JP2019147251A - 金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材との接合強度に優れる金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を信頼性を堅持したまま安定的に製造する方法を提供する。【解決手段】 射出成形金型内の金属部材に対し、溶融ポリアリーレンスルフィド樹脂を射出成形により直接一体化する金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法であって、金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の接合面に対して、超音波探傷試験装置から超音波を発信し、接合面で反射する超音波の強度をエコー高さとして測定し、該エコー高さの基準値を超える金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体が製造された際に、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥温度、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥時間、射出成形温度、射出成形金型温度、射出成形時間、射出成形金型保圧力、射出成形金型保圧時間、金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体冷却時間のいずれか1種以上の成形条件を制御する金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法。【選択図】 なし
Description
本発明は、接合面の接合強度に優れる金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、耐衝撃性、軽量性及び量産性に優れ、特に自動車や航空機などの輸送機器の部品用途に有用な金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材との接合強度に優れる金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を安定的に製造する方法に関するものである。
自動車や航空機などの輸送機器の部品を軽量化するため、金属の一部を樹脂に置き換える方法が検討されている。また、樹脂と金属を複合一体化する方法として、金型内に物理的処理及び/又は化学処理を施した表面を有する金属部材をインサートし、樹脂を射出成形して直接一体化する方法(以下、射出インサート成形法と表記する場合がある)が、良量産性、少部品点数、低コスト、高設計自由度、低環境負荷の観点から注目されており、スマートフォン等の携帯電子機器の製造プロセスなどに提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPSと略記することもある。)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略記することもある。)は、優れた機械的特性、熱的特性、電気的特性、耐薬品性を有し、多くの電気・電子機器部材や自動車機器部材、その他OA機器部材等、幅広く使用されている。
また、PASは溶融流動性に優れることから、物理的処理及び/又は化学処理を施した表面を有する金属部材との射出インサート成形法において、優れた接合強度を発現する。
一方、超音波探傷試験は、検体の空隙などの欠陥を検査する手法として一般に使用されており、例えば、摩擦攪拌接合部の検査、金属部品の接合面を検査、金属セラミック−接合体の接合部の評価方法として提案されている(例えば、特許文献4〜6参照。)。
しかし、特許文献1〜3に提案された射出インサート成形法により得られる金属部材−樹脂部材複合体においては、一定の接合強度を有するものを得ることが可能ではあるが、射出インサート成形では装置の動作不良や条件設定のミス、射出成形機シリンダ内での樹脂滞留時間の長短などにより金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材との接合不良が発生し、接合面に空隙などの欠陥を生じる場合があり、個々の性能差のバラつきが大きく、安定的な製品とする際には課題のあるものであった。また、得られた複合体の接合面の接合状態に関する情報を得るために、複合体の引張試験により接合強度を評価するといった破壊試験による検査が一般的であり、このような方法は製品の信頼性確認には採用することができない。その対処法として、抜き取りによる試験も採用されているが、歩留まりが低下し、量産性に乏しいといった課題が発生する。そこで、工業的な量産、品質管理を考慮した場合、複合体の接合面の接合状態、例えば欠陥発生状況が非破壊試験によって定量的に数値化された金属部材−樹脂部材複合体が望まれていた。
特許文献4〜6に提案された超音波探傷試験による検査については、金属部材−樹脂部材複合体を対象としたものでなく、金属部材−樹脂部材複合体について、何ら記載されていない。
そこで、本発明は、金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材との接合強度に優れる金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を信頼性を堅持したまま安定的に製造する方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、接合面で反射する超音波の反射強度がある一定の割合以下である金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体が、優れた接合強度を有するものとなること、接合の信頼性に優れること、さらに耐衝撃性、軽量性及び量産性に優れる部材、部品、製品等となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、射出成形金型内の金属部材に対し、溶融ポリアリーレンスルフィド樹脂を射出成形により直接一体化する金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法であって、金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の接合面に対して、超音波探傷試験装置から超音波を発信し、接合面で反射する超音波の強度をエコー高さとして測定し、該エコー高さの基準値を超える金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体が製造された際に、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥温度、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥時間、射出成形温度、射出成形金型温度、射出成形時間、射出成形金型保圧力、射出成形金型保圧時間、金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体冷却時間のいずれか1種以上の成形条件を制御することを特徴とする金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法に関するものである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法による金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体は、金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材とを射出成形により直接一体化してなる金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体であり、その接合面に対して、超音波を発信し、接合面で反射する超音波のエコー高さを測定し、該エコー高さが基準値を超える場合に成形条件を変更しその最適化を行うものである。そして、その際の基準値となるエコー高さは、接合強度に優れる金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体が安定的に製造できることから35%が好ましく、特に30%であることが好ましい。ここで、超音波のエコー高さが基準値を超える場合、接合面に超音波を反射し易い空隙、欠損が多く存在していることが示唆され接合強度に劣るものとなる。なお、本発明におけるエコー高さとは、接合面で反射する超音波の強度である反射強度に対する照射強度の比率(反射強度/照射強度×100)として表されるものである。
そして、超音波のエコー高さの測定方法としては、例えば超音波探傷試験を用いることができる。該超音波探傷試験としては、1つの超音波探触子を用いる一探触子法と複数の超音波探触子を用いる二探触子法があり、いずれも使用可能である。また、該一探触子法としては、接合体に直接接触する直接接触法ないしは接合体を水没させる水浸探傷法などがありいずれの使用も可能であり、とりわけ接合面の微少欠陥を精度よく検出できることから水浸探傷法が好ましい。さらに、該超音波探傷試験としては、反射法又は透過法が知られており、中でも、複合体内部の欠陥の位置を特定する事が可能となること、金属部材内部もしくはポリアリーレンスルフィド樹脂部材内部の欠陥、更には接合面の欠陥を判別できること、から反射法であることが好ましい。超音波探傷試験における該反射法とは、超音波探傷試験装置の超音波探触子から超音波が接合面に向かって発信され、接合面に空隙、欠陥等が存在すると超音波が反射され、超音波探触子に戻る試験方法である。
そして、該超音波のエコー高さとは超音波の照射強度に対する反射強度の比率であり、接合面に空隙、欠陥等がない場合には、超音波は該接合面で反射されず、該接合面におけるエコー高さは0%に近づく。一方、接合面に欠陥等がある場合、超音波は該接合面で反射されエコー高さは大きくなり、接合面方向に広がった超音波ビーム径より大きな欠陥がある場合にはエコー高さが100%に近づく。該反射法における欠陥の位置は、超音波の伝播時間に音速を乗じて計算することが可能であり、該エコー高さが検出された時間から、接合面の欠陥、金属部材内部またはポリアリーレンスルフィド樹脂部材内部の欠陥のいずれかを判別することができ、接合面の欠陥に相当する位置のエコー高さを接合面のエコー高さとする。そして、該超音波のエコー高さは、発信された超音波が金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の金属部材を通過して接合面から反射したエコー高さとすることが、ポリアリーレンスルフィド樹脂部材内部のボイドなどの欠陥を排除し精度よく検出できることから好ましい。
該超音波探触子から発信する超音波の入射波は、入射波を接合面に対して垂直に発信する垂直探傷法、もしくは、入射波を接合面に対して垂直以外の任意の角度から発信する斜角探傷法が挙げられ、中でも、金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体内部を通過する距離が短く反射波を効率よく受信できることから垂直探傷法を用いることが好ましい。また、該超音波探傷試験の超音波探触子から発信される周波数は、超音波と称する20KHz以上の周波数域であればいかなる周波数を発信する超音波探触子を用いても構わないが、その中でも、微少な欠陥を検出できることから10MHz以上、好ましくは20MHz以上、特に25MHz以上の高周波数の超音波を発信する探触子を用いることが好ましい。なお、超音波探触子は市販のものが使用でき、具体的例示としては、(商品名)水浸型探触子V324−SU、V316−SU(オリンパス(株)製)、(商品名)水浸探触子10C5I(ジャパンプローブ(株)製)、(商品名)水浸型探触子MI((株)検査技術研究所製)、(商品名)高周波探触子V358−SU、V356−SU(オリンパス(株)製)、高周波探触子25E6I(ジャパンプローブ(株)製)などが挙げられる。
本発明における金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を構成するポリアリーレンスルフィド樹脂としては、一般にポリアリーレンスルフィド樹脂と称される範疇に属するものであればよく、該ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、例えばp−フェニレンスルフィド単位、m−フェニレンスルフィド単位、o−フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルフォン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ビフェニレンスルフィド単位からなる単独重合体又は共重合体を挙げることができ、該ポリアリーレンスルフィド樹脂の具体的例示としては、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリフェニレンスルフィドスルフォン、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリフェニレンスルフィドエーテル等が挙げられ、その中でも、特に耐熱性、強度特性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、ポリ(p−フェニレンスルフィド)であることが好ましい。
さらに、該ポリアリーレンスルフィド樹脂は、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度において、機械的強度と薄肉流動性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂が得られることから50〜2000ポイズのポリアリーレンスルフィド樹脂であることが好ましい。
該ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法として知られている方法により製造することが可能であり、例えば極性溶媒中で硫化アルカリ金属塩、ポリハロ芳香族化合物を重合することにより得る事が可能である。その際の極性有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等を挙げる事ができ、硫化アルカリ金属塩としては、例えば硫化ナトリウム、硫化ルビジウム、硫化リチウムの無水物又は水和物を挙げる事ができる。また、硫化アルカリ金属塩としては、水硫化アルカリ金属塩とアルカリ金属水酸化物を反応させたものであってもよい。ポリハロ芳香族化合物としては、例えばp−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、p−ジヨードベンゼン、m−ジクロロベンゼン、m−ジブロモベンゼン、m−ジヨードベンゼン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロジビフェニル等を挙げる事ができる。
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、直鎖状のもの、重合時にトリハロゲン以上のポリハロゲン化合物を少量添加して若干の架橋又は分岐構造を導入したもの、ポリアリーレンスルフィド樹脂の分子鎖の一部及び/又は末端を例えばカルボキシル基、カルボキシ金属塩、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基等の官能基により変性したもの、窒素などの非酸化性の不活性ガス中で加熱処理を施したものなどが挙げられ、さらにこれらポリアリーレンスルフィド樹脂の混合物であってもかまわない。また、該ポリアリーレンスルフィド樹脂は、酸洗浄、熱水洗浄あるいはアセトン、メチルアルコールなどの有機溶媒による洗浄処理を行うことによってナトリウム原子、ポリアリーレンスルフィド樹脂のオリゴマー、食塩、4−(N−メチル−クロロフェニルアミノ)ブタノエートのナトリウム塩などの不純物を低減させたものであってもよい。
本発明の金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を構成するポリアリーレンスルフィド樹脂は特に接合面の欠陥が少なく、耐衝撃性に優れた金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体となることから、さらに、変性エチレン系共重合体を配合してなるものが好ましい。該変性エチレン系共重合体は、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体,エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体,エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体,エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体及び無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種以上の変性エチレン系共重合体であることが好ましい。該変性エチレン系共重合体の配合量としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して、1〜40重量部であることが好ましい。
本発明における金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を構成するポリアリーレンスルフィド樹脂は特に強度、耐衝撃性に優れた金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体となることから、ガラス繊維を配合してなるものが好ましい。該ガラス繊維としては、一般にガラス繊維と称すものであれば如何なるものを用いてもよい。該ガラス繊維の具体的例示としては、平均繊維径が6〜14μmのチョップドストランド、繊維断面のアスペクト比が2〜4の扁平ガラス繊維からなるチョップドストランド、ミルドファイバー、ロービング等のガラス繊維;シラン繊維;アルミノ珪酸塩ガラス繊維;中空ガラス繊維;ノンホーローガラス繊維等が挙げられ、その中でもとりわけ接合面の欠陥が少なく、耐衝撃性に優れる金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体となることから、平均繊維径が6〜14μmのチョップドストランド、ないしは、繊維断面のアスペクト比が2〜4である扁平ガラス繊維からなるチョップドストランドであることが好ましい。これらのガラス繊維は2種以上を併用することも可能であり、必要によりエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物又はポリマーで、予め表面処理したものを用いてもよい。該ガラス繊維の配合量としては、とりわけ接合面の欠陥が少なく耐衝撃性に優れた金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体となることから、ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して、5〜120重量部であることが好ましい。
本発明における金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を構成するポリアリーレンスルフィド樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、マイカ、シリカ、タルク、クレイ、硫酸カルシウム、カオリン、ワラステナイト、ゼオライト、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ガラスパウダー、ガラスバルーン、ガラスフレークが添加されたものであっても構わない。
また、該ポリアリーレンスルフィド樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知のタルク、カオリン、シリカなどの結晶核剤;ポリアルキレンオキサイドオリゴマー系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤;酸化防止剤;熱安定剤;滑剤;紫外線防止剤;発泡剤などの通常の添加剤を1種以上添加するものであってもよい。
さらに、本発明における金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を構成するポリアリーレンスルフィド樹脂は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、各種熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアルキレンオキサイド等の1種以上を混合して使用してなるものであってもよい。
本発明の金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体は、ポリアリーレンスルフィド樹脂部材と金属部材とを射出成形により直接一体化したものであり、該金属部材としては、特に反射超音波強度の低いものとなることから、物理的処理及び/又は化学処理を施した表面を有する金属部材であることが好ましい。
そして、該金属部材としては、金属部材の範疇に属するものであればいかなる材質よりなる部材でもよく、その中でもポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体とした際に各種用途への適応が可能となることから、アルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材、銅製部材、銅合金製部材、マグネシウム製部材、マグネシウム合金製部材、鉄製部材、チタン製部材、チタン合金製部材、ステンレス製部材である金属部材が好ましく、とりわけ軽量化に優れる、アルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材、マグネシウム製部材、マグネシウム合金製部材、チタン製部材、チタン合金製部材である金属部材が好ましく、より好ましくはアルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材である。また、該金属部材は、板に代表される展伸材であっても、ダイカストに代表される鋳造材であっても、鍛造材からなる金属部材であってもかまわない。
該金属部材は、表面を物理的処理及び/又は化学処理した金属部材とすることが好ましく、該物理的処理及び/又は化学処理を施すことにより、ポリアリーレンスルフィド樹脂部材と直接一体化した際に、より反射超音波強度の低い金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体が得られるものとなる。そして、金属部材の表面を物理的処理及び/又は化学処理する方法としては如何なる方法を用いて物理的処理及び/又は化学処理を施すことも可能であり、物理的処理としては、例えば表面に微小固体粒子を接触又は衝突させる方法、また高エネルギー電磁線を照射する方法等を挙げることができ、より具体的にはサンドブラスト処理、液体ホーニング処理、レーザ加工処理等を挙げることができる。更に、サンドブラスト処理、液体ホーニング処理の際の研磨剤としては、例えばサンド、スチールグリッド、スチールショット、カットワイヤー、アルミナ、炭化ケイ素、金属スラグ、ガラスビーズ、プラスチックビーズ等を挙げることができる。また、レーザ加工処理としては、WO2007/072603号公報、特開平2015−142960号公報に提案の方法等をも挙げることができる。
また、化学処理としては、例えば陽極酸化処理法、酸及び/又はアルカリの水溶液で化学処理する方法、等を挙げることができる。そして、陽極酸化処理としては、例えば金属部材を陽極として電解液中で電化反応を行いその表面に酸化被膜を形成する方法であってもよく、メッキ等の分野において陽極酸化法として一般的に知られている方法を用いることができる。より具体的には、例えば1)一定の直流電圧をかけて電解を行う直流電解法、2)直流成分に交流成分を重畳した電圧をかけることにより電解を行うバイポーラ電解法、等を挙げることができる。陽極酸化法の具体的例示としては、WO2004/055248号公報等に提案の方法等を挙げることができる。また、酸又はアルカリの水溶液で化学処理する方法としては、例えば金属部材を酸及び/又はアルカリの水溶液に浸せきし金属部材表面を化学処理する方法であってもよく、その際の酸及び/又はアルカリの水溶液としては、例えばリン酸等のリン酸系化合物;クロム酸等のクロム酸系化合物;フッ化水素酸等のフッ化水素酸系化合物;硝酸等の硝酸系化合物;塩酸等の塩酸系化合物;硫酸等の硫酸系化合物;水酸化ナトリウム、アンモニア水溶液などのアルカリ水溶液;トリアジンチオール水溶液、トリアジンチオール誘導体水溶液により化学処理する方法等を挙げることができ、より具体的例示としては、特開平10−096088号公報、特開平10−056263号公報、特開平04−032585号公報、特開平04−032583号公報、特開平02−298284号公報、WO2009/151099号公報、WO2011/104944号公報、WO2016/158516号公報、特開2017−218616号公報等に提案の方法、等を挙げることができる。
該物理的処理及び/又は化学処理は、単独で処理しても両者を併用して処理しても良く、例えば、表面に物理的処理を施した後に化学処理を施した金属部材を用いて金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体としたものであっても良い。
本発明の金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法としては、金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材とを射出成形により直接一体化することが可能であれば如何なる方法をも用いることができ、その中でも特に効率よく複合体を製造することが可能となることから射出インサート成形法により一体化することが好ましい。そして、該射出インサート成形法としては、例えば金型内に金属部材を装着し、該金属部材に溶融ポリアリーレンスルフィド樹脂を充填し、ポリアリーレンスルフィド樹脂部材とし、該金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材とが直接一体化された複合体とする方法を挙げることができる。この際の成形条件は、例えば成形前の原料であるポリアリーレンスルフィド樹脂の乾燥温度、ポリアリーレンスルフィド樹脂の乾燥時間、ポリアリーレンスルフィド樹脂の充填量、射出成形温度、射出速度、射出成形金型温度、射出成形時間、射出成形金型保圧力、射出成形金型保圧時間、金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体冷却時間等が挙げられ、これら設定を行うことにより、金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造がおこなわれる。そして、本発明の製造方法においては、成形条件として、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥温度、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥時間、射出成形温度、射出成形金型温度、射出成形時間、射出成形金型保圧力、射出成形金型保圧時間、金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体冷却時間のいずれか1種以上の成形条件の制御を行うことを特徴とするものである。この際のポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融温度、即ち、射出成形温度としては280〜340℃であることが好ましい。射出成形金型温度としては80℃以上が好ましく、特に100℃以上、さらに130℃以上が好ましく、射出成形金型保圧力は1MPa以上であることが好ましく、射出成形金型保圧時間は1秒以上である事が好ましい。また、射出成形時間は0.3〜5秒の間が好ましく、冷却時間は4秒以上である事が好ましい。
そして、本発明の金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法としては、射出成形により直接一体化した金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の接合面に対して、超音波探傷試験装置から超音波を発信し、接合面で反射する超音波の強度をエコー高さとして測定し、該エコー高さの基準値を超える金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体が製造された際には、射出成形条件を制御・最適化することにより、ボイド等の接合面の欠損の見られない金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を製造するものである。その際の成形条件として、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥温度、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥時間、射出成形温度、射出成形金型温度、射出成形時間、射出成形金型保圧力、射出成形金型保圧時間、金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体冷却時間のいずれか1種以上の成形条件を制御することにより成形条件の最適化をはかるものである。そして、これらの制御としては、溶融ポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融流動性付与、溶融樹脂から発生するガスの接合面への巻き込み抑制、溶融樹脂が固化し収縮する前に成形品を取出そうとした際に発生する離型不良の抑制等の対処を行うことが好ましく、溶融ポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融流動性付与の具体的例示としては、射出成形温度の上昇、射出成形金型温度の上昇、射出成形金型保圧力の上昇、射出成形金型保圧時間の延長等による対応を挙げることができ、溶融樹脂から発生するガスの接合面への巻き込み抑制の具体的例示としては、射出時間の延長、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥温度の上昇、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥時間の延長による対応を挙げることができ、溶融ポリアリーレンスルフィド樹脂が固化し収縮する前に成形品を取出そうとした際に発生する離型不良の抑制の具体的例示としては、金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体冷却時間の延長による対応を挙げることができる。
本発明の製造方法により得られる金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体は、接合強度が高く、その接合の信頼性に優れ、さらに耐衝撃性、軽量性及び量産性に優れる特性を併せ持つものであり、特にこれら特性、信頼性を必要とする自動車や航空機などの輸送機器の部品用途に好適に用いられる。
本発明は、耐衝撃性、軽量性及び量産性に優れ、特に自動車や航空機などの輸送機器の部品用途に有用な信頼性の高い金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を安定的に製造するものであり、その産業的価値は極めて高いものである。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
実施例及び比較例において用いた、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)、変性エチレン系共重合体(B)、ガラス繊維(C)を以下に示す。
<ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)>
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A−1)と記す。):溶融粘度190ポイズ。
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A−2)と記す。):溶融粘度400ポイズ。
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A−3)と記す。):溶融粘度80ポイズ。
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A−1)と記す。):溶融粘度190ポイズ。
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A−2)と記す。):溶融粘度400ポイズ。
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A−3)と記す。):溶融粘度80ポイズ。
<変性エチレン系共重合体(B)>
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(B−1)(以下、変性エチレン系共重合体(B−1)と記す。):アルケマ(株)製、(商品名)ボンダインAX8390。
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(B−2)(以下、変性エチレン系共重合体(B−2)と記す。):住友化学(株)製、(商品名)ボンドファースト7M。
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸−グリシジルエステル共重合体(B−3)(以下、変性エチレン系共重合体(B−3)と記す。):住友化学(株)製、(商品名)ボンドファーストE。
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(B−1)(以下、変性エチレン系共重合体(B−1)と記す。):アルケマ(株)製、(商品名)ボンダインAX8390。
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(B−2)(以下、変性エチレン系共重合体(B−2)と記す。):住友化学(株)製、(商品名)ボンドファースト7M。
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸−グリシジルエステル共重合体(B−3)(以下、変性エチレン系共重合体(B−3)と記す。):住友化学(株)製、(商品名)ボンドファーストE。
<ガラス繊維(C)>
ガラス繊維(C−1);オーウェンス コーニング ジャパン(株)製、(商品名)RES03−TP91;繊維径10μm、繊維長3mm
ガラス繊維(C−2);日東紡株式会社製チョップドストランド、(商品名)CSG−3PA 830、繊維断面のアスペクト比4。
ガラス繊維(C−1);オーウェンス コーニング ジャパン(株)製、(商品名)RES03−TP91;繊維径10μm、繊維長3mm
ガラス繊維(C−2);日東紡株式会社製チョップドストランド、(商品名)CSG−3PA 830、繊維断面のアスペクト比4。
<合成例1(PPS(A−1)の合成)>
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(Na2S・2.9H2O)1814g、30%苛性ソーダ溶液(30%NaOHaq)48g及びN−メチル−2−ピロリドン3679gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、380gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン2107g、N−メチル−2−ピロリドン985gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合後、減圧下で重合スラリーからN−メチル−2−ピロリドンを蒸留操作で回収した。最終到達温度は170℃で圧力は4.7kPaであった。得られたケーキに80℃の温水を加えスラリー濃度20%として洗浄し、再度、同様に温水を加え175℃まで昇温してポリ(p−フェニレンスルフィド)の洗浄を合計2回行った。得られたポリフェニレンスルフィドを105℃で一昼夜乾燥した。次いで、乾燥したポリフェニレンスルフィドをバッチ式ロータリーキルン型焼成装置に充填し、窒素雰囲気下で240℃まで昇温し、1時間の保持による硬化処理を行うことによって、溶融粘度が190ポイズのPPS(A−1)を得た。
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(Na2S・2.9H2O)1814g、30%苛性ソーダ溶液(30%NaOHaq)48g及びN−メチル−2−ピロリドン3679gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、380gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン2107g、N−メチル−2−ピロリドン985gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合後、減圧下で重合スラリーからN−メチル−2−ピロリドンを蒸留操作で回収した。最終到達温度は170℃で圧力は4.7kPaであった。得られたケーキに80℃の温水を加えスラリー濃度20%として洗浄し、再度、同様に温水を加え175℃まで昇温してポリ(p−フェニレンスルフィド)の洗浄を合計2回行った。得られたポリフェニレンスルフィドを105℃で一昼夜乾燥した。次いで、乾燥したポリフェニレンスルフィドをバッチ式ロータリーキルン型焼成装置に充填し、窒素雰囲気下で240℃まで昇温し、1時間の保持による硬化処理を行うことによって、溶融粘度が190ポイズのPPS(A−1)を得た。
<合成例2(PPS(A−2)の合成)>
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(Na2S・2.9H2O)1814g、粒状の苛性ソーダ(100%NaOH:和光純薬特級)8.7g及びN−メチル−2−ピロリドン3232gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、340gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン2107g、N−メチル−2−ピロリドン1783gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、250℃にて2時間重合を行った。次いで、この系に250℃で蒸留水509gを圧入し、255℃まで昇温してさらに1時間重合反応を行った。重合後、減圧下で重合スラリーからN−メチル−2−ピロリドンを蒸留操作で回収した。最終到達温度は170℃で圧力は4.7kPaであった。得られたケーキに80℃の温水を加えスラリー濃度20%として洗浄し、再度、同様に温水を加え175℃まで昇温してポリ(p−フェニレンスルフィド)の洗浄を合計2回行った。得られたポリ(p−フェニレンスルフィド)を105℃で一昼夜乾燥することによって、溶融粘度が400ポイズのPPS(A−2)を得た。
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(Na2S・2.9H2O)1814g、粒状の苛性ソーダ(100%NaOH:和光純薬特級)8.7g及びN−メチル−2−ピロリドン3232gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、340gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン2107g、N−メチル−2−ピロリドン1783gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、250℃にて2時間重合を行った。次いで、この系に250℃で蒸留水509gを圧入し、255℃まで昇温してさらに1時間重合反応を行った。重合後、減圧下で重合スラリーからN−メチル−2−ピロリドンを蒸留操作で回収した。最終到達温度は170℃で圧力は4.7kPaであった。得られたケーキに80℃の温水を加えスラリー濃度20%として洗浄し、再度、同様に温水を加え175℃まで昇温してポリ(p−フェニレンスルフィド)の洗浄を合計2回行った。得られたポリ(p−フェニレンスルフィド)を105℃で一昼夜乾燥することによって、溶融粘度が400ポイズのPPS(A−2)を得た。
<合成例3(PPS(A−3)の合成)>
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(Na2S・2.9H2O)1814g、粒状の苛性ソーダ(100%NaOH:和光純薬特級)8.7g及びN−メチル−2−ピロリドン3232gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、339gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン2085g、N−メチル−2−ピロリドン1783gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、250℃にて2時間重合を行った。重合後、減圧下で重合スラリーからN−メチル−2−ピロリドンを蒸留操作で回収した。最終到達温度は170℃で圧力は4.7kPaであった。得られたケーキに80℃の温水を加えスラリー濃度20%として洗浄し、再度、同様に温水を加え175℃まで昇温してポリ(p−フェニレンスルフィド)を洗浄した。得られたポリ(p−フェニレンスルフィド)を105℃で一昼夜乾燥することによって、溶融粘度が80ポイズのPPS(A−3)を得た。
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(Na2S・2.9H2O)1814g、粒状の苛性ソーダ(100%NaOH:和光純薬特級)8.7g及びN−メチル−2−ピロリドン3232gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、339gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン2085g、N−メチル−2−ピロリドン1783gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、250℃にて2時間重合を行った。重合後、減圧下で重合スラリーからN−メチル−2−ピロリドンを蒸留操作で回収した。最終到達温度は170℃で圧力は4.7kPaであった。得られたケーキに80℃の温水を加えスラリー濃度20%として洗浄し、再度、同様に温水を加え175℃まで昇温してポリ(p−フェニレンスルフィド)を洗浄した。得られたポリ(p−フェニレンスルフィド)を105℃で一昼夜乾燥することによって、溶融粘度が80ポイズのPPS(A−3)を得た。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂、金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の評価・測定方法を以下に示す。
〜ポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度測定〜
直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスター((株)島津製作所製、商品名CFT−500)にて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で溶融粘度の測定を行った。
直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスター((株)島津製作所製、商品名CFT−500)にて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で溶融粘度の測定を行った。
〜金属接合強度の評価〜
金属部材−PPS樹脂部材複合体の接合強度は、ISO19095に従い、接合面積が50mm2の引張せん断接合強度により評価した。
金属部材−PPS樹脂部材複合体の接合強度は、ISO19095に従い、接合面積が50mm2の引張せん断接合強度により評価した。
〜超音波探傷試験〜
金属部材とPPS樹脂部材との複合体は、ISO19095に従い作製した接合面積が50mm2の引張せん断試験片である複合体を用いて、水浸式超音波探傷試験により超音波探傷試験を行った。該水浸式超音波探傷試験については、水槽中で接合複合体と超音波探触子(オリンパス製(商品名)水浸型探触子V324−SU)とが25mmの距離となるように設置し、超音波探触子から周波数25MHz、0.1mm間隔で発信された超音波が金属部材内部を通過して接合部で集束するよう接合面に対して垂直に配置し、反射した超音波を超音波探触子にて受信して、計500点のエコー高さを求め、該エコー高さの平均値を該試験片のエコー高さとした。
金属部材とPPS樹脂部材との複合体は、ISO19095に従い作製した接合面積が50mm2の引張せん断試験片である複合体を用いて、水浸式超音波探傷試験により超音波探傷試験を行った。該水浸式超音波探傷試験については、水槽中で接合複合体と超音波探触子(オリンパス製(商品名)水浸型探触子V324−SU)とが25mmの距離となるように設置し、超音波探触子から周波数25MHz、0.1mm間隔で発信された超音波が金属部材内部を通過して接合部で集束するよう接合面に対して垂直に配置し、反射した超音波を超音波探触子にて受信して、計500点のエコー高さを求め、該エコー高さの平均値を該試験片のエコー高さとした。
実施例1
アルミニウム合金(A5052)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を10重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液、次いで10重量%硝酸水溶液に浸漬し、さらに30重量%燐酸水溶液中で電流密度2A/dm2で20分間陽極酸化処理することにより、アルミニウム合金表面を化学処理したアルミニウム合金(A5052)製試験片を得た。
アルミニウム合金(A5052)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を10重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液、次いで10重量%硝酸水溶液に浸漬し、さらに30重量%燐酸水溶液中で電流密度2A/dm2で20分間陽極酸化処理することにより、アルミニウム合金表面を化学処理したアルミニウム合金(A5052)製試験片を得た。
合成例1で得られたPPS(A−1)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B−1)15重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C−1)をPPS(A−1)100重量部に対して30重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。
該ペレット化したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物は、ペレット乾燥機(松井製作所製、(商品名)スピードドライヤーPO−80)を用いて、120℃で5時間乾燥した。
得られた該アルミニウム合金(A5052)製試験片を、金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度70℃、保圧力50MPa、保圧時間5秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いてポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物を射出時間1秒で射出成形し、ISO19095に従い、接合面積が50mm2のせん断接合強度評価用試験片であるアルミニウム合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体を冷却時間30秒にて作製し、接合面の超音波探傷試験を行った。射出成形を20サイクル繰り返し、得られたアルミニウム合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体を20本作製した。
そして、接合面の超音波探傷試験を行った。その際のエコー高さの基準値は35%と設定した。得られたアルミニウム合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体のエコー高さは30%〜57%の範囲のバラつきを示し、基準値35%を越えるものが13本であった。次に、該超音波探傷試験を行った試験片を、ISO 19095に従い接合強度を評価した。接合強度は14MPa〜35MPaのバラつきがあり、金属との接合強度に劣る複合体を含むものであった。
そこで、次に、金型温度を70℃から150℃へ上昇し、該アルミニウム合金(A5052)製試験片を金型内にセットし、シリンダー温度310℃、保圧力50MPa、保圧時間5秒に成形条件を制御し、120℃で5時間乾燥したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物を射出時間1秒で射出成形し、該アルミニウム合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体を冷却時間30秒にて射出成形を繰り返し、アルミニウム合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体をさらに20本作製した。
得られたアルミニウム合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体のエコー高さは26%〜28%の範囲で安定しており、基準値を越えるものは見られなかった。接合強度は39MPa〜43MPaの範囲で安定したものであった。
実施例2
アルミニウムダイカスト合金(ADC12)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を、波長1.064μmのレーザを用いハッチング幅0.06mm、周波数9KHz、速度80mm/秒で直交方向に1000回走査するレーザ処理を行うことにより、アルミニウムダイカスト合金表面を物理的処理したアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製試験片を得た。
アルミニウムダイカスト合金(ADC12)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を、波長1.064μmのレーザを用いハッチング幅0.06mm、周波数9KHz、速度80mm/秒で直交方向に1000回走査するレーザ処理を行うことにより、アルミニウムダイカスト合金表面を物理的処理したアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製試験片を得た。
合成例3で得られたPPS(A−3)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B−1)10重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C−2)をPPS(A−3)100重量部に対して110重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。
該ペレット化したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物は、ペレット乾燥機(松井製作所製、(商品名)スピードドライヤーPO−80)を用いて、130℃で3時間乾燥した。
得られた該アルミニウムダイカスト合金(ADC12)製試験片を、金型内にセットし、シリンダー温度300℃、金型温度130℃、保圧力を0MPa、保圧時間0秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて射出時間1秒で射出成形し、ISO19095に従い、接合面積が50mm2のせん断接合強度評価用試験片でアルミニウムダイカスト合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体を冷却時間20秒にて作製し作製し、接合面の超音波探傷試験を行った。射出成形を20サイクル繰り返し、得られたアルミニウム合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体を20本作製した。
そして、接合面の超音波探傷試験を行った。その際のエコー高さの基準値は35%と設定した。得られたアルミニウムダイカスト合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体のエコー高さは45〜63%の間でバラつきを示し、全てが基準値35%を越えるものであった。た。次に超音波探傷試験を行った試験片を、ISO 19095に従い接合強度を評価した。接合強度は12MPa〜20MPaの範囲でバラつき、金属との接合強度に劣るものであった。
そこで、次に、保圧力を0MPaから50MPaへ上昇し、また、保圧時間を0秒から5秒へ延長し、該アルミニウムダイカスト合金(ADC12)製試験片を金型内にセットし、シリンダー温度300℃、金型温度130℃、保圧時間5秒に成形条件を制御し、130℃で3時間乾燥したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物を射出時間1秒で射出成形し、該アルミニウムダイカスト合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体を冷却時間20秒にて作製し、接合面の超音波探傷試験を行った。射出成形を20サイクル繰り返し、得られたアルミニウムダイカスト合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体を20本作製した。
得られたアルミニウムダイカスト合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体のエコー高さは26%〜28%の間で安定し、基準値を越えるものは見られなかった。接合強度は39MPa〜43MPaの間で安定していた。
実施例3
アルミニウム(A1050)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をエタノールに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を0.1mmのアルミナ粉を用いたサンドブラスト処理にて粗化し、次いで該試験片を1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液、さらに1重量%硫酸水溶液に浸漬し、最後に該試験片を95℃のエタノールアミン1重量%を含有する蒸留水混合液に10分間浸漬し、表面にベーマイト処理を施すことにより、アルミニウム表面を物理的処理後に化学処理したアルミニウム(A1050)製試験片を得た。
アルミニウム(A1050)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をエタノールに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を0.1mmのアルミナ粉を用いたサンドブラスト処理にて粗化し、次いで該試験片を1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液、さらに1重量%硫酸水溶液に浸漬し、最後に該試験片を95℃のエタノールアミン1重量%を含有する蒸留水混合液に10分間浸漬し、表面にベーマイト処理を施すことにより、アルミニウム表面を物理的処理後に化学処理したアルミニウム(A1050)製試験片を得た。
合成例2で得られたPPS(A−2)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B−2)25重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C−1)をPPS(A−2)100重量部に対して15重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。
該ペレット化したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物は、ペレット乾燥機(松井製作所製、(商品名)スピードドライヤーPO−80)を用いて、150℃で2時間乾燥した。
得られた該アルミニウム(A1050)製試験片を、金型内にセットし、シリンダー温度320℃、金型温度160℃、保圧力80MPa、保圧時間3秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて射出時間1.2秒で射出成形し、ISO 19095に従い、接合面積が50mm2のせん断接合強度評価用試験片であるアルミニウム部材−PPS樹脂組成物部材複合体を冷却時間3秒で作製した。
そして、接合面の超音波探傷試験を行った。その際のエコー高さの基準値は35%と設定した。得られたアルミニウム部材−PPS樹脂組成物部材複合体のエコー高さは34〜52%を示し、基準値35%を越えるもの9本であった。次に超音波探傷試験を行った試験片を、ISO19095に従い接合強度を評価した。接合強度は16〜27MPaの範囲でバラつき、金属との接合強度に劣るものを含むものであった。
そこで、次に、冷却時間を3秒から30秒へ延長し、該アルミニウム(A1050)製試験片を金型内にセットし、シリンダー温度320℃、金型温度160℃、保圧力80MPa、保圧時間3秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて、150℃で2時間乾燥したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物を射出時間1.2秒で射出成形し、該アルミニウム部材−PPS樹脂組成物部材複合体を作製した。
得られたアルミニウム部材−PPS樹脂組成物部材複合体のエコー高さは28%〜32%の間で安定し、基準値を越えるものは見られなかった。接合強度は32MPa〜39MPaの間で安定していた。
実施例4
アルミニウム合金(A6063)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を#120のアルミナ、次いで#800のアルミナ、最後に#2000のアルミナにて液体ホーニング処理を行うことにより、アルミニウム合金表面を物理的処理したアルミニウム合金(A6063)製試験片を得た。
アルミニウム合金(A6063)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を#120のアルミナ、次いで#800のアルミナ、最後に#2000のアルミナにて液体ホーニング処理を行うことにより、アルミニウム合金表面を物理的処理したアルミニウム合金(A6063)製試験片を得た。
合成例1で得られたPPS(A−1)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B−3)6重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C−1)をPPS(A−1)100重量部に対して45重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。
該ペレット化したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物は、乾燥せず、射出成形に供した。
得られた該アルミニウム合金(A6063)製試験片を、金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度140℃、保圧力10MPa、保圧時間8秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて射出時間0.1秒で射出成形し、ISO19095に従い、接合面積が50mm2のせん断接合強度評価用試験片であるアルミニウム合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体を冷却時間20秒にて作製し、接合面の超音波探傷試験を行った。射出成形を20サイクル繰り返し、得られたアルミニウム合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体を20本作製した。
そして、接合面の超音波探傷試験を行った。その際のエコー高さの基準値は35%と設定した。得られたアルミニウム合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体のエコー高さは40〜50%の間でバラつきを示し、全てが基準値35%を越えるものであった。次に超音波探傷試験を行った試験片を、ISO 19095に従い接合強度を評価した。接合強度は17MPa〜24MPaの範囲でバラつきを示し、金属との接合強度に劣るものであった。
そこで、次に、射出時間を0.1秒から1秒へ延長し、該アルミニウム合金(A6063)製試験片を金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度140℃、保圧力10MPa、保圧時間8秒に成形条件を制御し、ペレット乾燥機(松井製作所製、(商品名)スピードドライヤーPO−80)にて110℃で5時間乾燥したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物を射出成形し、該アルミニウム部材−PPS樹脂組成物部材複合体を冷却時間20秒にて作製し、接合面の超音波探傷試験を行った。射出成形を20サイクル繰り返し、得られたアルミニウム合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体を20本作製した。
得られたアルミニウム合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体のエコー高さは33%〜34%で安定しており、基準値を越えるものは見られなかった。接合強度は30MPa〜31MPaで安定していた。
比較例1
アルミニウム合金(A5052)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を10重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液、次いで10重量%硝酸水溶液に浸漬し、さらに30重量%燐酸水溶液中で電流密度2A/dm2で20分間陽極酸化処理することにより、アルミニウム合金表面を化学処理したアルミニウム合金(A5052)製試験片を得た。
アルミニウム合金(A5052)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を10重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液、次いで10重量%硝酸水溶液に浸漬し、さらに30重量%燐酸水溶液中で電流密度2A/dm2で20分間陽極酸化処理することにより、アルミニウム合金表面を化学処理したアルミニウム合金(A5052)製試験片を得た。
合成例1で得られたPPS(A−1)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B−1)15重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C−1)をPPS(A−1)100重量部に対して30重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。
該ペレット化したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物は、ペレット乾燥機(松井製作所製、(商品名)スピードドライヤーPO−80)を用いて、120℃で5時間乾燥した。
得られた該アルミニウム合金(A5052)製試験片を、金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度50℃、保圧力20MPa、保圧時間5秒に成形条件を制御し、ポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物を射出時間1秒で射出成形し、ISO 19095に従い、接合面積が50mm2のせん断接合強度評価用試験片であるアルミニウム合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体を冷却時間30秒にて作製し、作製し、接合面の超音波探傷試験を行った。射出成形を40サイクル繰り返し、得られたアルミニウム合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体を40本作製した。
そして、得られたアルミニウム合金部材−PPS樹脂組成物部材複合体をISO 19095に従い接合強度を評価した。接合強度は13MPa〜31MPaの間でバラついており、金属との接合強度に劣るものを含み、その安定性に劣ることから、安定的な製造が不可なものであった。
本発明の複合体は、接合面に空隙等の欠陥が無く、接合の信頼性に優れ、さらに耐衝撃性、軽量性及び量産性に優れる金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を提供するものであり、特に自動車や航空機などの輸送機器の複合体に有用なものである。
Claims (3)
- 射出成形金型内の金属部材に対し、溶融ポリアリーレンスルフィド樹脂を射出成形により直接一体化する金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法であって、金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の接合面に対して、超音波探傷試験装置から超音波を発信し、接合面で反射する超音波の強度をエコー高さとして測定し、該エコー高さの基準値を超える金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体が製造された際に、成形条件として、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥温度、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥時間、射出成形温度、射出成形金型温度、射出成形時間、射出成形金型保圧力、射出成形金型保圧時間、金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体冷却時間のいずれか1種以上の成形条件を制御することを特徴とする金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法。
- 超音波探傷試験装置による測定が、水浸探傷法であることを特徴とする請求項1に記載の金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法。
- エコー高さの基準値が35%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法。
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WO2024116565A1 (ja) * | 2022-11-29 | 2024-06-06 | Dic株式会社 | 熱可塑性樹脂組成物、成形品及び複合構造体並びにそれらの製造方法 |
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2018
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