JP2018030349A - 複合構造体とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属とポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなる、高い接合強度を有する複合体を得ることを課題とする。【解決手段】金属とポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形体の複合構造体であって、前記金属の表面が粗面化処理されており、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)アクリル系単量体を重合したゴム質重合体からなるコアと、グリシジル基を含有し、アクリル系単量体を重合した最外層を含むコアシェル型ゴム1〜15重量部、および(C)ガラス繊維10〜150重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であることを特徴とする複合構造体。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物からなる成形体と金属との複合構造体であって、特に溶融させた樹脂組成物を金属と接触した状態で冷却・固化することにより、樹脂組成物と金属とを直接接合させた複合構造体に関する。
本発明は、電子機器、家電製品、自動車部品、構造用部品、機械部品等に用いられる、金属またはその合金と樹脂組成物からなる複合構造体に関する。更に詳しくは、切断、切削、曲げ、絞り等の加工、即ち、鋸加工、フライス加工、放電加工、ドリル加工、プレス加工、研削加工、研磨加工等の機械加工で作製された金属と樹脂組成物からなる成形体とを一体化した構造体およびその製造方法であり、各種電子機器、家電製品、医療機器、車両用構造部品、車両搭載用品、建築資材、その他の構造用部品や外装用部品等に用いられる金属と樹脂組成物の複合構造体に関する。
ポリアリーレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略す場合もある)は優れた耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有していることから、電気・自動車分野を中心とした幅広い分野に使用されており、金属と樹脂組成物の複合構造体において、既に広く用いられている。
金属と樹脂組成物を複合化する手段として、樹脂成形品に金属の一部を埋め込む方法、金属に孔を設けて樹脂成形品の一部を埋設する方法、リベットやボルトによる固定の方法が知られているが、複合構造体の形状に対する制約が大きく、また応力集中の発生による強度低下等が課題となっている。
このことから、金属と樹脂組成物との接合強度が構造体全体の強度に影響する様な用途・形状においては、金属と樹脂組成物が直接接した面での接合強度が求められている。例えば、自動車用途においては、軽量化のため、金属と樹脂組成物の複合構造体が多く用いられているが、さらなる軽量化を目的とした適応範囲の拡大が強く求められている。しかし、強度を要する構造用部品や外装用部品への適応において大きな課題となっている。
これに対し、接着剤を用いる方法が提案されている。接着剤を用いた場合、接着面の洗浄、接着剤の塗布や硬化等といった工程の複雑化が量産化における課題の一つである。
一方、金属表面を改質する方法を用いた場合、金属に樹脂組成物を射出成形などの方法で直接溶着する方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、薬液への浸漬処理により数平均内径10nm〜80nmの凹部で表面が覆われた金属に、ポリフェニレンスルフィド樹脂と特定のポリオレフィン系樹脂からなる樹脂組成物を射出成形した複合体の提案がなされている。
一方、ポリフェニレン樹脂にコアシェル型ゴム及びガラス繊維を含有する樹脂組成物については、特許文献2などに開示されているが、金属と樹脂組成物が直接的に接した面で高い接合強度を得る方法については何ら開示されていない。
本発明者等は、表面処理を施した金属と特定のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を溶融し接合することで特異に高い接合強度を示すことを発見したものである。
特開2007−50630号公報 特開2011−6555号公報
上記のとおり金属と樹脂組成物との複合構造体には金属と樹脂組成物が直接接した面での接合強度が求められるが、特許文献1に記載の技術では、金属接合性が不十分であった。
本発明は、金属とポリフェニレンスルフィド樹脂組成物と直接的に接した面での高い接合強度を得ることを課題とし、溶融状態の樹脂組成物を金属と接触させた状態で固化させて金属とポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を接合する方法、または樹脂組成物からなる成形品と金属を接触させた状態で、樹脂組成物にエネルギーを与えて溶融状態とし、その後に冷却固化させて金属と樹脂組成物を接合する方法によって、高い接合強度を有する複合成形体を得ることを課題とする。
すなわち本発明は以下を提供するものである。
(1)金属とポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形体の複合構造体であって、
前記金属の表面が粗面化処理されており、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、((B)アクリル系単量体を重合したゴム質重合体からなるコアと、グリシジル基を含有し、アクリル系単量体を重合した最外層を含むコアシェル型ゴム1〜15重量部、(C)ガラス繊維10〜150重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であることを特徴とする複合構造体。
(2)粗面化処理が、物理的および/または化学的粗面化処理であることを特徴とする(1)の複合構造体。
(3)物理的粗面化処理された金属表面の粗さRaが、1μm〜50μmであることを特徴とする(1)または(2)の複合構造体。
(4)化学的粗面化処理された金属表面が、数平均内径10〜80nmの凹部で覆われていることを特徴とする(1)または(2)の複合構造体。
(5)化学的粗面化処理が化学エッチング処理および/または陽極酸化処理であることを特徴とする(1)、(2)、(4)いずれか記載の複合構造体。
(6)金属がアルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、マグネシウム、モリブデン、およびこれらの合金であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか記載の金属とポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の複合構造体。
(7)前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、さらに(D)アルコキシシラン化合物0.1〜5重量部を配合されていることを特徴とする(1)〜(6)いずれか記載の複合構造体。
(8)前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、さらに(E)エポキシ樹脂1〜15重量部を配合されていることを特徴とする(1)〜(7)いずれか記載の複合構造体。
(9)前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に含まれる前記(C)ガラス繊維の、断面積が2×10−5〜8×10−3mmであり、かつ長さ方向に直角の断面の長径(断面の最長の直線距離)と短径(長径と直角方向の最長の直線距離)の比が1.3〜10の間である、扁平な断面形状を有するガラス繊維であることを特徴とする(1)〜(8)いずれか記載の複合構造体。
(10)射出溶着によって接合された(1)〜(9)のいずれか記載の複合構造体。
(11)粗面化処理された金属に、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)アクリル系単量体を重合したゴム質重合体からなるコアと、グリシジル基を含有し、アクリル系単量体を重合した最外層を含むコアシェル型ゴム1〜15重量部、および(C)ガラス繊維10〜150重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を溶融させて接触させる金属とポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形体の複合構造体の製造方法。
本発明によれば、金属とポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなる成形体とが高い接合強度で接合された複合構造体を得ることができる。
〔樹脂組成物〕
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、少なくとも、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)アクリル系単量体を重合したゴム質重合体からなるコアと、グリシジル基を含有し、アクリル系単量体を重合した最外層を含むコアシェル型ゴム1〜15重量部、(C)ガラス繊維10〜150重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物である。
(1)ポリフェニレンスルフィド樹脂
本発明で用いられる(A)PPS樹脂は、下記構造式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
PPS樹脂はクロロホルム抽出量が少ないほど、オリゴマー成分が少なくなり、より塩素含有量が少なくなるため、本発明で用いられる(A)PPS樹脂はクロロホルム抽出量が0.5重量%以下であることが低塩樹脂組成物を得るのに好ましく、さらには0.4重量%以下であることが好ましい。
PPS樹脂のクロロホルム抽出量が0.5重量%を越える場合、それを用いた樹脂組成物のクロロホルム抽出量が過大となり好ましくない。本発明おいて、クロロホルム抽出量を低減させる方法としては、後述する重合工程、後処理工程を組み合わせる方法が好ましく用いられる。なお本発明における(A)PPS樹脂のクロロホルム抽出量は、ソックスレー抽出器を用い、PPS樹脂を凍結粉砕して32メッシュパス、42メッシュオンの粒子2.0g、クロロホルム200mlを用い5時間抽出し、その抽出液を50℃で乾燥し、得られた残さを仕込みPPS樹脂サンプル量で割り返し、100をかけてパーセンテージ表記としたものである。
本発明で用いられる(A)PPS樹脂の溶融粘度は、優れた溶融流動性を有する樹脂組成物を得る観点から、5〜50Pa・s(310℃、剪断速度1,216/s)の範囲が好ましく、10〜45Pa・sの範囲がより好ましく、10〜40Pa・sの範囲が更に好ましい。また溶融粘度の異なる2種以上のポリフェニレンスルフィド樹脂を併用して用いてもよい。なお、本発明における(A)PPS樹脂の溶融粘度は、310℃、剪断速度1,216/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。
以下に、本発明に用いる(A)PPS樹脂の製造方法について説明するが、上記構造と特性を有するPPS樹脂が得られれば下記方法に限定されるものではない。但し、ジクロロベンゼンと硫黄源を主たるモノマー(90モル%以上)とし、非プロトン性極性溶媒存在下で重合する方法が、生産安定性の点で最も好ましい。
次に、製造に使用するポリハロゲン芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
本発明で用いられるポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくは、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼンなどのポリクロロベンゼンが好ましく用いられ、更にp−ジクロロベンゼンが特に好ましく用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジクロロベンゼンで代表されるp−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度とオリゴマー低溶出性のPPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.8から1.023モル、好ましくは0.8から1.020モル、更に本発明に有用な重合度と低オリゴマー性を両立させる意味からは、0.9から1.015モルの範囲が有用である。上記範囲の場合、前述したクロロホルム抽出量が好ましい範囲にあるPPS樹脂を得ることが出来る。
[スルフィド化剤]
本発明で用いられるスルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
本発明において、仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.90から1.10モル、好ましくは0.90から1.05モル、更に好ましくは0.95から1.02モルの範囲が例示できる。
[重合溶媒]
本発明では重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25から6.0モル、より好ましくは2.5から5.5モルの範囲が選択される。
[分子量調節剤]
本発明においては、生成するPPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。モノハロゲン化化合物としては、モノハロゲン化ベンゼン、モノハロゲン化ナフタレン、モノハロゲン化アントラセン、ベンゼン環を2個以上含むモノハロゲン化化合物、モノハロゲン化複素環式化合物、などを挙げることができる。なかでも、経済性の観点からするとモノハロゲン化ベンゼンが好ましい。具体的には、2−クロロ安息香酸、3−クロロ安息香酸、4−クロロ安息香酸、4−クロロフタル酸水素ナトリウム、2−アミノ−4−クロロ安息香酸、4−クロロ−3−ニトロ安息香酸、4‘−クロロベンゾフェノン−2−カルボン酸などが挙げられる。重合時の反応性や汎用性などから、3−クロロ安息香酸、4−クロロ安息香酸、4−クロロフタル酸水素ナトリウム、が好ましい。なお、モノハロゲン化化合物はPPS樹脂の分子量を調整する目的、またはPPS樹脂の塩素含有量を低減する目的で使用することも可能であり、カルボキシル基含有モノハロゲン化化合物を用いた場合、PPS樹脂中のカルボキシル基含有量の増大のみならず塩素含有量の低減にも寄与する。
[重合助剤]
本発明においては、重合度調節のために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られるPPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらにはナトリウム、リチウムのカルボン酸塩および/または水が特に好適に用いられる。
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、加工に適した粘度とオリゴマー低溶出性のPPS樹脂を得る点から、仕込みスルフィド化剤1モルに対し、通常0.01モル〜2モルの範囲であり、本発明に有用な重合度と低オリゴマー性を両立させる意味からは、0.010〜0.088モルの範囲が好ましい。上記範囲の場合、前述した溶融粘度が好ましい範囲にあるPPS樹脂を得ることが出来る。
また水を重合助剤として用いる場合の添加量は、仕込みスルフィド化剤1モルに対し、通常0.3モル〜15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6〜10モルの範囲が好ましく、1〜5モルの範囲がより好ましい。これら重合助剤は2種以上を併用することももちろん可能であり、例えばアルカリ金属カルボン酸塩と水を併用すると、それぞれより少量で高分子量化が可能となる。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
[重合安定剤]
本発明においては、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みスルフィド化剤1モルに対して、通常0.02〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モル、より好ましくは0.04〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。
次に、本発明に用いる(A)PPS樹脂の製造方法について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明する。
[前工程]
本発明に用いる(A)PPS樹脂の製造方法において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるスルフィド化剤も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.3〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
[重合反応工程]
本発明においては、有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂を製造する。重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜240℃、好ましくは100〜230℃の温度範囲で、有機極性溶媒とスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を混合する。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
かかる混合物を通常200℃〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。一般に、最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜260℃で一定時間反応させた後、270〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃〜260℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選択される。
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である場合がある。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
また、ポリハロゲン化芳香族化合物(ここではPHAと略記)の転化率は、以下の式で算出した値である。PHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(a)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(b)上記(a)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
[回収工程]
本発明で用いる(A)PPS樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。本発明で用いるPPS樹脂は、公知の如何なる回収方法を採用しても良い。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いても良い。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全行程において同一速度で徐冷する必要もなく、ポリマー粒子が結晶化析出するまでは0.1〜1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用しても良い。上記回収方法を用いる場合、前述したクロロホルム抽出量が好ましい範囲にあるPPS樹脂を得ることが出来る。
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つであり、この回収方法の好ましい一つの方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm2以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選択される。
なかでも、より優れた低オリゴマー性を発現させるためには、後述の有機溶媒による洗浄効果を上げるために、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法が好ましく用いられる。
[後処理工程]
本発明で用いられる(A)PPS樹脂は、上記重合、回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理または有機溶媒による洗浄を施されたものであってもよい。
酸処理を行う場合は次のとおりである。本発明でPPS樹脂の酸処理に用いる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられるが、硝酸のようなPPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、pH4の水溶液を80〜200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のpHは4以上例えばpH4〜8程度となっても良い。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理を行う場合は次のとおりである。本発明において使用するPPS樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満ではPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。
本発明の熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無く、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
また、処理の雰囲気は、末端基の分解は好ましくないので、これを回避するため不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、この熱水処理操作を終えたPPS樹脂は、残留している成分を除去するため温水で数回洗浄するのが好ましい。
有機溶媒で洗浄する場合は次のとおりである。本発明でPPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が好ましく、特に優れたオリゴマー除去効果を得る意味では、N−メチル−2−ピロリドンの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。かかる有機溶媒による洗浄は、高いオリゴマー除去効果が得られることから、本発明で用いる(A)PPS樹脂の製造に好適なプロセスである。
本発明においては、上記のようにして得られたポリフェニレンスルフィド樹脂を、アルカリ土類金属塩を含む水による洗浄による処理を施しても良い。ポリフェニレンスルフィド樹脂を、アルカリ土類金属塩を含む水で洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。アルカリ土類金属塩の種類としては特に制限は無いが、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物が好ましい例として挙げられ、特に酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩が好ましい。水の温度は、室温〜200℃であることが好ましく、50〜90℃であることがより好ましい。上記水中におけるアルカリ土類金属塩の使用量は乾燥ポリフェニレンスルフィド樹脂1kgに対し0.1g〜50gであることが好ましく、0.5g〜30gであることがより好ましい。洗浄時間としては0.5時間以上が好ましく、1.0時間以上がより好ましい。また好ましい洗浄浴比(乾燥ポリフェニレンスルフィド樹脂単位重量当たりのアルカリ土類金属塩を含む温水使用重量)は洗浄時間、温度にもよるが、乾燥ポリフェニレンスルフィド1kg当たり、上記アルカリ土類金属を含む温水を5kg以上用いて洗浄することが好ましく、10kg以上用いて洗浄することがより好ましい。上限としては特に制限はなく、高くてもよいが、使用量と得られる効果の点から100kg以下であることが好ましい。かかる温水洗浄は複数回行っても良い。
本発明において用いる(A)PPS樹脂は、重合終了後に酸素雰囲気下においての加熱および過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱による熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。
熱酸化架橋による高分子量化を目的として乾式熱処理する場合には、その温度は160〜260℃が好ましく、170〜250℃の範囲がより好ましい。また、酸素濃度は5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。酸素濃度の上限には特に制限はないが、50体積%程度が限界である。処理時間は、0.5〜100時間が好ましく、1〜50時間がより好ましく、2〜25時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
しかしながら、オリゴマー低溶出性と優れた溶融流動性を両立する観点からは、架橋構造の導入はあまり好ましくなく、直鎖状PPSであることが好ましい。
また、熱酸化架橋を抑制し、揮発分除去を目的として乾式熱処理を行うことが可能である。その温度は130〜250℃が好ましく、160〜250℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。
処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
本発明において、脱イオン処理などにより、PPS樹脂の灰分率が0.2重量%以下に低減されたPPS樹脂を用いることは、当該PPS樹脂を配合した樹脂組成物がより優れた靭性および成形加工性を得る意味で好ましい。かかる脱イオン処理の具体的方法としては酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理および有機溶剤洗浄処理などが例示でき、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。なお、ここで灰分量の測定は以下の方法が挙げられる。乾燥状態のPPS原末約5gを白金坩堝に量り取り、電気コンロ上で黒色塊状物となるまで焼成する。次にこれを550℃に設定した電気炉中で炭化物が焼成しきるまで焼成を続ける。その後デシケータ中で冷却後、重量を測定し、初期重量との比較から灰分量を計算することができる。PPS樹脂の灰分率の下限は理想的には0であるが灰分率が0.1重量%以上のPPS樹脂は好ましく用いることができる。
例えば、上記のごとき製造法を採用することで、優れたオリゴマー低溶出性と溶融流動性を備えた(A)PPS樹脂を得ることが可能であり、本発明にはかかる(A)PPS樹脂を用いることが好ましい。
(2)コアシェル型ゴム
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、少なくとも、(B)アクリル系単量体を重合したゴム質重合体からなるコアと、グリシジル基を含有し、アクリル系単量体を重合した最外層を含むコアシェル型ゴムを0.5〜15重量部配合してなる。
本発明に用いる(B)コアシェル型ゴムとは、コア層(最内層)とそれを覆う1以上の層(シェル層)から構成され、また、隣接し合った層が異種の重合体から構成される構造を有する重合体である。前記コアシェル型ゴムを構成する層の数は、特に限定されるものではなく、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよい。前記コアシェル型ゴムとしては、アクリル系単量体を重合したゴム質重合体をコアと、グリシジル基を含有し、アクリル系単量体を重合した最外層を含むコアシェル型ゴムであり、内部にさらに異なる層を有していても良い。
本発明においては、本発明の効果である樹脂組成物と直接的に接した面での高い接合強度を得るために、アクリル系単量体を重合したゴム質重合体からなるコアと、グリシジル基を含有し、アクリル系単量体を重合した最外層を含むコアシェル型ゴムを配合せしめる必要がある。
本発明に用いる(B)コアシェル型ゴムのゴム層の種類としては、アクリル系単量体を重合したゴム質重合体であれば特に限定されるものではなく、シリコーン成分などと2種類以上組み合わせて共重合させたものから構成されるゴムも好ましい。例えば、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分を重合した成分から構成されるゴムおよびジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分を重合した成分から構成されるゴム、の組み合わせ、すなわち、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分を共重合した成分から構成されるゴムも好ましい。 本発明に用いる(B)コアシェル型ゴムの最外層の種類としては、最外層がグリシジル基を含有し、アクリル系単量体を重合したコアシェル型ゴムであれば、特に制限はないが、最外層に含有されるグリシジル基含有化合物として、グリシジル基含有ビニル系単位の重合体が挙げられる。グリシジル基含有ビニル系単位の具体例として、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルまたは4−グリシジルスチレンなどが挙げられる。本発明においては、本発明の効果である樹脂組成物と直接的に接した面での高い接合強度を得るために、(メタ)アクリル酸グリシジルが最も好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
本発明に用いる(B)コアシェル型ゴムの好ましい具体例としては、コア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、コア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル共重合体で最外層がメタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられ、これらの中でも、最も好ましくは、樹脂組成物と直接的に接した面での高い接合強度を得られる点から、コア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体である。
本発明に用いる(B)コアシェル型ゴムの粒子径は、特に限定されるものではないが、一次粒子径として、0.05〜1μmであることが好ましく、0.1〜0.8μmであることがさらに好ましく、0.2〜0.6μmであることが最も好ましい。
本発明に用いる(B)コアシェル型ゴムにおいて、コアとシェルの重量比は、特に限定されるものではないが、コアシェル型ゴム全体に対して、コア層が50〜95重量部であることが好ましく、55〜93重量部であることがより好ましく、60〜90重量部であることが最も好ましい。
本発明に用いる(B)コアシェル型ゴムの市販品種としては例えば、ロームアンドハース社から、パラロイド(登録商標)EXL2314が入手できる。
本発明に用いる(B)コアシェル型ゴムの配合量は、上記(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、1〜15重量部である。(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(B)コアシェル型ゴムの配合量が1重量部未満では、樹脂組成物と直接的に接した面の接合強度が低下する。3重量部以上が好ましい。(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(B)コアシェル型ゴムの配合量が15重量部を超えても樹脂組成物と直接的に接した面の接合強度が低下する。10重量部以下が好ましい。
(3)ガラス繊維
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、少なくとも、(C)ガラス繊維を10〜150重量部配合してなる。
本発明に用いる(C)ガラス繊維の断面形状について制限はないが、成形品のそりが改善される点で、扁平形、まゆ形、長円形、楕円形、半円若しくは円弧形、矩形又はこれらの類似形状の断面形状が好ましく、特に扁平形の断面形状であることがより好ましい。
本発明の(C)ガラス繊維の断面形状が丸形のガラス繊維(以下丸形ガラス繊維と略す場合がある。)の繊維径は、好ましくは、直径4μm以上25μm以下、より好ましくは6μm以上20μm以下である。
また、本発明において(C)丸形ガラス繊維は、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物中で開繊していることが好ましい。ここで、開繊している状態とは、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物中の(C)丸形ガラス繊維が単繊維にまで開繊している状態をいい、具体的には、観察した強化繊維の中で10本以上束になった強化繊維の本数が強化繊維の総本数の40%以下であることを意味する。
本発明に用いる(C)丸形ガラス繊維は、収束剤又は表面処理剤で処理がされていることが好ましい。収束剤又は表面処理剤としては、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物およびチタネート系化合物等の官能性化合物が挙げられ、エポキシ含有量の多いエポキシ系化合物が強化繊維の耐湿熱性向上の観点から特に好ましい。
本発明の(C)ガラス繊維の断面形状が丸形のガラス繊維は、例えば、日本電気硝子(株)からT−760Hという商品名で入手できる。
本発明の(C)ガラス繊維の断面形状が扁平形状を有するガラス繊維(以下扁平ガラス繊維と略す場合がある。)とは、長さ方向に直角の断面に於いて、長径(断面の最長の直線距離)と短径(長径と直角方向の最長の直線距離)の比が1.3〜10、好ましくは1.5〜5、さらに好ましくは1.5〜4のものである。
上記長径と短径の比が1.3以上のガラス繊維を用いることでより金属との接合強度を高めることができるので好ましい。また比が10を越えるものはその製造自体が困難である。又、ガラス繊維は比重を小さくする等の目的の為には中空の繊維の使用も可能である。
(C)扁平ガラス繊維の断面積は、大きくなるに伴い、十分な補強効果が得られなくなり、又、あまりに過小になるとそれ自体の製造が困難になり、又取り扱い上の問題も生じる。よって本発明における(C)扁平ガラス繊維の断面積は、2×10−5〜8×10−3mm、好ましくは8×10−5〜8×10−3mm、特に好ましくは8×10−5〜8×10−4mmである。
(C)扁平ガラス繊維の長さは任意であるが、成形品の機械的性質と変形との兼ね合いにより、成形品の変形量を小さくする為には短い方が好ましいが、機械的強度の面からは平均繊維長が少なくとも30μm以上で長い方が好ましく、要求される性能に応じて適宜選択される。通常は50〜1000μmが好ましい。
(C)扁平ガラス繊維の長径と短径の比、断面積、長さは、ガラス繊維の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、観察画像から求めることができる。
これらの(C)扁平ガラス繊維の使用にあたっては必要ならば収束剤又は表面処理剤を使用することが望ましい。この例を示せば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物である。これ等の化合物はあらかじめ表面処理又は収束処理を施して用いるか、又は材料調製の際同時に添加してもよい。
(C)扁平ガラス繊維は、溶融ガラスを吐出するために使用するブッシングとして、長円形、楕円形、矩形、スリット状等の適当な孔形状を有するノズルを用いて紡糸することにより調製される。又、各種の断面形状(円形断面を含む)を有する近接して設けられた複数のノズルから溶融ガラスを紡出し、紡出された溶融ガラスを互いに接合して単一のフィラメントとすることにより調製できる。
(C)扁平ガラス繊維の市販品としては例えば、日東紡(株)社から、CSG3PA−830(登録商標)が入手できる。
本発明に用いる(C)ガラス繊維の配合量は、上記(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、10〜150重量である。(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(C)ガラス繊維の配合量を10重量部未満では、樹脂組成物と直接的に接した面の接合強度が低下する。30重量部以上が好ましい。(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(C)ガラス繊維の配合量を150重量部を超えても樹脂組成物と直接的に接した面の接合強度が低下する。70重量部以下が好ましい。
(4)アルコキシシラン化合物
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(D)アルコキシシラン化合物を0.1〜5重量部配合してなることが好ましい。
本発明の(D)アルコキシシラン化合物を用いることで、他の必須成分と相俟って樹脂組成物と直接的に接した面の接合強度向上効果を得ることができる。
本発明で用いる(D)アルコキシシラン化合物としては、エポキシ基含有アルコキシシラン化合物、アミノ基含有アルコキシシラン化合物、ウレイド基含有アルコキシシラン化合物、イソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、メルカプト基含有アルコキシ化合物、水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
本発明において(D)アルコキシシラン化合物は、1種または2種以上で使用することも可能である。
具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ − イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、およびγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
好ましいものとしては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。
(D)アルコキシシラン化合物の市販品としては例えば、信越シリコーン(株)社から、KBM303(登録商標)、KBE9007(登録商標)、KBE903(登録商標)、東レ・ダウコーニング(株)社からSH6040(登録商標)が入手できる。
本発明に用いる(D)アルコキシシラン化合物の配合量は、上記(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量である。(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(D)アルコキシシラン化合物が0.1重量部未満では、樹脂組成物と直接的に接した面の接合強度が低下する。(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(D)アルコキシシラン化合物の配合量が5重量部を超えても樹脂組成物と直接的に接した面の接合強度が低下する。3重量部以下が好ましい。
(5)エポキシ樹脂
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(E)エポキシ樹脂を0.5〜15重量部配合してなることが好ましい。
本発明の(E)エポキシ樹脂を用いることで、他の必須成分と相俟って樹脂組成物と直接的に接した面の接合強度向上効果を得ることができる。
本発明で用いる(E)エポキシ樹脂としては、エポキシ基を2個以上含む液体または固体状のものが使用できる。
本発明において(E)エポキシ樹脂は、1種または2種以上で使用することも可能である。
具体例としては、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、レゾルシン、サリゲニン、トリヒドロキシジフェニルジメチルメタン、テトラフェニロールエタン、これらのハロゲン置換体およびアルキル基置換体、ブタンジオール、エチレングリコール、エリスリット、ノボラック、グリセリン、ポリオキシアルキレン等のヒドロキシル基を分子内に2 個以上含有する化合物とエピクロルヒドリン等から合成されるグリシジルエーテル系、フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系、アニリン、ジアミノジフェニルメタン、メタキシレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の第一または第二アミンとエピクロロヒドリン等から合成されるグリシジルアミン系、等々のグリシジル基を含むエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリオレフィン、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド等々のグリシジル基を含まないエポキシ樹脂が挙げられる。
好ましいものとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類のグリシジルエーテル、グリシジルエステル等のビスフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられる。特に好ましいものとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が挙げられる。
(E)エポキシ樹脂の市販品としては例えば、三菱化学(株)社から、JER1009(登録商標)が入手できる。
本発明に用いる(E)エポキシ樹脂の配合量は、上記(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、0.5〜15重量部である。(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(E)エポキシ樹脂の配合量が0.5重量部未満では、樹脂組成物と直接的に接した面の接合強度が低下する。(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(E)エポキシ樹脂の配合量が15重量部を超えても樹脂組成物と直接的に接した面の接合強度が低下する。10重量部以下が好ましい。
本発明におけるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体(例えばポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリフェニレンエーテル等の非晶性樹脂等)、を添加することができる。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、前記(A)〜(E)および必要により配合されたその他成分が均一に分散されていることが好ましい。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法としては、例えば、単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーあるいはミキシングロールなどの公知の溶融混練機を用いて、各成分を溶融混練する方法を挙げることができる。各成分は、予め一括して混合しておき、それから溶融混練してもよい
また、溶融混練機に各成分を投入する方法としては、例えば、単軸あるいは2軸の押出機を用い、スクリュー根元側に設置した主投入口から前記(A)、(B)、(D)、及び(E)成分を供給し、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から(C)ガラス繊維を供給し溶融混合する方法が挙げられる。
溶融混練温度は、流動性および機械特性に優れるという点で、220℃以上が好ましく、280℃以上がさらに好ましい。また、400℃以下が好ましく、360℃以下がより好好ましい。ここで、溶融混練温度とは、溶融混練機の設定温度を指し、例えば2軸押出機の場合、シリンダー温度を指す。
〔金属〕
本発明で使用する金属には特に制限はないが、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、マグネシウム、モリブデン、金、銀、亜鉛、スズおよびこれらを主成分とする合金が好もしく用いられ、中でもアルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、マグネシウム、モリブデン、およびこれらの合金が特に好ましく用いられる。
本発明に用いる金属の形状や加工方法には特に制限はないが、通常 切断、切削、曲げ、絞り等の加工、即ち、鋸加工、フライス加工、放電加工、ドリル加工、プレス加工、研削加工、研磨加工等の機械加工により、所望の形状、構造に加工する。これらの機械加工により、部品として必要な形状・構造を有する金属部品を得ることができる。金属インサート成形により、本発明の複合構造体を得る場合、この金属部品が射出成形でのインサート品となる。
必要な形状、構造に加工された金属部分は、接着すべき面が厚い酸化膜、水酸化膜等が形成されていないことが好ましい。錆以外の汚れ、即ち、金属加工工程で付着した表面の油層、持ち運びで付着した指脂等は以下に述べる脱脂工程で除くことが好ましい。
金属の表面には、加工油、指脂、切粉等が付着しており、また、サンドブラスト加工等による加工後でも微細な油滴や汚れが付いているため、脱脂、洗浄を行うことが好ましい。通常は、加工された合金部品を脱脂処理のための溶剤脱脂処理機に投入して処理する。又は油剤の付着が軽度の場合は、常法である市販されている脱脂剤を溶解した水溶液に、数分浸漬して水洗する脱脂処理を最初に行うことが好ましい。更に、表面を化学的に削り取って清浄な面を出すために、40℃程度で数% 濃度の薄い苛性ソーダ水溶液槽を準備して、この苛性ソーダ水溶液槽に合金部品を浸漬することが好ましい。なお、この工程は化学的粗面化処理に含まない。
又、別の槽に数% 濃度の塩酸水溶液、硝酸水溶液、1水素2弗化アンモニウム水溶液等の酸性水溶液を、40℃程度として用意し、金属の種類によって使用する酸液が異なるが、これらの数種の溶液を用意しておけば異なる合金でも対応できる。苛性ソーダ水溶液に浸漬して水洗した合金形状物は、これら酸液に浸漬し、更に水洗して前処理工程を終える。
〔金属粗面化処理〕
本発明を構成する金属の粗面化処理方法としては、特に限定されるものではなく、金属の材質や形状、要求性能に応じて、公知の技法を用いて行うことが可能である。具体的に、例えば物理的粗面化処理として、ブラスト加工、レーザー加工、化学的粗面化処理として化学エッチング、陽極酸化法など使用することができ、1種または2種以上使用しても良い。安定して十数nm〜数十nmの微細孔を形成できる点で化学エッチング、陽極酸化法が好ましい。
具体的には例えば、金属表面に、特定のトリアジン化合物と、該特定のトリアジン化合物と化学反応が可能な有機化合物とを含む密着剤を用いて接着層を形成するTRI(株式会社東亜電化 登録商標)システムや、金属表面をアルカリ性溶液による脱脂処理、酸性溶液による中和処理、ヒドラジン系特殊溶液による浸漬処理、水洗・乾燥などの後処理を順に施し金属表面に微細凹凸を形成するNMT(大成ブラス株式会社 登録商標)、金属表面を特殊エッチング溶液中で処理するアマルファ(メック株式会社 登録商標)と称される表面処理技術によっても表面処理を促すことができる。
〔物理的粗面化処理〕
本発明で規定する物理的な粗面化とは、金属表面に微小固体粒子ややすり状の治具を接触、衝突させたり、あるいは高エネルギー電磁線(紫外線、プラズマ、電子線、レーザーなど)を照射する、あるいはスパッタリングなどの物理的な手段により金属表面を粗化することを言う。
産業的に利用可能な物理的粗化方法としては種々の方法があるが、工業生産性や加工コストなどの点も考慮すると、本発明においてはサンドブラスト処理やグラインダー処理が特に好適に用いられる。研磨剤としては、サンド、スチールグリッド、スチールショット、カットワイヤー、アルミナ、炭化ケイ素、金属スラグ、ガラスビーズ、プラスチックビーズ等、種々のものがあり、またその粒度も大小様々な種類があるが、これらは処理する目的や用途により使い分けられる。
本発明において、インサート部品が電気回路の一部をなす、例えば電気端子のようなものである場合、インサート金属としては銅、銅合金、ステンレス鋼やアルミニウム等が好適に用いられる。その際、金属インサート部品の表面は、物理的表面粗化を阻害しない程度に、物理的に粗化する前又は/及び後に、メッキ等により一部又は全部が被覆処理されていてもかまわない。
本発明では、物理的粗面化処理された金属表面の粗さRaは、1μm〜50μmであることが好ましく、1μm〜10μmの範囲が更に好ましい。
かかる金属表面の粗さRaは、JIS B 0601:2013で定められた中心線平均粗さである。
〔化学的粗面化処理〕
本発明で規定する化学的面化処理とは、化学薬品等を使用して金属表面を化学的に粗化する方法である。以下に金属表面を化学的に粗化する方法を例示する。
・水溶性のアミン系化合物の水溶液への浸漬処理
市販の金属用脱脂剤を使用して脱脂し水洗して機械加工油や油脂を除いた後、金属部品を、水溶性のアミン系化合物の水溶液へ浸漬処理する。この浸漬処理は、アンモニア、ヒドラジン、水溶性アミン化合物から選択される1以上の水溶液に浸漬して、アルミニウム合金部品の表面を超微細な凹凸を形成するためにエッチングをするものである。水溶性アミン化合物としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、アリルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アニリン等がある。
これらの水溶液はPH9〜10の弱塩基性に調整するのが好ましく、適当時間浸漬した金属は表面が超微細な凹凸にエッチングされ、電子顕微鏡で観察すれば5〜100n m直径の凹凸部で覆われた状況になる。水溶性アミン、又はヒドラジンの水溶液を使用する場合は、濃度1%〜30%の水溶液として、常温〜70℃で0.5分〜十数分が使用できる。アンモニア水を使用する場合は、濃度20% 程度で常温下では十数〜 数十分の浸漬時間で使用できる。浸漬後は水洗して温風乾燥する。
・陽極酸化処理
市販の金属用脱脂剤を使用して脱脂し水洗して機械加工油や油脂を除いた後、アルカリエッチング、化学研磨等の前処理で表面を清浄にし、酸性水溶液中の電解により表面に無数の微細孔を有した酸化アルミニウム層を形成する方法である。標準的なアルカリエッチング法は、10〜20%濃度の苛性ソーダ水溶液を50〜90℃ とし、これに十秒〜数十秒浸漬して合金表面を溶かす方法である。水洗し、続いて化学研磨するのが普通である。化学研磨は、硝酸、リン酸、硫酸等の酸の高濃度水溶液を80〜100℃とし、ここへ数秒〜十数秒浸漬する方法である。
金属表面はこの両工程で数μm以上削られる。続いて陽極酸化であるが、よく知られているのは、金属を陽極として10〜20℃とした約10%濃度の硫酸水溶液中で通電して金属を酸化し、表面を丈夫で硬い酸化層で覆う方法である。通電性のない酸化層で金属表面が覆われると、電気は通らなくなり酸化はそれで終了するはずだが、実際は通電し続け、酸化層の厚さは二十数μmにも達する。これは、十数〜数十nm径の無数の孔がこの酸化層の表面に開口しており、この孔を通じて通電し続けるからである。それは、この無数の孔がある金属の陽極酸化物を染料に溶かした水溶液に浸漬すると、孔に染料が入り込んで染色されることからも伺える。アルミニウムにて、これを更に処理して封孔し、染料が逃げ出さないようにしたのが染色アルマイトである。凹部や孔が開いた部分自体は金属ではないが、金属以上に丈夫で硬い金属酸化物であれば、原理から言って本発明は当然有効である。即ち、本発明では、染色や封孔は行わない。又、陽極酸化を終了し、水洗したものを乾燥する場合も、低温で行う。乾燥時の温度を上げ過ぎると、開口部の酸化金属が水と反応し水酸化物になって開口部を変形させ孔を封じるおそれがある。乾燥温度は60〜70℃が好ましい。
・トリアジンチオール類による表面処理
金属部品の表面処理に用いられるトリアジンチオール類は、下記式(1)
(式中、Rは、−SR2−OR2または−NHR2を示し、R2は、水素原子、アルキル基、フェニル基またはアルケニル基を示す。MおよびMは、同一または異なっていてもよく、水素原子、アルカリ金属、または1/2(アルカリ土類金属)を示す。)で表される。上記一般式(1)で表されるトリアジンチオール類において、R、R2が、アルキル基の場合、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。また、アルケニル基の場合、例えばビニル基、1−プロペニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、1,3−ブタンジエニル基などが挙げられる。
およびMで表されるアルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。また、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。
上記トリアジンチオール類の具体例としては、例えば、2−オクチルアミノ− 4,6−ジチオール−1,3,5−トリアジン、2−アニリノ−4 ,6−ジチオール−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリチオール−1,3,5−トリアジン、2,4−ジメルカプト−6−ナトリウムメルカプチド−1,3,5−トリアジン、2−メルカプト−4,6−ビスカリウムメルカプチド−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。金属部品への表面処理は、上記トリアジンチオール類(1)の水溶液や有機溶媒の溶液に金属部品を浸漬したり、溶液を金属に塗布したりすることによって行われる。金属部品をトリアジンチオール類(1)の水溶液や有機溶媒の溶液に浸漬する場合において、前記水溶液または溶液の温度や浸漬時間は特に限定されるものではないが、通常、液温を10〜40℃に調整して、浸漬時間を1〜30分、好ましくは5〜10分に設定するのが好適である。
前記有機溶媒も特に限定されるものではないが、例えばメタノール、エタノールなどのアルコール類;メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類などが挙げられる。
トリアジンチオール類による表面処理を行う場合は、予め化学的および/または物理的処理により金属表面を粗面化しておくことが好ましい。かかる金属表面の粗面化処理は、例えば、酸化力の強い過マンガン酸水溶液のようなエッチング溶液によってマイクロエッチングを行う方法、酸化剤によって表面に酸化被膜を形成させるいわゆる黒化処理などが好適である。特に、金属部品として銅を用いる場合には、黒化処理によって生じるピンクリングの問題を避けるべく、キレート作用と空気酸化とを併せてエッチングを行う、いわゆるME Ceth Bond法(牧善朗ほか、電子材料、26〜30頁、1995年10月号参照)を採用するのが好ましい。
本発明において、化学的粗面化処理された金属表面が、数平均内径10〜80nmの凹部で覆われていることが好ましい。
かかる数平均内径とは、乾燥後の金属表面を走査型電子顕微鏡「S−4800(株式会社日立製作所製)」で、10万倍の倍率で観察し、その中に、1辺が200nmの正方形を、金属表面の電子顕微鏡写真上で区画し、その中に観察される凹部状物の直径を全てその写真上で測定し、その総計を測定した凹部の数で除したものである。
最も現象が明快なアルミニウム合金のA5052(JIS規格)の例で述べると、水溶性アミン水溶液をPH10程度の弱塩基性に調整し、温度を50℃前後にして浸漬した場合、直ちに20〜40nm内径の凹部が発生し、1分程度でその凹部の深さが内径と同等レベルになる。そして、更に浸漬を続けると凹部の深さが腐食され深くなる、この腐食により凹部を形成する外周である縁部分も腐食されてしまい、平均して凹部の内径が更に大きくなる。
〔複合成形体を製造する際の、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物と金属の接合方法〕
本発明の複合成形体は、上記方法により得られたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物と金属を接合して製造される。接合方法としては、上記方法により得られたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に、ブロー成形、押出成形、射出成形などの成形方法を適用して、繊維状などの1次元成形体、フィルム・シートなどの2次元成形体あるいは3次元成形体を予め得ておき、かかる樹脂組成物成形体を金属とを、(1)振動エネルギー等の摩擦エネルギーにより樹脂を溶融させて接合する振動溶着法、超音波溶着法、スピン溶着法、(2)レーザー光線の吸収エネルギーおよびその輻射エネルギーを用いるレーザー溶着法、(3)樹脂組成物の融点以上の温度の金属板に樹脂成形体を近づける、あるいは接触させて熱圧着する方法などをまず例示する事ができる。また(4)金属を金型内に予め設置しておき、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形にて溶融させ、同時に金属と接触させる方法を例示することができる。
本発明においては、金属を金型内に予め設置しておき、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を、射出成形により金属に直接接合する方法が特に好適な方法として挙げられる。具体的には、射出成形金型を用意し、可動金型を開いてその一方に本発明の金属をインサートし、可動金型を閉め、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を射出し、可動金型を開き離型する方法である。
この方法では、射出成形する際、金型温度、射出温度は通常より高くすることで、より高い接合強度が得られる場合がある。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
[測定方法]
(1)PPS樹脂のクロロホルム抽出量
ソックスレー抽出器を用い、PPSサンプル量約10g、クロロホルム200mlを用い5時間抽出し、その抽出液を50℃で乾燥し、得られた残さを仕込みPPSサンプル量で割り返し、100をかけてパーセンテージ表記としたものである。
(2)PPS樹脂のメルトフローレート(MFR)
測定温度315.5℃、5000g荷重とし、ASTM−D1238−70に準ずる方法で測定した。
(3)金属接合強度
住友重機製射出成形機(SE−50D)を使用し、シリンダー温度は320度、金型温度は140℃、射出圧力=成形下限圧力+10MPaの圧力にてISO19095−2TypeAに準拠した試験片(複合構造体)成形した。得られた複合構造体については、引張速度2mm/min条件下で引張試験を行い、金属接合強度を測定した。金属接合強度が33MPa以上であれば良好といえる。40MPa以上が望ましい。
〔使用原料〕
〔参考例1〕PPSの重合(A1)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム1722.00g(21.00モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPSは直鎖状であり、灰分率は0.18%、MFRは600g/10分であった。
B1:コアシェル型ゴム: コア:アクリル酸ブチルゴム、シェル:メタクリルサンメチル/メタクリル酸グリシジル共重合体(ロームアンドハース社製 パラロイド2314(商品名))
C1:円形ガラス繊維(日本電気硝子(株)製T−760H(商品名)3mm長、平均繊維径10.5μm)。
C2:扁平ガラス繊維(日東紡(株)製 CSG 3PA−830(商品名)断面の長径と短径の比が2、断面積が2×10−4mm
D1:γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン(株)製KBE9007)
E1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製 JER1009(商品名))
〔使用金属〕
(物理的粗面化処理金属)
アルミニウムA5052(JIS規格)板について、ショットブラストを用いてブラスト処理を行い、下記金属−1、金属−2を得た。
金属−1:アルミニウムA5052(JIS規格)、Ra=30μm
金属−2:アルミニウムA5052(JIS規格)、Ra=2μm
(化学的粗面化処理金属)
アルミニウムA5052(JIS規格)板、銅C1100(JIS規格)板について、TRI (株式会社東亜電化 登録商標)システムにより、下記金属−3、金属−4を得た。
金属−3:アルミニウムA5052(JIS規格)、凹部数平均内径 50nm
金属−4:銅C1100(JIS規格)、凹部数平均内径 50nm
アルミニウム板A5052(JIS規格)について、NMT (大成プラス株式会社 登録商標)処理により、下記金属−5を得た。
金属−5:アルミニウムA5052(JIS規格)、凹部数平均内径 50nm
[実施例1〜14]
表1に示したように樹脂組成物の組成を変更し、(A)、(B)、(D)、(E)成分を2軸押出機の主投入口から供給し、(C)成分を、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から供給してシリンダー温度320℃に設定したスクリュー径44mmφの2軸押出機で溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。120℃で一晩乾燥したペレットを用い、成形、評価を行った。
[比較例1〜5]
表2に示したように樹脂組成物の組成を変更し、(A)、(B)成分を2軸押出機の主投入口から供給し、(C)成分を、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から供給してシリンダー温度320℃に設定したスクリュー径44mmφの2軸押出機で溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。120℃で一晩乾燥したペレットを用い、成形、評価を行った。何れも金属接合強度が劣るものであった。
本発明を利用すれば、ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物と金属形状物とを強固に射出接合でき、得られた一体化品は容易に剥がれることがない。従って、形状、構造上も機械的強度の上でも自由度の多い各種機器の筐体や部品、構造物等を作ることができる。本発明によって製造した筐体、部品、構造物は、軽量化や機器製造工程の簡素化に役立つものである。

Claims (11)

  1. 金属とポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形体の複合構造体であって、
    前記金属の表面が粗面化処理されており、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)アクリル系単量体を重合したゴム質重合体からなるコアと、グリシジル基を含有し、アクリル系単量体を重合した最外層を含むコアシェル型ゴム1〜15重量部、および(C)ガラス繊維10〜150重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であることを特徴とする複合構造体。
  2. 粗面化処理が、物理的および/または化学的粗面化処理であることを特徴とする請求項1記載の複合構造体。
  3. 物理的粗面化処理された金属表面の粗さRaが、1μm〜50μmであることを特徴とする請求項1または2記載の複合構造体。
  4. 化学的粗面化処理された金属表面が、数平均内径10〜80nmの凹部で覆われていることを特徴とする請求項1または2記載の複合構造体。
  5. 化学的粗面化処理が化学エッチング処理および/または陽極酸化処理であることを特徴とする請求項1、24、いずれか記載の複合構造体。
  6. 金属がアルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、マグネシウム、モリブデン、およびこれらの合金から選ばれるいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の複合構造体。
  7. 前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、さらに(D)アルコキシシラン化合物0.1〜5重量部を配合してなる組成物であることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の複合構造体。
  8. 前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、さらに(E)エポキシ樹脂1〜15重量部を配合してなる組成物であることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の複合構造体。
  9. 前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に含まれる前記(C)ガラス繊維の、断面積が2×10−5〜8×10−3mmであり、かつ長さ方向に直角の断面の長径(断面の最長の直線距離)と短径(長径と直角方向の最長の直線距離)の比が1.3〜10の間である扁平な断面形状を有するガラス繊維であることを特徴とする請求項1〜8いずれか記載の複合構造体。
  10. 射出溶着によって接合された請求項1〜9のいずれか記載の複合構造体。
  11. 粗面化処理された金属に、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)アクリル系単量体を重合したゴム質重合体からなるコアと、グリシジル基を含有し、アクリル系単量体を重合した最外層を含むコアシェル型ゴム1〜15重量部、および(C)ガラス繊維10〜150重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を溶融させて接触させる、金属とポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形体の複合構造体の製造方法。
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