JP2018038990A - 水分解用触媒体、水素製造方法、および、水素製造装置 - Google Patents

水分解用触媒体、水素製造方法、および、水素製造装置 Download PDF

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Kunihiro Kojima
邦裕 小島
近藤 和吉
Wakichi Kondo
和吉 近藤
武山 雅樹
Masaki Takeyama
雅樹 武山
泰 関根
Yasushi Sekine
泰 関根
荻野 健太郎
Kentaro Ogino
健太郎 荻野
脩平 小河
Shuhei Ogawa
脩平 小河
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Abstract

【課題】従来に比べ、取扱い性がよく、水の熱分解に対する触媒活性を持つ水分解用触媒体、また、これを用いた水素製造方法、水素製造装置を提供する。【解決手段】水分解用触媒体1は、Ce以外の少なくとも1つの希土類元素と少なくとも1つの遷移金属元素とを含む酸化物11を有している。酸化物11としては、Pr−Zr−Nd系酸化物、または、Pr−Zr系酸化物が好適に用いられる。水分解用触媒体1は、さらに、貴金属元素、アルカリ金属元素、および、アルカリ土類金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素12を有することができる。水素製造方法は、加熱状態にある水分解用触媒体1に水を接触させ、水を熱分解してH2を生成させるとともに、水分解用触媒体1に酸素を捕捉させる水素生成工程と、酸素を捕捉した水分解用触媒体1を加熱状態とし、O2を放出させる酸素放出工程とを有している。【選択図】図3

Description

本発明は、水分解用触媒体、水素製造方法、および、水素製造装置に関する。
従来、特許文献1に記載されるように、水を熱分解して水素を製造するための触媒体として、アルミン酸系化合物を用いる技術が公知である。
なお、特許文献2には、活性アルミナの一次粒子と、Zr、Nd、並びにCe及びNd以外の希土類金属R(La、Pr等)を含有する複合酸化物の一次粒子とが互いに混ざり合って二次粒子を形成するように凝集してなり、複合酸化物にはZrOが55mol%以上78mol%以下の割合で含まれ、活性アルミナに対する複合酸化物の割合が25質量%以上90質量%以下である、排ガス成分浄化用触媒体が記載されている。
特開2005−239488号公報 特開2009−90236号公報
しかしながら、アルミン酸系化合物からなる触媒体は、潮解性があり、空気中の水分や二酸化炭素を吸収して変質しやすい。そのため、アルミン酸系化合物からなる触媒体は、安定性が悪く、取扱い性に劣る。また、アルミン酸系化合物からなる触媒体は、水を分解する際に不純物を生じやすい。
なお、特許文献2には、複合酸化物から酸素を放出させ、これにより排ガス浄化性能を向上させる旨の記載がある。しかし、水分解による水素の製造に関する開示や示唆は一切ない。また、特許文献2は、排ガス成分を浄化するために高い温度環境下で触媒体を使用することを想定している。そもそもこのような高い温度環境下では、水素が焼失してしまう。そのため、この点からも、特許文献2には、水素の製造に関する視点がないといえる。また、特許文献2の触媒体は、耐熱性を向上させるために複合酸化物以外にアルミナを同時に備える必要がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、従来に比べ、取扱い性がよく、水の熱分解に対する触媒活性を持つ水分解用触媒体、また、これを用いた水素製造方法、水素製造装置を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、
Ce以外の少なくとも1つの希土類元素と少なくとも1つの遷移金属元素とを含む酸化物を有する、水分解用触媒体にある。
本発明の他の態様は、
加熱状態にある上記水分解用触媒体に水を接触させ、水を熱分解してHを生成させるとともに、上記水分解用触媒体に酸素を捕捉させる水素生成工程と、
上記酸素を捕捉した上記水分解用触媒体を加熱状態とし、Oを放出させる酸素放出工程と、を有する、水素製造方法にある。
本発明のさらに他の態様は、
反応器と、
上記反応器内に収容された上記水分解用触媒体と、
上記水分解用触媒体を加熱する熱源と、
上記水分解用触媒体へ電場を印加する電場印加部と、
上記反応器内への水の供給と水の供給停止とを切り替えるとともに、上記電場印加部により上記水分解用触媒体に印加される電場を制御する制御部と、
を有する、水素製造装置にある。
上記水分解用触媒体は、上記酸化物を有している。上記酸化物は、アルミン酸系化合物のように潮解性を示さず、安定性を有する。そのため、上記水分解用触媒体は、取扱い性が良好であり、水を分解する際にも不純物が生じ難い。また、上記酸化物は、希土類元素や遷移金属元素の酸化、還元を通じて水を熱分解することができ、水素生成活性、酸素放出活性を有する。そのため、上記水分解用触媒体は、水の熱分解に対する触媒活性を有する。
上記水素製造方法は、上記水分解用触媒体を用いた水素生成工程と酸素放出工程とを有している。そのため、上記水素製造方法によれば、上記水分解用触媒体の水素生成活性および酸素放出活性を利用して、水からHを製造することができる。また、上記水素製造方法は、化合物安定性の高い上記酸化物を有する上記水分解用触媒体を用いている。そのため、上記水素製造方法によれば、アルミン酸系化合物からなる触媒体を用いる場合に比べ、不純物の少ないHを製造することが可能になる。また、上記水素製造方法は、水素生成工程と酸素放出工程とを別々に有しているので、水素生成工程で生成したHと酸素放出工程で放出されたOとが再結合するのを抑制しやすい上、HとOとを分離する操作を不要とすることができる。
上記水素製造装置は、上記構成を有している。そのため、上記水素製造装置によれば、上記水分解用触媒体を用いた水素生成工程と酸素放出工程とを実施することができ、上記水分解用触媒体の水素生成活性および酸素放出活性を利用して、水からHを製造することができる。この際、上記水素製造装置は、水素生成工程と酸素放出工程の実施時に、電場印加部により上記水分解用触媒体に電場を印加することができる。そのため、上記水分解用触媒体の分極が誘発され、水の分解反応が促進される。それ故、上記水素製造装置によれば、排熱等の低温の熱源を有効活用し、Hを製造しやすい。
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
実施形態3の水素製造方法における水素生成工程の模式的な説明図である。 実施形態3の水素製造方法における酸素放出工程の模式的な説明図である。 実施形態4の水素製造方法における水素生成工程の模式的な説明図である。 実施形態4の水素製造方法における酸素放出工程の模式的な説明図である。 実施形態5の水素製造装置の模式的な説明図である。 実験例における触媒活性の測定方法を示す説明図である。
(実施形態1)
実施形態1の水分解用触媒体について説明する。本実施形態の水分解用触媒体は、Ce以外の少なくとも1つの希土類元素と少なくとも1つの遷移金属元素とを含む酸化物を有している。つまり、上記酸化物は、Ce以外の少なくとも1つの希土類元素、少なくとも1つの遷移金属元素、および、Oを構成元素として含む複合酸化物である。希土類元素は、酸化物中に1種または2種以上含まれていてよく、遷移金属元素は、酸化物中に1種または2種以上含まれていてよい。
希土類元素としては、具体的には、例えば、Sc、Y、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどを例示することができる。希土類元素としては、価数変動の可能性、イオン半径、酸素イオン伝導性および/または電子伝導性などの観点から、好ましくは、Pr、Nd、Y、La、Gdなどを挙げることができ、より好ましくは、Pr、または、PrおよびNdを少なくとも含んでいるとよい。一方、遷移金属元素としては、具体的には、例えば、Zr、Cr、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどを例示することができる。遷移金属元素としては、価数変動の可能性、イオン半径、酸素イオン伝導性および/または電子伝導性などの観点から、好ましくは、Zr、Cr、Mnなどを挙げることができ、より好ましくは、Zrを少なくとも含んでいるとよい。なお、Ce以外の希土類元素を用いるのは、Ce0.5Zr0.5等、Ceを含む酸化物は、内部の格子欠陥を埋めた酸素を放出させ難いため、水素生成活性を有していても酸素放出活性がなく、水の熱分解時の反応サイクルを回すことが難しいためである。これに対し、上記酸化物を有する水分解用触媒体は、水素生成活性と酸素放出活性とを有するので、水素生成工程と酸素放出工程とを交互に繰り返し実施しやすい利点がある。
上記酸化物は、具体的には、Pr−Zr−Nd系酸化物、または、Pr−Zr系酸化物より構成することができる。なお、Pr−Zr−Nd系酸化物は、Pr、Zr、Nd、Oを構成元素として含む複合酸化物である。また、Pr−Zr系酸化物は、Pr、Zr、Oを構成元素として含む複合酸化物である。上記構成によれば、上記酸化物が酸素イオン伝導性と電子伝導性とを兼ね備えるため、以下の水の分解反応を促進させることができる。
O+2e→H+O2−
2−→1/2O+2e
また、上記構成によれば、上記水分解用触媒体に電場を印加した際に、上記酸化物の分極が誘発され、上述した水の分解反応を促進させやすくなる。そのため、上記構成によれば、より低温で水を分解可能な水分解用触媒体が得られる。それ故、上記構成による水分解用触媒体を用いて、例えば、排熱等、500℃以下の低温の熱源を有効活用し、Hを安価に製造することが可能になる。
上記酸化物としては、具体的には、例えば、Pr(1−y)−xZrNdで表されるものを用いることができる。但し、式中、xは0.3以上0.5以下、yは0.3以上0.5以下、zは、Pr、Zr、Ndの存在割合に応じた合計のプラスの価数と等価になるようにマイナスの価数を持つOの存在割合である。この構成によれば、上述した作用効果を確実なものとしやすい。上記酸化物としては、好ましくは、Pr0.8−xZrNd0.2、但し、xは、0.3以上0.5以下で表されるものなどを挙げることができる。
上記酸化物において、希土類元素または遷移金属元素は、水素生成時に部分的に酸化された状態にあり、酸素放出時に部分的に還元された状態にあるとよい。この構成によれば、水素生成時に、希土類元素または遷移金属元素のさらなる酸化反応を通じて水素生成活性を向上させやすくなる。また、酸素放出時に希土類元素または遷移金属元素のさらなる還元反応を通じて酸素放出活性を向上させやすくなる。そのため、この構成によれば、安定的に水を分解しやすい水分解用触媒体が得られる。
なお、希土類元素、遷移金属元素が部分的に酸化された状態とは、当該元素が最も容易に取りうる最大価数よりも小さい価数を有している状態をいう。例えば、Prは、最も容易に取りうる最大価数として4+をとる元素である。したがって、水素生成時にPrの価数が、上記の最大価数よりも小さい価数、例えば、3+である場合には、さらに価数が増加する余地があり、この場合には、当該元素は、完全に酸化されておらず、部分的に酸化された状態になっているといえる。また、希土類元素、遷移金属元素が部分的に還元された状態とは、当該元素が最も容易に取りうる最小価数よりも大きい価数を有している状態をいう。例えば、Prは、最も容易に取りうる最小価数として3+をとる元素である。したがって、酸素放出時にPrの価数が、上記の最小価数よりも大きい価数、例えば、4+である場合には、さらに価数が減少する余地があり、この場合には、当該元素は、完全に還元されておらず、部分的に還元された状態になっているといえる。
上記酸化物は、酸素イオン伝導性および電子伝導性を有する構成とすることができる。上記酸化物が酸素イオン伝導性を有することにより、水の分解時に生じた酸素を上記酸化物に捕捉しやすくなる。また、上記水分解用触媒体に電場を印加した場合に、電場による酸素ポンピング作用を上記酸化物が発現しやすくなり、上記酸化物への酸素の捕捉や上記酸化物からのOの放出を促進させやすくなる。また、上記酸化物が電子導電性を有することにより、電子の授受を伴う水の分解反応を促進させやすくなる。そのため、この構成によれば、より低温で水を分解可能な水分解用触媒体が得られる。それ故、上記構成による水分解用触媒体を用いて、例えば、排熱等、500℃以下の低温の熱源を有効活用し、Hを安価に製造することが可能になる。
なお、酸素イオン伝導性および電子伝導性を有する酸化物は、具体的には、上述した希土類酸化物、遷移金属元素を選択することで得ることができる。
上記酸化物の酸素イオン伝導度は、具体的には、1×10−5以上1×10−2S/cm以下とすることができる。上記酸化物の電子伝導度は、具体的には、1×10−2以上1×10−1S/cm以下とすることができる。この構成によれば、上記酸化物が酸素イオン伝導性および電子伝導性を有する際の効果を確実なものとすることができる。
上記酸化物の比表面積は、5以上100m/g以下とすることができる。この構成によれば、水素生成活性と酸素放出活性とのバランスに優れた水分解用触媒体を得やすくなる。上記酸化物の比表面積は、水素生成活性の向上などの観点から、好ましくは、8m/g以上、より好ましくは、10m/g以上、さらに好ましくは、25m/g以上、さらにより好ましくは、50m/g以上とすることができる。また、上記酸化物の比表面積は、酸素放出活性の確保を容易にするなどの観点から、好ましくは、90m/g以下、より好ましくは、80m/g以下、さらに好ましくは、70m/g以下とすることができる。上記比表面積は、JIS R1626−1996「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に準拠して測定される値(吸着ガス:窒素)である。なお、測定は、水の分解反応に供する前の試料を用いて行う。
なお、上記水分解用触媒体は、具体的には、その触媒作用によって水を分解することができるものであり、HまたはO、あるいは、HおよびOを製造するために用いることができる。
本実施形態の水分解用触媒体は、上記酸化物を有している。上記酸化物は、アルミン酸系化合物のように潮解性を示さず、安定性を有する。そのため、本実施形態の水分解用触媒体は、取扱い性が良好であり、水を分解する際にも不純物が生じ難い。また、上記酸化物は、希土類元素や遷移金属元素の酸化、還元を通じて水を熱分解することができ、水素生成活性、酸素放出活性を有する。そのため、本実施形態の水分解用触媒体は、水の熱分解に対する触媒活性を有する。
なお、上記酸化物は、例えば、錯体重合法、固相反応法、加水分解法、ゾル−ゲル法、水熱法、噴霧熱分解法、共沈法などを用いて作製することができる。
錯体重合法を用いる場合、例えば、目的とする酸化物と同様の構成元素(希土類元素、遷移金属元素)比となるように、前駆体である各構成元素の塩(硝酸塩等の無機塩、例えば、Pr、Zr、Ndが構成元素である場合、硝酸プラセオジム:Pr(NO・6HO、硝酸ジルコニウム:ZrO(NO・2HO、硝酸ネオジム:Nd(NO・6HO等)、クエン酸、エチレングリコール、純水を75〜80℃程度でよく混合する。得られた混合物を100℃程度で12〜48時間程度乾燥させた後、400〜450℃程度で2〜48時間程度仮焼してクエン酸、エチレングリコールを予め分解除去し、その後、得られた仮焼物を800〜900℃程度で5〜48時間程度本焼成することにより、目的の酸化物を得ることができる。
共沈法を用いる場合、例えば、目的とする酸化物が得られるように、上記酸化物と同様の各構成元素の塩(例えば、Pr、Zr、Ndが構成元素である場合、Prの塩、Zrの塩、Ndの塩)を所定の化学量論比で含む混合塩水溶液を調製し、この混合塩水溶液に中和剤を加えて共沈させた後、得られた共沈物を乾燥後、熱処理することにより、目的の酸化物を得ることができる。
具体的には、Prの塩、Zrの塩、Ndの塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩などの無機塩、酢酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。また、混合塩水溶液は、例えば、各塩を、所定の化学量論比となるような割合で純水に加えて、撹拌混合することにより調製することができる。その後、この混合水溶液に、中和剤を加えて共沈させる。中和剤としては、例えば、アンモニアの他、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、ピリジン等のアミン類などの無機塩基などが挙げられる。なお、中和剤は、中和剤を加えた後の溶液のpHが6〜10程度となるように加えることが好ましい。得られた共沈物は、必要により水洗し、100℃程度で12〜48時間程度乾燥させた後、800〜900℃程度で5〜48時間程度本焼成することにより、目的の酸化物を得ることができる。
(実施形態2)
実施形態2の水分解用触媒体について説明する。本実施形態の水分解用触媒体は、実施形態1にて上述した希土類元素と遷移金属元素とを含む酸化物以外に、さらに、貴金属元素、アルカリ金属元素、および、アルカリ土類金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を有している点で、実施形態1の水分解用触媒体と異なっている。つまり、本実施形態の水分解用触媒体は、希土類元素と遷移金属元素とを含む酸化物と、貴金属元素、アルカリ金属元素、および、アルカリ土類金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素とを有している。なお、その他の構成は、実施形態1と同様である。
この構成によれば、上述した水の分解反応を促進させやすくなる。そのため、上記構成によれば、より低温でHを製造可能な水分解用触媒体が得られる。それ故、上記構成による水分解用触媒体を用いて、例えば、排熱等、500℃以下の低温の熱源を有効活用し、Hを安価に製造することが可能になる。その他の作用効果は、実施形態1と同様である。
本実施形態において、貴金属元素は、水の分解反応を促進させるなどの観点から、具体的には、Pd、Pt、Ru、Ag、および、Auからなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。なお、貴金属元素は、単体であってもよいし、他の貴金属元素や、貴金属元素とは異なるCu、Mn、Vなどの金属元素等と併用することもできる。貴金属元素は、水素生成活性、酸素放出活性の向上等の観点から、好ましくは、Pd、Pt、Ruなどであるとよい。貴金属元素は、水素生成活性および酸素放出活性のバランスなどの観点から、より好ましくは、Pdである。
また、アルカリ金属元素としては、水の分解反応を促進させるなどの観点から、具体的には、Kを含むことができる。アルカリ金属元素は、1種または2種以上併用することができる。
また、アルカリ土類金属元素としては、水の分解反応を促進させるなどの観点から、具体的には、Caを含むことができる。アルカリ土類金属元素は、1種または2種以上併用することができる。
本実施形態において、上記金属元素は、具体的には、上記酸化物に担持されている構成とすることができる。この構成によれば、上記金属元素と上記酸化物とが接触しているので、水分解用触媒体に接触した水の分解反応を促進させやすくなる。
なお、上記金属元素は、例えば、含浸法、ポアフィリング法、沈着法、共沈法、混練法、イオン交換法等により上記酸化物に担持させることができる。
含浸法を用いる場合、例えば、担持させる上記金属元素の前駆体である上記金属元素の塩(酢酸塩等)と、純水とをエバポレータに入れ、水分を蒸発乾固させる。この際、上記酸化物に対して上記金属元素が所定の質量%となるように上記金属元素の塩の量を調整する。その後、上記乾固物を400〜600℃程度で2〜48時間程度焼成することにより、上記酸化物に上記金属元素を所定の質量%で担持させることができる。
ポアフィリング法を用いる場合、例えば、予め酸化物の細孔容積を測定し、これと同じ容積の上記金属元素の前駆体溶液を準備する。前駆体溶液としては、例えば、Pd(OCOCH、Pt(NH・(NOなどを酸化物の細孔容積と同量の純水に溶かしたものなどを用いることができる。次いで、スポイト等を利用して、前駆体溶液を酸化物上に滴下していく。これにより、酸化物表面が均一に濡れた状態となる。その後、酸化物を100〜200℃程度に加熱し、乾燥させることで、酸化物表面に上記前駆体を均一に担持させることができる。その後、これを400〜600℃程度で2〜48時間程度焼成することにより、上記酸化物に上記金属元素を所定の質量%で担持させることができる。
上記酸化物に対する上記金属元素の含有量は、合計で0.3質量%以上7質量%以下とすることができる。
上記含有量は、水の分解反応の促進効果を確実なものとするなどの観点から、好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは、0.7質量%以上、さらに好ましくは、1質量%以上とすることができる。一方、上記含有量は、水素生成活性の確保を容易にするなどの観点から、好ましくは、7質量%以下、より好ましくは、6質量%以下、さらに好ましくは、5質量%以下とすることができる。
(実施形態3)
実施形態3の水素製造方法について、図1、図2を用いて説明する。図1、図2に例示されるように、本実施形態の水素製造方法は、水素生成工程と、酸素放出工程とを有している。
水素生成工程は、加熱状態にある水分解用触媒体1に水(HO)を接触させ、水を熱分解してHを生成させるとともに、水分解用触媒体1に酸素を捕捉させる工程である。水分解用触媒体1としては、希土類元素と遷移金属元素とを含む酸化物11を有する実施形態1の水分解用触媒体1、または、上記酸化物11と、貴金属元素、アルカリ金属元素、および、アルカリ土類金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素12とを有する実施形態2の水分解用触媒体1を用いることができる。なお、図1、図2では、実施形態2の水分解用触媒体1が例示されており、また、金属元素12が酸化物11に担持されている例が示されている。
水は、液体状態であってもよいし、気体状態であってもよい。水は、好ましくは、水の分解反応を促進させる観点から、気体状態(つまり、水蒸気)であるとよい。なお、水分解用触媒体1への水の接触は、具体的には、水分解用触媒体1を反応容器内に収容し、反応容器内に水を供給することにより実施することができる。
水素生成工程における水分解用触媒体1の加熱温度は、具体的には、500℃以下とすることができる。この場合には、排熱等の熱源を有効活用し、Hを安価に製造することが可能になる。上記加熱温度は、より低温の熱源が利用しやすくなる等の観点から、好ましくは、450℃以下、より好ましくは、425℃以下、さらに好ましくは、400℃以下とすることができる。上記加熱温度は、水分解用触媒体1の水素生成活性および酸素放出活性を確実なものとする等の観点から、好ましくは、100℃以上、より好ましくは、150℃以上、さらに好ましくは、200℃以上とすることができる。なお、水分解用触媒体1を加熱するための熱源としては、例えば、熱交換器やヒーター等を用いることができる。
水の熱分解によるHの生成は、具体的には、水の熱分解により生じた水素が水分解用触媒体1に吸着し、電子を受け取ることなどを通じて行われることができる。また、水分解用触媒体1による酸素の捕捉は、具体的には、例えば、水の熱分解により生じた酸素が水分解用触媒体1内に吸蔵されたり、水の熱分解により生じた酸素が水分解用触媒体1に吸着したりすることなどによって行われることができる。なお、図1および図2では、前者が例示されている。
水素生成工程では、水分解用触媒体1に水を接触させるため、雰囲気中に水が供給される。雰囲気全体に対するHO量は、好ましくは、20体積%以上、より好ましくは、30体積%以上、さらに好ましくは、40体積%以上とすることができる。また、雰囲気全体に対するHO量は、好ましくは、100体積%以下、より好ましくは、90体積%以下とすることができる。なお、HO以外の残りの雰囲気成分としては、例えば、He、Arなどの不活性ガスを用いることができる。
水素生成工程では、水分解用触媒体1に水を接触させる前に、Hによる前還元処理を行うことができる。この場合には、酸化物の酸素欠損を形成できるなどの利点がある。前還元処理は、例えば、1〜20体積%程度のHを含む不活性ガスなどを用いて実施することができる。不活性ガスとしては、例えば、Ar、He、Nなどを例示することができる。
酸素放出工程は、酸素を捕捉した水分解用触媒体1を加熱状態とし、Oを放出させる工程である。なお、酸素放出工程は、雰囲気中への水の供給が停止された状態で実施することができる。酸素放出工程における水分解用触媒体1の加熱温度は、水素生成工程における水分解用触媒体1の加熱温度と同様とすることができる。酸素放出工程は、酸素濃度が低いほど、濃度勾配によりOが放出されやすくなる等の観点から、不活性ガス中で行うことができる。不活性ガスとしては、例えば、Ar、He、Nなどを例示することができる。
本実施形態の水素製造方法は、上記水分解用触媒体1を用いた水素生成工程と酸素放出工程とを有している。そのため、本実施形態の水素製造方法によれば、上記水分解用触媒体1の水素生成活性および酸素放出活性を利用して、水からHを製造することができる。また、本実施形態の水素製造方法は、化合物安定性の高い上記酸化物11を有する上記水分解用触媒体1を用いている。そのため、本実施形態の水素製造方法によれば、アルミン酸系化合物からなる触媒体を用いる場合に比べ、不純物の少ないHを製造することが可能になる。また、本実施形態の水素製造方法は、水素生成工程と酸素放出工程とを別々に有しているので、水素生成工程で生成したHと酸素放出工程で放出されたOとが再結合するのを抑制しやすい上、HとOとを分離する操作を不要とすることができる。
本実施形態の水素製造方法では、水素生成工程と酸素放出工程とを交互に繰り返すことができる。この場合には、不純物の少ないHを連続的に大量に製造することが可能になる。
(実施形態4)
実施形態4の水素製造方法について、図3、図4を用いて説明する。なお、実施形態4以降において用いられる符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
図3、図4に例示されるように、本実施形態の水素製造方法は、水素生成工程および酸素放出工程において、水分解用触媒体1に電場を印加する点で、実施形態3と相違している。その他の構成は、実施形態3と同様である。
この場合には、電場により水分解用触媒体1の分極が誘発され、水の分解反応が促進されるため、排熱等の低温の熱源を有効活用し、Hを製造しやすくなる。その他の作用効果は、実施形態3と同様である。
酸素放出工程において水分解用触媒体に印加する電場(以下、第2電場ということがある。)は、水素生成工程において水分解用触媒体1に印加する電場(以下、第1電場ということがある。)よりも大きくすることができる。この場合には、水素生成量と酸素生成量とのバランスを良好なものとしやすい。
図3に示されるように、第1電場は、具体的には、水分解用触媒体1に接触した水から酸素を引き抜く方向の電場とすることができる。つまり、第1電場は、酸化物11の表面から内部へ酸素を移動させることが可能な方向の電場とすることができる。この場合には、電場による酸素ポンピング作用により、酸化物11内への酸素の吸蔵を促進させやすくなる。また、図4に示されるように、第2電場は、具体的には、酸化物11の内部から表面へ酸素を移動させることが可能な方向の電場とすることができる。この場合には、電場による酸素ポンピング作用により、酸化物11からOの放出を促進させやすくなる。
第2電場を構成するための第2電流の電流値は、第1電場を構成するための第1電流の電流値よりも大きくすることができる。この場合には、水素生成量と酸素生成量とのバランスを良好なものとしやすい。
第1電場、第2電場を印加する際の電流値は、具体的には、1mA以上20mA以下とすることができる。この場合には、水の分解反応の促進を確実なものとしやすくなる。第1電場、第2電場を印加する際の電流値は、好ましくは、3m以上18mA以下、より好ましくは、5mA以上15mA以下とすることができる。
第1電場、第2電場を印加する際の電圧値は、具体的には、0.1kV以上1.8kV以下とすることができる。この場合には、水の分解反応の促進を確実なものとしやすくなる。第1電場、第2電場を印加する際の電圧値は、好ましくは、0.15kV以上1.7kV、より好ましくは、0.2kV以上1.6kV以下とすることができる。
(実施形態5)
実施形態5の水素製造方法について、図5を用いて説明する。図5に例示されるように、本実施形態の水素製造装置2は、反応器21と、水分解用触媒体1と、熱源22と、電場印加部23と、制御部24とを有している。
反応器21は、水分解用触媒体1の触媒作用を利用して水の熱分解を行わせるための容器である。本実施形態では、反応器21は、具体的には、水を反応器21の内部に導入するための導入部211と、水分解用触媒体1を収容する収容部212と、生成したHまたはOを反応器21の外部に導出するための導出部213とを備えている。なお、導入部21には、開閉弁を備えた水の供給経路(不図示)が接続可能とされている。
水分解用触媒体1としては、希土類元素と遷移金属元素とを含む酸化物11を有する実施形態1の水分解用触媒体1、または、上記酸化物11と、貴金属元素、アルカリ金属元素、および、アルカリ土類金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素12とを有する実施形態2の水分解用触媒体1が用いられる。なお、図5では、層状に形成された実施形態2の水分解用触媒体1が例示されている。
熱源22は、水分解用触媒体1を加熱するためのものである。熱源22としては、例えば、熱交換器やヒーターなどを用いることできる。本実施形態では、熱源22は、熱交換器より構成されている。熱交換器は、例えば、ボイラーなどの排熱や太陽熱などの熱エネルギーを利用して水分解用触媒体1を加熱することができるように構成されている。なお、本実施形態では、熱交換器によって気化された水(水蒸気)が水分解用触媒体1に供給されるように構成されている。
電場印加部23は、水分解用触媒体1へ電場を印加するためのものである。本実施形態では、電場印加部23は、具体的には、一対の電極230と、電源233とを備えている。一対の電極230は、第1電極231および第2電極232より構成されており、水分解用触媒体1を挟んだ状態で配置されている。第1電極231および第2電極232は、電源233に電気的に接続されている。なお、第1電極231および第2電極232は、ガス透過可能に構成されている。
制御部24は、反応器21内への水の供給と水の供給停止とを切り替えるとともに、電場印加部23により水分解用触媒体1に印加される電場を制御する。本実施形態では、具体的には、制御部24は、周知のマイクロコンピュータ等を備える電子制御装置より構成されている。また、制御部24は、電場印加部23が水分解用触媒体1に印加する電流を可変制御するように構成されている。また、制御部24は、第1電流を水分解用触媒体1に印加する第1電流制御と、第1電流よりも電流値が高い第2電流を水分解用触媒体1に印加する第2電流制御とを実施するように構成されている。
水素製造装置2は、例えば、次のように動作させることができる。先ず、熱源22で水分解用触媒体1を加熱する。次いで、反応器21内に水を供給し、水分解用触媒体1に水を接触させる。本実施形態では、水の供給/供給停止の切り替えは、水の供給経路に設けられた開閉弁の開度を制御部24により制御することによって行われる。次いで、電場印加部23により、水分解用触媒体1へ水素生成のための電場を印加する。本実施形態では、一対の電極230間に電圧を印加して、水分解用触媒体1に第1電流を流すことにより、水分解用触媒体1へ電場が印加される。これにより、水分解用触媒体1の触媒作用により水からHが生成し、水分解用触媒体1に水の分解による酸素が捕捉される。そして、所定の反応時間(例えば、数分〜十数分)経過した後に、水分解用触媒体1への水の供給を停止する。次いで、必要に応じて、熱源22で水分解用触媒体1を加熱する。なお、水素生成時の加熱によって酸素放出に適した温度が得られておれば、水分解用触媒体1を再度加熱しなくてもよい。次いで、電場印加部23により、水分解用触媒体1へ酸素放出のための電場を印加する。本実施形態では、一対の電極230間に電圧を印加して、水分解用触媒体1に第2電流を流すことにより、水分解用触媒体1へ電場が印加される。これにより、水分解用触媒体1に捕捉されていた酸素からOが生成する。
なお、上記では、電場印加部23を機能させた動作の一例について説明したが、水素製造装置2は、電場印加部23を機能させずに動作させることもできる。上記水分解用触媒体1は、電場を印加させなくても水を分解することができるためである。
本実施形態の水素製造装置2は、上記構成を有している。そのため、本実施形態の水素製造装置2によれば、水分解用触媒体1を用いた水素生成工程と酸素放出工程とを実施することができ、水分解用触媒体1の水素生成活性および酸素放出活性を利用して、水からHを製造することができる。この際、本実施形態の水素製造装置2は、水素生成工程と酸素放出工程の実施時に、電場印加部23により水分解用触媒体1に電場を印加することができる。そのため、水分解用触媒体1の分極が誘発され、水の分解反応が促進される。それ故、本実施形態の水素製造装置2によれば、排熱等の低温の熱源を有効活用し、Hを製造しやすい。
(実験例)
<水分解用触媒体の作製>
上述した錯体重合法に従い、表1および表2に示される以下の酸化物を作製した。
・Pr0.3Zr0.5Nd0.2(本焼成温度850℃、本焼成時間10時間)
・Pr0.5Zr0.3Nd0.2(本焼成温度850℃、本焼成時間10時間)
・Pr0.4Zr0.4Nd0.2(本焼成温度850℃、本焼成時間10時間)
・Pr0.4Zr0.4Nd0.2(本焼成温度700℃、本焼成時間10時間)
・Pr0.5Zr0.5(本焼成温度850℃、本焼成時間10時間)
・Ce0.5Zr0.5(本焼成温度850℃、本焼成時間10時間)
・Fe(本焼成温度850℃、本焼成時間10時間)
・Co(本焼成温度850℃、本焼成時間10時間)
・V(本焼成温度850℃、本焼成時間10時間)
・MnO(本焼成温度850℃、本焼成時間10時間)
・CeVO(本焼成温度850℃、本焼成時間10時間)
・Pr0.25Ce0.05Zr0.5Nd0.2(本焼成温度850℃、本焼成時間10時間)
・Pr0.15Ce0.15Zr0.5Nd0.2(本焼成温度850℃、本焼成時間10時間)
・Ce0.50.5(本焼成温度850℃、本焼成時間10時間)
次に、上述した含浸法に従い、表1および表2に示されるように、上記酸化物に以下に示す所定の金属元素を所定量担持させた。但し、試料15、試料16、試料11Cの作製では、金属元素の担持は実施していない。
・Pd(焼成温度500℃、焼成時間5時間)
・Au(焼成温度500℃、焼成時間5時間)
・Ru(焼成温度500℃、焼成時間5時間)
・Pt(焼成温度500℃、焼成時間5時間)
・K(焼成温度500℃、焼成時間5時間)
・PtおよびCu(焼成温度500℃、焼成時間5時間)
・PtおよびAg(焼成温度500℃、焼成時間5時間)
・PtおよびV(焼成温度500℃、焼成時間5時間)
・PtおよびPr(焼成温度500℃、焼成時間5時間)
以上により、表1に示される試料1〜16、表2に示される試料1C〜13Cの水分解用触媒体を作製した。なお、得られた水分解用触媒体は、当該触媒体約2gを直径20mmのディスクに入れ、プレス成形機にて60kNmの圧力でペレット化した後、粉砕し、得られた粉砕粉末をふるいにかけることにより、粒子径を355〜500μmに整粒した。
<触媒活性試験>
各試料の水分解用触媒体を用い、触媒活性試験を行った。触媒活性試験は、固定床流通式反応器を用い、触媒体の量を1g、昇温温度10℃/分、反応温度350℃または250℃、全ガス流量を合計で200SCCM(内標準:Ar 10SCCM、バランス:He)とした。図6に触媒活性の測定に用いた装置50の模式図を示す。図6に示されるように、触媒活性試験では、先ず、外径18mm、内径15mmの石英管からなる反応管54内に、作製した所定の触媒体53を充填し、さらに、反応管54の内部において触媒体53の軸方向の両端に、ガス透過が可能なメッシュ状の電極55、56を配置した。触媒体53および電極55、56が入った反応管54を装置50にセットした。容器51内の水は、ポンプ52で反応管54内に送液し、気化させた状態で触媒体53に供給した。電極55、56には、不図示の電源が接続されており、触媒体53への電場印加が可能な構成とした。触媒体53の下流から放出されたガスは、サンプルボトル57内に回収した。
触媒活性試験は、水素生成活性試験と酸素放出活性試験とからなる。水素生成活性試験では、表1および表2に示した所定の温度に加熱された触媒体53を、10体積%のHを含むAr−Heガス(Ar5%内部標準)にて30分間、前還元処理した。次いで、40体積%のHO(水蒸気)を含むAr−Heガス(Ar5%内部標準)雰囲気下で、表1および表2に示した所定の温度に加熱された触媒体53に5mAの電流を10分間印加し、H生成量を測定した。上記試験条件におけるH生成量が0.02mmol以上であった場合を、水素生成活性を有すると判断した。
一方、酸素放出活性試験では、表1および表2に示した所定の温度に加熱された触媒体53を、10体積%のOを含むAr−Heガス(Ar5%内部標準)にて30分間、前酸化処理した。次いで、Ar−Heガスを5分間流通させた後、Ar−Heガス雰囲気下で、表1および表2に示した所定の温度に加熱された触媒体53に15mAの電流を5分間印加し、O放出量を測定した。上記試験条件におけるO放出量が0.008mmol以上であった場合を、酸素放出活性を有すると判断した。
上記電場触媒反応による生成物の分析は、四重極型質量分析計を用いて行い、各操作における電流値および電圧値は、オシロスコープを用いて記録した。表1および表2に、各試料の水分解用触媒体の詳細、各活性試験の試験条件および結果をまとめて示す。
Figure 2018038990
Figure 2018038990
表1および表2によれば、以下のことがわかる。
試料1C、試料6C〜試料13Cの触媒体は、希土類元素としてCeを含む酸化物を用いている。そのため、試料1C、試料6C〜試料13Cの触媒体は、比較的高い水素生成活性を有することがあるものの、酸素放出活性を有していないことがわかる。これは、Ceを含む酸化物は、内部の格子欠陥を埋めた酸素を放出させ難いためである。そのため、Ceを含む酸化物は、水の熱分解時の反応サイクルを回すことが難しく、水素を持続的に取り出すことが困難であるといえる。
また、試料9Cおよび試料10Cの触媒体は、Pr−Zr−Nd系酸化物にCeがドープされている。そのため、試料9Cおよび試料10Cの触媒体は、水素生成活性を向上させることができたものの、その反面、酸素生成活性がなくなった。これは、Ceの高い酸素捕捉能によるものと推測される。
また、試料2C〜5Cの触媒体は、遷移金属元素を含むが、希土類元素を含まない酸化物を用いている。そのため、水素生成活性または酸素生成活性のいずれかしか持っていないことがわかる。
これらに対し、試料1〜16の触媒体は、Ce以外の少なくとも1つの希土類元素と少なくとも1つの遷移金属元素とを含む酸化物を有している。上記酸化物は、アルミン酸系化合物のように潮解性を示さず、安定性を有している。そのため、試料1〜16の触媒体は、取扱い性が良好であり、水を分解する際にも不純物が生じ難いといえる。また、上記酸化物は、希土類元素や遷移金属元素の酸化、還元を通じて水を熱分解することができ、水素生成活性、酸素放出活性を有していることが確認された。そのため、試料1〜16の触媒体は、水の熱分解に対する触媒活性を有しているといえる。また、試料1〜16の触媒体は、加熱温度が250〜350℃程度の低温でも、水素生成活性および酸素放出活性を有していることがわかる。
また、試料1〜16の触媒体同士を比較すると次のことがわかる。試料1〜3の触媒体の結果によれば、Pr0.8−xZrNd0.2で表される酸化物を用いた場合、PrとZrとの比に関わらず、水素生成量はほぼ同じであった。そのため、水素生成活性は、酸化還元反応の中心であるPrの量に依存しないことがわかる。このことから、バルク内ではなく、触媒体の表面のみがHの生成に関係している可能性が考えられる。一方、酸素放出活性は、PrとZrとの比に依存し、PrとZrとの比が同じときであるPr0.4Zr0.4Nd0.2を用いたときに、最も高い酸素放出活性が得られた。このことから、バルク内のPrの4価から3価への還元に伴って酸素放出が起こったものと推測される。Pr−Zr−Nd系酸化物、Pr−Zr系酸化物を有する触媒体において、Prは酸化還元反応の中心として働き、ZrはPrの酸化還元反応に伴って生じる格子のひずみを緩和する役割を有すると考えられる。そのため、Pr−Zr−Nd系酸化物、Pr−Zr系酸化物において、Prに対してZrが多くなると、酸化還元反応の中心であるPrが相対的に少なくなるために、酸化還元反応の絶対量が減少することになり、一方、Zrに対してPrが多くなると、Zrが相対的に少なくなるために格子のひずみが大きくなり、Prの酸化還元反応が抑制されるものと考えられる。このことから、Pr0.8−xZrNd0.2で表される酸化物を用いる場合には、xは、0.3以上0.5以下とすることが好ましいといえる。
また、試料3〜試料9、試料16の触媒体の結果によれば、触媒金属として、Pd以外にも、Au、Ru、Pt、K、Pt+Cu、Pt+Agなどを用いても、水素生成活性および酸素放出活性が得られることがわかる。また、酸化物に触媒金属を担持させた触媒体とすることで、触媒金属を有さない触媒体に比べ、酸素放出活性を向上させやすくなり、水の分解反応の促進に有利になるといえる。なお、試料16に示されるように、触媒体が酸化物単体より構成されている場合でも、水素生成活性および酸素放出活性が得られることがわかる。また、この場合、比較的高い酸素放出活性が得られていることから、酸素放出は、酸化物によるものであるといえる。
また、試料1、試料12、試料13の触媒体の結果から、酸化物に対する触媒金属の含有量が多くなるにつれ、水素生成活性および酸素生成活性が向上することがわかる。もっとも、酸化物に対する触媒金属の含有量が多くなり過ぎると、水素生成活性が低下する傾向が見られる。この結果から、酸化物に対する触媒金属の含有量は、水素生成活性の確保を容易にする観点から、合計で、好ましくは、7質量%以下、より好ましくは、6質量%以下、さらに好ましくは、5質量%以下とするのがよいといえる。
また、試料3、試料10の触媒体の結果から、酸化物の比表面積が大きくなると、H生成量が増加するが、O放出量が減少する傾向が見られる。これは、Hの生成は、触媒体の表面に依存するのに対し、Oの放出は、バルクに依存するためであると考えられる。ここで、本焼成温度を変化させることによって酸化物の比表面積を変化させた試料(酸化物にはPr0.4Zr0.4Nd0.2を使用)を別途作製して検討した結果、酸化物の比表面積は、水素生成活性の向上の観点から、5m/g以上とするのがよいことが確認された。また、酸化物の比表面積は、酸素放出活性の確保を容易にする観点から、100m/g以下とするのが好ましかった。
本発明は、上記各実施形態、各実験例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、各実施形態、各実験例に示される各構成は、それぞれ任意に組み合わせることができる。
1 水分解用触媒体
11 酸化物
12 金属元素
2 水素製造装置
21 反応器
22 熱源
23 電場印加部
24 制御部

Claims (19)

  1. Ce以外の少なくとも1つの希土類元素と少なくとも1つの遷移金属元素とを含む酸化物を有する、水分解用触媒体。
  2. 上記酸化物は、Pr−Zr−Nd系酸化物、または、Pr−Zr系酸化物である、請求項1に記載の水分解用触媒体。
  3. 上記酸化物は、Pr(1−y)−xZrNd、但し、x:0.3〜0.5、y:0.3〜0.5、z:Pr、Zr、Ndの存在割合に応じた合計のプラスの価数と等価になるようにマイナスの価数を持つOの存在割合、で表される、請求項1または2に記載の水分解用触媒体。
  4. さらに、貴金属元素、アルカリ金属元素、および、アルカリ土類金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水分解用触媒体。
  5. 上記貴金属元素は、Pd、Pt、Ru、Ag、および、Auからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項4に記載の水分解用触媒体。
  6. 上記アルカリ金属元素は、Kを含む、請求項4または5に記載の水分解用触媒体。
  7. 上記金属元素が上記酸化物に担持されている、請求項4〜6のいずれか1項に記載の水分解用触媒体。
  8. 上記酸化物に対する上記金属元素の含有量は、合計で0.3質量%以上7質量%以下である、請求項4〜7のいずれか1項に記載の水分解用触媒体。
  9. 上記希土類元素または上記遷移金属元素は、水素生成時に部分的に酸化された状態にあり、酸素放出時に部分的に還元された状態にある、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水分解用触媒体。
  10. 上記酸化物は、酸素イオン伝導性および電子伝導性を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の水分解用触媒体。
  11. 上記酸化物の酸素イオン伝導度は、1×10−5以上1×10−2S/cm以下であり、
    上記酸化物の電子伝導度は、1×10−2以上1×10−1S/cm以下である、請求項10に記載の水分解用触媒体。
  12. 上記酸化物の比表面積は、5以上100m/g以下である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の水分解用触媒体。
  13. 加熱状態にある請求項1〜12のいずれか1項に記載の水分解用触媒体(1)に水を接触させ、水を熱分解してHを生成させるとともに、上記水分解用触媒体に酸素を捕捉させる水素生成工程と、
    上記酸素を捕捉した上記水分解用触媒体を加熱状態とし、Oを放出させる酸素放出工程と、を有する、水素製造方法。
  14. 上記水素生成工程と上記酸素放出工程とを交互に繰り返す、請求項13に記載の水素製造方法。
  15. 上記水分解用触媒体の加熱温度が500℃以下である、請求項13または14に記載の水素製造方法。
  16. 上記水素生成工程および上記酸素放出工程において、上記水分解用触媒体に電場を印加する、請求項13〜15のいずれか1項に記載の水素製造方法。
  17. 上記電場を印加する際の電流値が1mA以上20mA以下である、請求項16に記載の水素製造方法。
  18. 上記電場を印加する際の電圧値が0.1kV以上1.8kV以下である、請求項16または17に記載の水素製造方法。
  19. 反応器(21)と、
    上記反応器内に収容された請求項1〜12のいずれか1項に記載の水分解用触媒体(1)と、
    上記水分解用触媒体を加熱する熱源(22)と、
    上記水分解用触媒体へ電場を印加する電場印加部(23)と、
    上記反応器内への水の供給と水の供給停止とを切り替えるとともに、上記電場印加部により上記水分解用触媒体に印加される電場を制御する制御部(24)と、
    を有する、水素製造装置(2)。
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