JP2018028129A - 熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板 - Google Patents
熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2018028129A JP2018028129A JP2016160102A JP2016160102A JP2018028129A JP 2018028129 A JP2018028129 A JP 2018028129A JP 2016160102 A JP2016160102 A JP 2016160102A JP 2016160102 A JP2016160102 A JP 2016160102A JP 2018028129 A JP2018028129 A JP 2018028129A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- layer
- core material
- aluminum alloy
- less
- intermediate layer
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Classifications
-
- B—PERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
- B32—LAYERED PRODUCTS
- B32B—LAYERED PRODUCTS, i.e. PRODUCTS BUILT-UP OF STRATA OF FLAT OR NON-FLAT, e.g. CELLULAR OR HONEYCOMB, FORM
- B32B15/00—Layered products comprising a layer of metal
- B32B15/20—Layered products comprising a layer of metal comprising aluminium or copper
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C22—METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
- C22C—ALLOYS
- C22C21/00—Alloys based on aluminium
-
- F—MECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
- F28—HEAT EXCHANGE IN GENERAL
- F28F—DETAILS OF HEAT-EXCHANGE AND HEAT-TRANSFER APPARATUS, OF GENERAL APPLICATION
- F28F19/00—Preventing the formation of deposits or corrosion, e.g. by using filters or scrapers
- F28F19/02—Preventing the formation of deposits or corrosion, e.g. by using filters or scrapers by using coatings, e.g. vitreous or enamel coatings
- F28F19/06—Preventing the formation of deposits or corrosion, e.g. by using filters or scrapers by using coatings, e.g. vitreous or enamel coatings of metal
-
- F—MECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
- F28—HEAT EXCHANGE IN GENERAL
- F28F—DETAILS OF HEAT-EXCHANGE AND HEAT-TRANSFER APPARATUS, OF GENERAL APPLICATION
- F28F21/00—Constructions of heat-exchange apparatus characterised by the selection of particular materials
- F28F21/08—Constructions of heat-exchange apparatus characterised by the selection of particular materials of metal
Landscapes
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Mechanical Engineering (AREA)
- Physics & Mathematics (AREA)
- Thermal Sciences (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Materials Engineering (AREA)
- Metallurgy (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Laminated Bodies (AREA)
Abstract
【課題】耐食性に優れた熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板を提供すること。【解決手段】熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板1は、アルミニウム合金により構成された心材2、中間層3及び犠材層4を備え、心材2の第1主面21に中間層3を介して犠材層4が被覆されている。心材2は、Mn:0.4%(質量%、以下同様)以上2.0%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金により構成されている。中間層3は、Mn:0.2%以上1.8%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、かつ、Mn含有量が心材2よりも0.2%以上少ないアルミニウム合金により構成されている。犠材層4は、Zn含有量が0.1%以下である、純度99.0%以上の純アルミニウムにより構成されている。【選択図】図1
Description
本発明は、熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板に関する。
例えば、自動車用の熱交換器において、冷却水等の媒体の流路を構成するチューブ材には、アルミニウム合金製クラッド板が用いられている。アルミニウム合金製クラッド板としては、例えば、Al−Mn系合金等により構成された心材の一方の面に、Al−Si系合金等により構成されたろう材層又はAl−Zn系合金等により構成された犠牲陽極材層(以下、犠材層という)が被覆(クラッド)された2層構造のクラッド板、心材の一方の面にろう材層が、他方の面に犠材層が被覆された3層構造のクラッド板等がある。
近年、熱交換器の信頼性、耐久性等の向上のため、耐食性に優れたアルミニウム合金製クラッド板が求められている。また、熱交換器の軽量化、小型化等のため、アルミニウム合金製クラッド板の薄肉化が求められており、それに伴ってアルミニウム合金製クラッド板のさらなる耐食性の向上が求められている。
従来のZnによる犠牲防食では、犠材層にZnを添加し、犠材層の電位を心材の電位よりも卑にすることで防食効果を得ている。しかしながら、Znを添加した犠材層は腐食速度が速いため、アルミニウム合金製クラッド板を薄肉化した場合に早期に犠材層が消費されてしまい、十分な耐食性が得られない。また、近年の世界的なZn需要の高まりにより、将来的にZn資源の枯渇、価格急騰等が生じる懸念があり、Znをできるだけ用いない防食手法の確立が求められている。
このようなことから、例えば、特許文献1には、犠材層を純アルミニウム又は高純度のMg含有アルミニウム合金とし、心材をMg含有アルミニウム合金とし、ろう付け加熱時に心材中のMgを犠材層中に拡散させ、犠材層の表面に均一なMgO酸化皮膜を形成するアルミニウム合金製クラッド板が提案されている。また、特許文献2には、心材の一方の面に中間層を介して犠材層が被覆され、心材、中間層、犠材層の順に電位が碑となるように(より電位が卑な材料が表面側となるように)構成されたアルミニウム合金製クラッド板が提案されている。
しかしながら、上記特許文献1のアルミニウム合金製クラッド板では、Znを用いない点では優れているが、Mgのみでは犠牲防食性能が十分ではない上、板厚が薄くなった場合にMgが拡散し、耐食性の低下を招いてしまう。また、上記特許文献2のアルミニウム合金製クラッド板のように、単に電位が異なる中間層を設けただけでは、中間層を設けずに犠材層の厚さを厚くした場合と本質的に変わらず、耐食性の大きな向上は望めない。さらに、ろう付け加熱後に犠材層の合金成分が板厚方向に拡散し、板厚方向に対する犠牲防食能力が低下するという問題も解決できない。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、耐食性に優れた熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板を提供する。
本発明の一の態様である熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板は、アルミニウム合金により構成された心材、中間層及び犠材層を備え、心材の少なくとも一方の面に中間層を介して犠材層が被覆されている。心材は、Mn:0.4%(質量%、以下同様)以上2.0%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金により構成されている。中間層は、Mn:0.2%以上1.8%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、かつ、Mn含有量が心材よりも0.2%以上少ないアルミニウム合金により構成されている。犠材層は、Zn含有量が0.1%以下である、純度99.0%以上の純アルミニウムにより構成されている。
上記熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板は、心材と犠材層との間に、上記特定の中間層を設けている。そのため、純アルミニウムにより構成された犠材層を備えたアルミニウム合金製クラッド板において、耐食性を飛躍的に向上させることができる。これにより、薄肉化した場合であっても、様々な過酷な環境に対して良好な耐食性を発揮することができる。
上記熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板において、心材は、さらに、Mg:0.05%以上2.0%以下、Si:0.05%以上1.5%以下、Cu:0.05%以上3.0%以下、Fe:0.1%以上1.0%以下、Ni:0.05%以上0.3%以下、Cr:0.05%以上0.3%以下、Zr:0.05%以上0.3%以下、Ti:0.05%以上0.3%以下、V:0.05%以上0.3%以上から選択される1種以上を含有していてもよい。
また、中間層は、さらに、Mg:0.05%以上2.0%以下、Si:0.05%以上1.5%以下、Fe:0.1%以上1.0%以下、Ni:0.05%以上0.3%以下、Cr:0.05%以上0.3%以下、Zr:0.05%以上0.3%以下、Ti:0.05%以上0.3%以下、V:0.05%以上0.3%以下から選択される1種以上を含有し、またさらに、Cu:0.05%以上2.8%以下を含有し、Cu含有量が心材よりも0.2%以上少ない、又は、Cuを不可避的不純物としてのみ含有していてもよい。
また、心材の一方の面に中間層を介して犠材層が被覆され、心材の他方の面にろう材層が被覆されていてもよい。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
<アルミニウム合金製クラッド板の構成>
図1に示すように、アルミニウム合金製クラッド板1は、アルミニウム合金により構成された心材2、中間層3及び犠材層4を備えている。心材2は、板状に形成されている。心材2は、厚さ方向の一方側の主面である第1主面21と、厚さ方向の他方側の主面である第2主面22と、を有する。
図1に示すように、アルミニウム合金製クラッド板1は、アルミニウム合金により構成された心材2、中間層3及び犠材層4を備えている。心材2は、板状に形成されている。心材2は、厚さ方向の一方側の主面である第1主面21と、厚さ方向の他方側の主面である第2主面22と、を有する。
心材2の第1主面21には、中間層3が被覆(クラッド)されている。中間層3の表面には、犠材層4が被覆されている。また、心材2の第2主面22には、ろう材層5が被覆されている。すなわち、アルミニウム合金製クラッド板1は、心材2の第1主面21に中間層3を介して犠材層4が被覆され、心材2の第2主面22にろう材層5が被覆されている。
<アルミニウム合金製クラッド板のアルミニウム合金組成>
アルミニウム合金製クラッド板(以下、適宜、単にクラッド板という)において、心材は、Mn:0.4%以上2.0%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金により構成されている。中間層は、Mn:0.2%以上1.8%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、かつ、Mn含有量が心材よりも0.2%以上少ないアルミニウム合金により構成されている。犠材層は、Zn含有量が0.1%以下である、純度99.0%以上の純アルミニウムにより構成されている。
アルミニウム合金製クラッド板(以下、適宜、単にクラッド板という)において、心材は、Mn:0.4%以上2.0%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金により構成されている。中間層は、Mn:0.2%以上1.8%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、かつ、Mn含有量が心材よりも0.2%以上少ないアルミニウム合金により構成されている。犠材層は、Zn含有量が0.1%以下である、純度99.0%以上の純アルミニウムにより構成されている。
すなわち、クラッド板において、心材及び中間層を構成するアルミニウム合金は、Mnを含有している。具体的には、心材を構成するアルミニウム合金は、Mn:0.4%以上2.0%以下を含有している。中間層を構成するアルミニウム合金は、Mn:0.2%以上1.8%以下を含有し、Mn含有量が心材よりも0.2%以上少ない。
次に、心材及び中間層を構成するアルミニウム合金に含有されるMnの役割について説明する。
Mnは金属の電位に寄与するため、犠牲防食性に大きな影響を与える。Mnが多く含まれる層では電位がより貴になるため、Mn含有量が犠材層よりも中間層のほうが多くなるように、また中間層よりも心材のほうが多くなるようにする。これによって、相対的にMn含有量の少ない層が、Mn含有量の多い層を犠牲防食するようになる。このような犠牲防食効果を得るには、各層間のMn含有量の差を少なくとも0.2%以上とする必要があり、好ましくは0.4%以上、さらに好ましくは0.5%以上とする。なお、不可避的不純物程度のMnを含有していても電位に影響を与えない。
Mnは金属の電位に寄与するため、犠牲防食性に大きな影響を与える。Mnが多く含まれる層では電位がより貴になるため、Mn含有量が犠材層よりも中間層のほうが多くなるように、また中間層よりも心材のほうが多くなるようにする。これによって、相対的にMn含有量の少ない層が、Mn含有量の多い層を犠牲防食するようになる。このような犠牲防食効果を得るには、各層間のMn含有量の差を少なくとも0.2%以上とする必要があり、好ましくは0.4%以上、さらに好ましくは0.5%以上とする。なお、不可避的不純物程度のMnを含有していても電位に影響を与えない。
したがって、各層間のMn含有量の差を0.2%以上とするためには、心材は最低0.4%のMnを含む必要があり、同様に中間層は最低0.2%のMnを含む必要がある。しかしながら、各層のMn含有量が2.0%を超えると製造性が低下するおそれがあるため、最もMn含有量が多くなる心材のMn含有量の上限は2.0%とした。同様に、心材のMn含有量が2.0%を超えないように、かつ、心材と中間層との間で0.2%のMn含有量の差を確保するため、中間層のMn含有量の上限は1.8%とした。
各層間の電位差をいくつに設定すればよいかは個々の設計事項であり、使用環境、各層の構成、各層を構成する材料の組成等によって異なるが、例えば、目安として20〜200mVとすることが好ましく、30〜170mVとすることがより好ましい。各層間の電位差が20mV未満の場合には、犠牲防食性を十分に確保することができないおそれがある。一方、各層間の電位差が200mVを超える場合には、相対的に電位が卑である層の腐食速度が急激に速くなるおそれがある。
さらに、Mnの拡散係数は非常に小さく、アルミニウム合金に添加される他の元素(例えばZn、Cu、Si、Mg等)に比べて数百分の一である。したがって、例えば、中間層及び犠材層を被覆(クラッド)した後の熱処理、ろう付け加熱等の工程において、Mnは実質的に拡散しないと考えてよい。そのため、製造工程の熱履歴によらず、例えクラッド板の厚さ(以下、適宜、単に板厚という)が薄くなったとしても、各層間のMn含有量の差が維持される。言い換えれば、各層間の電位差が維持される。よって、犠材層で生じた腐食の進行が中間層に到達した段階で犠材層と中間層との電位差によって抑制され、腐食の板厚方向への進行が十分に抑制される。
一方、従来の犠牲防食に用いられるZnは、板厚が薄くなると、クラッド板全体に拡散してクラッド板内部に電位差が生じなくなり、犠牲防食が作用しなくなってしまう。板厚がある程度厚い場合でも、ろう付け加熱等によって隣接する層へなだらかなZn濃度(Zn含有量)の勾配が生じ、それに伴って電位差もなだらかに変化するようになる。そのため、犠材層とそれ以外の部分の境界が不明瞭となり、言い換えれば、犠材層の厚さが実質的に厚くなった状態となる。よって、各層間で腐食の進行を抑制する作用は働かないため、犠材層に生じた腐食の進行は、中間層又は心材の一部に食い込むまで抑制されない。したがって、腐食の進行が犠牲防食の作用によって抑制されるまでに、腐食が相当の深さにまで到達することになり(このときの腐食深さを「初期腐食深さ」という)、様々な弊害を引き起こしてしまう。
初期腐食深さが深いことによる弊害は、まず、材料の強度低下である。腐食が板厚方向に進むと、当然その分強度が低下する。また、腐食箇所に応力集中が生じやすくなるため、内部又は外部からの圧力等に対して非常に脆弱となってしまう。さらに、腐食メカニズムの観点からも、初期腐食深さが深いことは望ましくない。アルミニウムの腐食形態は、強酸性、強アルカリ性等の環境を除き、孔食となることが知られているが、孔食には自己触媒性があることが知られている。孔食は一度成長し始めると、内部は孔食誘起性イオン(塩化物イオン等)が孔食外部から濃化し、さらに強酸性化することが知られている。すなわち、孔食が成長するほど孔食内部はより強腐食環境化していき、さらに孔食成長が早くなるという悪循環を招くことになる。これが孔食の自己触媒性である。そのため、初期腐食深さが深い場合、腐食の内部は外部環境からより隔絶され、溶液の濃化が起こりやすいサイトを形成してしまう。逆に初期腐食深さが浅い場合、外部からの水流、対流等で、腐食内部液が外部へ容易に流出するため、溶液の濃化が生じにくい。このように、初期腐食深さを深くすることは、孔食の自己触媒性を促進するため望ましくなく、耐食性の低下を招いてしまう。
そこで、拡散係数が非常に小さいMnに着目し、各層間のMn含有量の差が一定値以上となるように、犠材層と心材との間に中間層を設けることにより、初期腐食深さを浅くすることができ、より長寿命化を実現することができる。また、初期腐食深さを浅くするだけであれば、中間層を設けずに心材と犠材層との間にMn含有量の差を設けるだけでよいが、初期腐食深さを浅くするために、犠材層の厚さを厚くしすぎることは望ましくない。一方で、犠材層の厚さが薄すぎると、犠材層が短期間で消耗され、早期に心材が露出してしまう。このようなことから、中間層によって犠材層と中間層との間、中間層と心材との間にそれぞれ大きな電位差を設けることで、各層間で腐食の板厚方向への進行が強く抑制される。
さらに、クラッド板の強度向上の観点から、後述するように、心材にはCu等の易拡散元素が多く含まれる場合があり、ろう付け加熱等によって拡散し、各層間の電位差に大きな影響を与えることがある。そのため、犠材層と心材との間に組成を管理した特定の中間層を設けることで、各層間の電位差を保つことができる。隣接する層間のMn含有量の差が0.2%以上、好ましくは0.4%以上確保される構成であれば、犠材層と心材との間に中間層を複数設けてもよい。
以上、心材及び中間層を構成するアルミニウム合金に含有されるMnによる効果は、以下のように要約できる。すなわち、実質的に拡散しないMnを用いて各層間にMn含有量の差を設けることで、板厚によらず、腐食の進行を各層間で確実に抑制できる。これにより、初期腐食深さを浅くすることができ、初期腐食深さが大きいことによる弊害を抑制できる。
<各層のアルミニウム合金組成等>
1.中間層
中間層は、Mn:0.2%以上1.8%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、かつ、Mn含有量が心材よりも0.2%以上少ないアルミニウム合金により構成されている。Mnは、Al−Mn系金属間化合物として晶出又は析出して、強度の向上に寄与する。さらに、Al−Mn系金属間化合物は、Feを取り込むことから、添加材又は不可避的不純物としてのFeによる腐食速度増大を抑制する効果を有する。ただし、Mnは、製造条件によって巨大なAl−Mn系金属間化合物として晶出し、製造性が低下するおそれがある。したがって、中間層のMn含有量を1.5%以下とすることが好ましく、1.0%以下とすることがより好ましい。
1.中間層
中間層は、Mn:0.2%以上1.8%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、かつ、Mn含有量が心材よりも0.2%以上少ないアルミニウム合金により構成されている。Mnは、Al−Mn系金属間化合物として晶出又は析出して、強度の向上に寄与する。さらに、Al−Mn系金属間化合物は、Feを取り込むことから、添加材又は不可避的不純物としてのFeによる腐食速度増大を抑制する効果を有する。ただし、Mnは、製造条件によって巨大なAl−Mn系金属間化合物として晶出し、製造性が低下するおそれがある。したがって、中間層のMn含有量を1.5%以下とすることが好ましく、1.0%以下とすることがより好ましい。
また、中間層は、さらに、Mg:0.05%以上2.0%以下、Si:0.05%以上1.5%以下、Fe:0.1%以上1.0%以下、Ni:0.05%以上0.3%以下、Cr:0.05%以上0.3%以下、Zr:0.05%以上0.3%以下、Ti:0.05%以上0.3%以下、V:0.05%以上0.3%以下から選択される1種以上を含有し、またさらに、Cu:0.05%以上2.8%以下を含有し、Cu含有量が心材よりも0.2%以上少ない、又は、Cuを不可避的不純物としてのみ含有していてもよい。この場合には、耐食性を十分に確保しながら、強度を向上させることができる。以下、各元素を含有することによって得られる効果及び組成範囲の規定理由等について説明する。
Mg、Si:
Mg及びSiは、マトリックス(Al)中に固溶し、またMg−Si系晶析出物として存在することで強度向上に寄与する。強度向上効果を考えた場合、Mg及びSiの各含有量は、0.05%以上であることが好ましい。Mg含有量又はSi含有量が0.05%未満の場合には、強度向上効果が十分に得られないおそれがある。また、Mg含有量が2.0%を超える場合には、製造時に表面に厚い酸化物層が形成されるため、製造性が低下するおそれがある。Si含有量が1.5%を超える場合には、中間層を構成する材料(アルミニウム合金)の融点の低下が大きくなり、ろう付け等の加熱時に中間層の一部又は全部が溶融するおそれがある。したがって、Mg含有量を2.0%以下とすることが好ましく、Si含有量を1.5%以下とすることが好ましい。
Mg及びSiは、マトリックス(Al)中に固溶し、またMg−Si系晶析出物として存在することで強度向上に寄与する。強度向上効果を考えた場合、Mg及びSiの各含有量は、0.05%以上であることが好ましい。Mg含有量又はSi含有量が0.05%未満の場合には、強度向上効果が十分に得られないおそれがある。また、Mg含有量が2.0%を超える場合には、製造時に表面に厚い酸化物層が形成されるため、製造性が低下するおそれがある。Si含有量が1.5%を超える場合には、中間層を構成する材料(アルミニウム合金)の融点の低下が大きくなり、ろう付け等の加熱時に中間層の一部又は全部が溶融するおそれがある。したがって、Mg含有量を2.0%以下とすることが好ましく、Si含有量を1.5%以下とすることが好ましい。
Cu:
Cuは、上述のMg及びSiと同様に強度向上に寄与する。しかしながら、Cuは各層の電位分布に与える影響が大きいため、中間層のCu含有量を心材よりも0.2%以上少なくする。また、中間層のCu含有量を心材よりも0.4%以上少なくすることが好ましい。中間層と心材とのCu含有量の差が0.2%未満の場合には、中間層と心材との間の電位差を十分に確保することができないおそれがある。また、後述するように、心材のCu含有量が3.0%を超えると、鋳造割れが生じやすくなり、製造性が低下するおそれがあるため、中間層のCu含有量を2.8%以下とすることが好ましい。すなわち、心材のCu含有量を3.0%以下とし、さらに中間層と心材とのCu含有量の差を0.2%以上とするためには、中間層のCu含有量を2.8%以下とすることが好ましい。ただし、Cu含有量が0.05%未満の不可避的不純物程度であれば、各層の電位への影響は非常に小さい。したがって、中間層は、Cuを不可避的不純物としてのみ含有していてもよい。なお、中間層にCuを含有させて強度向上効果を得る必要がない場合には、中間層のCu含有量を極力少なくするほうが耐食性向上効果を高めることができる。
Cuは、上述のMg及びSiと同様に強度向上に寄与する。しかしながら、Cuは各層の電位分布に与える影響が大きいため、中間層のCu含有量を心材よりも0.2%以上少なくする。また、中間層のCu含有量を心材よりも0.4%以上少なくすることが好ましい。中間層と心材とのCu含有量の差が0.2%未満の場合には、中間層と心材との間の電位差を十分に確保することができないおそれがある。また、後述するように、心材のCu含有量が3.0%を超えると、鋳造割れが生じやすくなり、製造性が低下するおそれがあるため、中間層のCu含有量を2.8%以下とすることが好ましい。すなわち、心材のCu含有量を3.0%以下とし、さらに中間層と心材とのCu含有量の差を0.2%以上とするためには、中間層のCu含有量を2.8%以下とすることが好ましい。ただし、Cu含有量が0.05%未満の不可避的不純物程度であれば、各層の電位への影響は非常に小さい。したがって、中間層は、Cuを不可避的不純物としてのみ含有していてもよい。なお、中間層にCuを含有させて強度向上効果を得る必要がない場合には、中間層のCu含有量を極力少なくするほうが耐食性向上効果を高めることができる。
Fe:
Feは、粗大な金属間化合物及び結晶粒を微細化し、成形性及び加工性向上に寄与する。Fe含有量が0.1%未満の場合には、成形性及び加工性向上効果が十分に得られないおそれがある。Fe含有量が1.0%を超える場合には、中間層自体の耐食性の低下を招くおそれがある。したがって、Fe含有量を0.1%以上1.0%以下とすることが好ましい。
Feは、粗大な金属間化合物及び結晶粒を微細化し、成形性及び加工性向上に寄与する。Fe含有量が0.1%未満の場合には、成形性及び加工性向上効果が十分に得られないおそれがある。Fe含有量が1.0%を超える場合には、中間層自体の耐食性の低下を招くおそれがある。したがって、Fe含有量を0.1%以上1.0%以下とすることが好ましい。
Ni:
Niは、Ni系化合物が微細かつ均一に分布し、腐食を分散させる効果を有するため、耐食性向上に寄与する。Ni含有量が0.05%未満の場合には、耐食性向上効果が十分に得られないおそれがある。Ni含有量が0.3%を超える場合には、腐食速度が増大するおそれがある。したがって、Ni含有量を0.05%以上0.3%以下とすることが好ましい。
Niは、Ni系化合物が微細かつ均一に分布し、腐食を分散させる効果を有するため、耐食性向上に寄与する。Ni含有量が0.05%未満の場合には、耐食性向上効果が十分に得られないおそれがある。Ni含有量が0.3%を超える場合には、腐食速度が増大するおそれがある。したがって、Ni含有量を0.05%以上0.3%以下とすることが好ましい。
Cr、Zr、Ti、V:
Cr、Zr、Ti及びVは、耐食性、特に耐孔食性の向上に寄与する。アルミニウム合金中にCr、Zr、Ti及びVが添加されると、各元素における濃度の高い領域と濃度の低い領域とが板厚方向に沿って交互に積層状に分布する。ここで、各元素における濃度の低い領域は、濃度の高い領域よりも優先的に腐食されるため、腐食の形態が層状となる。その結果、板厚方向への腐食進行が抑制され、耐孔食性が向上する。Cr、Zr、Ti及びVのいずれかの含有量が0.05%未満の場合には、耐孔食性向上効果が十分に得られないおそれがある。Cr、Zr、Ti及びVのいずれかの含有量が0.30%を超える場合には、鋳造時に粗大な化合物が生じ、製造性が低下するおそれがある。したがって、Cr、Zr、Ti及びVの各含有量を0.05%以上0.30%以下とすることが好ましい。
Cr、Zr、Ti及びVは、耐食性、特に耐孔食性の向上に寄与する。アルミニウム合金中にCr、Zr、Ti及びVが添加されると、各元素における濃度の高い領域と濃度の低い領域とが板厚方向に沿って交互に積層状に分布する。ここで、各元素における濃度の低い領域は、濃度の高い領域よりも優先的に腐食されるため、腐食の形態が層状となる。その結果、板厚方向への腐食進行が抑制され、耐孔食性が向上する。Cr、Zr、Ti及びVのいずれかの含有量が0.05%未満の場合には、耐孔食性向上効果が十分に得られないおそれがある。Cr、Zr、Ti及びVのいずれかの含有量が0.30%を超える場合には、鋳造時に粗大な化合物が生じ、製造性が低下するおそれがある。したがって、Cr、Zr、Ti及びVの各含有量を0.05%以上0.30%以下とすることが好ましい。
2.犠材層
犠材層は、犠牲陽極材により構成された層である。犠材層は、Zn含有量が0.1%以下である、純度99.0%以上の純アルミニウムにより構成されている。ここで、「Zn含有量が0.1%以下」には、Zn含有量が0%の場合が含まれる。
犠材層は、犠牲陽極材により構成された層である。犠材層は、Zn含有量が0.1%以下である、純度99.0%以上の純アルミニウムにより構成されている。ここで、「Zn含有量が0.1%以下」には、Zn含有量が0%の場合が含まれる。
犠材層としては、自己腐食がより小さいものが望ましい。自己腐食とは、犠牲防食に寄与しない犠材層の腐食量のことである。すなわち、(犠材層の自己腐食量)+(犠牲防食による犠材層の消耗量)=(犠材層の腐食量の合計)であることから、自己腐食量を抑制することにより、犠材層全体の腐食量を抑制できる。
そこで、犠材層を純度99.0%以上の純アルミニウムにより構成することで、犠材層の自己腐食を抑制でき、熱交換器の使用環境で優れた耐食性を得ることができる。すなわち、熱交換器は、その性質上、作動中は高温に曝される。このとき、水と触れている部分には、耐食性の優れた水和酸化物皮膜が生成する。例えば、熱交換器のチューブ材の内部には水系冷媒等が循環していているため、チューブ材の表面には水和酸化物皮膜が形成されることになる。この水和酸化物皮膜が耐食性の向上に寄与する。また、この水和酸化物皮膜は、純アルミニウム上において成長しやすい。したがって、犠材層を上記特定の純アルミニウムにより構成することで、犠材層の表面に、耐食性の向上に寄与する水和酸化物皮膜が自然に形成され、犠材層の自己腐食を抑制し、耐食性を向上させることができる。
また、例えば、高温の水系冷媒中で形成される上述の水和酸化物皮膜は、犠材層にZnが多く含まれると成長しにくくなる。したがって、犠材層のZn含有量を0.1%以下とする。さらに、その他の不純物元素も上述の水和酸化物皮膜の形成に影響を与えるため、犠材層を純度99.0%以上の純アルミニウムにより構成する。
また、中間層及び心材には、強度向上その他の目的で種々の元素を添加する場合があるが、これらの添加元素は例えばろう付け加熱時に犠材層にまで拡散することがある。したがって、犠材層を構成する純アルミニウムの純度を必要以上に高くすることは不経済となる。そのため、犠材層を構成する純アルミニウムの純度の上限としては、99.5%程度とすることがよい。
3.心材
心材は、Mn:0.4%以上2.0%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金により構成されている。Mnは、Al−Mn系金属間化合物として晶出又は析出して、強度の向上に寄与する。さらに、Al−Mn系金属間化合物は、Feを取り込むことから、添加材又は不可避的不純物としてのFeによる腐食速度増大を抑制する効果を有する。ただし、Mnは、製造条件によって巨大なAl−Mn系金属間化合物として晶出し、製造性が低下するおそれがある。したがって、心材のMn含有量を1.50%以下とすることが好ましく、1.0%以下とすることがより好ましい。
心材は、Mn:0.4%以上2.0%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金により構成されている。Mnは、Al−Mn系金属間化合物として晶出又は析出して、強度の向上に寄与する。さらに、Al−Mn系金属間化合物は、Feを取り込むことから、添加材又は不可避的不純物としてのFeによる腐食速度増大を抑制する効果を有する。ただし、Mnは、製造条件によって巨大なAl−Mn系金属間化合物として晶出し、製造性が低下するおそれがある。したがって、心材のMn含有量を1.50%以下とすることが好ましく、1.0%以下とすることがより好ましい。
また、心材は、さらに、Mg:0.05%以上2.0%以下、Si:0.05%以上1.5%以下、Cu:0.05%以上3.0%以下、Fe:0.1%以上1.0%以下、Ni:0.05%以上0.3%以下、Cr:0.05%以上0.3%以下、Zr:0.05%以上0.3%以下、Ti:0.05%以上0.3%以下、V:0.05%以上0.3%以上から選択される1種以上を含有していてもよい。この場合には、耐食性を十分に確保しながら、強度を向上させることができる。Mg、Si、Fe、Ni、Cr、Zr、Ti及びVを含有することによって得られる効果及び組成範囲の規定理由は、上述した中間層と同様である。
また、心材にCuを添加すると、強度向上効果に加えて、心材の電位が中間層及び犠材層よりも相対的に貴となる効果があり、中間層及び犠材層の心材に対する犠牲防食効果が高くなる。心材のCu含有量が0.05%未満の場合には、各層の電位への影響が非常に小さいが、強度向上効果が十分に得られないおそれがある。一方、心材のCu含有量が3.0%を超える場合には、鋳造割れが生じやすくなり、製造性が低下するおそれがある。
4.ろう材層
ろう材層に用いられるアルミニウム材は、特に限定されるものではない。ろう材層に用いられるアルミニウム材としては、通常のろう付けにおいて用いられるAl−Si系合金ろう材等を用いることができ、例えば、JIS4343、JIS4045、JIS4047等の各アルミニウム合金(Al−7〜13%Si)等を用いることができる。
ろう材層に用いられるアルミニウム材は、特に限定されるものではない。ろう材層に用いられるアルミニウム材としては、通常のろう付けにおいて用いられるAl−Si系合金ろう材等を用いることができ、例えば、JIS4343、JIS4045、JIS4047等の各アルミニウム合金(Al−7〜13%Si)等を用いることができる。
<その他>
上記アルミニウム合金製クラッド板において、心材、中間層及び犠材層を構成するアルミニウム合金には、耐食性等の特性を損なわない範囲において、上述した元素以外の元素が含有されていてもよい。例えば、不可避的不純物として、Na、Ca等が単独で0.05%以上、合計で0.15%以下含有されていてもよい。
上記アルミニウム合金製クラッド板において、心材、中間層及び犠材層を構成するアルミニウム合金には、耐食性等の特性を損なわない範囲において、上述した元素以外の元素が含有されていてもよい。例えば、不可避的不純物として、Na、Ca等が単独で0.05%以上、合計で0.15%以下含有されていてもよい。
中間層の厚さは、3〜200μmとすることが好ましい。中間層の厚さが3μm未満の場合には、製造が困難となるおそれがあり、さらに中間層で初期腐食を抑制する効果が十分に得られず、腐食が心材にまで容易に到達してしまうおそれがある。一方、中間層の厚さが100μmを超える場合には、板厚全体に占める中間層の厚さが心材の厚さに比べて厚くなりすぎ、クラッド板全体の機械的性質が低下するおそれがある。
犠材層の厚さは、犠材層における初期腐食深さを浅くするという観点から、2〜100μmとすることが好ましく、5〜50μmとすることがより好ましい。犠材層の厚さが2μm未満の場合には、製造が困難となるおそれがあり、さらに犠材層が短期間に消耗してしまい、初期腐食深さを浅くするという効果が十分に得られないおそれがある。一方、犠材層の厚さが100μmを超える場合には、初期腐食深さが大きくなりすぎ、耐食性が低下するおそれがある。
中間層のクラッド率は、製造性の観点から2〜30%とすることが好ましく、5〜20%とすることがより好ましい。中間層のクラッド率が2%未満の場合及び30%を超える場合には、クラッド板の製造が困難となるおそれがある。ここで、中間層のクラッド率とは、クラッド板全体の厚さに対する中間層の厚さの比率である。
犠材層のクラッド率は、中間層と同様に、製造性の観点から2〜30%とすることが好ましく、5〜20%とすることがより好ましい。犠材層のクラッド率が2%未満の場合及び30%を超える場合には、クラッド板の製造が困難となるおそれがある。ここで、犠材層のクラッド率とは、クラッド板全体の厚さに対する犠材層の厚さの比率である。
上記アルミニウム合金製クラッド板において、心材の一方の面に中間層を介して犠材層が被覆され、心材の他方の面にろう材層が被覆されていてもよい。この場合には、クラッド板のろう付けが容易となる。例えば、クラッド板に曲げ加工を施し、その両端部の重ね合わせ部分をろう付け接合して、熱交換器のチューブ材を作製することが容易となる。
ろう材層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、10〜50μmとすることが好ましい。ろう材層の片面クラッド率は、5〜30%とすることが好ましい。ここで、ろう材層の片面クラッド率とは、クラッド板全体の厚さに対する、クラッド板の片面側に設けたろう材層の厚さの比率である。クラッド板全体の厚さは、50〜250μmとすることが好ましく、70〜220μmとすることがより好ましい。
心材、中間層及び犠材層を備える上記アルミニウム合金製クラッド板は、通常の製造方法により製造される。また、上記アルミニウム合金製クラッド板は、チューブ材、フィン材、ヘッダープレート等の熱交換器部材として用いられる。特に、薄肉化が求められるチューブ材として好適に用いられる。
上記アルミニウム合金製クラッド板(以下、適宜、単にクラッド板という)の実施例について、比較例と対比しながら、表1〜表6を用いて説明する。以下に示す実施例は、本発明の一実施態様を示すものであり、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
<アルミニウム合金製クラッド板の作製>
心材には、表1〜3に示す組成の合金を用いた。心材用合金を半連続鋳造法により鋳造し、心材用鋳塊を得た。その後、心材用鋳塊に対して、520℃、6時間の均質化処理を施し、所定の厚さとなるように面削を施した。
心材には、表1〜3に示す組成の合金を用いた。心材用合金を半連続鋳造法により鋳造し、心材用鋳塊を得た。その後、心材用鋳塊に対して、520℃、6時間の均質化処理を施し、所定の厚さとなるように面削を施した。
中間層及び犠材層には、表1〜3に示す組成の合金を用いた。中間層用合金及び犠材層用合金を半連続鋳造法により鋳造し、中間層用鋳塊及び犠材層用鋳塊を得た。その後、中間層用鋳塊及び犠材層用鋳塊に対して面削を施し、500℃で熱間圧延を施し、所定の厚さの板形状とした。なお、熱間圧延前に、中間層用鋳塊及び犠材層用鋳塊に対して、均質化処理を施してもよい。
なお、表1〜3に示す合金組成は、発光分光分析装置を用いて鋳造後の鋳塊を測定したものである。また、面削後の心材用鋳塊の厚さ、熱間圧延後の中間層用鋳塊及び犠材層用鋳塊の厚さは、中間層及び犠材層の各クラッド率が5%となるように調整した。ここで、中間層及び犠材層の各クラッド率は、作製するクラッド板の厚さに対する中間層及び犠材層の各厚さの比率である。
次いで、心材用鋳塊の片面に中間層用鋳塊を重ね、さらに中間層用鋳塊上に犠材層用鋳塊を重ねた。この重ね合わせ材を通常のクラッド板の製造方法にしたがって520℃で熱間圧延し、厚さ3.5mmの3層クラッド板とした。そして、3層クラッド板に対して板厚が0.20mmとなるまで冷間圧延を施し、さらに360℃で3時間の焼鈍を施した後、冷間圧延を施した。これにより、全体厚さ0.15mm、中間層及び犠材層の各クラッド率が5%(すなわち中間層及び犠材層の各厚さが7.5μm)の3層クラッド板を得た。その後、3層クラッド板に対して、窒素雰囲気中又は真空中(1×10−3Pa)において、600℃で3分保持のろう付け相当加熱を施した。
以上により、実施例及び比較例のクラッド板を得た。なお、表1〜3に示すように、実施例のクラッド板は、試料A1〜A5、B1〜B19、C1〜C20であり、比較例のクラッド板は、試料A6〜A11、B20〜B28、C21〜C30である。
<耐食性の評価>
作製したクラッド板に対して、水系冷媒環境を模擬した循環サイクル試験を実施し、耐食性を評価した。まず、作製したクラッド板から50×100mmの長方形板状の試験片を切り出した。試験片の試験面は犠材層をクラッドした面である。試験片の非試験面及び端面はマスキングした。
作製したクラッド板に対して、水系冷媒環境を模擬した循環サイクル試験を実施し、耐食性を評価した。まず、作製したクラッド板から50×100mmの長方形板状の試験片を切り出した。試験片の試験面は犠材層をクラッドした面である。試験片の非試験面及び端面はマスキングした。
次いで、Cl−:195ppm、SO4 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe2+:30ppmを含有する88℃の水溶液を、試験片の試験面に対して比液量6mL/cm2、流速2m/秒で8時間流通させた。その後、試験片を16時間放置した。このような加熱流通及び放置からなるサイクルを3ヶ月間行った。
循環サイクル試験後、試験片の表面の腐食生成物を除去し、腐食深さを測定した。測定箇所は10箇所とし、それらの最大値を腐食深さとした。耐食性の評価は、腐食深さが60μm以下の場合を優良(◎)、腐食深さが60μm超え75μm以下の場合を良(○)、腐食深さが75μm超え100μm以下の場合を可(△)、腐食深さが100μmを超える又は腐食によって試験片が貫通した場合を不可(×)とした。
<製造性の評価>
クラッド板を作製するに当たって、その製造性に問題がなかったものを良(○)、何らかの理由により製造が困難であったものを不良(×)とし、表4〜表6の備考欄にその理由を記載した。
クラッド板を作製するに当たって、その製造性に問題がなかったものを良(○)、何らかの理由により製造が困難であったものを不良(×)とし、表4〜表6の備考欄にその理由を記載した。
表4に、試料A1〜A11の耐食性及び製造性の評価結果を示す。
同表に示すとおり、実施例である試料A1〜A5は、耐食性の評価において良好な結果(優良(◎)又は良(○))が得られた。もちろん、製造性の評価も良(○)であった。一方、比較例である試料A6〜A11は、耐食性の評価において良好な結果が得られなかったか、あるいはクラッド板の製造が困難であり、耐食性の評価対象とならなかった。
同表に示すとおり、実施例である試料A1〜A5は、耐食性の評価において良好な結果(優良(◎)又は良(○))が得られた。もちろん、製造性の評価も良(○)であった。一方、比較例である試料A6〜A11は、耐食性の評価において良好な結果が得られなかったか、あるいはクラッド板の製造が困難であり、耐食性の評価対象とならなかった。
試料A6は、犠材層のアルミニウムの純度が低く、自己腐食量が多くなったため、耐食性の評価が可(△)であった。試料A7は、心材のMn含有量が2.0%を越えているため、鋳造時に粗大な晶出物が発生し、製造が困難となった。試料A8は、心材のMn含有量が0.4%未満であり、心材のMn含有量が0.4%未満であり、犠材層と中間層との間のMn含有量の差、中間層と心材との間のMn含有量の差が十分ではなく、腐食による貫通が生じ、耐食性の評価が不可(×)であった。試料A9は、中間層と心材との間のMn含有量の差が十分ではなく、耐食性の評価が可(△)であった。試料A10は、犠材層と中間層との間のMn含有量の差が十分ではなく、耐食性の評価が可(△)であった。試料A11は、犠材層のZn含有量が0.1%を超えているため、腐食による貫通が生じ、耐食性の評価が不可(×)であった。
表5に、試料B1〜B28の耐食性及び製造性の評価結果を示す。
同表に示すとおり、実施例である試料B1〜B19は、耐食性の評価において良好な結果(優良(◎)又は良(○))が得られた。もちろん、製造性の評価も良(○)であった。一方、比較例である試料B20〜B28は、耐食性の評価において良好な結果が得られなかったか、あるいはクラッド板の製造が困難であり、耐食性の評価対象とならなかった。
同表に示すとおり、実施例である試料B1〜B19は、耐食性の評価において良好な結果(優良(◎)又は良(○))が得られた。もちろん、製造性の評価も良(○)であった。一方、比較例である試料B20〜B28は、耐食性の評価において良好な結果が得られなかったか、あるいはクラッド板の製造が困難であり、耐食性の評価対象とならなかった。
試料B20は、心材のMg含有量が多すぎたため、製造時に表面に厚く形成された酸化物皮膜により、クラッド板の製造が非常に困難となった。試料B21は、心材のSi含有量が多すぎたため、ろう付け加熱時に心材が溶融してしまい、製造が困難となった。試料B22は、心材のCu含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な晶出物が発生し、製造が非常に困難となった。試料B23は、心材のFe含有量が多すぎたため、心材の耐食性が低下し、腐食による貫通が生じ、耐食性の評価が不可(×)であった。試料B24は、心材のNi含有量が多すぎたため、心材の耐食性が低下し、腐食による貫通が生じ、耐食性の評価が不可(×)であった。試料B25〜B28は、それぞれCr、Zr、Ti、Vの含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な晶出物が発生し、製造が困難となった。
表6に、試料C1〜C30の耐食性及び製造性の評価結果を示す。
同表に示すとおり、実施例である試料C1〜C20は、耐食性の評価において良好な結果(優良(◎)又は良(○))が得られた。もちろん、製造性の評価も良(○)であった。一方、比較例である試料C21〜C30は、耐食性の評価において良好な結果が得られなかったか、あるいはクラッド板の製造が困難であり、耐食性の評価対象とならなかった。
同表に示すとおり、実施例である試料C1〜C20は、耐食性の評価において良好な結果(優良(◎)又は良(○))が得られた。もちろん、製造性の評価も良(○)であった。一方、比較例である試料C21〜C30は、耐食性の評価において良好な結果が得られなかったか、あるいはクラッド板の製造が困難であり、耐食性の評価対象とならなかった。
試料C21は、中間層のMg含有量が多すぎたため、製造時に表面に厚く形成された酸化物皮膜により、クラッド板の製造が非常に困難となった。試料C22は、中間層のSi含有量が多すぎたため、ろう付け加熱時に中間層が溶融してしまい、製造が困難となった。試料C23は、中間層のFe含有量が多すぎたため、中間層の耐食性が低下し、腐食による貫通が生じ、耐食性の評価が不可(×)であった。試料C24は、中間層のNi含有量が多すぎたため、中間層の耐食性が低下し、腐食による貫通が生じ、耐食性の評価が不可(×)であった。試料C25〜C28は、それぞれCr、Zr、Ti、Vの含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な晶出物が発生し、製造が困難となった。試料C29、C30は、中間層と心材との間のCu含有量の差が十分ではなく、電位バランスが崩れたため、耐食性の評価が可(△)であった。
1…アルミニウム合金製クラッド板、2…心材、3…中間層、4…犠材層、21…第1主面(心材の一方の面)
Claims (4)
- アルミニウム合金により構成された心材、中間層及び犠材層を備え、前記心材の少なくとも一方の面に前記中間層を介して前記犠材層が被覆された熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板であって、
前記心材は、Mn:0.4%(質量%、以下同様)以上2.0%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金により構成され、
前記中間層は、Mn:0.2%以上1.8%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、かつ、Mn含有量が前記心材よりも0.2%以上少ないアルミニウム合金により構成され、
前記犠材層は、Zn含有量が0.1%以下である、純度99.0%以上の純アルミニウムにより構成されている、熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板。 - 前記心材は、さらに、Mg:0.05%以上2.0%以下、Si:0.05%以上1.5%以下、Cu:0.05%以上3.0%以下、Fe:0.1%以上1.0%以下、Ni:0.05%以上0.3%以下、Cr:0.05%以上0.3%以下、Zr:0.05%以上0.3%以下、Ti:0.05%以上0.3%以下、V:0.05%以上0.3%以上から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板。
- 前記中間層は、さらに、Mg:0.05%以上2.0%以下、Si:0.05%以上1.5%以下、Fe:0.1%以上1.0%以下、Ni:0.05%以上0.3%以下、Cr:0.05%以上0.3%以下、Zr:0.05%以上0.3%以下、Ti:0.05%以上0.3%以下、V:0.05%以上0.3%以下から選択される1種以上を含有し、またさらに、Cu:0.05%以上2.8%以下を含有し、Cu含有量が前記心材よりも0.2%以上少ない、又は、Cuを不可避的不純物としてのみ含有する、請求項1又は2に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板。
- 前記心材の一方の面に前記中間層を介して前記犠材層が被覆され、前記心材の他方の面にろう材層が被覆されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016160102A JP2018028129A (ja) | 2016-08-17 | 2016-08-17 | 熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板 |
PCT/JP2017/029399 WO2018034292A1 (ja) | 2016-08-17 | 2017-08-15 | 熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016160102A JP2018028129A (ja) | 2016-08-17 | 2016-08-17 | 熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018028129A true JP2018028129A (ja) | 2018-02-22 |
Family
ID=61196645
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016160102A Pending JP2018028129A (ja) | 2016-08-17 | 2016-08-17 | 熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板 |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2018028129A (ja) |
WO (1) | WO2018034292A1 (ja) |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS57158350A (en) * | 1981-03-24 | 1982-09-30 | Furukawa Alum Co Ltd | Aluminum alloy clad material with pitting corrosion resistance |
JPS6285937A (ja) * | 1985-09-13 | 1987-04-20 | 株式会社神戸製鋼所 | 耐孔蝕性に優れたアルミニウム合金複合材 |
JPH07188822A (ja) * | 1993-12-24 | 1995-07-25 | Mitsubishi Alum Co Ltd | 耐孔食性のすぐれた自動車熱交換器の構造部材用Al合金複合材 |
JP4451974B2 (ja) * | 2000-08-10 | 2010-04-14 | 古河スカイ株式会社 | 熱交換器用アルミニウム合金製ブレージングシート |
JP2006037135A (ja) * | 2004-07-23 | 2006-02-09 | Denso Corp | 熱交換器用高耐食アルミニウムクラッド材 |
-
2016
- 2016-08-17 JP JP2016160102A patent/JP2018028129A/ja active Pending
-
2017
- 2017-08-15 WO PCT/JP2017/029399 patent/WO2018034292A1/ja active Application Filing
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2018034292A1 (ja) | 2018-02-22 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5336967B2 (ja) | アルミニウム合金クラッド材 | |
JP5576666B2 (ja) | 熱交換器に用いられるアルミニウム合金クラッド材およびそれに用いるアルミニウム合金クラッド材用芯材 | |
JP5276476B2 (ja) | アルミニウム合金クラッド材 | |
JP5339560B1 (ja) | アルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法 | |
JPS6248742B2 (ja) | ||
JP2017145463A (ja) | アルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法、ならびに、当該ブレージングシートを用いた自動車用熱交換器 | |
WO2016080434A1 (ja) | 熱交換器用アルミニウム合金クラッド材 | |
US11260476B2 (en) | Aluminum alloy brazing sheet and method for manufacturing the same | |
JP5743642B2 (ja) | アルミニウム合金ブレージングシート | |
JP5354590B2 (ja) | 高強度で耐食性に優れるアルミニウム合金ブレージングシート | |
JP5189853B2 (ja) | 熱交換器用アルミニウム合金クラッド材 | |
JP4019775B2 (ja) | 耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシート | |
JP2018028129A (ja) | 熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板 | |
JP2018028128A (ja) | 熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板 | |
WO2018034293A1 (ja) | 熱交換器用のアルミニウム合金製クラッド板 | |
JP4352454B2 (ja) | 強度および耐ろう侵食性に優れた熱交換器用ブレージングシートの製造方法 | |
JP3749089B2 (ja) | 犠牲防食アルミニウム合金板及びその複合材 | |
JP5552181B2 (ja) | アルミニウム合金クラッド材 | |
JP4352455B2 (ja) | 強度および耐ろう侵食性に優れたブレージングシートの製造方法 | |
JP2014015665A (ja) | アルミニウム合金複合材および熱交換器 | |
JP5537103B2 (ja) | 酸性環境の耐食性に優れたAl合金クラッド材 | |
JP4352456B2 (ja) | 強度および耐ろう侵食性に優れたブレージングシートの製造方法 | |
JP5809720B2 (ja) | 熱交換器に用いられるアルミニウム合金クラッド材およびそれに用いるアルミニウム合金クラッド材用芯材 | |
JP2023057325A (ja) | 熱交換器用アルミニウム合金クラッド材 | |
JP2581868B2 (ja) | 熱交換器用高強度高耐食性アルミニウム合金クラッド材 |