JP7379974B2 - 金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法 - Google Patents

金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、接合面の接合強度に優れる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、耐衝撃性、軽量性及び量産性に優れ、特に自動車や航空機などの輸送機器の部品用途に有用な金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材との接合強度に優れる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の信頼性を堅持したまま、安定的に製造する方法に関するものである。
自動車や航空機などの輸送機器の部品を軽量化するため、金属の一部を樹脂に置き換える方法が検討されている。また、樹脂と金属を複合一体化する方法として、金型内に物理的処理及び/又は化学処理を施した表面を有する金属部材をインサートし、樹脂を射出成形して直接一体化する方法(以下、射出インサート成形法と表記する場合がある)が、良量産性、少部品点数、低コスト、高設計自由度、低環境負荷の観点から注目されており、スマートフォン等の携帯電子機器の製造プロセスなどに提案されている(例えば、特許文献1~3参照。)。
ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPSと略記することもある。)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略記することもある。)は、優れた機械的特性、熱的特性、電気的特性、耐薬品性を有し、多くの電気・電子機器部材や自動車機器部材、その他OA機器部材等、幅広く使用されている。
また、PASは溶融流動性に優れることから、物理的処理及び/又は化学処理を施した表面を有する金属部材との射出インサート成形法において、優れた接合強度を発現する。
一方、打音試験は、検体の空隙などの欠陥を検査する手法として一般に使用されており、例えば、コンクリート、耐火物の検査、薄板、FRP構造物の検査方法として提案されている(例えば、特許文献4~7参照。)。
また、主成分分析は、複数の対象物の中から異種品を検出する解析手段、あるいは製品性能を安定して得られる製造プロセスを精度良く予測する製造プロセスのモニタリング方法等として広く活用されている(例えば、特許文献8、9参照)。
特許第5701414号公報 特許第5714193号公報 特許第4020957号公報 特許第4768927号公報 特開2002-340869号公報 特開平7-20097号公報 特許第4736501号公報 WO2005/038443号公報 特開2016-167205号公報
しかし、特許文献1~3に提案された射出インサート成形法により得られる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体においては、一定の接合強度を有するものを得ることが可能ではあるが、射出インサート成形では装置の動作不良や条件設定のミス、射出成形機シリンダ内での樹脂滞留時間の長短などにより金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材との接合不良が発生し、接合面に空隙などの欠陥を生じる場合があり、個々の性能差のバラつきが大きく、安定的な製品とする際には課題のあるものであった。また、得られた複合体の接合面の接合状態に関する情報を得るために、複合体の引張試験により接合強度を評価するといった破壊試験による検査が一般的であり、このような方法は製品の信頼性確認には採用することができない。その対処法として、抜き取りによる試験も採用されているが、歩留まりが低下し、量産性に乏しいといった課題が発生する。そこで、工業的な量産、品質管理を考慮した場合、金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の接合面の接合状態、例えば欠陥発生状況が非破壊試験によって定量的に数値化された金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法が望まれていた。
特許文献4~7に提案された打音試験による検査については、金属部材-樹脂部材複合体を対象としたものでなく、金属部材-樹脂部材複合体について、何ら提案されていない。
また、特許文献8、9に提案された主成分分析の活用手法については、金属部材-樹脂部材複合体を対象としたものでなく、金属部材-樹脂部材複合体について、何ら提案されていない。
そこで、本発明は、金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材との接合強度に優れる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の信頼性を堅持したまま安定的に製造する方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、接合面を打撃した際に得られる音圧の周波数分布波形を用いた主成分分析から得られる主成分得点を基準値として、金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を判定するとともに、基準値と乖離する複合体が製造された際には、その製造条件を適正化することで、接合面に欠損のない金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体が効率よく製造でき、優れた接合強度を有するものとなること、接合の信頼性に優れること、さらに耐衝撃性、軽量性及び量産性に優れる部材、部品、製品等となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、乾燥後のポリアリーレンスルフィド樹脂と金属部材とを射出一体成形に供して金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を製造する方法であって、(1)得られた金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の接合面に対して打音試験装置により打撃して周波数-音圧の関係を測定する工程、(2)該周波数-音圧の関係から特定範囲の周波数の音圧を単位周波数当たりの音圧として抽出する工程、(3)該音圧を移動平均処理することにより得られる周波数分布波形を主成分分析し、特定の累積寄与率となる主成分により主成分得点を算出する工程を経て、さらに(4)該主成分得点と基準値との差異が特定範囲を超える金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体が製造された場合、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥温度、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥時間、射出成形温度、射出成形金型温度、射出成形時間、射出成形金型保圧力、射出成形金型保圧時間及び金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体冷却時間からなる群より選択される少なくとも1種以上の成形条件を制御・変更する工程、を有することを特徴とする金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法に関するものである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法における金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体は、金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材とを射出成形により直接一体化してなる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体であり、(1)その接合面に対して打音試験装置により打撃して周波数-音圧の関係を測定し、(2)該周波数-音圧の関係から特定範囲の周波数の音圧を単位周波数当たりの音圧として抽出し、(3)該音圧を移動平均処理することにより得られる周波数分布波形を主成分分析し、特定の累積寄与率となる主成分により主成分得点を算出し、(4)該主成分得点と基準値との差異が特定範囲を超える場合に成形条件を制御しその最適化を行うものである。
本発明の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法は、金属部材を設置した成形金型内に加熱溶融樹脂を充填する射出一体成形法により製造されるものであり、その際のポリアリーレンスルフィド樹脂は成形前に乾燥工程を経たものである。その際の乾燥温度、乾燥時間としては任意であり、中でも50~150℃であることが好ましい。また、射出一体成形の際の成形条件、例えば、射出成形温度、射出成形金型温度、射出成形時間、射出成形金型保圧力、射出成形金型保圧時間、冷却時間等は任意である。
本発明の製造方法による金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の(1)接合面に対して打音試験装置により打撃して周波数-音圧の関係を測定する方法としては、打音試験装置により打撃して周波数-音圧の関係を測定する方法であればいかなる方法を用いてもよく、その際の周波数-音圧の関係は音圧の周波数分布波形として得ることができる。該打音試験装置としては、打撃装置、集音装置、音圧の解析装置から構成される装置を用いることができ、金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を打撃する事により得られた音圧をフーリエ変換することで周波数分布波形を得ることができる。
そして、該打音試験装置における複合体を打撃する打撃装置としては、例えばハンマー、インパクタなど市販の打撃装置を用いることができる。また、金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を打撃することにより発生した音圧を集音する集音装置としては、例えば市販の騒音計、マイクロホン等を挙げることができ、該騒音計の具体的例示としては、(商品名)騒音計NL-42、NL-52(リオン(株)製)、(商品名)騒音計LA-3560、LA-3260((株)小野測器製)、該マイクロホンの具体的例示としては、マイクロホンMI-1211、MI-1235((株)小野測器製)などが挙げられる。
本発明の製造方法における(2)周波数-音圧の関係から特定範囲の周波数の音圧を単位周波数当たりの音圧として抽出する方法としては、(1)接合面に対して打音試験装置により打撃して得られた周波数-音圧の関係から、特定範囲の周波数の音圧を単位周波数当たりの音圧として抽出する方法であり、この際の周波数-音圧の関係は例えば周波数分布波形として表すことができ、特定周波数範囲としては任意であり、例えば1KHz~14KHzを挙げることができる。また、単位周波数についても任意であり、例えば1Hzを挙げることができる。そして、より効率的な金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の測定を可能とすることから、1KHz~14KHzの音圧を1Hz単位で測定・抽出することが好ましい。
本発明の製造方法における、(3)音圧を移動平均処理することにより得られる周波数分布波形を主成分分析し、特定の累積寄与率となる主成分により主成分得点を算出する方法としては、(2)周波数-音圧の関係から特定範囲の周波数の音圧を抽出することにより得られた単位周波数当たりの音圧を移動平均処理することに得られる周波数分布波形を主成分分析し、特定の累積寄与率となる主成分により主成分得点を算出する方法であり、単位周波数当たりの音圧を移動平均処理することによりノイズを効率的に除去することが可能となる。なお、移動平均処理とは、時系列データにおける一定区間ごとの平均値を区間をずらしながら求めるものであり、移動平均を用いることにより、長期的な傾向を表す滑らかな曲線グラフとして表すことができノイズの除去が可能となるものである。そして、移動平均処理の具体的提示としては、区間としての3Hzごとの移動平均処理を挙げることができる。また、主成分分析及び主成分得点の算出については、解析ソフトウェアを用い行うことが可能である。
なお、本発明における主成分分析の概要について以下に示す。また、その詳細な解説については、「はじめてのパターン認識(森北出版、平井 有三著)」、「主成分分析の基本と活用(日科技連出版社、内田 治著)」、「主成分分析(朝倉書店、上田 尚一著)」などに紹介されている。
<主成分分析とは>
測定された多種類のデータが共有する情報を少数の合成データ(主成分)として要約する手法であり、データの要約によりデータの持つ情報や傾向をより把握し易くなる手法である。
<主成分(軸)決定>
主成分(軸)の決定は、図1に示すデータが散りばめられた散布図において、データのばらつき、すなわち分散が最大となる直線を第一主成分軸とし、該第一主成分軸と直行する軸のなかで、データの分散が最大となる直線を第二主成分軸とする。第三主成分軸以降も同様に行い、主成分(軸)を決定することにより、散りばめられたデータの要約を行うものである。
<累積寄与率>
寄与率は、各主成分が全データの散らばり具合をどの程度の割合となるのかを表す指標であり、各主成分の分散が分散の総和に占める割合として求められる。累積寄与率は第一主成分から第n主成分までが全データの散らばり具合をどの程度の割合で説明しているかを表す指標であり、第一主成分~第n主成分の分散が分散の総和に占める割合として求められる。なお、主成分数を決定する際の累積寄与率は任意であり、特に本発明の製造方法における金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造効率を優れたものとすることから累積寄与率70%以上が好ましく、更に75%以上が好ましい。
<主成分得点>
主成分得点の決定は、図2に示すように個々のデータの各主成分軸上の座標値として求めることができる。データの第一主成分軸上の座標値は第一主成分得点とし、第二主成分軸上の座標値は第二主成分得点とし、第n主成分得点として算出することができる。そして、異なる試料から得られるデータを主成分分析し、主成分得点を算出して比較することで、異なる試料間の特徴の違いを見分けることが可能になる。
本発明の製造方法における、(4)主成分得点と基準値との差異が特定範囲を超える場合に成形条件を制御し、その最適化を行う方法としては、(3)音圧を移動平均処理することにより得られる周波数分布波形を主成分分析し、特定の累積寄与率となる主成分により得られた主成分得点を基準値として、基準値との差異が特定範囲を超える金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を得た場合に、成形条件を制御してその最適化を行う方法である。ここで、基準値としては、例えば主成分得点の平均値を用いることができる。また、基準値との差異が特定の範囲とは任意であり、中でも、本発明の製造方法における金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の接合面に欠損のなく、接合強度等に優れるものを効率よく製造することが可能となることから10であることが好ましい。
本発明の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造法としては、金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材とを射出成形により直接一体化することが可能であれば如何なる方法をも用いることができ、その中でも特に効率よく複合体を製造することが可能となることから射出インサート成形法により一体化することが好ましい。そして、該射出インサート成形法としては、金型内に金属部材を装着し、該金属部材に溶融ポリアリーレンスルフィド樹脂を充填し、ポリアリーレンスルフィド樹脂部材とし、該金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材とが直接一体化された複合体とする方法を挙げることができる。この際の成形条件は、例えば成形前の原料であるポリアリーレンスルフィド樹脂の乾燥温度、ポリアリーレンスルフィド樹脂の乾燥時間、ポリアリーレンスルフィド樹脂の充填量、射出成形温度、射出速度、射出成形金型温度、射出成形時間、射出成形金型保圧力、射出成形金型保圧時間、金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体冷却時間等が挙げられ、これら設定を行うことにより、金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造がおこなわれる。そして、本発明における成形条件の制御・変更とは、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥温度、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥時間、射出成形温度、射出成形金型温度、射出成形時間、射出成形金型保圧力、射出成形金型保圧時間、金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体冷却時間のいずれか1種以上の成形条件を制御することを特徴とするものである。この際の成形条件は任意であり、中でも射出成形温度としては280~340℃、射出成形金型温度としては80℃以上が好ましく、特に100℃以上、更に130℃以上が好ましく、射出成形金型保圧力としては1MPa以上であることが好ましく、射出成形金型保圧時間は1秒以上である事が好ましい。また、射出成形時間は0.3~5秒の間が好ましく、冷却時間は4秒以上である事が好ましい。
そして、本発明の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造法としては、射出成形により直接一体化した金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の接合面に対して、打音試験装置から打撃し、打撃した際に得られた音圧の周波数分布波形において、音圧が最大となる周波数における音圧の減衰時間を測定し、該減衰時間の基準値を下回る金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体が製造された際には、射出成形条件を制御・最適化することにより、ボイド等の接合面の欠損の見られない金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を製造するものである。その際の射出条件として、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥温度、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥時間、射出成形温度、射出成形金型温度、射出成形時間、射出成形金型保圧力、射出成形金型保圧時間、金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体冷却時間のいずれか1種以上の成形条件を制御することにより成形条件の最適化をはかるものである。そして、これらの制御としては、溶融ポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融流動性付与、溶融樹脂から発生するガスの接合面への巻き込み抑制、溶融樹脂が固化し収縮する前に成形品を取出そうとした際に発生する離型不良の抑制等の対処を行うことが好ましく、溶融ポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融流動性付与の具体的例示としては、射出成形温度の上昇、射出成形金型温度の上昇、射出成形金型保圧力の上昇、射出成形金型保圧時間の延長等による対応を挙げることができ、溶融樹脂から発生するガスの接合面への巻き込み抑制の具体的例示としては、射出時間の延長、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥温度の上昇、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥時間の延長による対応を挙げることができ、溶融ポリアリーレンスルフィド樹脂が固化し収縮する前に成形品を取出そうとした際に発生する離型不良の抑制の具体的例示としては、金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体冷却時間の延長による対応を挙げることができる。
さらに、優れた金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を効率的に製造することが可能となることから、成形条件の制御・変更を行う際には、過去の主成分得点と基準値との差異と成形条件との関係をデータベース化し相関させた集合より、成形条件の抽出を行い制御・変更を行うことが好ましい。また、成形条件の抽出を行う際には最適化自動判別する手段と抽出された成形条件を自動的にフィードバックする手段を有するものであることが好ましい。
本発明の製造方法による金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を構成するポリアリーレンスルフィド樹脂としては、一般にポリアリーレンスルフィド樹脂と称される範疇に属するものであればよく、該ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、例えばp-フェニレンスルフィド単位、m-フェニレンスルフィド単位、o-フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルフォン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ビフェニレンスルフィド単位からなる単独重合体又は共重合体を挙げることができ、該ポリアリーレンスルフィド樹脂の具体的例示としては、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリフェニレンスルフィドスルフォン、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリフェニレンスルフィドエーテル等が挙げられ、その中でも、特に耐熱性、強度特性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂となることから、ポリ(p-フェニレンスルフィド)であることが好ましい。
さらに、該ポリアリーレンスルフィド樹脂は、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度において、機械的強度と薄肉流動性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂となることから50~2000ポイズのポリアリーレンスルフィド樹脂であることが好ましい。
該ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法として知られている方法により製造することが可能であり、例えば極性溶媒中で硫化アルカリ金属塩、ポリハロ芳香族化合物を重合することにより得る事が可能である。その際の極性有機溶媒としては、例えばN-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等を挙げる事ができ、硫化アルカリ金属塩としては、例えば硫化ナトリウム、硫化ルビジウム、硫化リチウムの無水物又は水和物を挙げる事ができる。また、硫化アルカリ金属塩としては、水硫化アルカリ金属塩とアルカリ金属水酸化物を反応させたものであってもよい。ポリハロ芳香族化合物としては、例えばp-ジクロロベンゼン、p-ジブロモベンゼン、p-ジヨードベンゼン、m-ジクロロベンゼン、m-ジブロモベンゼン、m-ジヨードベンゼン、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ジクロロジフェニルエーテル、4,4’-ジクロロジビフェニル等を挙げる事ができる。
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、直鎖状のもの、重合時にトリハロゲン以上のポリハロゲン化合物を少量添加して若干の架橋又は分岐構造を導入したもの、ポリアリーレンスルフィド樹脂の分子鎖の一部及び/又は末端を例えばカルボキシル基、カルボキシ金属塩、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基等の官能基により変性したもの、窒素などの非酸化性の不活性ガス中で加熱処理を施したものなどが挙げられ、さらにこれらポリアリーレンスルフィド樹脂の混合物であってもかまわない。また、該ポリアリーレンスルフィド樹脂は、酸洗浄、熱水洗浄あるいはアセトン、メチルアルコールなどの有機溶媒による洗浄処理を行うことによってナトリウム原子、ポリアリーレンスルフィド樹脂のオリゴマー、食塩、4-(N-メチル-クロロフェニルアミノ)ブタノエートのナトリウム塩などの不純物を低減させたものであってもよい。
該金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を構成するポリアリーレンスルフィド樹脂は特に接合面の欠陥が少なく、耐衝撃性に優れた金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体となることから、さらに、変性エチレン系共重合体を配合してなるものが好ましい。該変性エチレン系共重合体は、エチレン-α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル-無水マレイン酸共重合体,エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体,エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-酢酸ビニル共重合体,エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体及び無水マレイン酸グラフト変性エチレン-α-オレフィン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種以上の変性エチレン系共重合体であることが好ましい。該変性エチレン系共重合体の配合量としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して、1~40重量部であることが好ましい。
また、該ポリアリーレンスルフィド樹脂は特に強度、耐衝撃性に優れた金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体となることから、ガラス繊維を配合してなるものが好ましい。該ガラス繊維としては、一般にガラス繊維と称すものであれば如何なるものを用いてもよい。該ガラス繊維の具体的例示としては、平均繊維径が6~14μmのチョップドストランド、繊維断面のアスペクト比が2~4の扁平ガラス繊維からなるチョップドストランド、ミルドファイバー、ロービング等のガラス繊維;シラン繊維;アルミノ珪酸塩ガラス繊維;中空ガラス繊維;ノンホーローガラス繊維等が挙げられ、その中でもとりわけ接合面の欠陥が少なく、耐衝撃性に優れる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体となることから、平均繊維径が6~14μmのチョップドストランド、ないしは、繊維断面のアスペクト比が2~4である扁平ガラス繊維からなるチョップドストランドであることが好ましい。これらのガラス繊維は2種以上を併用することも可能であり、必要によりエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物又はポリマーで、予め表面処理したものを用いてもよい。該ガラス繊維の配合量としては、とりわけ接合面の欠陥が少なく耐衝撃性に優れた金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体となることから、ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して、5~120重量部であることが好ましい。
本発明の製造方法による金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を構成するポリアリーレンスルフィド樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、マイカ、シリカ、タルク、クレイ、硫酸カルシウム、カオリン、ワラステナイト、ゼオライト、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ガラスパウダー、ガラスバルーン、ガラスフレークが添加されたものであっても構わない。
また、該ポリアリーレンスルフィド樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知のタルク、カオリン、シリカなどの結晶核剤;ポリアルキレンオキサイドオリゴマー系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤;酸化防止剤;熱安定剤;滑剤;紫外線防止剤;発泡剤などの通常の添加剤を1種以上添加するものであってもよい。
さらに、該ポリアリーレンスルフィド樹脂は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、各種熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアルキレンオキサイド等の1種以上を混合して使用してなるものであってもよい。
本発明の製造方法による金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材と金属部材とを射出成形により直接一体化したものであり、接合強度や耐衝撃性に優れた金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体となることから、該金属部材としては、物理的処理及び/又は化学処理を施した表面を有する金属部材であることが好ましい。
そして、該金属部材としては、金属部材の範疇に属するものであればいかなる材質よりなる部材でもよく、その中でもポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体とした際に各種用途への適応が可能となることから、アルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材、銅製部材、銅合金製部材、マグネシウム製部材、マグネシウム合金製部材、鉄製部材、チタン製部材、チタン合金製部材、ステンレス製部材である金属部材が好ましく、とりわけ軽量化に優れる、アルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材、マグネシウム製部材、マグネシウム合金製部材、チタン製部材、チタン合金製部材である金属部材が好ましく、より好ましくはアルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材である。また、該金属部材は、板に代表される展伸材であっても、ダイカストに代表される鋳造材であっても、鍛造材からなる金属部材であってもかまわない。
該金属部材は、表面を物理的処理及び/又は化学処理した金属部材とすることが好ましく、該物理的処理及び/又は化学処理を施すことにより、ポリアリーレンスルフィド樹脂部材と直接一体化した際に、より接合強度や耐衝撃性に優れる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体が得られるものとなる。そして、金属部材の表面を物理的処理及び/又は化学処理する方法としては如何なる方法を用いて物理的処理及び/又は化学処理を施すことも可能であり、物理的処理としては、例えば表面に微小固体粒子を接触又は衝突させる方法、また高エネルギー電磁線を照射する方法等を挙げることができ、より具体的にはサンドブラスト処理、液体ホーニング処理、レーザ加工処理等を挙げることができる。更に、サンドブラスト処理、液体ホーニング処理の際の研磨剤としては、例えばサンド、スチールグリッド、スチールショット、カットワイヤー、アルミナ、炭化ケイ素、金属スラグ、ガラスビーズ、プラスチックビーズ等を挙げることができる。また、レーザ加工処理としては、WO2007/072603号公報、特開平2015-142960号公報に提案の方法等をも挙げることができる。
また、化学処理としては、例えば陽極酸化処理法、酸及び/又はアルカリの水溶液で化学処理する方法、等を挙げることができる。そして、陽極酸化処理としては、例えば金属部材を陽極として電解液中で電化反応を行いその表面に酸化被膜を形成する方法であってもよく、メッキ等の分野において陽極酸化法として一般的に知られている方法を用いることができる。より具体的には、例えばA)一定の直流電圧をかけて電解を行う直流電解法、B)直流成分に交流成分を重畳した電圧をかけることにより電解を行うバイポーラ電解法、等を挙げることができる。陽極酸化法の具体的例示としては、WO2004/055248号公報等に提案の方法等を挙げることができる。また、酸及び/アルカリの水溶液で化学処理する方法としては、例えば金属部材を酸及び/アルカリの水溶液に浸せきし金属部材表面を化学処理する方法であってもよく、その際の酸及び/アルカリの水溶液としては、例えばリン酸等のリン酸系化合物;クロム酸等のクロム酸系化合物;フッ化水素酸等のフッ化水素酸系化合物;硝酸等の硝酸系化合物;塩酸等の塩酸系化合物;硫酸等の硫酸系化合物;水酸化ナトリウム、アンモニア水溶液、N-エチルモルホリン溶液などのアルカリ水溶液;トリアジンチオール水溶液、トリアジンチオール誘導体水溶液により化学処理する方法等を挙げることができ、より具体的例示としては、特開平10-096088号公報、特開平10-056263号公報、特開平04-032585号公報、特開平04-032583号公報、特開平02-298284号公報、WO2009/151099号公報、WO2011/104944号公報、WO2016/158516号公報、特開2017-218616号公報等に提案の方法、等を挙げることができる。
該物理的処理及び/又は化学処理は、単独で処理しても両者を併用して処理しても良く、例えば、表面に物理的処理を施した後に化学処理を施した金属部材を用いて金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体としたものであっても良い。
本発明の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法は、接合強度が高く、その接合の信頼性に優れ、さらに耐衝撃性、軽量性及び量産性に優れる特性を併せ持つ金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を提供するものであり、特にこれら特性、信頼性を必要とする自動車や航空機などの輸送機器の部品の製造方法として好適に用いられる。
本発明の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法は、接合面の接合強度、さらには、耐衝撃性、軽量性及び量産性に優れ、特に自動車や航空機などの輸送機器の部品用途に有用な信頼性の高い金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を安定的に製造するものであり、その産業的価値は極めて高いものである。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
実施例及び比較例において用いた、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)、変性エチレン系共重合体(B)、ガラス繊維(C)を以下に示す。
<ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)>
ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A-1)と記す。):溶融粘度190ポイズ。
ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A-2)と記す。):溶融粘度400ポイズ。
<変性エチレン系共重合体(B)>
エチレン-α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル-無水マレイン酸共重合体(B-1)(以下、変性エチレン系共重合体(B-1)と記す。):アルケマ(株)製、(商品名)ボンダインAX8390。
エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(B-2)(以下、変性エチレン系共重合体(B-2)と記す。):住友化学(株)製、(商品名)ボンドファースト7M。
<ガラス繊維(C)>
ガラス繊維(C-1);オーウェンス コーニング ジャパン(株)製、(商品名)RES03-TP91;繊維径10μm、繊維長3mm。
ガラス繊維(C-2);日東紡株式会社製チョップドストランド、(商品名)CSG-3PA 830、繊維断面のアスペクト比4。
<作製例1(PPS樹脂組成物-1の作製)>
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(NaS・2.9HO)1814g、30%苛性ソーダ溶液(30%NaOHaq)48g及びN-メチル-2-ピロリドン3679gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、380gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p-ジクロロベンゼン2107g、N-メチル-2-ピロリドン985gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合後、減圧下で重合スラリーからN-メチル-2-ピロリドンを蒸留操作で回収した。最終到達温度は170℃で圧力は4.7kPaであった。得られたケーキに80℃の温水を加えスラリー濃度20%として洗浄し、再度、同様に温水を加え175℃まで昇温してポリ(p-フェニレンスルフィド)の洗浄を合計2回行った。得られたポリフェニレンスルフィドを105℃で一昼夜乾燥した。次いで、乾燥したポリフェニレンスルフィドをバッチ式ロータリーキルン型焼成装置に充填し、窒素雰囲気下で240℃まで昇温し、1時間の保持による硬化処理を行うことによって、溶融粘度が190ポイズのPPS(A-1)を得た。
該PPS(A-1)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B-1)15重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM-35-102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C-2)をPPS(A-1)100重量部に対して30重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物(PPS樹脂組成物-1)を作製した。
<作製例2(PPS樹脂組成物-2の作製)>
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(NaS・2.9HO)1814g、粒状の苛性ソーダ(100%NaOH:和光純薬特級)8.7g及びN-メチル-2-ピロリドン3232gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、340gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p-ジクロロベンゼン2107g、N-メチル-2-ピロリドン1783gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、250℃にて2時間重合を行った。次いで、この系に250℃で蒸留水509gを圧入し、255℃まで昇温してさらに1時間重合反応を行った。重合後、減圧下で重合スラリーからN-メチル-2-ピロリドンを蒸留操作で回収した。最終到達温度は170℃で圧力は4.7kPaであった。得られたケーキに80℃の温水を加えスラリー濃度20%として洗浄し、再度、同様に温水を加え175℃まで昇温してポリ(p-フェニレンスルフィド)の洗浄を合計2回行った。得られたポリ(p-フェニレンスルフィド)を105℃で一昼夜乾燥することによって、溶融粘度が400ポイズのPPS(A-2)を得た。
該PPS(A-2)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B-2)25重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM-35-102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C-1)をPPS(A-2)100重量部に対して15重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物(PPS樹脂組成物-2)を作製した。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂、金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の評価・測定方法を以下に示す。
~ポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度測定~
直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスター((株)島津製作所製、商品名CFT-500)にて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で溶融粘度の測定を行った。
~金属接合強度の評価~
金属部材とPPS樹脂組成物部材との複合体の接合強度は、ISO19095に従い、接合面積が50mmの引張せん断接合強度により評価した。
~打音試験~
金属部材とPPS樹脂組成物部材との複合体は、ISO19095に従い作製した接合面積が50mmの引張せん断試験片を用いて、打撃装置、騒音計および、音圧の解析装置から構成される打音試験装置を用いて打音試験を実施した。接合複合体は、接合複合体とハンマーとが10mmの距離となり、かつ、打撃方向が金属部材側の接合面に対して垂直となるようにスポンジ上に配置し、さらには、打撃位置と騒音計(リオン製(商品名)NL-52)とが100mmの距離となるように設置し、打撃した際に該騒音計のフルスケールを110デシベルとした際に得られた周波数1K~14KHzの音圧を、音圧解析装置(コスモ計器製(商品名)ムーブレットMV-6000)にてフーリエ変換し、1Hz単位で音圧が測定された周波数分布波形を得た。なお、打音試験は複合体1個につき3回行った。
~主成分分析~
打音試験にて得られた周波数分布波形の音圧を区間3Hzごとの移動平均処理することによりノイズ除去した後、該周波数分布波形を解析ソフト(R version3.4.4(フリーソフト))を用いて主成分分析を行い、主成分得点を算出した。
作製例3
アルミニウム合金(A5052)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を、波長1.064μmのレーザを用いハッチング幅0.08mm、周波数5KHz、速度80mm/秒で直交方向に1000回走査するレーザ処理を行うことにより、アルミニウム合金表面を物理的処理したアルミニウム合金(A5052)製試験片を得た。
得られた該アルミニウム合金(A5052)製試験片を、金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度150℃、保圧を60MPa、保圧時間を5秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて、予めペレット乾燥機(松井製作所製、(商品名)スピードドライヤーPO-80)を用いて150℃で2時間乾燥したPPS樹脂組成物-1を射出時間1秒で射出成形し、ISO19095に従い、接合面積が50mmのせん断接合強度評価用試験片であるアルミニウムダイカスト合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体Aを冷却時間30秒で、100個作製した。そして、得られた該アルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体Aを100個用い、接合面の打音試験を行い、1KHz~14KHzの音圧を周波数1Hzごとの音圧として抽出し、区間3Hzごとの移動平均処理を行い周波数分布波形を得た。また、打音試験を行った試験片を用い、ISO19095に従い接合強度を評価した結果、接合強度の平均値は45MPaであった。
作製例4
アルミニウム合金(A5052)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をエタノールに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を0.5mmのアルミナ粉、次いで0.1mmのアルミナ粉を用いたサンドブラスト処理にて粗化し、次いで該試験片を1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液、さらに1重量%硫酸水溶液に浸漬し、最後に該試験片を95℃のエタノールアミン1重量%を含有する蒸留水混合液に5分間浸漬し、表面にベーマイト処理を施すことにより、アルミニウム合金表面を物理的処理後に化学処理したアルミニウム合金(A5052)製試験片を得た。
得られた該アルミニウム合金(A5052)製試験片を、金型内にセットし、シリンダー温度300℃、金型温度150℃、保圧を65MPa、保圧時間を5秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて、予めペレット乾燥機(松井製作所製、(商品名)スピードドライヤーPO-80)を用いて150℃で2時間乾燥したPPS樹脂組成物-1を射出時間0.8秒で射出成形し、ISO19095に従い、接合面積が50mmのせん断接合強度評価用試験片であるアルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体Bを冷却時間30秒で、100個作製した。そして、得られた該アルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体Bを100個用い、接合面の打音試験を行い、1KHz~14KHzの音圧を周波数1Hzごとの音圧として抽出し、区間3Hzごとの移動平均処理を行い周波数分布波形を得た。また、打音試験を行った試験片を用い、ISO19095に従い接合強度を評価した結果、接合強度の平均値は43MPaであった。
作製例5
アルミニウム合金(A5052)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を5重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液、次いで20重量%硝酸水溶液に浸漬し、さらに30重量%燐酸水溶液中で電流密度1A/dmで20分間陽極酸化処理することにより、アルミニウム合金表面を化学処理したアルミニウム合金(A5052)製試験片を得た。
得られた該アルミニウム合金(A5052)製試験片を、金型内にセットし、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、保圧を70MPa、保圧時間を4秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて、予めペレット乾燥機(松井製作所製、(商品名)スピードドライヤーPO-80)を用いて130℃で3時間乾燥したPPS樹脂組成物-2を射出時間1.2秒で射出成形し、ISO19095に従い、接合面積が50mmのせん断接合強度評価用試験片であるアルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体Cを冷却時間25秒で、100個作製した。そして、得られた該アルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体Cを100個用い、接合面の打音試験を行い、1KHz~14KHzの音圧を周波数1Hzごとの音圧として抽出し、区間3Hzごとの移動平均処理を行い周波数分布波形を得た。また、打音試験を行った試験片を用い、ISO19095に従い接合強度を評価した結果、接合強度の平均値は41MPaであった。
作製例6
アルミニウム合金(A5052)製試験片を用いて、作成例1と同様の方法によりアルミニウム合金表面を物理的処理したアルミニウム合金(A5052)製試験片を得た。
得られた該アルミニウム合金(A5052)製試験片を、金型内にセットし、シリンダー温度300℃、金型温度100℃、保圧を20MPa、保圧時間を3秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて、予めペレット乾燥機(松井製作所製、(商品名)スピードドライヤーPO-80)を用いて120℃で5時間乾燥したPPS樹脂組成物-1を射出時間0.8秒で射出成形し、ISO19095に従い、接合面積が50mmのせん断接合強度評価用試験片であるアルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体Dを冷却時間20秒で、100個作製した。そして、得られた該アルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体Dを100個用い、接合面の打音試験を行い、1KHz~14KHzの音圧を周波数1Hzごとの音圧として抽出し、区間3Hzごとの移動平均処理を行い周波数分布波形を得た。また、打音試験を行った試験片を用い、ISO19095に従い接合強度を評価した結果、接合強度の平均値は21MPaであった。
作製例7
アルミニウム合金(A5052)製試験片を用いて、作成例1と同様の方法によりアルミニウム合金表面を物理的処理したアルミニウム合金(A5052)製試験片を得た。
得られた該アルミニウム合金(A5052)製試験片を、金型内にセットし、シリンダー温度300℃、金型温度150℃、保圧を0.1MPa、保圧時間を1秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて、予めペレット乾燥機(松井製作所製、(商品名)スピードドライヤーPO-80)を用いて80℃で5時間乾燥したPPS樹脂組成物-1を射出時間0.8秒で射出成形し、ISO19095に従い、接合面積が50mmのせん断接合強度評価用試験片であるアルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体Eを冷却時間15秒で、100個作製した。そして、得られた該アルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体Eを100個用い、接合面の打音試験を行い、1KHz~14KHzの音圧を周波数1Hzごとの音圧として抽出し、区間3Hzごとの移動平均処理を行い周波数分布波形を得た。また、打音試験を行った試験片を用い、ISO19095に従い接合強度を評価した結果、接合強度の平均値は10MPaであった。
作製例8
アルミニウム合金(A5052)製試験片を用いて、作成例1と同様の方法によりアルミニウム合金表面を物理的処理したアルミニウム合金(A5052)製試験片を得た。
得られた該アルミニウム合金(A5052)製試験片を、金型内にセットし、シリンダー温度300℃、金型温度60℃、保圧を10MPa、保圧時間を3秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて、予めペレット乾燥機(松井製作所製、(商品名)スピードドライヤーPO-80)を用いて80℃で5時間乾燥したPPS樹脂組成物-2を射出時間0.5秒で射出成形し、ISO19095に従い、接合面積が50mmのせん断接合強度評価用試験片であるアルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体Fを冷却時間18秒で、100個作製した。そして、得られた該アルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体Fを100個用い、接合面の打音試験を行い、1KHz~14KHzの音圧を周波数1Hzごとの音圧として抽出し、区間3Hzごとの移動平均処理を行い周波数分布波形を得た。また、打音試験を行った試験片を用い、ISO19095に従い接合強度を評価した結果、接合強度の平均値は13MPaであった。
参考例
作製例3~8にて得られた周波数分布波形を主成分分析した結果、第一主成分~第五主成分の累積寄与率が80%であった。よって、該第一主成分~第五主成分を用いて主成分得点を算出した。主成分分析の結果を表1に示す。
接合強度に劣るアルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体DおよびEは第二主成分および第三主成分の主成分得点が接合強度に優れる金属部材-PPS樹脂組成物部材複合体A、BおよびCの平均値(基準値)に対し、10を超えて乖離した。また、接合強度に劣るアルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体Fは第一主成分、第二主成分および第三主成分の主成分得点が接合強度に優れる金属部材-PPS樹脂組成物部材複合体A、BおよびCの平均値(基準値)に対し、10を超えて乖離した。
実施例1
アルミニウム合金(A5052)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を10重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液、次いで10重量%硝酸水溶液に浸漬し、さらに30重量%燐酸水溶液中で電流密度2A/dmで20分間陽極酸化処理することにより、アルミニウム合金表面を化学処理したアルミニウム合金(A5052)製試験片を得た。
得られた該アルミニウム合金(A5052)製試験片を金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度50℃、保圧力70MPa、保圧時間0.1秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて、予めペレット乾燥機(松井製作所製、(商品名)スピードドライヤーPO-80)を用いて120℃で5時間乾燥したPPS樹脂組成物-1を射出時間0.8秒で射出成形し、ISO19095に従い、接合面積が50mmのせん断接合強度評価用試験片であるアルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体を冷却時間20秒で、10個作製した。
該複合体を、接合複合体とハンマーとが10mmの距離となり打撃方向がアルミニウムダイカスト合金部材側の接合面に対して垂直となるようにスポンジ上に設置し、かつ、打撃位置と騒音計(リオン製(商品名)NL-52)とが100mmの距離となるように設置した。次に、打撃した際に該騒音計のフルスケールを110デシベルとした際に該騒音計で得られた音圧を、音圧解析装置(コスモ計器製(商品名)ムーブレットMV-6000)にてフーリエ変換し周波数分布波形を得た。
そして、1KHz~14KHzの音圧を周波数1Hzごとの音圧として抽出し、区間3Hzごとの移動平均処理を行い周波数分布波形を得、参考例で得られた主成分分析結果を用いて、主成分得点を算出した。主成分得点の結果を表2に示す。主成分得点は平均値(基準値)から10を超えて乖離していた。次に、打音試験を行った試験片を、ISO19095に従い接合強度を評価した。接合強度は13MPa~25MPaのバラつきがあり、金属との接合強度に劣るものであった。
そこで、次に、金型温度を50℃から150℃へ上昇し、また、保圧時間を0.1秒から6秒へ延長し、該アルミニウム合金(A5052)製試験片を金型内にセットし、シリンダー温度310℃に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて、120℃で5時間乾燥したPPS樹脂組成物-1を射出時間0.8秒で射出成形し、該アルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体を冷却時間20秒にて10個作製した。
該複合体を、接合複合体とハンマーとが10mmの距離となり打撃方向がアルミニウムダイカスト合金部材側の接合面に対して垂直となるようにスポンジ上に設置し、かつ、打撃位置と騒音計(リオン製(商品名)NL-52)とが100mmの距離となるように設置した。次に、打撃した際に該騒音計のフルスケールを110デシベルとした際に該騒音計で得られた音圧を、音圧解析装置(コスモ計器製(商品名)ムーブレットMV-6000)にてフーリエ変換し周波数分布波形を得た。
そして、1KHz~14KHzの音圧を周波数1Hzごとの音圧として抽出し、区間3Hzごとの移動平均処理を行い周波数分布波形を得、参考例で得られた主成分分析結果を用いて、主成分得点を算出した。主成分得点は、全て平均値(基準値)から10以内であった。次に、打音試験を行った試験片を、ISO19095に従い接合強度を評価した。接合強度は41MPa~43MPaであった。
実施例2
アルミニウム合金(A5052)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を、波長1.064μmのレーザを用いハッチング幅0.08mm、周波数5KHz、速度80mm/秒で直交方向に1000回走査するレーザ処理を行うことにより、アルミニウム合金表面を物理的処理したアルミニウム合金(A5052)製試験片を得た。
得られた該アルミニウム合金(A5052)製試験片を金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度140℃、保圧力0.1MPa、保圧時間5秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて、予めペレット乾燥機(松井製作所製、(商品名)スピードドライヤーPO-80)を用いて150℃で2時間乾燥したPPS樹脂組成物-1を射出時間0.1秒で射出成形し、ISO19095に従い、接合面積が50mmのせん断接合強度評価用試験片であるアルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体を冷却時間25秒で、10個作製した。
該複合体を、接合複合体とハンマーとが10mmの距離となり打撃方向がアルミニウムダイカスト合金部材側の接合面に対して垂直となるようにスポンジ上に設置し、かつ、打撃位置と騒音計(リオン製(商品名)NL-52)とが100mmの距離となるように設置した。次に、打撃した際に該騒音計のフルスケールを110デシベルとした際に該騒音計で得られた音圧を、音圧解析装置(コスモ計器製(商品名)ムーブレットMV-6000)にてフーリエ変換し周波数分布波形を得た。
そして、1KHz~14KHzの音圧を周波数1Hzごとの音圧として抽出し、区間3Hzごとの移動平均処理を行い周波数分布波形を得、参考例で得られた主成分分析結果を用いて、主成分得点を算出した。主成分得点の結果を表3に示す。主成分得点は平均値(基準値)から10を超えて乖離していた。次に、打音試験を行った試験片を、ISO19095に従い接合強度を評価した。接合強度は11MPa~21MPaのバラつきがあり、金属との接合強度に劣るものであった。
そこで、次に、保圧力を0.1MPaから70MPaへ延長し、また、射出時間を0.1秒から1.0秒へ延長し、該アルミニウム合金(A5052)製試験片を金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度140℃、保圧時間5秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて、150℃で2時間乾燥したPPS(A-2)を射出成形し、該アルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体を冷却時間25秒にて10個作製した。
該複合体を、接合複合体とハンマーとが10mmの距離となり打撃方向がアルミニウムダイカスト合金部材側の接合面に対して垂直となるようにスポンジ上に設置し、かつ、打撃位置と騒音計(リオン製(商品名)NL-52)とが100mmの距離となるように設置した。次に、打撃した際に該騒音計のフルスケールを110デシベルとした際に該騒音計で得られた音圧を、音圧解析装置(コスモ計器製(商品名)ムーブレットMV-6000)にてフーリエ変換し周波数分布波形を得た。
そして、1KHz~14KHzの音圧を周波数1Hzごとの音圧として抽出し、区間3Hzごとの移動平均処理を行い周波数分布波形を得、参考例で得られた主成分分析結果を用いて、主成分得点を算出した。主成分得点は、全て平均値(基準値)から10以内であった。次に、打音試験を行った試験片を、ISO19095に従い接合強度を評価した。接合強度は42MPa~44MPaであった。
実施例3
アルミニウム合金(A5052)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を0.1mm次いで0.01mmのアルミナ粉を用いたサンドブラスト処理にて粗化し、次いで該試験片を1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液、さらに1重量%硫酸水溶液に浸漬し、最後に該試験片を95℃のエタノールアミン1重量%を含有する蒸留水混合液に10分間浸漬し、表面にベーマイト処理を施すことにより、アルミニウム表面を物理的処理後に化学処理したアルミニウム(A5052)製試験片を得た。
得られた該アルミニウム合金(A5052)製試験片を金型内にセットし、シリンダー温度320℃、金型温度160℃、保圧を80MPa、保圧時間3秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて、予めペレット乾燥機(松井製作所製、(商品名)スピードドライヤーPO-80)を用いて130℃で3時間乾燥したPPS樹脂組成物-2を射出時間1.2秒で射出成形し、ISO19095に従い、接合面積が50mmのせん断接合強度評価用試験片であるアルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体を冷却時間3秒で、10個作製した。
該複合体を、接合複合体とハンマーとが10mmの距離となり打撃方向がアルミニウムダイカスト合金部材側の接合面に対して垂直となるようにスポンジ上に設置し、かつ、打撃位置と騒音計(リオン製(商品名)NL-52)とが100mmの距離となるように設置した。次に、打撃した際に該騒音計のフルスケールを110デシベルとした際に該騒音計で得られた音圧を、音圧解析装置(コスモ計器製(商品名)ムーブレットMV-6000)にてフーリエ変換し周波数分布波形を得た。
そして、1KHz~14KHzの音圧を周波数1Hzごとの音圧として抽出し、区間3Hzごとの移動平均処理を行い周波数分布波形を得、参考例で得られた主成分分析結果を用いて、主成分得点を算出した。主成分得点の結果を表4に示す。主成分得点は平均値(基準値)から10を超えて乖離していた。次に、打音試験を行った試験片を、ISO19095に従い接合強度を評価した。接合強度は15MPa~25MPaのバラつきがあり、金属との接合強度に劣るものであった。
そこで、次に、冷却時間を3秒から40秒へ延長し、該アルミニウム合金(A5052)製試験片を金型内にセットし、シリンダー温度320℃、金型温度160℃、保圧を80MPa、保圧時間3秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて、130℃で3時間乾燥したPPS樹脂組成物-2を射出時間1.2秒で射出成形し、アルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体を10個作製した。
該複合体を、接合複合体とハンマーとが10mmの距離となり打撃方向がアルミニウムダイカスト合金部材側の接合面に対して垂直となるようにスポンジ上に設置し、かつ、打撃位置と騒音計(リオン製(商品名)NL-52)とが100mmの距離となるように設置した。次に、打撃した際に該騒音計のフルスケールを110デシベルとした際に該騒音計で得られた音圧を、音圧解析装置(コスモ計器製(商品名)ムーブレットMV-6000)にてフーリエ変換し周波数分布波形を得た。
そして、1KHz~14KHzの音圧を周波数1Hzごとの音圧として抽出し、区間3Hzごとの移動平均処理を行い周波数分布波形を得、参考例で得られた主成分分析結果を用いて、主成分得点を算出した。主成分得点は、全て平均値(基準値)から10以内であった。次に、打音試験を行った試験片を、ISO19095に従い接合強度を評価した。接合強度は40MPa~42MPaであった。
比較例1
アルミニウム合金(A5052)製試験片(40mm×18mm×1.5mm厚さ)をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を10重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液、次いで10重量%硝酸水溶液に浸漬し、さらに30重量%燐酸水溶液中で電流密度2A/dmで20分間陽極酸化処理することにより、アルミニウム合金表面を化学処理したアルミニウム合金(A5052)製試験片を得た。
得られた該アルミニウム合金(A5052)製試験片を金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度50℃、保圧力10MPa、保圧時間0.1秒に設定した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)を用いて、予めペレット乾燥機(松井製作所製、(商品名)スピードドライヤーPO-80)を用いて120℃で5時間乾燥したPPS樹脂組成物-1を射出時間0.8秒で射出成形し、ISO19095に従い、接合面積が50mmのせん断接合強度評価用試験片であるアルミニウム合金部材-PPS樹脂組成物部材複合体を冷却時間20秒で、10個作製した。
該複合体を、接合複合体とハンマーとが10mmの距離となり打撃方向がアルミニウムダイカスト合金部材側の接合面に対して垂直となるようにスポンジ上に設置し、かつ、打撃位置と騒音計(リオン製(商品名)NL-52)とが100mmの距離となるように設置した。次に、打撃した際に該騒音計のフルスケールを110デシベルとした際に該騒音計で得られた音圧を、音圧解析装置(コスモ計器製(商品名)ムーブレットMV-6000)にてフーリエ変換し周波数分布波形を得た。
そして、1KHz~14KHzの音圧を周波数1Hzごとの音圧として抽出し、区間3Hzごとの移動平均処理を行い周波数分布波形を得、参考例で得られた主成分分析結果を用いて、主成分得点を算出した。主成分得点の結果を表5に示す。主成分得点は平均値(基準値)から10を超えて乖離していた。次に、打音試験を行った試験片を、ISO19095に従い接合強度を評価した。接合強度は12MPa~22MPaのバラつきがあり、複合体を安定的に製造する事は出来なかった。
本発明の複合体は、接合面に空隙等の欠陥が無く、接合の信頼性に優れ、さらに耐衝撃性、軽量性及び量産性に優れる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法を提供するものであり、特に自動車や航空機などの輸送機器に用いられる複合体の製造に有用なものである。
;主成分(軸)を決定する際のデータが散りばめられた散布図 ;主成分得点を決定する際のデータの主成分軸上の座標値を示す概略図

Claims (2)

  1. 乾燥後のポリアリーレンスルフィド樹脂と金属部材とを射出一体成形に供して金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を製造する方法であって、(1)得られた金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の接合面に対して打音試験装置により打撃して周波数-音圧の関係を測定する工程、(2)該周波数-音圧の関係から1KHz~14KHzの周波数の音圧を単位周波数1Hz当たりの音圧として抽出する工程、(3)該音圧を3Hzごとに移動平均処理することにより得られる周波数分布波形を主成分分析し、累積寄与率が70%以上となる主成分により主成分得点を算出する工程を経て、さらに(4)該主成分得点と基準値との差異が10を超える金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体が製造された場合、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥温度、ポリアリーレンスルフィド樹脂乾燥時間、射出成形温度、射出成形金型温度、射出成形時間、射出成形金型保圧力、射出成形金型保圧時間及び金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体冷却時間からなる群より選択される少なくとも1種以上の成形条件を制御・変更する工程、を有することを特徴とする金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法。
  2. (4)工程における主成分得点と基準値との差異と成形条件との関係を相関させた集合より、成形条件の抽出を行い制御・変更を行うことを特徴とする請求項1に記載の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法。
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