JP2018014453A - 電磁波シールド用蓋材およびその製造方法 - Google Patents

電磁波シールド用蓋材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 金属製部材の一部にポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材が一体化されたものであり、軽量、耐冷熱性、剛性および生産性に優れた電磁波シールド用蓋材を提供する。【解決手段】 上底面が開口している角柱形状を有する電磁波シールド用蓋材であって、該角柱形状を形成する側面及び下底面は表面を物理的処理及び/又は化学的処理した金属製平板であり、該金属製平板部の一体化接合部である辺部は体積固有抵抗10Ω・cm以下であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材である電磁波シールド用蓋材。【選択図】 図1

Description

本発明は、電磁波シールド性能を附与する蓋材に関するものであり、更に詳しくは、上底面が開口している角柱形状の有する金属製部材の一部を特定のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材により一体化してなる蓋材であり、軽量、剛性、耐冷熱性および生産性に優れた電磁波シールド用蓋材に関するものである。
近年、自動車、鉄道車両、航空機といった輸送機用機器には、モータ制御機器や電源装置を始めとする多くの電気・電子機器が搭載されており、該電気・電子機器の誤作動防止のため、高い電界シールド性を有する電磁波遮蔽性能が求められている。また、輸送機用機器には、過酷な冷熱環境下および振動環境下に耐えうる耐冷熱性および剛性を維持しつつ、環境への配慮から軽量化が求められている。
電気・電子機器を自動車、鉄道車両、航空機などの輸送機に搭載する場合には、コンデンサや半導体、IC回路など複数部品をシステムとして一体化したモジュール部品とする場合が多い。
近年、モジュール部品は部品点数の増加に伴い大型化が進行している。本モジュール部品は、一般に、アルミダイキャストなどの剛性に優れ、かつ、誤作動防止のため電磁波遮蔽性能に優れた金属製筐体に収納する手法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
また、軽量化の観点から、モジュール部品を樹脂製の筐体に収納する手法も提案されている(例えば特許文献2、3参照。)。
さらに、金属製筐体と樹脂製筐体とを併用する手法として、250℃以下の低融点金属と樹脂とを二色成形法によって熱融着より一体化した複合成形体が提案されている(例えば特許文献4参照。)。
特開平10−270889号公報 特開2012−5244号公報 特開2004−269664号公報 特開2014−156100号公報
しかし、特許文献1に提案された金属製筐体には、重い、生産性に劣る等という解題を有するものであった。また、特許文献2、3に提案された樹脂製筐体には、金属製筐体と比較して剛性に劣るという課題があった。さらに、特許文献4に提案された複合成形体は、低融点金属を用いることからと剛性に劣るという課題を有しており、かつ低融点金属と樹脂とを二色成形にて熱融着させることから耐冷熱性について劣るという課題を有するものであった。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、電磁波シールド用蓋材の一部にポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材により一体化した金属複合蓋材が、軽量、耐冷熱性、剛性及び生産性に優れる電磁波シールド用蓋材となりうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、上底面が開口している角柱形状を有する電磁波シールド用蓋材であって、該角柱形状を形成する側面及び下底面は表面を物理的処理及び/又は化学的処理した金属製平板であり、該金属製平板部の一体化接合部である辺部は体積固有抵抗10Ω・cm以下であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材であることを特徴とする電磁波シールド用蓋材に関するものである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の電磁波シールド用蓋材は、上底面が開口いている角柱形状を有する物品であって、開口部よりモジュール部品を挿入し、モジュール部品そのものを封入・封止し、電磁波遮蔽を行うことは無論のこと、モジュール部品を構成する基板上のコンデンサや半導体、IC回路などのモジュール部品の蓋として用い、基板との間にこれら部品を封入し電磁波遮蔽を行うことも可能なものである。
本発明の電磁波シールド用蓋材の形状である上底面が開口している角柱形状としては、上底面が開口している角柱形状であれば如何なる形状であってもよく、例えば上底面が開口している三角柱、四角柱、五角柱、六角柱等の各種角柱を挙げることができる。
そして、本発明の電磁波シールド用蓋材の下底面及び側面を構成する金属製平板としては、金属表面を化学的処理及び/又は物理的処理した金属製平板であり、金属製平板の範疇に属するものであればいかなるものでもよく、その中でも得られる電磁波シールド用蓋材が特に電磁波シールドの各種用途に適応可能となることからアルミニウム製平板、アルミニウム合金製平板、マグネシウム製平板、マグネシウム合金製平板、鉄製平板、ステンレス製平板、チタン製平板、銅製平板、銅合金製平板が好ましく、特に軽量化に優れるアルミニウム製平板、アルミニウム合金製平板、マグネシウム製平板、マグネシウム合金製平板が好ましく、さらにはアルミニウム製平板、アルミニウム合金製平板が好ましい。
該金属製平板は、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材と複合化し電磁波シールド用蓋材とした際の接合性、密着性に優れ、特に耐冷熱性に優れた電磁波シールド用蓋材となることから、表面を物理的処理及び/又は化学的処理方法により処理した平板であり、物理的処理方法及び/又は化学的処理方法としては、金属製平板の表面を物理的処理及び/又は化学的処理する方法であれば如何なる方法を用いて物理的処理及び/又は化学的処理する事も可能であり、該物理的処理としては、例えば表面に微小固体粒子を接触又は衝突させる方法、また高エネルギー電磁線を照射する方法等を挙げることができ、より具体的にはサンドブラスト処理、液体ホーニング処理、レーザ加工処理等を挙げることができる。更に、サンドブラスト処理、液体ホーニング処理の際の研磨剤としては、例えばサンド、スチールグリッド、スチールショット、カットワイヤー、アルミナ、炭化ケイ素、金属スラグ、ガラスビーズ、プラスチックビーズ等を挙げることができる。また、レーザ加工処理としては、WO2007/072603号公報、特開平2015−142960号公報に提案の方法等をも挙げることができる。また、該化学的処理としては、例えば陽極酸化処理法、酸又はアルカリの水溶液で化学的処理する方法、等を挙げることができる。そして、陽極酸化処理としては、例えば金属製平板を陽極として電解液中で電化反応を行いその表面に酸化被膜を形成する方法であってもよく、メッキ等の分野において陽極酸化法として一般的に知られている方法を用いることができる。より具体的には、例えば1)一定の直流電圧をかけて電解を行う直流電解法、2)直流成分に交流成分を重畳した電圧をかけることにより電解を行うバイポーラ電解法、等を挙げることができる。陽極酸化法の具体的例示としては、WO2004/055248号公報等に提案の方法等を挙げることができる。また、酸又はアルカリの水溶液で化学的処理する方法としては、例えば金属製平板を酸又はアルカリの水溶液に浸せきし金属製平板表面を化学的処理する方法であってもよく、その際の酸又はアルカリの水溶液としては、例えばリン酸等のリン酸系化合物;クロム酸等のクロム酸系化合物;フッ化水素酸等のフッ化水素酸系化合物;硝酸等の硝酸系化合物;塩酸等の塩酸系化合物;硫酸等の硫酸系化合物;水酸化ナトリウム、アンモニア水溶液などのアルカリ水溶液;トリアジンチオール水溶液、トリアジンチオール誘導体水溶液により化学的処理する方法等を挙げることができ、より具体的例示としては、特開平10−096088号公報、特開平10−056263号公報、特開平04−032585号公報、特開平04−032583号公報、特開平02−298284号公報、WO2009/151099号公報、WO2011/104944号公報等に提案の方法、等を挙げることができる。
また、金属製平板とポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材との接合性、密着性に特に優れた蓋材となることから、該物理的処理及び/又は化学的処理は、単独で処理しても両者を併用して処理しても良く、例えば、表面に物理的処理を施した後に化学的処理を施した金属製平板を用いて電磁波シールド用蓋材となるようにしたものであってもよい。
本発明の電磁波シールド用蓋材は、該金属製平板を角柱形状を形成する側面及び下底面に配置し、該金属製平板の辺部を体積固有抵抗10Ω・cm以下であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材にて一体化接合することにより、電磁波シールド用蓋材としての上底面が開口している角柱形状を附与するものである。
その際の体積固有抵抗10Ω・cm以下であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材を構成するポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略記することもある。)としては、一般にポリフェニレンスルフィドと称される範疇に属するものであればよく、その中でも、特に耐熱性、強度特性に優れるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材となることから、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、アミノ基置換ポリ(p−フェニレンスルフィド)であることが好ましい。そして、該PPS樹脂組成物部材は、容易に効率よく体積固有抵抗10Ω・cm以下とすることができ、かつ剛性に優れた電磁波シールド用蓋材を提供することが可能となることから、炭素繊維を含んでなるPPS樹脂組成物部材であることが好ましい。該炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系、ポリビニルアルコール系等の何れでも使用できる。また、該PPS樹脂組成物部材は、特に耐冷熱性に優れた電磁波シールド用蓋材を提供することが可能となることから、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体及び無水マレイン酸グラフト変性エチレン系重合体からなる群より選択される少なくとも1種以上の変性エチレン系重合体を含むPPS樹脂組成物部材であることが好ましい。
該PPS樹脂組成物部材を構成するPPS樹脂組成物を製造する際の製造方法としては特に制限はなく、一般的な混合・混練方法として知られている方法を用いる事が可能であり、例えば全ての原材料を配合し溶融混練する方法;原材料の一部を配合した後で溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法;あるいは原材料の一部を配合後単軸又は二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法、など、いずれの方法を用いてもよい。そして、溶融混練を行う方法としては、従来から使用されている加熱溶融混練方法を用いることができ、例えば単軸又は二軸押出機、ニーダー、ミル、ブラベンダーなどによる加熱溶融混練方法が挙げられ、特に混練能力に優れた二軸押出機による溶融混練方法が好ましい。また、この際の混練温度は特に限定されるものではなく、通常280〜320℃の中から任意に選ぶことができる。
本発明の電磁波シールド用蓋材を構成するPPS樹脂組成物部材は、電磁波シールド性を保つことが可能であれば如何なる形状、面積、体積、被覆で用いる部材であってもよく、中でも、電磁波シールド用蓋材を構成する金属製平板の組み合わせ辺部・隙間を該PPS樹脂組成物部材により接合・封止したPPS樹脂組成物部材であることが好ましい。例えば、角柱形状の各面をそれぞれ作製した金属製平板を用い該平板を組み合わせ角柱形状の金属製蓋材とする際、あるいは、一面を開口面とした直方体を展開した十字型の金属製平板を用い該平板を折り曲げて直方体の金属製蓋材とする際には、それぞれの辺部同士を該PPS樹脂組成物部材にて接合して電磁波シールド用蓋材とするものであり、該辺部に隙間が生じた場合には該PPS樹脂組成物部材により封止されるものである。そして、その際のPPS樹脂組成物部材としては、特に電磁波シールド性、剛性、耐冷熱性に優れる電磁波シールド用蓋材となることから、肉厚2mm以上のPPS樹脂組成物部材であることが好ましい。
本発明の電磁波シールド用蓋材の製造方法としては、該電磁波シールド用蓋材の製造が可能であれば如何なる製造方法を用いてもよく、例えば該表面が物理的処理及び/又は化学的処理された金属製平板とPPS樹脂組成物部材とを射出成形により直接一体化する方法を用いることができ、その中でも特に効率よく電磁波シールド用蓋材を製造することが可能となることから射出インサート成形法により一体化することが好ましい。そして、該射出インサート成形法としては、例えば金型内に表面を物理的処理及び/又は化学的処理した金属製平板を上底部が開口している角柱形状に装着し、該角柱形状の辺部に体積固有抵抗10Ω・cm以下のPPS樹脂組成物の溶融樹脂を射出インサート成形にて充填し、PPS樹脂組成物部材とし、該金属製平板とPPS樹脂組成物部材とが直接一体化された電磁波シールド用蓋材とする方法を挙げることができる。この際のPPS樹脂組成物の溶融温度としては280〜340℃を挙げることができ、インサート成形を行う際の成形機としては、とりわけ生産性に優れることから射出成形機を用いてインサート射出成形を行うことが好ましい。
本発明の電磁波シールド用蓋材は、軽量、耐冷熱性、剛性及び生産性に優れることから自動車、鉄道車両、航空機といった輸送機用機器の電磁波シールド用蓋材・筐体に好ましく用いられ、とりわけ車両用の電磁波シールド用蓋材・筐体としてより好ましく使用できる。
本発明は、金属表面を物理的処理及び/又は化学的処理した金属製平板と、該金属製平板に体積固有抵抗10Ω・cm以下であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材が一体化された電磁波シールド用蓋材を提供するものであり、該電磁波シールド用蓋材は、軽量、耐冷熱性、剛性及び生産性に優れることから、自動車、鉄道車両、航空機といった輸送機用機器の電磁波シールド用蓋材・筐体として有用なものである。
;実施例1にて示す電磁波シールド用蓋材の概略図(単位:mm) :実施例2にて示す金属製平板の展開図(単位:mm) :実施例2にて示す上底部が開口している四角柱形状の金属製平板の形状付与概略図(単位:mm) :実施例2にて示す電磁波シールド用蓋材の概略図(単位:mm)
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
実施例及び比較例において用いた、ポリフェニレンスルフィド(A)、エチレン系重合体(B)、炭素繊維(C)、ガラス繊維(D)を以下に示す。
<ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)>
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A−1)と記す。):溶融粘度350ポイズ。
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A−2)と記す。):溶融粘度340ポイズ。
<エチレン系共重合体(B)>
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(B−1)(以下、エチレン系共重合体(B−1)と記す。):住友化学(株)製、(商品名)ボンドファースト7M。
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(B−2)(以下、エチレン系共重合体(B−2)と記す。):アルケマ(株)製、(商品名)ボンダインAX8390。
<炭素繊維(C)>
炭素繊維(C−1);東邦テナックス(株)製チョップドファイバー、(商品名)ベスファイト HTA−C6−SRS。
炭素繊維(C−2);三菱レイヨン(株)製チョップドファイバー、(商品名)パイロフィル TR066A。
<ガラス繊維(D)>
ガラス繊維(D−1);日東紡(株)製チョップドストランド、(商品名)CSG−3PA 830。
<合成例1(PPS(A−1)の合成)>
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(NaS・2.9HO)1814g、粒状の苛性ソーダ(100%NaOH:和光純薬特級)8.7g及びN−メチル−2−ピロリドン3232gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、339gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン2129g、N−メチル−2−ピロリドン1783gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、250℃にて2時間重合を行った。次いで、この系に250℃で蒸留水509gを圧入し、255℃まで昇温してさらに2時間重合反応を行った。重合終了後、室温まで冷却し、重合スラリーを遠心濾過器で固液分離した。ケーキを窒素気流下でN−メチル−2−ピロリドン、アセトンで順次3回繰り返し洗浄し、さらに、窒素気流下で0.2%塩酸、及び温水で順次洗浄した。得られたポリ(p−フェニレンスルフィド)を105℃で一昼夜乾燥することによって、溶融粘度が350ポイズのPPS(A−1)を得た。
<合成例2(PPS(A−2)の合成)>
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(NaS・2.9HO)1854g、30%苛性ソーダ溶液(30%NaOHaq)48g及びN−メチル−2−ピロリドン3679gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、380gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン2140g、N−メチル−2−ピロリドン985gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合後、減圧下で重合スラリーからN−メチル−2−ピロリドンを蒸留操作で回収した。最終到達温度は170℃で圧力は4.7kPaであった。得られたケーキに80℃の温水を加えスラリー濃度20%として洗浄し、再度、同様に温水を加え175℃まで昇温してポリ(p−フェニレンスルフィド)の洗浄を合計2回行った。得られたポリフェニレンスルフィドを105℃で一昼夜乾燥した。次いで、乾燥したポリフェニレンスルフィドをバッチ式ロータリーキルン型焼成装置に充填し、窒素雰囲気下で240℃まで昇温し、0.5時間の保持による硬化処理を行うことによって、溶融粘度が340ポイズのPPS(A−2)を得た。
得られたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、電磁波シールド用蓋材の評価・測定方法を以下に示す。
〜ポリフェニレンスルフィド樹脂の溶融粘度測定〜
直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスター((株)島津製作所製、(商品名)CFT−500)にて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で溶融粘度の測定を行った。
〜ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の体積固有抵抗測定〜
ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を、シリンダー温度310℃、金型温度135℃とした射出成形機(住友重機械工業(株)製、(商品名)SE−75S)によって射出成形し、127mm×12.7mm×3.2mm厚の成形体とし、デジタルマルチメーター(アドバンテスト(株)製、(商品名)TR−6855)を用いて、体積固有抵抗の測定を行った。
〜電磁波シールド性の評価〜
得られた電磁波シールド用蓋材に周波数1GHzを発振する発振器を入れ、開口面を厚さ10mmのアルミニウム製板および電磁波シールド性能を有するシートで隙間なく覆い、ARIB TR−G1に従い、測定距離3m、地上高1.5m、測定用受信アンテナにホーンアンテナを用い、スペクトルアナライザ(アドバンテスト株式会社製、(商品名)R−3361A)にて1GHzにおける電磁波シールド性を評価した。電磁波シールド性としてシールド性能が30デシベル以上のものを実用上充分な値を示すと判断した。
〜耐冷熱性の評価〜
得られた電磁波シールド用蓋材を150℃で30min保持した後、−40℃で30min保持することを1サイクルとする冷熱サイクルに供し、250サイクル試験した。試験後、目視により金属製平板部とポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材とのはく離の有無を観察した。はく離の認められなかったものを合格品とした。
実施例1
アルミニウム合金(A7075)製板を加工し、一辺が100mmの正六角形の形状で厚さ1mmの平板1枚、および、100mm×50mm×1mm厚さの平板6枚のアルミニウム合金(A7075)製平板を作製した。該アルミニウム合金(A7075)製平板をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、波長1.064μmのレーザを用いハッチング幅0.09mm、周波数9KHz、速度80mm/秒で直交方向に1000回走査するレーザ処理を行うことにより、アルミニウム合金表面を物理的処理したアルミニウム合金(A7075)製平板を得た。
合成例1で得られたPPS(A−1)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B−1)10重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、炭素繊維(C−1)をPPS(A−1)100重量部に対して50重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。得られたPPS樹脂組成物の体積固有抵抗は、5Ω・cmであった。
得られた該アルミニウム合金(A7075)製平板を、上底部が開口面とした正六角柱の形状となるようにアルミニウム合金製平板を金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度140℃に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE100S)を用いて、該PPS樹脂組成物を該アルミニウム合金製平板の各辺部に肉厚5mmで射出成形し、図1に示す電磁波シールド用蓋材を作製し、電磁波シールド性能、耐冷熱性の評価を行った。
電磁波シールド性能は31デシベルを示し、耐冷熱性の評価ではく離は認められなかった。
実施例2
アルミニウム合金(A5052)製平板を加工し、図2に示す、底面が150mm×150mmで、側面が150mm×50mmで肉厚1mmの十字型のアルミニウム合金(A5052)製平板を作製した。該アルミニウム合金(A5052)製平板をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該アルミニウム合金製平板を1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液、次いで10重量%硫酸水溶液に浸漬し、さらに15重量%硫酸水溶液中で電流密度0.5A/cmで陽極酸化処理することにより、アルミニウム合金表面を化学的処理したアルミニウム合金(A5052)製平板を得た。
合成例2で得られたPPS(A−2)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B−2)15重量部、を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、炭素繊維(C−2)をPPS(A−2)100重量部に対して75重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。得られたPPS樹脂組成物の体積固有抵抗は、1Ω・cmであった。
得られた該アルミニウム合金(A5052)製平板を折り曲げて、図3に示す、上底面を開口面とした直方体形状のアルミニウム合金製部材を金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度140℃に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE100S)を用いて、該PPS樹脂組成物を該アルミニウム合金製板の各辺に肉厚2mmで射出成形し、図4に示す電磁波シールド用蓋材を作製し、電磁波シールド性能、耐冷熱性の評価を行った。
電磁波シールド性能は40デシベルを示し、耐冷熱性の評価ではく離は認められなかった。
比較例1
アルミニウム合金製平板表面の粗面化を行わず、未処理アルミニウム合金製平板とした以外は、実施例1と同様の方法によりアルミニウム合金製部材、蓋材を得、電磁波シールド性能、耐冷熱性の評価を行った。
電磁波シールド性能は30デシベルを示したものの、耐冷熱性の評価ではく離が認められた。
比較例2
実施例1の炭素繊維(C−1)をガラス繊維(D−1)とした以外は、実施例1と同様の方法によりPPS樹脂組成物、蓋材を得、電磁波シールド性能、耐冷熱性の評価を行った。得られたPPS樹脂組成物の体積固有抵抗は、1014Ω・cmであった。
耐冷熱性の評価ではく離は認められなかったものの、電磁波シールド性能は3デシベルであり、電磁波シールド性能に劣るものであった。
本発明は、金属表面を物理的処理及び/又は化学的処理した金属製平板と、金属製平板に体積固有抵抗10Ω・cm以下であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材が一体化された電磁波シールド用蓋材を提供するものであり、該電磁波シールド用蓋材は、軽量、耐冷熱性、剛性及び生産性に優れることから、自動車、鉄道車両、航空機といった輸送機用機器のモジュール部品の電磁波シールド用蓋材・筐体に期待されるものである。
1;アルミニウム合金製平板
2;ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材

Claims (5)

  1. 上底面が開口している角柱形状を有する電磁波シールド用蓋材であって、該角柱形状を形成する側面及び下底面は表面を物理的処理及び/又は化学的処理した金属製平板であり、該金属製平板部の一体化接合部である辺部は体積固有抵抗10Ω・cm以下であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材であることを特徴とする電磁波シールド用蓋材。
  2. ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材が、肉厚2mm以上を有するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールド用蓋材。
  3. 角柱形状が、四角柱又は六角柱であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波シールド用蓋材。
  4. ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材が、少なくとも、ポリフェニレンスルフィド樹脂、炭素繊維、エチレン系共重合体を含むポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電磁波シールド用蓋材。
  5. 金型内に表面を物理的処理及び/又は化学的処理した金属製平板を上底面が開口している角柱形状に装着し、該角柱形状の辺部に体積固有抵抗10Ω・cm以下であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の溶融樹脂を射出インサート成形し、金属製平板とポリフェニレンスルフィド樹脂組成物部材とを一体化した上底面が開口している角柱形状とすることを特徴とする請求項1〜4に記載の電磁波シールド用蓋材の製造方法。
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