JP7196406B2 - 回折光学素子 - Google Patents
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Description
また、光を整形する別の手段として、回折光学素子(Diffractive Optical Element :DOE)が挙げられる。これは異なる屈折率を持った材料が周期性を持って配列している場所を光が通過する際の回折現象を応用したものである。DOEは、基本的に単一波長の光に対して設計されるものであるが、理論的には、ほぼ任意の形状に光を整形することが可能である。また、前述のLSDにおいては、照射領域内の光強度がガウシアン分布となるのに対し、DOEでは、照射領域内の光分布の均一性を制御することが可能である。DOEのこのような特性は、不要な領域への照射を抑えることによる高効率化や、光源数の削減等による装置の小型化等の点で有利となる(例えば、特許文献1参照)。
また、DOEは、レーザの様な平行光源や、LEDの様な拡散光源のいずれにも対応可能であり、また、紫外光から可視光、赤外線までの広い範囲の波長に対して適用可能である。
ピッチに対するx座標の比率をSとして、
x’=0.5×f×lv2+C×lv
S=P/{tw+Σx’i}
Σは、i=0~L-1
としたときに階段形状の頂部x,y座標が、
x=0.5×f×lv2+C×lv
y=lv×h
で表されること、を特徴とする回折光学素子(10)である。
図1Aは、シート面の法線方向から見た回折格子の凹凸形状が、凸部と凹部との境界が曲線を含む規則的又は不規則なパターンに形成される回折光学素子の例を示す平面図である。
本実施形態では、1例として、図1Aに示すような一見不規則に見える凹凸形状のパターンを有する回折光学素子に適用することができる。以下の説明では、この図1Aに示すタイプの回折光学素子を、不規則型とも呼ぶこととする。ただし、この不規則なパターンは、回折光学素子の狙いの出射パターンによっては、規則的なパターンとなる場合もあるので、不規則型との呼び方は便宜上の呼び名であって、不規則に限定するものではない。また、図1Aでは、不規則型のパターンは、曲線により構成されているが、回折光学素子の狙いの出射パターンによっては、直線、又は、曲線からなる線分を繋げた折れ線となっているパターンを含む場合もある。したがって、不規則型の回折格子のパターンは、高屈折率部(後述)の凹凸形状が形成された面の法線方向から見て凸部と凹部との境界が曲線と複数の線分を繋げた折れ線との少なくとも一方を含む。
本実施形態では、他の例として、図1Bに示すように、同一の凹凸形状が並べて配置された単位セルが複数タイリングされた格子状のパターンに形成される回折光学素子に適用することができる。以下の説明では、この図1Bに示すタイプの回折光学素子を、グレーティングセルアレイ(Grating Cell Array)型、又は、GCA型とも呼ぶこととする。グレーティングセルアレイ型の回折光学素子では、単位セル毎に回折格子により回折される光の向き及び角度が異なっており、多数の単位セルがタイリングされることにより、所望の光学特性を得られる回折光学素子が構成されている。すなわち、グレーティングセルアレイ型の回折光学素子では、高屈折率部は、凹凸形状が形成された面の法線方向から見て、格子状に区画されており、その区画内に特定の方向に延在する同一形状の凸部が前記特定の延在方向と直交する方向に並んで配置されており、区画毎に凸部の幅及び延在方向が異なっている。
図2Bは、図1Bに示したGCA型の回折光学素子の例における部分周期構造の一例を示す斜視図である。
図3は、図2A中の矢印G-G’の位置で回折光学素子を切断した断面図である。
以下の説明では、GCA型に特有の断面形状の捉え方が必要であることから、主に不規則型を例に挙げて説明を進める。ただし、GCA型についても、図1A中に示した矢印G-G’の位置で切断すれば、同様な断面形状となり、上述したように、本発明は同様に適用可能である。
図4は、回折光学素子を説明する図である。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
なお、光源部210と、光源部210が発光する光が通過する位置に少なくとも1つ配置された、本実施形態の回折光学素子10とを組み合わせることにより、光を整形した状態で照射可能な光照射装置とすることができる。
また、本発明において透明とは、少なくとも利用する波長の光を透過するものをいう。例えば、仮に可視光を透過しないものであっても、赤外線を透過するものであれば、赤外線用途に用いる場合においては、透明として取り扱うものとする。
本実施形態の回折光学素子10は、図1A,図1Bに示したA,B,C,Dのそれぞれの位置において深さが異なっている。すなわち、回折光学素子10は、4段階の高さの異なる多段階形状により構成されている。そして、回折光学素子10は、通常、異なる周期構造を持つ複数の領域(部分周期構造:例えば、図1A,図1BのE,F領域)を有している。図2A,図2Bでは、部分周期構造の一例を抽出して示している。
回折光学素子10は、図3に示すように、断面形状において複数の凸部11aが並んで配置されている高屈折率部11を備えている。GCA型の回折光学素子では、この高屈折率部11は、同じ断面形状を維持したまま、断面の奥行き方向に延在している。一方、不規則型の回折光学素子では、断面位置が変れば断面形状が変化し、様々な断面形状の回折格子が多数配列されている形態となる。なお、不規則型においては、回折格子の形状を特定するための断面、すなわち、回折光の回折現象に影響を与える回折格子の具体的な形状を特定するための断面構造は、シート面の法線方向から見たときの凸部と凹部との境界が描く線(曲線、又は、直線)に直交する方向に切断する断面における断面構造とすることが必要である。
図6Aは、本実施形態の回折光学素子10を従来の形態と比較して示した図である。図6A(a)は、図6A(b)中の矢印H-Hの位置で従来の回折光学素子を切断した断面を示している。図6A(b)は、従来の回折光学素子をシート面の法線方向から見た平面図である。図6A(c)は、本実施形態の回折光学素子10をシート面の法線方向から見た平面図である。図6A(d)は、図6A(b)と図6A(c)とを重ねて示した図である。
従来の回折光学素子では、図5中に二点鎖線で示したように、各段部の一段当りの深さ(高さ)が一定であって、また、幅も一定になっていた。したがって、図5に示す断面において、従来の回折光学素子の各段部の角部分を結んだ斜面L0は、平面(断面では直線)となっていた。
これに対して、本実施形態の回折光学素子10では、各段部の角部分を結んだ斜面Lは、凸部11aへ向かって凹んだ凹状曲面(断面では凹状曲線)となっている。上述の凹状曲面を模すためには、各段部の深さ(高さ)を変えてもよいし、各段部の幅を変えてもよく、これらの両方を組み合わせてもよい。しかし、エッチング処理によって段部を製造する製造方法を考慮すると、最も簡単に製造を行えるのは、各段部の幅を変える方法である。
そこで、本実施形態の回折光学素子10は、上述の凹状曲面を模すために、各段部の幅を、凹部の深さが浅くなるにしたがい、徐々に狭くしている。よって、図5及び図6に示すように、凸部11aの幅も、全体に狭くなっている。
この場合、図5に示した断面構造を、例えば、図6A(a)のようにして切断した断面で検討してしまうと、各段の幅が切断位置の影響を受けて本来の断面構造として検討すべき幅よりも広くなったり、狭くなったりしてしまい、正しい検討が行えない。
図6Bは、図6Aの図に本来の設計パターンの曲線を重ねて示した図である。図6B(b)は、図6A(b)上に理想設計パターンの曲線を重ねた図であり、図6B(c)は、図6A(c)上に理想設計パターンの曲線と本実施形態の設計パターンの曲線とを重ねた図である。なお、図6B(c)上で実線は、理想設計パターンの曲線であり、破線は、本実施形態の設計パターンの曲線である。
図6Bには、各段部の幅が、凹部の深さが浅くなるにしたがい、徐々に狭くなっている様子が明確に示されている。このように、実際に作製された回折光学素子において、各段部の幅を検討する場合には、図6Bのように頂点を結ぶ曲線により設計上の曲線を得て、その曲線に直交する方向の断面形状や、幅寸法で検討することが重要である。
図7は、8レベルの多段階形状を有する回折光学素子10を示す図である。
このように段数を多くすると、凹状曲面を模す精度が高くなる。
図8は、凹状曲面の断面における曲線と、多段階形状を説明する図である。
図8に示す様なx-y直交座標を設ける。すなわち、凸部11aが並ぶ方向にx軸を設定し、斜面が高くなっていく向きをx軸のプラスの向きとし、回折光学素子10のシート面に直交するy軸を設定し、凸部11aの突出する向きをy軸のプラスの向きとして設定する。
凸部11aの先端を含んで計数した段部の総段数をLとする。また、レベルごとの幅の減少率をfとする。さらに、凹部の最も低い位置を0として係数したときの対象の段部の段数をlvとし、各段部の一段当りの高さをhで一定値とし、レベルゼロの幅比率をCと定義する。そうすると、多段階形状により模す凹状曲面の断面における曲線(レベルゼロの凹頂点と各凸部の頂点の軌跡となる曲線)は、以下の式で表される。
ピッチに対するx座標の比率をSとして、
x’=0.5×f×lv2+C×lv
S=P/{tw+Σx’i}
Σは、i=0~L-1
としたときに階段形状の頂部x,y座標が次のように表される。
x=S×(0.5×f×lv2+C×lv)
y=lv×h
なお、多段形状のレベル数をn、最上位レベルの幅をtwとしたときに、ピッチは、
0.5×f×(n-1)2+C×(n-1)+tw
を正規化したものである。
また、レベルゼロの幅比率Cとは、凹部の最も低い位置であるレベルゼロの幅が従来の各段部の幅が一定である場合における一段当りの幅に対する比率を示している。
ここで、各段部の一段当りの高さをhについては、理論値htに対して、h=ht×1.05~h=ht×1.15とすると良好な結果が得られる。なお、理論値ht=波長/{level数(屈折率-1)}である。
di=C+i×f
ただし、iは、0~6の整数である。
ここで、f<0である。
-20≦C/f≦-6であり、
望ましくは、
-16≦C/f≦-10.5
-0.0275≦f≦-0.0125
としたときに、
0.13≦C≦0.4
であり、Cがこの範囲である場合、望ましくは、
-0.0225≦f≦-0.0125
である。
最も深い面であるゼロレベルの幅に対し、最上位の幅の比率をtとしたときに、
0.5≦t≦0.9
であり、
0.6≦t≦0.8
が望ましい。
図9は、8レベルの断面形状の具体例を示す図である。図9中の下方に併記した表には、x’、yの値を併記した。このx’は、階段構造の断面を見たときの頂部の横方向位置を示し、yは、縦方向位置を示しており、図9にグラフとして示した断面形状(階段構造)の座標データ(頂点座標)である。なお、以下の図においても、グラフと共に併記した表中の値は、グラフ中の座標データを示すものである。
図9の例では、波長850nm,ピッチ=3284nm(回折角15°),8レベル,f=-0.02,C=0.25,t=0.8,h=850/8*1.1*(n-1),n=1.5となっている。この場合、C/f=-12.5となる。
x’=0.5×f×lv2+C×lv
による式から、ゼロレベルから最上位レベルまでの幅は1.4542となり、各レベルの幅は、x値から導出される幅×3284/1.4542となる。このときのゼロ次光強度は、0.15776%と、充分に小さくなる。
図10の例では、波長850nm,ピッチ=3284nm(回折角15°),4レベル,f=-0.02,C=0.2,t=0.8,h=850/4*1.1(n-1.0),n=1.5となっている。この場合、C/f=-10となる。
x’=0.5×f×lv2+C×lv
による式から、ゼロレベルから最上位レベルまでの幅は0.662となり、各レベルの幅は、x値から導出される幅×3284/0.662となる。このときのゼロ次光は、0.2803%と充分に小さくなる。
図11は、0次回折光の強度測定方法を説明する図である。
0次回折光の強度を測定するには、先ず、図11(a)に示すように、光源LSが発光する特定の波長の光を回折光学素子10させた後に、さらにアパーチャAPにより0次回折光が通過する特定の範囲の光のみをセンサSまで到達させて、パワーメータMにより回折光学素子10がある場合の強度を計測する。
次に、図11(b)に示す様に、回折光学素子10のみを図11(a)の状態から取り除いて、回折光学素子10がない場合の強度を計測する。0次回折光の強度は、(回折光学素子10がある場合の強度)/(回折光学素子10がない場合の強度)により求めることができる。
なお、測定に用いる光源LSは、レーザ光源とハロゲン光源の2種類とし、波長850nmとした。
本発明の回折光学素子10の4レベル品は、1段当りの高さh=470nmである。この値は、h=ht×1.106に相当している。また、C=0.1825,f=-0.02とした。なお、ピッチは、図1及び図6に示す様に部位により様々なので特定は困難である。
なお、本発明の回折光学素子10では、各段部を繋いだラインは、断面において凹状の曲線となる。
図12は、比較例の回折光学素子を示す図である。
比較例としては、図12に示す様に、各段部を繋いだラインは、断面において直線である。そして比較例についても、4レベルと8レベルの2種類用意した。1段当りの高さhは、本発明品と同じとした。
図13は、本発明の回折光学素子10と比較例とについて0次回折光の強度を測定した結果を示す図である。図13中で、丸印び四角印で示したデータは、レーザ光源のデータを示し、曲線で示したデータは、ハロゲン光源のデータを示している。
図13に示す様に、レーザ光源であるかハロゲン光源であるかによらず、本発明の方が、比較例と比べて0次回折光の強度が大きく下がっている。よって、鋸歯形状の斜面に相当する部分は、凹状曲面に構成すると、0次回折光の強度を下げることができることが、実測品で証明された。
回折効率の解析シミュレーションには、厳密結合波理論(RCWA(rigorous coupled-wave analysis)に基づいた演算を用いた。RCWAは、数学的には、行列の固有値問題と一次方程式を解くことに帰着されるので、原理的な困難さはない。また、このRCWAに基づいた電磁場解析のシミュレーション結果と現実とでは、現物における形状エラー等を除けば、基本的に合致する。
なお、今回のシミュレーションは、図2Aに示したような立体的形状を考慮したものではなく、図2Bに示したような一次元で奥行き方向は無限長さであるとした演算とした。
波長:850nm
高屈折率部の屈折率n:1.5
低屈折率部の屈折率:1.0
ピッチ:2μm,4μmの2種
レベル数:8レベル
また、本発明品である斜面相当部分が凹状曲面となっている実施例として、2種類用意した。先ずは、先の実測品と同様に深い部分の幅を順次幅広に構成したものを実施例1とした。また、幅を変えずに、深い部分を順次高さを低くすることにより、斜面相当部分が凹状曲面となっている形態を実施例2とした。
図14は、1段当りの高さを変化させた実施例2の形状を示す図である。
先に説明したように、図14のように1段当りの高さを変化させることによっても、凹状曲面を模すことができる。
シミュレーションの結果からも、斜面相当部分が凹状曲面となっている形態であれば、0次回折光を大きく低減可能であるという結果が得られた。
図16は、16段で鋸歯形状を模した例を示す図である。なお、段数を増やしていけば、より滑らかな斜面に近づけることができ、略無段階とみなせる程度のもの、すなわち実質的に曲面とみなせるものとすることも可能である。上記の実測及びシミュレーションの結果から、滑らかな斜面の場合であっても、斜面は凹状曲面とすれば、0次回折光の強度を下げることが可能であるといえる。
(8-level)
波長850nm、回折光学素子の屈折率1.5として、次の式で表される8-levelの構造をシミュレーションした結果を図17から図19に示す。一段あたりの高さは理論値ではht=212.5nmとなり、h=ht×1.1の223.125nmとした。tは最下位(level-0)に対する最上位面(level-7)の幅の比率である。式は、上述した式と同じ、以下の式を用いている。
ピッチに対するx座標の比率をSとして、
x’=0.5×f×lv2+C×lv
S=P/{tw+Σx’i}
Σは、i=0~L-1
としたときに階段形状の頂部x,y座標が次のように表される。
x=S×(0.5×f×lv2+C×lv)
y=lv×h
図17は、f=-0.02、t=0.8とし、回折格子の回折角15°となる3284nmピッチとしたときのCを変化させたときのゼロ次光強度のグラフである。0.21≦C≦0.40では、ゼロ次光が低く、0.5%以下となっていることがわかる。
図18は、C=0.25,t=0.8とし、回折格子の回折角15°となる3284nmピッチとしたときのfを変化させたときのゼロ次光強度のグラフである。-0.0225≦f≦-0.0125のときに、ゼロ次光が低く、0.5%以下となっていることがわかる。
図19は、f=-0.02、C=0.25とし、回折格子の回折角15°となる3284nmピッチとしたときのtを変化させたときのゼロ次光強度のグラフである。tが0.5~0.9でゼロ次光が小さく、0.5%以下になることがわかる。
図17の結果から、0.18<Cでは、ゼロ次光が1%以下となっていることがわかる。この図17の例では、f=-0.02であるから、C/f<-9とすることが望ましい。
また、図18の結果から、-0.0275<f<-0.005では、ゼロ次光が1%以下となっていることがわかる。この図18の例では、C=0.25であるから、-50<C/f<-9とすることが望ましい。
これら2つの範囲で共通する範囲として、8-levelにおけるC/fの好適な範囲は、-50<C/f<-9である。
波長850nm、回折光学素子の屈折率1.5として、次の式で表される4-levelの構造をシミュレーションした結果を図20から図22に示す。一段あたりの高さは理論値ではht=425nmとなり、h=ht×1.1の467.5nmとした。tは最下位(level-0)に対する最上位面(level-3)の幅の比率である。式は、上述した式と同じ、以下の式を用いている。
ピッチに対するx座標の比率をSとして、
x’=0.5×f×lv2+C×lv
S=P/{tw+Σx’i}
Σは、i=0~L-1
としたときに階段形状の頂部x,y座標が次のように表される。
x=S×(0.5×f×lv2+C×lv)
y=lv×h
図20は、f=-0.02、t=0.8とし、回折格子の回折角15°となる3284nmピッチとしたときのCを変化させたときのゼロ次光強度のグラフである。0.13≦C≦0.33では、ゼロ次光が低く、0.5%以下になっていることがわかる。
図21は、C=0.18,t=0.8とし、回折格子の回折角15°となる3284nmピッチとしたときのfを変化させたときのゼロ次光強度のグラフである。-0.0275≦f≦-0.0125のときに、ゼロ次光が低く、0.5%以下になっていることがわかる。
図22は、f=-0.02、C=0.18とし、回折格子の回折角15°となる3284nmピッチとしたときのtを変化させたときのゼロ次光強度のグラフである。tが0.3~0.9でゼロ次光が小さく、0.5%以下になることがわかる。
図20の結果から、0.1<Cでは、ゼロ次光が1%以下となっていることがわかる。この図20の例では、f=-0.02であるから、-5<C/fとすることが望ましい。
また、図21の結果から、f<0では、ゼロ次光が1%以下となっていることがわかる。この図21の例では、C=0.18であるから、f<0の条件からは、C/fの範囲を求めることができず、この条件ではいずれの値であってもよい。
これら2つの範囲で共通する範囲として、4-levelにおけるC/fの好適な範囲は、-5<C/fである。
ここで、減少率fについて着目すると、減少率fは、C/fの反比例の関係を持っている。よって、減少率fを分子になるように上記範囲を書き換えると、-0.2<f/C<-0.1の範囲であることが望ましい。減少率fは、レベルごとの幅の減少率であり無次元の値であり、また、Cが一定であるとすると、面積の変化率も上記範囲であることが望ましいと考えられる。よって、各段部の面積が減少する減少率は、-5%以上、-20%以下の範囲であることが望ましい。
図23は、本発明の頂点を結ぶ軌跡が凹状曲面の構成を有する回折光学素子の断面形状とシミュレーション結果とを示す図である。なお、図23から図25中には、断面形状の違いがわかりやすくなるように、一点鎖線で直線を併記した。
図23に示すように、本発明による構造では、ゼロ次光は0.26%となっている。
図24は、理論的な構造である頂点が直線状に並ぶ構成を有する回折光学素子の断面形状とシミュレーション結果とを示す図である。
図24に示すように、理論的な構造である、全ての段が同じ場合には、ゼロ次光は0.88%となっている。
図25は、本発明とは逆に頂点を結ぶ軌跡が凸状曲面の構成を有する回折光学素子の断面形状とシミュレーション結果とを示す図である。
図25に示すように、本発明と逆ののこぎりの刃型斜面に対し凸型になっている構造では、ゼロ次光は2.90%となっている。
図23から図25の結果から、本発明のように頂点を結ぶ軌跡が凹状曲面の構成を有する回折光学素子では、ゼロ次光を低減できることが確認できる。
図26は、従来の構造の回折光学素子と本発明の回折光学素子とを比較のため並べて示す平面図である。図26(a)は、従来、理想的な設計として知られている手法により設計した回折光学素子の4-levelの各面を示し、1面から4面を示すデータである。図26(b)は、本発明の構造を元に、図26(a)の形状を改良したものである。個々の面は、最下位面(レベル0段部11a-0:図3参照)を0面、最上位面(レベル3段部11a-3)を3面として図中に示した。
図27Aは、図26(a)の従来の理想設計による4-level回折光学素子の面積に対する図26中に示した各面の割合を示す図である。
図27Bは、従来の理想設計による8-level回折光学素子の面積に対する各面の割合を示す図である。
図28Aは、図26(b)の本発明の4-level回折光学素子の面積に対する図26中に示した各面の割合を示す図である。
図28Bは、本発明の8-level回折光学素子の面積に対する各面の割合を示す図である。
図27A,27B及び図28A,28Bは、回折光学素子(DOE)の1辺が10μm、50μm、100μmの正方形領域について面積割合を求めた。正方形領域の大きさが大きいほど、サンプルとなる面が多くなるので、一定値に収束する傾向となる。
図27A,27Bを見てわかるように、従来の理想的とされる設計での各面の割合は、4-levelそれぞれの面は、略25%であり、8-levelそれぞれの面は、11~14%で、略等しい割合であることがわかる。
一方、図28A,28Bを見てわかるように、本発明による構造では、最下位面であるlevel-0の面積が一番大きく、最上位面の次の面(level-2、level-6)が一番小さい面積であることがわかる。
図29は、図26(a),(b)のデータをもとに回折光学素子を実際に製造してゼロ次光を測定した実測値の結果である。なお、図29には、4-levelと8-levelとの実測値を併記した。
図29をみてわかるように、4-level,8-levelともに、本発明による構造で、ゼロ次光が従来の形態よりも小さくなっていることがわかる。
図31は、理想設計の回折光学素子をシート面の法線方向から見た図である。
図32は、type1の回折光学素子をシート面の法線方向から見た図である。
図33は、type2の回折光学素子をシート面の法線方向から見た図である。
図34は、3種の回折光学素子のシミュレーション結果を数値で示す図である。
図35は、3種の回折光学素子のシミュレーション結果をグラフで示す図である。
なお、図34,図35のシミュレーションは、波長850nmで、厳密結合波理論(RCWA(rigorous coupled-wave analysis))を用いて行った。
図34及び図35を見てわかるように、理想設計のゼロ次光強度は、DOE高さを変化させても本発明であるtype1の方が、ゼロ次光強度が小さい。また、type2は、DOE高さによっては、理想設計に対してゼロ次光強度が小さく部分がある。
図36は、レーザ顕微鏡から取得される白黒(グレースケール)画像の例を示す図である。
このレーザ顕微鏡から取得される画像は、図36に示すように白黒画像のものが得られる。また、この白黒画像に各段の高さ毎に異なる色で着色した画像も得られる(不図示)。この着色された色毎の面積を求めればよいが、通常、各段部の高さが同じレベルであっても微妙に高さが異なって測定されるので、色にムラ(色度変化)があり、そのままでは面積比率を求めることには適していない。そこで、先ず、図36の画像を白黒の2値化する画像処理を行う(図37)。2値化には、例えば、市販の画像処理ソフトウェアを適宜利用することができ、閾値の設定は、処理結果を見ながら顕微鏡画像の特徴を最も表すことができる値を選ぶとよい。
図37は、レーザ顕微鏡から取得される白黒画像を2値化した結果を示す図である。
図38は、level-3を塗りつぶした例を示す図である。
図39は、level-2を塗りつぶした例を示す図である。
図40は、level-1を塗りつぶした例を示す図である。
図41は、level-0を塗りつぶした例を示す図である。
段毎に塗りつぶした画像を用いて、それぞれの塗りつぶされた灰色の画素をカウントする。色毎の画素数をカウントする処理についても、例えば、市販の画像処理ソフトウェアを適宜利用することができる。なお、上述した例では、色は、白、黒、灰色の3種から構成されているため、灰色の画素数をカウントする。
例えば、図示した例では、level-3のカウント数は、15167、level-2のカウント数は、24859、level-1のカウント数は、27541、level-0のカウント数は、29391とカウントされる。この数が面積に相当するので、面積比率を求めることができる。
顕微鏡出力の画像では、各段の境界が太くなっている部分があり、太い部分は斜面となっていることが推測される。上述した画像処理を用いた面積測定方法では、顕微鏡出力の画像の2値化を行うことにより、斜面は黒色となり面積比率の演算に含まれないことから、この斜面を除外でき、面積計算を単純化でき、この点は、この測定方法の利点である。
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
11 高屈折率部
11a 凸部
11a-0 レベル0段部
11a-1 レベル1段部
11a-2 レベル2段部
11a-3 レベル3段部
11b 側壁部
12 凹部
13 空間
14 低屈折率部
15 回折層
200 スクリーン
201 光
202 照射領域
204 照射領域
210 光源部
Claims (5)
- 光を整形する回折光学素子であって、
複数の凸部が並んで配置されている高屈折率部と、
前記高屈折率部よりも屈折率が低く、少なくとも前記凸部の間に形成されている凹部を含む低屈折率部と、
を有する回折層を備え、
前記凸部は、高さの異なる複数の段部により形成された多段階形状を有しており、
前記高屈折率部は、単位面積当り、最も深い面の面積が最も大きく、最上位面の次段の面の面積が最も小さく、最上位面の面積が、前記高屈折率部の最下位面の面積の0.6~0.9倍の面積であり、
前記凸部は、鋸歯形状、又は、鋸歯形状を多段階の輪郭形状により模した形状であり、
鋸歯形状又は多段階の輪郭形状により模した鋸歯形状の当該回折光学素子のシート面に対して傾いた斜面は、前記凸部へ向かって凹んだ凹状曲面を有し、
前記凸部は、その側面形状の少なくとも一方側に、高さの異なる複数の段部により前記鋸歯形状を模した多段階形状を有している回折光学素子。 - 請求項1に記載の回折光学素子において、
前記高屈折率部は、単位面積当り、最も深い面から最上位面の次段の面に向けて、各段部の面積が順次減少していること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項1又は請求項2に記載の回折光学素子において、
前記段部の高さと幅との少なくとも一方が場所に応じて異なることにより前記凹状曲面を模していること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項3に記載の回折光学素子において、
前記段部の一段当りの高さは一定であり、
前記段部の幅が場所に応じて異なることにより前記凹状曲面を模していること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項4に記載の回折光学素子において、
前記凸部が並ぶ方向にx軸を設定し、前記斜面が高くなっていく向きをx軸のプラスの向きとし、
当該回折光学素子のシート面に直交するy軸を設定し、前記凸部の突出する向きをy軸のプラスの向きとし、
前記凸部の先端を含んで計数した段部の総段数をLとし、
レベルごとの幅の減少率をfとし、
前記凹部の最も低い位置を0として計数したときの対象の段部の段数をlvとし、
前記段部の一段当りの高さをhで一定値とし、
レベルゼロの幅比率をCとしたときに、
多段階形状により模す前記凹状曲面の断面におけるレベルゼロの凹頂点と各凸部の頂点の軌跡となる曲線は、
ピッチに対するx座標の比率をSとして、
x’=0.5×f×lv2+C×lv
S=P/{tw+Σx’i}
Σは、i=0~L-1
としたときに階段形状の頂部x,y座標が、
x=0.5×f×lv2+C×lv
y=lv×h
で表されること、
を特徴とする回折光学素子。
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