JP2020117785A - ポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対するめっき方法 - Google Patents

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博樹 荒井
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Tetsuya Saruwatari
哲也 猿渡
吉岡 尚規
Naoki Yoshioka
尚規 吉岡
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Abstract

【課題】ポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対し、熱によるダメージが抑制され、かつ、高い密着性を有するめっき層を形成可能なめっき方法を提供する。【解決手段】以下のステップA及びBを含む、ポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対するめっき方法である。ステップA:耐圧チャンバ1内のプラズマ処理室2でポリアリーレンスルフィド樹脂と、オレフィン系樹脂とを含む樹脂組成物からなる成形品50aを高密度プラズマ発生源15から離れた位置に配置してプラズマ処理を施した後、成形品を搬送機構30により成膜処理室3内に搬送し、スパッタ電極33によりシード層を形成する。次に耐圧チャンバから成形品を取り出して電解めっき装置に搬送する。ステップB:シード層を形成した成形品の表面の少なくとも一部に、電解めっき又は無電解めっきにより金属をめっきする。【選択図】図1

Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対するめっき方法に関する。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下「PPS樹脂」とも呼ぶ)に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂(以下「PAS樹脂」とも呼ぶ)は、高い耐熱性、バリア性、耐化学薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性、難燃性等を有するエンジニアリングプラスチックである。このようなPAS樹脂は、各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品等の分野において幅広く用いられている。
一方、従来は金属のみで形成されていた部材が、軽量化やコストダウン等を目的として金属膜で樹脂を被覆したものに置き換わることがある。PAS樹脂は上記のような優れた性能を有することから、その成形品を金属膜で被覆することにより更なる有用性が期待される。ところが、PAS樹脂と金属とは密着性が低い材料同士であることから、PAS樹脂成形品に金属膜を形成するのは一筋縄ではいかず、種々の手法が提案されている(特許文献1〜3参照)。
特許文献1には、PPS樹脂を含む樹脂製の基体表面にプラズマ処理を施して表面を改質した後、直接あるいは下地層を介してスパッタリング法等により金属薄膜たる磁性層を形成してなる磁気記録媒体が記載されている。また、特許文献2には、真空中にて、PPSの支持体の表面をRFアルゴンプラズマでエッチングする工程;真空を破ることなく、エッチングされた支持体表面上にチタンの層を接着促進用中間層としてスパッタリングし、そしてチタン中間層上に第1の銅層をスパッタリングする工程;及び第1の銅層上に第2の銅層を所望の厚さに電気めっきする工程;を含むPPS支持体上に銅をめっきする方法が記載されている。さらに、特許文献3には、ベース樹脂(PPS樹脂含む)にゴム状弾性体を配合した樹脂組成物によって成形されてなる樹脂成形体の表面をプラズマ処理により活性化した後、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングから選ばれる物理蒸着法で金属の被覆処理をなす樹脂成形体が記載されている。
特開昭61−160830号公報 特開平6−212405号公報 特開2002−283498号公報
特許文献1〜3の手法はいずれも、PPS樹脂表面と金属膜との密着性の向上を図るため、PPS樹脂表面に対し、前処理としてプラズマ処理を施して改質している。ところが、一般的なプラズマ処理は過度に高い温度下で行われるためPAS樹脂成形品は熱によるダメージを受ける傾向にある。耐熱性が高い樹脂として知られているPAS樹脂といえどもプラズマ処理による高温には耐えられず、熱劣化することがある。
特許文献3においては、ベース樹脂と金属膜との密着性をさらに向上させるため、ベース樹脂にゴム状弾性体を配合している。しかし、特許文献3においては、ゴム状弾性体を配合したPAS樹脂成形体にプラズマ処理を施すため、高温に晒され、ベース樹脂及びゴム状弾性体が熱劣化し、樹脂界面が脆化され密着強度が低下するため、めっきをするのは困難である。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その課題は、ポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対し、熱によるダメージが抑制され、かつ、高い密着性を有するめっき層を形成可能なめっき方法を提供することにある。
前記課題を解決する本発明の一態様は以下の通りである。
(1)以下のステップA及びステップBを含む、ポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対するめっき方法。
ステップA:ポリアリーレンスルフィド樹脂と、オレフィン系樹脂とを含む樹脂組成物からなる成形品の表面に、下記工程(a)〜(c)によりプラズマ処理を施した後、下記工程(d)によりシード層を形成する。
(a)耐圧チャンバー内に設置されている、カソード及び前記カソードに対向して配置されている対極を含む、電子密度が1×1010cm-3以上で電子温度が10eV以下のプラズマを形成可能な高密度プラズマ発生源に対し、前記カソード及び前記対極とは反対側に離れた位置に前記成形品を配置する。
(b)前記耐圧チャンバー内を減圧する。
(c)前記高密度プラズマ発生源に反応ガスを供給し、電力を印加してプラズマ状態を形成しつつ、前記成形品を前記反応ガスに晒す。
(d)前記反応ガスに晒した前記成形品を大気に晒すことなく、前記成形品にシード層を形成する。
ステップB:シード層を形成した前記成形品の表面の少なくとも一部に、電解めっき又は無電解めっきにより金属をめっきする。
(2)前記ステップAの工程(c)において、前記高密度プラズマ発生源への反応ガスの供給及びプラズマ状態の形成を、下記工程(e)及び工程(f)により行う、前記(1)に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対するめっき方法。
(e)前記高密度プラズマ発生源に、第1圧力の反応ガスを供給し、第1出力の電力を印加して、第1プラズマ状態を形成する。
(f)前記第1プラズマ状態が形成された前記高密度プラズマ発生源に、前記第1圧力より高い第2圧力の反応ガスを供給し、前記第1出力の電力より低い第2出力の電力を印加して、第2プラズマ状態を形成する。
(3)前記樹脂組成物における前記オレフィン系樹脂の含有量が、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部である、前記(1)又は(2)に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対するめっき方法。
(4)前記樹脂組成物がさらに無機フィラーを含有する、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対するめっき方法。
(5)前記無機フィラーが繊維状無機フィラーである、前記(4)に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対するめっき方法。
(6)前記無機フィラーが、繊維状無機フィラーと、板状無機フィラー及び/又は粉粒状無機フィラーとの組合せからなる、前記(4)に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対するめっき方法。
本発明によれば、ポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対し、電子密度が1×1010cm-3以上で電子温度が10eV以下のプラズマを適用することで熱によるダメージが抑制され、かつ、高い密着性を有するめっき層を形成可能なめっき方法を提供することができる。
図1は、本実施形態のめっき方法で用いる成膜装置の一例を示す断面図である。 図2は、プラズマ処理における反応ガスの圧力及び投入する電力の時間変化を示す図である。図2(a)は、反応ガスの圧力の時間変化を示す図、図2(b)は、プラズマ発生装置に投入する電力の時間変化を示す図である。 図3は、成形品の表面にシード層を形成する工程を示す図である。 図4は、シード層を形成した成形品の表面にめっきする工程を示す図である。
<PAS樹脂成形品に対するめっき方法>
本実施形態のPAS樹脂成形品に対するめっき方法は、以下のステップA及びステップBを含むことを特徴としている。
ステップA:ポリアリーレンスルフィド樹脂と、オレフィン系樹脂とを含む樹脂組成物からなる成形品の表面に、下記工程(a)〜(c)によりプラズマ処理を施した後、下記工程(d)によりシード層を形成する。
(a)耐圧チャンバー内に設置されている、カソード及びカソードに対向して配置されている対極を含む、電子密度が1×1010cm-3以上で電子温度が10eV以下のプラズマを形成可能な高密度プラズマ発生源に対し、カソード及び対極とは反対側に離れた位置に成形品を配置する。
(b)耐圧チャンバー内を減圧する。
(c)高密度プラズマ発生源に反応ガスを供給し、電力を印加してプラズマ状態を形成しつつ、成形品を前記反応ガスに晒す。
(d)反応ガスに晒した成形品を大気に晒すことなく、成形品にシード層を形成する。
ステップB:シード層を形成した成形品の表面の少なくとも一部に、電解めっき又は無電解めっきにより金属をめっきする。
本実施形態においては、PAS樹脂成形品の表面に金属をめっきするに当たり、まず、PAS樹脂成形品の表面に対して電子密度が1×1010cm-3以上で電子温度が10eV以下のプラズマを形成可能な高密度プラズマ発生源を用いてプラズマ処理をし、その後シード層を形成する。高密度プラズマ発生源を用いたプラズマ処理であれば、高い電子密度(例えば1011cm-3オーダー)のラジカル放電を行うことができるため、過度に高温となることを抑制でき、処理対象物の高温下による温度ダメージを低減することができる。また、過度な高温への温度上昇を抑えられることから、解離に高エネルギーが必要なOを使用したプラズマCVDが可能となる。そのため、放電を安定化させてO処理効果を高め、PAS樹脂成形品の表面上に反応性官能基を効率的に形成して、その後、例えばスパッタリングにより形成されるシード層の密着性をより一層高めることができる。
また、特に、プラズマ処理とシード層の形成とを真空雰囲気下(減圧下)で連続処理にて行うことで、プラズマ処理後にPAS樹脂成形品を大気に曝すことなくシード層の形成に供することができる。そのため、PAS樹脂成形品のプラズマ処理面の変質等を防止して処理面を安定化させることができる。その上に電解めっき又は無電解めっきすれば十分な密着性が得られると考えられる。
一方、上記の通り、PAS樹脂成形品の表面とシード層との密着性を高めるために施す一般的なプラズマ処理は、電子密度が低い(例えば10cm−3オーダー以下)ため、イオン放電が主となり、荷電粒子が樹脂表面に直接照射される。そのため、樹脂表面が荷電粒子によって叩かれ、高温となりPAS樹脂成形品がダメージを受ける。
本実施形態においては、電子密度が1×1010cm-3以上で電子温度が10eV以下のプラズマを形成可能な高密度プラズマ発生源を用いたプラズマ処理、すなわち低温で実行可能なプラズマ処理を採用しつつ、その処理に適した組成を有するPAS樹脂成形品を用いている。従って、本実施形態によると、PAS樹脂成形品の表面に、高温によるダメージを受けることなく高い密着性を有するシード層の形成が可能となる。そして、PAS樹脂成形品の表面に高い密着性を有するシード層が形成されれば、あとは電解めっき又は無電解めっきによってシード層上に金属がめっきされ、密着性が高いめっき層が得られる。特に、シード層の材料として導体を用いれば、導電性のシード層が高い密着性を有する状態で形成される。すなわち、電解めっきに適した導電性のシード層が形成される。そして、当該シード層上に電解めっきにより金属めっきをすれば、めっき層とシード層との密着性、及びシード層とPAS樹脂成形品との密着性のいずれも高く、PAS樹脂成形品に対して高い密着性を有するめっき層が形成される。従って、本実施形態のPAS樹脂成形品に対するめっき方法は、電解めっきには特に有用である。
以下に、本実施形態のPAS樹脂成形品に対するめっき方法の各ステップについて説明する。
本実施形態において用いるPAS樹脂成形品は、ポリアリーレンスルフィド樹脂と、オレフィン系樹脂とを含む樹脂組成物からなることを特徴としている。
以下に、PAS樹脂成形品を構成するPAS樹脂組成物の各成分について説明する。
[ポリアリーレンスルフィド樹脂]
PAS樹脂は、機械的性質、電気的性質、耐熱性その他物理的・化学的特性に優れ、かつ加工性が良好であるという特徴を有する。
PAS樹脂は、主として、繰返し単位として−(Ar−S)−(但しArはアリーレン基)で構成された高分子化合物であり、本実施形態では一般的に知られている分子構造のPAS樹脂を使用することができる。
上記アリーレン基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’−ジフェニレンスルフォン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンエーテル基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基等が挙げられる。PAS樹脂は、上記繰返し単位のみからなるホモポリマーでもよいし、下記の異種繰返し単位を含んだコポリマーが加工性等の点から好ましい場合もある。
ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp−フェニレン基を用いた、p−フェニレンスルフィド基を繰返し単位とするポリフェニレンスルフィド樹脂が好ましく用いられる。また、コポリマーとしては、前記のアリーレン基からなるアリーレンスルフィド基の中で、相異なる2種以上の組み合わせが使用できるが、中でもp−フェニレンスルフィド基とm−フェニレンスルフィド基を含む組み合わせが特に好ましく用いられる。この中で、p−フェニレンスルフィド基を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含むものが、耐熱性、成形性、機械的特性等の物性上の点から適当である。また、これらのPAS樹脂の中で、2官能性ハロゲン芳香族化合物を主体とするモノマーから縮重合によって得られる実質的に直鎖状構造の高分子量ポリマーが、特に好ましく使用できる。尚、本実施形態に用いるPAS樹脂は、異なる2種類以上の分子量のPAS樹脂を混合して用いてもよい。
尚、直鎖状構造のPAS樹脂以外にも、縮重合させるときに、3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物等のモノマーを少量用いて、部分的に分岐構造又は架橋構造を形成させたポリマーや、低分子量の直鎖状構造ポリマーを酸素等の存在下、高温で加熱して酸化架橋又は熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも挙げられる。
本実施形態に使用する基体樹脂としてのPAS樹脂の溶融粘度(310℃・せん断速度1200sec−1)は、上記混合系の場合も含め600Pa・s以下が好ましく、中でも7〜300Pa・sの範囲にあるものは、機械的物性と流動性のバランスが優れており好ましく、7〜250Pa・sの範囲にあるものがより好ましい。
PAS樹脂の製造方法は、特に限定されず、従来公知の製造方法によって製造することができる。例えば、低分子量のPAS樹脂を合成後、公知の重合助剤の存在下で、高温下で重合して高分子量化することで製造することができる。
尚、本実施形態のPAS樹脂組成物は、その効果を損なわない範囲で、樹脂成分として、上述のPAS樹脂に加えて、その他の樹脂成分を含んでもよい。その他の樹脂成分としては、特に限定はなく、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶樹脂、弗素樹脂、環状オレフィン系樹脂(環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー等)、熱可塑性エラストマー、シリコーン系ポリマー、各種の生分解性樹脂等が挙げられる。また、2種類以上の樹脂成分を併用してもよい。その中でも、機械的性質、電気的性質、物理的・化学的特性、加工性等の観点から、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、液晶樹脂等が好ましく用いられる。
[オレフィン系樹脂]
本実施形態において、オレフィン系樹脂は、シード層との密着性向上の目的で使用される。オレフィン系樹脂としては、具体的には、ポリエチレンやエチレンオクテン等のポリオレフィン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(GMA)等のオレフィン系共重合体が挙げられる。オレフィン系樹脂は、1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。
以下、ポリオレフィンとオレフィン系共重合体について説明する。尚、以下、(メタ)アクリル酸エステルを(メタ)アクリレートともいう。例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルをグリシジル(メタ)アクリレートともいう。また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸との両方を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとの両方を意味する。
(ポリオレフィン)
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン;エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体等のエチレン系重合体;ポリプロピレン;プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体等のプロピレン系重合体;ポリ1−ブテン、ポリ1−ヘキセン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
(オレフィン系共重合体)
オレフィン系共重合体としては、例えば、α−オレフィン由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位とを含むもの、α−オレフィン由来の構成単位と、α,β−不飽和酸グリシジルエステル由来の構成単位とを含むもの、α−オレフィン由来の構成単位と、α,β−不飽和酸グリシジルエステル由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位とを含むもの等が挙げられる。以下に、各構成単位について説明する。
<α−オレフィン由来の構成単位>
α−オレフィンとしては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等が挙げられる。α−オレフィンは、1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。
<α,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位>
α,β−不飽和酸のグリシジルエステルとしては、特に限定されず、例えば、以下の一般式(1)に示される構造を有するものを挙げることができる。
Figure 2020117785

(但し、Rは、水素原子又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基を示す。)
上記一般式(1)で示される化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、エタクリル酸グリシジルエステル等が挙げられる。α,β−不飽和酸のグリシジルエステルは、1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。
<(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位>
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸−n−アミル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸−n−アミル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。
オレフィン系共重合体は、従来公知の方法で共重合を行うことにより製造することができる。例えば、通常よく知られたラジカル重合反応により共重合を行うことによって、上記エポキシ基含有オレフィン系共重合体を得ることができる。エポキシ基含有オレフィン系共重合体の種類は、特に問われず、例えば、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
本実施形態に用いるオレフィン系共重合体は、その効果を害さない範囲で、他の共重合成分由来の構成単位を含有することができる。
より具体的には、オレフィン系共重合体としては、例えば、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルメタクリレート共重合体等の、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体;エチレン−グリシジルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルエタクリレート共重合体等の、エチレンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルとの共重合体;エチレン−グリシジルメタクリレート−メチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−エチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−プロピルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体等の、エチレンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体等が挙げられる。
本実施形態において、PAS樹脂組成物におけるオレフィン系樹脂の含有量は、成形性、耐熱性、機械的強度等の観点から、PAS樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部が好ましく、0.1〜25質量部がより好ましい。
[無機フィラー]
本実施形態において、PAS樹脂組成物は、無機フィラーを含むことが好ましい。中でも、無機フィラーは、機械的強度、耐ヒートショック性、耐熱性等をより向上させることができるため、繊維状無機フィラーを含んでいることが好ましい。特に、断面形状が丸型形状の繊維状無機フィラーと断面形状が扁平形状の繊維状無機フィラーとを併用すると、めっきされたポリアリーレンスルフィド樹脂成形品の耐ヒートショック性をより向上させることができる。
また、無機フィラーは、繊維状無機フィラーと板状無機フィラー及び/又は粉粒状無機フィラーとの組合せからなると、めっきされたポリアリーレンスルフィド樹脂成形品の機械強度や平面度をより向上させることができる。
本実施形態において、「繊維状」とは、異径比が1以上4以下、かつ、平均繊維長(カット長)が0.01〜3mmの形状をいい、「板状」とは、異径比が4より大きく、かつ、アスペクト比が1以上500以下の形状をいい、「粉粒状」とは、異径比が1以上4以下、かつ、アスペクト比が1以上2以下の形状(球状を含む。)をいう。いずれの形状も初期形状(溶融混練前の形状)である。異径比とは、「長手方向に直角の断面の長径(断面の最長の直線距離)/当該断面の短径(長径と直角方向の最長の直線距離)」であり、アスペクト比とは、「長手方向の最長の直線距離/長手方向に直角の断面の短径(当該断面における最長距離の直線と直角方向の最長の直線距離)」である。異径比及びアスペクト比は、いずれも、走査型電子顕微鏡及び画像処理ソフトを用いて算出することができる。また、平均繊維長(カット長)はメーカー値(メーカーがカタログなどにおいて公表している数値)を採用することができる。
繊維状無機フィラーの例としては、ガラス繊維、カーボン繊維、酸化亜鉛繊維、酸化チタン繊維、ウォラストナイト、シリカ繊維、シリカ−アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化ケイ素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、等の鉱物繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、銅繊維、真鍮繊維等の金属繊維状物質等が挙げられ、これらを1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。中でも、機械的強度向上やコストバランス等の観点からガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維の上市品の例としては、日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維(ECS03T−790DE、平均繊維径:6μm)、オーウェンスコーニング製造(株)製、チョップドガラス繊維(CS03DE 416A、平均繊維径:6μm)、日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維(ECS03T−747H、平均繊維径:10.5μm)、日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維(ECS03T−747、平均繊維径:13μm)、日東紡績(株)製、異形断面チョップドストランド CSG 3PA−830(長径28μm、短径7μm)、日東紡績(株)製、異形断面チョップドストランド CSG 3PL−962(長径20μm、短径10μm)等が挙げられる。
繊維状無機フィラーは、一般的に知られているエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物、脂肪酸等の各種表面処理剤により表面処理されていてもよい。表面処理により、変性PAS樹脂との密着性を向上させることができる。表面処理剤は、材料調製の前に予め繊維状無機フィラーに適用して表面処理又は収束処理を施しておくか、または材料調製の際に同時に添加してもよい。
繊維状無機フィラーの繊維径は、特に限定されないが、初期形状(溶融混練前の形状)において、例えば5μm以上30μm以下とすることができる。ここで、繊維状無機フィラーの繊維径とは、繊維状無機フィラーの繊維断面の長径をいう。
繊維状無機フィラーの断面形状は、特に限定されないが丸型形状や扁平形状等を挙げることができる。また、断面形状の異なる繊維状無機フィラーを併用してもよい。断面形状が丸型形状の繊維状無機フィラーと断面形状が扁平形状の繊維状無機フィラーとを併用すると、めっきされたポリアリーレンスルフィド樹脂成形品の耐ヒートショック性をより向上させることができる。
板状無機フィラーとしては、例えば、ガラスフレーク、タルク(板状)、マイカ、カオリン、クレイ、アルミナ(板状)、各種の金属箔等が挙げられ、これらを1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。中でも、ガラスフレーク、タルクが好ましい。
ガラスフレークの上市品の例としては、日本板硝子(株)製、REFG−108(平均粒子径(50%d):623μm)、(日本板硝子(株)製、ファインフレーク(平均粒子径(50%d):169μm)、日本板硝子(株)製、REFG−301(平均粒子径(50%d):155μm)、日本板硝子(株)製、REFG−401(平均粒子径(50%d):310μm)等が挙げられる。
タルクの上市品の例としては、松村産業(株)製 クラウンタルクPP、林化成(株)製 タルカンパウダーPKNN等が挙げられる。
板状無機フィラーは、繊維状無機フィラーと同様に表面処理されていてもよい。
粉粒状無機フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、タルク(粒状)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土等のケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ(粒状)等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩、その他炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、各種金属粉末等が挙げられ、これらを1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。中でも、炭酸カルシウム、ガラスビーズが好ましい。
炭酸カルシウムの上市品の例としては、東洋ファインケミカル(株)製、ホワイトンP−30(平均粒子径(50%d):5μm)等が挙げられる。また、ガラスビーズの上市品の例としては、ポッターズ・バロティーニ(株)製、EGB731A(平均粒子径(50%d):20μm)、ポッターズ・バロティーニ(株)製、EMB−10(平均粒子径(50%d):5μm)等が挙げられる。
粉粒状無機フィラーも、繊維状無機フィラーと同様に表面処理されていてもよい。
無機フィラーが、繊維状無機フィラーと板状無機フィラー及び/又は粉粒状無機フィラーとの組合せからなると、めっきされたポリアリーレンスルフィド樹脂成形品の機械強度や平面度をより向上させることができる。
繊維状無機フィラーと板状無機フィラー及び/又は粉粒状無機フィラーとの組合せの例としては、ガラス繊維とガラスフレーク、ガラス繊維と炭酸カルシウム、ガラス繊維とガラスビーズ、ガラス繊維とガラスフレークと炭酸カルシウム、ガラス繊維と異形断面(扁平形状)のガラス繊維と炭酸カルシウム、等の組合せが挙げられる。
PAS樹脂組成物中における無機フィラーの含有量は、PAS樹脂100質量部に対して5〜70質量部が好ましく、10〜50質量部がより好ましい。
[他の成分]
本実施形態において、PAS樹脂組成物には、その効果を妨げない範囲で、滑剤、核剤、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、金属不活性剤、その他老化防止剤、UV吸収剤、安定剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤、有機フィラー等を含有していてもよい。
本実施形態において、PAS樹脂組成物は、PAS樹脂と、オレフィン系樹脂と、必要に応じて無機フィラー及び他の成分とを少なくとも含有する混合成分を溶融混練することにより製造することができる。当該PAS樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、当該技術分野で知られている各種方法を採用することができる。例えば、上述した各成分を混合した後、押出機に投入し、溶融混練し、ペレット化する方法が挙げられる。また、一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを所定量混合して成形に供し、成形後に目的組成の成形品を得る方法、成形機に各成分の1又は2以上を直接仕込む方法等を用いてもよい。
本実施形態において、PAS樹脂組成物を用いて成形品を成形する方法としては特に限定はなく、当該技術分野で知られている各種方法を採用することができる。例えば、本実施形態のPAS樹脂組成物を押出機に投入して溶融混練してペレット化し、このペレットを所定の金型を装備した射出成形機に投入し、射出成形することで作製することができる。
PAS樹脂成形品の形状は特に限定されず用途に応じて適宜選択することができる。例えば、シート状、板状、筒状、被膜状等の他、所望の形状の三次元成形体に成形することができる。
[ステップA]
ステップAにおいては、PAS樹脂成形品の表面に、上述の工程(a)〜(c)によりプラズマ処理を施した後、工程(d)によりシード層を形成する。以下にまず、ステップAで使用する成膜装置の一例について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態において用いる成膜装置100を示す断面図である。成膜装置100は、耐圧チャンバー1と、耐圧チャンバー1内に設けられ、カソード12及びカソード12に対向して配置されている対極14を含む高密度プラズマ発生源15と、耐圧チャンバー1内の、カソード12及び対極14とは反対側に離れた位置に設けられ、成形品50aを保持する第1保持機構23と、耐圧チャンバー1内に設けられ、成形品50bに膜材料を供給するスパッタ電極(成膜源)33と、耐圧チャンバー1内の圧力と、高密度プラズマ発生源15に供給する反応ガスの流量と、高密度プラズマ発生源15に印加する電力とを制御する制御装置7とを有している。成膜装置100は、成膜手段としてスパッタリング法を採用している。
成膜装置100は耐圧構造の耐圧チャンバー1を備え、耐圧チャンバー1の内部には、隔壁4により隔てられたプラズマ処理室2及び成膜処理室3を備えている。隔壁4には、プラズマ処理室2及び成膜処理室3をつなぐ開口部5が設けられ、開口部5は、開閉扉6により開閉可能となっている。開口部5と開閉扉6は、プラズマ処理室2と成膜処理室3との間を開閉する開閉機構成を構成している。
成膜装置100はさらに制御装置7を備えている。
プラズマ処理室2内には、カソード12及び対極14と、カソード12及び対極14を保持し、それらの間に密閉空間22を形成する枠部13とを有する高密度プラズマ発生源15が備えられている。
プラズマ処理室2内の高密度プラズマ発生源15の反対側には、プラズマ処理の対象となる成形品50aを保持するための第1保持機構23が設けられている。
また、プラズマ処理室2には、減圧用配管26を介して第1減圧ポンプ25が接続されており、減圧機構としての第1減圧ポンプ25及び減圧用配管26により、プラズマ処理室2の内部を減圧することができる。
第1減圧ポンプ25は、制御装置7からの制御信号S3によって制御される。
カソード12は、金属等の導体からなる平板を有する。特に、カソード12として高密度プラズマ用電極を使用するのが望ましい。
カソード12は電力供給線20を介してプラズマ用電源19と接続されている。プラズマ用電源19は、たとえば、RF周波数(例えば13.56MHz)の交流又は直流の電圧(主に負電圧)を発生するものが採用される。一方、対極14は接地配線21により接地されている。
成膜装置100は、上記密閉空間22に接続された反応ガス供給管16と、耐圧チャンバー1の外側に延在している反応ガス供給管16に接続されている反応ガス供給器17と、反応ガス供給器17から供給される反応ガスの流量を調節して密閉空間22内の圧力を制御する制御弁18とをさらに備えている。制御弁18の開度の調整は、制御装置7からの制御信号S1によって制御される。図1の例では、制御弁18は反応ガス供給器17に設けられている。反応ガス供給器17には、例えば工場配管28を介して反応ガスが供給されるが、ガスボンベから供給されるものとしてもよい。なお、反応ガスとしては、酸素、窒素、アルゴン、水素、ヘリウム等が挙げられ、酸素、アルゴンが好ましい。また、反応ガスは、1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。
耐圧チャンバー1の内部の成膜処理室3には、成形品50bを保持するための第2保持機構35、及び電極部31とターゲット材料32とからなるスパッタ電極33が備えられている。ターゲット材料32としては、一例として銅が使用される。ターゲット材料32としては、アルミニウムや他の金属や上記の金属を含む合金を用いることもできる。スパッタ電極33は、スパッタ用電源34に接続されている。
スパッタ用電源34は、スパッタ電極33に対し10kW以上、さらに望ましくは30kW以上の電力を投入することができる。スパッタ用電源34は、制御装置7からの制御信号S5によって制御される。
スパッタ電極33又はその電極部31は、成形品50b上に成膜する膜の材料を供給する成膜源と解釈することもできる。
成膜処理室3には、減圧用配管37を介して第2減圧ポンプ36が接続されており、減圧機構としての第2減圧ポンプ36及び減圧用配管37により、成膜処理室3の内部を減圧することができる。第2減圧ポンプ36は、制御装置7からの制御信号S4によって制御される。
成膜装置100はさらに、成膜処理室3内にアルゴン等の不活性ガスを供給する不活性ガス供給管41と、不活性ガス供給管41に接続されている不活性ガス供給器38と、不活性ガス供給器38から供給される不活性ガスの流量を調節して成膜処理室3内の圧力を制御する制御弁39とを備えている。図1の例では、制御弁39は不活性ガス供給器38に設けられている。制御弁39の開度の調整は、制御装置7からの制御信号S6によって制御される。不活性ガス供給器38には、例えば工場配管40を介して不活性ガスが供給されるが、ガスボンベから供給されるものとしてもよい。
成膜処理を行う際には、成膜すべき成形品50aは不図示の搬入機構によりプラズマ処理室2内に搬入されて第1保持機構23に保持される。不図示の搬入機構は、ロードロック室を有するものであることが好ましい。成形品50aの搬入時には、プラズマ処理室2と成膜処理室3の間の開閉扉6は閉じておく。
制御装置7が第1減圧ポンプ25に制御信号S3を送ることによりプラズマ処理室2内が減圧され、制御装置7が制御弁18に制御信号S1を送ることにより高密度プラズマ発生源15内の密閉空間22に所定の圧力の反応ガスが供給される。
制御装置7がプラズマ用電源19に制御信号S2を送ることにより、カソード12にはプラズマ用電源19により電力供給線20を介してRF周波数(例えば13.56MHz)の交流又は直流の電圧(主に負電圧)が印加される。一方、対極14は接地配線21により接地電位とされている。これにより、カソード12と対極14の間で放電を発生させ、放電により生じた電子が反応ガスを電子密度が1×1010cm-3以上で電子温度が10eV以下のプラズマにする。
プラズマ用電源19は、制御装置7からの制御信号S2によって制御される。
成形品50aを保持する第1保持機構23も、接地配線24により接地電位とされる。ただし、カソード12と対極14の間の距離に比べて、成形品50a及び第1保持機構23とカソード12との距離dは長いため、成形品50a及び第1保持機構23とカソード12との間の電場は弱い。よって、カソード12から放電される電子のほとんどは対極14に流れ込むため、成形品50a及び第1保持機構23に電子が衝突してこれを加熱することは、ほとんど抑えられている。
高密度プラズマ発生源15で発生したプラズマは、高密度プラズマ発生源15の外部に放出される。そして、プラズマは、プラズマ処理室2内を図1中で右から左に距離dだけドリフトして、成形品50aに達する。
ここで、距離dは、カソード12と成形品50aとの距離である。
高密度プラズマ発生源15から放出された段階ではプラズマは高温であるが、プラズマ処理室2内をドリフト中に、プラズマ処理室2内に存在する反応ガスとの衝突等により熱エネルギーを失うため、成形品50aに達した時点ではプラズマの温度は低下している。
また、反応ガスとの衝突等により、プラズマの一部は、プラズマ(帯電状態)から活性化状態(ラジカル状態)に変化している。よって、成形品50aは、反応ガスのプラズマのみではなく、活性化状態(ラジカル状態)の反応ガスにも晒されることになる。
本明細書では、プラズマ状態の反応ガスと活性化状態(ラジカル状態)の反応ガスを、高反応性化された反応ガスと呼ぶ。また、プラズマ状態の反応ガスとラジカル状態の反応ガスにより、成形品50aの表面を活性化することをプラズマ処理と呼ぶ。
このように、成形品50aに到達する際にはプラズマの温度が低下し、ラジカル状態の反応ガスも到達するという効果は、成形品50aが、カソード12及び対極14とは反対側に離れた位置に設けられていることによるものである。換言すると、カソード12と成形品50aとの距離dが、カソード12と対極14との距離よりも長く設定されるように、カソード12を挟んで成形品50aと対極14とが配置されている。
ところで、高密度プラズマ発生源15と成形品50aとの距離を離すことにより、成形品50aに到達する高反応性化された反応ガスの濃度が低下してしまう恐れがある。
しかし、本実施形態におけるプラズマ処理室では、高密度プラズマ発生源15と成形品50aとの間の空間を減圧するため、高密度プラズマ発生源15で発生したプラズマが必要以上に気体分子(反応ガスの分子)と衝突することを防ぎ、高反応性化された反応ガスの濃度の低下を防止できる。
なお、上記の通り、高密度プラズマ発生源15は、電子密度が1×1010cm-3以上で電子温度が10eV以下のプラズマを形成可能なプラズマ発生源である。そのような高密度プラズマ発生源の装置構成は、上記構成に限定されることはなく、例えば特許第6065111号(段落[0031]〜[0043]に条件が記載されている)に開示されている装置等も用いることができる。
プラズマ処理により、成形品50aの表面は活性化され、金属原子との結合性が向上する。
プラズマ処理が終了した成形品50aは、プラズマ処理室2内に設けられている搬送機構30によりプラズマ処理室2内の第1保持機構23から、大気に晒されることなく成膜処理室3内の第2保持機構35に搬送される。この搬送に先立って、制御装置7が第2減圧ポンプ36に制御信号S4を送ることにより成膜処理室3内を減圧しておく。この搬送時には開閉扉6は開かれ、この搬送の終了後には開閉扉6は閉じられる。搬送され、成膜処理室3内の第2保持機構35に保持された成形品50aを、成形品50bと呼ぶ
成形品50bが成膜処理室3内の第2保持機構35に保持されると、制御装置7がスパッタ用電源34に制御信号S5を送ることにより、スパッタ電極33に大電力が投入される。この電力により成膜処理室3内のスパッタ電極33近傍の不活性ガスがイオン化され、スパッタ電極33の電場により加速されターゲット材料32に衝突し、ターゲット材料32を構成する銅又は他の金属の原子が成膜処理室3内に放出され、成形品50b上に堆積する。
すなわち、上述のプラズマ処理により活性化されている成形品50bの表面に対し、その活性化された部分が大気中の水蒸気や酸素等により不活性化されることがないまま金属原子が成膜される。そのため、成形品50bの表面に、成形品50bとの結合性の高い、すなわち密着性の高い金属膜(シード層)が形成される。
従来のスパッタ装置では、成膜する膜の純度を高めるために、スパッタ装置内の圧力を0.1Pa程度に減圧して成膜を行うのが一般的である。スパッタ装置内の圧力がこれより高いと、スパッタ装置内に残留する、あるいは成形品から放出される水等の不純物の除去が困難であり、その結果、不純物が膜に混入し膜の品質が低下するためである。
しかし、特に成形品50bが樹脂である場合には、成形品50bから放出される不純物の量が多く、かつ、長時間にわたって不純物を放出し続けるため、従来のスパッタ装置のように、0.1Pa程度に減圧して成膜を行うことは困難である。
そこで、本実施形態において、成膜装置100では、成形品50bから放出される不純物の量が多くても高性能な膜を成膜可能とするために、スパッタ用電源34として、スパッタ電極33に対し10kW以上、さらに好ましくは30kW以上の電力を投入することができるものを備えている。
スパッタ電極33に投入される電力が大電力であると、通常の電力が投入される場合に比べて、ターゲット材料32から放出される銅等の金属原子の量が増大するとともに、金属原子の持つ運動エネルギーも増大する。この結果、本実施形態における成膜装置100では、成膜処理室3内の不純物の濃度が金属原子の濃度に対して相対的に低下することで、成形品50bに成膜される膜の純度が向上する。さらに、成形品50bに衝突する金属原子の運動エネルギーが大きいことにより、成形品50bを構成する分子と金属原子とが安定的に結合するため、成形品50bに対する密着性がさらに高い膜を成膜することができる。
ターゲット材料32から放出された金属原子は成膜処理室3内を直進するが、成膜処理室3内の不活性ガスとの衝突により、その進行方向が拡散(散乱)される。ただし、従来のスパッタ装置では、金属原子の運動エネルギーが低いため、不活性ガスと衝突し散乱して運動エネルギーを失った金属原子は、成形品に十分な強度で密着することができなかった。このため、成形品に凹凸形状があると、その凹凸形状の側面部分には散乱されて運動エネルギーを失った金属原子しか照射されないため、凹凸形状を有する成形品に均一な成膜を行うことは困難であった。
しかし、本実施形態における成膜装置100では、ターゲット材料32から放出される際の金属原子の運動エネルギーが大きいため、不活性ガスによる散乱後も金属原子は十分な運動エネルギーを有する。従って、成形品50bには、散乱により種々の進行方向を有し、かつ、運動エネルギーの大きな金属原子が照射されるため、凹凸形状を有する成形品50bに対しても、均一な膜を成膜させることが可能である。
凹凸形状を有する成形品に対しても均一な膜を成膜させるためには、成膜処理室3内の圧力は、0.5Paから5Pa程度とすることが好ましい。圧力が0.5Pa以下では、ターゲット材料32から放出される際の金属原子を十分に散乱させることが難しく、5Pa程度以上では、成膜処理室3内の不純物の濃度が高くなり膜の質が低下する恐れがある。
シード層の形成が終了した成形品50bは不図示の搬出機構により成膜処理室3から搬出される。不図示の搬出機構は、ロードロック室を有するものであることが好ましい。成形品50bの搬出時には、プラズマ処理室2と成膜処理室3の間の開閉扉6は閉じておく。
なお、上記の実施形態においては、耐圧チャンバー1内にプラズマ処理室2及び成膜処理室3が設けられ、プラズマ処理室2と成膜処理室3とは、開閉扉を設置した隔壁4で仕切られているものとしたが、耐圧チャンバー1内の構成は、これに限られるものではない。
例えば、隔壁4を廃止してもよい。この場合にも、高密度プラズマ発生源15、第1保持機構23、第2保持機構35、スパッタ電極33等は、耐圧チャンバー1内に配置されることに変わりはない。
あるいは、プラズマ処理室2と成膜処理室3とを別々の耐圧チャンバーで形成することもできる。ただし、この場合には、プラズマ処理室2でプラズマ処理した成形品50aを、大気に晒すことなく成膜処理室3に搬送するために、プラズマ処理室2と成膜処理室3の間に、減圧可能又は不活性ガスによるガス置換が可能な搬送路を設けることが望ましい。なお、この別々の耐圧チャンバーとそれをつなぐ減圧又はガス置換可能な搬送路とは、一体として1つの耐圧チャンバーと解釈することができる。
プラズマ処理室2と成膜処理室3とを、隔壁4を介して、あるいは搬送路を介して別々の処理室とする場合には、それぞれの処理室内の圧力を独立して制御することができる点で好ましい。これにより、プラズマ処理室2でのプラズマ処理と、成膜処理室3での成膜処理を、並列して行うことが可能となり、成膜装置100の処理能力を一層向上させることができる。また、プラズマ処理室2と成膜処理室3との間の相互のコンタミネーションを最小限とすることができるので、成膜される膜の品質を一層向上することができる。
なお、成膜源としては、上述のスパッタ電極33に限らず、蒸着やCVDを行うための成膜源を用いることもできる。膜の材料も、銅等の金属に限らず非金属材料であってもよい。
以上の成膜装置は、上記のような構成により、成膜の前処理として行なうプラズマ処理において、成形品50aが高温化することを防止し、かつ、高反応性化された反応ガスの濃度を高く維持することができるため高い処理能力を発揮することができる。そして、プラズマ処理後の成形品50bを大気に晒すことなく成膜を行うことができるので、成形品50bに対して密着性の良い膜を成膜することができる。
制御装置7は、高密度プラズマ発生源15に第1圧力P1の反応ガスを供給し第1出力E1の電力を印加して第1プラズマ状態を形成した後に、高密度プラズマ発生源15に、第1圧力P1より高い第2圧力P2の反応ガスを供給し第1出力E1の電力より低い第2出力E2の電力を印加して第2プラズマ状態を形成するように、減圧機構(第1減圧ポンプ25)と、ガス供給機構(制御弁18)と、電力供給機構(プラズマ用電源19)とを制御することが好ましい。具体的には、高密度プラズマ発生源15内の密閉空間22内の反応ガスの圧力P、及び高密度プラズマ発生源15に印加する電力Eを、時間の経過と共にそれぞれ図2(a)、図2(b)に示すように制御することが好ましい。そのように制御することで、成膜装置100の処理能力をさらに高めることができる。
制御装置7は、始め(時刻t0)に制御弁18、プラズマ用電源19及び第1減圧ポンプ25を制御して、高密度プラズマ発生源15内に第1圧力P1の反応ガスを供給し、カソード12に第1出力E1の電力を印加して、第1プラズマ状態を形成する。
この第1圧力P1及び第1出力E1は、使用するカソード12の形状等に応じて、効率良くプラズマを形成できる条件に設定することが望ましい。これは、言い換えると、使用するカソード12の形状等を、この第1圧力P1及び第1出力E1に応じて効率良くプラズマを形成できる条件に設定しておくことが好ましいとも言える。
次に、時刻t1から時刻t2において、制御装置7は、制御弁18、プラズマ用電源19及び第1減圧ポンプ25を制御して、高密度プラズマ発生源15内に第1圧力P1より高い第2圧力P2の反応ガスを供給し、第1出力E1の電力より低い第2出力E2の電力を印加して、第2プラズマ状態を形成する。
プラズマ処理の開始時には、高密度プラズマ発生源15内の反応ガスの圧力が高いと、カソード12と対極14との間での放電が発生しにくいため、プラズマを生成することができない。そこで、プラズマ処理の開始時には、高密度プラズマ発生源15内の反応ガスの圧力を比較的低圧の第1圧力P1とすることで放電を発生させ、プラズマを生成する。プラズマが発生した後は、電荷を有するプラズマや電子により放電が継続し易くなるため、制御装置7は、高密度プラズマ発生源15内の反応ガスの圧力を第1圧力P1より高い第2圧力P2とする。これにより、高密度プラズマ発生源15から高濃度のプラズマを発生させることができる。
以上の構成により、成形品50aを、より多量の高反応性化された反応ガスに晒すことができ、処理能力をさらに向上することができる。
なお、上記の第1圧力P1は、例えば、0.5Pa以上、3Pa以下の圧力であることが好ましい。0.5Paより低圧であると、初期のプラズマの濃度が薄くなり、安定した放電を維持することが難しくなる。一方、3Paより高圧であると、放電を行うことが難しくなる。
また、上記の第2圧力P2は、例えば、10Pa以上、50Pa以下の圧力であることが好ましい。10Paより低圧であると、プラズマの濃度が薄くなり高い処理能力を発揮することが難しくなる。一方、50Paより高圧であると、放電を維持することが難しくなる。
なお、第1プラズマ状態の形成時にカソード12に印加する電力である第1出力E1は、カソード12の単位面積当たり、2W/cm以上、5W/cm以下であることが好ましい。
第1出力E1が2W/cmより小さいと、高密度プラズマ発生源15内で放電を発生させプラズマを形成することが困難になる。一方、第1出力E1が5W/cmより大きいと、高密度プラズマ発生源15内で異常放電が発生する恐れがある。
また、第2プラズマ状態の形成時にカソード12に印加する電力である第2出力E2は、カソード12の単位面積当たり、0.5W/cm以上、2W/cm以下であることが好ましい。
第2出力E2が0.5W/cmより小さいと、高密度プラズマ発生源15内での放電及びプラズマ形成を維持することが困難になる。一方、第1出力E1が2W/cmより大きいと、高密度プラズマ発生源15内で異常放電が発生する恐れがある。
なお、上記の成膜装置において、カソード12から成形品50aまでの距離dは、100mm以上、250mm以下であることが好ましい。この距離dが、100mmより短いと成形品50aが高温化してしまう恐れがあり、250mmより長いとプラズマの濃度が薄くなり高い処理能力を発揮することが難しくなる。
また、プラズマ用電源19は、カソード12に印加する電力を、少なくとも2段階に切り替え可能な可変出力電源であってもよい。
また、プラズマ処理室2内で成形品50aを保持する第1保持機構23、及び成膜処理室3内で成形品50bを保持する第2保持機構35の少なくとも一方は、成形品50a,50bへの処理が均一になるように、処理中に成形品50a、50bを回転させる回転機構を有していてもよい。
また、第1保持機構23は、プラズマ処理室2内の、高密度プラズマ発生源15と反対側の側面29に設けてもよい。
なお、耐圧チャンバー1内を減圧する機構は、上述の第1減圧ポンプ25、第2減圧ポンプ36に限らず、例えば、減圧用配管26、37に、調圧弁を介して真空等の低圧が供給される工場用力配管を接続したものであってもよい。この場合には、制御装置7は、調圧弁に対して開閉指令を行うことにより、プラズマ処理室2及び成膜処理室3内の圧力を制御する。
次いで、以上の成膜装置を使用して実行されるステップAについて、図1及び図2を参照して説明する。
上記の通り、本実施形態におけるステップAは、(a)耐圧チャンバー1内に設置されている、電子密度が1×1010cm-3以上で電子温度が10eV以下のプラズマを形成可能な高密度プラズマ発生源15に対しカソード12及び対極14とは反対側に離れた位置に成形品50aを配置する工程、(b)耐圧チャンバー1内を減圧する工程、(c)高密度プラズマ発生源に反応ガスを供給し、電力を印加してプラズマ状態を形成しつつ、成形品50aを反応ガスに晒す工程、及び(d)反応ガスに晒した成形品50a、すなわち50bを大気に晒すことなく、成形品50bにシード層を形成する工程、を含んでいる。
また、本実施形態におけるステップAの工程(c)において、成形品に晒す反応ガスをさらに高反応性化するため、高密度プラズマ発生源15への反応ガスの供給及びプラズマ状態の形成を、下記工程(e)及び工程(f)により行うことが好ましい。すなわち、工程(e)高密度プラズマ発生源15に第1圧力P1の反応ガスを供給し第1出力E1の電力を印加して第1プラズマ状態を形成する工程、工程(f)第1プラズマ状態が形成された高密度プラズマ発生源15に、第1圧力P1より高い第2圧力P2の反応ガスを供給し第1出力E1より低い第2出力E2の電力を印加して第2プラズマ状態を形成する工程、である。
(成形品の搬入)
耐圧チャンバー1内のプラズマ処理室2に設置されている上述の高密度プラズマ発生源15に対し、カソード12及び対極14とは反対側に離れた位置に、成形品50aを配置する。このとき、カソード12から成形品50aまでの距離を、距離dとする。
プラズマ処理室2内に成形品50aを搬入する際には、プラズマ処理室2と成膜処理室3の間の開閉扉6は閉じておく。
(プラズマ処理室内の減圧)
プラズマ処理室2内を、減圧機構としての第1減圧ポンプ25及び減圧用配管26により、減圧する。このとき、第1減圧ポンプ25は制御装置7からの制御信号S3により制御される。
なお、プラズマ処理室2に、上述のように不図示のロードロック室及び搬入機構が設けられている場合には、このプラズマ処理室2内の減圧は、上述の成形品の配置よりも、前に行われることになる。
(反応ガスの供給〜プラズマ処理)
反応ガス供給器17から反応ガス供給管16を介して高密度プラズマ発生源15内に反応ガスを供給する。その後、上述のように、高密度プラズマ発生源15に電力を印加してカソード12と対極14の間で放電を発生させ、放電により生じた電子が反応ガスをプラズマ化してプラズマ処理をする。上記の通り、反応ガスをさらに高反応性化するため、高密度プラズマ発生源15への反応ガスの供給及びプラズマ状態の形成を、上記工程(e)及び工程(f)により行うことが好ましい。すなわち、以下に示す第1プラズマ状態及び第2のプラズマ状態を形成することが好ましい。
<第1プラズマ状態の形成>
反応ガス供給器17から反応ガス供給管16を介して高密度プラズマ発生源15内に反応ガスを供給後、プラズマ用電源19からカソード12に電力を印加することで、電子密度が1×1010cm-3以上で電子温度が10eV以下のプラズマを形成可能である。
図2(a)は、プラズマ発生源15内の反応ガスの圧力Pの時間変化を示す図であり、図2(b)は、カソード12に印加する電力Eの時間変化を示す図である。
第1プラズマ状態の形成開始時(時刻t0)に、制御装置7は、制御信号S1により反応ガス供給器17内に設けられた制御弁18の開度を調整し、高密度プラズマ発生源15内の反応ガスの圧力を第1圧力P1になるように設定する。制御装置7は、制御信号S2によりプラズマ用電源19を調整し、カソード12に第1出力E1の電力を印加する。これにより、カソード12と対極14の間に放電が発生し、高密度プラズマ発生源15に第1プラズマ状態が形成される。
この第1圧力P1及び第1出力E1は、使用するカソード12の形状等に応じて、効率良くプラズマを形成できる条件に設定することが望ましい。これは、言い換えると、使用するカソード12の形状等を、この第1圧力P1及び第1出力E1に応じて効率良くプラズマを形成できる条件に設定しておくことが好ましいとも言える。
<第2プラズマ状態の形成>
上述のように第1プラズマ状態が形成された後、時刻t1において制御装置7は制御弁18に、開度を開き(大きくし)高密度プラズマ発生源15内の反応ガスの圧力Pを上述の第1圧力P1より高い第2圧力P2に設定する制御信号S1を送る。同時に、制御装置7は、プラズマ用電源19にカソード12に印加する電力Eを、上述の第1出力E1より低い第2出力E2に低下させる制御信号S2を送る。
これにより、時刻t2において、高密度プラズマ発生源15内の反応ガスの圧力Pは第2圧力P2となり、カソード12に印加する電力は第2出力E2に設定される。
なお、高密度プラズマ発生源15内にプラズマが形成されていない状態では、この第2圧力P2及び第2出力E2の条件では、第2圧力P2が高過ぎるために放電が発生せず、高密度プラズマ発生源15内に新たにプラズマが形成されることはない。しかし、既に第1プラズマ状態が形成されており、高密度プラズマ発生源15内にプラズマ及び電子が存在するため、高い第2圧力P2の下でも放電を持続でき、高密度の第2プラズマ状態を形成することができる。
上記の第1プラズマ状態及び第2プラズマ状態で生成されたプラズマ状態の反応ガス及び活性化状態(ラジカル状態)の反応ガスからなる高反応性化された反応ガスに成形品50aを晒すことにより、成形品50aのプラズマ処理を行う。
そして、時刻t3において制御装置7は、高密度プラズマ発生源15内への反応ガスの供給を停止又は供給量の削減を行うとともに、カソード12への電力の印加を中止し、プラズマ処理を終了する。
(成形品の搬送)
プラズマ処理された成形品50aは、搬送機構30により、プラズマ処理室2から成膜処理室3に搬送される。搬送に先立って、プラズマ処理室2と成膜処理室3の間の開閉扉6が開けられ、搬送後には開閉扉6は閉められる。
成形品50aは、成膜処理室3内の第2保持機構35に保持される。搬送され、成膜処理室3内の第2保持機構35に保持された成形品50aを、成形品50bと呼ぶ。
(シード層の形成)
不活性ガス供給器38から不活性ガス供給管41を介して成膜処理室3内に不活性ガスを供給するとともに、スパッタ用電源34からスパッタ電極33に電力を供給することで、成形品50bに対してスパッタリングしてシード層を形成する。
スパッタリングに際して、スパッタ用電源34からスパッタ電極33に10kW以上、より好ましくは30kW以上の電力が供給される。また、第2減圧ポンプ36の排気出力又は制御弁39の開度を調整して、成膜処理室3内の圧力を0.5Paから5Paの範囲に設定することが好ましい。
成膜(シード層の形成)が終了した成形品50bは、成膜処理室3から搬出される。この搬出を、不図示の搬出機構により行うこともできる。また、不図示の搬出機構はロードロック室を有していてもよい。
なお、上記の実施形態においては、共に耐圧チャンバー1内にあって隔壁4で仕切られているプラズマ処理室2及び成膜処理室3において、それぞれプラズマ処理とシード層の形成(スパッタリング)を行うとしたが、各処理を行う場所はこれに限られるものではない。
例えば、隔壁4のない耐圧チャンバー1内でプラズマ処理とシード層の形成を行ってもよい。
あるいは、プラズマ処理とシード層の形成とを別々の耐圧チャンバー内で行うこともできる。この場合には、プラズマ処理室2でプラズマ処理した成形品50aを、大気に晒すことなく成膜処理室3に搬送するために、プラズマ処理室2と成膜処理室3の間に、減圧可能又は不活性ガスにガス置換可能な搬送路を設けることが好ましい。
上記の実施形態においては、成膜はスパッタリングにより行うものとしたが、これに限らず、蒸着やCVD等を用いて成膜を行うこともできる。
本実施形態においては、以上のような構成としたので、成形品50aが高温化することを防止し、かつ、高反応性化された反応ガスの濃度を高く維持することができるため高い処理能力を発揮することができる。そして、プラズマ処理後の成形品50a、すなわち50bを大気に晒すことなく成膜を行うことができるので、成形品50bに対して密着性の良いシード層を形成することができる。
以上の処理手順は、予め制御装置7に格納したプログラムを実行して行うことができる。あるいは、制御装置7にシーケンス回路を実装して行うこともできる。
なお、第1圧力P1、第2圧力P2、第1圧力P1の継続時間、第1出力E1、第2出力E2等を、成形品に応じて設定変更するように構成することが好ましい。
本実施形態において、上述のプラズマ処理で使用する反応ガスは、一例として酸素とすることができる。
上述した通り、本実施形態におけるプラズマ処理方法は、プラズマ状態の反応ガスのみでなく、活性化状態(ラジカル状態)の反応ガスをも使用して、成形品50aのプラズマ処理を行うことができる特徴を有する。従って、本実施形態におけるプラズマ処理方法での反応ガスとして、ラジカル状態において強力な反応性を有する酸素を使用することで、プラズマ処理の効率を一層向上させることができる。
なお、反応ガスは、窒素とすることもできる。
本実施形態において、成形品の材料たるPAS樹脂は耐熱性が高い樹脂として知られているが、上述の通り、PAS樹脂といえども従来のプラズマ処理における高温には耐えることができない。しかし、本実施形態においては、上述の通り、成形品50aの高温化を防止できるので、PAS樹脂が受けるダメージを抑えることができる。
なお、上述の成膜方法の実施形態において、第2プラズマ状態の継続時間(時刻t2から時刻t3までの時間)は、第1プラズマ状態の継続時間(時刻t0から時刻t1までの時間)の、10倍以上であることが好ましい。
第2プラズマ状態は、第1プラズマ状態よりも、高い濃度の高反応性化された反応ガスを生成することができるので、第2プラズマ状態を長くすることで、より効率の良い、すなわち生産性の高い成膜方法を実現できる。
上述の成膜方法の実施形態の中のスパッタリング(成膜)処理においては、スパッタ電極33に対して、スパッタ用電源34から10kW以上、さらに好ましくは30kW以上の電力を投入することにより、通常程度の電力(数kW)を投入する場合に比べ、ターゲット材料32から放出される銅等の金属原子の量が増大するとともに、金属原子の持つ運動エネルギーを増大させることができる。その結果、上述の通り、純度が高く、かつ、成形品50bとの密着性の高いシード層を形成することができる。
さらに、成膜(スパッタリング)処理時の成膜処理室3内の圧力を、0.5〜5Pa程度とすることができる。
従来のスパッタリング処理においては、このような低真空下で成膜を行うと、膜内に不純物が混入して膜の品質が低下する恐れがあった。また、成形品50bが樹脂の場合、成形品50bからのアウトガスにより、成膜時の圧力を0.5Pa程度以下に減圧することは難しかった。
しかし、スパッタ電極33に10kW以上の大電力を投入することにより上述の通り膜内への不純物の混入が防止されるので、0.5〜5Pa程度の圧力下でも、純度が高く、かつ、成形品50bとの密着性の高いシード層を形成することができる。
さらに、成膜(スパッタリング)処理時の成膜処理室3内の圧力を、0.5〜5Pa程度とすることにより、上述の通り凹凸形状を有する成形品50bに対しても均一な膜厚のシード層を形成することができる。
また、成形品50aを保持する第1保持機構23、及び成形品50bを保持する第2保持機構35に成形品50a、50bを回転させる回転機能を持たせ、成形品50a,50bの処理が均一になるように、処理中に成形品50a,50bを回転させてもよい。
次いで、図3を参照して、成形品に対するプラズマ処理からシード層の形成までについて説明する。
図3(a)は、成形品50のおもて面50cに対して、上述のプラズマ処理を行っている状態を表す。酸素ラジカルO*によるプラズマ処理は、図1に示した成膜装置100のプラズマ処理室2内で行う。成形品50は一例としてPAS樹脂からなる基板であり、おもて面50cと裏面50dをつなぐ貫通孔50hが複数形成されている。
次に、成形品50を反転させ、図3(b)に示す通り、裏面50dをプラズマ処理する。酸素ラジカルO*は、成形品50のおもて面50c及び裏面50dのみでなく、貫通孔50hの内側面にも照射され、これらの部分を活性化する。
その後、成形品50を、図1に示した成膜装置100のプラズマ処理室2から成膜処理室3に移動させ、図3(c)に示す通り、おもて面50cに対して、スパッタリングにより銅(Cu)等の金属を成膜し、シード層を形成する。上述の実施形態のスパッタリングにおいては、成形品50には、散乱により種々の進行方向を有し、かつ、運動エネルギーの大きな銅原子が照射されるため、貫通孔50hの内側面にも、高い密着性をもって金属を成膜させることができる。
次に、成形品50を反転させ、図3(d)に示す通り、裏面50d及び貫通孔50hの内側面に、金属を成膜する。
プラズマ処理及び成膜処理における、おもて面50cと裏面50dの処理順は、それぞれ上述の順とは逆であってもよい。
以上の工程により、図3(e)に示す通り、成形品50のおもて面50c、裏面50d、及び貫通孔50hの内側面には、シード層(シード層51c、51d)が成形品50と高い密着性をもって形成される。図3(e)に示す成形品50及びシード層51c、51dの状態を、シード層付成形品60と呼ぶ。
シード層51c、51dの金属膜の厚さは、100〜500nm程度であることが好ましい。100nmより薄い場合には電気抵抗が大きくシード層としての機能が十分に得られない恐れがあり、500nmより厚い場合には成膜に時間を要し、製造コストが上昇する問題がある。
また、貫通孔50hの直径は、おもて面50c及び裏面50dにおいて20〜50μmとし、おもて面50cと裏面50dとの中間部分においては、15〜20μmとする。すなわち、おもて面50c及び裏面50d付近では内径が大きく、内部では内径を相対的に小さくすることが好ましい。
以上の実施形態では、成形品50のおもて面50c、裏面50d、及び貫通孔50hの内側面の全ての部分にシード層(シード層51c、51d)を形成するとしているが、これに限られるものではない。例えば、成膜処理に先立って、成形品50の表面(おもて面50c、裏面50d)の一部をマスキングすることで、マスキングした部分にはシード層51c、51dを形成せず、それ以外の面にシード層51c、51dを形成するようにしてもよい。
また、形成するシード層51c、51dの材料としては、銅に限らず、銅を含む合金や、アルミニウム、クロム、ニッケル等の他の金属及びそれらを含む合金であってもよい。
以上の構成により、成形品50の表面上に、密着性の高いシード層を形成することができる。
[ステップB]
ステップBにおいては、シード層を形成した成形品の表面の少なくとも一部に、電解めっき又は無電解めっきにより金属をめっきする。以下、図4を参照して電解めっきの工程について説明する。
本実施形態において、電解めっきの工程は、上述のように形成されたシード層付成形品60に対して、そのシード層51c、51dの表面の少なくとも一部に、電解めっきにより金属をめっきするものである。
図4(a)は、この電解めっきの工程を表す図であり、シード層付成形品60は電解めっき装置45の電解液46中に浸され、シード層51c、51dの表面には、電源47に接続されている導線49aが接続されている。電解液46中には、対向電極48が設置されており、対向電極48には、電源47に接続されている導線49bが接続されている。
電解液46は一例として銅イオンを含み、導線49aに導線49bよりも所定の電位差だけ低い電位を印加することにより、シード層付成形品60のシード層51c、51dの表面に銅が析出して、電解めっきが行われる。対向電極48としては、一例として銅板を使用する。電解液46は貫通孔50hの内部にも浸透し、また貫通孔50hの内側面にもシード層が形成されているので、貫通孔50hの内部にも銅がめっきされる。
なお、めっき工程に際しても、事前にシード層51c、51dの表面の一部をマスキングすることにより、シード層51c、51dの表面に部分的にめっきを施すこともできる。
図4(b)に、めっき工程が終了した完成品70を示す。
成形品50のおもて面50c、裏面50dの少なくとも一部には、銅めっき層(めっき層)52c、52dが形成され、複数の貫通孔50hの少なくとも一部にもめっきにより銅52eが充填されている。なお、図4(b)では、シード層51c、51dは図示を省略している。
以上の構成により、成形品50の表面上に、密着性の高いめっき層を形成することができる。
なお、以上はめっきする金属を銅としたが、銅の他に、ニッケル、チタン、チタン銅系合金とすることもできる。
また、以上は電解めっきにより金属をめっきする工程について説明したが、無電解めっきにより金属をめっきしてもよい。無電解めっきを採用すれば、シード層の材料は導体でなくてもよい。
めっき方法は、電解めっき及び無電解めっきのどちらでもよいが、環境負荷が低いことや工程数が少ないこと等の観点から、特に電解めっきが好ましい。
上記では、本実施形態において、種々の内容を説明したが、以上の内容に限定されるものではない。また、各実施形態は、それぞれ単独で適用してもよいし、組み合わせて用いてもよい。
<ポリアリーレンスルフィド樹脂成形品>
本実施形態のPAS樹脂成形品は、上述の本実施形態のPAS樹脂成形品に対するめっき方法により、表面に金属がめっきされてなる。
本実施形態のPAS樹脂成形品は、本実施形態のPAS樹脂成形品に対するめっき方法によりめっきされているため、当該成形品はめっき層の密着層が高いし、熱によるダメージを受けていない。そのため、PAS樹脂成形品の本来の性質が保たれており、かつ、めっき層が剥離し難い。
本実施形態のPAS樹脂成形品の用途としては、特に制限はなく、金属装飾を目的としたり、金属部材の代替品として使用したり、電磁波シールド材として使用したりすることができる。
以下に、実施例により本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜3、比較例1〜3]
各実施例・比較例において、下記表1に示す各原料成分を、シリンダー温度320℃の二軸押出機の原料供給部(ホッパー)より投入し(ガラス繊維は押出機のサイドフィード部より別添加)、押出量30kg/Hr、スクリュー回転数250rpmの条件で溶融混練し、ペレット化した。
Figure 2020117785
(1)PAS樹脂成分
・PPS樹脂1:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:28Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃))
・PPS樹脂2:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:130Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃))
・PPS樹脂3:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:220Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃))
(PPS樹脂の溶融粘度の測定)
上記PPS樹脂の溶融粘度は以下のようにして測定した。
東洋精機製作所製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmLのフラットダイを使用し、バレル温度310℃、せん断速度1200sec−1での溶融粘度を測定した。
(2)オレフィン系樹脂
・オレフィン系共重合体:日油(株)製、モディパーA4300(エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体70質量部にメチルメタクリレート/ブチルアクリレート共重合体30質量部をグラフト重合させた共重合体、上記エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体におけるグリシジルメタクリレート由来の構成単位含有量:15質量%)
・ポリオレフィン:ダウ・ケミカル日本(株)製、Engage8440(エチレンオクテン共重合体)
(3)無機フィラー
・ガラス繊維:日本電気硝子(株)製、ECS03T717、繊維径13μm、長さ3mm
・炭酸カルシウム:東洋ファインケミカル(株)製、ホワイトン P−30、平均粒子径(50%d):5μm
得られた各実施例及び比較例のペレットを用い、射出成形機(株)日本製鋼所製J180ADにより、100mm×100mm×3mmの平板状の成形品を得た。
得られた実施例1及び各比較例の成形品を図1に示す成形機の第1保持機構23に保持させた。次いで、プラズマ処理、スパッタリングによるシード層の形成を順次行った。プラズマ処理条件及びシード層の形成条件は以下の通りである。なお、プラズマ処理時において成形品が晒された温度は最高で260℃であった。また、カソードから成形品までの距離dは180mmであった。
(プラズマ処理条件)
反応ガス:酸素
(1)第1プラズマ状態
第1圧力:0.5Pa以上10Pa以下
処理時間(t0〜t1):10秒以下
(2)第2プラズマ状態
第2圧力:10Pa以上50Pa以下
処理時間(t1〜t2):300秒以下
(シード層の形成条件(スパッタリングの条件))
ターゲット材料:銅
シード層の厚み:300nm
成膜処理室の圧力:0.5Pa以上10Pa以下
スパッタ電極に対する投入電力:40kW以下
上記のようにして成形品に対してシード層を形成した後、図4に示す電解めっき装置45を用いて電解めっきを行い、めっき層を形成した。以下に電解めっきの条件を示す。
(電解めっきの条件)
電解液:硫酸銅めっき液
めっき層の厚み:20μm
(電解めっきのフロー)
シード層を形成した成形品を、純水洗浄(シャワー)した。このとき、脱脂・酸化膜除去は行わなかった。次いで、ブロー乾燥した後、以下に示す電解めっき処理により硫酸銅めっき液を用いて電解めっきを行った。電解めっき終了後、電源をオフにし、その後直ちに純水により成形品を洗浄した。
(硫酸銅めっき液を用いた電解めっき処理)
成形品を、導線を介して電源に接続した状態で、硫酸銅めっき液が満たされた電解めっき装置に投入する。そして、電源をオンにして通電し、1〜5Vの電圧を印加する。電圧を印加した状態で、10分間に10%ずつ電流を上昇させる。具体的には、最初の10分は10%、10〜20分は20%、…90〜100分は100%とする。
[評価]
(1)密着性
得られた成形品のめっき層の密着力を、JIS H8630:2006の付属書1(規定)密着力試験方法に従って測定した。そして、3N/cm以上の場合を「○」とし、3N/cm未満の場合を「×」として評価した。評価結果を表1に示す。
(2)外観
得られた成形品について、熱によるダメージの有無を目視観察した。いずれも、変形等の熱劣化は見られず、熱によるダメージを受けていなかった。
表1より、オレフィン系樹脂を含む成形品を用いた実施例1〜3は高い密着性が得られたことが分かる。しかも、成形品が高温に晒されないプラズマ処理をしていることから、成形品の熱劣化が見られなかった。すなわち、本実施形態のめっき方法によると、熱によるダメージが抑制でき、かつ、高い密着性を有するめっき層の形成が可能であることが分かる。
成形品を構成する樹脂組成のみが実施例1とは異なる比較例1〜3においては、熱劣化は見られなかったがいずれも密着性に劣っていた。すなわち、密着性を向上させるにはプラズマ処理のみでは不十分であり、成形品を構成する樹脂組成を考慮する必要があることが分かる。
100:成膜装置、1:耐圧チャンバー、2:プラズマ処理室、3:成膜処理室、7:制御装置、12:カソード、14:対極、15:高密度プラズマ発生源、16:反応ガス供給管、17:反応ガス供給器、18:制御弁、19:プラズマ用電源、23:第1保持機構、25:第1減圧ポンプ、33:プラズマ電極、34:スパッタ用電源、35:第2保持機構、36:第2減圧ポンプ、50,50a,50b:成形品、51c,51d:シード層、52c,52d:金属めっき層

Claims (6)

  1. 以下のステップA及びステップBを含む、ポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対するめっき方法。
    ステップA:ポリアリーレンスルフィド樹脂と、オレフィン系樹脂とを含む樹脂組成物からなる成形品の表面に、下記工程(a)〜(c)によりプラズマ処理を施した後、下記工程(d)によりシード層を形成する。
    (a)耐圧チャンバー内に設置されている、カソード及び前記カソードに対向して配置されている対極を含む、電子密度が1×1010cm-3以上で電子温度が10eV以下のプラズマを形成可能な高密度プラズマ発生源に対し、前記カソード及び前記対極とは反対側に離れた位置に前記成形品を配置する。
    (b)前記耐圧チャンバー内を減圧する。
    (c)前記高密度プラズマ発生源に反応ガスを供給し、電力を印加してプラズマ状態を形成しつつ、前記成形品を前記反応ガスに晒す。
    (d)前記反応ガスに晒した前記成形品を大気に晒すことなく、前記成形品にシード層を形成する。
    ステップB:シード層を形成した前記成形品の表面の少なくとも一部に、電解めっき又は無電解めっきにより金属をめっきする。
  2. 前記ステップAの工程(c)において、前記高密度プラズマ発生源への反応ガスの供給及びプラズマ状態の形成を、下記(e)及び(f)の工程により行う、請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対するめっき方法。
    (e)前記高密度プラズマ発生源に、第1圧力の反応ガスを供給し、第1出力の電力を印加して、第1プラズマ状態を形成する。
    (f)前記第1プラズマ状態が形成された前記高密度プラズマ発生源に、前記第1圧力より高い第2圧力の反応ガスを供給し、前記第1出力の電力より低い第2出力の電力を印加して、第2プラズマ状態を形成する。
  3. 前記樹脂組成物における前記オレフィン系樹脂の含有量が、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部である、請求項1又は2に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対するめっき方法。
  4. 前記樹脂組成物がさらに無機フィラーを含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対するめっき方法。
  5. 前記無機フィラーが繊維状無機フィラーである、請求項4に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対するめっき方法。
  6. 前記無機フィラーが、繊維状無機フィラーと、板状無機フィラー及び/又は粉粒状無機フィラーとの組合せからなる、請求項4に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂成形品に対するめっき方法。
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