフト共重合できるものであればよい。例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート・一酸化炭素共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどを挙げることができ、これらを単独、又は、2種以上の組み合わせで用いることができる。
また、前記ポリ塩化ビニル系樹脂(A)には本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を添加することができる。
例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の熱安定性を向上するためにCa−Zn系安定剤を配合することもできる。Ca−Zn系安定剤とは、カルシウムの脂肪酸塩と亜鉛の脂肪酸塩の混合物である。脂肪酸の具体例としては、ベヘニン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、安息香酸等があげられ、目的に応じて2種以上組み合わせて使用することも可能である。また、その他アルキル錫マレー、アルキル錫ラウレート、アルキル錫メルカプト、錫メルカプト酸エステルなどの安定剤も使用することができる。
また、MBS樹脂、ABS樹脂、ブチルアクリレートを主成分とするアクリルゴムなどの衝撃改良剤、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩などの滑剤、あるいは、サリチル酸エステル、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収剤や、可塑剤、帯電防止剤、顔料、さらには、PVC以外の樹脂などを添加することができる。
<ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)>
本発明の層(Y)に用いるポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)としては、塩化ビニリデン単量体、あるいは、各種モノマーとの共重合体を使用することができる。共重合モノマーの具体例としては、塩化ビニルや、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸や、αメチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物や、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルエチルなどの(メタ)アクリル酸エステルや、アクリル酸グリシジルメタクリル酸エステルや、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミドがあげられ、これらを単独、又は、2種以上組み合わせて使用することができる。前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)の製造方法としては特に限定されないが、公知の方法、例えば乳化重合法などを採用することができる。ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)の具体例としては、旭化成ケミカルズ(株)社の商品名「サランラテックス」シリーズがあげられる。
また、本発明においては、耐衝撃性と防湿性を両立するために、2種類のポリ塩化ビニリデン系樹脂を用いることが好ましい。1046cm−1/1070cm−1の吸光度比が1.05〜1.40であるポリ塩化ビニリデン系樹脂からなる層(Y)−1と、1046cm−1/1070cm−1の吸光度比が0.80〜1.05であるポリ塩化ビニリデン系樹脂からなる層(Y)−2を交互に各々1層以上を積層することで、層(Y)−1により防湿性を付与し、層(Y)−2により耐衝撃性を付与することができる。
なお、前記層(Y)−1の1046cm−1/1070cm−1の吸光度比の下限値は、前記範囲の中でも1.06以上であることがより一層好ましく、その中でも1.07以上であることがさらに好ましい。一方、層(Y)−1の吸光度比の上限は1.38以下であることがより一層好ましく、1.35以下であることがさらに好ましい。層(Y)−1の1046cm−1/1070cm−1の吸光度比がかかる範囲を下回る場合、十分な防湿性を付与することができず、一方、1046cm−1/1070cm−1の吸光度比がかかる範囲を上回る場合、結晶化度が高くなり過ぎるため、透明性が低下する場合がある。
一方、前記層(Y)−2の1046cm−1/1070cm−1の吸光度比の下限は、前記範囲の中でも0.82以上であることがより一層好ましく、0.85以上であることがさらに好ましい。一方、吸光度比の上限は前記範囲の中でも1.04以下であることがより一層好ましく、1.03以下であることがさらに好ましい。層(Y)−2の1046cm−1/1070cm−1の吸光度比がかかる範囲を下回る場合、防湿性を著しく損なう場合があり、一方、1046cm−1/1070cm−1の吸光度比がかかる範囲を上回る場合、十分な耐衝撃性が得られない場合がある。
なお、1046cm−1/1070cm−1の吸光度比は以下の方法で算出した。
前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)のラテックスを、乾燥後の塗布量が約8g/mとなるように二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、OPPフィルムという)に塗布する。次いで、80℃で15秒間乾燥した後、40℃で16時間熱処理を施す。次にフーリエ変換赤外分光光度計を用いて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)が塗布されたOPPフィルムの1200〜800cm−1のスペクトルを測定する。得られたスペクトルにおいて、1100cm−1と850cm−1を線で結び、この線をベースとして1046cm−1と1070cm−1のピーク強度を測定し、吸光度比(1046cm−1の吸光度/1070cm−1の吸光度)を算出した。なお、吸光度比が大きい方が結晶化度が高いことを示す。
<ポリエチレン系樹脂(C)>
本発明のPTP用多層シートはさらに、ポリエチレン系樹脂(C)からなる層(Z)を内層として少なくとも1層以上有することができる。
層(Z)に用いるポリエチレン系樹脂(C)は、エチレン単独重合体であってもよいし、或いは、エチレンと、エチレン以外のモノマー成分、特にはα―オレフィンとの共重合体であってもよい。また、これらの混合物を用いることもできる。
ここで、エチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、へキセン−1、へプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1等を例示することができる。中でも、工業的な入手し易さや諸特性、経済性などの観点から、プロピレン、ブテン−1、へキセン−1、オクテン−1が好適である。
エチレンと共重合するα−オレフィンは1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもかまわない。
以上の中でも、エチレン単独重合体、或いは、エチレンと、ブテン−1、ヘキセン−1、及びオクテン−1からなる群より選ばれる少なくとも1種類のα−オレフィンとの共重合体を用いるのが好ましい。
エチレンとα−オレフィンとの共重合体を用いる場合、共重合体中に占めるα−オレフィンの割合が0.1〜10.0質量%であることが好ましい。α−オレフィンの割合がかかる範囲内であればPTP成形性を損なうことがない。α−オレフィンの割合の下限は前記範囲の中でも0.5質量%以上であることがより一層好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。一方、上限は前記範囲の中でも8質量%以下であることがより一層好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。
ポリエチレン系樹脂(C)は、示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解温度Tmが100〜130℃であり、かつ、結晶融解熱量ΔHmが90J/g以上、170J/g以下であることが好ましい。かかる範囲内に結晶融解温度及び結晶融解熱量を有するポリエチレン系樹脂(C)を用いることで、本シートの透明性を損なうことなく、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)からなる層同士の接着性を向上することができる。結晶融解温度Tmの下限は前記範囲の中でも105℃以上であることがより一層好ましく、110℃以上であることがさらに好ましい。一方、上限は前記範囲の中でも125℃以下であることがより一層好ましく、120℃以下であることがさらに好ましい。また、結晶融解熱量ΔHmの下限は前記範囲の中でも95J/g以上であることがより一層好ましく、100J/g以上であることがさらに好ましい。一方、上限は前記範囲の中でも165J/g以下であることがより一層好ましく、160J/g以下であることがさらに好ましい。なお、結晶融解温度は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7121に準じて加熱速度10℃/分で測定を行い、結晶融解熱量は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7122に準じて加熱速度10℃/分で測定を行った。
<本シートの各層、全層の厚み>
本シートは、厚みが0.05mm以上、0.12mm以下である前記ポリ塩化ビニル系樹脂(A)からなる層(X)を最外層に少なくとも1層以上有し、厚みが0.05mm以上、0.15mm以下である前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)からなる層(Y)を内層に少なくとも1層以上有し、かつ、全層の合計厚みが0.20mm以上、0.32mm以下であることが重要である。
層(X)の厚みの下限は前記範囲の中でも0.055mm以上であることがより一層好ましく、0.06mm以上であることがさらに好ましい。一方、上限は前記範囲の中でも0.1mm以下であることがより一層好ましく、0.09mm以下であることがさらに好ましい。層(X)の厚みがかかる範囲内であれば、成形性に優れたPTP用多層シートを提供することができる。
また、層(Y)の厚みの下限は前記範囲の中でも0.055mm以上であることがより一層好ましく、0.06mm以上であることがさらに好ましい。一方、上限は前記範囲の中でも0.14mm以下であることがより一層好ましく、0.13mm以下であることがさらに好ましい。層(Y)の厚みがかかる範囲内であれば、耐衝撃性と防湿性を両立するPTP用多層シートを提供することができる。
さらに、本シートの全層の合計厚みの下限は前記範囲の中でも0.21mm以上であることがより一層好ましく、0.22mm以上であることがさらに好ましい。一方、上限は前記範囲の中でも0.31mm以下であることがより一層好ましく、0.30mm以下であることがさらに好ましい。全層の合計厚みがかかる範囲内であれば、防湿性とカプセルや錠剤の取り出し性を両立することができる。
なお、本シートにおける層(X)の厚み/層(Y)の厚みは、1〜3であることが好ましく、1.3〜2.7であることがさらに好ましい。層(X)の厚み/層(Y)の厚みが上記範囲であれば、本シートの防湿性とPTP押し出し力のバランスを優れたものとすることができる。
<本シートの物性値>
本シートをPTP用途へ使用する場合、内容物の水分による劣化防止の観点から、JIS K7129B法に基づき温度40℃、相対湿度90%で測定した水蒸気透過率が0.35g/(m・24時間)以下であることが重要であり、中でも0.32g/(m・24時間)以下であることがさらに好ましく、その中でも特に0.29g/(m・24時間)以下であることがより一層好ましい。水蒸気透過率が0.35g/(m・24時間)以下であれば、PTPとして十分な防湿性を有する製品が得られる。
さらに、本発明においては、本シートをPTP成形した後のPTP押し出し力の第1ピークと第2ピークの強度が共に45N以上、60N以下であることが重要である。前記PTP押し出し力の下限は前記範囲の中でも46N以上であることがさらに好ましく、その中でも特に47N以上であることがより一層好ましい。一方、上限は前記範囲の中でも59N以下であることがさらに好ましく、58N以下であることがより一層好ましい。PTP押し出し力のピーク強度がかかる範囲内であれば、輸送時や保管時においてPTPの破損を生じることなく、実使用時にはカプセルや錠剤の取り出し性に優れたPTPを提供することができる。
なお、PTP押し出し力の評価は以下の方法で行った。
本シートを、PTP用成形装置としてCKD社製FBP−200Uを用いて、シート加熱温度125℃、ポケットサイズΦ9mm、深さ4.5mmの条件にてPTP成形を行った後、φ8mm、高さ3mmの錠剤を充填し、厚さ20μmのアルミ箔でシールし、PTPシートを作製した。次に、島津製作所(株)製万能材料試験機AGS−Xを用いて、図1に示す方法で雰囲気温度23℃、相対湿度50%、試験速度200mm/分、ストローク4mmで押し出し力の測定を行った。得られたチャートより最初のピーク強度を第1ピーク、次に現れるピーク強度を第2ピークとした。
<本シートの製造方法>
本シートの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば以下の方法により製造することができる。
まず、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)からなる層(X)は、圧延法により製造することができる。具体的には、4本カレンダロールなどの圧延装置によりポリ塩化ビニル系樹脂(A)と各種添加剤のブレンド物を圧延、シート化する。その後、引取ロールで引き取られ、複数本の冷却ロールで次第に冷却され、所定の厚みのシートが得られる。
次に、前記ポリ塩化ビニル系樹脂(A)からなる層(X)に、前記塩化ビニリデン系樹脂(B)からなる層(Y)を公知の方法、例えば、エアナイフコーターやロールコーター、リバースグラビアコーター、あるいは、ドクターブレードコーターを用いて層(Y)を塗布することができる。次に、赤外線ヒーターなどにより前加熱処理を施した後、熱風乾燥、あるいは、ドラム乾燥によりPVDCラテックスの水分を除去し、皮膜を形成する。この時、層(X)に対して層(Y)を直接塗布することもできるが、接着性をより向上するため、アルキルチタネート系化合物、ポリイソシアネート系化合物、ポリアルキレンイミン系化合物、ポリウレタン系樹脂等のアンカーコート剤を用いることができる。
次に、層(X)の上に所定の厚みになるように層(Y)を繰り返し塗布した後、層(X)を貼り合せることで本発明の多層シートを製造する方法(層(X)/(アンカーコート剤)/層(Y)/(アンカーコート剤)/層(X))や、層(X)の上に所定の厚みになるように層(Y)を繰り返し塗布した同じシート2枚の層(Y)側を一般的な接着剤、及び/又は、ポリエチレン系樹脂(C)からなる層(Z)を用いて貼り合せることで多層体を製造する方法(層(X)/(アンカーコート剤)/層(Y)/接着剤、及び/又は、層(Z)/層(Y)/(アンカーコート剤)/層(X))などがある。
前記接着剤としては公知のものが使用可能であるが、例えば、溶剤溶解性、又は、水溶性のポリエステル系樹脂、イソシアネート系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂、ビニル系変性樹脂、エポキシ系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン系樹脂、変性シリコーン系樹脂等を単独、或いは、2種類以上を混合して使用することができる。この中でも、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)との密着性の点からウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂を用いることが好ましく、この中でもさらに、硬化時における揮発成分の少ないエポキシ系樹脂を用いることが特に好ましい。前記接着剤の厚みは特に制限されるものではないが、0.004〜0.014mmであることが好ましく、0.005〜0.013mmであることがより好ましく、0.006〜0.012mmであることがさらに好ましい。接着剤の厚みがかかる範囲内であれば、十分な接着強度が得られる。
<本シートの用途>
本シートは、真空成形、圧空成形、圧空真空成形、プレス成形、その他の熱成形によって、各種形状の成形体に形成することができ、PTP包装の包装体を好適に製造し利用することができる。
PTP包装用の成形シートを製造する方法としては、成形前に加熱板で本発明の多層シートを加熱軟化させ、成形型にて当該シートを挟み、圧空を注入して成形型の凹型に沿わせてシート面内に多数のポケット部を成形するようにすれば良い。また、必要に応じて圧空注入時に適切なタイミングでプラグを上昇及び下降させて成形性を補助することもできる。
前記の熱成形を施すと共に、シート表面、あるいは、裏面又は両面にアルミ箔、アルミ蒸着フィルム、プラスチックフィルム(例えば二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム)などを積層することも可能である。なお、シート表面或いは裏面又は両面にアルミ箔や前記各種フィルムなどを積層して複合シートを形成した後、これを熱成形することも可能である。
また、製品の意匠性や二次加工性等を高める目的で、シート表面にエンボス加工や、艶消し加工等の加工を行ってもよい。この場合、一旦鏡面状のシートを作成してからエンボスロールや艶消しロールで加工を施すようにしても、押出成形の際にキャストロールをエンボスロールや艶消しロールに変更して成形するようにしてもよい。本発明の趣旨を損なわない限り、シート表面に帯電防止剤、シリコーン、ワックスなどをコーティングすることも、傷付着防止などの目的で表面保護シートを用いて皮膜を形成することも、印刷層を設けることも可能である。なお、印刷層の形成手段は現在公知の任意の手段を採用できる。
本シートは、防湿性、耐衝撃性、二次加工性の全てに優れるため、医薬品の包装分野においてカプセルや錠剤等の固形剤、粒状の食品等を包装するためのPTP包装の包装体として特に防湿性が要求される用途に好適に使用することができる。
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示される原料及び試験片についての種々の測定値及び評価は次のようにして行った。
(1)水蒸気透過率
JIS K7129Bに基づき、MOCON社製PERMATRAN W 3/31を用いて、40℃、90%RHの雰囲気下において厚み0.3mmのサンプルについて水蒸気透過率を測定した。水蒸気透過率が0.30g/(m・24時間)以下であるものを合格とした。
(2)PTP押し出し力
本発明の多層シートを、PTP用成形装置としてCKD社製FBP−200Uを用いて、シート加熱温度125℃、ポケットサイズΦ9mm、深さ4.5mmの条件にてPTP成形を行った後、φ8mm、高さ3mmの錠剤を充填し、厚さ20μmのアルミ箔でシールし、PTPシートを作製した。次に、島津製作所(株)製万能材料試験機AGS−Xを用いて、図1に示す方法で雰囲気温度23℃、相対湿度50%、試験速度200mm/分、ストローク4mmで押し出し力の測定を行った。得られたチャートより最初のピーク強度を第1ピーク、次に現れるピーク強度を第2ピークとした。第1ピーク、第2ピークが共に30N以上、55N以下であるものを合格とした。
<使用した材料>
[ポリ塩化ビニル系樹脂(A)]
(A)−1:硬質PVCシート(三菱樹脂社製 商品名「ビニホイルC−0459」、厚み=0.09mm)
(A)−2:硬質PVCシート(三菱樹脂社製 商品名「ビニホイルC−0459」、厚み=0.08mm)
(A)−3:硬質PVCシート(三菱樹脂社製 商品名「ビニホイルC−455」、厚み=0.1mm)
[ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)]
(B)−1:旭化成ケミカルズ社製 商品名「サランラテックスL574A」(吸光度比=1.10)
(B)−2:旭化成ケミカルズ社製 商品名「サランラテックスL580C」(吸光度比=0.96)
(B)−3:旭化成ケミカルズ社製 商品名「サランラテックスL509」(吸光度比=1.07)
[ポリエチレン系樹脂(C)]
(C)−1:住友化学社製 商品名「スミカセンL211」(低密度ポリエチレン、結晶融解温度Tm=112℃、結晶融解熱量△Hm=93J/g、密度=0.924g/cm、MFR=2g/10分)
(実施例1)
層(X)として(A)−1、層(Y)に2種類のポリ塩化ビニリデンを層(Y)−1として(B)−1、層(Y)−2として(B)−2を用い、基材(A)−1の片面にアンカーコート剤(三井化学製:タケラックA−616とタケネートA−65の16:1混合希釈物)をグラビアコーターを用いて塗工、乾燥させた後、(B)−1及び(B)−2をエアナイフコーターを用いて塗工、乾燥することにより層(X)/層(Y)からなる2層シートを得た。次に層(X)/層(Y)の2層シート同士を一方の層(Y)面に接着剤(東洋モートン社製:TM−569とCAT−RT37の100:8.9混合希釈物)をグラビアコーターを用いて塗工、乾燥させてから層(Y)同士が内側となるようにラミネートし、層(X)/層(Y)−1/層(Y)−2/層(Y)−1/層(Y)−2/層(Y)−1/層(Y)−2/層(Y)−1/層(Y)−2/接着剤/層(Y)−2/層(Y)−1/層(Y)−2/層(Y)−1/層(Y)−2/層(Y)−1/層(Y)−2/層(Y)−1/層(X)の構成で厚みが0.09/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.008/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.09mm(総厚み=0.26mm)となるように多層シートを成形した。得られたシートについて、防湿性、PTP押し出し力の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
層(X)として(A)−1、層(Y)として(B)−2を用い、実施例1と同様の方法で層(X)/層(Y)/接着剤/層(Y)/層(X)の構成で厚みが0.09/0.036/0.008/0.036/0.09mm(総厚み=0.26mm)となるように多層シートを成形した。得られたシートについて、防湿性、PTP押し出し力の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
層(X)として(A)−2、層(Y)に2種類のポリ塩化ビニリデンを層(Y)−1として(B)−1、層(Y)−2として(B)−2を用い、実施例1と同様の方法で層(X)/層(Y)からなる2層シートを得た。次に層(X)/層(Y)の2層シート同士を両方の層(Y)面にアンカーコート剤(東洋モートン社製:アドコート527とCAT−HY91の100:7混合希釈物)をグラビアコーターを用いて塗工、乾燥させてから層(Y)同士が内側となるように、層(Z)として(C)−1を介してラミネートし、層(X)/層(Y)−1/層(Y)−2/層(Y)−1/層(Y)−2/層(Y)−1/層(Y)−2/層(Y)−1/層(Y)−2/層(Z)/層(Y)−2/層(Y)−1/層(Y)−2/層(Y)−1/層(Y)−2/層(Y)−1/層(Y)−2/層(Y)−1/層(X)の構成で厚みが0.08/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.028/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.0045/0.08mm(総厚み=0.26mm)となるように多層シートを成形した。得られたシートについて、防湿性、PTP押し出し力の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
層(X)として(A)−1、層(Y)として(B)−2を用い、実施例1と同様の方法で層(X)/層(Y)/接着剤/層(Y)/層(X)の構成で厚みが0.09/0.061/0.008/0.061/0.09mm(総厚み=0.31mm)となるように多層シートを成形した。得られたシートについて、防湿性、PTP押し出し力の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
層(X)として(A)−2、層(Y)として(B)−3、層(Z)として(C)−1を用い、実施例3と同様の方法で層(X)/層(Y)/層(Z)/層(Y)/層(X)の構成で厚みが0.1/0.05/0.03/0.05/0.1mm(総厚み=0.33mm)となるように多層シートを成形した。得られたシートについて、防湿性、PTP押し出し力の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
層(X)として(A)−1、層(Y)に2種類のポリ塩化ビニリデンを層(Y)−1として(B)−1、層(Y)−2として(B)−2を用い、実施例1と同様の方法で層(X)/層(Y)からなる2層シートを得た。次に層(X)/層(Y)の2層シートと層(X)を一方の層(Y)面ともう一方の層(X)の片面にアンカーコート剤(東洋モートン社製:アドコート527とCAT−HY91の100:7混合希釈物)をグラビアコーターを用いて塗工、乾燥させてから層(Y)が内側となるように、層(Z)として(C)−1を介してラミネートし、層(X)/層(Y)/層(Z)/層(X)の構成で厚みが0.09/0.027/0.033/0.09mm(総厚み=0.24mm)となるように多層シートを成形した。得られたシートについて、防湿性、PTP押し出し力の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2014172656
本発明のPTP用多層シートは、カプセルや錠剤、固形物等の取り出し性に優れており、医薬品や食品等のPTP包装用成形体等に好適に利用することができる。
PTP押し出し力測定試験の装置の概略図。

Claims (5)

  1. 厚みが0.05mm以上、0.12mm以下であるポリ塩化ビニル系樹脂(A)からなる層(X)を最外層に少なくとも1層有し、厚みが0.05mm以上、0.15mm以下であるポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)からなる層(Y)を内層に少なくとも1層以上有し、かつ、全層の合計厚みが0.20mm以上、0.32mm以下、透湿度が0.35g/(m・24時間)以下であり、PTP成形した後のPTP押し出し力のピーク1、及び、ピーク2の強度が共に45N以上、60N以下であることを特徴とするPTP用多層シート。
  2. 両外層がポリ塩化ビニル系樹脂(A)である請求項1に記載のPTP用多層シート
  3. さらに、結晶融解温度Tmが100℃以上、130℃以下、結晶融解熱量ΔHmが90J/g以上、170J/g以下であるポリエチレン系樹脂(C)からなる層(Z)を内層として少なくとも1層以上有する請求項1または2に記載のPTP用多層シート。
  4. 層(X)の厚み/層(Y)の厚みが1〜3である請求項1から3のいずれかに記載のPTP用多層シート。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載のPTP用多層シートを用いたPTP包装体。
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