JP5189853B2 - 熱交換器用アルミニウム合金クラッド材 - Google Patents
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Description
現在、かかる熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、自動車を軽量化するため、高強度、高耐食性、且つ、例えば全板厚が0.2mm程度の薄肉であることが求められている。
具体的には、心材の一方の側面に犠牲陽極材をクラッドし、他方の側面にAl―Si系のろう材をクラッドした熱交換器用アルミニウム合金クラッド材であって、心材はMn:0.6〜2.0質量%、Cu:0.3〜1.0質量%、Si:0.5〜1.0質量%、Fe:0.01〜0.4質量%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金で構成され、犠牲陽極材は、Zn:0.5〜4.0質量%、In:0.005〜0.1質量%、Sn:0.01〜0.1質量%、のうち、一種または二種以上を含有し、さらにSi:0.01〜0.5質量%、Fe:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金で構成され、心材のマトリックスが繊維組織であり、クラッド材の引張り強さが170〜260MPaである熱交換器用アルミニウム合金クラッド材が記載されている。そして、より高強度化するため、心材の化学組成にMgを0.06〜0.4質量%含有させることが記載されている。
具体的には、Mgを0.2質量%以下に規制し、Cr:0.3質量%以下、Fe:0.2質量%以下、Cu:0.2質量%を超え1.0質量%以下、Si:0.3〜1.3質量%を含有し、且つCuおよびSiの総量を1.5質量%以下に規制し、さらにMn:0.3〜1.5質量%、Ti:0.02〜0.3質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金の心材と、この心材の一面に形成されたAl−Si系ろう材と、前記心材の他面に形成されたMg:0.3〜3質量%およびZn:2.2質量%を超え5質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金の犠牲陽極材(特許文献2では皮材)と、を有するアルミニウム合金複合材が記載されている。また、かかるアルミニウム合金複合材は、心材と犠牲陽極材との孔食電位差を80〜180mVに制御すると好適である旨が記載されている。
そして、かかる特許文献2には、心材の板厚を0.24mm、犠牲陽極材の板厚を0.03mm、およびろう材の板厚を0.03mmとし、全板厚が0.3mmであるアルミニウム合金複合材を用いて、機械的特性、ろう材側腐食侵食深さ、犠牲陽極材側腐食侵食深さ、犠牲陽極材および心材孔食電位差といった項目について評価している。
このようにすれば、犠牲陽極材に含有されるSi,Mnを特定の範囲に規制することによって、その強度を向上させることができる結果、熱交換器用アルミニウム合金クラッド材全体の高強度化を図ることができる。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金クラッド材(以下、単に「クラッド材」という。)1は、心材2の一側面に犠牲陽極材3を、他側面にろう材4をクラッドした3層構造のクラッド材である。
心材2に含有されるSiは、心材2の強度を向上させる役割を担う。特にSi−Mg系析出物により、心材2の強度を向上させることができる。しかし、Siの含有量が0.15質量%未満であると、心材2の強度を向上させるには不十分である。一方、Siの含有量が1.6質量%を超えると、粒界腐食感受性が増大するため、かえって耐孔食性が低下してしまう。したがって、Siの含有量は0.15〜1.6質量%とした。なお、より好ましくは0.5〜1.2質量%である。
心材2に含有されるMnは、心材2の強度および耐孔食性を向上させる役割を担う。しかし、Mnの含有量が0.3質量%未満であると、十分に心材2の強度を向上させることができない。一方、Mnの含有量が2.0質量%を超えると粗大晶出物が析出し、アルミニウム合金内に腐食が発生した時にカソードサイトとして振る舞い腐食を促進する。したがって、Mnの含有量は0.3〜2.0質量%とした。なお、より好ましくは0.6〜1.7質量%である。
心材2に含有されるCuは、心材2の強度を向上させる役割を担う。しかし、心材2にCuを含有させると粒界腐食感受性を増大させてしまい、犠牲陽極材3側の耐孔食性を低下させてしまう。そのため、犠牲陽極材3にZnを含有させ、犠牲陽極材3の電位を心材2および粒界に対して卑にすることで粒界腐食を防止することができる。しかし、Cuの含有量が0.1質量%未満であると、十分に心材2の強度を向上させることができない。一方、Cuの含有量が1.0質量%を超えると、粒界腐食感受性が増大するため、かえって耐孔食性が低下してしまう。したがって、Cuの含有量は0.1〜1.0質量%とした。なお、より好ましくは0.6〜1.0質量%である。
心材2に含有されるMgは、心材2の強度を向上させる役割を担う。特に、Mg2Si化合物を形成し、心材2の強度向上に寄与する。しかし、Mgの含有量が0.1質量%未満であると、十分に心材2の強度を向上させることができない。一方、Mgの含有量が1.0質量%を超えると、心材2の電位が低下し、耐孔食性を維持できなくなる。したがって、Mgの含有量は0.1〜1.0質量%とした。なお、より好ましくは0.1〜0.8質量%である。
心材2に含有されるNbは、心材2の電位を貴にし、耐孔食性を向上させる役割を担う。このように、心材2にNbを含有させることで、本発明に係るクラッド材1を、例えば、0.2mm程度に薄肉化させた場合であっても、犠牲陽極材3との電位差を100〜300mV生じさせることができ、犠牲陽極材3に犠牲陽極効果を十分に発揮させることができる。Nbの含有量が0.01質量%未満であると、十分に耐孔食性を向上させることができない。一方、Nbの含有量が2.0質量%を超えると、犠牲陽極材3との電位差が大きくなりすぎて、かえって犠牲陽極材3の溶解を促進し、クラッド材1全体の寿命を低下させる。したがって、Nbの含有量は0.01〜2.0質量%とした。なお、より好ましくは0.01〜0.6質量%である。
本発明に係るクラッド材1の心材2には、不可避的不純物として、例えば、Cr,Ti,Zr,Bが含有されている。このような不可避的不純物を、例えば、Crを0.1質量%以下、Tiを0.2質量%以下、Zrを0.2質量%以下、Bを0.1質量%以下、Feを0.2質量%以下(いずれも0質量%を超える)などの範囲で含有していても、本発明の効果を妨げるものではない。したがって、このような不可避的不純物の含有は許容される。なお、心材2においては、このような不可避的不純物の含有量が合計で0.4質量%まで許容できる。
(犠牲陽極材:Znを1.0〜7.0質量%)
犠牲陽極材3に含有されるZnは、犠牲陽極材3の電位を卑にする役割を担う。前記したように、心材2にCuを含有させた場合、粒界腐食感受性が増大するため、犠牲陽極材3の電位を卑に維持する必要がある。Znの含有量が1.0質量%未満であると、心材2に対して十分な電位差を維持することができず、心材2の粒界腐食が発生してしまう。一方、Znの含有量が7.0質量%を超えると、犠牲陽極材3の自己腐食速度が増大し、犠牲陽極材3は早期腐食を生じて耐孔食性が低下する。したがって、Znの含有量は1.0〜7.0質量%とした。なお、より好ましくは1.5〜5.5質量%である。
本発明に係るクラッド材1の犠牲陽極材3には、不可避的不純物として、例えば、Cr,Ti,Zr,Bが含有されている。このような不可避的不純物を、例えば、Crを0.1質量%以下、Tiを0.2質量%以下、Zrを0.2質量%以下、Bを0.1質量%以下、Feを0.2質量%以下(いずれも0質量%を超える)などの範囲で含有していても、本発明の効果を妨げるものではない。したがって、このような不可避的不純物の含有は許容される。なお、犠牲陽極材3においては、このような不可避的不純物の含有量が合計で0.4質量%まで許容できる。
本発明に係るクラッド材1のろう材4には、不可避的不純物として、例えば、Cr,Ti,Zr,Bが含有されている。このような不可避的不純物を、例えば、Crを0.1質量%以下、Tiを0.2質量%以下、Zrを0.2質量%以下、Bを0.1質量%以下、Feを0.2質量%以下(いずれも0質量%を超える)などの範囲で含有していても、本発明の効果を妨げるものではない。したがって、このような不可避的不純物の含有は許容される。なお、ろう材4において、このような不可避的不純物の含有量が合計で0.4質量%まで許容できる。
犠牲陽極材3に含有されるSiは、犠牲陽極材3の強度を向上させる役割を担う。Siの含有量が多いほど犠牲陽極材3の強度は向上するが、Siの含有量が1質量%を超えると、粒界腐食感受性が増大し、耐孔食性が低下する。したがって、Siの含有量は0質量%を超え1質量%以下とした。なお、より好ましくは0.1〜0.7質量%である。
犠牲陽極材3に含有されるMnは、犠牲陽極材3の強度を向上させる役割を担う。Mnが犠牲陽極材3中に固溶し材料強度が向上する。しかし、Mnの含有量が0.2質量%未満であると、十分に犠牲陽極材3の強度を向上させることができない。一方、Mnの含有量が1.5質量%を超えると、粗大晶出物が析出し、犠牲陽極材3内でカソードサイトとして振舞うため腐食を促進させ耐孔食性を低下させる。したがって、Mnの含有量は0.2〜1.5質量%とした。なお、より好ましくは0.3〜1.0質量%である。
図2に示すように、本発明の他の実施形態に係るクラッド材10は、心材2の一側面に犠牲陽極材3を、他側面に中間材5を介してろう材4をクラッドした4層構造のクラッド材である。
心材2とろう材4の間に中間材5を備えることで、心材2に含有されるMgがろう付け時にろう材4に熱拡散するのを防止し、ろう付け性の低下を防ぐことができる。
また、表2に示す化学組成を有するA〜Gの犠牲陽極材用アルミニウム合金を造塊し、700℃の鋳造温度にて鋳塊を鋳造後、550℃で75分間均質化処理し、500℃までの冷却を0.5℃/分で行った後、熱間圧延を行って板材とした。
そして、Siを11質量%含有するAl−Si合金のろう材用アルミニウム合金を造塊し、700℃の鋳造温度にて鋳塊を鋳造後、熱間圧延を行って板材とした。
製造したa〜rのうちのいずれかの心材用板材の一側面に、A〜Gのうちのいずれかの犠牲陽極材用板材を重ね、心材用板材の他側面にろう材用板材を重ねて、400〜500℃で熱間圧延および冷間圧延を行って所定の板厚とし、表3に示すNo.1〜29に係るクラッド材を製造した。なお、No.1〜29に係るクラッド材の板厚〔μm〕と、これを構成する犠牲陽極材の板厚〔μm〕を表3に示す。
30℃に保持したOY水(Cl-:195質量ppm、SO4 2-:60質量ppm、Cu2+:1質量ppm、Fe3+:30質量ppm、pH:3.0)中に、前記した各素材を評価面積1cm2となるように浸漬し、対極に白金を用い、参照電極としてSCE(飽和カロメル電極)を用いて、電位を測定した。電位の測定結果を表1および表2に示す。そして、No.1〜29に係るクラッド材の電位差を下記式により求めた。No.1〜29のクラッド材の電位差を表3に示す。
電位差〔mV〕={(犠牲陽極材の電位〔mV〕)−(心材の電位〔mV〕)}
No.1〜29の各クラッド材を縦幅50mmおよび横幅50mmの寸法で切り出し、前記したOY水に浸漬して、80℃で12時間保持した後、30℃で12時間保持するというサイクルを50サイクル繰り返して行い、表面に生じた腐食生成物を除去した後、各クラッド材に生じた孔食深さを焦点深度法で50点/枚測定した。また、これと併せて孔食直径も測定した。
孔食深さは、測定した50点のうち、最も深い孔食を最大孔食深さとし、全ての孔食直径の平均を孔食平均直径とした。最大孔食深さ〔μm〕および孔食平均直径〔mm〕を表3に示す。なお、最大孔食深さは、50μm以下を結果が良好であると評価し、孔食平均直径は、0.5mm以上を結果が良好であると評価した。
これに対し、No.18〜29のクラッド材は、本発明の規定するいずれかの要件を満たさないので、0.2mm程度の薄肉のクラッド材とした場合、最大孔食深さおよび孔食平均直径の少なくとも一方が良好な評価とならず、耐孔食性に劣る結果となった(いずれも比較例(表3中の備考2参照))。
また、No.28のクラッド材は、心材のNbの含有量が多いため、心材と犠牲陽極材の電位差が大きくなりすぎ、最大孔食深さが深くかつ孔食平均直径が非常に大きくなって耐孔食性に劣る結果となった。
2 心材
3 犠牲陽極材
4 ろう材
5 中間材
Claims (3)
- 心材の一側面に犠牲陽極材を、他側面にろう材をクラッドした熱交換器用アルミニウム合金クラッド材であって、
前記心材は、Siを0.15〜1.6質量%、Mnを0.3〜2.0質量%、Cuを0.1〜1.0質量%、Mgを0.1〜1.0質量%、Nbを0.01〜2.0質量%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金でなり、
前記犠牲陽極材は、Znを1.0〜7.0質量%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金でなり、
前記ろう材は、Al−Si系合金でなる
ことを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。 - 前記犠牲陽極材が、さらにSiを0質量%を超え1質量%以下、およびMnを0.2〜1.5質量%の範囲で、これらのうちの少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記心材と前記ろう材の間に、Mgを含有しないアルミニウム合金製の中間材を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
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