JP5086751B2 - アルミニウム合金複合材および熱交換器 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、犠牲防食材中のZn,Mn量を規定した上で、犠牲防食材中のAl−Mn系金属間化合物の粒径と分布を制御することによって、犠牲防食材の防食効果に伴う腐食電流値を低減させて耐食性を高めた熱交換器用のアルミニウム合金複合材が開示されている。
このように、請求項2に記載のアルミニウム合金複合材は、皮材が形成された面と反対の面にろう材を備えるので、ろう付けにより熱交換器等に容易に加工することができる。
このような熱交換器によれば、耐孔食性に優れたアルミニウム合金複合材によって形成されているので高い耐孔食性を備えることができる。また、薄肉化および軽量化を図ることができる。
なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく限りにおいて適宜改変・変更することが可能である。
図1(a)に示すように、本発明に係るアルミニウム合金複合材1は、アルミニウム合金製の心材2の少なくとも一側面に、アルミニウム合金製の皮材3が形成されている(アルミニウム合金複合材1A)。
ここで、皮材3は、Feを0.03〜0.3質量%、Mnを0.4〜2.0質量%、Siを0.4〜2.0質量%、Znを2.0〜10.0質量%、Ceを0.01〜0.7質量%、Cuを0質量%を超え0.5質量%以下で含有し、残部がAlおよび不可避的不純物で形成されている。
また、この皮材3に析出したAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物は、皮材3の断面の電子顕微鏡観察像による最大サイズが円相当径で50nm以上1μm以下であり、当該円相当径で50nm以上1μm以下のAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物の数密度が10〜150個/100μm2、かつ当該円相当径で50nm以上1μm以下のAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物の面積率が1%以下である。なお、本発明において円相当径とは、電子顕微鏡観察像で、Al−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物と同定される2次元形状と同じ面積に相当する円の直径を意味する。
さらに、本発明に係るアルミニウム合金複合材1は、図1(c)に示すように、心材2とろう材4との間に、心材2の厚さの5〜30%の厚さを有する、Mgを含有しないアルミニウム合金製の中間材5を設けた構成としてもよい(アルミニウム合金複合材1C)。
Feは、アルミニウム合金中で固溶したり、Al−Fe系金属間化合物の1μm以下の微細な分散粒子を形成したりして強度向上に寄与する。Feの含有量が0.03質量%未満では固溶による強度向上の効果が不十分である。一方、Feの含有量が0.3質量%を超える場合は、Feを含む金属間化合物、例えば、Al3Fe,Al12Si(Mn,Fe)3,Al12Fe3Si等の金属間化合物が増加するため、カソード反応が増大し、皮材3の耐孔食性が低下する結果、皮材3の心材2に対する犠牲防食効果が低下する。従って、皮材3のFeの含有量は0.03〜0.3質量%とする。より好ましくは、0.05〜0.2質量%である。
Mnは、アルミニウム合金中で固溶したり、Al−Mn系金属間化合物の1μm以下の微細な分散粒子を形成したりして強度向上に寄与する。Mnの含有量が0.4質量%未満では固溶による強度向上の効果が不十分である。一方、Mnの含有量が2.0質量%を超える場合にはAl−Mn系(Al−Mn−Si系、Al−(Mn,Fe)−Si系等も含む。)の金属間化合物が増加するためカソード反応が増大し、皮材3の耐孔食性が低下する結果、皮材3の心材2に対する犠牲防食効果が低下する。従って、皮材3のMnの含有量は0.4〜2.0質量%とする。より好ましくは、0.8〜1.5質量%である。
Siは、アルミニウム合金中で固溶することにより強度向上に寄与する。Siの含有量が0.4質量%未満では固溶による強度向上の効果が不十分である。一方、Siの含有量が2.0質量%を超える場合には、例えば、Al12SiMn,Al12Si(Mn,Fe)3等のAl−Mn系金属間化合物が増加するため、カソード反応が増大し、皮材3の耐孔食性が低下する結果、皮材3の心材2に対する犠牲防食効果が低下する。従って、皮材3のSiの含有量は0.4〜2.0質量%とする。より好ましくは、0.8〜1.5質量%である。
本発明で皮材3にZnを添加するのは、心材2に対して皮材3を電気化学的に卑として犠牲防食効果を付与するためである。耐孔食性に優れたアルミニウム合金複合材1を得るには、皮材3だけでなく、心材2の合金元素の含有量も規制する必要がある。このため、心材2にCuを添加する技術が一般的に用いられており、心材2にCuを0.2質量%以上添加することにより心材2の強度を向上させることができる。しかし、Cuは粒界腐食感受性を増大させるため、皮材2側の耐孔食性(心材2に対する犠牲防食効果)を低下させてしまうという問題点を有する。
Ceは、鋳造中の晶出物を微細にし、さらに、ろう付け時に過飽和に固溶した溶質元素の析出を促進するため、強度を向上させる作用を有すると共に、微細な析出物を数多く析出させるため、孔食ピットの発生起点が多くなり、面食の腐食形態となって巨大な孔食の発生を抑制する作用があるが、その含有量が0.01質量%未満では前記した効果が得られず、一方、0.7質量%を超えると加工性が低下するので好ましくない。従って、皮材3のCeの含有量は0.01〜0.7質量%とする。より好ましくは、0.05〜0.5質量%である。
Cuは、心材2の強度向上を目的として心材2に添加される合金元素であるが、心材2およびろう材4をクラッドする際またはろう付け時に皮材3中に拡散することで、皮材3中に固溶したり、金属間化合物を形成したりして含有される(なお、拡散したCuの量が少ないとすべて固溶し、金属間化合物を形成しないことがある)。
本発明に係るアルミニウム合金複合材1の皮材3には、不可避的不純物として、例えば、Cr,Ti,Zr,B等が含有されている。このような不可避的不純物を、例えば、Crを0.1質量%以下、Tiを0.2質量%以下、Zrを0.2質量%以下、Bを0.1質量%以下(いずれも0質量%を超える)等の範囲で含有していても、本発明の効果を妨げるものではない。従って、このような不可避的不純物の含有は許容される。
なお、皮材3においては、このような不可避的不純物の含有量は合計で0.4質量%まで許容できる。
(円相当径で50nm以上1μm以下のAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物の数密度が10〜150個/100μm2)
Al−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物は、アルミニウム合金中においてカソードサイドとして作用するため、その周囲近傍の母材が優先的にアノード溶解し、孔食が発生する。このような腐食の起点となるAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物は、皮材3の断面や表面における最大サイズが大きかったり、個数が少なかったりするとアノード溶解は、Al−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物の周囲近傍に集中し、急激に腐食進展した結果、穴あき(裏側への貫通孔の形成)に至ってしまう。そのため、Al−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物を微細かつ多数存在させることが望ましい。
従って、本発明における皮材3の断面のAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物の最大サイズは、円相当径で50nm以上1μm以下、より好ましくは100nm以上500nm以下であり、数密度は、10〜150個/100μm2、より好ましくは20〜100個/100μm2である。
なお、皮材3の断面のAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物の最大サイズや数密度は、例えば、皮材3の断面を研磨して露出させた断面を電子顕微鏡で撮像して得た電子顕微鏡観察像で確認することができる。
皮材3の腐食は、カソードサイトとなる皮材3の表面に存在するAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物の面積率により大きな影響を受ける。Al−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物の面積率の増加とともにカソード反応量(カソード電流密度)が増大するので、皮材3の腐食量が増大し、心材2に対する犠牲防食効果が大きく低下する。従って、皮材3の断面のAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物は、前記した円相当径で50nm以上1μm以下のAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物を合計した面積率を1%以下とする。
以上より、初期腐食のカソード反応性を抑制する観点から、皮材3の断面におけるAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物の面積率を1%以下とすることが特に重要である。
本発明に係るアルミニウム合金複合材1の皮材3と組み合わせるアルミニウム合金製の心材2としては、Mgを0.1〜1.0質量%、Siを0.3〜2.0質量%、Mnを0.3〜2.0質量%、Cuを0.3〜2.0質量%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物であるアルミニウム合金板を好適に用いることができる。また、Mgを0.1〜1.0質量%、Cuを0.3〜2.0質量%、Siを0.3〜2.0質量%含有し、さらにCrを0.05〜0.3質量%、Tiを0.05〜0.3質量%のうちの少なくとも一方を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金板などを用いることができる。
(Mgを含有しないAl合金製の中間材・厚さ:心材の厚さの5〜30%)
心材2とろう材4との間に中間材5を設ける場合には、これによって心材2から皮材3へMgが拡散するのを防止することができるため、心材2にMgを添加して強度を向上させることも可能である。このときの心材2のMgの含有量は、前記したように0.1〜1.0質量%とするのが好ましい。
なお、Mgは、アルミニウム合金の強度向上に寄与するが、ろう付け性を低下させるという問題点を有する。すなわち、心材2にMgを添加した場合、製造プロセス中の熱処理やろう付け等の際にMgがろう材4にまで拡散し、ろう付け性を低下させることとなる。
そこで、心材2にMgを添加する場合、心材2とろう材4との間にMgを含有しないアルミニウム合金製の中間材5を設けることにより、ろう材4に拡散するMgの量を低下させ、ろう付け性を損なうことなく心材2の強度を向上させることができる。
Siは、心材2の強度を向上させる元素であり、特にSi−Mn系析出物により、心材2の強度が向上する。しかし、Siの含有量が0.3質量%未満の場合、心材2の強度を向上させるには不十分である。一方、Siの含有量が2.0質量%を超えると心材2の融点を低下させ、ろう付け時に心材2の溶融が生じる。従って、心材2のSiの含有量は0.3〜2.0質量%とする。より好ましくは、0.5〜1.2質量%である。
Mnは、心材2の強度および耐孔食性を向上させる元素である。しかし、Mnの含有量が0.3質量%未満の場合、十分に心材2の強度を向上させることができない。また、Mnの含有量が2.0質量%を超えると粗大晶出物が晶出し、加工性が低下する。従って、心材2のMnの含有量は0.3〜2.0質量%とする。より好ましくは、0.6〜1.7質量%である。
Cuは、心材2の強度を向上させる元素である。しかし、心材2にCuを添加すると粒界腐食感受性を増大させてしまい、皮材3の耐孔食性を低下させてしまう。そのため、皮材3にZnを添加させ、皮材3の電位を心材2および粒界に対して卑にすることで粒界腐食を防止することができる。しかし、心材2のCuを2.0質量%を超えて添加すると、心材2の融点が低下しろう付け時に心材2が溶融してしまう。従って、心材2のCuの含有量は0.3〜2.0質量%とする。より好ましくは0.6〜1.1質量%である。
Crは、均質化熱処理時およびその後の熱間鍛造時に、Al12Mg2Cr,Al−Cr系などの分散粒子を形成する。これらの分散粒子は再結晶後の粒界移動を妨げる効果があるため、微細な結晶粒を得ることができる。この結晶粒の微細化は、破壊靱性や疲労強度などの向上効果が大きい。Crの含有量が0.05質量%未満であると、これらの効果が期待できず、Crの含有量が0.3質量%を超えると、溶解、鋳造時に粗大な金属間化合物や晶析出物を生成しやすく、破壊の起点となり、靱性や疲労特性を低下させる原因となる。従って、心材2のCrの含有量は0.05〜0.3質量%とする。より好ましくは0.05〜0.2質量%である。
Tiは、鋳塊の結晶粒を微細化し、押出、圧延、鍛造時の加工性を向上させるために添加する。Tiの含有量が0.05質量%未満では、加工性向上の効果が得られず、Tiの含有量が0.3質量%を超えると粗大な晶析出物を形成し、加工性を低下させる。従って、心材2のTiの含有量は0.05〜0.3質量%とする。より好ましくは0.05〜0.25質量%である。
本発明に係るアルミニウム合金複合材1のろう材4は、Al−Si系合金製のろう材など、公知のろう材を適宜選択して使用することができる。Al−Si系合金製のろう材としては、例えば、Siを7〜12質量%含有するアルミニウム合金のろう材を使用することができる。
アルミニウム合金複合材1に用いる皮材3は、皮材3のMnの含有量とFeの含有量との和が0.6質量%未満(Mn+Fe<0.6質量%)の場合には、例えば、(A)680〜760℃の鋳造温度にて鋳塊を鋳造後、530〜590℃で1時間以上均質化処理し、500℃までの冷却を0.17〜0.83℃/分で行うことで、皮材3の断面(表面)のAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物を、本発明の特許請求の範囲に記載したサイズ(円相当径)、数密度(個数/100μm2)および面積率とすることができる。
以上の製造方法は、皮材3を得るための一例であり、必ずしもこの方法に限定されるものでない。
そして、所定の板厚の皮材3を、前記した(A)または(B)の制御方法で鋳造し、均質化処理し、所定の冷却速度で所定の温度まで冷却した後、熱間圧延することにより製造する。
また、所定の板厚のろう材4を通常行われる条件で鋳造し、均質化処理し、熱間圧延することにより製造する。
このようにして製造した心材2、皮材3、ろう材4を組み合わせ、400〜540℃の温度で熱間圧延を行ってクラッド材を得る。その後、冷間圧延し、必要に応じて熱処理を行うことで、所望する板厚のアルミニウム合金複合材1を製造することができる。
すなわち、皮材3の断面のAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物のサイズ(円相当径)については、Mn,Cuを含む金属間化合物(つまり、Al−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物)であると判定した析出物について、まずその面積Aを求め、下記の数式に従って円相当径dを求めることで評価することができる。なお、皮材3の断面にはAl−Si系金属間化合物が存在する場合があっても構わない。
なお、これらの金属間化合物の面積、個数のカウントについては、市販のグラフソフトや画像解析ソフト等を利用して評価することもできる。
次に、本発明に係るアルミニウム合金複合材1を用いて形成される熱交換器について、自動車用ラジエータのチューブに用いる場合を例に適宜図面を参照しながら説明する。図2は、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金複合材を用いたラジエータの一部を示す断面図である。
チューブ11、放熱フィン12およびヘッダ13のろう付けは、例えば、次のようにして行うことができる。すなわち、図2に示すように配置されたチューブ11、放熱フィン12およびヘッダ13に対してノコロック用フラックスをスプレー塗布し、乾燥させた後、露点−40℃、酸素濃度300ppmで600℃の窒素雰囲気下において5分間加熱することにより、チューブ11、放熱フィン12およびヘッダ13間の接続部においてフィレットを形成させてろう付けすることができる。
なお、表1に示す皮材の素材は、実施例や比較例のMnの含有量とFeの含有量との和によって下記の製造条件で製造した。
つまり、Mnの含有量とFeの含有量との和が0.6質量%未満(Mn+Fe<0.6質量%)である実施例2、5、18、比較例9〜11、17の皮材の素材は、700℃の鋳造温度にて鋳塊を鋳造後、550℃で75分間均質化処理し、500℃までの冷却を0.5℃/分で行った後、熱間圧延を行って製造した。
また、Mnの含有量とFeの含有量との和が0.6質量%以上(Mn+Fe≧0.6質量%)である実施例1、3、4、6〜8、12〜15、19〜21、23、24、26、27、29、比較例16、22、25、28、30の皮材の素材は、720℃の鋳造温度にて鋳塊を鋳造後、500℃で2時間均質化処理し、420℃までの冷却を0.50℃/分で行った後、熱間圧延を行って製造した。
ろう材の素材は、700℃の鋳造温度にて鋳塊を鋳造後、熱間圧延を行って板材とした。
実施例、参考例および比較例のアルミニウム合金複合材を、ろう付けの条件に相当する600℃で5分間加熱した後、冷却水模擬液としてのOY水(Cl−:195質量ppm、SO4 2−:60質量ppm、Cu2+:1質量ppm、Fe3+:30質量ppm、pH:3.0)に浸漬し、88℃で8時間保持(室温から88℃への加熱時間を含む)した後、室温で16時間保持(88℃から室温への自然冷却時間を含む)するサイクルの浸漬試験を1ヶ月間行い、試験後の皮材側の腐食深さ(最大腐食深さ)を評価した。この結果を表1および表2に示す。
最大腐食深さが皮材の厚さ未満(40μm未満)であるものを良好(○)と評価し、皮材の厚さ以上(40μm以上)であるものを良好でない(×)と評価した。表2の参考例31〜42では、いずれも、心材としてMgを0.5質量%、Siを1.0質量%、Mnを1.0質量%、Cuを1.0質量%含有するアルミ合金材を用いた。
前記した浸漬試験の後に、浸漬試験で用いた実施例、参考例および比較例のアルミニウム合金複合材について、走査型電子顕微鏡(SEM)により皮材の圧延方向と直交する方向における垂直な断面(以下、単に「皮材の断面」ということもある。)を、皮材の厚さの1/2の位置を視野の中心とし、Al−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物の分布状態(最大サイズ(円相当径)、数密度および面積率)を評価した。この結果を表1および表2に示す。
(2)それぞれの試験片において1点ずつ、皮材の圧延方向と直交する方向における垂直な断面を、皮材の厚さの1/2の位置を視野の中心として走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM−T330)にて10000倍で観察し、SEM観察像の撮影およびSEM観察像視野内のAl,Mn,Cuの分布をエネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製、EMAX−5770W)(EDX)でマッピングした。
(3)それぞれのSEM観察像およびマッピング結果を用いて、析出物がMn,Cuを含む金属間化合物(Al−Mn系、およびAl−Cu系金属間化合物)か否かを判定した。
(4)Mn,Cuを含む金属間化合物のSEM観察像視野内(10μm×10μm)の円相当径、個数およびそれらの占める面積率を評価した。
また、Al−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物の個数が100μm2あたり10〜150個であるものを良好(○)と評価し、20〜100個であるものを特に良好(◎)と評価し、10個未満または150個を超えるものを良好でない(×)と評価した。
Al−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物の面積率が1%以下であるものを良好(○)と評価し、1%を超えるものを良好でない(×)と評価した。
表2に示す4層のアルミニウム合金複合材(図1(c)参照)については、ろう付け処理後のろう材表面のMgの含有量も測定した。
ろう材表面のMgの含有量が0.1質量%を超えるとろう付け性は急激に低下するので、ろう付け処理後のろう材表面のMgの含有量が0.1質量%以下であるものを良好(○)と評価し、0.1質量%を超えるものを良好でない(×)と評価した。
表1および表2に示すように、実施例および参考例は、腐食深さ(皮材の耐孔食性)、皮材の断面のAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物(表1、表2において「金属間化合物」と表示)の最大サイズ(nm)、数密度(個数/μm2)、面積率(%)およびろう材表面のMgの含有量のいずれにおいても評価が良好(○)または特に良好(◎)であり、耐孔食性に優れたアルミニウム合金複合材であった。なお、強度については、従来と変わらない強度が得られている。
以上より、皮材のアルミニウム合金の合金元素の含有量だけではなく、Mnの含有量とFeの含有量の比も耐孔食性に優れたアルミニウム合金複合材を得る上で重要であることがわかる。
2 心材
3 皮材
4 ろう材
5 中間材(Mgを含有しないアルミニウム合金板)
10 ラジエータ(熱交換器)
Claims (3)
- アルミニウム合金製の心材の少なくとも一側面に、アルミニウム合金製の皮材が形成されたアルミニウム合金複合材において、
前記皮材は、Feを0.03〜0.3質量%、Mnを0.4〜2.0質量%、Siを0.4〜2.0質量%、Znを2.0〜10.0質量%、Ceを0.01〜0.7質量%、Cuを0質量%を超え0.5質量%以下で含有し、残部がAlおよび不可避的不純物であり、
前記皮材のMnの含有量とFeの含有量の比(Fe/Mn)が0.4未満であり、
前記皮材に析出したAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物は、
前記皮材の断面の電子顕微鏡観察像による最大サイズが円相当径で50nm以上1μm以下であり、
前記円相当径で50nm以上1μm以下のAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物の数密度が10〜150個/100μm2、かつ
前記円相当径で50nm以上1μm以下のAl−Mn系およびAl−Cu系金属間化合物の面積率が1%以下
であることを特徴とするアルミニウム合金複合材。 - アルミニウム合金製の心材の一側面に、請求項1に記載の皮材が形成され、前記心材の他側面にAl−Si系合金製のろう材を備えたことを特徴とするアルミニウム合金複合材。
- 請求項2に記載のアルミニウム合金複合材を用いて形成されたことを特徴とする熱交換器。
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