以下、本発明のドットマトリクス型表示装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。但し、以下で参照する各図は、本発明のドットマトリクス型表示装置の構成部材のうち、本発明の構成を説明するために必要な主要な部材を示している。従って、本発明に係るドットマトリクス型表示装置は、各図に示されていない、配線導体、回路基板、制御IC、制御LSI等の周知の構成部材を備えていてもよい。
図1〜図11を参照して、本発明のドットマトリクス型表示装置の実施の形態について説明する。本発明のドットマトリクス型表示装置は、ガラス基板等の基板上の所定の方向(例えば、行方向)に形成された複数本のゲート信号線GL1〜GL128と、所定の方向に交差する方向(例えば、列方向)にゲート信号線GL1〜GL128と交差させて形成された複数本の画像信号線DL1〜DL128と、複数本のゲート信号線GL1〜GL128の少なくとも一本を任意に選択してオンするゲート信号線駆動回路3と、複数本の画像信号線DL1〜DL128の少なくとも一本を任意に選択してオンする画像信号線駆動回路4と、ゲート信号線GL1〜GL128と画像信号線DL1〜DL128の交差部に対応して配置されたTFT1a,1bと、TFT1a,1bに接続された、書き換え駆動と静止画駆動のいずれかを選択する駆動選択回路5と、駆動選択回路5に接続された画素電極PE11〜PEmnと、TFT1a,1bと画素電極PE11〜PEmnと駆動選択回路5を含む画素部P11〜Pmnと、を有しており、駆動選択回路5は、書き換え駆動が選択された画素電極PE11〜PEmnを、入力された画像信号によって書き換え駆動する画素電極制御回路と、書き換え駆動が非選択の画素電極PE11〜PEmnを、保持されている画像信号によって静止画駆動する保持回路と、を有しているドットマトリクス型表示装置であって、ゲート信号線駆動回路3および画像信号線駆動回路4はそれぞれ、第1のpチャネルTFTおよび第1のnチャネルTFTを有しており、駆動選択回路は、第2のpチャネルTFTおよび第2のnチャネルTFTを有しており、第2のpチャネルTFTのチャネルに含まれるn型不純物の量が、第1のpチャネルTFTのチャネルに含まれるn型不純物の量よりも多く、第2のnチャネルTFTのチャネルに含まれるp型不純物の量が、第1のnチャネルTFTのチャネルに含まれるp型不純物の量よりも多い構成である。
上記の構成により、以下の効果を奏する。静止画駆動させる画素部P11〜Pmnにおいてはゲート信号線GL1〜GL128及び画像信号線DL1〜DL128をオフ状態とし、書き換え駆動させる画素部P11〜Pmnにおいてのみ選択的にゲート信号線GL1〜GL128及び画像信号線DL1〜DL128をオン状態とするので、消費電力を極めて低く抑えることができる。また、画素部P11〜Pmnの第2のpチャネルTFTおよび第2のnチャネルTFTは、周辺回路としてのゲート信号線駆動回路3および画像信号線駆動回路4の第1のpチャネルTFTおよび第1のnチャネルTFTと比較して、オフ電流値が小さくなるので、静止画駆動される画素部P11〜Pmnにおける常時バイアス電圧(例えば3V)が印加されているオフ状態の第2のpチャネルTFTおよび第2のnチャネルTFTの消費電流がより低減される。また、周辺回路としてのゲート信号線駆動回路3および画像信号線駆動回路4においては、それらに含まれる第1のpチャネルTFTおよび第1のnチャネルTFTは、画素部P11〜Pmnの第2のpチャネルTFTおよび第2のnチャネルTFTと比較して、オン電流値が大きくなるので、広い動作電圧の範囲(広い動作マージン)、高速の動作速度等の良好な動作特性を確保することができる。
また、図2に示すように、第2のpチャネルTFTはその第1の閾値電圧(Vthp)が第1のpチャネルTFTのVthpよりも低くなり、第2のnチャネルTFTはその第2の閾値電圧(Vthn)が第1のnチャネルTFTのVthnよりも高くなるように制御されている。これにより、第2のpチャネルTFTのチャネル及び第2のnチャネルTFTのチャネルに流れる電流値を、第1のpチャネルTFTのチャネル及び第1のnチャネルTFTのチャネルに流れる電流値よりも、全動作電圧範囲内で低くすることができる。その結果、ドットマトリクス型表示装置の消費電力をより低減させることができる。なお、第1のpチャネルTFT及び第1のnチャネルTFTにおける閾値電圧(ΔVth=Vthn−Vthp)は1.5V〜2.5V程度であり、第2のpチャネルTFT及び第2のnチャネルTFTにおけるΔVthは2.5V〜3.5V程度である。
なお、Vthnは、nチャネルTFTがオン状態になるゲート電圧、すなわちチャネルに所定の大きさの電流が流れてスイッチング素子として機能するゲート電圧であり、例えばチャネルに0.5μA〜0.6μA程度の電流が流れる場合のゲート電圧である。Vthnにおけるチャネル電流値はTFTの構成によって適宜設定される。Vthpについても同様に決定される。
図2は、本発明のドットマトリクス型表示装置について実施の形態の一例を示す図であり、ドットマトリクス型表示装置の画素部P11〜Pmnに含まれる第2のpチャネルTFT素子のVgs-Ids曲線12(Vgs:ゲート−ソース間電圧、Ids:ソース−ドレイン間電流)および第2のnチャネルTFTのVgs-Ids曲線13を示すグラフである。第2のpチャネルTFTのVgs-Ids曲線12について、そのチャネルがn型不純物であるリン等を所定量(例えば、1×1016atomscm-3乃至5×1017atomscm-3)(以下、atomsは略す)含有することによって、オフリーク電流値が含有前のVgs-Ids曲線113における値の約1×10-12A(1ピコアンペア)よりも低い値の約2×10-13A(0.2ピコアンペア)になるように制御されている。なお、図2において、12aは第1のpチャネルTFTのVgs-Ids曲線112におけるオフリーク電流値に対するVgs-Ids曲線12におけるオフリーク電流値の低下量である。
また、第2のnチャネルTFTのVgs-Ids曲線13について、そのチャネルがp型不純物であるホウ素等を所定量(例えば、1×1016cm-3乃至5×1017cm-3)含有することによって、オフリーク電流値が含有前のVgs-Ids曲線113における値の約6×10-11A(60ピコアンペア)よりも低い値の約1×10-12A(1ピコアンペア)になるように制御されている。なお、図2において、13aは第1のnチャネルTFTのVgs-Ids曲線113におけるオフリーク電流値に対するVgs-Ids曲線13におけるオフリーク電流値の低下量である。また、オフリーク電流値は、TFTのゲート電極に印加するゲート電圧が0Vである場合にチャネルに流れる電流値である。
本発明のドットマトリクス型表示装置は、駆動選択回路に含まれる第2のpチャネルTFTのチャネルに含まれるn型不純物の量が、ゲート信号線駆動回路3および画像信号線駆動回路4に含まれる第1のpチャネルTFTのチャネルに含まれるn型不純物の量よりも多く、駆動選択回路に含まれる第2のnチャネルTFTのチャネルに含まれるp型不純物の量が、ゲート信号線駆動回路3および画像信号線駆動回路4に含まれる第1のnチャネルTFTのチャネルに含まれるp型不純物の量よりも多い構成である。この構成は、例えば以下の製造方法によって形成される。
まず、第1ステップにおいて、ゲート信号線駆動回路3および画像信号線駆動回路4に含まれる、第1のpチャネルTFTのチャネルおよび第1のnチャネルTFTのチャネルと、駆動選択回路に含まれる、第2のpチャネルTFTのチャネルおよび第2のnチャネルTFTのチャネルとに、p型不純物であるホウ素を、所望の広い動作電圧の範囲(広い動作マージン)、高速の動作速度等の良好な動作特性を確保することができる所定量(例えば、1×1011cm-2乃至3×1012cm-2程度)イオン注入法(イオン打ち込み法ともいう)によってイオン注入する。これにより、図2におけるVgs-Ids曲線112およびVgs-Ids曲線113で表される特性を有するTFTが得られる。
次に、第2ステップにおいて、ゲート信号線駆動回路3および画像信号線駆動回路4に含まれる、第1のpチャネルTFTのチャネルおよび第1のnチャネルTFTのチャネルを、レジスト等から成る保護マスクで覆う。その状態で、駆動選択回路に含まれる、第2のpチャネルTFTのチャネルおよび第2のnチャネルTFTのチャネルとに、p型不純物であるホウ素を、所定量(例えば、1×1011cm-2乃至3×1012cm-2程度)イオン注入する。これにより、画素部P11〜Pmnの第2のnチャネルTFTは、周辺回路としてのゲート信号線駆動回路3および画像信号線駆動回路4の第1のpチャネルTFTおよび第1のnチャネルTFTと比較して、オフ電流値が小さくなる。すなわち、図2におけるVgs-Ids曲線113で表される特性を有する第2のnチャネルTFTが得られる。
最後の第3ステップにおいて、ゲート信号線駆動回路3および画像信号線駆動回路4に含まれる、第1のpチャネルTFTのチャネルおよび第1のnチャネルTFTのチャネルと、駆動選択回路に含まれる第2のnチャネルTFTのチャネルとを、レジスト等から成る保護マスクで覆う。その状態で、駆動選択回路に含まれる第2のpチャネルTFTのチャネルに、n型不純物であるリンを、所定量(例えば、1×1011cm-2乃至1×1012cm-2程度)イオン注入する。これにより、画素部P11〜Pmnの第2のpチャネルTFTは、周辺回路としてのゲート信号線駆動回路3および画像信号線駆動回路4の第1のpチャネルTFTおよび第1のnチャネルTFTと比較して、オフ電流値が小さくなる。すなわち、図2におけるVgs-Ids曲線112で表される特性を有する第2のpチャネルTFTが得られる。
本発明のドットマトリクス型表示装置は、保持回路62は、好適には、第2のpチャネルTFTおよび第2のnチャネルTFTから構成されたスタティック型メモリを有している。この場合、スタティック型メモリは常時バイアス電圧が印加されているので、静止画駆動される画素部P11〜Pmnにおける消費電力をより効果的に低減させることができる。その結果、ドットマトリクス型表示装置の消費電力をより低減させることができる。
また本発明のドットマトリクス型表示装置は、第2のpチャネルTFTは、そのチャネルがn型不純物を1×1016cm-3〜5×1017cm-3含有し、第2のnチャネルTFTは、そのチャネルがp型不純物を1×1016cm-3〜5×1017cm-2含有していることが好ましい。この場合、画素部P11〜Pmnの第2のpチャネルTFTおよび第2のnチャネルTFTのそれぞれのオフリーク電流値を、従来の10分の1程度以下と所望の低いものとすることができる。
また本発明のドットマトリクス型表示装置は、p型不純物はホウ素であり、n型不純物はリンであることが好ましい。この場合、イオン注入法によってチャネルに注入し含有させる際に、ホウ素、リンは毒性がなく不純物として最も軽い元素であることから、イオン注入の効率が良く、取扱いの作業性もよいため、製造のし易さの点で有利である。p型不純物としては、ホウ素の他にアルミニウム(Al),ガリウム(Ga),インジウム(In)がある。n型不純物としては、リンの他に砒素(As),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi)がある。
また本発明のドットマトリクス型表示装置は、第2のpチャネルTFT及び第2のnチャネルTFTは、それぞれオフリーク電流値が10-12A以下の低温多結晶シリコン(Low-Temperature Poly Silicon :LTPS)から成るチャネルを有していることが好ましい。この場合、画素部P11〜Pmnを構成する第2のpチャネルTFT及び第2のnチャネルTFTのそれぞれのオフリーク電流値が、従来の10分の1程度以下の極めて低いものとなる。また、LTPSはキャリア移動度が100〜200cm2/Vs以上であり、アモルファスシリコンの0.5cm2/Vsよりも高いため、低い駆動電圧でもチャネルに電流を流すことができる。従って、画素部の消費電力をさらに低く抑えることができ、その結果、ドットマトリクス型表示装置の消費電力をさらに低減させることができる。
また、LTPSを用いてnチャネルTFT及びpチャネルTFTを形成できるので、CMOS回路を基礎とした駆動回路、SRAM回路、D/A変換器、画像表示部等をガラス基板上に一体的に集積化することができる。従って、音声処理回路、マイクロプロセッサを搭載したLCDをも、LTPSを用いて作製することができる。ガラス基板上に液晶表示パネルとその周辺回路としての駆動回路を一体的に形成できるので、電気的な信頼性が向上する。即ち、液晶表示パネルと周辺回路としての駆動回路との電気的接続数を大幅に低減させることができ、振動に強く、軽量化がなされるので、携帯情報端末にとって好適なものとなる。また、電流駆動能力が高いので、高精細な画素、開口率の高い画素を有するLCDを作製することができる。
LTPSの製造方法を以下に示す。まず、ガラス基板上に、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、アモルファスシリコン膜を形成する。次に、アモルファスシリコン膜を多結晶化するために、450℃以下のガラス基板の温度でアモルファスシリコン膜にエキシマレーザ光を照射する。エキシマレーザ装置としては、例えば、ガスレーザ光源にArF(波長193nm),KrF(波長248nm)等を用いた、アモルファスシリコン膜の吸収が大きい紫外光を発振するものが使用できる。レーザ発振周波数約300Hz、レーザ光エネルギー約300W、パルス幅約20ns〜約60ns、照射エネルギー密度500mJ/cm2〜1J/cm2程度のパルスレーザ光をアモルファスシリコン膜に照射し、アモルファスシリコン膜を瞬間的に溶融し過冷却状態にした後に凝固させる。その結果、平均粒径0.3μm程度の結晶粒径を有する多結晶シリコンの膜に変化する。
本発明のドットマトリクス型表示装置において、nチャネルTFT及びpチャネルTFTのソース電極はリンを1×1014cm-2〜1×1015cm-2程度、ドレイン電極はホウ素を1×1014cm-2〜1×1015cm-2程度、イオン注入されている。また、保持回路62の第2のpチャネルTFT及び第2のnチャネルTFTはCMOSインバータを構成しており、保持回路62はそのCMOSインバータを2個直列かつループ状に接続した構成である。そして、CMOSインバータを構成する第2のpチャネルTFT及び第2のnチャネルTFTにおいて、それらのソース電極及びドレイン電極はトランジスタの動作信頼性を高めるために、LDD(Lightly Doped Drain)部を有していてもよい。さらに、第2のnチャネルTFTは、逆バイアス印加時のリーク電流を低減するために、チャネルのドレイン側端部にLDD部を有していることがよい。リーク電流は、逆バイアス印加時にドレイン電極近傍の空乏層にある欠陥準位で電子と正孔が生成される速度で決まるが、この速度をLDD部を形成することによって減速させることができる。LDD部は、リンを1×1012cm-2〜1×1013cm-2程度、イオン注入することによって形成できる。イオン注入のイオンエネルギーは5keV〜400keV程度である。
イオン注入装置としては、質量分離型のものが好適に用いられる。この質量分離型のイオン注入装置は、低真空領域でのイオン注入で生じるイオン中性化及び水素イオンの混入によってドーズ量制御が困難になるという問題、水素イオン及び他の不純物イオンの混入による基板温度の上昇及びレジスト損焼の問題といった、非質量分離型のイオン注入装置の問題点を解消することができる。質量分離型のイオン注入装置の基本構成は、例えば、プラズマイオン源を内部に含むイオンチャンバーと、イオンチャンバーのイオン種出力口側に設置されたイオン種の引出し電極と、イオンチャンバーのイオン種出力口に接続された、イオン種に曲線状の軌道を描いて進行させるマグネットユニットと、マグネットユニットのイオン種出力口付近に設置された加速電極とを有する構成である。
本発明のドットマトリクス型表示装置は、1つの表示パネルにおいて、書き換え周期をそれぞれに最適なものとした表示領域を複数設けることができる。この場合、ある表示領域では書き換えと次の書き換えとの間の期間を非常に長く設定し、他の表示領域では書き換えと次の書き換えとの間の期間を短く設定することにより、消費電力の制御を高い精度で行うことができる。その結果、消費電力をより低減させることができる。
本発明のドットマトリクス型表示装置の全体構成について以下に説明する。図1は、ドットマトリクス型表示装置の基本構成のブロック回路図であり、表示パネルは16384ドット(縦128ドット×横128ドット)の画素数を有する白黒表示のLCDである。図1において、LCDパネルの一方の横側にゲート信号線駆動回路3が設けられ、LCDパネルの下側に画像信号(ソース信号)線駆動回路4が設けられている。なお、図1において、1a,1bはTFT、2は共通電圧Vcomを画素部の共通電極に供給する共通電圧線、10は表示部、11はLCDパネルである。なお、ゲート信号線駆動回路3および画像信号線駆動回路4に含まれる第1のpチャネルTFTおよび第1のnチャネルTFTは多数に及び、また駆動選択回路に含まれる第2のpチャネルTFTおよび第2のnチャネルTFTも多数に及ぶため、それらを単にpチャネルTFT、nチャネルTFTと称し、個別に符号を付して区別する。
図3は、ゲート信号線駆動回路3の詳細な構成を示す回路図である。ゲート信号線駆動回路3は、ゲート選択信号線GS1〜GS7、ゲート選択信号線GS1〜GS7のそれぞれの反転信号を生成するCMOSインバータ等から成るインバータ21からの反転出力を伝送する反転ゲート選択信号線iGS1〜iGS7(図3では符号に上付きバーの反転記号を付している)、ゲート選択信号線GS1〜GS7及び反転ゲート選択信号線iGS1〜iGS7から成る14個の信号のうち7個の信号が入力される論理和否定(NOR)の論理ゲート回路22、論理ゲート回路22の出力の電圧振幅を昇圧させて画素部のゲート信号線GLn側のTFT1bを動作させるための昇圧回路(レベルシフタ(Level/Shifter :L/S))23、昇圧回路23の出力を反転させるCMOSインバータ等から成るインバータ24、を有している。
このゲート信号線駆動回路3において、論理ゲート回路22は、それに入力される7個の信号の全てがロー(「L」で表し、例えば0Vの信号)である場合に、ハイ(「H」で表し、例えば3Vの信号)を出力する。そして、論理ゲート回路22に入力される、ゲート選択信号線GS1〜GS7及び反転ゲート選択信号線iGS1〜iGS7の配線の組合せは27=128通りあり、ゲート選択信号線GS1〜GS7に入力する7個で1組の信号によって、1つの論理ゲート回路22を選択することができる。これにより、ゲート信号線GL1〜GL128のうちの1本を任意に選択してオンすることができる。尚、ゲート選択信号線GS1〜GS7に入力する7個で1組の信号の制御は、LCDパネル11上または外部に設けられた制御LSI(Large Scale Integrated circuit)等によって行うことができる。
図4は、画像信号線駆動回路4の詳細な構成を示す回路図である。画像信号線駆動回路4は、画像選択信号線SS1〜SS7、画像選択信号線SS1〜SS7のそれぞれの反転信号を生成するCMOSインバータ等から成るインバータ31、インバータ31からの反転出力を伝送する反転画像選択信号線iSS1〜iSS7、画像選択信号線SS1〜SS7及び反転画像選択信号線iSS1〜iSS7から成る14個の信号のうち7個の信号が入力される論理和否定(NOR)の論理ゲート回路32、論理ゲート回路32の出力の電圧振幅を昇圧させて画素部の画像信号線DLn側のTFT1bを動作させるための昇圧回路(L/S)33、昇圧回路33の出力を反転させるCMOSインバータ等から成るインバータ34、を有している。さらに、画像信号(Data)を伝送させる画像信号線36、インバータ34からの出力によってオンされ、画像信号線36からの画像信号Dataを画素部P11〜Pmnに出力するトランスファゲート素子であるTFT35、を有している。
この画像信号線駆動回路4において、論理ゲート回路32は、それに入力される7個の信号の全てがL(例えば0Vの信号)である場合に、H(例えば3Vの信号)を出力する。そして、論理ゲート回路32に入力される、画像選択信号線SS1〜SS7及び反転画像選択信号線iSS1〜iSS7の配線の組合せは27=128通りあり、画像選択信号線SS1〜SS7に入力する7個で1組の信号によって、1つの論理ゲート回路32を選択することができる。これにより、画像信号起動線SL1〜SL128のうちの1本を任意に選択してオンすることができる。尚、画像選択信号線SS1〜SS7に入力する7個で1組の信号の制御は、LCDパネル11上または外部に設けられた制御LSI等によって行うことができる。
さらに、任意に選択された1本の画像信号起動線SLnが1個のTFT35をオンし、そのTFT35が1つの画像信号Dataを、画像信号線36上を伝送させて画素部P11〜Pmnに伝達させる。このような画像信号Dataの入力の制御は、上記の制御LSI等によって行うことができる。
図5(a),(b)は、ゲート信号線駆動回路3における1本のゲート信号線GL128をオンオフさせる駆動回路部の1実施の形態を示す回路図である。反転ゲート選択信号線iGS1〜iGS6(図5(a),(b)では符号に上付きバーの反転記号を付している)及びゲート選択信号線GS7のそれぞれに、pチャネルTFT41とnチャネルTFT42とから成るインバータが接続されている。これらの7個のインバータは、それぞれのゲート共通接続点は、反転ゲート選択信号線iGS1〜iGS6及びゲート選択信号線GS7の1本々に接続され、7つのドレイン共通接続点は、共通接続されている。これにより、反転ゲート選択信号線iGS1〜iGS6及びゲート選択信号線GS7の全てにLの信号が入力されたときにのみ、共通接続された7つのドレイン共通接続点からHの信号が出力される。即ち、論理和否定(NOR)の論理ゲート回路22として機能する。
NORの論理ゲート回路22の出力(Hの信号)は、インバータ43と、pチャネルTFTのドレイン電極とnチャネルTFTのドレイン電極を共通接続してそれらのpチャネルTFTおよびnチャネルTFTを直列的に接続して構成したトランスファゲート回路44と、pチャネルTFTのドレイン電極とnチャネルTFTのドレイン電極を共通接続してそれらのpチャネルTFTおよびnチャネルTFTを直列的に接続して構成したトランスファゲート回路45とから成る昇圧回路(L/S)23に入力される。一方のトランスファゲート回路44のドレイン共通接続点は、他方のトランスファゲート回路45のpチャネルTFTのゲート電極に接続されている。また、他方のトランスファゲート回路45のドレイン共通接続点は、一方のトランスファゲート回路44のpチャネルTFTのゲート電極に接続されている。
そして、一方のトランスファゲート回路44のnチャネルTFTのゲート電極にHの信号が入力されると、nチャネルTFTに電流が流れて、一方のトランスファゲート回路44のドレイン共通接続点が0Vの電位(L)となる。この0Vの電位が、インバータ24のゲート共通接続点に入力される。これにより、インバータ24のドレイン共通接続点からゲート信号線GL128にHの信号(6V)が入力される。このとき、他方のトランスファゲート回路45のpチャネルTFTのゲート電極に0Vの電位(L)が印加され、pチャネルTFTがオンとなり、pチャネルTFTのドレイン電極が6Vの電位になるが、この電位はインバータ24へは伝達されない。また、他方のトランスファゲート回路45のnチャネルTFTのゲート電極には、インバータ43のドレイン共通接続点からLの信号が入力されるため、そのnチャネルTFTはオフとなる。
図6(a),(b)は、画像信号線駆動回路4における1本の画像信号起動線SL128をオンオフさせる駆動回路部の1実施の形態を示す回路図である。反転画像選択信号線iSS1〜iSS6及び画像選択信号線SS7のそれぞれに、pチャネルTFT51とnチャネルTFT52とから成るインバータが接続されている。これらの7個のインバータは、それぞれのゲート共通接続点は、反転画像選択信号線iSS1〜iSS6及び画像選択信号線SS7の1本々に接続され、7つのドレイン共通接続点は、共通接続されている。これにより、反転画像選択信号線iSS1〜iSS6及び画像選択信号線SS7の全てにLの信号が入力されたときにのみ、共通接続された7つのドレイン共通接続点からHの信号が出力される。即ち、論理和否定(NOR)の論理ゲート回路32として機能する。
NORの論理ゲート回路32の出力(Hの信号)は、インバータ53と、pチャネルTFTのドレイン電極とnチャネルTFTのドレイン電極を共通接続してそれらのpチャネルTFTおよびnチャネルTFTを直列的に接続して構成したトランスファゲート回路54と、pチャネルTFTとnチャネルTFTをドレイン電極を共通接続して直列的に接続して構成したトランスファゲート回路55とから成る昇圧回路(L/S)33に入力される。一方のトランスファゲート回路54のドレイン共通接続点は、他方のトランスファゲート回路55のpチャネルTFTのゲート電極に接続されている。また、他方のトランスファゲート回路55のドレイン共通接続点は、一方のトランスファゲート回路54のpチャネルTFTのゲート電極に接続されている。
そして、一方のトランスファゲート回路54のnチャネルTFTのゲート電極にHの信号が入力されると、nチャネルTFTに電流が流れて、一方のトランスファゲート回路54のドレイン共通接続点が0Vの電位(L)となる。この0Vの電位が、インバータ34のゲート共通接続点に入力される。これにより、インバータ34のドレイン共通接続点から画像信号起動線SL128にHの信号(6V)が入力される。このとき、他方のトランスファゲート回路55のpチャネルTFTのゲート電極に0Vの電位(L)が印加され、pチャネルTFTがオンとなり、pチャネルTFTのドレイン電極が6Vの電位になるが、この電位はインバータ34へは伝達されない。また、他方のトランスファゲート回路55のnチャネルTFTのゲート電極には、インバータ53のドレイン共通接続点からLの信号が入力されるため、そのnチャネルTFTはオフとなる。
さらに、画像信号起動線SL128には、画像信号起動線SL128を伝送する信号をゲート電極への制御入力とするnチャネルTFT35が接続されており、そのnチャネルTFT35のソース電極には画像信号線36が接続されている。これにより、画像信号起動線SL128を伝送する信号がHのときにnチャネルTFT35がオンとなり、画像信号線DL128によって画像信号Dataが画素部に伝達される。
図7及び図8は、保持回路62と画素電極制御回路63を有する駆動選択回路64(図1の符号5に相当する部位)を含む画素部P11〜Pmnの1実施の形態を示す回路図である。図7はブロック回路図、図8は各ブロック回路を構成するTFT群を措いた詳細な回路図である。駆動選択回路64は、静止画駆動と書き換え駆動のいずれかを選択する回路であり、保持回路62、画素電極制御回路63を有している。
図7及び図8に示すように、駆動選択回路64の前段の入力部61には、2つのnチャネルTFT61a,61b(図1の符号1a,1bに相当する部位)を直列的に接続させて成るトランスファゲート回路が設けられている。画像信号線DLn側のnチャネルTFT61aは、そのゲート電極に画像信号起動線SLnを伝送されてきた信号が制御入力される。その信号がHの場合にnチャネルTFT61aはオンとなり、Lの場合にnチャネルTFT61aはオフとなる。もう一つのゲート信号線GLn側のnチャネルTFT61bは、そのゲート電極にゲート信号線GLnを伝送されてきた信号が制御入力される。その信号がHの場合にnチャネルTFT61bはオンとなり、Lの場合にnチャネルTFT61bはオフとなる。従って、ゲート信号線GLnを伝送されてきた信号がHであり、かつ画像信号起動線SLnを伝送されてきた信号がHである場合にのみ、トランスファゲート回路は等価回路的に閉(クローズ)状態となり、画像信号線37を伝送されてきた信号が保持回路62へ伝送される。
本発明のドットマトリクス型表示装置において、画素部P11〜Pmnは、駆動選択回路64の前段に、画像信号起動線SLnにゲート電極が電気的に接続されているnチャネルTFT61aと、ゲート信号線GLnにゲート電極が電気的に接続されているnチャネルTFT61bとを直列的に接続して成る入力部61を有しており、nチャネルTFT61a,61bは、それぞれオフリーク電流値が10-12A以下の低温多結晶シリコンから成るチャネルを有していることが好ましい。この場合、nチャネルTFT61a,61bのオフリーク電流値が、従来の10分の1程度以下の極めて低いものとなる。また、低温多結晶シリコンはキャリア移動度が100〜200cm2/Vs以上であり、アモルファスシリコンの0.5cm2/Vsよりも高いため、低い駆動電圧でもチャネルに電流を流すことができる。従って、画素部の入力部の消費電力を低く抑えることができ、その結果、ドットマトリクス型表示装置の消費電力をさらに低減させることができる。
保持回路62は、例えば、CMOSインバータ等から成るインバータの2つをループ状に接続して成るスタティック型メモリ(SRAM)などから構成される。図8は、そのスタティック型メモリの構成を示している。保持回路62は、2つの第1、第2のインバータ62a,62bを直列に接続し、第2(後段側)のインバータ62bのドレイン共通接続点からの出力を、第1(前段側)のインバータ62aのゲート共通接続点に帰還入力させている。これにより、第1のインバータ62aのゲート共通接続点にHの信号が入力されると、次に第1のインバータ62aのドレイン共通接続点からLの信号が出力され、次にそのLの信号が第2のインバータ62bのゲート共通接続点に入力され、次に第2のインバータ62bのドレイン共通接続点からHの信号が出力され、次にそのHの信号が第1のインバータ62aのゲート共通接続点に帰還入力される。その結果、常時H,L,Hの信号がループ状の伝送線上において保持される。即ち、保持回路62は記憶回路として機能する。
図9は、画素電極制御回路63を構成するTFT群の接続関係を描いた回路図である。画素電極制御回路63は、保持回路62の第1のインバータ62aを共用しており、画像信号Bの反転信号iB(図では符号に上付きバーの反転記号を付している)を出力する第1のインバータ62aと、pチャネルTFT81aとnチャネルTFT81bとから成り、共通電圧Vcom(A)と画像信号data(B)と第1のインバータ62aの出力(iB)が参照入力されることによって2値データを出力する第1の2値選択回路81と、pチャネルTFT82aとnチャネルTFT82bとから成り、共通電圧Vcom(A)と画像信号data(B)と第1のインバータ62aの出力(iB)が参照入力されることによって2値データを出力する、出力線が第1の2値選択回路81の出力線に並列的に接続されている第2の2値選択回路82と、を有している。そして、第1の2値選択回路81の出力及び第2の2値選択回路82の出力が、共通電圧Vcom(A)と画像信号data(B)について排他的論理和(Exclusive OR :EXOR)の論理ゲート出力を構成している。
第1の2値選択回路81は、pチャネルTFT81aとnチャネルTFT81bを、ゲート電極を共通接続するとともにドレイン電極を共通接続したインバータであり、画像信号data(B)がH(1)の信号である場合にのみ、2値データ(Y)を出力する。逆に、画像信号data(B)がL(0)の信号である場合、第1の2値選択回路81はインバータとして機能せず、ハイインピーダンスの状態、即ち等価回路的に開(オープン)状態となり、2値データ(Y)を出力しない。
第2の2値選択回路82は、pチャネルTFT82aとnチャネルTFT82bを、ソース電極同士及びドレイン電極同士を接続した4端子型のトランスファゲート回路であり、nチャネルTFT82bのゲート電極に入力される第1のインバータ62aの出力(iB(図では符号に上付きバーの反転記号を付している))を制御入力としている。そして、第1のインバータ62aの出力(iB)がHの信号(1)である場合、即ち画像信号data(B)がLの信号(0)である場合にのみ、2値データ(Y)を出力する。逆に、第1のインバータ62aの出力(iB)がLの信号(0)である場合、第2の2値選択回路82はトランスファゲート回路として機能せず、ハイインピーダンスの状態、即ち等価回路的に開(オープン)状態となり、2値データ(Y)を出力しない。
このように、第2の2値選択回路82の出力線が第1の2値選択回路81の出力線に並列的に接続されているので、第1の2値選択回路81の出力及び第2の2値選択回路82の出力が、共通電圧Vcom(A)と画像信号data(B)について排他的論理和の論理ゲート出力を構成することになる。即ち、画素電極制御回路63は、共通電圧Vcom(A)と画像信号data(B)について排他的論理和の論理ゲート回路となっている。
本発明のドットマトリクス型表示装置は、画素電極制御回路63は、図9に示すように、オフリーク電流値が10-12A以下のLTPSから成るチャネルを有する複数のTFTから構成された排他的論理和の論理ゲート回路であることが好ましい。この場合、TFTのオフリーク電流値が、従来の10分の1程度以下の極めて低いものとなる。また、LTPSはキャリア移動度が100〜200cm2/Vs以上であり、アモルファスシリコンの0.5cm2/Vsよりも高いため、低い駆動電圧でもチャネルに電流を流すことができる。従って、画素電極制御回路63の消費電力を低く抑えることができ、その結果、ドットマトリクス型表示装置の消費電力をさらに低減させることができる。
図10は、共通電圧Vcom(A)と画像信号data(B)を2値入力とする、排他的論理和の論理ゲート回路の出力(Y)を記載した真理値表である。画像信号data(B)が画素部に入力された場合、即ち画像信号data(B)がH(3V:「1」)の信号である場合に、画素電圧Pixelと共通電圧Vcom(A)との間に電位差が生じて、ノーマリホワイトモードであれば黒表示、ノーマリブラックモードであれば白表示となる。このように共通電圧Vcom(A)を反転駆動させても、画素電圧Pixelと共通電圧Vcom(A)との間の電位差は保持されるので、画素部P11〜Pmnにおける表示を保持した状態で、液晶の劣化を防ぐための、液晶に対する交流駆動が実現する。一方、画像信号data(B)が画素部P11〜Pmnに入力されない場合、即ち画像信号data(B)がL(0V:「0」)の信号である場合に、画素電圧Pixelと共通電圧Vcom(A)との間には電位差が生じず、ノーマリホワイトモードであれば白表示、ノーマリブラックモードであれば黒表示となる。このように共通電圧Vcom(A)を反転駆動させても、画素電圧Pixelと共通電圧Vcom(A)との間の電位差がない状態が保持されるので、画素部P11〜Pmnにおける表示を保持した状態で、液晶の劣化を防ぐための、液晶に対する交流駆動が実現する。
また、画素部P11〜Pmnにおける表示を書き換える場合、図7に示す駆動選択回路64の前段の入力部61における、2つのnチャネルTFT61a,61bを直列的に接続させて成るトランスファゲート回路をオンにする。即ち、ゲート信号線GLnを伝送されてきた信号をHとし、画像信号起動線SLnを伝送されてきた信号をHとする。この状態で、画像信号線37を伝送されてきた信号(data)を保持回路62へ伝送させる。例えば、信号(data)がHである場合、保持回路62はHの信号(data)を保持する。そして、図10におけるdata(B)がHの場合に相当する表示が画素部P11〜Pmnで実行される。即ち、画素部P11〜Pmnの表示は、ノーマリホワイトモードであれば黒表示、ノーマリブラックモードであれば白表示となる。一方、信号(data)がLである場合、保持回路62はLの信号(data)を保持する。そして、図10におけるdata(B)がLの場合に相当する表示が画素部P11〜Pmnで実行される。即ち、画素部P11〜Pmnの表示は、ノーマリホワイトモードであれば白表示、ノーマリブラックモードであれば黒表示となるように、書き換えられる。
上述した構成により、本発明のドットマトリクス型表示装置は、表示領域における書き換え駆動を1画素(ドット)毎に行うことができ、それ以外の全ての画素部P11〜Pmnを静止画駆動させることができるので、消費電力を極めて低いものとすることができる。例えば、従来の腕時計用の白黒表示のLCDにおいて、静止画駆動及び書き換え駆動を全画面走査して行う場合に100μW程度の消費電力であったものが、本発明のドットマトリクス型表示装置においては10μW程度以下、さらには3μW程度以下にまで抑えることができる。これにより、複雑な表示構成のLCDであっても、例えば、1回の電池交換で駆動可能な期間を10倍以上に伸ばすことが可能となる。さらに本発明のドットマトリクス型表示装置は、保持回路62を構成するnチャネルTFTは、そのチャネルのオフリーク電流値が低くなるように制御されており、保持回路62を構成するpチャネルTFTは、そのチャネルのオフリーク電流値が低くなるように制御されていることから、消費電力を0.3μW程度以下に低減させることができる。
さらに、本発明のドットマトリクス型表示装置は、好ましくは、書き換え駆動が適用される表示領域を、その書き換え周期を相違させて複数設け、相違する書き換え周期の比を10倍以上とする。この構成により、ある表示領域では書き換えと次の書き換えとの間の期間を非常に長く設定し、他の表示領域では書き換えと次の書き換えとの間の期間を短く設定することにより、消費電力の制御をきめ細かく高い精度で行うことができる。その結果、消費電力をより低減させることができる。さらに、相違する書き換え周期の比を10倍以上とすることにより、消費電力をより低減させる効果が高まる。
図11は、本発明のドットマトリクス型表示装置を適用したデジタル表示式腕時計の表示パネルを示すものであり、図11に示すように、例えば、表示パネルにおいて、時間を表示させる表示領域91と、分を表示させる表示領域92と、秒を表示させる表示領域93とで、書き換え周期を大きく相違させることができる。秒を表示させる表示領域93では、1秒毎に書き換え駆動するのに対して、分を表示させる表示領域92では、1分毎に書き換え駆動し、時間を表示させる表示領域91では、1時間毎に書き換え駆動すればよい。従って、表示領域91〜93以外の表示領域は静止画の表示領域94である。好適な実施形態として、分を表示させる表示領域92と秒を表示させる表示領域93の書き換え駆動の周期の比は60倍となる。換言すれば、1/60になるともいえる。また、時間を表示させる表示領域91では、1時間毎に書き換え駆動すればよいので、秒を表示させる表示領域93と時間を表示させる表示領域91との書き換え駆動の周期の比は3600倍となる。換言すれば、1/3600になるともいえる。また、表示領域91〜93において、書き換え駆動を1画素(ドット)毎に行うことができるが、複数の画素部毎に書き換え駆動してもよい。また、表示領域91〜93において、全ての画素部P11〜Pmnを書き換えてもよいし、書き換えに必要な画素部のみを書き換えてもよい。例えば、1つの表示領域において、「5」の表示を「6」に書き換える場合、書き換え不要な画素部と書き換え必要な画素部を区別することができるので、書き換えが必要な画素部のみを書き換えることができる。
また、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等からのメール着信の電波信号を腕時計で受信した際に、その腕時計のLCD等から成る表示パネルに、メール受信の表示を上述した画素選択駆動方式の書き換え駆動によって行わせることができる。このような複雑な表示機能を極めて低い消費電力でもって行うことができる。例えば、気温、湿度、高度、方位、照度、気圧、水深、水圧、天気予報、外国との時差、歩数計、潮汐時間、日の出・日没の時間、血圧、脈拍、メールの内容、ニュース速報、緊急地震速報等の告知などの表示を、それらの最適な書き換え周期または任意のタイミングでもって表示することができる。また、それらの書き換え周期または表示のタイミングを、外部から人が入力、変更等して制御することもできる。書き換え周期の変更、制御または表示のタイミングの制御は、ドットマトリクス型表示装置の周辺に設けられた制御LSI等によって行うことができる。
本発明のドットマトリクス型表示装置において、表示領域の書き換え周期に対応する書き換え期間は、書き換えを実行する動作期間及びそれ以外の書き換え休止期間を含んでおり、書き換え休止期間が動作期間よりも長いことが好ましい。この構成により、書き換えによる表示の切り換え動作が素早くなり、表示の切り換えプロセスが視認されなくなるので、表示の切り換えが見やすくなる。例えば、時計の秒の表示を書き換える場合、書き換え期間を1秒とし、書き換えを実行する動作期間を0.1〜0.3秒(10%〜30%)程度とし、それ以外の0.7〜0.9秒程度の期間を書き換え休止期間とすれば良い。
また、時計の秒を表示する表示領域のように書き換え周期が短い表示領域の画素部数を、時計の分、時間を表示する表示領域のように書き換え周期が長い表示領域の画素部数よりも少なくすることが好ましい。これにより、消費電力をさらに低減させることができる。例えば、好ましくは、書き換え周期が短い表示領域の画素部数を、書き換え周期が長い表示領域の画素部数の30%以下、より好ましくは、10%以下とすることが良い。
上述したように、好適な実施形態として、画素電極制御回路63は保持回路62の第1のインバータ62aを共用しているため、TFTの数が低減されており、その結果、消費電力の低減効果が高まるとともに、画素部P11〜Pmnの開口率が高くなる。
また、本発明のドットマトリクス型表示装置は、画素電極PE11〜PEmnを反射型電極とした反射型LCDであることが好ましい。この場合、保持回路62等を画素電極の下方に配置することができ、保持回路62等による光反射率の低下をなくすことができる。一方、透過型LCDにおいて、透明な画素電極PE11〜PEmnと保持回路62とを重ねて配置すると、透過光によって保持回路62等を構成するTFTが誤作動する可能性がある。そのため、TFTのゲート電極を遮光膜で覆う必要があり、開口率が低下し易い。また、反射型LCDは、バックライトを設ける必要がないため、消費電力の低減に有効である。また、本発明のドットマトリクス型表示装置は、画素電極PE11〜PEmnの領域に上記の反射型電極を有する反射領域と透過型電極を有する透過領域を備えた、半透過型液晶表示装置であってもよい。
また、保持回路62によって保持されるビット数を1以上とすることが好ましい。このビット数を複数として多ビット化した場合、静止画表示の際に階調表示を行うことができる。また、アナログ信号を記憶する保持回路62とすれば、静止画表示の際にフルカラー表示を行うこともできる。
また、画素電極制御回路63は、図10の真理値表に示すように、共通電圧VcomのH/Lのいずれの信号に対しても静止画駆動と書き換え駆動を行うものとされている。即ち、共通電圧Vcom(A)がH(3V)で画像信号data(B)がH(3V)である場合、共通電圧Vcom(A)と画素電圧Pixel(L:0V)との間に電位差が形成され、共通電圧Vcom(A)がL(0V)で画像信号data(B)がH(3V)である場合にも同様に共通電圧Vcom(A)と画素電圧Pixel(H:3V)との間に電位差が形成されて、液晶が交流駆動されている。これにより、例えば、秒表示の書き換え周期に合わせて1秒毎に共通電圧Vcom(A)のH/Lを反転させることができ、液晶分子の劣化を抑えることができる。即ち、液晶分子に直流電圧成分が長時間印加されることによって、液晶分子が画素電極表面で正負の電荷の偏り(微量不純物の固定化)を起こして寿命が短くなることを抑えることができる。
このように、共通電圧VcomのH/Lの反転を、書き換え周期に連動させて定期的に反転させることが好ましい。この場合、共通電圧VcomのH/Lの反転を、書き換え周期に連動させない場合と比較して、共通電圧Vcomを個別に制御するための制御回路等を付加する必要がなく、消費電力のさらなる低下に有効である。また、共通電圧VcomのH/Lの反転駆動は、液晶分子の劣化を抑制するための反転駆動と、EXORの論理ゲート回路を構成する画素電極制御回路63の制御入力としての画素電圧制御信号との、2つの役割を果たしており、これによっても消費電力のさらなる低下に寄与している。
また、本発明のドットマトリクス型表示装置において、静止画駆動が適用される表示領域において、各画素部P11〜Pmnに供給される共通電圧のハイ/ローを定期的に反転させることが好ましい。これにより、書き換え駆動が適用される表示領域は勿論のこと静止画駆動が適用される領域においても液晶分子の劣化が抑制される。
また、共通電圧Vcomの反転の定期的な周期は、制御LSI等によって、1秒毎、数十秒毎、分単位、時間単位で適宜設定することもできる。さらに、共通電圧Vcomの反転の周期をn秒毎(nは自然数)にしてもよく、その場合、秒表示の書き換え周期を共通電圧Vcomの反転の制御のベースに用いることができ、共通電圧Vcomの反転の制御が容易になる。
本発明のドットマトリクス型表示装置において、画素電極制御回路63と画素電極PE11〜PEmnとの間に1〜3pF程度の補助容量を並列的に接続してもよい。これにより、書き換え駆動する際に、画素電圧が次第に低下して1フィールド期間保持されにくくなるのを抑え、画素電圧を1フィールド期間保持することができる。
また、画素電極PE11〜PEmnは、透光性を有する場合、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化珪素を添加したインジウム錫酸化物(ITSO)、酸化亜鉛(ZnO)、リンやボロンが含まれるシリコン(Si)等の透光性を有する導電性材料を用いて形成することができる。
画素部P11〜Pmnに配置する表示素子としては、LCD素子、有機EL(Electro Luminescence)素子、無機EL素子、FED(Field Emitting Display)素子、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)素子、GLV(Grating Light Valve)素子、PDP(Plasma Display)素子、電子ペーパーディスプレイ素子、DMD(Digital micro Mirror Device)素子、圧電セラミックディスプレイ素子などの表示素子を用いることができる。また、本発明のドットマトリクス型表示装置は、インプレーンスイッチング(In-plane Switching :IPS)方式、フリンジフィールドスイッチング(Fringe Field Switching :FFS)方式のものであることが好ましい。この場合、画素電極PE11〜PEmnが形成されているアレイ側基板(TFTが形成された基板)の主面に、共通電極を画素部P11〜Pmn毎に形成することによって、共通電圧の制御を画素部P11〜Pmn毎に独立して行うことが可能となる。