JP7342345B2 - 回折光学素子 - Google Patents
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Description
これは異なる屈折率を持った材料が周期性を持って配列している場所を光が通過する際の回折現象を応用したものである。DOEは、基本的に単一波長の光に対して設計されるが、理論的には、ほぼ任意の形状に光を整形することが可能である。また、DOEでは、照射領域内の光分布の均一性を制御することが可能である。DOEのこのような特性は、不要な領域への照射を抑えることによる高効率化、光源数の削減等による装置の小型化等の点で有利となる。
例えば、特許文献1には、回折光の回折角度に依存することなく、略均一に分布する光スポットを発生させる技術が開示されている。
しかし、フーリエ変換は、図形サイズと位相データと、場合によっては透過率をも使った、いわゆるthin modelのシミュレーションである。そのため、DOEの各図形が波長に近いサイズに近づいていくと、DOEに形成された凹凸の立体構造が無視できない影響を持つようになる。そのため、IFTAを用いてターゲット通りの設計ができたとしても、DOEの凹凸立体構造の影響を受けてしまうため、照射される回折光の強度分布が狙い通りにならず、輝度ムラが生じてしまう場合があった。
しかし、厳密解シミュレーションを利用した設計は有効であると考えられるが、演算時間が膨大にかかることから、現実的な手法ではない。したがって、立体構造の影響をキャンセルしたり補正したりするような、最適な回折格子のサイズと深さを見出すことは非常に困難であった。
図1は、本発明による回折光学素子100の第1実施形態を示す図である。
図2は、回折光学素子100における単位セルの配置を簡素化して示す図である。
図3は、回折光学素子100により照射される照射パターンPの設計狙い(ターゲット)の照射分布における強度マップを示す図である。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
なお、本発明において「光を整形する」とは、光の進行方向を制御することにより、対象物又は対象領域に投影された光の形状(照射パターン)が任意の形状となるようにしたり、照射パターン内の強度分布を平坦化したり、全体的に又は部分的に任意の強度分布になるようにしたりすることをいう。例えば、回折光学素子100は、図1に示されるような照射スポットSが略円形の光を、回折光学素子100を透過させることにより、図2に示すような複数のスポットにより構成された照射パターンPとなるように光を回折させて出射する。このように、照射パターンを、多数のスポットや、正方形の組み合わせや、長方形、円形等、目的の形状とすることを、「光を整形する」いう。
回折光学素子100へ照射される光源の光は、例えば、波長が940nmの光を発光するレーザ光源とすることができるが、これについても、適宜変更可能である。
図2中には、光源から照射される光のスポットSを二点鎖線で示している。多数の第1単位セル10,第2単位セル20を配置する理由としては、スポットSの位置が回折光学素子100に対してずれてしまっても、照射分布に大きな変化が生じないようにする、いわゆる冗長性を確保する点が挙げられる。第1単位セル10,第2単位セル20がいずれも単体で所望の照射分布の照射パターンに光を回折し、それが多数存在していることにより、スポットSの位置ズレは、全体としてみると殆ど影響が生じないようにできる。
第1単位セル10と第2単位セル20とは、いずれも図3に示した同一の照射パターンPを照射するように設計された回折格子を備えており、本実施形態では、同一の設計ツールを用いて設計され、図4に示した同一の設計パターンを基本としている。ここで、本実施形態では、IFTA(Iterative Fourier Transform Algorithm)と呼ばれる、図形を動かしながらフーリエ変換を繰り返す設計手法を採用した設計ツールを用いて第1単位セル10,第2単位セル20の設計を行った。このIFTAでは、位相差を生じさせるための凹凸形状(立体的形状)は考慮しておらず、位相差を生じさせる異なる領域が同一平面上に存在しているものとして設計が行われる。よって、IFTAを用いた設計上は、図4中でハッチングを付した領域と点描パターンを付した領域とでは、どちらを凸として、どちらを凹として構成してもよいとされている。
図5は、第1単位セル10を拡大して示した平面図である。
図6は、第1単位セル10を拡大して示した斜視図である。
図5において、ハッチングを付した領域は、図6に示すように、凸部11として構成されており、点描パターンを付した領域は、凹部12として構成されている。先の図4に示した設計パターンと比べてもわかるように、第1単位セル10では、設計パターンにおける領域Wを凸部11とし、設計パターンにおける領域Bを凹部12として構成した形態である。ただし、図4と図5とを比較してわかるように、平面視において凸部11が占める面積割合は、設計パターンにおいて領域Wが占める面積割合よりも低くなるようにして構成している。すなわち、凸部11の幅を、設計パターンよりも小さくなるように構成している。これは、凸部を幅方向で小さくすることにより、0次光を抑制できることが、経験上わかっていることから、このように意図的に調整を加えたものである。なお、この凸部の幅調整は行わない形態としてもよい。
また、先の図4に示した設計パターンでは、凸部と凹部との境界が曲線の不規則なパターンであったが、第1単位セル10では、図5に示すように、凸部と凹部との境界が線分を繋げた折れ線の不規則なパターンである点で相違している。これは、折れ線で表現した方が製造上都合よいことから行っているものである。しかし、凸部と凹部との境界は、曲線としてもよいし、曲線と折れ線とを混合していてもよいし、部分的に、又は、全体が規則的なパターンであってもよい。
なお、図6では特に図示していないが、凸部11が設けられている側とは反対側に、基材等がさらに構成されていてもよい。
図7に示すように、設計ターゲットである図3の強度マップと比較して、強度ムラが生じていることがわかる。
本実施形態では、設計ターゲットの強度分布自体が均一ではないので、図7だけでは、設計ターゲットに対してどの程度乖離しているのかが分かりにくい。そこで、各スポットにおいて第1単位セル10の照射強度/設計ターゲットの照射強度を比率として求めた。第1単位セル10では、得られた比率が最大の最大比率=337.6%であり、比率が最小の最小比率=9.8%であった。また、最大比率/最小比率=3458%であった。
図8は、第1単位セル10の照射強度をターゲットの照射強度に対する比率として示した図である。
図8に示すように、設計ターゲットとの比率としてみても、場所によって差異が大きいことがわかる。
図9は、第2単位セル20を拡大して示した平面図である。
図10は、第2単位セル20を拡大して示した斜視図である。
図9において、ハッチングを付した領域は、図10に示すように、凸部21として構成されており、点描パターンを付した領域は、凹部22として構成されている。先の図4に示した設計パターンと比べてもわかるように、第2単位セル20では、設計パターンにおける領域Bを凸部21とし、設計パターンにおける領域Wを凹部22として構成した形態であり、上述の第1単位セル10の場合とは、凸部と凹部との関係を反転した関係にある。ただし、図4と図9とを比較してわかるように、平面視において凸部21が占める面積割合は、設計パターンにおいて領域Wが占める面積割合よりも低くなるようにして構成している。すなわち、凸部21の幅を、設計パターンよりも小さくなるように構成している。この理由は、第1単位セル10の場合と同様である。なお、この凸部の幅調整は行わない形態としてもよい。
図11は、第2単位セル20の回折光より照射される照射パターンの照射分布における強度マップを示す図である。
図11に示すように、設計ターゲットである図3の強度マップと比較して、強度ムラが生じていることがわかる。また、第1単位セル10と第2単位セル20とを比較してみると、第1単位セル10と第2単位セル20とは、いずれも同じ位置に向けて回折光を出射し、かつ、第1単位セル10と第2単位セル20とは、それぞれが同じ位置に向けて出射する回折光の強度の少なくとも一部が異なることがわかる。
図12は、第2単位セル20の照射強度をターゲットの照射強度に対する比率として示した図である。
図12に示すように、設計ターゲットとの比率としてみても、場所によって差異が大きいことがわかる。また、第1単位セル10と第2単位セル20とを比較してみると、ムラの発生具合が両者で異なっていることがわかる。
図13に示すように、第1単位セル10と第2単位セル20とを1つの回折光学素子に混在させることにより、両者がそれぞれ出射する回折光が各スポットにおいて補完し合って、設計ターゲットの強度分布に非常に近い分布となっている。
図14は、本実施形態の回折光学素子100の照射強度をターゲットの照射強度に対する比率として示した図である。
図14に示すように、設計ターゲットとの比率としてみても、場所によって差異が非常に少なくなっていることがわかる。
図15は、実際に作製した回折光学素子100の設計ターゲットの照射分布の強度マップを示す図である。
図16は、実際に作製した回折光学素子100の実測した照射分布の強度マップを示す図である。
なお、先に示したシミュレーションでは、回折光学素子100は、11行11列のスポットを照射するものであったが、実際に作製した回折光学素子100では、先のシミュレーションとは異なる諸元の回折光学素子とした。ここでは、この実測値の中央付近の7行7列のデータを示すものとする。
図16に示すように、実測値においても、回折光学素子100の実測した照射分布は、設計ターゲットに近い非常に良好な結果が得られている。
実測した本実施形態の回折光学素子100についても、各スポットにおいて回折光学素子100の照射強度/設計ターゲットの照射強度を比率として求めた。実測した回折光学素子100では、得られた比率が最大の最大比率=133.4%であり、比率が最小の最小比率=71.9%であり、100%に近い値になっている。最大比率/最小比率=186%であり、シミュレーションよりもさらに数値が下がっている。よって、これら比率の数値上でも、実際に作製した本実施形態の回折光学素子100が設計ターゲットに近い強度分布を持っていることが明らかである。
また、第1単位セル10及び第2単位セル20は、演算が高速なIFTAを利用することが可能であり、設計に要する時間を短縮でき、かつ、設計狙いにより近い光強度分布を実現できる。
図17は、第2実施形態の回折光学素子100-2を示す図である。図17は、第1実施形態の図2と同様にして示している。
第2実施形態の回折光学素子100-2は、第1単位セル群110及び第2単位セル群120の配列形態が第1実施形態の回折光学素子100と異なる他は、第1実施形態の回折光学素子100と同様である。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第2実施形態の回折光学素子100-2では、図17に示すように、回折光学素子100-2の領域を2つに分けて、その両側に第1単位セル群110と第2単位セル群120とを単純に並べた構成としている。このような構成としても、第1実施形態の回折光学素子100と同様に、良好な光学的特性を得ることができる。なお、図17の例では、第1単位セル群110と第2単位セル群120とが左右に並んで配置されているが、これは、上下であってもよいし、斜めに分割された形態で配置されていてもよい。
図18は、第3実施形態の回折光学素子100-3を示す図である。図18は、第1実施形態の図2と同様にして示している。
第3実施形態の回折光学素子100-3は、第1単位セル群110及び第2単位セル群120の配列形態が第1実施形態の回折光学素子100と異なる他は、第1実施形態の回折光学素子100と同様である。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第3実施形態の回折光学素子100-3では、図18に示すように、第1単位セル群110と第2単位セル群120とは、回折光学素子100-3の中央の一点から放射状に所定角度間隔に形成される複数の領域に順次配置されている。このような構成としても、第1実施形態の回折光学素子100と同様に、良好な光学的特性を得ることができる。
なお、図18の例では、所定角度を45°として分割した例を例示しているが、この角度は任意に設定可能である。また、図18の例では、外形形状を円形としたが、円形に限らず、矩形としてもよい。
以上説明した例では、第1単位セル10と第2単位セル20とは、凸部と凹部との関係を反転した関係にある例を挙げて説明した。これに対して、第4実施形態では、第2単位セルは、配列される面内において第1単位セルを配置する向きを回転した形状とした。第2単位セルを回転させる角度は、例えば、正方形形状の第1単位セルであれば、90°、180°、270°の中から任意に選択することができる。また、回転させる形態であれば、第2単位セルとして第1単位セルを90°回転した形状を配置し、第3単位セルとして第1単位セルを180°回転した形状を配置し、第4単位セルとして第1単位セルを270°回転した形状を配置してもよい。
この第4実施形態のように、単位セルの向きを回転させる形態であっても、各スポットにおける照射強度の違いが平均化されたり、補い合ったりして設計ターゲットの強度分布に近づける効果を得ることができる。
第4実施形態の回折光学素子100-4は、第1単位セル10と、この第1単位セル10とは回折格子の形状が異なる第2単位セル30とを備えている。ここで、第1単位セル10は、第1実施形態の第1単位セル10と同一である。すなわち、第4実施形態の回折光学素子100-4は、第1実施形態の第1単位セル10と同一形状の回折格子を備えている。なお、図19は、各単位セルのパターンを見比べやすくするために、先の図1よりも拡大して示している。したがって、1つの第1単位セル群110には、2行2列の合計4つの第1単位セル10のみ描いているが、先にも説明したように、実際にはより多くの単位セルが配列されている。
図20は、第2単位セル10を拡大して示した平面図である。
第2単位セル30は、第1単位セル10と同一の設計パターンを備えているが、第1単位セル10とは回折格子の形状が異なる。具体的には、第2単位セル30は、配列される面内において第1単位セル10を配置する向きを180°回転した形状となっている点で、形状が異なっている。したがって、第2単位セル20は、その配置される向きを180°回転させてしまうと、第1単位セル10と回折格子の形状が同じとなってしまう点に注意が必要である。なお、このように配置の向きが異なることにより形状が異なっている形態についても、特許請求の範囲及び明細書中では、形状が異なると定義している。回折光学素子(DOE)は、通常の光学レンズとは異なり、その向きが回転すると、回折により照射される照射パターンも同様に回転するので、どのような向きに回折格子が配列されているかは、重要な要素であり、明確に区別する必要がある。
上述したように、第2単位セル30の形状は、第1単位セル10を180°回転させた形状であるので、照射パターンも、図21に示すように、先に図7に示した第1単位セル10を180°回転させた形態になっている。そして、この第2単位セル30の照射パターンの照射分布における強度マップは、第1単位セル10の場合と同様に図21に示すように、設計ターゲットである図3の強度マップと比較して、強度ムラが生じていることがわかる。
図22は、第1単位セル10の照射強度をターゲットの照射強度に対する比率として示した図である。
図22に示すように、第1単位セル10と同様に、設計ターゲットとの比率としてみても、場所によって差異が大きいことがわかる。
図23に示すように、第1単位セル10と第2単位セル30とを1つの回折光学素子に混在させることにより、両者がそれぞれ出射する回折光が各スポットにおいて補完し合って、設計ターゲットの強度分布に非常に近い分布となっている。
図24は、本実施形態の回折光学素子100の照射強度をターゲットの照射強度に対する比率として示した図である。
図24に示すように、設計ターゲットとの比率としてみても、場所によって差異が非常に少なくなっていることがわかる。
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の囲内である。
11 凸部
12 凹部
20,30 第2単位セル
21 凸部
22 凹部
100,100-2,100-3,100-4 回折光学素子
110 第1単位セル群
120,130 第2単位セル群
Claims (6)
- 凹凸形状が形成された面の法線方向から見て凸部と凹部との境界が曲線と複数の線分を繋げた折れ線との少なくとも一方を含むパターンを有する回折格子が形成された第1単位セルと、
凹凸形状が形成された面の法線方向から見て凸部と凹部との境界が曲線と複数の線分を繋げた折れ線との少なくとも一方を含むパターンを有する回折格子が形成され、前記第1単位セルとは回折格子の形状が異なる第2単位セルと、
を有し、
前記第1単位セル及び前記第2単位セルは、いずれも前記法線方向から見た形状が矩形形状に形成されており、かつ、いずれも同じ位置に向けて回折光を出射し、かつ、いずれも複数設けられており、
前記第1単位セルの凹凸形状と前記第2単位セルの凹凸形状とは、凸部と凹部とを逆にした関係にあり、
前記第2単位セルの凹凸形状は、前記第1単位セルの凸部と凹部とを逆にしたそのままの形状よりも前記凸部の形状が幅方向において小さく形成され、
前記第1単位セルと前記第2単位セルとが混在して複数配列されている回折光学素子。 - 請求項1に記載の回折光学素子において、
前記第1単位セルと前記第2単位セルとは、それぞれが同じ位置に向けて出射する回折光の強度の少なくとも一部が異なること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項1又は請求項2に記載の回折光学素子において、
前記第1単位セルが複数まとめて配列された第1単位セル群と、
前記第2単位セルが複数まとめて配列された第2単位セル群と、
を有し、
前記第1単位セル群と前記第2単位セル群とが並べて配列されていること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項3に記載の回折光学素子において、
前記第1単位セル群及び前記第2単位セル群は、前記法線方向から見た形状が矩形形状に形成されており、
前記第1単位セル群と前記第2単位セル群とは、千鳥格子状に並べて配列されていること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項3に記載の回折光学素子において、
前記第1単位セル群及び前記第2単位セル群は、前記法線方向から見て、当該回折光学素子を中央で2分割した両側にそれぞれ配列されていること、
を特徴とする回折光学素子。 - 請求項3に記載の回折光学素子において、
前記第1単位セル群及び前記第2単位セル群は、前記法線方向から見て、
一点から放射状に所定角度間隔に形成される複数の領域に順次配置されていること、
を特徴とする回折光学素子。
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