JP2018016577A - エステル化合物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、副生成物の生成を抑制し、高収率でエステル化合物を得ることができるエステル化合物の製造方法を提供することである。
【解決手段】所定の置換基を有するヒドロキシ化合物と、分子内に1個以上の被求核付加構造を有するカルボン酸化合物とを用いて、被求核付加構造を有するエステル化合物を得るエステル化合物の製造方法であって、
含窒素溶媒中、ハロゲン化剤を用いて、カルボン酸化合物をカルボン酸ハライド化合物に変換するハライド工程と、
アシル化触媒と、共役酸のpKaがアシル化触媒よりも1.5以上大きい塩基とを用いて、カルボン酸ハライド化合物とヒドロキシ化合物とを反応させ、被求核付加構造を有するエステル化合物を得るエステル化工程とを有する、エステル化合物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、エステル化合物の製造方法に関する。
エステル化合物は、機能性材料(例えば、液晶材料、電子輸送材料など)、染料、医薬、農薬および写真用薬品ならびにこれらの中間体として有用であることが知られている。
また、エステル化合物は、カルボキシ基を有する化合物を、酸ハロゲン化物、活性エステルおよび酸無水物などの活性誘導体に変換した後に、ヒドロキシ基またはアミノ基を有する化合物と反応させる方法が一般的である。
しかしながら、この方法では、アクリロイル基などの被求核付加構造を有するカルボン酸をハロゲン化剤と反応させる段階、または、その後のエステル化の段階において、求核剤の付加を受けることがあり、目的物の純度が低下する問題があった。
このような問題に対して、例えば、特許文献1では、アクリロイル基またはアクリロイル基を有するカルボン酸ハライドを、高い純度で、工業的に有利に製造する方法が記載されている([0005])。
国際公開第2016/002816号
本発明者らは、特許文献1に記載された製造法について検討したところ、アクリロイル基などの被求核付加構造を有するカルボン酸ハライド化合物に対して、立体障害を有するヒドロキシ化合物を反応させてエステル化した場合には、エステル化の前後において、ハロゲン化剤やアシル化触媒に由来する副生成物が多く生成され、目的物の収率が低下する問題があることを明らかとした。
そこで、本発明は、副生成物の生成を抑制し、高収率でエステル化合物を得ることができるエステル化合物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、互いの共役酸のpKaが所定の関係を満たすアシル化触媒と塩基とを用いて、カルボン酸ハライド化合物とヒドロキシ化合物とを反応させることにより、副生成物の生成を抑制し、高収率でエステル化合物を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
[1] 置換基を有するヒドロキシ化合物と、分子内に1個以上の被求核付加構造を有するカルボン酸化合物とを用いて、被求核付加構造を有するエステル化合物を得るエステル化合物の製造方法であって、
含窒素溶媒中、ハロゲン化剤を用いて、カルボン酸化合物をカルボン酸ハライド化合物に変換するハライド工程と、
アシル化触媒と、共役酸のpKaがアシル化触媒よりも1.5以上大きい塩基とを用いて、カルボン酸ハライド化合物とヒドロキシ化合物とを反応させ、被求核付加構造を有するエステル化合物を得るエステル化工程とを有する、エステル化合物の製造方法。
ただし、ヒドロキシ化合物が有する置換基は、下記条件1または2を満たす。
条件1:ヒドロキシ化合物が有しているヒドロキシ基が結合している炭素原子に隣接する炭素原子が、Taftの立体パラメーターEs値が−0.07以下となる置換基を1個有する
条件2:ヒドロキシ化合物が有しているヒドロキシ基が結合している炭素原子に隣接する炭素原子が、Taftの立体パラメーターEs値が0.00以下の置換基を2個以上有する
[2] 置換基を有するヒドロキシ化合物が、芳香環と芳香環を構成する炭素原子に結合したヒドロキシ基とを有する芳香族ヒドロキシ化合物である、[1]に記載のエステル化合物の製造方法。
[3] 置換基を有するヒドロキシ化合物が、フェノール化合物である、[1]または[2]に記載のエステル化合物の製造方法。
[4] エステル化工程において、置換基を有するヒドロキシ化合物に対するアシル化触媒のモル等量が0.5〜3.0である、[1]〜[3]のいずれかに記載のエステル化合物の製造方法。
[5] カルボン酸化合物が有する被求核付加構造が、アクリロイル基またはメタクリロイル基である、[1]〜[4]のいずれかに記載のエステル化合物の製造方法。
[6] ハロゲン化剤が塩化チオニルである、[1]〜[5]のいずれかに記載のエステル化合物の製造方法。
[7] 含窒素溶媒がアミド系溶媒である、[1]〜[6]のいずれかに記載のエステル化合物の製造方法。
[8] 塩基が、トリエチルアミンおよび/またはN,N−ジイソプロピルエチルアミンであり、かつ、アシル化触媒が、N−メチルイミダゾールである、[1]〜[7]のいずれかに記載のエステル化合物の製造方法。
本発明によれば、副生成物の生成を抑制し、高収率でエステル化合物を得ることができるエステル化合物の製造方法を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明のエステル化合物の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」と略す。)は、後述する条件1または2を満たす置換基を有するヒドロキシ化合物と、分子内に1個以上の被求核付加構造を有するカルボン酸化合物とを用いて、被求核付加構造を有するエステル化合物を得るエステル化合物の製造方法である。
また、本発明の製造方法は、含窒素溶媒中、ハロゲン化剤を用いて、カルボン酸化合物をカルボン酸ハライド化合物に変換するハライド工程を有する。
また、本発明の製造方法は、ハライド工程後に、アシル化触媒と、共役酸のpKaがアシル化触媒よりも1.5以上大きい塩基とを用いて、カルボン酸ハライド化合物とヒドロキシ化合物とを反応させ、被求核付加構造を有するエステル化合物を得るエステル化工程を有する。
本発明の製造方法は、上述した通り、ハライド工程後に、アシル化触媒と、共役酸のpKaがアシル化触媒よりも1.5以上大きい塩基とを用いて、カルボン酸ハライド化合物とヒドロキシ化合物とを反応させるエステル化工程を有することにより、副生成物の生成を抑制し、高収率でエステル化合物を得ることができる。
これは、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
まず、立体障害の大きい置換基を有するヒドロキシ化合物を用いてエステル化する場合には、置換基の立体障害により反応速度が遅くなり、ハロゲン化剤に由来する副生成物の生成が顕著となる。
また、立体障害の大きい置換基を有するヒドロキシ化合物を用いてエステル化する場合、反応速度を上げるため、N,N−ジメチルアミノピリジンなどのアシル化触媒を多量に投入するなどの手法を取ることが一般的である。しかしながら、アクリロイル基などの被求核付加構造を有するカルボン酸ハライド化合物に対して、立体障害の大きい置換基を有するヒドロキシ化合物を反応させてエステル化する場合には、アシル化触媒を多量に投入すると、被求核付加構造に対してアシル化触媒が求核攻撃し、副生成物が生成することが分かった。
そのため、本発明の製造方法においては、アシル化触媒と、共役酸のpKaがアシル化触媒よりも1.5以上大きい塩基とを併用することにより、被求核付加構造に対するアシル化触媒の求核攻撃を抑制しつつ、カルボン酸ハライド化合物に対する触媒活性を向上させることができるため、副生成物の生成を抑制し、高収率でエステル化合物を得ることができたと考えられる。
以下に、本発明の製造方法で用いる置換基を有するヒドロキシ化合物および分子内に1個以上の被求核付加構造を有するカルボン酸化合物、ならびに、ハライド工程およびエステル化工程について、詳述する。
〔ヒドロキシ化合物〕
本発明の製造方法で用いるヒドロキシ化合物は、ヒドロキシ基と、下記条件1または2を満たす置換基とを有するものであれば特に限定されない。
条件1:ヒドロキシ化合物が有しているヒドロキシ基が結合している炭素原子に隣接する炭素原子が、Taftの立体パラメーターEs値が−0.07以下となる置換基を1個有する
条件2:ヒドロキシ化合物が有しているヒドロキシ基が結合している炭素原子に隣接する炭素原子が、Taftの立体パラメーターEs値が0.00以下の置換基を2個以上有する
ここで、Taftの立体パラメーターEs値とは、置換カルボン酸の酸性下エステル化反応速度におけるメチル基を基準にした相対速度であり、下記式(A)で表される{Tetrahedron,Vol.34,3553〜3562頁参照}。
Es=log(k/k0) ・・・(A)
(kは、特定条件下での置換カルボン酸の酸性下エステル化反応速度であり、k0は、同一条件下でのメチル基置換カルボン酸の酸性下エステル化反応速度である。)
Taftの立体パラメーターEs値は、置換基の立体的嵩高さを表す一般的な指標であり、本発明では、Tetrahedron,Vol.34,3553〜3562頁に記載の表1に記載されているEs(Taft)値であり、これに準拠した方法で測定された値をも含む。この値は、メチル基の値が0.0であり、例えば、水素原子が1.24、エチル基が−0.07、n−プロピル基が−0.07、イソプロピル基が−0.47、n−ブチル基が−0.39、sec−ブチル基が−1.13、i−ブチル基が−0.93、t−ブチル基が−1.54、シクロペンチル基が−0.51、シクロヘキシル基が−0.79である。また、Es(Taft)値の実測値がない場合でも、上記文献に記載のEs’値でエチル基よりも立体的な嵩高さが高いと推定できる場合も含む。
本発明においては、条件1を満たす置換基を有している場合、Taftの立体パラメーターEs値が−0.07〜−3.00の置換基であることが好ましく、−0.3〜−1.50の置換基であることがより好ましい。
同様に、条件2を満たす置換基を有している場合、各置換基は、Taftの立体パラメーターEs値が0〜−3.00の置換基であることが好ましく、0〜−1.00の置換基であることがより好ましい。
<置換基>
Taftの立体パラメーターEs値が0.00以下の置換基としては、例えば、炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−CO24、−NR56、および、−SR5(ただし、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)などが挙げられる。
炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜15のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ペンチル基(1,1−ジメチルプロピル基)、tert−ブチル基、1,1−ジメチル−3,3−ジメチル−ブチル基が更に好ましく、メチル基、エチル基、tert−ブチル基が特に好ましい。
炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基等の単環式飽和炭化水素基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロオクタジエニル基、シクロデカジエン等の単環式不飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デシル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデシル基、アダマンチル基等の多環式飽和炭化水素基;等が挙げられる。
炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基としては、具体的には、例えば、フェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられ、炭素数6〜12のアリール基(特にフェニル基)が好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子であるのが好ましい。
一方、R4、R5およびR6が示すアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
これらの置換基のうち、原料入手の観点から、炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
なお、炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基のうち、上述した条件1を満たす観点においては、炭素数2〜20の1価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数2〜15のアルキル基が好ましく、炭素数2〜8のアルキル基がより好ましく、具体的には、エチル基、イソプロピル基、tert−ペンチル基(1,1−ジメチルプロピル基)、tert−ブチル基、1,1−ジメチル−3,3−ジメチル−ブチル基が更に好ましく、エチル基、tert−ブチル基が特に好ましい。
本発明においては、上述した置換基を有するヒドロキシ化合物が、芳香環と芳香環を構成する炭素原子に結合したヒドロキシ基とを有する芳香族ヒドロキシ化合物であることが好ましい。
ここで、芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環などの芳香族炭化水素環;フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環などの芳香族複素環;等が挙げられる。
また、本発明においては、上述した置換基を有するヒドロキシ化合物が、フェノール化合物であることがより好ましい。
上記フェノール化合物としては、具体的には、例えば、上述した条件2を満たす置換基を有する下記式(Ph−1)〜(Ph−4)で表される化合物が挙げられる。
ここで、上記式(Ph−1)〜(Ph−4)中、上述した置換基としてのX1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−CO24、−NR56またはSR5を表し、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
なお、X1、X2、X3およびX4としては、Taftの立体パラメーターEs値が0.00以下の置換基として上述したものが挙げられる。
また、上記フェノール化合物の他の具体例としては、下記式(Ph−5)〜(Ph−8)で表される化合物が挙げられる。
上記式(Ph−5)〜(Ph−8)中、Qは、NまたはCHを表し、Qは、−S−、−O−、または−NR11−を表し、R11は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、または、炭素数3〜12の芳香族複素環基を表す。なお、上記芳香族炭化水素基および上記芳香族複素環基は置換基を有していてもよい。
、ZおよびZはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、1価の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR1213または−SR12を表し、ZおよびZは、互いに結合して芳香環または芳香族複素環を形成してもよく、R12およびR13はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。なお、上記式(Ph−5)および(Ph−6)中、ZおよびZは、いずれか1つ以上が水素原子以外の置換基を表し、上記式(Ph−7)および(Ph−8)中、Z、ZおよびZは、いずれか1つ以上が水素原子以外の置換基を表し、これらの具体例としては、Taftの立体パラメーターEs値が0.00以下の置換基として上述したものから、上述した条件1または2を満たすように適宜選択したものが挙げられる。
およびAはそれぞれ独立に、−O−、−NR21−、−S−および−CO−からなる群から選ばれる基であって、R21は、水素原子または置換基を表し、
Xは、水素原子または置換基が結合していてもよい第14族〜第16族の非金属原子(好ましくは、=O、=S、=NR’、=C(R’)R’が挙げられる(ここでR’は置換基を表す))を表し、
Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表し、好ましくは、芳香族炭化水素環基;芳香族複素環基;芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数3〜20のアルキル基;芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数3〜20のアルケニル基;芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数3〜20のアルケニル基が挙げられ、
Ayは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する炭素数2〜30の有機基を表し、この有機基の好適態様は、上記Axの有機基の好適態様と同じであり、
AxおよびAyにおける芳香環はそれぞれ、置換基を有していてもよく、AxとAyは結合して、環を形成していてもよく、
は、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
なお、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基、またはこれらを組み合わせた基等が挙げられる。
〔カルボン酸化合物〕
本発明の製造方法で用いるカルボン酸化合物は、分子内に1個以上の被求核付加構造を有するカルボン酸化合物である。
ここで、「被求核付加構造」とは、求核剤の付加反応または置換反応を受けて、新たな共有結合を生成し得る構造をいう。
被求核付加構造としては、具体的には、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基などのα,β−不飽和カルボニル基;ハロゲン化アルキル;スルホン酸エステル;等が挙げられる。
本発明においては、カルボン酸化合物が有する被求核付加構造が、アクリロイル基またはメタクリロイル基(以下、「(メタ)アクリロイル基」とも略す。)であることが好ましい。
(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸化合物としては、例えば、下記式(Ia)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式(Ia)中、R1が(メタ)アクリロイル基を表す。
ここで、上記式(Ia)中、mは、0〜2の整数を表す。なお、mの数によって複数となるZ1およびL1は、いずれも、互いに同一であっても異なっていてもよい。
本発明においては、溶解性に優れ、製造適性が向上する理由から、mは1であるのが好ましい。
また、上記式(Ia)中、Z1は、置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基または置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表し、中でも、置換基を有していてもよいアリーレン基または置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表すことが好ましい。
上記アリーレン基は、炭素数6〜20のアリーレン基であるのが好ましく、炭素数6〜10のアリーレン基であるのがより好ましい。このようなアリーレン基としては、具体的には、例えば、1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基などが挙げられ、中でも、1,4−フェニレン基が好ましい。
また、上記ヘテロアリーレン基は、炭素数2〜9のヘテロアリーレン基であるのが好ましい。このようなヘテロアリーレン基としては、具体的には、例えば、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピリミジン環、ピラジン環、チオフェン環、フラン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、および、これらが縮環して形成される縮環からなる群から選択されるいずれかの環構造を構成する2個の炭素原子から水素をそれぞれ1個ずつ除いて得られる基などが挙げられる。
また、Z1が示すトランス−1,4−シクロヘキシレン基、アリーレン基またはヘテロアリーレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等)がより好ましく、メチル基またはエチル基であるのが更に好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、メトキシエトキシ基等)がより好ましく、メトキシ基またはエトキシ基であるのが更に好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子であるのが好ましい。
本発明においては、ハライド化し、上述したヒロドキシ化合物と反応(エステル化)した後に液晶性を発現する理由から、上記式(Ia)中のZ1が、置換基を有していてもよいアリーレン基であるのが好ましく、いずれも置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基であるのがより好ましい。
また、上記式(Ia)中、L1は、単結合、−O−、−CH2O−、−OCH2−、−(CH22OC(=O)−、−C(=O)O(CH22−、−NH−、−N(CH3)−、−S−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)N(R3)−、−N(R3)C(=O)−、−C(=O)S−、−SC(=O)−、−CH2C(=O)O−、−OC(=O)CH2−、−CH=CH−C(=O)O−、−OC(=O)−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、および、−N=N−からなる群から選択されるいずれか連結基を表し、R3は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または、炭素数6〜20のアリール基を表す。
3が示すアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましい。
また、R3が示すアリール基としては、具体的には、例えば、フェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられ、炭素数6〜12のアリール基が好ましい。
本発明においては、溶解性に優れ、製造適性が向上する理由から、上記式(Ia)中のL1が、−C(=O)O−または−OC(=O)−であるのが好ましい。
また、上記式(Ia)中、Sp1は、単結合、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、および、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を構成する−CH2−の1個以上が−O−、−S−、−NH−、−N(CH3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−または−C(=O)O−で置換された基、からなる群から選択されるいずれか連結基を表す。
Sp1が示す炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基(置換前のアルキレン基も含む。)としては、炭素数5〜15の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等が挙げられる。
本発明においては、ハライド化し、上述したヒロドキシ化合物と反応(エステル化)した後に液晶性を発現する理由から、上記式(Ia)中のSp1が、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を構成する−CH2−の1個以上が−O−、−S−、−NH−、−N(CH3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−または−C(=O)O−で置換された基(連結基)であるのが好ましく、炭素数5〜15の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を構成する−CH2−の1個以上が−O−、−OC(=O)−または−C(=O)O−で置換された基(連結基)であるのがより好ましく、炭素数5〜15の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を構成する−CH2−の1個または2個が−OC(=O)−または−C(=O)O−で置換され、かつ、炭素数5〜15の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を構成する−CH2−の1個が−O−で置換された基(連結基)であるのが更に好ましい。
また、(メタ)アクリロイル基を有する他のカルボン酸化合物としては、例えば、下記式(IIa)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式(IIa)中、Qが(メタ)アクリロイル基を表す。
ここで、上記式(IIa)中、L5は、単結合、−COO−、または、−OCO−を表し、Aは、炭素数6以上の芳香環、または、炭素数6以上のシクロアルキレン環を表す。
また、Sp3は、単結合、炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する−CH2−の1個以上が−O−、−S−、−NH−、−N(Q)−、もしくは、−CO−に置換された2価の連結基を表す。
また、rは、0〜2の整数を表し、rの数によって複数となるAおよびL5は、いずれも、互いに同一であっても異なっていてもよい。
上記式(IIa)中、Aが示す炭素数6以上の芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環などの芳香族炭化水素環;フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環などの芳香族複素環;等が挙げられ、なかでも、ベンゼン環(例えば、1,4−フェニル基など)が好ましい。同様に、上記式(IIa)中、Aが示す炭素数6以上のシクロアルキレン環としては、例えば、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環などが挙げられ、なかでも、シクロヘキサン環(例えば、シクロヘキサン−1,4−ジイル基など)が好ましい。
また、上記式(IIa)中、Sp3が示す炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が好適に挙げられる。
〔ハライド工程〕
本発明の製造方法が有するハライド工程は、含窒素溶媒中、ハロゲン化剤を用いて、上述したカルボン酸化合物をカルボン酸ハライド化合物に変換する工程である。
<含窒素溶媒>
含窒素溶媒は特に限定されず、従来公知の含窒素溶媒を用いることができる。
本発明においては、溶解性や安定性に優れる理由から、含窒素溶媒としてアミド系溶媒を用いることが好ましい。
アミド系溶媒としては、具体的には、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピ口リドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、ヘキサメチルリン酸卜リアミド、および、ε−カプロラクタム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<ハロゲン化剤>
ハロゲン化剤としては、具体的には、例えば、塩化チオニル、塩化オキサリルおよびホスゲン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、取り扱い性に優れる理由から、ハロゲン化剤として塩化チオニルを用いることが好ましい。
ハライド工程において、ハロゲン化剤の添加量(複数種類を混合する場合はその総添加量)は、反応液中のカルボン酸化合物に対して、0.8〜2.20モル等量であることが好ましく、0.90〜1.50モル等量であることがより好ましく、0.95〜1.20モル等量であることが更に好ましい。
ハライド工程におけるハロゲン化剤とカルボン酸化合物との反応は、上述した含窒素溶媒の存在下、−20〜80℃で行われることが好ましく、−10〜60℃で行われることがより好ましく、0〜40℃で行われることが更に好ましい。
また、ハロゲン化剤とカルボン酸化合物との反応は、1分〜10時間行われることが好ましく、10分〜5時間行われることがより好ましく、20分〜3時間行われることが更に好ましい。
また、ハロゲン化剤とカルボン酸化合物との反応は、撹拌しながら行われることが好ましい。
〔エステル化工程〕
本発明の製造方法が有するエステル化工程は、上述したハライド工程後に、アシル化触媒と、共役酸のpKa(酸解離定数)がアシル化触媒よりも1.5以上大きい塩基とを用いて、上述したハライド工程で生成したカルボン酸ハライド化合物と、上述したヒドロキシ化合物とを反応させ、被求核付加構造を有するエステル化合物を得る工程である。
ここで、pKaとは、水溶液中でのpKaを意味し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に記載のものであり、この値が低いほど酸強度が大きいことを示している。水溶液中でのpKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測することができ、また、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示している。
<ソフトウェアパッケージ1>
Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
<アシル化触媒>
アシル化触媒としては、具体的には、例えば、ピリジン〔pKa(共役酸):5.2〕、2−ピコリン〔pKa(共役酸):6.0〕、3−ピコリン〔pKa(共役酸):5.5〕、4−ピコリン〔pKa(共役酸):5.9〕、2,4−ルチジン〔pKa(共役酸):6.6〕、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)〔pKa(共役酸):9.5〕、4−ピロリジノピリジン〔pKa(共役酸):9.6〕、9−アザジュロリジン〔pKa(共役酸):10.1〕などのピリジン類;イミダゾール〔pKa(共役酸):7.0〕、N−メチルイミダゾール(NMI)〔pKa(共役酸):7.0〕などのイミダゾール類;等が挙げられる。
これらのうち、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、および、N−メチルイミダゾールが好ましい。
<塩基>
塩基としては、具体的には、例えば、トリエチルアミン(TEA)〔pKa(共役酸):10.6〕、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)〔pKa(共役酸):11.0〕、ジアザビシクロウンデセン(DBU)〔pKa(共役酸):12.5〕、N−メチルモルホリン〔pKa(共役酸):7.4〕、トリブチルアミン〔pKa(共役酸):10.0〕、N−メチルピペリジン〔pKa(共役酸):9.9〕、N−ブチルジメチルアミン〔pKa(共役酸):9.8〕等が挙げられる。
本発明においては、上述したアシル化触媒および塩基の併用に関して、アシル化触媒と、共役酸のpKaがアシル化触媒よりも1.5以上大きい塩基とを組み合わせて用いる。
これらの組み合わせとして、アシル化促進剤の求核力が弱すぎず、かつ、塩基が強すぎない理由から、塩基が、トリエチルアミンおよび/またはN,N−ジイソプロピルエチルアミンであり、かつ、アシル化触媒が、N−メチルイミダゾールである態様が好ましい。
エステル化工程において、アシル化触媒の添加量(複数種類を混合する場合はその総添加量)は、反応性を確保しつつ、製造コストをできるだけ抑える理由から、上述した置換基を有するヒドロキシ化合物に対するアシル化触媒のモル等量で0.5〜3.0となる量が好ましく、0.5〜2.5となる量がより好ましく、0.7〜2.0となる量が更に好ましい。
また、塩基の添加量(複数種類を混合する場合はその総添加量)は、反応性を確保しつつ、製造コストをできるだけ抑える理由から、カルボン酸ハライド化合物に対する塩基のモル等量で1.8〜4.0等量となる量が好ましく、2.0〜3.5等量となる量がより好ましく、2.0〜3.0等量となる量が更に好ましい。
エステル化工程におけるカルボン酸ハライド化合物とヒドロキシ化合物との反応は、−10〜40℃で行われることが好ましく、−5〜30℃で行われることがより好ましく、0〜20℃で行われることが更に好ましい。
また、カルボン酸ハライド化合物とヒドロキシ化合物との反応は、10分〜24時間行われることが好ましく、1時間〜10時間行われることがより好ましく、1時間〜8時間行われることが更に好ましい。
また、カルボン酸ハライド化合物とヒドロキシ化合物との反応は、撹拌しながら行われることが好ましい。
本発明の製造方法で得られる被求核付加構造を有するエステル化合物としては、上述したヒドロキシ化合物およびカルボン酸化合物として記載した原料を適宜選択して用いて得られるものが挙げられるが、上述した式(Ph−1)〜(Ph−4)で表される化合物(ヒドロキシ化合物)と、上記式(Ia)で表されるカルボン酸化合物とを用いた場合には、例えば、下記式(I−1)〜(I−18)で表される化合物等が挙げられる。
ここで、上記式(I−1)〜(I−18)で示すRには、Rに隣接する炭素原子との結合を含めて表記している。そのため、例えば、上記式(I−1)で表される化合物の構造は以下の通りとなる。
また、本発明の製造方法で得られる被求核付加構造を有するエステル化合物の他の例としては、上述した式(Ph−5)〜(Ph−8)で表される化合物(ヒドロキシ化合物)と、上記式(IIa)で表されるカルボン酸化合物とを用いた場合には、例えば、下記式で表される液晶性化合物が挙げられる。なお、下記式中の1,4−シクロヘキシレン基は、いずれもトランス−1,4−シクロヘキシレン基であり、ZおよびZは、いずれか1つ以上が水素原子以外の置換基であってTaftの立体パラメーターEs値が0.00以下の置換基を表す。
なお、上記式中、「*」は結合位置を表す。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
〔カルボン酸化合物Aの合成〕
特開2016−081035号公報の[0122]〜[0126]段落に記載された方法に従って下記スキームの反応を行い、下記式(I−4C)で表されるカルボン酸化合物Aを合成した。
〔実施例1〕
被求核付加構造としてアクリロイル基を有するカルボン酸化合物A(20.34g,純度73.76%,29.7mmol)、酢酸エチル84mL、アミド系溶媒としてのN,N−ジメチルアセトアミド21mL、および、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール90mgを室温(25℃)にて混合し、内温を5℃まで冷却した。
次いで、混合物に、ハロゲン化剤としての塩化チオニル(3.46g,29.1mmol)を内温が10℃以上に上昇しないように滴下し、5℃で1時間撹拌することにより、カルボン酸化合物Aのハライド化合物を調製した。
次いで、置換基を有するヒドロキシ化合物としてのトリメチルハイドロキノン(1.92g,12.6mmol)のテトラヒドロフラン15mL溶液を加え、アシル化触媒としてのN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)(462mg,3.78mmol)を加えた。その後、塩基としてのジアザビシクロウンデセン(DBU)(8.86g,58.2mmol)を内温が10℃以上に上昇しないように滴下し、室温にて4時間撹拌することによりエステル化反応を行った。
その後、水650mL、酢酸エチル800mLを加えて反応を停止し、分液を行った。
分液で回収した有機層を高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography:HPLC)〔東ソーTSKgel ODS−80TS、254nmの吸収面積%〕にて分析を行い、原料フェノールの残存割合、ならびに、下記式(I−4)で表される目的物(ジエステル体)および副生成物(アシル化付加体、モノエステル体および亜硫酸エステル)の生成割合を確認した。結果を下記表1に示す。
なお、置換基を有するヒドロキシ化合物としてのトリメチルハイドロキノンは、2個のヒドロキシ基と、3個のメチル基(Taftの立体パラメーターEs値:0.00)を有する化合物である。
〔実施例2〕
アシル化触媒として、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)に代えてN−メチルイミダゾール(NMI)(310mg,3.78mmol)を用い、また、塩基として、ジアザビシクロウンデセン(DBU)に代えてN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(7.52g,58.2mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、エステル化合物を合成した。HPLCの分析結果を下記表1に示す。
〔実施例3〕
アシル化触媒としてのN−メチルイミダゾール(NMI)の添加量を1.02g(12.6mmol)に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、エステル化合物を合成した。HPLCの分析結果を下記表1に示す。
〔実施例4〕
アシル化触媒としてのN−メチルイミダゾール(NMI)の添加量を175mg(2.14mmol)に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、エステル化合物を合成した。HPLCの分析結果を下記表1に示す。
〔実施例5〕
アシル化触媒としてのN−メチルイミダゾール(NMI)の添加量を2.07g(25.2mmol)に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、エステル化合物を合成した。HPLCの分析結果を下記表1に示す。
〔実施例6〕
塩基として、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)に代えてトリエチルアミン(5.89g,58.2mmol)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、エステル化合物を合成した。HPLCの分析結果を下記表1に示す。
〔比較例1〜5〕
アシル化触媒の種類およびモル等量(置換基を有するヒドロキシ化合物に対するアシル化触媒のモル等量)、ならびに、塩基の種類を下記表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、エステル化合物を合成した。HPLCの分析結果を下記表1に示す。
表1に示す結果から、アシル化触媒と、共役酸のpKaがアシル化触媒よりも1.5よりも小さい塩基とを用いてエステル化工程を行った場合は、目的物(ジエステル体)の生成割合が低く、副生成物(特に、アシル化触媒付加体または亜硫酸エステル)の生成割合が高くなることが分かった(比較例1〜4)。
また、アシル化触媒を用いなかった場合には、エステル化の反応が進行しないことが分かった(比較例5)。
これに対し、アシル化触媒と、共役酸のpKaがアシル化触媒よりも1.5以上大きい塩基とを用いてエステル化工程を行った場合は、副生成物の生成割合を低く抑えることができ、目的物(ジエステル体)の生成割合が高くなることが分かった(実施例1〜6)。
特に、実施例2〜5の対比から、エステル化工程において、カルボン酸ハライド化合物に対するアシル化触媒のモル等量が0.5〜3.0であると、副生成物(特に、亜硫酸エステル)の生成割合を低く抑えることができることが分かった。
〔カルボン酸化合物Bの合成〕
特許第4397550号の[0085]〜[0087]段落に記載された方法に従って、下記式で表されるカルボン酸化合物Bを合成した。
〔実施例11〕
被求核付加構造としてアクリロイル基を有するカルボン酸化合物B(5.23g,19.8mmol)、酢酸エチル56mL、アミド系溶媒としてのN,N−ジメチルアセトアミド14mL、および、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール60mgを室温(25℃)にて混合し、内温を5℃まで冷却した。
次いで、混合物に、ハロゲン化剤としての塩化チオニル(2.31g,19.4mmol)を内温が10℃以上に上昇しないように滴下し、5℃で1時間撹拌することにより、カルボン酸化合物Bのハライド化合物を調製した。
次いで、置換基を有するヒドロキシ化合物としての2,6−ジメチルフェノール(2.05g,16.8mmol)のテトラヒドロフラン10mL溶液を加え、アシル化触媒としてのN−メチルイミダゾール(NMI)(1.38mg,16.8mmol)を加えた。その後、塩基としてのN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(5.01g,38.7mmol)を内温が10℃以上に上昇しないように滴下し、室温にて4時間撹拌することによりエステル化反応を行った。
その後、水50mL、酢酸エチル50mLを加えて反応を停止し、分液を行った。
分液で回収した有機層を高速液体クロマトグラフィー(東ソーTSKgel ODS−80TS、254nmの吸収面積%)にて分析を行い、原料フェノールの残存割合、ならびに、下記式で表される目的物および副生成物(アシル化付加体および亜硫酸エステル)の生成割合を確認した。結果を下記表2に示す。
〔実施例12〜16および参考例17〕
ヒドロキシ化合物、カルボン酸化合物、アシル化触媒および塩基の種類を下記表2に示すものに変更した以外は、実施例11と同様の方法で、エステル化合物を合成した。HPLCの分析結果を下記表2に示す。
〔比較例11AおよびB、比較例12〜17〕
ヒドロキシ化合物、カルボン酸化合物、アシル化触媒の種類およびモル等量(置換基を有するヒドロキシ化合物に対するアシル化触媒のモル等量)を下記表2に示すものに変更した以外は、実施例11と同様の方法で、エステル化合物を合成した。HPLCの分析結果を下記表2に示す。
表2に示す結果から、同種のヒドロキシ化合物およびカルボン酸化合物を用いた実施例と比較例とを対比すると、アシル化触媒と、共役酸のpKaがアシル化触媒よりも1.5以上大きい塩基とを用いてエステル化工程を行った場合には、いずれも目的物(ジエステル体)の生成割合が高くなり、かつ、副生成物(亜硫酸エステル)の生成割合が小さくなることが分かった。
また、このような効果は、参考例17および比較例17の結果、すなわち、ヒドロキシ化合物が有する置換基が上述した条件1および2を満たしていない2−メチルフェノールを用いた場合において、アシル化触媒と、共役酸のpKaがアシル化触媒よりも1.5よりも小さい塩基とを用いてエステル化反応を行っても得られない効果であるため、意外な効果であると言える。

Claims (8)

  1. 置換基を有するヒドロキシ化合物と、分子内に1個以上の被求核付加構造を有するカルボン酸化合物とを用いて、被求核付加構造を有するエステル化合物を得るエステル化合物の製造方法であって、
    含窒素溶媒中、ハロゲン化剤を用いて、前記カルボン酸化合物をカルボン酸ハライド化合物に変換するハライド工程と、
    アシル化触媒と、共役酸のpKaが前記アシル化触媒よりも1.5以上大きい塩基とを用いて、前記カルボン酸ハライド化合物と前記ヒドロキシ化合物とを反応させ、被求核付加構造を有するエステル化合物を得るエステル化工程とを有する、エステル化合物の製造方法。
    ただし、前記ヒドロキシ化合物が有する前記置換基は、下記条件1または2を満たす。
    条件1:前記ヒドロキシ化合物が有しているヒドロキシ基が結合している炭素原子に隣接する炭素原子が、Taftの立体パラメーターEs値が−0.07以下となる置換基を1個有する
    条件2:前記ヒドロキシ化合物が有しているヒドロキシ基が結合している炭素原子に隣接する炭素原子が、Taftの立体パラメーターEs値が0.00以下の置換基を2個以上有する
  2. 前記置換基を有するヒドロキシ化合物が、芳香環と前記芳香環を構成する炭素原子に結合したヒドロキシ基とを有する芳香族ヒドロキシ化合物である、請求項1に記載のエステル化合物の製造方法。
  3. 前記置換基を有するヒドロキシ化合物が、フェノール化合物である、請求項1または2に記載のエステル化合物の製造方法。
  4. 前記エステル化工程において、前記置換基を有するヒドロキシ化合物に対する前記アシル化触媒のモル等量が0.5〜3.0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエステル化合物の製造方法。
  5. 前記カルボン酸化合物が有する前記被求核付加構造が、アクリロイル基またはメタクリロイル基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエステル化合物の製造方法。
  6. 前記ハロゲン化剤が塩化チオニルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエステル化合物の製造方法。
  7. 前記含窒素溶媒がアミド系溶媒である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のエステル化合物の製造方法。
  8. 前記塩基が、トリエチルアミンおよび/またはN,N−ジイソプロピルエチルアミンであり、かつ、前記アシル化触媒が、N−メチルイミダゾールである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のエステル化合物の製造方法。
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