JP2018039177A - スパイクタイヤの製造方法 - Google Patents

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明宏 茂谷
Akihiro Shigetani
明宏 茂谷
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Abstract

【課題】スパイクピン用穴の近辺でのクラックが防止されたスパイクタイヤの製造方法を提供。
【解決手段】この本発明は、ベースタイヤとスパイクピンとを備えるスパイクタイヤを製造する方法である。このモールド18のセグメント4の内面には、ベースタイヤにスパイクピンを挿入する穴を形成するためのモールドピン22が設けられている。この製造方法は、上記モールド18の中で上記ローカバーRが加硫されてベースタイヤが得られる工程及び上記モールド18が上記ベースタイヤから離される工程を含む。上記モールド18が上記ベースタイヤから離される工程においては、上記セグメント4の半径方向外側への移動と停止とが繰り返されることで上記セグメント4がベースタイヤから離される。
【選択図】図4

Description

本発明は、スパイクタイヤの製造方法に関する。
タイヤ製造用のモールドは、ローカバーのトレッドと当接する複数のセグメントを備えている。セグメントの平面形状は実質的に円弧である。複数のセグメントがリング状に連結されることにより、リング状のキャビティ面が形成される。
スパイクタイヤでは、そのトレッド面に多数のスパイクピンが埋め込まれている。スパイクタイヤ用のモールドでは、セグメントの内面に、複数のピン(モールドピンと称される)が設けられている。モールドピンにより、トレッド面に、スパイクピンを埋め込むための穴(スパイクピン用穴と称される)が形成される。モールドピンを有するモールドについての検討が、特開2012−096471公報及び特開2015−20402公報に開示されている。
特開2012−096471公報 特開2015−20402公報
ローカバーの加硫により得られたタイヤ(ここではベースタイヤと称される)はモールドから離される。セグメントは、半径方向外側に移動させられることで、トレッドから離される。モールドピンは、スパイクピン用穴から一気に引き抜かれる。このとき、スパイクピン用穴とモールドピンとの干渉により、スパイクピン用穴の近辺で、クラックが発生することがある。
本発明の目的は、スパイクピン用穴の近辺でのクラックが防止されたスパイクタイヤの製造方法を提供することである。
本発明は、ベースタイヤとスパイクピンとを備えるスパイクタイヤを製造する方法である。上記モールドは、その内面がローカバーのトレッドと当接するセグメントを備えている。上記セグメントの内面には、上記ベースタイヤに上記スパイクピンを挿入する穴を形成するためのモールドピンが設けられている。この製造方法は、上記モールドの中で上記ローカバーが加硫されて上記ベースタイヤが得られる工程及び上記モールドが上記ベースタイヤから離される工程を含む。上記モールドが上記ベースタイヤから離される工程においては、上記セグメントの半径方向外側への移動と停止とが繰り返されることで上記セグメントが上記ベースタイヤから離される。
好ましくは、上記モールドが上記ベースタイヤから離される工程において、上記セグメントが一度に移動する距離Lは3.0mm以内である。
好ましくは、上記モールドが上記ベースタイヤから離される工程において、上記セグメントが一度に移動する距離Lは1.3mm以上である。
好ましくは、上記モールドが上記ベースタイヤから離される工程において、一度の停止時間Tは3.0秒以上である。
好ましくは、上記モールドが上記ベースタイヤから離される工程において、一度の停止時間Tは4.0秒以下である。
発明者らは、スパイクピン用穴の近辺でのクラック発生の要因について検討した。その結果、セグメントをトレッドから離すときのモールドピンとトレッドとの摩擦力がクラックの主な要因であることを見出した。この摩擦による応力が、トレッドのゴムの破断強度を超えることで、クラックが生じていることを見出した。
この製造方法では、モールドがベースタイヤから離される工程において、セグメントは半径方向外側への移動と停止とを繰り返す。連続してセグメントを移動させる従来の方法に比べて、セグメントが一度に移動する距離は小さい。この移動により生じたトレッドの歪みは小さい。この移動により生じたモールドピンとトレッドとの摩擦力は小さい。このトレッドの歪みは、セグメントの停止時のトレッドのゴムの収縮により、さらに小さくされる。モールドピンとトレッドとの摩擦力はさらに小さく抑えられる。セグメントがこの移動と停止とを繰り返すことにより、この摩擦力が大きくなることなく、セグメントがトレッドから離れうる。この製造方法では、スパイクピン用穴の近辺でのクラックの発生が抑えられている。
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法のための加硫装置が示された断面図である。 図2は、図1の装置のモールドが示された平面図である。 図3は、図1の装置で使用されるモールドピンが示された正面図である。 図4(a)は図1の装置のモールドピンの近辺が示された拡大断面図であり、図4(b)は図4(a)のセグメントが移動した状態が示された図であり、図4(c)は図4(b)のトレッドがセグメントから離れた状態が示された図である。 図5は、図1のセグメントがトレッドから離された状態が示された断面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態に係るスパイクタイヤの製造方法のための加硫装置2の一部が示された断面図である。図示されないが、この装置2で製造されるスパイクタイヤは、ベースタイヤと複数のスパイクピンとを備えている。それぞれのスパイクピンは、ベースタイヤのトレッドに設けられた穴(スパイクピン用穴と称される)に挿入されている。
図1に示されるように、この加硫装置2は、セグメント4、一対のサイドプレート6、一対のビードリング8、内セクターシュー10、外セクターシュー12、上側ベースプレート14及び下側ベースプレート16を備えている。この図では、ローカバーも示されている。図1において、Rで示されているのが、ローカバーである。 図1において、左右方向が半径方向であり、上下方向が軸方向であり、紙面に垂直な方向が周方向である。
この装置2において、セグメント4、一対のサイドプレート6及び一対のビードリング8は、モールド18を構成する。図2は、図1の装置2のモールド18のみが示された平面図である。図2において、両矢印Aで示される方向がタイヤの周方向であり、紙面に垂直な方向がタイヤの軸方向である。図1のモールド18の部分は、図2のI−I線に沿った拡大断面図となっている。
図1では、モールド18は閉じられている。この状態において、セグメント4の内面、サイドプレート6の内面及びビードリング8の内面が組み合わされ、キャビティ面が構成される。キャビティ面は、ローカバーRと当接して、タイヤの外面を形成する。
図1で示されるように、セグメント4は、その内面がローカバーRのトレッド20と当接する。セグメント4の内面は、タイヤのトレッド面を形成する。セグメント4の内面には、スパイクピン用穴を形成するためのピン22(モールドピン22と称される)が複数設けられている。モールドピン22は、セグメント4の内面に対して直角の方向に延びる。図示されないが、この内面には、さらにトレッド面の溝に対応する山が設けられている。図2で示されるように、セグメント4の平面形状は、実質的に円弧状である。複数のセグメント4が、リング状に配置されている。
図3には、モールドピン22が示されている。このモールドピン22は、装着部24と穴形成部26とを備えている。装着部24は、セグメント4にねじ込まれている。これにより、モールドピン22はセグメント4に堅固に固定される。穴形成部26は、セグメント4の内面において内向きに突出する。穴形成部26は、ローカバーRに埋没してスパイクピン用穴を形成する。穴形成部26は、装着部24から延びる胴部28と、穴形成部26の先端に位置するフランジ30とを備えている。胴部28及びフランジ30は、ほぼ円柱状である。フランジ30の外径は、胴部28の外径より大きい。胴部28の軸とフランジ30の軸とは、一致している。図で一点鎖線Cは、胴部28及びフランジ30の軸である。この軸Cは、このモールドピン22の軸である。
図3において、両矢印Hは穴形成部26の高さであり、両矢印D1は胴部28の外径であり、両矢印D2はフランジ30の外径である。モールドピン22の形状及び大きさは、タイヤによって適宜決められる。例えばこの実施形態では、高さHは9.1mmであり、外径D1は2.5mmであり、外径D2は4.9mmである。
なお、図示されないが、スパイクピンは、穴形成部26のフランジ30とほぼ同じ形状のフランジを備えている。スパイクピン用穴のフランジ30に対応する部分に、このスパイクピンのフランジが嵌め込まれることにより、スパイクピンがベースタイヤから脱落し難くなっている。
図1に示されるように、それぞれのサイドプレート6は、その内面がローカバーRのサイド部と当接する。サイドプレート6の内面は、タイヤのサイド部の外面を形成する。サイドプレート6は、上側ベースプレート14又は下側ベースプレート16に固定されている。
図1に示されるように、それぞれのビードリング8は、その内面がローカバーRのビードの部分と当接する。ビードリング8の内面は、タイヤのビードの部分の外面を形成する。ビードリング8は、サイドプレート6に固定されている。
内セクターシュー10は、セグメント4の半径方向外側に位置する。一つのセグメント4に対して、一つの内セクターシュー10が存在する。従って、内セクターシュー10の数は、セグメント4の数と同じである。それぞれの内セクターシュー10は、対応するセグメント4と固定されている。図1に示されるように、内セクターシュー10の半径方向外側の面は、軸方向に対して傾斜している。図1において、符号θはこの傾斜角度である。傾斜角度θは、通常15°から20°である。
外セクターシュー12は、内セクターシュー10の半径方向外側に位置している。外セクターシュー12は、内セクターシュー10と当接している。この当接面は、軸方向に対して傾斜している。この傾斜角度は、内セクターシュー10の外側面の傾斜角度θと同じである。すなわち、この傾斜角度は、通常15°から20°である。
この装置2では、外セクターシュー12は、軸方向(図1のY方向及びその反対方向)に移動しうる。内セクターシュー10及びこれと固定されたセグメント4は、半径方向(図1及び図2のX方向及びその反対方向)に移動しうる。外セクターシュー12をY方向に移動させることで、内セクターシュー10及びセグメント4が、X方向に移動する。これにより、セグメント4がトレッド20から離される。外セクターシュー12をY方向の反対方向に移動させることで、内セクターシュー10及びセグメント4が、X方向の反対方向に移動する。これにより、セグメント4がトレッド20と当接される。外セクターシュー12の移動距離aと、そのときの内セクターシュー10及びセグメント4の移動距離bとの間には、以下の関係が成り立つ。
b=a×tanθ
上側ベースプレート14及び下側ベースプレート16は、それぞれ対応するサイドプレート6を固定している。上側ベースプレート14と下側ベースプレート16との間で、内セクターシュー10及びセグメント4が半径方向に移動される。
以下では、上記の製造装置2を使用したタイヤの製造方法が説明される。このタイヤの製造方法は、
(1)ローカバーRが得られる工程、
(2)ローカバーRがモールド18内で加硫されてベースタイヤが得られる工程、
(3)モールド18がベースタイヤから離される工程
及び
(4)ベースタイヤに仕上げ処理をしてタイヤが得られる工程
を含む。
上記(1)の工程では、ドラム上又は剛体コア状でトレッド20やサイドウォール等の構成部材が組み合わされて、ローカバーRが得られる。
上記(2)の工程では、ローカバーRは図1の装置2のモールド18に投入される。ローカバーRの内側でブラダー(図示されず)が膨張される。ローカバーRは、モールド18とブラダーとに囲まれたキャビティにおいて、加圧されつつ加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーRのゴム組成物がキャビティ内を流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こす。ローカバーRは加硫される。これにより、ベースタイヤが得られる。加硫が終わると、ブラダーは収縮される。
上記(3)の工程では、セグメント4がトレッド20から離される。この様子が、図4(a)−(c)に表されている。図4(a)−(c)は、図1の装置2のモールドピン22の近辺が拡大された断面図である。これらは、軸方向に垂直な断面図である。図において、紙面と垂直な方向が軸方向であり、図4(a)の符号Aで表される方向が周方向である。
図4(a)において、矢印Xは、セグメント4の移動方向である。これは、図1のX方向である。これは、図2のいずれかのセグメント4のX方向である。一点鎖線Cは、このモールドピン22の軸である。セグメント4が円弧状であるため、セグメント4の周方向中央以外では、モールドピン22の軸はX方向に対して傾斜する。この傾斜角度は、セグメント4の周方向の両端に近づくほど、大きくなる。図4のモールドピン22は、円弧状のセグメント4の、周方向の端の近くに位置している。従ってこのモールドピン22の軸Cは、X方向に対して傾斜している。
図4(a)は、モールド18がトレッド20から離される前の状態である。この状態において、外セクターシュー12が図1のY方向に移動される。これより、内セクターシュー10及びセグメント4が、図1、図2及び図4のX方向に移動する。内セクターシュー10及びセグメント4が距離Lだけ移動したところで、外セクターシュー12は停止される。内セクターシュー10及びセグメント4も停止される。これらは、時間Tの間、停止される。
図4(b)には、内セクターシュー10及びセグメント4が停止された直後(すなわち、外セクターシュー12が停止された直後)の状態が示されている。図4(a)及び(b)で示されるように、モールドピン22は、Xの方向に距離Lだけ移動している。セグメント4の内面とトレッド20との粘着力、及びモールドピン22とこのトレッド20との摩擦力により、トレッド20のゴムがXの方向に伸ばされている。モールドピン22の近辺において、トレッド20のゴムは、距離LだけXの方向に伸ばされている。トレッド20に歪みが生じている。
図4(c)には、時間Tの間、内セクターシュー10及びセグメント4が停止された後の状態が示されている。Xの方向に伸ばされたトレッド20のゴムは、時間Tの間に収縮する。移動により生じたトレッド20の歪みは、ゴムの収縮により小さくされる。この収縮により、セグメント4とトレッド20との間に隙間32が生じる。モールドピン22の先端と、スパイクピン用穴36の底との間に、隙間34が生じる。すなわち、セグメント4がトレッド20に対して、距離Lだけ移動する。モールドピン22が、スパイクピン用穴36に対して、距離Lだけ移動する。
上記(3)の工程では、上記の内セクターシュー10及びセグメント4の移動と停止とが繰り返される。上記のとおり、一度の移動と停止とにより、モールドピン22が、スパイクピン用穴36に対して、距離Lだけ移動する。この移動と停止とは、モールドピン22の穴形成部26の全体がスパイクピン用穴36から引き抜かれるまで繰り返される。この移動と停止とは、少なくとも二度実施される。すなわち、最初の内セクターシュー10及びセグメント4の移動と停止とにより、穴形成部26の全体がスパイクピン用穴36から引き抜かれないように、距離Lは設定される。
穴形成部26の全体がスパイクピン用穴36から引き抜かれた後は、セグメント4は停止することなく連続して移動される。これにより、セグメント4が、トレッド20から離される。図5には、セグメント4が、トレッド20から離された状態が示されている。この段階では、ローカバーRは加硫されて、ベースタイヤ38が得られている。図2には、トレッド20から離されたセグメント4が、二点鎖線で描かれている。
上記(3)の工程では、さらに上側ベースプレート14が図1の上側に上昇することで、上側に位置するサイドプレート6及びビードリング8が上昇する。これらのサイドプレート6及びビードリング8が、ベースタイヤから離される。ベースタイヤ38がモールド18から取り出される。これにより、上記(3)の工程が終了する。
上記(4)の工程では、ベースタイヤ38のスパイクピン用穴36に、スパイクピンが取り付けられる。さらにスピューの切断等の外観上の処理がされる。これにより、タイヤが得られる。
以下では、本発明の作用効果が説明される。
スパイクタイヤの製造において、モールドがベースタイヤから離される際に、セグメントは、半径方向外側に移動させられる。モールドピンは、スパイクピン用穴から引き抜かれる。このとき、スパイクピン用穴とモールドピンとの干渉により、スパイクピン用穴の近辺で、クラックが発生することがある。
前述のとおり、セグメントの周方向の端近辺に位置するモールドピンでは、セグメントの移動方向に対するこのピンの軸の傾斜角度は大きくなる。このモールドピンは、スパイクピン用穴をこじ開けるように、この穴から抜かれる。このモールドピンでは、スパイクピン用穴との摩擦力が大きくなる。セグメントの周方向の端近辺に位置するモールドピンが引き抜かれるときのクラックの発生を抑えることが、特に重要となる。
クラックの発生を抑えるために、セグメントの周方向の位置により、モールドピンの形状を変更する方法がある。例えば、周方向の端に近いモールドピンほど、フランジが小さくされる。これにより、周方向の端に近いモールドピンにおいても、スパイクピン用穴との摩擦が小さくされうる。しかし、この方法では、タイヤからスパイクピンが抜け落ちやすくなる。さらに、周方位置によりモールドピンの形状を変更することは、モールドの製造及び検証を複雑にする。
クラックの発生を抑えるために、モールドピンの穴形成部を、装着部に対してスライド及び回転可能とする方法がある。これにより、モールドピンがスパイクピン用穴の縁に引っかかることが抑えられうる。しかし、このモールドピンの構造は複雑である。必要なモールドピンの強度を確保するには、モールドピンを大きくする必要がある。この方法では、意図する大きさのモールドピンを用いることができないときがある。
クラックの発生を抑えるために、トレッドの強度を大きくする方法がある。しかし、この方法では、トレッドの硬さが高くなるため、グリップ性能が低下するおそれがある。
発明者らは、スパイクピン用穴の近辺でのクラック発生の要因について検討した。その結果、セグメントをトレッドから離すときのモールドピンとトレッドとの摩擦力がクラックの主な要因であることを見出した。この摩擦による応力が、トレッドのゴムの破断強度を超えることで、クラックが生じていることを見出した。
この製造方法では、モールド18がベースタイヤ38から離される工程において、セグメント4は半径方向外側への移動と停止とを繰り返す。連続してセグメント4を移動させる従来の方法に比べて、セグメント4が一度に移動する距離は小さい。この移動により生じたトレッド20の歪みは小さい。この移動により生じたモールドピン22とトレッド20との摩擦力は小さい。図4(c)に示されるように、このトレッド20の歪みは、セグメント4の停止時のトレッド20のゴムの収縮によりさらに小さくされる。モールドピン22とトレッド20との摩擦力はさらに小さく抑えられる。セグメント4がこの移動と停止とを繰り返すことにより、この摩擦力が大きくなることなく、セグメント4がトレッド20から離れうる。この製造方法では、スパイクピン用穴36の近辺でのクラックの発生が抑えられている。
この方法では、クラックの発生を抑えるために、周方向位置によりモールドピン22の形状を変更する必要はない。このモールド18の製造及び検証は容易である。この方法では、モールドピン22のフランジ30を小さくする必要はない。この方法で製造したタイヤでは、スパイクピンが抜け落ちることが防止されている。
この方法では、クラックの発生を抑えるために、複雑な構造のモールドピン22を用いる必要はない。このモールドピン22の構造は単純である。このモールドピン22では、必要な強度を確保するために、モールドピン22を大きくする必要はない。この方法では、意図する大きさのモールドピン22を用いることができる。
この方法では、クラックの発生を抑えるために、トレッド20の硬さを高くする必要はない。この方法で製造したタイヤは、優れたグリップ力を備えうる。
上記(3)の工程において、セグメント4が一度に移動する距離Lは、3.0mm以下が好ましい。距離Lを3.0mm以下とすることで、移動時のモールドピン22とトレッド20との摩擦力は、効果的に小さくされる。摩擦力が大きくなることなく、セグメント4がトレッド20から離れうる。この製造方法では、スパイクピン用穴36の近辺でのクラックの発生が抑えられている。この観点から、距離Lは2.7mm以下がより好ましい。
距離Lは1.3mm以上が好ましい。距離Lを1.3mm以上とすることで、モールドピン22をスパイクピン用穴36から引き抜くのに必要な、移動と停止の繰り返し回数が抑えられる。この方法では、加硫のドライサイクル(ローカバーRの加硫が終了後、次のローカバーRの加硫が開始されるまでの時間)が長くなることが抑えられている。この方法では、良好な生産性が維持されている。この観点から、距離Lは2.0mm以上がより好ましい。
上記(3)の工程において、セグメント4の一度の停止時間Tは、3.0秒以上が好ましい。時間Tを3.0秒以上とすることで、セグメント4の移動により生じたトレッド20の歪みが、トレッド20のゴムの収縮により効果的に小さくされうる。モールドピン22とトレッド20との摩擦力が大きくなることなく、セグメント4がトレッド20から離れうる。この製造方法では、スパイクピン用穴36の近辺でのクラックの発生が抑えられている。この観点から、距離Lは3.2秒以上がより好ましい。
時間Tは、4.0秒以下が好ましい。時間Tを4.0秒以下とすることで、セグメント4の移動と停止の繰り返しに要する時間が短くできる。この方法では、加硫のドライサイクルが長くなることが抑えられている。この方法では、良好な生産性が維持されている。この観点から、時間Tは3.8秒以下がより好ましい。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1に示された装置を使用して、本発明に係る製造方法でタイヤを製造した。タイヤのサイズは、315/35R20とされた。この装置で使用されたモールドには、合計で144本のモールドピンが設けられた。それぞれのモールドピンの穴形成部の高さHは9.1mmであり、外径D1は2.5mmであり、外径D2は4.9mmであった。上記(3)の工程における、セグメントの一度の移動距離L、停止時間T及び停止回数が、表1に示されている。前述のとおり、実際には外セクターシューを軸方向に移動させることで、セグメントを半径方向に移動させている。外セクターシューの移動距離及び図1の角度θから計算されたセグメントの移動距離Lが、この表に示されている。この装置の角度θは、15°であった。
[比較例1]
モールドがベースタイヤから離されるとき、セグメントを停止せず、連続して移動させたことの他は実施例1と同様にしてタイヤを製造した。これは、従来の製造方法である。
[実施例2−3]
停止時間Tを表1のとおりとした他は実施例1と同様にしてタイヤを製造した。
[実施例4]
距離Lを表2のとおりとした他は実施例1と同様にしてタイヤを製造した。
[実施例5−6]
停止時間Tを表2のとおりとした他は実施例4と同様にしてタイヤを製造した。
[実施例7]
距離Lを表2のとおりとした他は実施例1と同様にしてタイヤを製造した。
[実施例8−9]
停止時間Tを表2のとおりとした他は実施例7と同様にしてタイヤを製造した。
[クラック発生率]
製造されたタイヤについて、スパイクピン用穴の近辺でのクラックの発生の有無が目視で確認された。全てのスパイクピン用穴のうち、クラックの発生が確認された穴の割合が計算された。この値が、比較例1を100とした指数で、表1−2に示されている。値が小さいほど好ましい。
[ドライサイクル]
それぞれのタイヤの製造時に、ドライサイクルが計測された。この値が比較例1を100とした指数で、表1−2に示されている。値が小さいほど好ましい。
Figure 2018039177
Figure 2018039177
表1−2に示されるように、実施例で製造されたタイヤは、比較例で製造されたタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
本発明に係る製造方法は、種々のスパイクタイヤの製造に適用しうる。
2・・・加硫装置
4・・・セグメント
6・・・サイドプレート
8・・・ビードリング
10・・・内セクターシュー
12・・・外セクターシュー
14・・・上側ベースプレート
16・・・下側ベースプレート
18・・・モールド
20・・・トレッド
22・・・モールドピン
24・・・装着部
26・・・穴形成部
28・・・胴部
30・・・フランジ
32、34・・・隙間
36・・・スパイクピン用穴
38・・・ベースタイヤ

Claims (5)

  1. ベースタイヤとスパイクピンとを備えるスパイクタイヤを製造する方法であって、
    上記モールドが、その内面がローカバーのトレッドと当接するセグメントを備えており、
    上記セグメントの内面には、上記ベースタイヤに上記スパイクピンを挿入する穴を形成するためのモールドピンが設けられており、
    上記モールドの中で上記ローカバーが加硫されて上記ベースタイヤが得られる工程
    及び
    上記モールドが上記ベースタイヤから離される工程
    を含み、
    上記モールドが上記ベースタイヤから離される工程においては、上記セグメントの半径方向外側への移動と停止とが繰り返されることで上記セグメントが上記ベースタイヤから離されるスパイクタイヤの製造方法。
  2. 上記モールドが上記ベースタイヤから離される工程において、上記セグメントが一度に移動する距離Lが3.0mm以内である請求項1に記載の製造方法。
  3. 上記モールドが上記ベースタイヤから離される工程において、上記セグメントが一度に移動する距離Lが1.3mm以上である請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 上記モールドが上記ベースタイヤから離される工程において、一度の停止時間Tが3.0秒以上である請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 上記モールドが上記ベースタイヤから離される工程において、一度の停止時間Tが4.0秒以下である請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024161707A1 (ja) * 2023-01-31 2024-08-08 横浜ゴム株式会社 スタッドタイヤ用モールドの製造方法およびそのモールド並びにスタッドタイヤの製造方法

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