JP2021167380A - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びそれよりなる複合体 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びそれよりなる複合体 Download PDF

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Abstract

【課題】 部材とした際の反り量が少なく、かつ、低誘電率で低誘電正接を示すことからメガヘルツ帯からギガヘルツ帯の電波透過性に優れ、耐衝撃性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物およびそれよりなる複合体を提供する。【解決手段】 ポリアリーレンスルフィド(A)30〜70重量%、エチレン系重合体(B)3〜20重量%、2GHzにおける誘電率が5.5以下でありかつ繊維断面アスペクト比2〜4を有するガラス繊維(C)30〜60重量%を含んでなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物およびそれよりなる金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体。【選択図】 なし

Description

本発明は、低誘電率かつ低誘電正接であることからメガヘルツ帯からギガヘルツ帯の電波透過性に優れ、金属部材と一体化した部材とした際の反り量が少なく、金属部材との接合性に優れさらには耐衝撃性にも優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物およびポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材と金属部材とを一体化した複合体に関するものであり、さらに詳しくは、モバイルパソコンやタブレット、携帯電話など携帯端末機器の筐体等の電気・電子部品に特に有用なポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びそれよりなる複合体に関するものである。
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPSと略記することもある。)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略記することもある。)は、優れた機械的特性、熱的特性、電気的特性、耐薬品性を有し、多くの電気・電子機器部材や自動車機器部材、その他OA機器部材等に幅広く使用されている。
PASは、ガラス繊維等の繊維状無機充填材、炭酸カルシウム、タルク等の粒状無機充填材を配合することにより、機械的強度、耐熱性、剛性等を大きく向上させることができる。しかしながら、繊維状充填剤を配合することによって、成形品に反りが発生し、モバイルパソコンやタブレット、携帯電話など携帯端末機器の筐体等の電子・電気部品用途、又は自動車電装部品等の電気部品用途への搭載が制限されている。これらの用途においては、部品形状の複雑化や小型化の要求から、部品の薄肉化が進展しており、薄肉化した際の反りを低減することが望まれている。さらには、通信時にメガヘルツ帯からギガヘルツ帯の電波を利用するモバイルパソコン、タブレット、携帯電話などの筐体のような、低誘電率、低誘電正接が要求される用途への搭載が制限されていた。
PASの反りを改良するための方法として、例えばPPS、ガラスフレーク、ガラスフレーク以外の無機充填材、オレフィン系樹脂を配合してなるPPS樹脂組成物(例えば特許文献1参照。)、PPS、ガラス繊維、特定の官能基を含有するオレフィン系重合体、エポキシ樹脂、ガラスフレークおよび/または炭酸カルシウムを配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物(例えば特許文献2参照。)等が提案されている。
また、金属との良好な接合性を有するPAS樹脂組成物については、これまでにもいくつかの検討がなされ、例えば、(a)PAS、(b)極性基含有ポリエチレン系共重合体、及び(c)トリアジンチオール類を配合する樹脂組成物(例えば特許文献3参照。)、また、(a)PPS、(b)極性基含有ポリオレフィン、及び(c)相溶化剤を配合する樹脂組成物(例えば特許文献4参照。)等が提案されている。
さらに、低誘電ガラスとして、重量%で、SiO53〜57%、Al13〜16%、B15〜19.5%、MgO3%以上〜6%未満、CaO2〜5%、TiO1〜4%、LiO0〜0.3%、NaO0〜0.3%、KO0〜0.5%、F0.2〜1%であって、MgO+CaO7〜10%、LiO+NaO+KO0.2〜0.5%のガラス組成を有し、粘度μ(ポイズ)がlogμ=3.0のときの紡糸温度が1340℃以下、紡糸時におけるBの揮発量が4ppm以下である低誘電率ガラス繊維(例えば特許文献5参照。)、重量%で、SiO50〜60%、Al10〜20%、B20〜30%、CaO0〜5%、MgO0〜4%、LiO+NaO+KO0〜0.5%、TiO0.5〜5%の組成を有し、周波数1MHzでの誘電正接が10×10−4以下である低誘電率ガラス繊維(例えば特許文献6参照。)等が提案されている。
そして、低誘電率、低誘電正接であるガラス繊維強化樹脂成形品として、ガラス繊維強化樹脂成形品の全量に対し10〜90質量%の範囲のガラス繊維と、90〜10質量%の範囲の樹脂とを含有するガラス繊維強化樹脂成形品であって、該ガラス繊維は、ガラス繊維全量に対し52.0〜57.0質量%の範囲のSiOと、13.0〜17.0質量%の範囲のAlと、15.0〜21.5質量%の範囲のBと、2.0〜6.0質量%の範囲のMgOと、2.0〜6.0質量%の範囲のCaOと、1.0〜4.0質量%の範囲のTiOと、1.5質量%未満のFとを含み、かつ、LiO、NaO及びKOの合計量が0.6質量%未満である組成を備え、該ガラス繊維は、30〜5000μmの数平均繊維長を有するガラス繊維強化樹脂成形品(例えば特許文献7参照。)等が提案されている。
また、目的は異なるものの特定のPPS、扁平な断面形状を有するガラス繊維を配合してなるPPS樹脂組成物(例えば特許文献8参照。)、PPS樹脂、扁平な断面形状を有するガラス繊維、熱可塑性エラストマーを配合した樹脂組成物と金属とのインサート成形品(例えば特許文献9参照。)等が提案されている。
特開2002−129014号公報 特開2005−306926号公報 特開2010−070712号公報 特開2010−284899号公報 特許第6352186号 特許第3269937号 特開2017−52974号公報 特開2006−328291号公報 特開2005−161693号公報
しかし、特許文献1及び2に提案された樹脂組成物においては、部材とした際の反りという点で課題を有するものであった。また、特許文献3及び4に提案された樹脂組成物においては、金属との接合性は良好であるものの、部材とした際の反りおよび耐候性については何ら検討されておらず、課題発生の可能性を有するものであった。さらに、特許文献5および6では低誘電率ガラス繊維が提案されているが、高密度回路用プリント配線基板の強化用として提案されているものであり、ポリアリーレンスルフィドの低誘電率化に関してはなんら検討・言及されていない。さらに、特許文献7では低誘電率、低誘電正接なガラス繊維強化樹脂成形品が提案されているが、ポリアリーレンスルフィドの低誘電率化に関してはなんら検討・言及されていない。そして、特許文献8及び9に提案された樹脂組成物においては、誘電率および誘電正接に課題を有する可能性のあるものであった。即ち、これら提案の樹脂組成物はおしなべて、部材とした際の低反り、金属との良好な接合性、低誘電率で低誘電正接、および耐衝撃性とを同時に得ることは難しいものであった。
そこで、本発明は、部材とした際の反り量が少なく、金属との良好な接合性、低誘電率および低誘電正接、さらには耐衝撃性にも優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物およびポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材と金属部材とを一体化した複合体に関するものであり、さらに詳しくは、これら優れた特性を有することからモバイルパソコンやタブレット、携帯電話など携帯端末機器の筐体等の電気・電子部品に特に有用なポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びそれよりなる複合体を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアリーレンスルフィド樹脂、少なくともエチレン系重合体、および特定のガラス繊維を特定の配合割合で含む樹脂組成物が、部材とした際の反り、金属との良好な接合性、低誘電率で低誘電正接、および耐衝撃性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となり得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、ポリアリーレンスルフィド(A)30〜70重量%、エチレン系重合体(B)3〜20重量%、2GHzにおける誘電率が5.5以下でありかつ繊維断面アスペクト比2〜4を有するガラス繊維(C)30〜60重量%を含んでなることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド(A)30〜70重量%、エチレン系重合体(B)3〜20重量%、2GHzにおける誘電率が5.5以下でありかつ繊維断面アスペクト比2〜4を有するガラス繊維(C)30〜60重量%を含んでなるものである。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を構成するポリアリーレンスルフィド(A)としては、一般にポリアリーレンスルフィドと称される範疇に属するものであればよく、該ポリアリーレンスルフィドとしては、例えばp−フェニレンスルフィド単位、m−フェニレンスルフィド単位、o−フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルフォン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ビフェニレンスルフィド単位からなる単独重合体又は共重合体を挙げることができ、該ポリアリーレンスルフィドの具体的例示としては、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリフェニレンスルフィドスルフォン、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリフェニレンスルフィドエーテル等が挙げられ、その中でも、特に耐熱性、強度特性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、ポリ(p−フェニレンスルフィド)であることが好ましい。
さらに、該ポリアリーレンスルフィド(A)は、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度50〜1000ポイズのポリアリーレンスルフィドであることが好ましく、その中でも、特に薄肉流動性と耐衝撃性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、100〜700ポイズのポリアリーレンスルフィドであることが好ましい。該ポリアリーレンスルフィド(A)の製造方法としては、ポリアリーレンスルフィドの製造方法として知られている方法により製造することが可能であり、例えば極性溶媒中で硫化アルカリ金属塩、ポリハロ芳香族化合物を重合することにより得る事が可能である。その際の極性有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等を挙げる事ができ、硫化アルカリ金属塩としては、例えば硫化ナトリウム、硫化ルビジウム、硫化リチウムの無水物又は水和物を挙げる事ができる。また、硫化アルカリ金属塩としては、水硫化アルカリ金属塩とアルカリ金属水酸化物を反応させたものであってもよい。ポリハロ芳香族化合物としては、例えばp−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、p−ジヨードベンゼン、m−ジクロロベンゼン、m−ジブロモベンゼン、m−ジヨードベンゼン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロジビフェニル等を挙げる事ができる。
また、ポリアリーレンスルフィド(A)としては、直鎖状のものであっても、重合時にトリハロゲン以上のポリハロゲン化合物を少量添加して若干の架橋又は分岐構造を導入したものであっても、ポリアリーレンスルフィドの分子鎖の一部及び/又は末端を例えばカルボキシル基、カルボキシ金属塩、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基等の官能基により変性されたものであっても、窒素などの非酸化性の不活性ガス中で加熱処理を施したものであってもかまわないし、さらにこれらの構造の混合物であってもかまわない。また、該ポリアリーレンスルフィド(A)は、加熱硬化前又は後に脱イオン処理(酸洗浄や熱水洗浄など)、あるいはアセトン、メチルアルコールなどの有機溶媒による洗浄処理を行うことによってイオン、オリゴマーなどの不純物を低減させたものであってもよい。さらに、重合反応終了後に不活性ガス又は酸化性ガス中で加熱処理を行い、硬化を行ったものであってもよい。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を構成するポリアリーレンスルフィド(A)の配合量は、30〜70重量%であり、35〜65重量%であることが好ましい。ここで、ポリアリーレンスルフィドの配合量が30重量%未満である場合、得られる組成物は誘電率および誘電正接が高いものとなる。一方、70重量%を超える場合、得られる組成物は、樹脂組成物を部材とした際に反りの発生しやすいものとなる。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を構成するエチレン系重合体(B)は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の金属接合性を改良するものであり、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体,エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体,エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体,エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体及び無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種以上の変性エチレン系重合体であることが好ましい。
該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも得られるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が金属との接合性等に優れることから、エチレン残基単位:α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル残基単位:無水マレイン酸残基単位(重量比)=50〜98:40〜1:10〜1の範囲であることが好ましい。該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体の具体的例示としては、(商品名)ボンダインLX4110(アルケマ(株)製)、(商品名)ボンダインTX8030(アルケマ(株)製)、(商品名)ボンダインAX8390(アルケマ(株)製)等が挙げられる。
該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも得られるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が金属との接合性等に優れることから、エチレン残基単位:α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル残基単位(重量比)=85〜99:15〜1の範囲であることが好ましい。該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体の具体的例示としては、(商品名)ボンダインAX8840(アルケマ(株)製)、(商品名)ボンドファーストE(住友化学(株)製)等が挙げられる。
該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも得られるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が金属との接合性等に優れることから、エチレン残基単位:α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル残基単位:酢酸ビニル残基単位(重量比)=50〜98:15〜1:35〜1の範囲であることが好ましい。該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体の具体的例示としては、(商品名)ボンドファースト2B(住友化学(株)製)、(商品名)ボンドファースト7B(住友化学(株)製)等が挙げられる。
該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも得られるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が金属との接合性等に優れることから、エチレン残基単位:α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル残基単位:α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル残基単位(重量比)=50〜98:10〜1:40〜1の範囲であることが好ましい。該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体の具体的例示としては、(商品名)ボンドファースト7L(住友化学(株)製)、(商品名)ボンドファースト7M(住友化学(株)製))、(商品名)LOTADER AX8700(アルケマ(株)製)、(商品名)LOTADER AX8750(アルケマ(株)製)等が挙げられる。
該無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも得られるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が金属との接合性等に優れることから、エチレン残基単位:α−オレフィン残基単位:無水マレイン酸残基単位(重量比)=50〜98:45〜1:5〜1の範囲からなるものであることが好ましく、具体的には無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレンゴム等が挙げられる。該無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体は、例えばエチレン−α−オレフィン共重合体、過酸化物、無水マレイン酸を共存し、グラフト化反応を進行することにより入手することが可能である。
そして、変性エチレン系重合体を構成するα−オレフィンとは、炭素数が3以上のα−オレフィンを言い、例えばプロピレン、ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を例示できる。また、α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸等のアルキルエステルが挙げられ、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル等が挙げられる。α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステルとしては、例えばアクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステルが挙げられる。
該エチレン系重合体(B)の配合量としては、とりわけ金属接合性と成形流動性に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、3〜20重量%であり、4〜18重量%であることが好ましい。ここで、エチレン系重合体(B)の配合量が3重量%未満である場合、得られる樹脂組成物は耐衝撃性および複合体とした際の金属との接合性に劣るものとなる。一方、配合量が20重量%を超える場合、得られる樹脂組成物は誘電率および誘電正接が高いものとなり好ましくない。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を構成するガラス繊維(C)は、2GHzにおける誘電率が5.5以下で、かつ、繊維断面アスペクト比2〜4を有する(扁平)ガラス繊維であれば如何なるものであってもよく、該ガラス繊維(C)の種類としては、2GHzにおける誘電率が5.5以下となるNEガラス、Dガラスであることが好ましく、その中でもとりわけ機械的強度に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることからNEガラスであることが好ましい。ここで、2GHzにおける誘電率が5.5を越えるガラス繊維である場合、得られる樹脂組成物は誘電率が高いものとなり、電気・電子機器部品としての使用を制限される可能性の高いものとなる。
該ガラス繊維(C)の断面形状としては、繊維断面アスペクト比2〜4を有する(扁平)ガラス繊維であり、具体的な断面形状としては、長円形、楕円形、半円、まゆ形、矩形又はこれらの類似形であるものが好ましい。ここで、繊維断面アスペクト比が2未満のものである場合は、得られる成形品の反り量の大きなものとなる。一方、4を越えるものである場合、流動性、成形加工性に課題を発生する場合がある。そして、該ガラス繊維(C)の繊維径としては、とりわけ機械的強度と成形流動性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから繊維断面の短径が6〜16μmであるものが好ましい。
該ガラス繊維(C)の形態としては、チョップドストランド、ミルドファイバー、ロービングなどが挙げられ、とりわけポリアリーレンスルフィド樹脂組成物とする際の取扱いに優れるものとなるから、チョップドストランドであることが好ましい。2GHzにおける誘電率が5.5以下で、かつ、繊維断面アスペクト比が4であるチョップドストランドとしては、例えば(商品名)ECS309A−3−M4(泰山(株)製)等が挙げられる。これらのガラス繊維(C)は必要によりエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物又はポリマーで、予め表面処理したものを用いてもよい。
該ガラス繊維(C)の配合量としては、30〜60重量%である。ここで、30重量%未満である場合、得られた樹脂組成物を部材とした際に反りの発生しやすいものとなる。一方、60重量%を越える場合、得られる樹脂組成物は、誘電率および誘電正接の高いものとなる。
そして、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は特に電気的特性に優れた性能を発揮し、各種電気・電子部材用材料としての適用が可能となることから、JIS C−2565に準拠して、測定周波数2GHzにて測定した誘電率が3.5以下、かつ、誘電正接が0.010以下のものであることが好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、特に成形加工性が優れたものとなることから、さらに、離型剤(D)を配合してなるものが好ましい。該離型剤(D)としては、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、脂肪酸アミド系滑剤、カルナバワックスから選択される1種以上のものであることが好ましく、該ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、脂肪酸アミド系滑剤、カルナバワックスとしては市販のものが使用できる。該脂肪酸アミド系滑剤は、高級脂肪酸アミド、エチレンビスステアロアミド、高級脂肪酸及びジアミンからなる重縮合物などが挙げられ、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えばステアリン酸、セバシン酸、エチレンジアミンからなる重縮合物である、(商品名)ライトアマイドWH−255(共栄社化学(株)製)等を挙げることができる。また、該カルナバワックスしては、一般にカルナバワックスと称するものであれば如何なるものを用いる事が可能であり、例えば(商品名)精製カルナバ粉末1号(日興リカ(株)製)等を挙げることができる。該離型剤(D)の配合量としては、ポリアリーレンスルフィド(A)、エチレン系重合体(B)とガラス繊維(C)の合計100重量部に対して、0.1〜3重量部であることが好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、炭素繊維、窒化珪素ウイスカー、塩基性硫酸マグネシウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、炭化珪素ウイスカー、ボロンウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー;ロックウール、ジルコニア、チタン酸バリウム、炭化珪素、シリカ、高炉スラグ等の無機系繊維;全芳香族ポリアミド繊維、フェノール樹脂繊維、全芳香族ポリエステル繊維等の有機系繊維;ワラステナイト、マグネシウムオキシサルフェート等の鉱物系繊維が添加されたものであってもよいし、本発明の効果を損なわない範囲で、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、マイカ、シリカ、タルク、クレイ、硫酸カルシウム、カオリン、ワラステナイト、ゼオライト、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カーボンブラック、ハイドロタルサイト、ガラスパウダー、ガラスバルーン、ガラスフレークが添加されたものであっても構わない。
また、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知のタルク、カオリン、シリカなどの結晶核剤;ポリアルキレンオキサイドオリゴマー系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤;酸化防止剤;熱安定剤;滑剤;発泡剤、シランカップリング剤などの通常の添加剤を1種以上添加するものであってもよい。
さらに、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、各種熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、例えばエポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアルキレンオキサイド等の1種以上を混合して使用してなるものであってもよい。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を製造する際の製造方法としては特に制限はなく、一般的な混合・混練方法として知られている方法を用いる事が可能であり、例えば全ての原材料を配合し溶融混練する方法;原材料の一部を配合した後で溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法;あるいは原材料の一部を配合後単軸又は二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法、など、いずれの方法を用いてもよい。また、小量の添加成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加することで使用してもよい。そして、溶融混練を行う方法としては、従来から使用されている加熱溶融混練方法を用いることができ、例えば単軸又は二軸押出機、ニーダー、ミル、ブラベンダーなどによる加熱溶融混練方法が挙げられ、特に混練能力に優れた二軸押出機による溶融混練方法が好ましい。また、この際の混練温度は特に限定されるものではなく、通常260〜350℃の中から任意に選ぶことができる。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、優れた耐衝撃性を発現するとともに、金属(部材)との接合性に優れることから、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材と金属部材とを射出成形により直接一体化した金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体として用いることができる。
そして、該金属部材としては、金属部材の範疇に属するものであればいかなる材質よりなる部材でもよく、その中でもポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体とした際に各種用途への適応が可能となることから、アルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材、銅製部材、銅合金製部材、マグネシウム製部材、マグネシウム合金製部材、鉄製部材、チタン製部材、チタン合金製部材、ステンレス製部材である金属部材が好ましい。
該金属部材は、表面を物理的処理及び/又は化学処理した金属部材とすることが好ましく、該物理的処理及び/又は化学処理を施すことにより、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材と直接一体化した際に優れた密着性、接合性、気密性を有するものとなるものである。そして、金属部材の表面を物理的処理及び/又は化学処理する方法としては如何なる方法を用いて物理的処理及び/又は化学処理を施すことも可能であり、その中でも金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材との接合性、密着性に特に優れた複合体となることから、物理的処理としては、例えば表面に微小固体粒子を接触又は衝突させる方法、また高エネルギー電磁線を照射する方法等を挙げることができ、より具体的にはサンドブラスト処理、液体ホーニング処理、レーザ加工処理等を挙げることができる。更に、サンドブラスト処理、液体ホーニング処理の際の研磨剤としては、例えばサンド、スチールグリッド、スチールショット、カットワイヤー、アルミナ、炭化ケイ素、金属スラグ、ガラスビーズ、プラスチックビーズ等を挙げることができる。また、レーザ加工処理としては、WO2007/072603号公報、特開2015−142960号公報、特開2016−132131号公報に提案の方法等をも挙げることができ、高エネルギー電磁線を照射する方法としては特開2011−140167号公報に提案の方法等をも挙げることができる。
また、金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材との接合性、密着性に特に優れた複合体となることから、化学処理としては、例えば陽極酸化処理法、酸又はアルカリの水溶液で化学処理する方法、等を挙げることができる。
そして、陽極酸化処理としては、例えば金属部材を陽極として電解液中で電化反応を行いその表面に酸化被膜を形成する方法であってもよく、メッキ等の分野において陽極酸化法として一般的に知られている方法を用いることができる。より具体的には、例えば1)一定の直流電圧をかけて電解を行う直流電解法、2)直流成分に交流成分を重畳した電圧をかけることにより電解を行うバイポーラ電解法、等を挙げることができる。陽極酸化法の具体的例示としては、WO2004/055248号公報等に提案の方法等を挙げることができる。
また、酸又はアルカリの水溶液で化学処理する方法としては、例えば金属部材を酸又はアルカリの水溶液に浸せきし金属部材表面を化学処理する方法であってもよく、その際の酸又はアルカリの水溶液としては、例えばリン酸等のリン酸系化合物;クロム酸等のクロム酸系化合物;フッ化水素酸等のフッ化水素酸系化合物;硝酸等の硝酸系化合物;塩酸等の塩酸系化合物;硫酸等の硫酸系化合物;水酸化ナトリウム、アンモニア水溶液などのアルカリ水溶液;トリアジンチオール水溶液、トリアジンチオール誘導体水溶液により化学処理する方法等を挙げることができ、より具体的例示としては、特開平10−096088号公報、特開平10−056263号公報、特開平04−032585号公報、特開平04−032583号公報、特開平02−298284号公報、WO2009/151099号公報、WO2011/104944号公報、特開2010−254793号公報等に提案の方法、等を挙げることができる。
該物理的処理及び/又は化学処理は、単独で処理しても両者を併用して処理しても良く、例えば、表面に物理的処理を施した後に化学処理を施した金属部材を用いて金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体としたものであっても良い。
該金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体の製造方法としては、該表面が物理的処理及び/又は化学処理された金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材とを射出成形により直接一体化することが可能であれば如何なる方法をも用いることができ、その中でも特に効率よく複合体を製造することが可能となることから射出インサート成形法により一体化することが好ましい。そして、該射出インサート成形法としては、例えば金型内に金属表面が物理的処理及び/又は化学処理された金属部材を装着し、該金属部材に溶融ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を充填し、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材とし、該金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材とが直接一体化された複合体とする方法を挙げることができる。この際のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の溶融温度としては280〜340℃を挙げることができ、インサート成形を行う際の成形機としては、とりわけ生産性に優れることから射出成形機を用いてインサート射出成形を行うことが好ましい。
該金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体の形状としては、射出成形により直接一体化する際のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の充填性に優れ、部材としたときの反りが少ない複合体となることから、複合体としての厚さが0.5〜5mmの範囲であり、厚さ方向に対する縦方向及び横方向の大きさの比がそれぞれ10以上を有する形状であることが好ましい。そして、本形状を含む部品としては、モバイルパソコンやタブレット、携帯電話など携帯端末機器の筐体や車載用コンデンサケースなどが挙げられる。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、特に高周波領域での誘電率、誘電正接が低く、かつ、部材とした際の反り量が少なく、金属部材との良好な接合性さらには耐衝撃性に優れる特性をあわせもつことから部品形状の複雑化や小型化のニーズより部品の薄肉化が望まれている携帯端末機器の筐体等の電気・電子部品、又は自動車電装部品に好適に用いられる。
本発明は、低誘電率、低誘電正接であることからメガヘルツ帯からギガヘルツ帯の電波透過性に優れ、部材とした際の反り量が少なく、金属部材との良好な接合性さらには耐衝撃性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供するものであり、モバイルパソコンやタブレット、携帯電話など携帯端末機器の筐体等の電子・電気部品用途、又は自動車電装部品等の電気部品用途に有用なものである。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
実施例及び比較例において用いた、ポリアリーレンスルフィド(A)、エチレン系重合体(B)、ガラス繊維(C)、離型剤(D)を以下に示す。
<ポリアリーレンスルフィド(A)>
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(A−1)(以下、PPS(A−1)と記す。):溶融粘度500ポイズ。
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(A−2)(以下、PPS(A−2)と記す。):溶融粘度150ポイズ。
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(A−3)(以下、PPS(A−3)と記す。):溶融粘度400ポイズ。
<エチレン系重合体(B)>
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(B−1)(以下、エチレン系共重合体(B−1)と記す。):アルケマ(株)製、(商品名)ボンダインAX8390。
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(B−2)(以下、エチレン系共重合体(B−2)と記す。):住友化学(株)製、(商品名)ボンドファースト7M。
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体(B−3)(以下、エチレン系共重合体(B−3)と記す。):アルケマ(株)製、(商品名)ボンダインAX8840。
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体(B−4)(以下、エチレン系共重合体(B−4)と記す。):住友化学(株)製、(商品名)ボンドファースト7B。
<ガラス繊維(C)>
ガラス繊維(C−1);泰山製チョップドストランド、(商品名)ECS309A−3−M4、測定周波数2GHzにおける誘電率4.5、繊維断面のアスペクト比4。
ガラス繊維(C−2);日東紡(株)製チョップドストランド、(商品名)CSG−3PA 830、測定周波数2GHzにおける誘電率6.8、繊維断面のアスペクト比4。
ガラス繊維(C−3);泰山製チョップドストランド、(商品名)TLD−T443、測定周波数2GHzにおける誘電率4.5、繊維断面のアスペクト比1。
<離型剤(D)>
脂肪酸アミド系滑剤(D−1)(以下、離型剤(D−1)と記す場合もある。);共栄社化学(株)製、(商品名)ライトアマイドWH−255。
カルナバワックス(D−2)(以下、離型剤(D−2)と記す場合もある。);日興リカ(株)製、(商品名)精製カルナバ粉末1号。
<合成例1(PPS(A−1)の合成)>
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(NaS・2.9HO)6214g及びN−メチル−2−ピロリドン17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7150g、3,5−ジクロロアニリン47g、N−メチル−2−ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、ポリマーを遠心分離機により単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が250ポイズのアミノ基置換ポリ(p−フェニレンスルフィド)を得た。次いで、乾燥したアミノ基置換ポリ(p−フェニレンスルフィド)を、バッチ式ロータリーキルン型焼成装置に充填し、窒素雰囲気下250℃で5時間硬化を行うことによって、溶融粘度500ポイズ、フェニル基に対するアミノ基の含有量0.6モル%のPPS(A−1)を得た。
<合成例2(PPS(A−2)の合成)>
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(NaS・2.9HO)1814g、30%苛性ソーダ溶液(30%NaOHaq)48g及びN−メチル−2−ピロリドン3679gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、380gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン2107g、N−メチル−2−ピロリドン985gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合後、減圧下で重合スラリーからN−メチル−2−ピロリドンを蒸留操作で回収した。最終到達温度は170℃で圧力は4.7kPaであった。得られたケーキに80℃の温水を加えスラリー濃度20%として洗浄し、再度、同様に温水を加え175℃まで昇温してポリ(p−フェニレンスルフィド)の洗浄を合計2回行った。得られたポリフェニレンスルフィドを105℃で一昼夜乾燥した。次いで、乾燥したポリフェニレンスルフィドをバッチ式ロータリーキルン型焼成装置に充填し、窒素雰囲気下で235℃まで昇温し、1時間の保持による硬化処理を行うことによって、溶融粘度が150ポイズのPPS(A−2)を得た。
<合成例3(PPS(A−3)の合成)>
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(NaS・2.9HO)1814g、粒状の苛性ソーダ(100%NaOH:和光純薬特級)8.7g及びN−メチル−2−ピロリドン3232gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、340gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン2107g、N−メチル−2−ピロリドン1783gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、250℃にて2時間重合を行った。次いで、この系に250℃で蒸留水509gを圧入し、255℃まで昇温してさらに1時間重合反応を行った。重合後、減圧下で重合スラリーからN−メチル−2−ピロリドンを蒸留操作で回収した。最終到達温度は170℃で圧力は4.7kPaであった。得られたケーキに80℃の温水を加えスラリー濃度20%として洗浄し、再度、同様に温水を加え175℃まで昇温してポリ(p−フェニレンスルフィド)の洗浄を合計2回行った。得られたポリ(p−フェニレンスルフィド)を105℃で一昼夜乾燥することによって、溶融粘度が400ポイズのPPS(A−3)を得た。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の評価・測定方法を以下に示す。
〜ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度測定〜
直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスター((株)島津製作所製、(商品名)CFT−500)にて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で溶融粘度の測定を行った。
〜誘電率、誘電正接の測定〜
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物をシリンダー温度310℃、金型温度135℃とした射出成形機(住友重機械工業(株)製、(商品名)SE−75D)によって射出成形し、70mm×70mm×1mm厚の成形板を作製し、この成形板から70mm×3mm×1mm厚の誘電率測定用試験片を切削加工にて作製した。この試験片にて、誘電率測定装置((株)エーイーティー製、(商品名)空洞共振器)を用い、JIS C−2565に準拠して、測定周波数2GHzにて誘電率、誘電正接を測定した。誘電率が3.5以下で、かつ誘電正接が0.010以下であるものを実用上十分に低い誘電特性と判断した。
〜耐衝撃性の測定〜
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を、シリンダー温度310℃、金型温度135℃とした射出成形機(住友重機械工業(株)製、(商品名)SE−75S)によってシャルピー衝撃強度測定用試験片を作製し、ノッチングマシーン((株)東洋精機製作所製、(商品名)A−3型)によりノッチを入れ、シャルピー衝撃試験機((株)東洋精機製作所製、(商品名)DG−CB型)を用いて、ISO179に準拠し測定した。シャルピー衝撃強度として10kJ/mを超えるものを実用上十分に高い衝撃特性と判断した。
〜金属接合性および反りの評価〜
物理的処理及び/又は化学処理を施した表面を有する金属平板(70mm(縦方向)×70mm(横方向)×1mm(厚さ)または20mm(縦方向)×20mm(横方向)×1mm(厚さ))を、金型温度150℃に設定した射出成形機金型内に装着し、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業(株)製、(商品名)SE75S)のホッパーに投入し、射出インサート成形を行い、70mm×70mm×2mm(厚さ)(積層体層の厚さ方向に対する縦方向及び横方向の大きさの比がそれぞれ35)または20mm×20mm×2mm(厚さ)(積層体層の厚さ方向に対する縦方向及び横方向の大きさの比がそれぞれ10)の金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体を得た。
成形後24時間経過した該金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体の界面を目視にて判定した。
○:金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体の界面にはく離が認められなかったもの。
×:金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体の界面にはく離が認められるもの。
さらに、該成形後24時間経過した該金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体を、3Dスキャナ型三次元測定機((株)キーエンス製、(商品名)VL−350)を用いて、複合体の3つの頂点を基準点とした基準面とし、残りの1つの頂点の基準面からのずれ量を反り量として評価した。ずれ量が1mm未満のものを実用上反りが少ないと判断した。
実施例1
合成例1で得られたPPS(A−1)85.8重量%、エチレン系共重合体(B−1)13.4重量%、及び離型剤(D−1)0.8重量%を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C−1)を該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。その際のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の構成割合は,PPS(A−1)51.5重量%、エチレン系共重合体(B−1)8重量%、ガラス繊維(C−1)40重量%、離型剤(D−1)0.5重量%であった。
一方、アルミニウム合金(A5052)製平板(70mm×70mm×1mm(厚さ))をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液、次いで10重量%硫酸水溶液に浸漬し、さらに15重量%硫酸水溶液中で電流密度0.5A/cmで陽極酸化処理することにより、アルミニウム合金表面を化学処理したアルミニウム合金(A5052)製板を得た。
得られたアルミニウム合金(A5052)板を、金型温度150℃に設定した射出成形機金型内に装着し、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)のホッパーに投入し、射出インサート成形を行い、70mm×70mm×2mm(厚さ)(積層体層の厚さ方向に対する縦方向及び横方向の大きさの比がそれぞれ35)のアルミニウム合金部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体を得た。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、アルミニウム合金部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体の誘電率、誘電正接、耐衝撃性、金属接合性、ずれ量を評価した。評価結果を表1に示す。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、アルミニウム合金部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体は、金属接合性および反り量も良好であった。また、誘電率、誘電正接および耐衝撃性も実用上十分な値を示した。
実施例2
合成例2で得られたPPS(A−2)87.3重量%、エチレン系共重合体(B−2)11.1重量%、及び離型剤(D−2)1.6重量%を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C−1)を該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。その際のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の構成割合は,PPS(A−2)39.3重量%、エチレン系共重合体(B−2)5重量%、ガラス繊維(C−1)55重量%、離型剤(D−2)0.7重量%であった。
一方、アルミニウムダイカスト合金(ADC12)製板(70mm×70mm×1mm(厚さ))をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を、波長1.064μmのレーザを用いハッチング幅0.2mm、周波数6KHz、速度100mm/秒で直交方向に12万回走査するレーザ処理を行うことにより、アルミニウムダイカスト合金表面を物理的処理したアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製板を得た。
得られたアルミニウムダイカスト合金(ADC12)板を、金型温度150℃に設定した射出成形機金型内に装着し、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)のホッパーに投入し、射出インサート成形を行い、70mm×70mm×2mm(厚さ)(積層体層の厚さ方向に対する縦方向及び横方向に対する大きさの比35)のアルミニウムダイカスト合金部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体を得た。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、アルミニウムダイカスト合金部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体の誘電率、誘電正接、耐衝撃性、金属接合性、ずれ量を評価した。評価結果を表1に示す。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、アルミニウムダイカスト合金部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体は、金属接合性および反り量も良好であった。また、誘電率、誘電正接および耐衝撃性も実用上十分な値を示した。
実施例3
合成例1で得られたPPS(A−1)71.4重量%、エチレン系共重合体(B−3)27.7重量%、及び離型剤(D−1)0.9重量%を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C−1)を該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。その際のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の構成割合は,PPS(A−1)46.4重量%、エチレン系共重合体(B−3)18.0重量%、ガラス繊維(C−1)35重量%、離型剤(D−1)0.6重量%であった。
一方、アルミニウム合金(A6063)製板(70mm×70mm×1mm(厚さ))をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を#800のアルミナ、次いで#2000のアルミナにて液体ホーニング処理を行うことにより、アルミニウム合金表面を物理的処理したアルミニウム合金(A6063)製板を得た。
得られたアルミニウム合金(A6063)板を、金型温度150℃に設定した射出成形機金型内に装着し、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)のホッパーに投入し、射出インサート成形を行い、70mm×70mm×2mm(厚さ)(積層体層の厚さ方向に対する縦方向及び横方向に対する大きさの比35)のアルミニウム合金部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体を得た。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、アルミニウム合金部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体の誘電率、誘電正接、耐衝撃性、金属接合性、ずれ量を評価した。評価結果を表1に示す。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、アルミニウム合金部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体は、金属接合性および反り量も良好であった。また、誘電率、誘電正接および耐衝撃性も実用上十分な値を示した。
実施例4
合成例3で得られたPPS(A−3)80重量%に対し、エチレン系共重合体(B−4)18.2重量%、及び離型剤(D−2)1.8重量%を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C−1)を該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。その際のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の構成割合は,PPS(A−3)44重量%、エチレン系共重合体(B−4)10重量%、ガラス繊維(C−1)45重量%、離型剤(D−1)1重量%であった。
一方、ステンレス(SUS316)製板(70mm×70mm×1mm(厚さ))をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を、波長1.064μmのレーザを用いハッチング幅0.2mm、周波数6KHz、速度200mm/秒で直交方向に12万回走査するレーザ処理を行うことにより、ステンレス表面を物理的処理したステンレス(SUS316)製板を得た。
得られたステンレス(SUS316)板を、金型温度150℃に設定した射出成形機金型内に装着し、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)のホッパーに投入し、射出インサート成形を行い、70mm×70mm×2mm(厚さ)(積層体層の厚さ方向に対する縦方向及び横方向に対する大きさの比35)のステンレス部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体を得た。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、ステンレス部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体の誘電率、誘電正接、耐衝撃性、金属接合性、ずれ量を評価した。評価結果を表1に示す。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、ステンレス部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体は、金属接合性および反り量も良好であった。また、誘電率、誘電正接および耐衝撃性も実用上十分な値を示した。
実施例5
合成例2で得られたPPS(A−2)91.4重量%、エチレン系共重合体(B−1)8重量%、及び離型剤(D−2)0.6重量%を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C−1)を該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。その際のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の構成割合は,PPS(A−2)45.7重量%、エチレン系共重合体(B−1)4.0重量%、ガラス繊維(C−1)50重量%、離型剤(D−2)0.3重量%であった。
一方、アルミニウム(A1050)製板(70mm×70mm×1mm(厚さ))をエタノールに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を0.1mm次いで0.01mmのアルミナ粉を用いたサンドブラスト処理にて粗化し、次いで該試験片を1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液、さらに1重量%硫酸水溶液に浸漬し、最後に該試験片を95℃のエタノールアミン1重量%を含有する蒸留水混合液に10分間浸漬し、表面にベーマイト処理を施すことにより、アルミニウム表面を物理的処理後に化学処理したアルミニウム(A1050)製板を得た。
得られたアルミニウム(A1050)板を、金型温度150℃に設定した射出成形機金型内に装着し、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)のホッパーに投入し、射出インサート成形を行い、70mm×70mm×2mm(厚さ)(積層体層の厚さ方向に対する縦方向及び横方向に対する大きさの比35)のアルミニウム部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体を得た。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、アルミニウム部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体の誘電率、誘電正接、耐衝撃性、金属接合性、ずれ量を評価した。評価結果を表1に示す。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、アルミニウム部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体は、金属接合性および反り量も良好であった。また、誘電率、誘電正接および耐衝撃性も実用上十分な値を示した。
実施例6
合成例3で得られたPPS(A−3)78.3重量%に対し、エチレン系共重合体(B−3)20重量%、及び離型剤(D−1)1.7重量%を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C−1)を該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。その際のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の構成割合は,PPS(A−3)47重量%、エチレン系共重合体(B−2)12重量%、ガラス繊維(C−1)40重量%、離型剤(D−1)1重量%であった。
一方、アルミニウム合金(A5052)製板(20mm×20mm×1mm(厚さ))をエタノールに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を95℃のエタノールアミン0.5重量%を含有する蒸留水混合液に5分間浸漬することによりベーマイト処理を施し、アルミニウム合金表面を化学処理したアルミニウム合金製(A5052)製板を得た。
得られたアルミニウム合金(A5052)製板を、金型温度150℃に設定した射出成形機金型内に装着し、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)のホッパーに投入し、射出インサート成形を行い、20mm×20mm×2mm(厚さ)(積層体層の厚さ方向に対する縦方向及び横方向に対する大きさの比10)のアルミニウム合金部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体を得た。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、アルミニウム合金部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体の誘電率、誘電正接、耐衝撃性、金属接合性、ずれ量を評価した。評価結果を表1に示す。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、アルミニウム合金部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体は、金属接合性および反り量も良好であった。また、誘電率、誘電正接および耐衝撃性も実用上十分な値を示した。
実施例7
合成例1で得られたPPS(A−1)86.4重量%、エチレン系共重合体(B−2)12.7重量%、及び離型剤(D−2)0.9重量%を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C−1)を該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。その際のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の構成割合は,PPS(A−1)47.5重量%、エチレン系共重合体(B−2)7重量%、ガラス繊維(C−1)45重量%、離型剤(D−2)0.5重量%であった。
一方、アルミニウムダイカスト合金(ADC12)製板(20mm×20mm×1mm(厚さ))をアセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を、波長1.064μmのレーザを用いハッチング幅0.2mm、周波数6KHz、速度100mm/秒で直交方向に12万回走査するレーザ処理を行うことにより、アルミニウムダイカスト合金表面を物理的処理したアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製板を得た。
得られたアルミニウムダイカスト合金(ADC12)板を、金型温度150℃に設定した射出成形機金型内に装着し、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75S)のホッパーに投入し、射出インサート成形を行い、20mm×20mm×2mm(厚さ)(積層体層の厚さ方向に対する縦方向及び横方向に対する大きさの比10)のアルミニウムダイカスト合金部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体を得た。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、アルミニウムダイカスト合金部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体の誘電率、誘電正接、耐衝撃性、金属接合性、ずれ量を評価した。評価結果を表1に示す。
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、アルミニウムダイカスト合金部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体は、金属接合性および反り量も良好であった。また、誘電率、誘電正接および耐衝撃性も実用上十分な値を示した。
Figure 2021167380
比較例1〜6
PPS(A−1)、エチレン系共重合体(B−1)、及び離型剤(D−1)を表2に示す構成割合で配合して、二軸押出機のホッパーに投入し、ガラス繊維(C−1〜3)を、表2に示す構成割合になるように、二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーに投入し、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。
一方、実施例1と同様の方法により、アルミニウム合金表面を化学処理したアルミニウム合金(A5052)製板を得た。
得られた樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりアルミニウム合金部材−樹脂組成物部材積層体を得た。
得られた樹脂組成物、アルミニウム合金部材−樹脂組成物部材積層体の誘電率、誘電正接、耐衝撃性、金属接合性、ずれ量を評価した。評価結果を表2に示す。
比較例1により得られた樹脂組成物は、誘電率および誘電正接に劣るものであった。比較例2により得られた樹脂組成物は、誘電率および誘電正接に劣るものであった。比較例3により得られた樹脂組成物は、反り量に劣るものであった。比較例4により得られた樹脂組成物は、誘電率および誘電正接に劣るものであった。比較例5により得られた樹脂組成物は、反り量に劣るものであった。比較例6により得られた樹脂組成物は、金属接合性および耐衝撃性に劣るものであった
Figure 2021167380
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、低誘電率、低誘電正接であることからメガヘルツ帯からギガヘルツ帯の電波透過性に優れ、金属部材と一体化した部材とした際の反り量が少なく、金属部材との良好な接合性さらには耐衝撃性に優れ、通信時にメガヘルツ帯からギガヘルツ帯の電波を利用するモバイルパソコンやタブレット、携帯電話など携帯端末機器の筐体等の電子・電気部品用途、又は自動車電装部品等の電気部品用途に用いられる樹脂組成物およびそれよりなる複合体として期待されるものである。

Claims (6)

  1. ポリアリーレンスルフィド(A)30〜70重量%、エチレン系重合体(B)3〜20重量%、2GHzにおける誘電率が5.5以下でありかつ繊維断面アスペクト比2〜4であるガラス繊維(C)30〜60重量%を含んでなることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  2. さらに、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、脂肪酸アマイド系ワックスからなる群より選択される少なくとも1種以上の離型剤(D)を含んでなることを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  3. エチレン系重合体(B)が、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体及び無水マレイン酸グラフト変性エチレン系重合体からなる群より選択される少なくとも1種以上の変性エチレン系重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  4. JIS C−2565に準拠して、測定周波数2GHzにて測定した誘電率が3.5以下、かつ、誘電正接が0.010以下のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポイアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  5. 物理的処理及び/又は化学処理を施した表面を有する金属部材とポリアリーレンスルフィド(A)30〜70重量%、エチレン系重合体(B)3〜20重量%、2GHzにおける誘電率が5.5以下でありかつ繊維断面アスペクト比2〜4を有するガラス繊維(C)30〜60重量%を含んでなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の射出成形部材との直接一体化物であることを特徴とする金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体。
  6. 厚さが0.5〜5mmであり、厚さに対する縦方向及び横方向に対する大きさの比がそれぞれ10以上である積層体を含むことを特徴とする請求項5に記載の金属部材−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物部材複合体。
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