JP7488652B2 - 回折光学素子、光照射装置、照射パターンの読取り方法 - Google Patents
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Description
特許文献1では、ホログラムを用いて路面に所定の投影像を形成する技術が開示されている。
また、特許文献2では、ホログラムを用いてバーコードを再生して、これを読み取る技術が開示されている。
回折光学素子を用いて、特許文献1のように所望の照射パターンを拡大照射したり、特許文献2のようにバーコードを照射パターンとして照射したりすることが可能である。回折光学素子を用いることにより、ホログラムよりも安価に同様な効果を得ることが可能である。
また、回折光学素子を用いて特許文献2のようにバーコード等の情報を照射する場合には、解像度に起因するドットの段差によって読取りエラーを起こすおそれがあった。また、より細かい照射パターンをより精度よく読み取ることが可能となれば、より多くの情報を含んだ照射パターンとして、利用の場を広げることができる。
図1は、本発明による光照射装置100の概要を示す図である。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
本実施形態の光照射装置100は、光源120が発光した光121を、回折光学素子110を透過させることにより、光を整形して、例えば、図1に示すような四角形を4つ並べた照射パターン300を、例えば、スクリーン200に照射可能である。
なお、図1に示した照射パターン300は、説明のため簡略化したものであり、本実施形態の光照射装置100は、例えば、従来技術に示したようなバーコードを表す照射パターンを照射して利用してもよいし、車両等から路面等へ各種情報を表す照射パターンを照射してもよい。また、光照射装置100は、距離測定、人体検出、立体物認識等における検出光の照射等に利用してもよい。また、光照射装置100は、カメラ等で物体からの反射光を取込む装置と一体化してもよく、その場合、距離測定、3D認識、人体測定、物体認識、バー認識が可能である。
回折光学素子110は、光を整形する回折光学素子(DOE)である。
なお、本発明において「光を整形する」とは、光の進行方向を制御することにより、対象物又は対象領域に投影された光の形状(照射パターン)が任意の形状となるようにしたり、照射パターン内の強度分布を平坦化したり、全体的に又は部分的に任意の強度分布になるようにしたりすることをいう。例えば、図1の例に示されるように、光源120は、平面形状の回折光学素子110に直接投影した場合に照射スポット122が円形となる光121を発光する。この光121を、本発明の回折光学素子110を透過させることにより、照射パターン300を、正方形の組合せ(図1の例)や、長方形、円形(図示せず)等、目的の形状とすることを、「光を整形する」いう。
図3は、単位セル10を拡大して示した図である。
本実施形態の回折光学素子110は、複数の単位セル10が周期的に配列されて構成されている。この複数の単位セル10は、いずれも回折格子の構成が全く同じものであり、同一の単位セル10が複数並べて配置されている。図2の例では、理解を容易にするために、縦3列、横3列の9枚の単位セル10を配列した例として示したが、より多くの単位セル10を並べて配置して、より大きな面積の回折光学素子110としてもよい。また、図2では、単位セル10を分かりやすくするために隣り合う単位セル10の境界部分でパターンが不連続となるようにパターンを描いているが、実際には、隣り合う単位セル10の境界において、パターンが連続するように構成される場合が多い。したがって、回折光学素子を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)等で観察しただけでは、単位セルが並んで構成されているのか否かの判断が難しい場合が多い。そのような場合には、回折光学素子の表面のパターンを光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡により撮影して、画像解析することによりパターンを抽出するとよい。
単位セル10は、矩形形状に形成されており、複数の回折格子が形成されており、この単位セル10のみであっても、特定の配光特性、すなわち、光を所望のパターンに整形することができるように構成されている。
図5は、回折光学素子を切断した断面図である。
単位セル10は、図5に示すように、断面形状において複数の凸部11aが並んで配置されている高屈折率部11を備えている。この高屈折率部11は、凹凸形状が形成された面の法線方向から見て凸部と凹部との境界が曲線と複数の線分を繋げた折れ線との少なくとも一方を含むパターンを有している。この複雑なパターンによって、所望の位置へ向けて光を回折させることができる多数種類の回折格子の集合体として回折光学素子が構成されている。
なお、図2から図5に示した回折格子は、説明のために誇張しており、単位セル10内には図示したよりも多くのパターンが含まれている。
なお、本実施形態の光照射装置では、光源120が波長850nmのレーザ光源であることから、これに合せて、単位セル10の回折格子は、波長が850nmの光を回折するために最適となる深さに構成されている。
次に、本実施形態の単位セル10(回折光学素子110)がどのような照射パターン300を照射するのかについて説明する。
図6は、従来の回折光学素子によって得られる照射パターンを説明する図である。
従来の回折光学素子によって、例えば、図6に示すように本実施形態と同様な正方形を4つ並べた照射パターン1300を照射したとする。これを図6に示したように拡大して観察すると、多数のドットの組合せによって線が構成されている。したがって、遠くから観察すれば直線に見えている部分であっても、実際には、図6に示すように段差が生じている。このような段差は、拡大投影された場合には目立つものであり、より滑らかに観察可能であることが望まれる。また、例えば、バーコード等を照射パターンで構成してこれを読み取るような場合には、段差によって正しく読み取られないおそれがある。
図7は、本実施形態の光照射装置100が照射する照射パターン300を拡大して示した図である。図7(a)は、照射パターン300を投影した状態を示しており、図7(b)は、図7(a)中に一点鎖線で示した照射パターン300を横断する方向Lに沿った方向での輝度分布を示している。
すなわち、照射パターン300が照射された面上で照射パターン300を横断する方向における照射パターン300の輝度分布は、ピークを持った多段階の分布を示す。以下、本実施形態のように照射パターン300を、輝度分布のある多段階のドットで表現することを、「ぼかす」、「ぼかし」等と適宜呼ぶこととする。このような照射パターン300とすることにより、照射パターンを見ると、線の中央から周辺へ向かうにしたがって徐々に輝度が低下するので、図7を見ただけでは、一見、線がぼやけてしまい、好ましくないかのようにも見える。
しかし、このように照射パターン300をぼかした線により構成することにより、先の図6に示した様な段差が目立たなくなり、見た目では滑らかな線として感じられ、従来よりも自然なパターンとして視認可能である。
そして、このように照射パターン300の線をぼかして表現することにより、照射パターン300をセンサ等により読み取る場合に、従来よりも精度の高い正確な読取りが可能である。
図9は、ぼかしの量として1σ相当のぼかしを付与した本実施形態の照射パターン300と、これをセンサで読み取ってラインを認識した例を示す図である。
図10は、ぼかしの量として2σ相当のぼかしを付与した本実施形態の照射パターン300と、これをセンサで読み取ってラインを認識した例を示す図である。
ここで、本実施形態では、照射パターン300の元データにおける線の位置を重心(又は、ピーク位置)に持つようにした輝度分布をガウス分布となるようにしてデータを生成し、確率密度関数におけるσをぼかし具合のパラメータとして設定した。しかし、照射パターン300のぼかし方は、上記に限らず、適宜既知の手法を用いることができる。
図8(b)と図9(b)と図10(b)とは、それぞれの条件で照射された照射パターンを示している。図8(b)では、段差がはっきりと視認可能であるのに対して、図9(b)及び図10(b)では、線が滑らかに見えている。
図8(c)と図9(c)と図10(c)とは、それぞれ、図8(b)と図9(b)と図10(b)とにしめした照射パターンを撮像素子等のセンサによって読み取って、輝度分布の重心位置を照射パターンの位置として特定したラインを示している。従来の手法による図8(c)の場合には、特定されたラインは何度も屈曲して描かれており、元のデータとの差異が大きい。これに対して、図9(c)と図10(c)とでは、照射パターンの線をぼかしたことと、輝度分布の重心位置を照射パターンの位置として特定したこととの相乗効果により、元のデータに近いラインが得られている。
図11は、輝度分布の重心位置を求めてラインの位置を特性する方法を説明する図である。図11(a)は、投影された照射パターン300を示している。図11(b)は、図11(a)の照射パターン300を撮像素子を用いてコンピュータに取り込み、ピーク輝度の位置を100として輝度分布を数値化してマッピングしたデータを示している。図11(c)は、図11(b)中の四角で囲んだ範囲の輝度分布をグラフ化して示している。
ここで、重心位置の求め方の一例を説明する。
図11(b)に示すような輝度分布が得られたとする。このデータについて、左右方向にX1,X2,・・・,X24と座標を設定する。また、このX座標に対応する輝度をP1,P2,・・・,P24とすると、重心座標Xgは、以下の式により求めることができる。
Xg=(P1×X1+P2×X2+・・・+Pn×Xn)/(P1+P2+・・・+Pn)
なお、本実施形態では、上述のX座標を用いた手法で重心位置を順次演算したが、照射パターン300の認識方法によっては、Y座標をさらに導入して、以下の式により重心座標Ygを求めることもできる。
Yg=(P1×Y1+P2×Y2+・・・+Pn×Yn)/(P1+P2+・・・+Pn)、又は、Yg=(P1×Y1×0.5+P2×Y2×0.5+・・・+Pn×Yn×0.5)/(P1+P2+・・・+Pn)でもよい。
本実施形態の光照射装置100では、上述したぼかした照射パターンの形成と、その重心位置の特定によって、滑らかな照射パターンを実現し、かつ、読取りの場合の精度を向上している。これに加えて、本実施形態の光照射装置100では、照射パターンの分解能の向上、すなわち、ドットの微細化を実施している。以下、この点について説明する。
従来は、単位セルを光源からの光の照射スポットのサイズよりも十分に小さく構成して、単位セルを多数並べて配置した回折光学素子としていた。これにより、光の照射スポットが回折光学素子上のいずれの位置にあっても、同じ照射パターンが得られるように構成されていた。
しかし、単位セルが小さくなると、その決められた領域内に配置可能な回折格子の数が少なくなり、その結果、照射スポットの解像度が下がってしまう。
そこで、本実施形態では、単位セル10の大きさを照射スポット122に対して十分大きくした。これにより、1つの単位セル10内により多くの種類の回折格子を構成することが可能となり、照射スポットの解像度を高めることが可能となる。その一方で、単位セル10の大きさを大きくしすぎると、単位セル10状に照射スポット122が当たらない領域が多くなり、必要な光が出力されずに部分的にドットが欠けた状態の照射パターンとなることが想定される。したがって、単位セルの大きさは、適切な上限及び下限の範囲内に納めることが必要である。
r/3<d<1.5×R
また、単位セル10の長辺長さDとすると、以下の2つの関係を双方満たすことがさらに望ましい。
r/3<d<1.5×r
R/3<D<1.5×R
上記各関係を満たすことにより、解像度が高いことにより滑らかであって、かつ、ドット欠けの少ない良好な照射パターンを得ることができる。
また、光源によっては、単一の光源素子であっても複数のビームを照射するものもある。複数のビームが別々の位置に照射される場合には、個々の照射スポットについて、上記関係を満たすようにする。また、複数のビームが略1箇所に集中して照射される場合には、複数のビームをまとめてみたときの最大の外径について、上記関係を満たすようにする。
以上説明した本実施形態の光照射装置100の効果を確認するために、複数種類の回折光学素子を用意して照射パターンを観察して比較する検証実験を行った。
図13は、検証実験における装置の配置を示す図である。
回折光学素子110とスクリーン200との距離は、1300mmとし、スクリーンから240mm離れた位置のカメラCAにより照射パターン300の一部を拡大して撮影した。撮影した映像を目視による官能評価を行った。なお、今回の検証実験では、d=Dである正方形の単位セル10を用いた。
θ=Asin(λ/d)
又は
θ=Asin(λ/D)
例えば、波長0.85nm、d=500μmとすると、θ=0.0975degとなる。この分解能の回折光学素子が1m先のスクリーンに照射する照射パターンにおいて隣り合うスポットの中心間距離=1000mm×tan(0.0974deg)=1.7mmとして求めることができる。
したがって、仮に詳細が不明な回折光学素子であったとしても、回折格子のパターンを解析して単位セルのサイズを求めれば、上記の計算によって適切な照射距離を設定でき、回折光学素子の照射スポット(照射パターン)を以下に示すように観察することができる。
図15は、照射パターンをぼかす効果を確認する検証実験の結果をまとめた図である。
図16は、単位セルを照射スポットに対して相対的に大きくする効果を確認する検証実験の結果を写真とともに示した図である。
図17は、単位セルを照射スポットに対して相対的に大きくする効果を確認する検証実験の結果をまとめた図である。
図15及び17中の判定において、Aが最も良好な結果であることを示し、次いでB,Cの順に良好な結果であることを示し、Fは、非常に悪い結果であって使用に適さないと判断したことを示している。
図15を見てわかるように、単位セル10を照射スポット122に対して相対的に大きくすると良好な結果が得られるが、さらに、ぼかしを加えた場合には非常によい結果が得られている。
また、図17を見てわかるように、単位セル10を大きくしすぎると、ドット欠けが目立ってくることから、先に示した条件式の範囲内に単位セル10の大きさを収めることが望ましい。
先の説明では、照射パターン300は、縦横比が1:1である例を挙げて説明を行った。しかし、照射パターン300の縦横比が大きい場合には、図18のように配置することが望ましい。すなわち、照射スポット122の短軸方向は、単位セル10の短辺が延在する方向に沿って配置されていることが望ましい。このように配置した方が、その他の方向に照射スポット122の短軸方向が向く場合よりも、照射パターン300の形状がより滑らかになるからである。
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
図19は、回折光学素子110の断面形状の変形形態を示す図である。
例えば、図19に示すように、傾斜部(例えば、図19中の部位H)や、くびれ部(例えば、図19中の部位I)や、窪み部(例えば、図19中の部位J)や、隅R部(例えば、図19中の部位K、L)等を設けてもよい。これらの形状を追加することにより、例えば、0次光の低減や、回折効率の向上を図ることが可能である。
11 高屈折率部
11a 凸部
11a-1 レベル1段部
11a-2 レベル2段部
11a-3 レベル3段部
11a-4 レベル4段部
11b 側壁部
12 凹部
13 空間
14 低屈折率部
15 回折層
100 光照射装置
110 回折光学素子
120 光源
121 光
122 照射スポット
200 スクリーン
300 照射パターン
1300 照射パターン(従来)
Claims (8)
- 光源と、
前記光源から光が照射される位置に配置された回折光学素子と、
を備え、
前記回折光学素子は、複数の回折格子が形成されて特定の配光特性が得られるように構成された矩形形状の単位セルを有し、
当該回折光学素子を通過した光が、照射光量の異なる複数のドットの組合せにより照射パターンを形成し、
前記照射パターンが照射された面上で前記照射パターンを横断する方向における前記照射パターンの輝度分布は、ピークを持った多段階の分布を示すように、前記単位セルの回折格子が構成されており、
前記光源から前記回折光学素子へ照射される光の照射スポットの短軸方向の長さをrとし、上記照射スポットの長軸方向の長さをRとし、前記単位セルの短辺長さをdとすると、
r/3<d<1.5×R
の関係を満たす光照射装置。 - 請求項1に記載の光照射装置において、
前記照射パターンが、隣り合うドットの輝度が異なる複数のドットの組合せにより構成されること、
を特徴とする光照射装置。 - 請求項1に記載の光照射装置において、
前記照射パターンは、照射された面において線又は図形を形成し、
前記照射パターンは、線又は図形の中央側の照射光量が周辺側の照射光量よりも高くなること、
を特徴とする光照射装置。 - 請求項1に記載の光照射装置において、
前記単位セルが周期的に配列されて構成されていること、
を特徴とする光照射装置。 - 請求項1に記載の光照射装置において、
前記回折格子は、凹凸形状を有しており、前記凹凸形状が形成された面の法線方向から見て凸部と凹部との境界が曲線と複数の線分を繋げた折れ線との少なくとも一方を含むパターンを有すること、
を特徴とする光照射装置。 - 請求項1に記載の光照射装置において、
前記単位セルの長辺長さDとすると、
r/3<d<1.5×r
及び
R/3<D<1.5×R
の双方の関係を満たすこと、
を特徴とする光照射装置。 - 請求項1に記載の光照射装置において、
前記照射スポットの短軸方向は、前記単位セルの短辺が延在する方向に沿って配置されていること、
を特徴とする光照射装置。 - 請求項1に記載の光照射装置によって照射された照射パターンの読取り方法であって、
前記照射パターンの輝度分布を認識可能な形態で前記照射パターンをデータ化して取得するステップと、
取得された前記照射パターンのデータについて、輝度分布の重心位置を前記照射パターンの位置として特定するステップと、
を備える照射パターンの読取り方法。
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