JP6803827B2 - 熱交換器用アルミニウム合金材及び熱交換器 - Google Patents

熱交換器用アルミニウム合金材及び熱交換器 Download PDF

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Description

本発明は、自動車等の熱交換器用部品として用いられる熱交換器用アルミニウム合金材及び熱交換器に関する。
従来、自動車用熱交換器の部品等には、ブレージングシートと称されるアルミニウム合金の片面又は両面にろう材が配置されたクラッド材が用いられている。このようなクラッド材が用いられる自動車用熱交換器として、例えば、トランスミッション等のオイルを冷却するオイルクーラが知られている(特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のアルミニウム製積層型オイルクーラは、アルミニウム合金の両面にろう材を配置したクラッド材を積層し、600℃の温度でのろう付けにてこれらを接合し、冷却水用流路及びオイル用流路を確保している。これにより、オイル用流路を流通する高温のオイルが冷却水用流路を流通する冷却水により冷却される。
特開2003−139480号公報
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、冷却水側には、クラッド材のろう材面が接するため、耐食性が問題となる。この点、両面にろう材を配置したクラッド材の耐食性は、ラジエータ用チューブ材などで用いられる犠牲材を配置したクラッド材に比べると、犠牲材のような面状腐食にならず芯材方向へ局部腐食が発生し易いことから、耐食性に劣ることが知られている。これは、ろう材は初晶と共晶組織を有するため、犠牲材のような面状腐食にならずに芯材方向へ局部腐食が発生し易いことに起因している。
また、特許文献1に記載のオイルクーラ以外にも燃費向上や熱交換器の小型化等を目的に、コンデンサやCAC(チャージエアクーラ)等、従来の空冷タイプから水冷タイプが検討されている。さらに、CACでは、排気ガスの再循環システムも検討されており、この場合は、冷却水が流通する側の耐食性に加えて、空気が流通する側においても排気ガス濃縮液に対する耐食性も必要となる。
以上の観点から、芯材の両面又は片面にろう材を有するブレージングシート(熱交換器用アルミニウム合金材)の耐食性を向上させることが望まれている。
本発明は、耐食性を向上できる熱交換器用アルミニウム合金材及び熱交換器を提供することを目的とする。
本発明の熱交換器用アルミニウム合金材は、Al−Mn−Cu系芯材と、その片面又は両面に貼り合わされたAl−Si−Znろう材とからなる熱交換器用アルミニウム合金材であって、前記Al−Mn−Cu系芯材は、質量%で、Mn:1.0%以上2.0%以下、Si:0.08%以上1.25%以下、Cu:0.3%以上1.21%以下、を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金であり、前記Al−Si−Znろう材は、質量%で、Si:2.0%以上12.7%以下、Zn:0.9%以上5.0%以下、を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金であり、室温から600℃まで平均昇温速度100℃/分で昇温し、600℃で3分保持後、100℃/分の降温速度で降温冷却するろう付相当熱処理の条件で加熱後のろう付け熱処理後の前記Al−Mn−Cu系芯材における板厚中央部の電位に対して25mV以上180mV以下卑な領域の厚みが前記Al−Si−Znろう材表面から板厚深さ方向に30μm以上80μm以下であり、かつ、ろう材初晶及び前記Al−Mn−Cu系芯材の腐食電流密度がいずれも0.05mA/cm以下であり、前記Al−Mn−Cu系芯材の平均結晶粒径が30μm以上300μm以下である。
本発明では、熱交換器用アルミニウム合金材の芯材として、Al−Mn−Cu系芯材を用いており、この芯材に含まれるMn及びCuは、芯材の強度を向上させる。また、熱交換器用アルミニウム合金材のろう材として、Al−Si−Znろう材を用いており、Znは、ろう材を芯材に対して卑な電位とする機能を有する。
ここで、Al−Mn−Cu系芯材における板厚中央部の電位と上記卑な領域の電位との電位差が25mV未満であると、電位差が小さすぎることから耐食性を向上できず、180mVを超えると腐食減量の増加を招く。また、上記卑な領域の厚みがAl−Si−Znろう材の表面から板厚深さ方向に30μm未満であると卑な領域が小さく、耐食性を向上できず、上記厚みが80μmを超えるとろう材に早期に貫通孔が開いてしまう。
これに対し、本発明では、ろう付け熱処理後のろう材の表面から板厚深さ方向に一定の厚みで芯材電位より一定卑な領域を確保することでろう材の腐食形態が局部腐食型から全面腐食型へ良化するので、ろう材の耐孔食性(耐食性)を向上できる。
また、ろう材初晶及びAl−Mn−Cu芯材の腐食電流密度がいずれも0.05mA/cmを超えていると腐食速度が上昇して早期に犠牲陽極効果が消失してしまい耐食性が低下する。また、Al−Mn−Cu系芯材の平均結晶粒径が30μm未満であると結晶粒界を経由するろう侵食量が増大し、300μmを超えると侵食深さが増大する。
これに対し、本発明では、ろう材初晶及びAl−Mn−Cu芯材の腐食電流密度がいずれも0.05mA/cm以下であり、Al−Mn−Cu系芯材の平均結晶粒径が30μm以上300μm以下であるため、ろう材の耐食性を向上できる。
本発明の熱交換器用アルミニウム合金材の好ましい態様としては、ろう付け処理後の前記Al−Mn−Cu系芯材は、質量%で、Zr:0.02%以上0.20%以下を含有するとよい。
本発明の熱交換器用アルミニウム合金材の好ましい態様としては、ろう付け熱処理前の前記Al−Mn−Cu系芯材におけるAl−Mn系、Al−Cu系の分散粒子のうち、円相当径で1μm以下の分散粒子の体積率が1%以上5%以下でかつ50nm以上300nm以下の分散粒子の個数割合が80%以上を占めるとよい。
本発明の熱交換器は、オイルが流通するオイル流路と、前記オイル流路に隣接して配置され、前記オイルを冷却する冷却水が流通する冷却水流路と、を備え、前記オイル流路及び前記冷却水流路を区画するプレートは、Al−Mn−Cu系芯材と、その片面又は両面に貼り合わされたAl−Si−Znろう材とからなる熱交換器用アルミニウム合金材により構成され、前記Al−Mn−Cu系芯材は、質量%で、Mn:1.0%以上2.0%以下、Si:0.08%以上1.25%以下、Cu:0.3%以上1.21%以下、を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金であり、前記Al−Si−Znろう材は、質量%で、Si:2.0%以上12.7%以下、Zn:0.9%以上5.0%以下、を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金であり、前記熱交換器用アルミニウム合金材は、前記Al−Mn−Cu系芯材における板厚中央部の電位に対して25mV以上180mV以下卑な領域の厚みが前記Al−Si−Znろう材表面から板厚深さ方向に30μm以上80μm以下であり、かつ、ろう材初晶及び前記Al−Mn−Cu系芯材の腐食電流密度がいずれも0.05mA/cm以下であり、前記Al−Mn−Cu系芯材の平均結晶粒径が30μm以上300μm以下である。
本発明では、熱交換器を構成するプレートの耐食性が向上するので、熱交換器の耐食性(耐久性)を向上できる。
本発明によれば、熱交換器用アルミニウム合金材及び熱交換器の耐食性を向上できる。
本発明の実施形態に係る熱交換器用アルミニウム合金材が用いられた熱交換器を示す断面図である。 図1に示す熱交換器用アルミニウム合金材のプレートの表面近傍における拡大図である。
以下、本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金材及び熱交換器用アルミニウム合金材を用いた熱交換器の実施形態について、図面を用いて説明する。
本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金材(以下、単に合金材という)を用いた熱交換器1は、図1に示すように、それぞれが略同一形状に形成された複数のプレート4,5と、上側プレート2と、下側プレート3と、冷却水流入パイプ6と、冷却水流出パイプ7と、インナーフィン8と、を備えている。
各プレート4,5は、交互に積層され、これらの中央部に空間を形成し、該空間にはインナーフィン8が配置される。そして、各プレート4,5は、オイルが流通するオイル流路81と冷却水が流通する冷却水流路82とを区画している。また、プレート4の外周部においては、オイルが流通するオイル流路41及び冷却水が流通する冷却水流路42が交互に配置されている。
このような熱交換器1を構成しているプレート4,5及びインナーフィン8のそれぞれは、本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金材により構成され、これらはろう付けにより接合される。なお、以下の説明では、組成が同一であるため、プレート4についてのみ説明する。
図2は、プレート4のろう付け後の表面近傍の拡大断面図である。
本発明の熱交換器用アルミニウム合金であるプレート4は、図2に示すように、芯材4aにおける板厚中央部Ar1の電位に対して25mV以上180mV以下卑な領域Ar2の厚みがろう材4b表面から板厚深さ方向に30μm以上80μm以下の範囲Ar2で存在している。また、ろう材初晶及び芯材4aの腐食電流密度は、いずれも0.05mA/cm以下であり、芯材4aの平均結晶粒径は、30μm以上300μm以下である。なお、芯材4aの板厚及びろう材4bのクラッド率は特に限定されるものではないが、例えばアルミニウム製積層型オイルクーラ用プレート材として用いる場合には、芯材4aの板厚が0.3mm以上0.6mm以下、ろう材4bのクラッド率が10%以上〜20%以下(片面)であることが好ましい。
Al−Mn−Cu系芯材における板厚中央部の電位と上記卑な領域の電位差が25mV未満であると、電位差が小さすぎることから耐食性を向上できず、180mVを超えると腐食減量の増加を招く。
また、上記卑な領域の厚みがAl−Si−Znろう材表面から板厚深さ方向に30μm以下であると卑領域が小さく、耐食性を向上できず、上記卑な領域の厚みが表面から80μmを超えるとろう材に早期に貫通孔が開いてしまう。
さらに、ろう材初晶及びAl−Mn−Cu芯材の腐食電流密度がいずれも0.05mA/cmを超えていると腐食速度が上昇してろう材の耐食性が低下する。なお、ろう材4bは、図2に示すように、芯材4aとの界面E1の周囲に初晶E2が形成され、最も外側に共晶E3が形成されている。このろう材4bの電位分布としては、(貴)界面E1の電位>初晶E2の電位>共晶E3の電位(卑)であり、いずれも芯材4aの板厚中央部Ar1の電位よりも低くなっている。
また、Al−Mn−Cu系芯材の平均結晶粒径が30μm未満であると結晶粒界を経由するろう侵食量が増大し、300μmを超えると侵食深さが増大する。
[芯材の組成]
本実施形態では、芯材4aとしてAl−Mn−Cu系芯材を用いており、この芯材4aに含まれるMn及びCuは、芯材の強度を向上させる。また、ろう材4bとして、Al−Si−Znろう材を用いており、このろう材に含まれるSiは、ろう付け性を向上させる。また、Znは、このろう材を芯材に対して卑な金属とする機能を有する。
具体的には、Mnを1.0質量%以上2.0質量%以下、Siを0.1質量%以上1.2質量%以下、Cuを0.3質量%以上1.2質量%以下の範囲で含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金により構成されるとよい。
ここで、Mnが1.0質量%未満であると、添加量が少ないため、芯材の強度を向上しにくく、Mnが2.0質量%を超えていると、鋳造性及び圧延性等の製造性が悪化するおそれがある。また、Siが0.1質量%未満であると、添加量が少ないため、芯材の強度を向上しにくく、Siが1.2質量%を超えていると、融点が低下しやすく、ろう付け性が悪化するおそれがある。さらに、Cuが0.3質量%未満であると、添加量が少ないため、芯材の強度を向上しにくく、Cuが1.2質量%を超えていると、上記電位が貴化し過ぎて耐食性が低下するおそれがあり、また、融点も低下するおそれがある。
なお、Al−Mn−Cu系芯材は、Zrを0.02質量%以上0.20質量%以下含有してもよい。
Al−Mn−Cu系芯材において、Zrは、芯材の強度向上、結晶粒粗大化によるエロージョンを抑制する機能がある。この点、Zrが0.02質量%未満であると、添加量が少ないため、上記機能を発揮しにくく、Zrが0.20質量%を超えていると、鋳造性が低下するおそれがある。
ろう付け熱処理前の前記Al−Mn−Cu系芯材におけるAl−Mn系、Al−Cu系の分散粒子のうち、円相当径で1μm以下の分散粒子の体積率が1%以上5%以下でかつ50nm以上300nm以下の分散粒子の個数割合が80%以上を占めるとよい。
芯材におけるAl−Mn系、Al−Cu系の分散粒子のうち、円相当径で1μm以下の分散粒子の体積率(芯材の体積に占める粒子の体積比)が1%未満であると、分散粒子量が小さいため腐食電流密度及び結晶粒径を向上しにくく、5%を超えていると、所望の電位を得にくい。また、円相当径で50nm以上300nm以下の分散粒子の個数割合(全分散粒子の個数に対する個数比)が80%未満であると、結晶粒微細化によるろう侵食が大きくなり、腐食電流密度が大きくなって耐食性が低下するおそれがある。
[ろう材の組成]
Al−Si−Znろう材は、Siを2.0質量%以上12.5質量%以下、Znを1.0質量%以上5.0質量%以下の範囲で含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金により構成されるとよい。
Al−Si−Znろう材において、Siが2.0質量%未満であると、添加量が少ないため、ろう付け不良が発生しやすく、Siが12.5質量%を超えていると、融点が低下するおそれがある。また、Al−Si−Znろう材において、Znが0.05質量%未満であると、添加量が少ないため、耐食性を向上させにくく、Znが5.0質量%を超えていると、腐食減量が増加するおそれがある。
[熱交換器用アルミニウム合金材の製造方法]
次に、この熱交換器用アルミニウム合金材を製造する方法について説明する。
まず、溶解鋳造により芯材用アルミニウム合金、ろう材層用アルミニウム合金を鋳造し、得られた鋳塊について所定温度で均質化処理を行う。
芯材の均質化処理は400℃〜580℃で2時間〜16時間の範囲から選択することができる。
ろう材の均質化処理は、400〜550℃で1〜15時間とする。通常、ブレージングシートの作製工程において、ろう材層へ均質化処理を実施しないことが一般的であり、この工程にて作製されたブレージングシートのろう材層内には円相当径で1μm程度のSi粒子が多数存在する。このろう材層内のSi粒子サイズを制御するために、均質化処理が効果的であり、400〜550℃で1〜15時間の範囲から選択することができ、480〜550℃で3〜10時間の範囲で実施するのがより好ましい。
均質化処理を実施した芯材用アルミニウム合金及びろう材用アルミニウム合金の鋳塊は、それぞれ熱間圧延を得て合金板とされる。また、鋳造工程と圧延工程とを分けずに、連続鋳造圧延を経て合金板としてもよい。
そして、これら合金板を適宜のクラッド率でクラッドされる。そのクラッドは一般には圧延により行われる。その後、さらに冷間圧延を施すことにより、所望の厚さの熱交換器用アルミニウム合金材が得られる。そして、最終焼鈍を例えば360℃で3時間行うことにより、O調質のクラッド材とする。
クラッド材の厚みの構成は、例えば、ろう材層:芯材:ろう材層=10%:80%:10%とすることができるが、これに限定されるものではなく、ろう材層のクラッド率を5%や15%としてもよい。
熱間圧延、冷間圧延、最終焼鈍は常法によって行えばよいが、冷間圧延工程時に、中間焼鈍を介在させることも可能である。その場合、中間焼鈍としては、例えば200〜400℃で1〜6時間の加熱によって行なうことができる。中間焼鈍後の最終圧延では、10〜50%の冷間圧延率で圧延を行なう。
以上説明した熱交換器用アルミニウム合金材により構成されるプレート4,5及びインナーフィン8を含む各構成を、図1に示す状態に組み立てた状態で全体を高温の炉内に挿入し、冷却することで、ろう材4bが溶融して各部材の接触部位がろう付け接合され、熱交換器1が構成される。この場合のろう付条件は、室温から400℃の到達時間が4分〜9分、400℃〜550℃の到達時間が1分〜2分、550℃〜目標温度までの到達時間が3分〜5分となるような昇温速度で加熱し、600℃の目標温度で3分間保持し、その後、300℃まで約100℃/minで冷却した後、室温まで空冷を行なう処理である。
なお、上記の熱交換器の部材構成、およびろう付条件等は、あくまでも実施形態の一例であり、特にこれに限定されるものではない。
本実施形態では、ろう付け熱処理後のろう材4b表面から板厚深さ方向に一定の範囲で芯材4aの電位より一定卑な領域を確保することでろう材4bの腐食形態が局部腐食型から全面腐食型へ良化するので、ろう材4bの耐孔食性(耐食性)を向上できる。
また、プレート4,5及びインナーフィン8は、上記熱交換器用アルミニウム合金により構成されているので、熱交換器1の耐久性を向上できる。
なお、本発明は上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明の熱交換器用アルミニウム合金材は、冷却対象を冷却水により冷却する構成に限定されるものではなく、冷却対象を冷却風等により冷却する構成であってもよい。また、冷却対象もオイルに限られない。
上記実施形態では、図2に示すように、ろう付け熱処理後の芯材4aにおける板厚中央部の電位に対して25mV以上180mV以下卑な領域Ar2の厚みがろう材4bの表面から板厚深さ方向に30μm以上80μm以下であり、その領域Ar2が芯材4aの一部を含むこととして説明したが、これに限らず、例えば、上記卑な領域は、ろう材4bにのみ設けられることとしてもよい。
半連続鋳造により芯材用アルミニウム合金およびろう材用アルミニウム合金を鋳造した。芯材用アルミニウム合金、ろう材用アルミニウム合金には表1に示す合金(残部Alおよび不可避不純物)を用いた。芯材用の材料にはそれぞれ表1に示す条件にて均質化処理を行なった。なお、ろう材用の材料には450℃で10時間の均質化処理を行なった。
次に、芯材の両面にろう材(クラッド率各10%)を組み合わせて所定の条件にて熱間圧延してクラッド材とし、さらに冷間圧延を行った。その後、板厚0.5mm、250℃で4時間の焼鈍を実施して調質H24のブレージングシート(供試材)を作製した。
[分散粒子の分布状態]
円相当径1.0μm以下の第二相粒子の個数密度(個/μm)を透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定した。
測定方法は、ろう付熱処理前の供試材に機械研磨、および電解研磨によってろう材中央部から薄膜を作製し、透過型電子顕微鏡にて10000倍で写真撮影した。5視野(合計で500μm程度)について写真撮影し、画像解析によって第二相粒子の平均サイズおよび面積率を計測した。そして、円相当径で1μm以下の分散粒子の体積率、及び全分散粒子における円相当径50nm以下300nm以下の粒子の個数割合(所定粒子径の割合)を算出した。なお、「体積率」とは、芯材の体積に占める粒子の体積比をいう。
[ろう付処理]
室温から600℃まで平均昇温速度100℃/分で昇温し、600℃で3分保持後、100℃/分の降温速度で降温冷却する熱処理の条件でろう付相当加熱を行った。加熱後のブレージングシートについて、ろう溜り部を除去後、残りについて以下の評価試験を行った。
[電位(芯材より卑な表層からの領域)]
各ブレージングシートを用いて、アノード分極測定を実施し、ろう材表面からの孔食電位分布を測定した。参照電極は銀塩化銀電極(飽和)を用い、窒素ガスの吹き込みにより脱気した40℃の2.67%AlCl溶液中で電位掃引速度0.5mV/sで測定した。
なお、孔食電位分布は50℃の5%NaOH水溶液に浸漬して表面から所定の厚さを溶解除去した後に測定した。正確な電位勾配を求めるため、ろう材表面から板厚深さ方向に5μmピッチで全板厚に対して電位測定を行い、芯材における板厚中央部の電位に対して25mV以上180mV以下卑となっている領域の表層からの厚みを特定した。
[腐食電流密度]
各ブレージングシートを用いて、アノード分極およびカソード分極を実施し、両曲線の交点から腐食電流密度を求めた。なお、交点が無い場合はカソード分極におけるターフェル部(電位と電流密度の対数との間の直線関係を示す)を外挿することで求めた。これにより、ろう材初晶の電流密度及び芯材の電流密度を算出した。
なお、ろう材初晶の分極測定は、事前に定電流アノード溶解法にて電位的に卑なろう材共晶を腐食、消失させた後に実施した。
分極測定における諸条件は電位測定時と同様であり、カソード分極時は測定前にエアーバブリングを30分実施して空気飽和させた。
[結晶粒測定]
各ブレージングシートを用いて、圧延方向平行断面を樹脂埋め後、鏡面に研磨した後、エッチング液(例えば常温のケラー氏液の1〜3min浸漬)で芯材の結晶粒を現出させ、試料の5箇所について光学顕微鏡を用いて200倍で写真撮影した。撮影した写真から圧延方向について切断法で結晶粒径を測定し、平均結晶粒径を算出した。
[水側の耐食性評価]
各ブレージングシートから30×40mmのサンプルを切り出し、片側のろう材面以外(端部および逆側ろう材面)をマスキングした。マスキングしたサンプルを、Cl:195ppm、SO 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe3+:30ppmを含む水溶液(OY水)中で80℃×8時間、室温×16時間のサイクルで浸漬試験を4週間実施した。腐食試験後のサンプルを沸騰させたリン酸クロム酸混合溶液に10min浸漬して腐食生成物を除去した後、最大腐食部の断面観察を実施して腐食深さを測定した。
最大腐食深さが150μm未満を良好「◎」と評価し、150μm以上250μm未満を可「○」と評価し、250μm以上を不良「×」と評価した。
[大気側の耐食性評価]
各ブレージングシートから30×80mmのサンプルを切り出し、SWAAT試験(Sea Water Acidified Test:ASTMのG85−Aに準拠)に20日間供した。試験後の試験体は、沸騰させたリン酸クロム酸混合溶液中に10分間浸漬することで腐食生成物を除去して、腐食状況を評価した。
最大腐食深さが150μm未満を良好「◎」と評価し、150μm以上250μm未満を可「○」と評価し、250μm以上を不良「×」と評価した。
以上説明した測定結果及び評価は、表1に示す通りである。
Figure 0006803827
ろう付け熱処理後の芯材における板厚中央部の電位に対して25mV以上180mV以下卑な領域の厚みがろう材表面から板厚深さ方向に30μm以上80μm以下であり、かつ、ろう材初晶及び芯材の腐食電流密度がいずれも0.05mA/cm以下であり、芯材の平均結晶粒径が30μm以上300μm以下である実施例1〜12は、水側の耐食性及び大気側の耐食性のいずれにおいても「〇」以上であった。
一方、比較例1〜15は、水側の耐食性が「×」であり、比較例3,8,9では、大気側の耐食性も「×」であった。
1 熱交換器
2 上側プレート
3 下側プレート
4 プレート
4a 芯材(Al−Mn−Cu系芯材)
4b ろう材(Al−Si−Znろう材)
41 オイル流路
42 冷却水流路
5 プレート
6 冷却水流入パイプ
7 冷却水流出パイプ
8 インナーフィン
81 オイル流路
82 冷却水流路

Claims (4)

  1. Al−Mn−Cu系芯材と、その片面又は両面に貼り合わされたAl−Si−Znろう材とからなる熱交換器用アルミニウム合金材であって、
    前記Al−Mn−Cu系芯材は、質量%で、Mn:1.0%以上2.0%以下、Si:0.08%以上1.25%以下、Cu:0.3%以上1.21%以下、を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金であり、
    前記Al−Si−Znろう材は、質量%で、Si:2.0%以上12.7%以下、Zn:0.9%以上5.0%以下、を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金であり、
    室温から600℃まで平均昇温速度100℃/分で昇温し、600℃で3分保持後、100℃/分の降温速度で降温冷却するろう付相当熱処理の条件で加熱後の前記Al−Mn−Cu系芯材における板厚中央部の電位に対して25mV以上180mV以下卑な領域の厚みが前記Al−Si−Znろう材表面から板厚深さ方向に30μm以上80μm以下であり、かつ、ろう材初晶及び前記Al−Mn−Cu系芯材の腐食電流密度がいずれも0.05mA/cm以下であり、前記Al−Mn−Cu系芯材の平均結晶粒径が30μm以上300μm以下であることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金材。
  2. 前記Al−Mn−Cu系芯材は、質量%で、Zr:0.02%以上0.20%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用アルミニウム合金材。
  3. ろう付け熱処理前の前記Al−Mn−Cu系芯材におけるAl−Mn系、Al−Cu系の分散粒子のうち、円相当径で1μm以下の分散粒子の体積率が1%以上5%以下でかつ50nm以上300nm以下の分散粒子の個数割合が80%以上を占めることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器用アルミニウム合金材。
  4. オイルが流通するオイル流路と、
    前記オイル流路に隣接して配置され、前記オイルを冷却する冷却水が流通する冷却水流路と、を備え、
    前記オイル流路及び前記冷却水流路を区画するプレートは、Al−Mn−Cu系芯材と、その片面又は両面に貼り合わされたAl−Si−Znろう材とからなる熱交換器用アルミニウム合金材により構成され、
    前記Al−Mn−Cu系芯材は、質量%で、Mn:1.0%以上2.0%以下、Si:0.08%以上1.25%以下、Cu:0.3%以上1.21%以下、を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金であり、
    前記Al−Si−Znろう材は、質量%で、Si:2.0%以上12.7%以下、Zn:0.9%以上5.0%以下、を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金であり、
    前記熱交換器用アルミニウム合金材は、前記Al−Mn−Cu系芯材における板厚中央部の電位に対して25mV以上180mV以下卑な領域の厚みが前記Al−Si−Znろう材表面から板厚深さ方向に30μm以上80μm以下であり、かつ、ろう材初晶及び前記Al−Mn−Cu系芯材の腐食電流密度がいずれも0.05mA/cm以下であり、前記Al−Mn−Cu系芯材の平均結晶粒径が30μm以上300μm以下であることを特徴とする熱交換器。
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