JP2018022151A - 回折光学素子、光照射装置 - Google Patents
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Abstract
Description
また、光を整形する別の手段として、回折光学素子(Diffractive Optical Element :DOE)が挙げられる。これは異なる屈折率を持った材料が周期性を持って配列している場所を光が通過する際の回折現象を応用したものである。DOEは、基本的に単一波長の光に対して設計されるものであるが、理論的には、ほぼ任意の形状に光を整形することが可能である。また、前述のLSDにおいては、照射領域内の光強度がガウシアン分布となるのに対し、DOEでは、照射領域内の光分布の均一性を制御することが可能である。DOEのこのような特性は、不要な領域への照射を抑えることによる高効率化や、光源数の削減等による装置の小型化等の点で有利となる(例えば、特許文献1参照)。
また、DOEは、レーザーの様な平行光源や、LEDの様な拡散光源のいずれにも対応可能であり、また、紫外光から可視光、赤外線までの広い範囲の波長に対して適用可能である。
界面反射を回避するためには、例えば、誘電体多層膜のような反射防止膜を形成するという手法が考えられるが、一般的にコストアップにつながる場合が多かった。また、反射防止膜をDOEの微細形状に沿って均一に形成することが困難な場合が多かった。
しかし、DOEを実際に使用する場合には、設計に用いた拡散プロファイル通りの角度で光が入射するとは限らず、装置の組み付け精度や光源の性能ぶれ等の影響で入射角が変化することがある。従来のDOEでは、入射角が設計時の角度からずれると、回折光(出射光)の特性(例えば、配光特性)が大きく変化する傾向にあった。そのため、DOE及びDOEを備えた光照射装置の設計マージンが狭くなる傾向にあり、実用化が困難であったり、装置の高額化が懸念されたりしていた。
図1は、本発明による回折光学素子の第1実施形態を示す平面図である。
図2は、図1の回折光学素子の例における部分周期構造の一例を示す斜視図である。
図3は、図2中の矢印G−G’の位置で回折光学素子を切断した断面図である。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
また、本発明において透明とは、少なくとも利用する波長の光を透過するものをいう。例えば、仮に可視光を透過しないものであっても、赤外線を透過するものであれば、赤外線用途に用いる場合においては、透明として取り扱うものとする。
第1実施形態の回折光学素子10は、図1に示したA,B,C,Dのそれぞれの位置において深さが異なっている。すなわち、回折光学素子10は、4段階の高さの異なる多段階形状により構成されている。そして、回折光学素子10は、通常、異なる周期構造を持つ複数の領域(部分周期構造:例えば、図1のE,F領域)を有している。図2では、部分周期構造の一例を抽出して示している。
回折光学素子10は、図3に示すように、断面形状において複数の凸部11aが並んで配置されている高屈折率部11を備えている。この高屈折率部11は、同じ断面形状を維持したまま、断面の奥行き方向に延在している。
凸部11aは、側面形状の一方側(図4では、左側)に、高さの異なる4つの段部を備えた多段階形状を有している。具体的には、凸部11aは、最も突出したレベル1段部11a−1と、レベル1段部11a−1よりも一段低いレベル2段部11a−2と、レベル2段部11a−2よりもさらに一段低いレベル3段部11a−3と、レベル3段部11a−3よりもさらに一段低いレベル4段部11a−4とを一側面側に有している。
また、凸部11aの段部とは反対側(図4では、右側)の側面形状は、回折層15を含む平面Pに対して傾いた傾斜部を複数備えている。具体的には、凸部11aには、第1の傾斜部11bと、第2の傾斜部11cと、第3の傾斜部11dとが設けられている。
鋭角部11gは、隣り合うレベル2段部11a−2とレベル3段部11a−3との境界にあって、レベル2段部11a−2及びレベル3段部11a−3の幅よりも狭い幅で鋭角に低屈折率部14側へ向けて突出している。
鋭角部11hは、隣り合うレベル3段部11a−3とレベル4段部11a−4との境界にあって、レベル3段部11a−3及びレベル4段部11a−4の幅よりも狭い幅で鋭角に低屈折率部14側へ向けて突出している。
鋭角部11iは、隣り合うレベル3段部11a−3とレベル4段部11a−4との境界にあって、レベル3段部11a−3及びレベル4段部11a−4の幅よりも狭い幅で鋭角に低屈折率部14側から高屈折率部11側へ向けて窪んで形成されている。
稜線11jは、レベル3段部11a−3と鋭角部11iとの間の稜線であり、稜線の角が丸められて、角を持たずに傾斜した形態となっている。この稜線11jについては、近くに鋭角部11hが形成されているために、レベル3段部11a−3と鋭角部11hとの間の稜線とも捉えることができるが、鋭角部11hは、追加的に設けられているものであるので、この鋭角部11hを考慮せずに、レベル3段部11a−3と鋭角部11iとの間の稜線を丸めた形状として捉えるべきものである。
稜線11kは、レベル4段部11a−4と鋭角部11iとの間の稜線であり、稜線の角が丸められて、角を持たずに傾斜した形態となっている。なお、この稜線11kについては、鋭角部11iが形成されていないと、そもそも角が存在せず、隅となる部分である。
これらの設計は、例えば厳密結合波解析(RCWA)アルゴリズムを用いたGratingMOD(Rsoft社製)や、反復フーリエ変換アルゴリズム(IFTA)を用いたVirtuallab(LightTrans社製)などの各種シミュレーションツールを用いて行うことができる。
また、凸部11aの高さは、650nm以上であることが望ましい。これは、波長780nm、屈折率1.6で計算した場合、2−levelでは650nm、4−levelでは975nm、8−levelでは1137nmの凸部11aの高さが必要になるからである。
また、凸部11aの段部側には、鋭角部11g、11h、11iと、角が丸められて角を持たない傾斜した面に構成された稜線11j及び稜線11kが設けられている。
このように、第1実施形態の回折光学素子10は、全体としてみると、従来の回折光学素子の形状と同様な多段階形状を備えているが、その断面形状を詳細にみると、様々な斜面や曲面を組み合わせて構成されている。
図5は、第2実施形態の回折光学素子20を図3と同様な断面で示した図である。
第2実施形態の回折光学素子20は、凸部21aの形状が第1実施形態の回折光学素子10と異なる他は、第1実施形態と同様な形態をしている。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
回折光学素子20は、凸部21aを有する高屈折率部21と、凹部12及び空間13を含む低屈折率部14とを備え、高屈折率部21及び低屈折率部14が交互に並んで配置された周期構造により、光を整形する作用を備える回折層25が構成されている。
図6は、凸部21aを拡大して示した図である。
凸部21aは、側面形状の一方側(図6では、左側)に、高さの異なる4つの段部を備えた多段階形状を有している。具体的には、凸部21aは、最も突出したレベル1段部21a−1と、レベル1段部21a−1よりも一段低いレベル2段部21a−2と、レベル2段部21a−2よりもさらに一段低いレベル3段部21a−3と、レベル3段部21a−3よりもさらに一段低いレベル4段部21a−4とを一側面側に有している。
また、凸部21aの段部とは反対側(図6では、右側)の側面形状は、回折層25を含む平面Pに対して傾いた傾斜部を複数備えている。具体的には、凸部21aには、第1の傾斜部21bと、第2の傾斜部21cと、第3の傾斜部21dとが設けられている。
鋭角部21gは、隣り合うレベル1段部21a−1とレベル2段部21a−2との境界の角部にあって、レベル1段部21a−1及びレベル2段部21a−2の幅よりも狭い幅で鋭角に低屈折率部14側へ向けて突出している。
鋭角部21hは、隣り合うレベル1段部21a−1とレベル2段部21a−2との境界の隅部にあって、レベル1段部21a−1及びレベル2段部21a−2の幅よりも狭い幅で鋭角に低屈折率部14側から高屈折率部11側へ向けて窪んで形成されている。
鋭角部21iは、隣り合うレベル2段部21a−2とレベル3段部21a−3との境界にあって、レベル2段部21a−2及びレベル3段部21a−3の幅よりも狭い幅で鋭角に低屈折率部14側から高屈折率部11側へ向けて窪んで形成されている。
図7は、第3実施形態の回折光学素子30を図3と同様な断面で示した図である。
第3実施形態の回折光学素子30は、凸部31aの形状が第1実施形態の回折光学素子10と異なる他は、第1実施形態と同様な形態をしている。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
回折光学素子30は、凸部31aを有する高屈折率部31と、凹部12及び空間13を含む低屈折率部14とを備え、高屈折率部31及び低屈折率部14が交互に並んで配置された周期構造により、光を整形する作用を備える回折層35が構成されている。
図8は、凸部31aを拡大して示した図である。
凸部31aは、側面形状の一方側(図8では、左側)に、高さの異なる4つの段部を備えた多段階形状を有している。具体的には、凸部31aは、最も突出したレベル1段部31a−1と、レベル1段部31a−1よりも一段低いレベル2段部31a−2と、レベル2段部31a−2よりもさらに一段低いレベル3段部31a−3と、レベル3段部31a−3よりもさらに一段低いレベル4段部31a−4とを一側面側に有している。
また、凸部31aの段部とは反対側(図8では、右側)の側面形状は、回折層35を含む平面Pに対して傾いた傾斜部を複数備えている。具体的には、凸部31aには、第1の傾斜部31bと、第2の傾斜部31cと、第3の傾斜部31dとが設けられている。
鋭角部31iは、隣り合うレベル3段部31a−3とレベル4段部31a−4との境界にあって、レベル3段部31a−3及びレベル4段部31a−4の幅よりも狭い幅で鋭角に低屈折率部14側から高屈折率部31側へ向けて窪んで形成されている。
稜線31jは、レベル3段部31a−3と鋭角部31iとの間の稜線であり、稜線の角が丸められて、角を持たずに傾斜した形態となっている。
稜線31kは、レベル4段部31a−4と鋭角部31iとの間の稜線であり、稜線の角が丸められて、角を持たずに傾斜した形態となっている。なお、この稜線31kについては、鋭角部31iが形成されていないと、そもそも角が存在せず、隅となる部分である。
図9は、第4実施形態の回折光学素子40を図3と同様な断面で示した図である。
第4実施形態の回折光学素子40は、凸部41aの形状が第1実施形態の回折光学素子10と異なる他は、第1実施形態と同様な形態をしている。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
回折光学素子40は、凸部41aを有する高屈折率部41と、凹部12及び空間13を含む低屈折率部14とを備え、高屈折率部41及び低屈折率部14が交互に並んで配置された周期構造により、光を整形する作用を備える回折層45が構成されている。
図10は、凸部41aを拡大して示した図である。
凸部41aは、側面形状の一方側(図10では、左側)に、高さの異なる4つの段部を備えた多段階形状を有している。具体的には、凸部41aは、最も突出したレベル1段部41a−1と、レベル1段部41a−1よりも一段低いレベル2段部41a−2と、レベル2段部41a−2よりもさらに一段低いレベル3段部41a−3と、レベル3段部41a−3よりもさらに一段低いレベル4段部41a−4とを一側面側に有している。
また、凸部41aの段部とは反対側(図10では、右側)の側面形状は、回折層45を含む平面Pに対して傾いた傾斜部を複数備えている。具体的には、凸部41aには、第1の傾斜部41bと、第2の傾斜部41cと、第3の傾斜部41dとが設けられている。
鋭角部41iは、隣り合うレベル3段部41a−3とレベル4段部41a−4との境界にあって、レベル3段部41a−3及びレベル4段部41a−4の幅よりも狭い幅で鋭角に低屈折率部14側から高屈折率部41側へ向けて窪んで形成されている。
次に、上記各実施形態の作用と効果について、比較例と比較しながら説明する。
各実施形態の回折光学素子の作用及び硬化を確認するために、本発明の構成を適用していない比較例を用意した。
図11は、比較例の回折光学素子を図3等と同様に示した断面図である。
比較例の回折光学素子50は、各実施形態の回折光学素子が備えている傾斜部を備えず、略完全な矩形形状を組み合わせた多段形状として構成されている。なお、比較例の回折光学素子50は、各実施形態の回折光学素子と同じく、波長が980nmの赤外レーザーに対して具体的には±50度に、幅が±3.3度で広がる光の帯が2本公差した十文字形状に光を広げるように設計されている。
第1実施形態の回折光学素子10から第4実施形態の回折光学素子40と、比較例の回折光学素子50の、合計4種類の回折光学素子に対して、図12に示すような状況で回折光の形状と反射光の確認を行った。
スクリーンSとしては、市販のコピー用紙を用いた。
赤外線カメラCAM1,CAM2は、980nmの波長を検出できるRadiant Zemax社のPrometricを用いた。赤外線カメラCAM1,CAM2には、ノイズを防ぐため可視光カットフィルターを取り付けて測定した。
光源Lは、波長980nmの赤外レーザーをDOE(回折光学素子10から回折光学素子40、及び比較例の回折光学素子50)に対し1度傾けて照射するように設定した。なお、この光源Lと、光源Lが発光する光が通過する位置に上記回折光学素子10〜40のいずれかが配置されることにより、光照射装置が構成されている。
この条件で、回折光学素子(DOE)の表面で反射する光、及び、スクリーンSに投影される光を、それぞれ赤外線カメラCAM1,CAM2で観察し、比較を行った。
また、赤外レーザーの入射角度を1±1度で変動させたときのスクリーン投影形状の変動についても確認した。その結果を表1に示す。
図13は、本発明の回折光学素子が比較例の回折光学素子よりも反射光が少なくなる理由を説明する図である。
図13では、断面形状の位置に合せて、見かけの屈折率の変化をグラフとして併記している。図13(a)は、比較例の回折光学素子50の場合であり、図13(b)は、第3実施形態の回折光学素子30の場合を示している。
図14は、入射角度の変化と回折光との関係を単純化して模式的に示した図である。
図14(a)は、比較例の回折光学素子50に設計位置である垂直方向からの光が入射したときの光の回折状態を示している。回折光学素子50に対して垂直に入射した光は、1次光として左右に均等に回折する。
図14(b)は、比較例の回折光学素子50に設計位置からずれた位置から光が入射したときの光の回折状態を示している。回折光学素子50に対し光が斜めから入射すると、この図14(b)のように、光の均等性が崩れてしまう。回折光学素子の光学設計は、通常は、図14(a)のような単純形状をベースになされているため、光の入射状態が変化してしまうと、回折光学素子全体としての光の回折状態が変化してしまう。
図14(c)は、第3実施形態の回折光学素子30に設計位置である垂直方向からの光が入射したときの光の回折状態を示している。断面形状の一部に傾斜部を設けた回折光学素子30でも、垂直に入射した光は、1次光として左右に均等に回折する。
図14(d)は、第3実施形態の回折光学素子30に設計位置からずれた位置から光が入射したときの光の回折状態を示している。断面形状の一部に傾斜部を設けた回折光学素子30では、光の入射方向が多少変動しても、光に対して垂直な面が必ず一部存在することになり、回折光の分布に影響を与えにくい。したがって、表1のように、投影形状の変化が少ないという結果が得られる。
なお、入射角度変動による投影形状の変化の少なさについて、第4実施形態の回折光学素子40が、比較例の回折光学素子50よりも良好な結果が得られているものの、他の実施形態よりも悪い結果が得られている。これは、第4実施形態の回折光学素子40が、他の実施形態よりも傾斜部が少なく、入射角度の影響を受ける部位が多いからである。
また、第1実施形態から第4実施形態の回折光学素子10,20,30,40によれば、凸部に傾斜部を備えたので、装置の組み付け精度や光源の性能ぶれ等の影響で入射角が変化することがあっても影響を受けにくく、回折光への影響が少なく安定して所望の回折光を得ることができる。
さらに、第1実施形態から第4実施形態の回折光学素子10,20,30,40によれば、鋭角部を備えたので、高次回折光が発生して、多段階形状の寸法のばらつきに起因して発生してしまう配光ムラを緩和することができる。
図17は、第5実施形態の回折光学素子70を図3と同様な断面で示した図である。
第5実施形態の回折光学素子70は、凸部71aの形状が第1実施形態の回折光学素子10と異なる他は、第1実施形態と同様な形態をしている。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
回折光学素子70は、凸部71aを有する高屈折率部71と、凹部12及び空間13を含む低屈折率部15とを備え、高屈折率部71及び低屈折率部15が交互に並んで配置された周期構造により、光を整形する作用を備える回折層55が構成されている。
図18は、第5実施形態の回折光学素子70を実際に作製したものを拡大した写真である。
図19は、凸部71aを拡大して示した図である。
凸部71aは、側面形状の一方側(図19では、左側)に、高さの異なる4つの段部を備えた多段階形状を有している。具体的には、凸部71aは、最も突出したレベル1段部71a−1と、レベル1段部71a−1よりも一段低いレベル2段部71a−2と、レベル2段部71a−2よりもさらに一段低いレベル3段部71a−3と、レベル3段部71a−3よりもさらに一段低いレベル4段部71a−4とを一側面側に有している。
また、凸部71aの段部とは反対側(図19では、右側)の側面形状は、凸部71aの内部方向(図19では左側)に向かって凹んだくびれ部分71bが設けられている。
さらに、レベル3段部71a−3とレベル4段部71a−4との境界の隅部分には、各段部の幅よりも狭い幅で断面形状が曲面状に窪んで形成された窪み部71cが設けられている。
さらに、各段部の隅部分には、隅R部(傾斜部)71d、71eが設けられている。
図20は、シミュレーション用に作成した第5実施形態の回折光学素子70を模した計算用モデルの形状を示す図である。
この形状と、図11に示した比較例の回折光学素子50の形状とで、回折効率の解析シミュレーションを行った。なお、図20中に示した回折光学素子70の深さDが、比較例の回折光学素子50のレベル4段部までの深さに相当する。
波長λ:850nm
高屈折率部の屈折率n:1.5
低屈折率部の屈折率:1.0
ピッチ:2000nm〜4000nm
多段階のレベル数P:4
なお、理想の溝深さは、ピッチによらず一定であり、以下の式により求めた値とした。
1段深さ=(P−1)/(P)×波長/(n−1)
P:レベル数
n:屈折率
本実施形態の回折光学素子70の条件は、上記条件に加えて、図20に示した形状の変更を行ったモデルを用いている。
また、くびれ部分71bのへこみ量は、ピッチの1.6%とし、窪み部71cのへこみ量は、ピッチの2.7%とした。
第5実施形態の回折光学素子70では、比較例の回折光学素子50と比べて、0次回折光強度が大きく低下しており、非常に良好な結果が得られている。この0次回折光強度を低下させる効果は、くびれ部分71b及び窪み部71cを設けることにより得られていると考えられる。
図22のシミュレーション用モデルは、図20のモデルからくびれ部分71bを除いて真っ直ぐな壁面として構成したものである。くびれ部分71bの回折効率への影響を調べるために、この図22に示したくびれ部分71bが形成されていないモデルを用いてシミュレーションを行った。
図23は、回折効率について、くびれ部分71bが形成されていない回折光学素子70Bのシミュレーション結果を、第5実施形態の回折光学素子70のシミュレーション結果と併せて示した図である。
第5実施形態の回折光学素子70では、くびれ部分71bが設けられていることから、特にピッチが2000nmから2600nm辺りにおいて、回折効率が高くなっている。よって、くびれ部分71bを設けることにより、特に狭いピッチにおける回折効率を上昇させることが可能である。
図24のシミュレーション用モデルは、図20のモデルから窪み部71cを除いて平坦面として構成したものである。窪み部71cの斜入射光に対する影響を調べるために、この図24に示した窪み部71cが形成されていないモデルを用いてシミュレーションを行った。
図25は、30°斜め入射における回折効率について、窪み部71cが形成されていない回折光学素子70Cのシミュレーション結果を、第5実施形態の回折光学素子70のシミュレーション結果と併せて示した図である。
第5実施形態の回折光学素子70では、窪み部71cが設けられていることから、特にピッチが2300nm以上の構成において、30°斜め入射における回折効率が高くなっている。よって、窪み部71cを設けることにより、特に広いピッチにおける斜め入射時の回折効率を上昇させることが可能である。
図26は、第6実施形態の回折光学素子80を図3と同様な断面で示した図である。
第6実施形態の回折光学素子80は、第5実施形態の回折光学素子70を型取り反転した形状となっている。
第6実施形態の回折光学素子80では、くびれ部分81bと、突出部81cとを備えている。
第6実施形態の回折光学素子80のように、第5実施形態の回折光学素子70を型取り反転した形状としても、第5実施形態の回折光学素子70と同様な効果を得ることが可能である。
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
図16A、図16B、図16Cは、回折光学素子の変形形態として、透明基材を設けている例、及び、被覆層を設けている例を示す図である。
図16Aでは、透明基材61の上に、第1実施形態で示した回折光学素子10が形成されており、この全体が回折光学素子として構成されている。このように、透明基材61を設けることにより、樹脂賦型を利用した製造方法を用いることができ、製造を容易に行える。
図16Bでは、図16Aの形態に加えて、被覆層62をそのまま積層した形態とし、この全体が回折光学素子として構成されている。このような形態とすることにより、被覆層62を設けたことにより、凸形状を保護することができる。
図16Cでは、図16Aの形態に加えて、凹部にまで入り込む透明樹脂により被覆層63を形成し、この全体が回折光学素子として構成されている。この場合、被覆層63を形成する透明樹脂は、低屈折率部とするために、高屈折率部よりも屈折率の低い樹脂を用いる。このような形態とすることにより、凸形状をより効果的に保護することができる。
11 高屈折率部
11a 凸部
11a−1 レベル1段部
11a−2 レベル2段部
11a−3 レベル3段部
11a−4 レベル4段部
11b 第1の傾斜部
11c 第2の傾斜部
11d 第3の傾斜部
11e 先端部
11f 根元部
11g 鋭角部
11h 鋭角部
11i 鋭角部
11j 稜線
11k 稜線
11m 壁部
11n 壁部
11o 壁部
12 凹部
13 空間
14 低屈折率部
15 回折層
20 回折光学素子
21 高屈折率部
21a 凸部
21a−1 レベル1段部
21a−2 レベル2段部
21a−3 レベル3段部
21a−4 レベル4段部
21b 第1の傾斜部
21c 第2の傾斜部
21d 第3の傾斜部
21e 先端部
21f 根元部
21g 鋭角部
21h 鋭角部
21i 鋭角部
21j 先端部
21m 壁部
21n 壁部
21o 壁部
25 回折層
30 回折光学素子
31 高屈折率部
31a 凸部
31a−1 レベル1段部
31a−2 レベル2段部
31a−3 レベル3段部
31a−4 レベル4段部
31b 第1の傾斜部
31c 第2の傾斜部
31d 第3の傾斜部
31e 先端部
31f 根元部
31i 鋭角部
31j 稜線
31k 稜線
31m 壁部
31n 壁部
31o 壁部
35 回折層
40 回折光学素子
41 高屈折率部
41a 凸部
41a−1 レベル1段部
41a−2 レベル2段部
41a−3 レベル3段部
41a−4 レベル4段部
41b 第1の傾斜部
41c 第2の傾斜部
41d 第3の傾斜部
41e 先端部
41f 根元部
41i 鋭角部
41k 稜線
41m 壁部
41n 壁部
41o 壁部
45 回折層
50 回折光学素子
61 透明基材
62 被覆層
63 被覆層
70 回折光学素子
71b くびれ部分
71c 窪み部
80 回折光学素子
81b くびれ部分
81c 窪み部
200 スクリーン
201 光
202 照射領域
204 照射領域
CAM1 赤外線カメラ
CAM2 赤外線カメラ
L 光源
P 平面
S スクリーン
Claims (18)
- 光を整形する回折光学素子であって、
断面形状において複数の凸部が並んで配置されている高屈折率部と、
前記高屈折率部よりも屈折率が低く、少なくとも前記凸部の間に形成されている凹部を含む低屈折率部と、
を有する回折層を備え、
前記凸部は、その側面形状の少なくとも一方側に、高さの異なる複数の段部を備えた多段階形状を有しており、
前記凸部の側面形状は、前記回折層を含む平面に対して傾いた傾斜部を少なくとも一部に備える回折光学素子。 - 請求項1に記載の回折光学素子において、
前記凸部の側面形状は、前記凸部の先端部から根元部に向かって前記凸部の幅が広がる向きに傾斜した第1の傾斜部を備えること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項2に記載の回折光学素子において、
前記第1の傾斜部から前記根元部に向かって前記回折層に垂直な向きに延在する垂直部を備えること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項2に記載の回折光学素子において、
前記第1の傾斜部から前記根元部に向かって前記凸部の幅が狭くなる向きに傾斜した第2の傾斜部と、
前記第2の傾斜部からさらに前記根元部に向かって前記凸部の幅が広がる向きに傾斜した第3の傾斜部と、
を備えること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項4に記載の回折光学素子において、
前記第2の傾斜部と前記第3の傾斜部とが繋がるくびれ部分の幅は、1つの段部の幅としてみたときに、当該段部の頂部の幅よりも広いこと、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項1に記載の回折光学素子において、
前記凸部の側面形状は、一部が前記凸部の内部方向に向かって凹んだくびれ部分を備えること、
を特徴とする回折光学素子。 - 光を整形する回折光学素子であって、
断面形状において複数の凸部が並んで配置されている高屈折率部と、
前記高屈折率部よりも屈折率が低く、少なくとも前記凸部の間に形成されている凹部を含む低屈折率部と、
を有する回折層を備え、
前記凸部は、その側面形状の少なくとも一方側に、高さの異なる複数の段部を備えた多段階形状を有しており、
前記凸部の側面形状は、一部が前記凸部の内部方向に向かって凹んだくびれ部分を備える
回折光学素子。 - 請求項6又は請求項7に記載の回折光学素子において、
前記くびれ部分の幅は、1つの段部の幅としてみたときに、当該段部の頂部の幅の1/2以上あること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の回折光学素子において、
前記多段階形状の稜線の少なくとも1つは、角を持たずに傾斜していること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の回折光学素子において、
前記多段階形状の隣り合う段部の境界の少なくとも1つに、各段部の幅よりも狭い幅で断面形状が鋭角に突出、又は、断面形状が鋭角に窪んで形成された鋭角部を備えること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の回折光学素子において、
前記多段階形状の隣り合う段部の境界の少なくとも1つに、各段部の幅よりも狭い幅で断面形状が曲面状に突出した突出部、又は、断面形状が曲面状に窪んで形成された窪み部を備えること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の回折光学素子において、
前記高屈折率部は、電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化したものであること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の回折光学素子において、
前記低屈折率部は、空気であること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の回折光学素子において、
透明基材と、前記回折層と、前記回折層を被覆する被覆層とが、この順番で積層されていること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載の回折光学素子において、
前記回折層は、波長780nm以上の赤外線を回折すること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項15に記載の回折光学素子において、
前記凸部の高さは650nm以上であること、
を特徴とする回折光学素子。 - 光源と、
前記光源が発光する光が通過する位置に少なくとも1つ配置された、請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載の回折光学素子と、
を備える光照射装置。 - 請求項17に記載の光照射装置において、
前記光源は、波長780nm以上の赤外線を発光できること、
を特徴とする光照射装置。
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