JP2018039689A - イオン伝導体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】種々の特性に優れたイオン伝導体を効率よく製造することができる方法を提供する。【解決手段】一実施形態によると、(a)LiBH4およびP2S5を含む原料と、溶媒とを混合する工程と、(b)前記工程(a)で得られた混合物から溶媒を除去する工程とを含み、前記原料におけるLiBH4とP2S5のモル比は、LiBH4:P2S5=x:(1−x)(式中、xは0.85超1.0未満を満たす)である、イオン伝導体の製造方法が提供される。【選択図】 なし

Description

本発明は、イオン伝導体の製造方法および該方法によって製造され得るイオン伝導体に関する。また、本発明は、上記イオン伝導体を用いて成形された成形体、ならびに上記イオン伝導体を含む固体電解質および全固体電池にも関する。
近年、携帯情報端末、携帯電子機器、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、更には定置型蓄電システムなどの用途において、リチウムイオン二次電池の需要が増加している。しかしながら、現状のリチウムイオン二次電池は、電解液として可燃性の有機溶媒を使用しており、有機溶媒が漏れないように強固な外装を必要とする。また、携帯型のパソコン等においては、万が一電解液が漏れ出した時のリスクに備えた構造を取る必要があるなど、機器の構造に対する制約も出ている。
更には、自動車や飛行機等の移動体にまでその用途が広がり、定置型のリチウムイオン二次電池においては大きな容量が求められている。このような状況の下、安全性が従来よりも重視される傾向にあり、有機溶媒等の有害な物質を使用しない全固体リチウムイオン二次電池の開発に力が注がれている。
例えば、全固体リチウムイオン二次電池における固体電解質として、酸化物、リン酸化合物、有機高分子、硫化物等を使用することが検討されている。
しかしながら、酸化物やリン酸化合物は、その粒子が堅いという特性を有する。従って、これらの材料を使用して固体電解質層を成形するには、一般的に600℃以上の高い温度での焼結を必要とし、手間がかかる。更には、固体電解質層の材料として酸化物やリン酸化合物を使用した場合、電極活物質との間の界面抵抗が大きくなってしまうという欠点も有する。有機高分子については、室温におけるリチウムイオン伝導度が低く、温度が下がると急激に伝導性が低くなるという欠点を有する。
新しいリチウムイオン伝導性固体電解質に関しては、2007年に錯体水素化物固体電解質であるLiBHの高温相が高いリチウムイオン伝導性を有することが報告された(非特許文献1)。LiBHは密度が小さく、これを固体電解質として用いた場合には軽い電池を作製できる。また、LiBHは180℃以下の高温においても安定であるため、耐熱性の電池を作製することも可能である(非特許文献3)。
しかし、LiBHは、相転移温度である115℃未満において、リチウムイオン伝導度が大きく低下してしまうという問題がある。そこで、相転移温度である115℃未満においても高いリチウムイオン伝導性を有する固体電解質を得るべく、LiBHとアルカリ金属化合物とを組み合わせた固体電解質が提案されている。例えば、2009年には、LiBHにLiIもしくはLiNHなどのアルカリ金属化合物を加えることによって得られるイオン伝導体が新規の結晶構造を有し、室温においても高温相を保つことができることが報告された(非特許文献2、ならびに特許文献1および2;以下、例えばLiBH等の錯体水素化物を含むイオン伝導体を固体電解質として使用する場合に、「錯体水素化物固体電解質」とも称する)。また、さらなる特性向上を目的として、LiBHとPとを組み合わせた固体電解質も提案されている(特許文献3および非特許文献4)。
一方、LiBHにPを加えることによって得られるイオン伝導体は、遊星ボールミルによるメカニカルミリング法にて少量の規模で製造されている報告はあるが(特許文献3および非特許文献4)、装置の大型化が難しいことが問題となっている。したがって、LiBHにPを加えることによって得られるイオン伝導体を、より効率よく製造することが求められている。
特許第5187703号公報 特開2014−130687号公報 国際公開第2016/103894号
Applied Physics Letters(2007)、91、p.224103 JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY(2009)、131、p.894−895 Chemical Reviews(2007)、107、p.4111−4132 Chem.Commun.(2016)、52、p.564−566
本発明は、種々の特性に優れたイオン伝導体を効率よく製造することができる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を行ったところ、LiBHとPを、溶媒を用いて混合し、その後、溶媒を除去することにより、イオン伝導性等の種々の特性に優れたイオン伝導体を効率よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、例えば以下のとおりである。
[1] (a)LiBHおよびPを含む原料と、溶媒とを混合する工程と、
(b)前記工程(a)で得られた混合物から溶媒を除去する工程と
を含み、前記原料におけるLiBHとPのモル比は、LiBH:P=x:(1−x)(式中、xは0.85超1.0未満を満たす)である、イオン伝導体の製造方法。
[2] 前記イオン伝導体は、X線回折(CuKα:λ=1.5405Å)において、少なくとも、2θ=14.8±1.0deg、24.5±1.0deg、28.9±1.3deg、30.2±1.3deg、38.3±1.3deg、43.3±1.6deg、46.1±1.6deg、50.4±2.0deg、52.9±2.0degおよび60.1±2.4degに回折ピークを有する、[1]に記載の方法。
[3] 前記溶媒は、エーテル系溶媒である[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記エーテル系溶媒は、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテルおよびシクロペンチルメチルエーテルからなる群より選択される、[3]に記載の方法。
[5] 前記工程(a)における混合は、少なくともLiBHの一部およびPの一部が溶解する温度で行われる[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記混合物に対する前記原料の濃度が1〜75質量%である[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[6−1] 前記混合物は、少なくともLiBHの一部およびPの一部が前記溶媒に溶解している状態である[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[6−2] 前記混合物は、前記原料におけるLiBHおよびPの合計重量の85質量%以上が前記溶媒に溶解している状態である[6−1]に記載の方法。
[7] 前記工程(b)における溶媒の除去は、60〜280℃の温度で行われる[1]〜[6−2]のいずれかに記載の方法。
[7−1] 前記工程(b)における溶媒の除去は、前記混合物を撹拌しながら行われる[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[7−2] 前記(b)工程によって、前記工程(a)で添加した溶媒の95質量%超が除去される[1]〜[7−1]のいずれかに記載の方法。
[8] [1]〜[7−2]のいずれかに記載の方法によって製造され得るイオン伝導体。
[9] [8]に記載のイオン伝導体を用いて成形された成形体。
[10] [8]に記載のイオン伝導体を含む固体電解質。
[11] [10]に記載の固体電解質を含む全固体電池。
[12] (1)LiBHおよびPを含む原料と、溶媒とを混合して溶液を得る工程と、
(2)前記工程(1)で得られた溶液を塗布する工程と、
(3)前記溶液から溶媒を除去する工程と
を含み、前記原料におけるLiBHとPのモル比は、LiBH:P=x:(1−x)(式中、xは0.85超1.0未満を満たす)である、固体電解質層の製造方法。
[12−1] 前記溶媒は、エーテル系溶媒である[12]に記載の方法。
[12−2] 前記エーテル系溶媒は、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテルおよびシクロペンチルメチルエーテルからなる群より選択される、[12−1]に記載の方法。
[12−3] 前記溶液に対する前記原料の濃度が1〜75質量%である[12]〜[12−2]のいずれかに記載の方法。
[12−4] 前記工程(3)における溶媒の除去は、60〜280℃の温度で行われる[12]〜[12−3]のいずれかに記載の方法。
[12−5] 前記工程(3)によって、前記工程(1)で添加した溶媒の95質量%超が除去される[12]〜[12−4]のいずれかに記載の方法。
[13] [12]〜[12−5]のいずれかに記載の方法によって製造され得る固体電解質層。
[13−1] [13]に記載の固体電解質層を含む全固体電池。
[14] (i)LiBHおよびPを含む原料と、溶媒とを混合して溶液を得る工程と、
(ii)前記工程(i)で得られた溶液と電極活物質を混合する工程と、
(iii)前記工程(ii)で得られた混合物を塗布する工程と、
(iv)前記混合物から溶媒を除去する工程と
を含み、前記原料におけるLiBHとPのモル比は、LiBH:P=x:(1−x)(式中、xは0.85超1.0未満を満たす)である、電極層の製造方法。
[14−1] 前記溶媒は、エーテル系溶媒である[14]に記載の方法。
[14−2] 前記エーテル系溶媒は、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテルおよびシクロペンチルメチルエーテルからなる群より選択される、[14−1]に記載の方法。
[14−3] 前記溶液に対する前記原料の濃度が1〜75質量%である[14]〜[14−2]のいずれかに記載の方法。
[14−4] 前記工程(iv)における溶媒の除去は、60〜280℃の温度で行われる[14]〜[14−3]のいずれかに記載の方法。
[14−5] 前記工程(iv)によって、前記工程(i)で添加した溶媒の95質量%超が除去される[14]〜[14−4]のいずれかに記載の方法。
[15] [14]〜[14−5]のいずれかに記載の方法によって製造され得る電極層。
[15−1] [15]に記載の電極層を含む全固体電池。
本発明によれば、種々の特性に優れたイオン伝導体を効率よく製造することができる方法を提供することができる。
実施例1〜4ならびに比較例1および2で得られたイオン伝導体のX線回折パターンを示す図。 実施例1および5〜7で得られたイオン伝導体のX線回折パターンを示す図。 実施例1、8および9で得られたイオン伝導体のX線回折パターンを示す図。 実施例1〜4ならびに比較例1および2で得られたイオン伝導体の降温時のイオン伝導度を示す図。 実施例1および5〜7で得られたイオン伝導体の降温時のイオン伝導度を示す図。 実施例1、8および9で得られたイオン伝導体の降温時のイオン伝導度を示す図。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する材料、構成等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
1.イオン伝導体の製造方法
本発明の1つの実施形態によると、
(a)LiBHおよびPを含む原料と、溶媒とを混合する工程と、
(b)前記工程(a)で得られた混合物から溶媒を除去する工程と
を含み、前記原料におけるLiBHとPのモル比は、LiBH:P=x:(1−x)(式中、xは0.85超1.0未満を満たす)である、イオン伝導体の製造方法が提供される。
LiBHおよびPを用いると、比較的容易にイオン伝導体が得られる。LiBHおよびPを原料に用いたイオン伝導体の従来の製造方法としては、遊星ボールミルによるメカニカルミリング法が採用されてきた。しかし、メカニカルミリング法では、小さなポットを使用した場合であっても大きなエネルギーを必要とするため、ポットを大型化することが難しく、工業スケールでの製造が困難であった。これに対して、本発明の製造方法によれば、LiBHとPとを溶媒の存在下で混合するため、メカニカルミリング法のように大きなエネルギーを必要とすることがない。したがって、装置の大型化が可能であり、LiBHおよびPを含むイオン伝導体を、効率よく大量に製造することが可能になる。また、溶媒による混合は、溶融混合のように高い温度を必要とせず、溶媒の除去もLiBHが安定に存在できる280℃以下で実施することが可能である。さらに、溶媒を使用することにより、原料を均一に混合することができる。これらの結果として、種々の特性に優れたイオン伝導体を、より簡便な方法で得ることができる。
以下、本発明の製造方法における各工程および構成要素について、順に説明する。
1−1.原料
本発明の製造方法に用いるLiBHとしては、通常に市販されているものを使用することができる。その純度は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。純度が上記範囲である化合物は、イオン伝導体としての性能が高いためである。また、固体のLiBHを用いてもよいし、THF等の溶媒に溶解したLiBHを用いてもよい。なお、溶液の場合には、溶媒を除いた純度で90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
としては、通常に市販されているものを使用することができる。Pの純度は、95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましい。また、Pに代えて、Pに相当するモル比のリン(P)および硫黄(S)を用いることもできる。この場合のリン(P)および硫黄(S)は、通常に市販されているものであれば、特に制限なく使用することができる。
LiBHとPの混合比は、モル比で、LiBH:P=x:(1−x)であり、xは0.85超1.0未満である。原料としてLiBHを多く含むことにより、成形性がよく、割れにくい電極層および固体電解質層を作製することができるイオン伝導体を得られる。xは、好ましくは0.85超0.98以下であり、より好ましくは0.875〜0.95であり、特に好ましくは0.90〜0.925である。モル比を上記範囲とすることにより、イオン伝導体中のLiBHの量を十分に確保することができ、高いイオン伝導性を得ることができる。また、上記モル比の原料を溶媒と混合することにより、均一溶液を得ることができ、その結果として、以下に詳述するように得られた溶液をそのまま塗布して電解質層等を形成できるという利点を得られる。一方、Pに対してLiBHの量が多すぎると、LiBHの一部が相転移を起こし、LiBHの高温相(高イオン伝導相)の転移温度(115℃)未満において十分なイオン伝導性を得られない傾向にある。上記混合比は、原料におけるLiBHとPのモル比(すなわち、仕込み比)であり、また、得られたイオン伝導体中におけるLiBHとPのモル比でもある。試薬の純度や調製時の不純物混入によって、LiBHとPの最良の混合比には若干の幅が生じ得る。なお、原料としては、LiBHおよびP以外の物質を含んでいてもよいが、LiBHおよびP以外の物質を含まないことが好ましい。
LiBHおよびPの混合に使用する溶媒としては、混合条件下で、少なくともLiBHの一部およびPの一部が溶解する溶媒であれば、特に限定されない。必ずしもLiBHおよびPの全量が溶解する必要はないが、LiBHおよびPの全量が溶解して均一溶液を得られることが好ましい。そのような溶媒としては、エーテル系溶媒が挙げられる。使用する原料が安定に存在できるエーテル系溶媒が好ましく、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジエチレングリコール、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジオキサン等を挙げることができる。その中でも、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルがより好ましく、均一溶液が得られやすいテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランが特に好ましい。
1−2.混合工程
LiBHおよびPを含む原料と溶媒とを混合する工程において、混合方法は特に限定されず、一般的な混合方法を用いることができる。また、原料の添加順も特に限定されない。上述したとおり、混合後に、少なくともLiBHの一部およびPの一部が溶媒に溶解している状態であればよく、例えば、LiBHおよびPの一部が溶解しており、残りのLiBHおよびPが溶液中に分散したスラリーの状態であってもよい。この場合、LiBHおよびPの合計重量の85質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上が溶媒に溶解していることが好ましい。より好ましくは、混合後に、LiBHおよびPの両方が完全に溶媒に溶解した状態であり、この場合、LiBHおよびPの両方が溶解する溶媒を使用することにより混合工程を行う。LiBHとPの両方が溶解することにより、均一溶液を得ることができ、結果としてイオン伝導性のより優れたイオン伝導体を得られる。また、後述するように、得られた溶液をそのまま塗布して電解質層等を形成することもできる。原料を溶媒に均一に溶解または分散させるための手段として、ホモジナイザーまたは超音波分散機のような攪拌機を用いても良い。
溶媒の添加量は、少なくともLiBHの一部およびPの一部が溶媒に溶解する量であればよく、溶媒の種類および目的とする原料の溶解状態に応じて調節することができるが、溶媒に対する原料の濃度が薄すぎると除去すべき溶媒量が増加することから、効率的ではない。原料と溶媒を混合して得られる混合物中の原料の濃度が1〜75質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましく、10〜35質量%であることが特に好ましく、10〜25質量%であることが最も好ましい。混合物に対する原料の濃度が上記範囲内であれば、混合後に均一溶液を得ることができる。
混合温度は、少なくともLiBHの一部およびPの一部が溶媒に溶解する温度であればよく、溶媒の種類および目的とする原料の溶解状態に応じて調節することができる。特に加熱する必要もないが、原料の溶解度や溶解速度を上げるために加熱することもできる。加熱する場合には、溶媒の沸点以下に加熱することで十分である。しかし、オートクレーブ等を用いて加圧条件とし、180℃程度までであれば熱をかけることも可能である。180℃以下の温度であれば、LiBHの分解を十分に抑えることができる。
混合時間は、少なくともLiBHの一部およびPの一部が溶媒に溶解する時間であればよく、溶媒の種類および目的とする原料の溶解状態に応じて調節することができるが、混合物が均一な状態となる時間を確保することが好ましい。混合時間は、原料の粒度分布や製造規模に左右されることが多いが、例えば0.1〜24時間行うことで十分に均一な溶液またはスラリーを得ることができる。
1−3.溶媒除去工程
イオン伝導体を得るためには、上記混合工程で均一な溶液またはスラリーを得た後に、溶媒を除去して乾燥する。溶液またはスラリーが均一な状態で溶媒を除去することが、均一なイオン伝導体を得るうえで重要である。したがって、溶媒除去工程においては、撹拌しながら加熱することが好ましい。
溶媒除去工程は、溶媒を除去することができる方法であれば特に限定されないが、例えば加熱乾燥や真空乾燥で行うことができ、複数種の方法を組み合わせて行ってもよい。溶媒除去の際の最適な温度は、溶媒の種類によって異なるが、溶媒の沸点よりも十分に高い温度をかけることで、溶媒除去時間を短くすることが可能である。溶媒を除去する温度は、60〜280℃の範囲であることが好ましい。60℃以上の温度であればイオン伝導体中の溶媒を十分に除去することができ、イオン伝導度への悪影響も抑えることができる。また、280℃以下の温度であれば、イオン伝導体の分解や、結晶の変質を十分に抑制することができる。溶媒除去温度は、より好ましくは100〜250℃であり、特に好ましくは150〜250℃である。また、LiBHがより安定に存在できる180℃以下の温度で溶媒を除去することがより好ましい。なお、真空乾燥等のように減圧下で溶媒を除去することで、溶媒を除去する際の温度を下げると共に所要時間を短くすることができる。また、十分に水分の少ない窒素やアルゴン等の不活性ガスを流すことによっても、溶媒除去に要する時間を短くすることができる。
1−4.熱処理工程
上記のようにして得られたイオン伝導体の結晶化をさらに進行させるため、溶媒除去工程の後に加熱処理を行ってもよい。加熱温度は、通常70〜180℃の範囲であり、より好ましくは80〜180℃の範囲であり、特に好ましくは85℃以上180℃未満である。70℃以上の温度であれば結晶化が生じ易く、一方、180℃以下の温度であれば、イオン伝導体が分解することや、結晶が変質することを十分に抑制することができる。なお、溶媒除去工程で加熱した場合は、溶媒除去と結晶化が同時に進行し、効率的である。
加熱時間は、加熱温度との関係で若干変化するものの、通常は0.1〜48時間の範囲で十分に結晶化される。加熱時間は、好ましくは1〜36時間であり、より好ましくは2〜24時間である。イオン伝導体の変質を抑える観点から、加熱時間は短い方が好ましい。
溶媒除去工程および任意に行われる熱処理工程によって、添加した溶媒の95質量%超が除去されることが好ましく、99質量%超が除去されることが好ましく、99.7質量%超が除去されることがより好ましく、100質量%が除去されることが特に好ましい。
2.イオン伝導体
本発明の他の実施形態によると、上記製造方法によって製造され得るイオン伝導体が提供される。上記製造方法によって製造されたイオン伝導体は、種々の特性に優れている。上述したように、LiBHは、相転移温度である115℃未満において、リチウムイオン伝導度が大きく低下してしまうという問題がある。しかしながら、本発明のイオン伝導体では、このようなリチウムイオン伝導度の低下は生じず、広い温度範囲において優れたイオン伝導性を得ることができる。また、イオン伝導度が温度によって変動し難い(すなわち、低温領域と高温領域でのイオン伝導度の差が小さい)という特性も有する。さらに、本発明のイオン伝導体は結晶であるため、ガラスと比較して、機械的および熱的に強固であるという点でも優れている。
本発明の製造方法によって得られるイオン伝導体は、LiBHとPとを、LiBH:P=x:(1−x)(式中、xは0.85超1.0未満を満たす)のモル比で含む。このイオン伝導体は、X線回折(CuKα:λ=1.5405Å)において、少なくとも、2θ=14.8±1.0deg、24.5±1.0deg、28.9±1.3deg、30.2±1.3deg、38.3±1.3deg、43.3±1.6deg、46.1±1.6deg、50.4±2.0deg、52.9±2.0degおよび60.1±2.4degに回折ピークを有することが好ましい。2θ=14.8±0.5deg、24.5±0.5deg、28.9±0.8deg、30.2±0.8deg、38.3±0.8deg、43.3±1.0deg、46.1±1.0deg、50.4±1.3deg、52.9±1.3degおよび60.1±1.5degに回折ピークを有することがより好ましい。2θ=14.8±0.3deg、24.5±0.3deg、28.9±0.5deg、30.2±0.5deg、38.3±0.5deg、43.3±0.6deg、46.1±0.6deg、50.4±0.8deg、52.9±0.8degおよび60.1±0.9degに回折ピークを有することが特に好ましい。
本発明の製造方法によって得られるイオン伝導体中の溶媒残存率は、添加した溶媒量に対して5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明のイオン伝導体は、各種手段によって成形体とし、以下に記載する全固体電池の固体電解質層をはじめとする各種用途に使用することができる。よって、本発明の一実施形態によると、上述したイオン伝導体を用いて形成された成形体が提供される。成形方法については特に限定されず、以下に詳述する方法を使用することができる。
3.固体電解質および全固体電池
本発明のイオン伝導体は、例えば、電池用の固体電解質として使用され得る。よって、本発明の一実施形態によると、上述したイオン伝導体を含む固体電解質が提供される。また、本発明のさらなる実施形態によると、この固体電解質を含む全固体電池が提供される。
本明細書において、全固体電池とは、リチウムイオンが電気伝導を担う全固体電池であり、特に全固体リチウムイオン二次電池である。全固体電池は、正極層と負極層との間に固体電解質層が配置された構造を有する。本発明のイオン伝導体は、正極層、負極層および固体電解質層のいずれか1層以上に、固体電解質として含まれてよい。本発明のイオン伝導体を電極層に使用する場合には、正極層よりも負極層に使用することが好ましい。負極層の方が、副反応が生じにくいためである。正極層または負極層に本発明のイオン伝導体が含まれる場合、イオン伝導体と公知のリチウムイオン二次電池用正極活物質または負極活物質とを組み合わせて使用する。正極層としては、活物質と固体電解質が混じり合ったバルク型を用いると、単セルあたりの容量が大きくなることから好ましい。
全固体電池は、上述した各層を成形して積層することによって作製されるが、各層の成形方法および積層方法については、特に限定されるものではない。例えば、固体電解質および/または電極活物質を溶媒に分散させてスラリー状としたものをドクターブレード、スピンコート等により塗布し、それを圧延することにより製膜する方法;真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法等を用いて成膜および積層を行う気相法;ホットプレスまたは温度をかけないコールドプレスによって粉末を成形し、それを積層していく加圧成形法等がある。本発明のイオン伝導体は比較的柔らかいことから、加圧成形によって成形および積層して電池を作製することが特に好ましい。加圧成形法としては、加温して行うホットプレスと加温しないコールドプレスとがあるが、固体電解質と活物質の組み合わせによって適切な方を選べば良い。加圧成形にて各層を一体成型することが好ましく、その際の圧力は、50〜800MPaであることが好ましく、114〜500MPaであることがより好ましい。上記範囲の圧力で加圧成形することにより、粒子間の空隙が少なく、密着性が良好な層を得ることができるため、イオン伝導性の観点から望ましい。必要以上に圧力を高くすることは、高価な材質の加圧装置や成形容器を使用する必要が生じると共に、それらの耐用寿命が短くなることから実用的ではない。また、正極層は、ゾルゲル法を用いて成膜することもできる。
本発明の製造方法によると、上記工程(a)によって均一な溶液(以下、「電解質溶液」とも称する)を得ることができる。そのため、工程(a)で得られた電解質溶液をそのまま塗布して、その後乾燥することにより、固体電解質層を製造することもできる。すなわち、本発明の一実施形態によると、(1)LiBHおよびPを含む原料と、溶媒とを混合して溶液を得る工程と、(2)前記工程(1)で得られた溶液を塗布する工程と、(3)前記溶液から溶媒を除去する工程とを含む、固体電解質層の製造方法が提供される[ここで、原料におけるLiBHとPのモル比は、LiBH:P=x:(1−x)(式中、xは0.85超1.0未満を満たす)である]。
工程(1)の詳細は、工程(a)として上述したとおりである。工程(2)における塗布方法は、特に限定されないが、例えばドクターブレード、スピンコート等により行うことができる。工程(3)の溶媒除去は、上記「1−3.溶媒除去工程」に記載したのと同様の方法で行うことができる。
このような方法で固体電解質層を製造した場合には、種々の利点が得られ、例えば、溶液塗布により層を形成するため、製造時に強い加圧を必要としない点;量産化する際に、単純な製造装置で、連続的に安価に製造できる点;工程(b)を省略できるため、製造時間を短縮できる点;固体電解質層を薄膜化することができるため、電池の軽量化および容量密度の向上を図れる点;均一な電解質溶液が得られるため、溶媒中に固体電解質が分散したスラリーを使用する場合と比較して、電解質が均一に分散した固体電解質層を得られる点、が挙げられる。
さらに、電極層を製造する場合にも、工程(a)で得られる電解質溶液を乾燥することなく使用することができる。具体的には、工程(a)で得られた電解質溶液に電極活物質を分散させてスラリーとしたものを塗布し、その後乾燥することにより電極層を得ることができる。すなわち、本発明の一実施形態によると、(i)LiBHおよびPを含む原料と、溶媒とを混合して溶液を得る工程と、(ii)前記工程(i)で得られた溶液と電極活物質を混合する工程と、(iii)前記工程(ii)で得られた混合物を塗布する工程と、(iv)前記混合物から溶媒を除去する工程とを含む、電極層の製造方法が提供される[ここで、原料におけるLiBHとPのモル比は、LiBH:P=x:(1−x)(式中、xは0.85超1.0未満を満たす)である]。ここでいう電極層は、正極層であっても負極層であってもよい。
工程(i)の詳細は、工程(a)として上述したとおりである。工程(ii)で混合する電極活物質としては、全固体電池において通常使用される正極活物質または負極活物質を使用することができ、その量も、通常使用される量でよい。工程(iii)における塗布方法は、特に限定されないが、例えばドクターブレード、スピンコート等により行うことができる。工程(iv)の溶媒除去は、上記「1−3.溶媒除去工程」に記載したのと同様の方法で行うことができる。
従来の溶媒中に固体電解質が分散したスラリーを用いて、そこにさらに電極活物質を分散させる方法では、大きさの異なる複数種の粒子を分散させる必要があるため、均一なスラリーを得ることが難しいという問題が生じ得る。一方、本発明の工程(a)で得られた電解質溶液に電極活物質を分散させる方法によれば、均一な電解質溶液に電極活物質のみを分散させればよいので、電解質溶液中に電極活物質が均一に分散したスラリーを得ることができ、結果として性能の高い電極層を製造することができる。
あるいは、電極層を先に準備しておき、そこに工程(a)で得られた電解質溶液を塗布し、乾燥して、複合電極を製造してもよい。このような方法において本発明の工程(a)で得られた電解質溶液を使用すると、固体電解質を電極層上に加圧成形するような場合と比較して、電極層と固体電解質層との間の密着性を高めることができ、電池性能の向上につながる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
<イオン伝導体の製造>
(実施例1)
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、三口フラスコにLiBHの10%テトラヒドロフラン(THF)溶液(Lockwood Lithium社製、Product no.401653)8.83gを量り取った。そこに、P(シグマ・アルドリッチ社製、純度99%)を1.0g加え(LiBH:P=0.90:0.10のモル比)、混合した。25℃で1時間混合することで、十分に均一な溶液を得た。
次に、得られた溶液を、真空下、150℃で2時間乾燥させることで、溶媒を除去した。溶媒除去は溶液を撹拌しながら行った。その後、室温まで冷却して白色のイオン伝導体(0.90LiBH−0.10P)を得た。
(実施例2)
LiBHの10%THF溶液の量を11.22gに、Pの量を0.60gに変更したことを除き(LiBH:P=0.95:0.05のモル比)、実施例1と同様にイオン伝導体を製造した。
(実施例3)
LiBHの10%THF溶液の量を11.15gに、Pの量を0.92gに変更したことを除き(LiBH:P=0.925:0.075のモル比)、実施例1と同様にイオン伝導体を製造した。
(実施例4)
LiBHの10%THF溶液の量を7.57gに、Pの量を1.11gに変更したことを除き(LiBH:P=0.875:0.125のモル比)、実施例1と同様にイオン伝導体を製造した。
(実施例5)
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、三口フラスコに2−メチルテトラヒドロフラン(Me−THF)(シグマ・アルドリッチ社製)10.0gを量り取り、そこにLiBH(シグマ・アルドリッチ社製、純度≧95%)0.88gおよびP(シグマ・アルドリッチ社製、純度99%)1.0gを加え(LiBH:P=0.90:0.10のモル比)、混合した。25℃で24時間混合することで、均一な溶液が得られた。
次に、得られた溶液を、真空下、150℃で2時間乾燥させることで、溶媒を除去した。溶媒除去は溶液を撹拌しながら行った。その後、室温まで冷却して白色のイオン伝導体(0.90LiBH−0.10P)を得た。
(実施例6)
2−メチルテトラヒドロフランの代わりにシクロペンチルメチルエーテル(CPME)(日本ゼオン株式会社製)10.0gを使用したことを除き、実施例5と同様にイオン伝導体を製造した。混合後には多少の溶け残りが生じたが、得られたイオン伝導体は、実施例5と比較して遜色ないものであった。
(実施例7)
2−メチルテトラヒドロフランの代わりにジエチルエーテル(和光純薬工業株式会社製)10.0g使用したことを除き、実施例5と同様にイオン伝導体を製造した。混合後には多少の溶け残りが生じたが、得られたイオン伝導体は、実施例5と比較して遜色ないものであった。
(実施例8)
乾燥温度を200℃に変更したことを除き、実施例1と同様にイオン伝導体を製造した。
(実施例9)
乾燥温度を250℃に変更したことを除き、実施例1と同様にイオン伝導体を製造した。
(比較例1)
LiBHの10%THF溶液の量を6.65gに、Pの量を1.20gに変更したことを除き(LiBH:P=0.85:0.15のモル比)、実施例1と同様にイオン伝導体を製造した。
(比較例2)
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、LiBH(シグマ・アルドリッチ社製、純度≧95%)を量り取り、メノウ乳鉢にて粉砕し、イオン伝導体(LiBH)を得た。
<X線回折測定>
実施例1〜4ならびに比較例1および2で得られたイオン伝導体の粉末について、Ar雰囲気下、室温にて、X線回折測定(PANalytical社製X‘pert Powder、CuKα:λ=1.5405Å)を実施した。得られた回折ピークを図1に示す。
実施例1〜4では、少なくとも、2θ=14.8deg、17.2deg、24.5deg、28.9deg、30.2deg、33.1deg、38.3deg、43.3deg、46.1deg、50.4deg、52.9deg、60.1deg、65.2degに回折ピークが観測された。
実施例2(x=0.95)および実施例3(x=0.925)においては、LiBH−Pに由来するピークに加えてLiBHに由来するピークも存在していることがわかる。実施例1(x=0.90)では、LiBHに由来するピークがなくなり、ほぼ単相のパターンが得られていると考えられる。比較例1(x=0.85)では、ピークがほとんど確認できず、結晶化が生じていないと言える。
溶媒を変えて製造した実施例5〜7のイオン伝導体について、上記と同様にX線回折測定を行った。その結果を図2に示す。図2より、溶媒を変更しても、実施例1と同様の結晶構造を有するイオン伝導体が得られたことが分かる。
乾燥温度を変えて製造した実施例8および9のイオン伝導体について、上記と同様にX線回折測定を行った。その結果を図3に示す。図3より、乾燥温度を変更しても、実施例1と同様の結晶構造を有するイオン伝導体が得られたことが分かる。
<イオン伝導度測定>
実施例1〜4ならびに比較例1および2で得られたイオン伝導体を一軸成型(240MPa)に供し、厚さ約1mm、直径8mmのディスクを得た。室温(25℃)から150℃の温度範囲において、10℃間隔でリチウム電極を利用した四端子法による交流インピーダンス測定(SI1260 IMPEDANCE/GAIN―PHASE ANALYZER)を行い、リチウムイオン伝導度を算出した。具体的には、サンプルを25℃に設定した恒温槽に入れて30分間保持した後にイオン伝導度を測定し、続いて30℃〜150℃まで10℃ずつ恒温槽を昇温し、各温度で同様の操作を繰り返した。150℃での測定を終えた後は、140℃〜30℃まで10℃ずつ恒温槽を降温し、各温度で40分間保持した後にイオン伝導度を測定した。続いて25℃まで恒温槽を降温し、40分間保持した後にイオン伝導度を測定した。測定周波数範囲は0.1Hz〜1MHz、振幅は50mVとした。降温時のリチウムイオン伝導度の測定結果を図4に示す。
図4によると、実施例1〜4のイオン伝導体は、良好なリチウムイオン伝導度を示し、LiBHの相転移温度である115℃未満においてもリチウムイオン伝導度が大きく低下することはなかった。一方、原料におけるLiBHの割合が少ない比較例1のイオン伝導体およびPを含まない比較例2のイオン伝導体は、良好なイオン伝導性が得られなかった。
溶媒を変えて製造した実施例5〜7のイオン伝導体について、上記と同様にイオン伝導度を測定した。その結果を図5に示す。図5より、溶媒を変更しても、良好なイオン伝導性を有するイオン伝導体を得られたことが分かる。
乾燥温度を変えて製造した実施例8および9のイオン伝導体について、上記と同様にイオン伝導度を測定した。その結果を図6に示す。図6より、乾燥温度を変更しても、良好なイオン伝導性を有するイオン伝導体を得られたことが分かる。
<負極層および固体電解質層の製造>
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、負極層としてインジウム箔を用意し、ギャップを300μmに調整したドクターブレード(テスター産業株式会社製)を用いて、固体電解質塗工液としての実施例1で得られた溶液(乾燥前の溶液)を負極層上に塗工した。この固体電解質塗工液が塗工されたシートをホットプレート上にて120℃で2時間乾燥させ、溶媒を蒸発させた。これにより、負極層上に固体電解質層を形成した。
<正極層の製造>
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、固体電解質としての実施例1で得られた溶液(乾燥前の溶液)3.16gと、正極活物質としてのTiS(高純度化学製)400mgを量り取り、容器に投入した。容器を、自転・公転ミキサー(ARE−250、THINKY製)にて10分間以上撹拌した後、脱泡処理を実施することにより、正極塗工液を調製した。次に、正極集電体としてアルミ箔集電体を用意し、ギャップを300μmに調節したドクターブレード(テスター産業株式会社製)を用いて、正極塗工液を正極集電体上に塗工した。この正極塗工液が塗工された正極集電体をホットプレート上にて150℃で2時間乾燥させ、溶媒を蒸発させた。これにより、正極集電体上に正極層を形成した。
<全固体電池の製造>
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、負極層上に形成された固体電解質層および、正極集電体上に形成された正極層をそれぞれφ10mmのポンチで打ち抜いた。次に、固体電解質層が正極層及び負極層によって挟まれるように積層した後、圧力240MPaでプレスすることにより貼り合わせ、正極層、固体電解質層、負極層が順次積層された円盤状のペレットを得た。このペレットの負極層にφ10mmの金属リチウム箔を貼り付け、SUS304製の電池試験セルに入れて全固体二次電池とした。なお、電池を120℃に設定した恒温槽に入れて2時間保持することで、Li−In合金が形成される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

Claims (15)

  1. (a)LiBHおよびPを含む原料と、溶媒とを混合する工程と、
    (b)前記工程(a)で得られた混合物から溶媒を除去する工程と
    を含み、前記原料におけるLiBHとPのモル比は、LiBH:P=x:(1−x)(式中、xは0.85超1.0未満を満たす)である、イオン伝導体の製造方法。
  2. 前記イオン伝導体は、X線回折(CuKα:λ=1.5405Å)において、少なくとも、2θ=14.8±1.0deg、24.5±1.0deg、28.9±1.3deg、30.2±1.3deg、38.3±1.3deg、43.3±1.6deg、46.1±1.6deg、50.4±2.0deg、52.9±2.0degおよび60.1±2.4degに回折ピークを有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記溶媒は、エーテル系溶媒である請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記エーテル系溶媒は、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテルおよびシクロペンチルメチルエーテルからなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記工程(a)における混合は、少なくともLiBHの一部およびPの一部が溶解する温度で行われる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記混合物に対する前記原料の濃度が1〜75質量%である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記工程(b)における溶媒の除去は、60〜280℃の温度で行われる請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法によって製造され得るイオン伝導体。
  9. 請求項8に記載のイオン伝導体を用いて成形された成形体。
  10. 請求項8に記載のイオン伝導体を含む固体電解質。
  11. 請求項10に記載の固体電解質を含む全固体電池。
  12. (1)LiBHおよびPを含む原料と、溶媒とを混合して溶液を得る工程と、
    (2)前記工程(1)で得られた溶液を塗布する工程と、
    (3)前記溶液から溶媒を除去する工程と
    を含み、前記原料におけるLiBHとPのモル比は、LiBH:P=x:(1−x)(式中、xは0.85超1.0未満を満たす)である、固体電解質層の製造方法。
  13. 請求項12に記載の方法によって製造され得る固体電解質層。
  14. (i)LiBHおよびPを含む原料と、溶媒とを混合して溶液を得る工程と、
    (ii)前記工程(i)で得られた溶液と電極活物質を混合する工程と、
    (iii)前記工程(ii)で得られた混合物を塗布する工程と、
    (iv)前記混合物から溶媒を除去する工程と
    を含み、前記原料におけるLiBHとPのモル比は、LiBH:P=x:(1−x)(式中、xは0.85超1.0未満を満たす)である、電極層の製造方法。
  15. 請求項14に記載の方法によって製造され得る電極層。
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