以下、本発明の実施の形態によるエアサスペンションシステムを、4輪自動車等の車両に適用した場合を例に挙げ、添付図面の図1ないし図16を参照して詳細に説明する。
ここで、図1ないし図10は第1の実施の形態を示している。図において、エアサスペンション1は、エアスプリングとして車両の各車輪側に搭載されている(図1中では、2個のみ図示)。これらのエアサスペンション1は、車両の車軸側と車体側(いずれも図示せず)との間に設けられ、圧縮空気の給排に応じて車高調整を行うものである。4輪自動車の場合、例えば前輪側の2個と後輪側の2個とで合計4個のエアサスペンション1が配設される。なお、例えば後輪側にのみ左,右のエアサスペンション1(合計2個)を配設する構成とした車両にも適用可能である。
各エアサスペンション1は、エアスプリングとして作動するエア室2を備えている。即ち、エアサスペンション1は、車両の車軸側に取付けられるシリンダ1Aと、該シリンダ1A内から軸方向へと伸縮可能に突出し突出端側が前記車体側に取付けられるピストンロッド1Bとを有している。そして、エア室2は、ピストンロッド1Bの突出端とシリンダ1Aとの間に伸縮可能に設けられ、空気ばねとして作動する。各エアサスペンション1のエア室2は、後述の空気導管10側から圧縮空気が給排されることにより軸方向に拡縮される。このときに、エアサスペンション1は、ピストンロッド1Bがシリンダ1A内から軸方向に伸縮して車両の高さ(車高)を、前記圧縮空気の給排量に応じて調整する。
コンプレッサ3は、空気を圧縮してエアサスペンション1のエア室2に圧縮空気を供給する圧力供給手段である。ここで、コンプレッサ3は、例えば往復動式圧縮機またはスクロール式圧縮機等からなるコンプレッサ本体4と、該コンプレッサ本体4を駆動する電動モータ5とを含んで構成されている。コンプレッサ本体4の吸込み側には吸気弁6Aが設けられ、吐出側には吐出弁6Bが設けられている。なお、駆動源としての電動モータ5は、直流電動機、交流電動機等に限らず、例えばリニアモータで構成してもよい。
コンプレッサ本体4は、電動モータ5により駆動され、吸込フィルタ7側から吸込んだ外気(大気)を圧縮して圧縮空気(エア)を発生させる。吸込フィルタ7は、空気の吸込音を低減するサイレンサとしても機能する。電動モータ5の正(プラス)側と負(マイナス)側の端子には、突入電流等を抑制するためのチョークコイル5A,5Bがそれぞれ接続されている。また、電動モータ5の正側の端子には、チョークコイル5Aと後述のバッテリ17との間に位置してサーマルリレー5Cが接続されている。このサーマルリレー5Cは、過負荷による発熱から電動モータ5を保護するための継電器である。
給排管路8は、コンプレッサ本体4の吐出側に接続して設けられている。給排管路8の一側(基端側)は、コンプレッサ本体4の吐出弁6B側に接続されている。給排管路8の他側(先端側)は、後述する空気導管10の分岐管10A,10Bおよび給排制御弁11,12等を介して各エアサスペンション1のエア室2に接続されている。
エアドライヤ9は、給排管路8の途中に設けられている。このエアドライヤ9の内部には、例えばシリカゲル等の水分吸着剤(図示せず)が多数充填して設けられている。これらの水分吸着剤は、コンプレッサ本体4から吐出される圧縮空気に含まれる水分を内部に吸着する。このため、エアドライヤ9を通過した圧縮空気は、乾燥した圧縮空気となって各エアサスペンション1のエア室2等に供給される。一方、各エア室2から排出された圧縮空気(排気エア)がエアドライヤ9内を逆方向に流通するときには、乾燥した圧縮空気がエアドライヤ9内を逆流する。このとき、エアドライヤ9内の水分吸着剤は、この乾燥エアにより水分が脱着される。これにより、水分吸着剤は再生され、再び水分を吸着可能な状態に戻される。
エアサスペンション1のエア室2は、空気導管10を介してコンプレッサ3の給排管路8に接続されている。ここで、空気導管10は、複数の分岐管(図1中には、2つの分岐管10A,10Bのみを図示)に分岐して設けられ、これらの分岐管10A,10Bは、それぞれエアサスペンション1のエア室2に着脱可能に接続されている。
給排制御弁11,12は、エアサスペンション1のエア室2に対する圧縮空気の給排を制御する弁である。給排制御弁11は、例えば2ポート2位置の電磁式切換弁(ソレノイドバルブ)により構成され、ソレノイド11Aと弁ばね11Bとを有している。給排制御弁11は、弁ばね11Bにより常時は閉弁位置におかれ、後述するコントローラ19からの制御信号によりソレノイド11Aが励磁されると、弁ばね11Bに抗して開弁位置に切換えられる。
給排制御弁11は、エアサスペンション1のエア室2に圧縮空気を供給したり、エア室2から圧縮空気を排気したりするため、例えば分岐管10Aの途中位置に設けられている。なお、この給排制御弁11は、エアサスペンション1のエア室2と分岐管10Aとの間に接続して設ける構成でもよい。また、他の給排制御弁12についても、前述した給排制御弁11と同様に構成されており、例えばソレノイド12Aと弁ばね12Bとを有している。
排気管路13は、コンプレッサ本体4をバイパスして該コンプレッサ本体4の吸気弁6A側と吐出弁6B側との間を接続している。排気弁14は、排気管路13を介して給排管路8に接続されている。この排気弁14は、給排管路8内の圧縮空気を大気中に排出(放出)するときに開弁される。排気弁14は、例えば2ポート2位置の電磁式切換弁(スプリングオフセット式の常閉弁)により構成されている。
排気弁14は、常時は閉弁して排気管路13を外気(大気)に対し遮断している。排気弁14のソレノイド14Aがコントローラ19からの通電により励磁されたときには、排気弁14が開弁して排気管路13を大気に対して開放(連通)させる。このため、給排管路8側の圧縮空気は、排気管路13を介して吸込フィルタ7から外部に排出される。即ち、エアサスペンション1内の圧縮空気は、給排管路8、排気管路13、排気弁14を介して大気中に排出(放出)されるようになる。
圧力センサ15は、エアドライヤ9と給排制御弁11,12との間に位置して例えば給排管路8と空気導管10との接続箇所等に設けられている。圧力センサ15は、各エアサスペンション1の圧力を検出する圧力検出手段を構成し、コンプレッサ本体4の吐出側の圧力(即ち、エアドライヤ9と給排制御弁11,12との間で圧縮空気の圧力P)を検出する。具体的には、圧力センサ15は、エア室2に供給された圧縮空気の圧力Pを検出することにより、圧力Pの検出信号をコントローラ19に出力する。
車高センサ16は各エアサスペンション1にそれぞれ設けられている。各車高センサ16は、例えば上,下方向に伸長または縮小するエア室2の長さ寸法(上,下方向の寸法)に基づいて、エアサスペンション1による車高の変化を検出し、その検出信号をコントローラ19に出力する。これにより、コントローラ19は、各車高センサ16からの検出信号に基づいてエアサスペンション1毎に対応する車輪側の車高を個別に監視することができる。
次に、コンプレッサ3の電動モータ5を駆動するための電気回路について説明する。
車載のバッテリ17は、例えば直流電源を構成している。電動モータ5の正側の端子(即ち、チョークコイル5A側)は、コンプレッサリレー18を介して電源となるバッテリ17に接続されている。電動モータ5の負側の端子(即ち、チョークコイル5B側)は、グランドに接続されアースされている。コンプレッサリレー18は、コイル18Aと接点18Bとを備えている。コンプレッサリレー18は、常時は、接点18Bが開成してOFF状態になり、コイル18Aに電流が流れたときに、接点18Bが閉成してON状態に切換わる。コンプレッサリレー18は、接点18BがON状態となったときに、コンプレッサ3の電動モータ5とバッテリ17との間を接続する。前記コイル18Aの一端は、コントローラ19を介してバッテリ17に接続されている。コイル18Aの他端は、コントローラ19を介してグランドに接続されている。
コントローラ19は、各エアサスペンション1への圧縮空気の給気、排気を制御する制御手段を構成している。このため、コントローラ19は、電動モータ5の駆動を制御すると共に、給排制御弁11,12および排気弁14の開弁,閉弁を制御する。コントローラ19は、その入力側が圧力センサ15および各車高センサ16等に接続され、コントローラ19の出力側は、給排制御弁11,12、排気弁14およびコンプレッサリレー18等に接続されている。
コントローラ19は、例えばROM、RAM、不揮発性メモリ等からなる記憶部19Aを有している。この記憶部19A内には、圧力センサ15の圧力検出値と各車高センサ16からの検出信号とに基づいてエアサスペンション1への圧縮空気の給気、排気を指令する給排指令手段(図示せず)と、例えば図6〜図10に示すエア漏れ異常検知処理用のプログラムと、エアサスペンション1への圧縮空気の給気開始から排気するまでの給気時間をカウントする給気時間カウンタTpumpと、給気時間カウンタTpumpが所定のカウント値に達し、かつ圧力センサ15の圧力検出値が所定値に達しないときの異常時間をカウントする異常時間カウンタ(図7〜図10参照)と、異常時間が所定の判定値に達したときに故障と判断する故障判断手段(図10中のステップ45)とが格納されている。
コントローラ19は、記憶部19Aに格納された前記給排指令手段のプログラムを実行することによって、エアサスペンション1への圧縮空気の給気、排気を制御し、車両の車高を調整する。具体的には、図1に示す如く、コントローラ19は、圧力センサ15、車高センサ16等から入力される検出信号に基づいて、電動モータ5に供給する電流を制御してコンプレッサ3を駆動制御すると共に、給排制御弁11,12のソレノイド11A,12Aおよび排気弁14のソレノイド14Aに供給する電流を制御して給排制御弁11,12および/または排気弁14の開弁,閉弁を制御する。
コントローラ19(即ち、前記給排指令手段)は、エアサスペンションシステムが正常に動作している場合に、図2に示す特性線20のように、コンプレッサ3(電動モータ5)と給排制御弁11,12とに制御指令を出力し、例えば時間T1〜T2の間、コンプレッサ3で生成された圧縮空気がエアサスペンション1のエア室2に供給(給気)される。時間T2〜T3の間は、給気が一時的に中止されている。例えば、走行車両の急加速・急減速・横加速度等の検出により、特性線21として示す給気禁止フラグが時間T2で立つと、エア室2への給気は中断される。
その後、特性線21で示す給気禁止フラグが停止されると、特性線20のように、時間T3において再びエア室2への給気が開始される。図2中の特性線22は、車高センサ16で検出された車両の車高特性を示している。特性線23は、圧力センサ15で検出された給排管路8(空気導管10)内の圧縮空気の圧力特性を示している。
特性線23による圧縮空気の圧力は、時間T3〜T4の間で所定値(圧力閾値Pth)以上となっている。特性線22で示すように、例えば時間T4で車高が目標車高に到達したことが検出されると、コントローラ19は給気を終了すべきと判断する。これにより、例えばコンプレッサ3(電動モータ5)は停止されると共に、給排制御弁11,12が閉弁され、エアサスペンション1のエア室2に対する給気制御が、特性線20のように時間T4で終了される。
図3に示す特性線24,25は、システム圧力の変化特性を表し、具体的には、エアサスペンション1のエア室2内での圧力特性を正常時と異常時とを比較して示している。実線で示す特性線24は、例えば単位時間当りの圧力増加率ΔPをもってエア室2内の圧力が上昇するシステム正常時の特性である。例えば、エア室2内の圧力Pは、初期値Ps から所定値(圧力閾値Pth)まで上昇するのに下記の数1式による所要時間Tthを要している。
一方、エア漏れ異常の発生時には、一点鎖線で示す特性線25のように、エアサスペンション1のエア室2内は、初期値Ps からほとんど変化しない圧力特性となっている。ところで、車両が標高の高い場所(高地)に置かれる場合、エアサスペンション1のエア室2内の圧力は、標高の低い場所(低地)でのエア漏れ異常時の圧力よりも小さくなることがある。このような場合、給気開始後にすぐエア漏れ異常判定を行うと誤判定するため、例えば所要時間Tthにわたってコンプレッサ3を稼動させて給気を行い、この状態でエア室2内の圧力が所定値(圧力閾値Pth)に達していないか否かを検知してエア漏れ異常の判定を行う必要がある。
次に、図4はエア漏れが発生しているシステム異常時の制御状態(例えば、コンプレッサ3と給排制御弁11,12との制御状態)を特性線26で示し、特性線27は車高センサ16で検出された車高特性を示している。特性線28は給気時間カウンタの特性を示し、特性線29は圧力センサ15で検出された圧力の特性を示している。特性線30,31,32は、給気禁止フラグ、異常時間カウンタおよびエア漏れ判定の特性を示している。
図4中の特性線26のように、コンプレッサ3(電動モータ5)と給排制御弁11,12とに制御指令を出力し、例えば時間T11〜T12の間は、エアサスペンション1のエア室2に圧縮空気が供給(給気)される。時間T12〜T13の間は給気が中止されている。例えば、走行車両の急加速・急減速・横加速度等の検出により、給気禁止フラグ(特性線30)が時間T12で立つと、エア室2への給気は中断される。その後、特性線30で示す給気禁止フラグが停止されると、特性線26のように、時間T13において再びエア室2への給気が開始される。
しかし、エア漏れが発生しているシステム異常時では、図4中の特性線27のように、車高センサ16は車両の低車高(目標車高よりも低い車高)を検出する。このとき、特性線29のように、圧力センサ15で検出される圧力は、時間T11,T13でコンプレッサ3が駆動されるときに瞬間的に上昇するだけで、所定値(圧力閾値Pth)よりも低い圧力に下がっている。
ここで、第1の実施の形態では、排気が行われるまでは特性線28のように給気時間カウンタTpumpを保持する。これにより、時間T14で給気時間カウンタTpumpが所定のカウント値(所要時間Tth)に達する。異常時間カウンタは、時間T14(給気時間カウンタTpumpが所定のカウント値に達したとき)に、圧力センサ15の圧力検出値が所定値(圧力閾値Pth)に達しないときの異常時間を、特性線31のように、時間T14〜T15としてカウントする。時間T15で異常時間カウンタのカウント値が所定値以上になると、異常時間が所定の判定値に達しているので、故障判断手段は、特性線32のように、時間T15以降に故障が発生しているとしてエア漏れ判定を行う。
一方、図4中に二点鎖線で示す特性線28′は、比較例による給気時間カウンタの特性を示している。比較例の場合は、給気制御が停止される度毎に給気時間のカウンタはリセットされる。このため、比較例では、二点鎖線で示す特性線26′の如く、給気が開始されてから所定の累計時間(時間T13〜T16)に達するまで給気時間がカウントされる。そして、時間T16で所定のカウント値に達し、かつエア室2内の圧力が所定圧に達していない場合に、二点鎖線で示す特性線31′の如く、時間T17で異常時間カウンタのカウント値が所定値以上になると、故障と判断する。
これに対し、第1の実施の形態では、排気が行われるまでは特性線28のように給気時間カウンタTpumpを保持することにより、時間T14で給気時間カウンタが所定値に達し、かつ時間T15で異常時間カウンタのカウント値が特性線31のように所定値以上になると、特性線32のようにエア漏れ判定を行う。このように、本実施の形態では、時間T15の段階で早期にエア漏れ異常の検出が可能となる。比較例の場合は、二点鎖線で示す特性線31′の如く、時間T17でしかエア漏れ異常を検出することはできない。
次に、図5は制御途中で、配管故障によるエア漏れが発生したシステム異常時を示している。このうち、特性線33は制御状態を示し、特性線34は車高センサ16で検出された車高特性を示している。特性線35は給気時間カウンタTpumpの特性を示し、特性線36は圧力センサ15で検出された圧力の特性を示している。特性線37,38,39は、給気禁止フラグ、異常時間カウンタおよびエア漏れ判定の特性を示している。
図5中の特性線33のように、コンプレッサ3(電動モータ5)と給排制御弁11,12とに制御指令を出力し、例えば時間T21〜T22の間、エアサスペンション1のエア室2に圧縮空気が供給(給気)される。これによって、車両の車高は、特性線34ように、時間T21〜T22の間は漸次高くなっている。また、圧力センサ15で検出される圧力についても、特性線36のように、時間T21〜T22の間はコンプレッサ3が駆動されることにより、所定値(圧力閾値Pth)よりも高い圧力に上昇している。
特性線33で示す制御状態は、時間T22〜T24の間で給気が中止されている。例えば、走行車両の急加速・急減速・横加速度等の検出により、給気禁止フラグ(特性線37)が時間T22で立つと、エア室2への給気は中断される。その後、特性線37で示す給気禁止フラグが停止されると、特性線33のように、時間T24において再びエア室2への給気が開始される。
しかし、図5中に示すように、時間T23で配管故障が発生すると、故障箇所から圧縮空気が漏出するので、図5中の特性線34のように、車高センサ16で検出される車両の車高が時間T23以降は低下してゆくようになる。また、圧力センサ15で検出される圧力についても、特性線36のように、時間T24でコンプレッサ3が駆動されるときに瞬間的に上昇するだけで、所定値(圧力閾値Pth)よりも低い圧力に下がっている。
特性線35で示す給気時間カウンタTpumpは、排気が行われるまでの全ての給気時間を積算でカウントするので、時間T25で給気時間カウンタTpumpが所定のカウント値(所要時間Tth)に達する。異常時間カウンタは、時間T25(給気時間カウンタTpumpが所要時間Tthに達したとき)に、圧力センサ15の圧力検出値が所定値(圧力閾値Pth)に達しないときの異常時間を、特性線38のように、時間T25〜T26としてカウントする。時間T26で異常時間カウンタのカウント値が所定値以上になると、異常時間が所定の判定値に達しているので、故障判断手段は、特性線39のように、時間T26以降に故障が発生しているとしてエア漏れ判定を行う。
一方、図5中に二点鎖線で示す特性線35′は、比較例による給気時間カウンタの特性を示している。比較例では時間T24において給気が開始されるときに給気時間カウンタがカウントを0から開始するため、給気時間カウンタが所定値(所要時間Tth)に到達するのは時間T27であり、エア漏れ異常を検知するのは時間T28である。比較例の場合は、二点鎖線で示す特性線33′の如く、給気が開始されてから所定の累計時間(時間T24〜T27)に達したときに、二点鎖線で示す特性線38′の如く、時間T27で異常時間カウンタの計時が開始される。エア室2内の圧力が所定圧に達していない場合に、時間T28で異常時間カウンタのカウント値が所定値以上になると、故障と判断する。
これに対し、第1の実施の形態では、排気を行うまでは特性線35のように給気時間カウンタTpumpを保持することにより、時間T25で給気時間カウンタTpumpが所定のカウント値(所要時間Tth)に達し、かつ時間T26で異常時間カウンタのカウント値が特性線38のように所定値以上になると、特性線39のようにエア漏れ判定を行う。このため、本実施の形態では、時間T26の段階で早期にエア漏れ異常の検出が可能となる。比較例の場合は、二点鎖線で示す特性線38′の如く、時間T28でしかエア漏れ異常を検出することはできない。
第1の実施の形態によるエアサスペンションシステムは、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
車両の車高調整を行う場合に、コントローラ19は、電動モータ5の駆動を制御すると共に、給排制御弁11,12および排気弁14の開弁,閉弁を制御し、コンプレッサ本体4は電動モータ5によって駆動される。これにより、外部の空気(大気)が吸込フィルタ7から吸気弁6Aを介してコンプレッサ本体4に吸入される。コンプレッサ本体4の吐出弁6Bからは圧縮空気が吐出され、この圧縮空気は給排管路8内に向けて流通し、エアドライヤ9は、内部を通過する圧縮空気を乾燥させる。
この状態で、車高を上げる場合に、コントローラ19は、給排制御弁11,12のソレノイド11A,12Aに制御信号を出力し、給排制御弁11,12を開弁させる。即ち、排気弁14を閉弁状態としたまま、給排制御弁11,12を開弁させることにより、高い圧力の圧縮空気がコンプレッサ本体4から給排管路8、エアドライヤ9、空気導管10の分岐管10A,10Bを介して各エアサスペンション1のエア室2内に供給される。このときの圧縮空気は、エアドライヤ9により乾燥された状態でエアサスペンション1に供給される。このため、高い圧力の乾燥した圧縮空気をエアサスペンション1のエア室2内に供給することができ、エアサスペンション1を伸長させて車高を上げることができる。
次に、コントローラ19は、車高センサ16からの検出信号に基づいて目標車高に達したか否かを判定し、目標車高に達したときには、車高の上げ動作を終了させるため、給排制御弁11,12のソレノイド11A,12Aを消磁させるように制御信号を出力し、給排制御弁11,12を閉弁させる。これにより、コンプレッサ3の給排管路8は、各エアサスペンション1のエア室2に対して遮断されるので、エアサスペンション1は、前記目標車高を維持するように空気ばねとして動作し、前述の如く車高を上げた状態に保つことができる。このとき、コンプレッサ3の電動モータ5は、圧縮運転を中断させるために駆動を停止することができる。
一方、車高を下げる場合に、コントローラ19は、電動モータ5によりコンプレッサ本体4を停止させた状態で、給排制御弁11,12のソレノイド11A,12Aおよび排気弁14のソレノイド14Aを励磁するように制御信号を出力する。これにより、給排制御弁11,12は図1中に示す閉弁位置から開弁位置に切換えられ、排気弁14も閉弁位置から開弁位置へと切換えられる。
これにより、各エアサスペンション1のエア室2内の圧縮空気は、空気導管10、給排管路8に向けて排出され、エアドライヤ9を通過(逆流)するときに、エアドライヤ9内の乾燥剤(即ち、水分吸着剤)を再生させるように動作する。そして、このときの排気(圧縮空気)は、コンプレッサ本体4を迂回するように排気管路13および排気弁14を介して吸込フィルタ7側から外部に排出(放出)される。なお、吸込フィルタ7は、排気される圧縮空気によりダスト等が除去され清浄化される。このとき、エアサスペンション1のエア室2からは圧縮空気が排出されるため、エアサスペンション1を縮小させて車高を下げることができる。
次に、コントローラ19は、車高センサ16からの検出信号に基づいて目標車高に達したと判定すると、車高の下げ動作を終了させるため、給排制御弁11,12のソレノイド11A,12Aおよび排気弁14のソレノイド14Aを消磁させるように制御信号を出力し、給排制御弁11,12を閉弁位置に戻すと共に、排気弁14を閉弁位置に戻す。これにより、コンプレッサ3の給排管路8は、各エアサスペンション1のエア室2に対して遮断されるので、エアサスペンション1は、前記目標車高を維持するように空気ばねとして動作し、前述の如く車高を下げた状態に保つことができる。
ところで、エアサスペンションシステムは、エア漏れによるシステム異常が発生する可能性がある。そして、エアサスペンション1をエア漏れ状態で使用し続けると、エアスプリングとしての機能が損傷される可能性があるため、エア漏れ状態を早期に検知する必要がある。
そこで、第1の実施の形態によるコントローラ19のエア漏れ異常検知処理について、図6ないし図10を参照して説明する。
図6に示すエア漏れ異常検知処理は、ステップ1で初期化処理を行い、ステップ2で給気積算時間判定処理を行う。次に、ステップ3では、図9に具体化して示すエア漏れ判定許可処理を行い、その後はステップ2以降の処理を、例えば車両のエンジンが停止されるまで繰返すように実行する。
ここで、ステップ1の初期化処理は、図7中に具体化して示すステップ11の処理を行うものである。即ち、ステップ11では、給気時間カウンタTpumpを初期値零「0」に設定し、給気所定時間経過フラグを初期値OFFに設定すると共に、判定開始フラグを初期値OFFに設定し、異常時間カウンタを初期値零「0」に設定する。
次に、ステップ2の給気積算時間判定処理は、図8中に具体化して示すステップ21〜29の処理を行うものである。即ち、ステップ21では、エアサスペンション1に対して圧縮空気を給気しているか否かを判定する。例えば、図5中の時間T21〜T22、時間T24〜T26では特性線33に示す如く給気中であるから、ステップ21で「YES」と判定される。次のステップ22では、給気時間カウンタTpumpが所定のカウント値(所要時間Tth)に達し、「Tpump≧Tth」なる関係を満たしているか否かを判定する。
ステップ22で「NO」と判定するときには、次のステップ23で給気時間カウンタTpumpをインクリメントし、「Tpump←Tpump+1」として計数値を歩進させる。これにより、給気時間カウンタTpumpは、前記ステップ11での初期値「0」から「1」ずつ歩進(インクリメント)される。図5中に示す特性線35のように、例えば時間T25で給気時間カウンタTpumpが所定のカウント値(所要時間Tth)に達すると、ステップ22で「YES」と判定される。
このため、次のステップ24では、エア漏れ用の判定開始フラグが「OFF」に設定されているか否かを判定する。ステップ24で「YES」と判定するときには、次のステップ25でエア漏れ用の判定開始フラグを「ON」に設定する。また、ステップ24で「NO」と判定するときには、エア漏れ用の判定開始フラグが既に「ON」に設定されているので、給気積算時間判定処理を終了させる。
一方、ステップ21で「NO」と判定するときには、次のステップ26で排気中であるか否か、即ちエアサスペンション1から圧縮空気が排気され、車高を下げているか否かを判定する。ステップ26で「NO」と判定する間は、圧縮空気を排気して車高を下げている場合ではないので、この場合も給気積算時間判定処理を終了させる。このため、ステップ23による給気時間カウンタTpumpのインクリメントは、ステップ26で「YES」と判定し排気が実行されるまで、またはステップ24で「YES」と判定し給気時間カウンタTpumpが所定のカウント値(所要時間Tth)に達するまで続行される。
次に、ステップ26で「YES」と判定したときには、エアサスペンション1から圧縮空気が排気され車高を下げる場合であるから、次のステップ27で給気時間カウンタTpumpをクリアし、初期値零「0」に設定する。次のステップ28では、エア漏れ用の判定開始フラグを初期値「OFF」に設定する。次のステップ29では、エア漏れ用の異常時間カウンタをクリアし、初期値「0」に設定する処理を行う。
次に、前記ステップ3のエア漏れ判定許可処理について、図9を参照して具体的に説明する。
ここで、図9中のステップ31では、前述したエア漏れ用の判定開始フラグが「ON」に設定されているか否かを判定する。そして、ステップ31で「YES」と判定するときには、次のステップ32でエア漏れ判定処理を実行する。このエア漏れ判定処理は、図9中のエア漏れ判定許可処理によるステップ22で「YES」と判定され、給気時間カウンタTpumpが所要時間Tthに達することによって、ステップ25で判定開始フラグが「ON」に設定された場合に限って行われる処理である。
即ち、エア漏れ判定処理は、エアサスペンション1への圧縮空気の給気開始から排気するまでの給気時間をカウントする給気時間カウンタTpumpが、所定のカウント値(所要時間Tth)に達したときに行わる処理であり、図10に示すステップ41〜47に沿って後述の如く実行される。ステップ31で「NO」と判定するときには、次のステップ33で異常時間カウンタ(タイマ)をクリアし、その後はエア漏れ判定許可処理を終了させる。
次に、図10に示すエア漏れ判定処理は、ステップ41でエアサスペンション1に対して圧縮空気を給気しているか否かを判定する。例えば、図5中の時間T25では、特性線35の如く給気時間カウンタTpumpが所要時間Tthに達した状態で、特性線33に示すように給気中の制御が行われているため、ステップ41で「YES」と判定される。次のステップ42では、圧力センサ15で検出される圧力が、所定値(圧力閾値Pth)以下に下がっているか否かを判定する。例えば図5中の特性線36のように、時間T25で圧力は所定値(圧力閾値Pth)よりも低い圧力に下がっている。
このため、次のステップ43では異常時間カウンタが所定値以上の計数値になっているか否かを判定する。ステップ43で「NO」と判定する間は、次のステップ44で異常時間カウンタをインクリメントして計数値を歩進させる。そして、ステップ43で「YES」と判定したときには、次のステップ45でエア漏れ確定の判定を行う。即ち、異常時間カウンタは、例えば時間T25(給気時間カウンタTpumpが所要時間Tthに達したとき)に、圧力センサ15の圧力検出値が所定値(圧力閾値Pth)に達しないときの異常時間を、特性線38のように、時間T25〜T26としてカウントする。
そして、時間T26で異常時間カウンタのカウント値が所定値以上になると、異常時間が所定の判定値に達しているので、故障判断手段は、特性線39のように、時間T26以降に故障が発生しているとしてエア漏れ判定を行う。この場合、例えば音声合成装置または表示器等の報知装置(図示せず)を用いることにより、車両の運転者に対してエア漏れによる故障が発生していることを報知することができる。
一方、ステップ41で「NO」と判定するときは給気中ではないので、次のステップ46で異常時間カウンタをクリアし零リセットさせる。また、ステップ42で「NO」と判定するときは、圧力センサ15の圧力検出値が所定値(圧力閾値Pth)よりも高くなっているので、次のステップ47で異常時間カウンタをクリアし零リセットさせる。
かくして、第1の実施の形態によれば、排気が行われるまで給気時間カウンタTpumpを保持し、排気が開始されるまでの全ての給気時間を積算でカウントすることにより、給気時間カウンタTpumpが所定値(所要時間Tth)に達し、かつ圧力センサ15で検出される圧力が所定値(圧力閾値Pth)以下に下がって、異常時間カウンタのカウント値(即ち、異常時間)が所定の判定値に達したときに、故障が発生しているとしてエア漏れ判定を行う構成としている。
このため、第1の実施の形態では、例えば図4に示す時間T15、または図5に示す時間T26の段階で早期にエア漏れ異常の検出が可能となり、エア漏れ異常の判定を早期に安定して行うことができ、信頼性を向上することができる。これに対し、比較例の場合は、図4中に二点鎖線で示す特性線31′の如く、時間T17でしかエア漏れ異常を検出することができず、図5の場合も二点鎖線で示す特性線38′の如く、時間T28でしかエア漏れ異常を検出することはできない。
即ち、第1の実施の形態では、給気開始後の連続給気時間ではなく、排気が行われるまでの積算給気時間をエア漏れ異常の検知に用いている。このように、排気が開始されるまでの全ての給気時間を積算でカウントすることにより、従来技術に比較してより早期にエア漏れ異常を検知することが可能になる。従って、エア漏れ異常の検出を早期に安定して行うことができ、信頼性を向上することができる。
次に、図11ないし図15は第2の実施の形態を示している。本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、第2の実施の形態の特徴は、給気時間カウンタTpumpによる所定のカウント値(所要時間Tth)を、例えば標高等の周囲環境に応じて変更し、可変なカウント値Tmaxとして設定する構成としたことにある。
即ち、エア漏れ異常を判定する上での前提条件として、給気時間カウンタTpumpは、排気が行われるまでの全ての給気時間を積算してカウントすることにより、給気時間カウンタTpumpが所定のカウント値(所要時間Tth)に達したか否かを判定する。しかし、この場合の所要時間Tthを、標高の高,低に拘わらず一定値に固定すると、安全サイドの考え方により所要時間Tthを予め余分に長い時間に設定しておく必要が生じる。
ここで、図12に示す後述の特性線43,44からも明らかなように、標高の低い場所(低地)では、システム圧力が初期値Ps から所定値(圧力閾値Pth)に上昇するのに必要な時間が所要時間Taとなる。一方、標高の高い場所(高地)では、システム圧力が初期値Ps から所定値(圧力閾値Pth)に上昇するのに必要な時間が所要時間Tb(Tb>Ta)となる。このため、車両が低地にある場合は、カウント値(所要時間Tth)を、例えば所要時間Taに変更することができ、車両が高地にある場合は、カウント値(所要時間Tth)を、例えば所要時間Tbに変更することができる。
そこで、第2の実施の形態では、第1の実施の形態(図8)におけるカウント値(所要時間Tth)を、標高の高さ,低さに応じて変更可能(可変)なカウント値Tmaxとして設定している。このカウント値Tmaxは、標高の低い場所(低地)では、例えば図12に示す所要時間Taに設定される。標高の高い場所(高地)では、例えば図12に示す所要時間Tbにカウント値Tmaxは設定される。即ち、カウント値Tmaxは、標高の高,低に応じて最適化された可変な時間(値)に設定される。
ここで、図11中に実線で示す特性線41は、例えば海抜100m以下の標高の低い場所(低地)に置かれた車両におけるエアサスペンションシステムの圧力特性であり、例えば時間Ta1でコンプレッサ3が駆動される。これによって、圧力センサ15による圧力検出値は、増加率ΔPa1の傾きをもって増加している。一方、図11中に一点鎖線で示す特性線42は、例えば海抜2000m以上の標高の高い場所(高地)に置かれた車両におけるエアサスペンションシステムの圧力特性であり、例えば時間Ta1でコンプレッサ3が駆動される。しかし、高地におけるエアサスペンションシステムでは、外気の圧力が低い(空気が薄い)ために圧力センサ15による圧力検出値は、増加率ΔPb1(ΔPb1<ΔPa1)の傾きをもって増加する。
前記増加率ΔPa1は、例えば低地において、エアサスペンション1のエア室2から圧縮空気が排気された後に初めて給気を行うときで、かつコンプレッサ3がエアサスペンション1に圧縮空気を給気する前に、コンプレッサ3の内部圧力を高める間の圧力センサ15による圧力検出値の圧力増加率に該当し、時間Ta1〜Ta2間にコンプレッサ3で発生する圧縮空気の圧力変化率である。また、前記増加率ΔPb1は、例えば高地において、エアサスペンション1のエア室2から圧縮空気が排気された後に初めて給気を行うときで、かつコンプレッサ3がエアサスペンション1に圧縮空気を給気する前に、コンプレッサ3の内部圧力を高める間の圧力増加率に該当する。
図11中の時間Ta2で、給排制御弁11,12(図1参照)が開弁されると、給排管路8がエアサスペンション1のエア室2に連通されるため、圧力センサ15による圧力検出値は、時間Ta2〜Ta3にわたって一時的に低下する。しかし、時間Ta1以降はコンプレッサ3が駆動され、時間Ta2以降は圧縮空気が給排管路8からエアサスペンション1のエア室2へと供給され続けているので、圧力センサ15による圧力検出値は、時間Ta3以降の特性線部41A,42Aのように、漸次上昇(増加)している。
標高の低い場所(低地)における特性線部41Aは、標高の高い場所(高地)での特性線部42Aよりも圧力センサ15の圧力検出値が大きく、圧力増加率ΔPax(傾き)も大きくなっている。ボイル・シャルルの法則(P×V=一定)により、特性線部41Aの圧力増加率ΔPaxは、下記の数2式のよる推定演算で求めることができる。また、標高の高い場所(高地)での特性線部42Aの圧力増加率ΔPbxは、下記の数3式のよる推定演算で求めることができる。
ここで、コンプレッサ内部圧室体積Vcmpは、例えば図1中に示す給排制御弁11,12および排気弁14を閉弁させている状態でのコンプレッサ本体4、給排管路8、エアドライヤ9、空気導管10および排気管路13の一部を含めた内部体積を表している。これに対し、エアサスペンションシステム内回路体積Vsysは、給排制御弁11,12を開弁して給排管路8をエアサスペンション1のエア室2に連通させた状態でのコンプレッサ本体4、給排管路8、エアドライヤ9、空気導管10およびエアサスペンション1のエア室2を含めたシステム内回路の総和体積を表している。
即ち、コンプレッサ3で発生した圧縮空気は、給排制御弁11,12が閉弁している間は、コンプレッサ内部圧室体積Vcmpの範囲に留まる。しかし、給排制御弁11,12を開弁したときには、前記圧縮空気がコンプレッサ内部圧室体積Vcmpの範囲からエアサスペンションシステム内回路体積Vsysの全体に流通して充満される。コンプレッサ内部圧室体積Vcmpとエアサスペンションシステム内回路体積Vsysとの比率(Vcmp/Vsys)は、例えば車両の車種に応じた定数として求められ、エアサスペンション1とコンプレッサ3との内部容積、配管の太さおよび長さ等により予め決められる値である。
次に、図12中に実線で示す特性線43は、標高の低い場所(低地)に置かれた車両におけるエアサスペンションシステムの圧力特性であり、例えば単位時間当りの圧力増加率ΔPaをもってエア室2内の圧力が上昇するシステム正常時の特性である。例えば、エア室2内の圧力Pは、初期値Ps から所定値(圧力閾値Pth)まで上昇するのに下記の数4式による所要時間Taを要している。
図12中に一点鎖線で示す特性線44は、標高の高い場所(高地)に置かれた車両において、例えば単位時間当りの圧力増加率ΔPbをもってエア室2内の圧力が上昇するシステム正常時の特性である。例えば、エア室2内の圧力Pは、初期値Ps から所定値(圧力閾値Pth)まで上昇するのに下記の数5式による所要時間Tbを要している。
ここで、システム正常時の圧力増加率ΔPxは、前記数2式と数3式から一般式として下記の数6式により導かれる。また、標高の高,低に応じて可変に設定されるカウント値Tmaxは、前記数4式と数5式から一般式として下記の数7式により導かれる。
前記数6式中の圧力の増加率(P2 −P1 )/Tr は、標高の低い場所(低地)においては、例えば図11中の特性線41で示す時間Ta1〜Ta2の増加率ΔPa1に該当し、標高の高い場所(高地)においては、例えば特性線42で示す時間Ta1〜Ta2の増加率ΔPb1に該当する。即ち、時間Ta1でコンプレッサ3を駆動し、時間Ta2で給排制御弁11,12を開弁するまでの圧力センサ15による圧力検出値は、増加率(P2 −P1 )/Tr で表される傾きをもって増加することになり、これは時間Tr 当りの差圧(P2 −P1 )として求められる。
前記増加率(P2 −P1 )/Tr は、エアサスペンション1のエア室2から圧縮空気が排気された後に初めて給気を行うときで、かつコンプレッサ3がエアサスペンション1に圧縮空気を給気する前に、コンプレッサ3の内部圧力を高める間の圧力センサ15による圧力検出値の増加率に該当する。一方、エア漏れ異常の発生時には、図12中に二点鎖線で示す特性線45のように、エアサスペンション1のエア室2内は、初期値Ps からほとんど変化しない圧力特性となっている。
次に、第2の実施の形態によるコントローラ19のエア漏れ異常検知処理について、図13ないし図15を参照して説明する。
図13に示す第2の実施の形態のエア漏れ異常検知処理は、ステップ51で初期化処理を行い、ステップ52で可変なカウント値Tmaxの設定処理を、図15に具体化して示すように行う。次に、ステップ53では給気積算時間判定処理を行い、次のステップ54では、図9に具体化して示すエア漏れ判定許可処理を行い、その後はステップ52以降の処理を、例えば車両のエンジンが停止されるまで繰返すように実行する。
ここで、ステップ51の初期化処理は、図14中に具体化して示すステップ61の処理を行うものである。即ち、ステップ61では、前記第1の実施の形態でも述べたように給気時間カウンタTpumpを初期値零「0」に設定し、給気所定時間経過フラグを初期値OFFに設定すると共に、判定開始フラグを初期値OFFに設定し、異常時間カウンタを初期値零「0」に設定する。しかし、第2の実施の形態では、ステップ61の初期化処理において、可変なカウント値Tmaxの設定要求に初期値ONを設定する点で第1の実施の形態と異なっている。
次に、ステップ52の可変なカウント値Tmaxの設定処理は、図15中に具体化して示すステップ71〜84の処理を行う。即ち、Tmaxの設定処理は、第1の実施の形態(図8)におけるカウント値(所要時間Tth)を、標高の高さ,低さに応じて変更可能(可変)なカウント値Tmaxとして設定する処理を行うものである。
そこで、ステップ71では、コンプレッサ3が駆動(ON)されているか否かを判定する。例えば、図11中の時間Ta1以降は、特性線41または42に示すようにコンプレッサ3が駆動され、圧力センサ15による圧力検出値は上昇しているので、ステップ71で「YES」と判定される。なお、エア漏れが発生しているときには、前記圧力検出値が上昇することはないが、コンプレッサ3が駆動されると、ステップ71で「YES」と判定する。
次のステップ72では、給排制御弁11,12が閉弁しているか否かを判定する。例えば、図11中の時間Ta1〜Ta2の間は、特性線41または42に示すように給排制御弁11,12が閉弁されているので、ステップ72では「YES」と判定する。次のステップ73では、カウント値Tmaxの設定要求がONに設定されているか否かを判定する。前記ステップ61の処理では、カウント値Tmaxの設定要求に初期値ONを設定しているので、ステップ73では「YES」と判定される。
次のステップ74では、初期稼動時間カウンタTcが、「Tc=0」に設定されているか否かを判定する。例えば、図11中の時間Ta1でコンプレッサ3の駆動が開始されたときに、初期稼動時間カウンタTcは「Tc=0」であるので、ステップ74で「YES」と判定する。このため、次のステップ75では、コンプレッサ3の駆動開始時の圧力P1を圧力センサ15による検出圧力値として読込む。
次のステップ76では、初期稼動時間カウンタTcが、「Tc≧Tr」となって所定の時間Trが経過したか否かを判定する。この時間Trは、例えば図11中の時間Ta1〜Ta2に及ぶ時間として設定される。ステップ75で「NO」と判定する間は、次のステップ77で初期稼動時間カウンタTcをインクリメントし、「Tc←Tc+1」として計数値を歩進させる。これにより、初期稼動時間カウンタTcは、前記ステップ74での初期値「0」から「1」ずつ歩進(インクリメント)される。
その後に、ステップ71〜77にわたる処理が繰返されることにより、その後のステップ76で「YES」と判定したときには、初期稼動時間カウンタTcが「Tc≧Tr」となって所定の時間Tr(図11参照)が経過している。このため、次のステップ78では、コンプレッサ3の駆動を開始してから時間Trが経過したときの圧力P2を圧力センサ15による検出圧力値として読込む。
次のステップ79では、前記数6式による圧力増加率ΔPxを、前記圧力P1,P2、時間Tr、コンプレッサ内部圧室体積Vcmpおよびエアサスペンションシステム内回路体積Vsysに基づいて演算する。即ち、前記数6式による圧力増加率ΔPxは、コンプレッサ3が駆動開始され、コンプレッサ内部圧室体積Vcmpにおける内部圧力を高める間の圧力増加率を、増加率(P2 −P1 )/Tr として求め、その後に給排制御弁11,12を開弁した状態でのエアサスペンションシステム内回路体積Vsysの全体での圧力増加率を、前記数6式によるΔPxとして推定演算している。
なお、エア漏れ異常の発生時には、差圧(P2−P1)が実質的に零または零に近い値となるので、圧力増加率ΔPxも同様に零または零に近い値となる。このため、圧力増加率ΔPxの値からエア漏れの有無を判定(検知)することも可能である。この場合は、前記報知装置により、エア漏れ異常を報知することができる。
次に、ステップ80では、標高の高,低に応じて可変に設定されるカウント値Tmaxを、前記ステップ79による圧力増加率ΔPx、前記初期値Ps および圧力閾値Pthに基づいて前記数7式により算出する。このように、エアサスペンションシステム内回路体積Vsysの全体での圧力増加率ΔPxに基づいて、エア漏れ判定開始までに必要な給気時間(給気時間カウンタTpumpによる判定用のカウント値Tmax)を、標高の高さ,低さに応じて動的に算出することができる。そして、次のステップ81では、カウント値Tmaxの設定要求をOFFとし、Tmax設定処理を終了させる。
一方、ステップ71で「NO」と判定するときには、次のステップ82で排気中であるか否か、即ちエアサスペンション1から圧縮空気が排気され、車高を下げているか否かを判定する。ステップ82で「NO」と判定する間は、圧縮空気を排気して車高を下げている場合ではないので、この場合もTmax設定処理を終了させ、その後はステップ71以降の処理を必要に応じて繰返すようにする。なお、ステップ72,73で「NO」と判定した場合も同様である。
次に、ステップ82で「YES」と判定したときには、エアサスペンション1から圧縮空気が排気され車高を下げる場合であるから、次のステップ83でカウント値Tmaxの設定要求を初期値ONとする。次のステップ84では、初期稼動時間カウンタTcをクリアし、「Tc=0」と設定した状態でTmax設定処理を終了させる。
このようなTmax設定処理の次に行われる給気積算時間判定処理(図13中のステップ53)は、図8に示すステップ21〜29と実質的に同様な処理が行われる。しかし、図15に示すTmax設定処理では、第1の実施の形態(図8)におけるステップ22の判定処理に用いるカウント値(所要時間Tth)を、標高の高さ,低さに応じて変更可能(可変)なカウント値Tmaxとして設定する処理を行っている。
このため、第1の実施の形態のように、図8中のステップ22における判定処理用のカウント値(所要時間Tth)を固定値とする場合に比較して、カウント値Tmaxを、標高の高さ,低さに応じて変更可能(可変)なカウント値として設定することができる。即ち、給気時間カウンタTpumpが所定のカウント値(Tth→Tmax)に達し、「Tpump≧Tmax」なる関係を満たしているか否かを判定することにより、例えば図8中のステップ25で、エア漏れ用の判定開始フラグを「ON」に設定し、この状態で、圧力センサ15で検出される圧力が所定値(圧力閾値Pth)以下に下がって、異常時間カウンタのカウント値が所定の判定値に達したときに、故障が発生しているとしてエア漏れ判定を行うことができる。
かくして、第2の実施の形態によれば、エアサスペンション1のエア室2から圧縮空気が排気された後に初めて給気を行うときで、かつコンプレッサ3がエアサスペンション1に圧縮空気を給気する前に、コンプレッサ3の内部圧力を高める間(即ち、コンプレッサ3で発生する圧縮空気)の圧力検出値の増加率(P2 −P1 )/Tr に基づいて、給気時間カウンタTpumpによるカウント値Tmaxを、例えば標高の高さ,低さに応じて変更可能(可変)なカウント値にする構成としている。
換言すると、第2の実施の形態によれば、車両が標高の高い場所(高地)で走行または停車される場合に、標高の高さ,低さに応じて変更可能(可変)なカウント値Tmaxは、例えば図12中に示す所要時間Tbとして設定される。そして、給気時間カウンタTpumpがカウント値(所要時間Tb)に達し、「Tpump≧Tb」なる関係を満たしているときには、例えば図8中のステップ25のように、エア漏れ用の判定開始フラグを「ON」に設定することができ、この状態で、異常時間カウンタのカウント値が所定の判定値に達したときにエア漏れ判定を行うことができる。
一方、車両が標高の低い場所(低地)で走行または停車される場合に、標高の高さ,低さに応じて変更可能(可変)なカウント値Tmaxは、例えば図12中に示す所要時間Taとして設定される。このため、給気時間カウンタTpumpがカウント値(所要時間Ta)に達し、「Tpump≧Ta」なる関係を満たしているときには、例えば図8中のステップ25のように、エア漏れ用の判定開始フラグを「ON」に設定することができ、この状態で、異常時間カウンタのカウント値が所定の判定値に達したときにエア漏れ判定を行うことができる。
従って、エア漏れ判定開始までに必要な給気時間(給気時間カウンタTpumpによる判定用のカウント値Tmax)を、標高の高さ,低さに応じて動的に算出することが可能となり、例えば標高の低い場所(低地)では、高地に比較して時間(Tb−Ta)だけ早期にエア漏れ判定を行うことができる。即ち、前記数6式による圧力増加率ΔPxが大きいときには、前記数7式によるカウント値Tmaxを小さくすることができ、これに応じてエアサスペンションシステム内でのエア漏れ検出を早期に行うことができる。
また、前記数6式中の増加率(P2 −P1 )/Tr は、圧力供給手段としてのコンプレッサ3による圧力の増加率であり、これは外気圧、バッテリ電圧および/または周囲温度等の要因による影響でも変化する値である。従って、圧力増加率ΔPxを前記数6式から演算することにより、前記要因による影響を補償することが可能となる。
次に、図16は第3の実施の形態を示している。本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、第3の実施の形態の特徴は、エアサスペンション1のエア室2から圧縮空気の排気がされた後、初めて給気を行うときに、外気の圧力検出値に基づいて給気時間カウンタTpumpによる前記カウント値を変更し、可変なカウント値Tmaxとして設定する構成としたことにある。
ここで、図16中に実線で示す特性線51は、例えば外気の圧力検出値(外気圧)が初期値Psaの場合におけるエアサスペンションシステムの正常時の圧力特性である。特性線51で示すように、例えばエア室2内の圧力Pが初期値Psaから所定値(圧力閾値Pth)まで上昇するのに必要な給気時間(給気時間カウンタTpumpによる判定用のカウント値Tmax)は、所要時間Tmax1となっている。
図16中に一点鎖線で示す特性線52は、例えば外気圧が初期値Psb(Psb<Psa)の場合におけるエアサスペンションシステムの正常時の圧力特性である。特性線52で示すように、例えばエア室2内の圧力Pが初期値Psbから所定値(圧力閾値Pth)まで上昇するのに必要な給気時間(給気時間カウンタTpumpによる判定用のカウント値Tmax)は、所要時間Tmax2となっている。
一方、エア漏れ異常の発生時には、図16中に二点鎖線で示す特性線53,54のように、エアサスペンション1のエア室2内は、初期値Psa,Psb からほとんど変化しない圧力特性となっている。ここで、前記外気圧は、専用の外気圧センサを用いて検出してもよく、例えば図1中に示す圧力センサ15によっても検出することは可能である。
かくして、このように構成される第3の実施の形態でも、前記第2の実施の形態とほぼ同様に、エア漏れ判定開始までに必要な給気時間(給気時間カウンタTpumpによる判定用のカウント値Tmax)を、外気圧に応じて動的に算出することが可能となり、例えば外気圧が高い標高の低い場所(低地)では、外気圧が低い高地に比較して時間(Tmax2−Tmax1)だけ早期にエア漏れ判定を行うことができる。
なお、前記第3の実施の形態では、初めて給気を行うときの外気の圧力検出値に基づいて給気時間カウンタTpumpによる判定用のカウント値Tmaxを変更する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば前記第2の実施の形態で述べたように、前記数6式による圧力増加率ΔPxと前記数7式によるカウント値Tmaxを、初めて給気を行うときの外気の圧力検出値を加味するかたちで演算する構成としてもよい。
次に、上記実施の形態に含まれるエアサスペンションシステムとして、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
エアサスペンションシステムの第1の態様としては、車体と車軸との間に介装され空気の給排に応じて車高調整を行うエアサスペンションと、前記エアサスペンションに圧縮空気を供給する圧力供給手段と、前記エアサスペンション内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記エアサスペンションへの圧縮空気の給気、排気を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記圧力検出手段の圧力検出値に基づいて前記エアサスペンションへの圧縮空気の給気、排気を指令する給排指令手段と、前記エアサスペンションへの圧縮空気の給気開始から排気するまでの給気時間をカウントする給気時間カウンタと、前記給気時間カウンタが所定のカウント値に達し、かつ前記圧力検出手段の圧力検出値が所定値に達しないときの異常時間をカウントする異常時間カウンタと、前記異常時間が所定の判定値に達したときに故障と判断する故障判断手段と、により構成されている。
エアサスペンションシステムの第2の態様としては、前記第1の態様において、前記エアサスペンションから圧縮空気の排気がされた後、初めて給気を行うときに、前記圧力供給手段が前記エアサスペンションへ圧縮空気の給気前に内部圧力を高める間の前記圧力検出手段の圧力検出値の増加率に基づいて、前記給気時間カウンタによる前記所定のカウント値を変更する構成としている。
エアサスペンションシステムの第3の態様としては、前記第1の態様または第2の態様において、前記エアサスペンションから圧縮空気の排気がされた後、初めて給気を行うときに、外気の圧力検出値に基づいて前記給気時間カウンタによる前記所定のカウント値を変更する構成としている。