JP6905366B2 - 耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材 - Google Patents

耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材 Download PDF

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本発明は、熱交換器の部材に用いられる、耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材に関するものである。
軽量で高い熱伝導性を備えるアルミニウム合金は、自動車用熱交換器、例えば、ラジエータ、コンデンサ、インタークーラなどに用いられている。これら熱交換器用の材料としては、チューブ材等の他部材を接合するためのろう材と、冷却水等に接触する面側において耐食性を確保するための犠牲材とが芯材の両面にクラッドされた3層からなるアルミニウム合金クラッド材が使用されている。熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は高強度化が求められており、芯材にAl−Mn系合金を使用し、Cu等の元素を添加することで強度を向上させている。また、冷却水側に配置される犠牲材には、芯材への腐食進展を防止するために、Znが添加され、腐食形態を孔食型から犠牲材層内での面状腐食型へ変えることで耐孔食性を確保している。
耐食性に優れた3層構造のアルミニウム合金として、例えば特許文献1〜5が挙げられる。
特許文献1では、3層のアルミニウム合金複合材において、皮材が、Feを0.03〜0.3質量%、Mnを0.4〜1.9質量%、Siを0.4〜1.4質量%、Znを2.0〜5.5質量%、Cuを0質量%を超え0.5質量%以下で含有し、残部がAlおよび不可避的不純物である皮材に析出したAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物の粒径、数密度および面積率を規定することでは、耐孔食性に優れたものとしている。
特許文献2では、3層のクラッド材であって、犠牲材がZn:1.0〜8.0mass%を含有し、Fe:0.85〜1.5mass%、Ni:0.85〜1.5mass%、Si:0.85〜2.0mass%、Cu:0.2〜0.5mass%及びTi:0.01〜0.05mass%の1種又は2種以上を更に含み、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であり、pH9〜11で温度80〜100℃の腐食液中で示す犠牲材の自然電位におけるろう材のカソード電流密度が20μA/cm以下であるものとして高温、高アルカリ性環境において優れた耐食性を示すものとしている。
特許文献3では、3層のブレージングシートにおいて、アルミニウム合金の心材と、当該心材の一方の面にクラッドされたAl−Si系合金ろう材と、前記心材の他方の面にクラッドされた犠牲陽極材とを備え、犠牲陽極材が、Mn:0.05〜1.8mass% 、Mg:0.5〜3.0mass%、Ti0.05〜0.3mass% 、Zr:0.05〜0.3mass% 、Cr:0.05〜0.3mass%及びV:0.05〜0.3mass% から成る群から選択される1 種以上を更に含有することで、高耐食性としたものが提案されている。
特許文献4では、3層のクラッド材において、犠牲材は、Zn、Cr、Si、Mnを所定量含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、595℃×3分間のろう付加熱後に犠牲材に析出したAl−Mn系、Al−Mn−Si系およびAl−Cu系金属間化合物の最大サイズ、数密度、面積率を規定することで、耐孔食性を向上させるものとしている。
特許文献5では、Al−Si−Zn合金からなるろう材のSi系析出物および共晶相の分布を適切な状態とすることで、冷却水環境における耐食性を大幅に向上させるものである。
特開2009−074138号公報 特開2011−241448号公報 特開2013−023748号公報 特開2014−031588号公報 特開2014−054656号公報
しかし、例えば、ヘッダープレートには樹脂製のタンクが配置される関係でヘッダープレート内面側(犠牲材側)には表面にパッキン(Oリング)が設置される。ここで、市場にて走行中にOリングとヘッダープレート表面(犠牲材側)のすき間に冷却水が留まり、腐食形態が面状であることでむしろ全面腐食が促進されて、早期に両者間に隙間が生じて冷却水の漏れに繋がりやすい課題がある。このように熱交換器の部材では、耐孔食性を改善して面上の腐食形態にした場合に、全面腐食が促進されるという課題がある。
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、ろう付け後において耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材を提供することを目的の一つとする。
上述した課題を解決するために、本発明者らは、ろう付後の犠牲材から芯材にかけての電位勾配および犠牲材板厚表面の腐食電流密度に着目した。すなわち、犠牲材から芯材にかけての電位勾配が所定値より小さい場合は、犠牲陽極効果が十分に働かずに孔食型の腐食が進行する。この場合、犠牲材を一部残した形で芯材にも腐食が進行して貫通孔になり、冷却水の漏れに繋がる。一方で、電位勾配が所定値より大きい場合は、電位的に卑な犠牲材表面から過度に優先腐食が進むことで全面腐食によりOリング/ヘッダー表面(内面)などに隙間が生じて漏れに至るなどの問題が生じる。
また、犠牲材表面の腐食電流密度も同様に、所定値より小さい場合は、犠牲陽極効果が十分に働かずに孔食型の腐食が進行する。一方で、所定値より大きい場合は、過度に犠牲材の優先腐食が進むことで漏れに至る。
すなわち、本発明の耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材のうちの一形態は、 芯材の片面に犠牲材がクラッドされ、前記芯材の他の片面にろう材がクラッドされた3層で構成された熱交換器用アルミニウム合金クラッド材であって、
前記芯材は、質量%で、Mn:1.0〜2.0%、Si:0.5〜1.2%、Fe:0.10〜0.50%、Cu:0.5〜1.2%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、
前記犠牲材は、質量%で、Mn:1.0〜2.0%、Si:0.5〜1.2%、Fe:0.05〜0.35%、Zn:0.15〜0.65%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、
600℃×3分の加熱処理を想定したろう付熱処理後の前記犠牲材の表面から板厚方向に100μmまでの深さの範囲において、前記犠牲材の表面が相対的に最も卑で、前記表面と相対的に貴となる100μmの深さの間における電位勾配が平均で0.3mV/μm以上1.8mV/μm以下であり、
電気化学的分極測定における、前記ろう付熱処理後の前記犠牲材の表面の腐食電流密度が、0.08mA/cm以下であり、
前記ろう付熱処理後の引張強度が170MPa以上であることを特徴とする。
他の形態の耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、前記形態において、前記犠牲材と前記芯材の一方または両方は、さらに、質量%で、Mg:0.05〜2.0%を含有することを特徴とする。
他の形態の耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、前記形態において、前記ろう付熱処理後の前記犠牲材中におけるAl−Mn−Si系の分散粒子が、円相当径で0.5μm以上の粒子径のものの個数密度が1.2×10個/mm以下であることを特徴とする。
他の形態の耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、前記形態において、熱交換器用のヘッダープレートに使用されることを特徴とする。
以下に、本発明の規定内容について説明する。
・犠牲材の電位勾配
ろう付熱処理後の前記犠牲材の表面から板厚方向に100μmまでの深さの範囲において、犠牲材の表面が相対的に最も卑で、前記表面と相対的に貴となる100μmの深さの間における電位勾配の平均値が0.3mV/μm以上1.8mV/μm以下である。
犠牲材の腐食形態に関しては芯材と犠牲材の電位差で議論されることが多いが、上記のような孔食と著しい全面腐食の両者を制御するためには所定板厚までの電位勾配を適正化することが重要となる。
電位勾配が0.3mV/μm未満の場合、犠牲材を溶け残して芯材方向へ孔食が進行する。電位勾配が1.8mV/μmより大きい場合、犠牲材の腐食速度が増大する。これらの理由により電位勾配を上記範囲に定める。なお、同様の理由により、電位勾配の下限を0.6mV/μm、上限を1.5mV/μmとするのが望ましい。
・犠牲材表面の腐食電流密度
電気化学的分極測定における、ろう付熱処理後の犠牲材の表面の腐食電流密度が、0.08mA/cm以下である。
腐食電流密度が0.08mA/cmより大きい場合、犠牲材の早期腐食により、ヘッダープレート内面側にてパッキン接触部との間にすき間が生じて漏れにつながる。このため、腐食電流密度を上記上限を定める。
上記したろう付処理は、600℃×3分の加熱処理を想定することができる。なお、この想定は、実際のろう付における加熱条件を限定するものではない。
・ろう付熱処理後の前記犠牲材中におけるAl−Mn−Si系の分散粒子
円相当径で0.5μm以上の粒子径のものの個数密度が1.2×10個/mm以下であるのが望ましい。
円相当径で0.5μm以上のものの密度が1.2×10個/mmより大きい場合、これら分散粒子によりカソード反応が促進されて腐食速度が増加する。このため、上記個数密度は上記上限を定めるのが望ましい。なお、上記上限をさらに、7.0×10個/mmとするのが一層望ましい。なお、上記粒子は、上記範囲においてできるだけ少ないのが望ましい。
以下に、本発明におけるクラッド材の好適な組成について説明する。なお、以下で説明する成分量についてはいずれも質量%で示されている。
・芯材
芯材組成については本発明としては特定のものに限定されない。以下に示す芯材組成は、好適例として示される。
Mn:1.0〜2.0%
Mnは、マトリックス中にAl−Mn−Si系、Al−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物などを微細に形成し、芯材の材料強度を向上させる。しかし、その含有量が下限未満ではその効果が十分に得られない。一方、上限を超えると、鋳造性および圧延性が低下し、製造性が悪化する。このため、Mnの含有量は1.0〜2.0%とする。同様の理由により、下限を1.3%、上限を1.7%とするのが望ましい。
Si:0.50〜1.2%
Siは、マトリックス中にAl−Mn−Si系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物などを微細に形成し、材料強度を向上させる。しかし、その含有量が下限未満では所望の効果が十分に得られない。一方、上限を超えると材料の融点が低下してろう付性が低下する。このため、Siの含有量は0.50〜1.2%とする。同様の理由により、下限を0.7%、上限を1.0%とするのが望ましい。
Fe:0.10〜0.50%
Feは、マトリックス中にAl−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を微細に形成し、芯材の材料強度を高める。しかし、その含有量が下限未満で所望の効果が十分に得られない。一方、上限を超えると、鋳造性および圧延性が低下し、製造性が悪化する。さらに耐食性が低下する。このため、Feの含有量は0.10〜0.50%とする。同様の理由により、下限を0.25%、上限を0.35%とするのが望ましい。
Cu:0.5〜1.2%
Cuは、マトリックス中に固溶し、材料強度を向上させる。しかし、その含有量が下限未満では所望の効果が十分に得られない。一方、上限を超えると、電位が貴化し、耐食性が低下する。また、融点が低下してろう付性が低下する。このため、Cuの含有量は0.5〜1.2%とする。同様の理由により、下限を0.7%、上限を1.0%とするのが望ましい。
Mg:0.050〜2.0%
Mgは、芯材の材料強度を向上させるので所望により含有させる。しかし、その含有量が下限未満では所望の効果が得られない。一方、上限を超えると、ろう付性が低下する。このため、Mgの含有量は、0.050〜2.0%とする。同様の理由により、下限を0.15%、上限を0.35%とするのが望ましい。
・犠牲材
本願発明では、犠牲材の組成は特定の範囲に限定されるものではない。以下に、犠牲材の好適例を示す。
Mn:1.0〜2.0%、
Mnは、犠牲材の強度を向上させ、さらに耐食性を向上させる効果がある。また、Mnは、Siとともに適正量を含有することによって分散粒子サイズを制御して耐食性を向上させる効果がある。しかし、その含有量が下限未満であると所望の効果が得られない。一方、上限を超えると、鋳造性、圧延性が低下し、製造性が悪化する。
このため、Mn含有量を1.0〜2.0%の範囲とする。同様の理由により、下限を1.3%、上限を1.7%とするのが望ましい。
Si:0.5〜1.2%
Siは、犠牲材の強度を向上させ、さらに耐食性を向上させる。また、Siは、Mnとともに適正量を含有することによって分散粒子サイズを制御して耐食性を向上させる効果がある。しかし、その含有量が下限未満であると所望の効果が得られない。一方、上限を超えると、融点が低下し、ろう付性が低下する。
このため、Siの含有量を0.5〜1.2%の範囲とする。同様の理由により、下限を0.7%、上限を1.0%とするのが望ましい。
Fe:0.05〜0.35%
Feは、マトリックス中にAl−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を微細に形成し、犠牲材の強度を向上させる。しかし、その含有量が下限未満では所望の効果が十分に得られない。一方、上限を超えると、耐食性が低下し、さらに鋳造性、圧延性が低下し、製造性を悪化させる。このため、Fe含有量を0.05〜0.35%の範囲とする。同様の理由により、下限を0.15%、上限を0.25%とするのが望ましい。
Zn:0.15〜0.65%
Znは、電位を卑にし、その結果、犠牲材の耐食性を向上させる。しかし、その含有量が下限未満では含有量が少なくその効果が十分発揮されない。一方、上限を超えると腐食速度が増加しすぎて却って耐食性が低下する。このため、Znの含有量は0.15〜0.65%とする。同様の理由で、下限を0.25%、上限を0.55%とするのが望ましい。
Mg:0.05〜2.0%
Mgは、犠牲材の強度を向上させるとともに、犠牲材からのMgの拡散層によってクラッド材の強度を向上させるので所望により含有させる。しかし、その含有量が下限未満では含有量が少なくその効果が十分発揮されない。一方、上限を超えると、ろう付性が低下する。このため、Mgの含有量を0.05〜2.0%の範囲とする。同様の理由により、下限を0.15%、上限を0.35%とするのが望ましい。
・ろう材
ろう材は被接合体とのろう付のため、一般的にAl−Si系合金(Si:3〜12%など)が使用される。また外面側の耐食性向上のためにAl−Si系合金にZnを適正量添加したろう材が用いられる場合もある。当該発明では特別にろう材の組成の規定はしないが上記ろう材のいずれも使用可能である。
本発明によれば、熱交換器用アルミニウム合金クラッド材のろう付け後の耐食性を向上させて熱交換器の耐久性を図ることができる。
本発明の一実施形態の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材のろう付前の状態における断面図を示す。 本発明の一実施形態の熱交換器の一部を示す斜視図である。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
図1は本実施形態の自動車熱交換器に用いられるアルミニウム合金クラッド材1の断面図を示すものである。アルミニウム合金クラッド材1は、アルミニウム合金からなる芯材1aと、この芯材1aの片面側にクラッドされた層状の犠牲材1bと、芯材1aの他の片面側にクラッドされた層状のろう材1cとを主体として構成されている。
なお、この実施形態では、自動車用熱交換器用であるものとして説明しているが、本発明としては自動車用に限定されるものではない。
芯材1aには、好適には、Mn:1.0〜2.0%、Si:0.5〜1.2%、Fe:0.10〜0.50%、Cu:0.5〜1.2%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、所望によりMg:0.05〜2.0%を含有するアルミニウム合金を用いることができる。
犠牲材1bには、好適には、質量%で、Mn:1.0〜2.0%、Si:0.5〜1.2%、Fe:0.05〜0.35%、Zn:0.15〜0.65%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、所望によりMg:0.05〜2.0%を含有するアルミニウム合金を用いることができる。
ろう材1cには、例えば、質量%で、Si:3.0〜12%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、所望によりZn0.15〜1.0%を含有するアルミニウム合金を用いることができる。
これらの合金は常法により溶製することができる。本発明としては特に溶製方法が限定されるものではなく、半連続鋳造法、連続鋳造法のいずれであってもよい。
ろう材用アルミニウム合金は、400〜500℃×3〜10時間の均質化処理を行うことができる。芯材用アルミニウム合金は、480〜550℃で3〜10時間の均質化処理を行うことができ、犠牲材アルミニウム合金は、400〜450℃で3〜10時間の均質化処理を行うことができる。
上記均質化処理条件により、芯材の分散粒子サイズを最適化して高強度を確保できる。さらに、芯材と犠牲材の添加元素(Al−Mn−Si)の固溶析出状態を制御して所定の電位勾配を得ることができ、犠牲材の分散粒子サイズを制御することができる。
添加元素の固溶・析出状態には均質化処理における温度と時間の両因子が影響する。熱処理前が最も固溶度が高く、均質化処理によって析出を促進して固溶度を低下させる。このとき、低温ほど分散粒子の微細化するが、十分に析出するためにより長い時間が必要となる。一方で、高温ほど粒子サイズが粗大化するが十分に析出させるための時間は短くなる。分散粒子のサイズと量を制御するため最適な条件が選択される。
鋳塊は熱間圧延を経て合金板とされる。また連続鋳造圧延を経て合金板とするものであってもよい。
これらの合金板は、クラッドに組み付けられて適宜のクラッド率でクラッドされる。クラッドは、一般に圧延により行われる。その後、さらに冷間圧延を行なうことで所望の厚さのアルミニウム合金ブレージングシートが得られる。
なお、熱間圧延に際しては、25〜60mm/パスの圧下量で圧延を行うのが望ましい。
上記製造工程では、冷間圧延に際し中間焼鈍を介在させることができる。該中間焼鈍は、例えば200〜400℃で1〜6時間の加熱によって行なうことができる。中間焼鈍後の最終圧延では、10〜50%の冷間圧延率で圧延を行なう。また、作製される材料は中間焼鈍を介さず、所望の板厚まで圧延を行なったものでもよい。
得られたクラッド材1は、その厚さが2.0mm以下であり、これにより、軽量化が達成される。
上記したクラッド材1は、犠牲材1bが内面側になるようにパイプとすることができる。さらにパイプを、平加工して平チューブとし、図2に示されているヘッダープレート11のような所望の形状に加工される。ヘッダープレート11は、多数のチューブ12、フィン13、サイドサポート14と組み付けられ、ろう付に供される。
ヘッダープレート11には、上記チューブ11の突出部を覆うように、図示しない樹脂が配置され、樹脂タンクとヘッダープレート11との間が図示しないゴムパッキン(Oリング)によってシールされている。
上記組み付け体10は、常法によりろう付けすることができる。ろう付けは、条件として特に限定されるものではないが、例えば、高純度窒素ガス雰囲気中で室温から目標温度590℃〜610になるまでに1.0〜15分を必要とする昇温速度で加熱し、目標温度で1.0〜8.0分間保持した後、30〜200℃/分の降温速度で冷却するなどの条件で行われる。ろう付けによって熱交換器部材がアセンブリされる。
以下、本発明の実施例を説明する。
半連続鋳造により芯材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金、及びろう材用合金を溶製し、芯材用アルミニウム合金材、犠牲材用アルミニウム合金材、及びろう材用合金材を得た。なお、芯材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金の組成は、表1(残部は、Al及び不可避不純物)に示す。ろう材用アルミニウム合金には、JISA4343合金(Al−7.5%Si)を用いた。
芯材用アルミニウム合金材に500℃で8時間の均質化処理を行い、比較例14の芯材用アルミニウム合金材には、580℃で8時間の均質化処理を実施し、ろう材用アルミニウム合金材には430℃で3時間の均質化処理を行った。
犠牲材用アルミニウム合金材には430℃で8時間の均質化処理を実施し、比較例15の犠牲材用アルミニウム合金材には、500℃で8時間の均質化処理を実施した。
これらの均質化処理の条件は一例であり、本発明としては均質化処理の条件が上記に限定されるものではない。
次に、芯材用アルミニウム合金材の一方の片面に犠牲材用アルミニウム合金材を配置し、芯材用アルミニウム合金材の他方の片面にろう材を配置して熱間圧延、冷間圧延を行った。 熱間圧延に際しては分散粒子サイズへの影響を考慮して500℃以下の温度で圧延を開始し、熱延仕上げ時の温度を400℃以下とすることが望ましい。
熱間圧延にて約5mmの厚さまで圧延後、冷間圧延を実施する。中間焼鈍は、付与しない。なお、所望により中間焼鈍を行うようにしてもよい。
クラッド材のクラッド率は、犠牲材:芯材:ろう材=10%:75%:15%とした。
その後、板厚1.5mmで400℃で4時間の焼鈍を実施して調質Oのブレージングシートとし、実施例および比較例のアルミニウム合金クラッド材の供試材を作製した。
なお、比較材No.2、8、10は鋳造が不良でその後の圧延時に破断が発生し、供試材を作製することができなかった。比較材No.4、6、11は、ろう付相当加熱時に局部溶融が生じ、ろう付け後の評価を行うことができなかった。
以上の手順で作製した各供試材に対して特性評価を行い、その結果を表2に示した。特性評価方法を以下に示す。
Figure 0006905366
Figure 0006905366
<ろう付け熱処理>
供試材に対し、窒素ガス雰囲気中で室温から600℃まで平均昇温速度100℃/分で昇温し、600℃で3分保持した後、100℃/分の降温速度で冷却するろう付け相当の熱処理を施した。
<ろう付後強度>
ろう付熱処理後、圧延方向と平行にサンプルを切り出してJIS5号形状の試験片を作製し、引張試験を実施し、引張強さを測定した。引張速度は3mm/分とした。
引張強さが170MPa以上であるものは、ろう付後の引張強さが良好であると判定し、170MPa未満であるものは強度が不足すると判定する。
<分散粒子の分布状態>
円相当径0.5μm以上の第二相粒子の個数密度(個/μm)を透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定した。
測定方法は、ろう付相当熱処理後の供試材に機械研磨および電解研磨によって犠牲材中央部から厚さ5.0μm程度の薄膜を作製し、透過型電子顕微鏡にて10000倍で写真撮影した。この際、5視野(合計で500μm程度)について写真撮影し、画像解析によって第二相粒子のサイズおよび数密度を計測した。
<電位勾配>
各供試材を用いて、アノード分極測定を実施し、犠牲材表面からの孔食電位分布から電位勾配を測定した。参照電極は銀塩化銀電極(飽和)を用い、窒素ガスの吹き込みにより脱気した40℃の2.67%AlCl溶液中で電位掃引速度0.5mV/sで測定した。
なお、孔食電位分布は50℃の5%NaOH水溶液に浸漬して表面から所定の厚さを溶解除去した後に測定した。正確な電位勾配を求めるために、下記の測定データから平均電位勾配を求めた。測定点は、表層から30μmまでで3〜5点、30μm〜60μmで3〜5点、60μm〜100μmで3〜5点の全測定データとし、これらのデータから平均値を算出した。
板厚方向に犠牲材表面から100μmまでが犠牲防食層であれば十分に耐食性を確保できる。
<腐食電流密度>
各供試材を用いて、アノード分極およびカソード分極を実施し、両曲線の交点から腐食電流密度を求めた。なお、交点が無い場合はカソード分極におけるターフェル部(電位と電流密度の対数との間の直線関係を示す)を外挿することで求めた。
なお、分極測定における諸条件は電位勾配測定時と同様であり、カソード分極時は測定前にエアーバブリングを30分実施して空気飽和させた。
<内面側(犠牲材側)の耐食性評価>
各供試材をヘッダープレートとして用いて熱交換器を作製した。熱交換器内面側の耐食性調査として、ろう付熱処理後の熱交換器に対して、Cl:195ppm、SO 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe3+:30ppmを含む水溶液(OY水)を80℃で8時間保持→室温で16時間保持のサイクルで、熱交換器内部を循環する腐食試験を8週間実施した。
ヘッダープレート内面側(犠牲材側)のパッキン接触部の腐食に関しては、試験期間中に漏れ発生の有無を確認して、漏れなしの場合を〇、8週間以内に漏れ発生の場合を×とした。また、腐食試験後の熱交換器からヘッダープレートを切り出し、沸騰させたリン酸クロム酸混合溶液に10分間浸漬して腐食生成物を除去した後、最大腐食部の断面観察を実施して腐食孔食深さを測定した。腐食深さが150μm未満を○、150μm以上を×とした。
断面観察では、最大腐食部を含んだ供試材を常温硬化性のエポキシ樹脂に埋め込み、所定の部位まで研磨後に光学顕微鏡にて観察を実施した。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態の内容によって限定されるものではなく、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、実施形態に対する構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
1 アルミニウム合金クラッド材
1a 芯材
1b 犠牲材
1c ろう材
10 組み付け体
11 ヘッダープレート
12 チューブ
13 フィン
14 サイドサポート

Claims (4)

  1. 芯材の片面に犠牲材がクラッドされ、前記芯材の他の片面にろう材がクラッドされた3層で構成された熱交換器用アルミニウム合金クラッド材であって、
    前記芯材は、質量%で、Mn:1.0〜2.0%、Si:0.5〜1.2%、Fe:0.10〜0.50%、Cu:0.5〜1.2%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、
    前記犠牲材は、質量%で、Mn:1.0〜2.0%、Si:0.5〜1.2%、Fe:0.05〜0.35%、Zn:0.15〜0.65%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、
    600℃×3分の加熱処理を想定したろう付熱処理後の前記犠牲材の表面から板厚方向に100μmまでの深さの範囲において、前記犠牲材の表面が相対的に最も卑で、前記表面と相対的に貴となる100μmの深さの間における電位勾配が平均で0.3mV/μm以上1.8mV/μm以下であり、
    電気化学的分極測定における、前記ろう付熱処理後の前記犠牲材の表面の腐食電流密度が、0.08mA/cm以下であり、
    前記ろう付熱処理後の引張強度が170MPa以上であることを特徴とする耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  2. 前記犠牲材と前記芯材の一方または両方は、さらに、質量%で、Mg:0.05〜2.0%を含有することを特徴とする請求項に記載の耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  3. 前記ろう付熱処理後の前記犠牲材中におけるAl−Mn−Si系の分散粒子が、円相当径で0.5μm以上の粒子径のものの個数密度が1.2×10個/mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  4. 熱交換器用のヘッダープレートに使用されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
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