JP2018012421A - 車体の補強構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】サイドシル5と、このサイドシル5の連結壁部5aに長手方向一側端部が連結された前側クロスメンバ13と、サイドシル5の接続壁部5bに長手方向一側端部が接続され且つ強化材を含有する合成樹脂製の帯板材20とを備え、帯板材20は、長手方向一側端部が前側クロスメンバ13のうちのその軸心に平行な複数の壁部のうち連結壁部5aに連結壁部13aを軸心方向に延長した延長面P1と接続壁部5bとが交差する交差部X1またはその近傍領域を含む第1接続領域A1に接続され且つ長手方向他側端部が連結壁部13a及び延長面P1を除いた第2接続領域A2に接続されている。
【選択図】 図5
Description
特に、車室の底面を形成するフロアパネルは、車幅方向中間部分に車室内に突出して前後方向に延びるトンネル部が設けられているため、トンネル部を形成しない平板構造に比べて剛性が低下し、上下に変位する膜振動が増加する要因になっていた。
このフロアパネルの振動増加は、車室騒音を招くことから、乗り心地性能が低下する虞があった。
この炭素繊維樹脂は、炭素繊維が強度等の力学的特性を分担し、母材樹脂(マトリックス)が炭素繊維間の応力伝達機能と繊維の保護機能を分担しているため、繊維方向と非繊維方向(負荷の掛かる方向)によって物性が大きく異なる異方性材料である。
これらの知見を踏まえて、本出願人は、炭素繊維樹脂を車体補強部材として用いた技術を提案している。
これにより、外部からの騒音を遮音するアンダカバーを構成しながら、アンダカバー自体に発生する膜振動を減衰している。
特許文献2の車体補強構造は、炭素繊維が長手方向に配列された状態で組み込まれた炭素繊維樹脂製の複数の帯板材の長手方向の両端部が、フロアパネルの下部で且つ前後方向及び車幅方向に離隔して配設された車体側連結部に夫々連結されている。
これにより、車体全体に発生する振動減衰を図っている。
その後、蓄積された歪エネルギー(剪断歪)は、運動エネルギーに再び変換される。このとき、歪エネルギーの一部が熱エネルギーに変換され、散逸される。
それ故、帯板材内部に蓄積される歪エネルギーを増大させることで、散逸される熱エネルギーを増加し、結果的に、車両の振動減衰能を増加することができる。
図13に、捩りモーメントが作用する前の炭素繊維樹脂の部分拡大図を示し、図14に、捩りモーメントが作用した後の炭素繊維樹脂の部分拡大図を示す。
図13,図14に示すように、特許文献2の車体補強構造は、帯板材にフロアパネルの振動エネルギーに基づく捩りモーメントが作用したとき、炭素繊維Cが夫々独立して捩れ変形するため、炭素繊維C間に存在する母材Mに剪断変形が生じるものの、炭素繊維C間の母材Mが微小量であることから、炭素繊維C間の母材Mに剪断歪が増加し、これに伴って母材M内に蓄積される歪エネルギーが増加されている。
しかし、特許文献2の技術では、帯板材の振動減衰能力を更に高めることができる余地がある。
帯板材の捩り変形は、歪エネルギーとして帯板材の内部に蓄積され、この蓄積された歪エネルギーは運動エネルギーと熱エネルギーに順次変換されることから、結果的に、車体振動の減衰に寄与している。
一方、帯板材の曲げ変形は、帯板材の内部に歪エネルギーとして蓄積されるが、エネルギーを散逸させる樹脂には蓄積されにくいため、効率が悪く車体の振動減衰への寄与度が低い。
帯板材の長手方向他側端部が、前記第2連結壁部及び第1延長面を除いた第2接続領域に接続されているため、第1接続領域の変形角度を帯板材の捩り変形に変換することができ、帯板材に蓄積される歪エネルギーを増加することができる。
この構成によれば、帯板材の振動減衰能力を高めつつ、帯板材の長手方向の車体剛性を高くすることができる。
この構成によれば、簡単な構成で振動低減と剛性向上とを両立することができる。
この構成によれば、第1接続領域を第1接続壁部のうち変形角度が最も大きな領域に設定することができる。
この構成によれば、第3接続壁部のうち変形角度が大きな第2接続領域に帯板材の他側端部を接続することができ、帯板材の振動減衰能力を一層高くすることができる。
この構成によれば、下部車体構造の振動減衰を図ることができる。
以下の説明は、本発明を車両の下部車体構造に適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
尚、図において、矢印Fは前方を示し、矢印Lは左方を示し、矢印Uは上方を示すものとして説明する。
まず、車両Vの全体構成について説明する。
図1〜図3に示すように、車両Vは、モノコック式ボディで構成され、車室Rの底面を形成するフロアパネル1(パネル部材)と、このフロアパネル1の前端部分から上方へ立ち上がるように形成され且つエンジンルームEと車室Rとを仕切るダッシュパネル2と、このダッシュパネル2から前方に延びる左右1対のフロントサイドフレーム3と、フロアパネル1の後端側部分から後方に延びる左右1対のリヤサイドフレーム4と、左右1対の構造体S等を備えている。
図1〜図4に示すように、フロアパネル1は、平面視にて略矩形状に形成され、車幅方向中央部分に、前後に延び且つ車室Rに向けて突出したトンネル部10を備えている。
トンネル部10の左右両端部には、前後に延びる左右1対のトンネルサイドフレーム11(第3フレーム部材)が設けられ、このトンネルサイドフレーム11はフロアパネル1の下面及びトンネル部10の側面と協働して略平行状に前後に延びる断面略矩形状の閉断面を構成している。
このフロアフレーム12は、後側程車幅方向外側に移行するように配設され、フロアパネル1の下面と協働して前後に延びる断面略矩形状の閉断面を構成している。
フロアフレーム12の前端部は、フロントサイドフレーム3の後端部に連結され、後端部はリヤサイドフレーム4の前端部に連結されている。
サイドシル5及びトンネルサイドフレーム11の閉断面内には、後述する帯板材20を固定するためのナットnが夫々収容され、各々の接続壁部5b(第1接続壁部)の取付穴5c及び接続壁部11b(第3接続壁部)の取付穴11cに対応するように溶接にて固着されている。
後側クロスメンバ14は、クロスメンバ13に略平行状に配設され、センタピラー7に対応する位置に配置されている。
前側クロスメンバ13の車幅方向外側端部に対応したサイドシル5(接続壁部5b)の取付穴5cと後側クロスメンバ14の車幅方向内側端部に対応したトンネルサイドフレーム11(接続壁部11b)の取付穴11cとを対角線状(逆ハ字状)に連結する左右1対の帯板材20が夫々設けられている。
1対の長尺状の帯板材20は、炭素繊維を強化材とした炭素繊維樹脂(CFRP)を成形(例えばホットプレス等)することによって形成されている。
炭素繊維は、帯板材20の長手方向の一端から他端に亙って連続して長手方向に一様に延びる単繊維(フィラメント)が所定数(例えば12k)束ねられた繊維束(トウ)で構成されている。炭素繊維の単繊維の直径は、例えば7〜10μmである。第3ブレース部材20の母材には、例えば熱硬化性エポキシ系合成樹脂が使用されている。
図4に示すように、1対の帯板材20は、板状部材16に挿通されたボルトbをナットnに締結することにより、車幅方向外側端部が板状部材16と接続壁部5bに挟持され、車幅方向内側端部が板状部材16と接続壁部11bに挟持されている。
以上により、フロアパネル1と、サイドシル5と、1対のクロスメンバ13,14と、帯板材20とは、下部車体構造の振動減衰機能を備えた左右1対のロ字状構造体Sを構成している。
尚、1対の構造体Sは、左右対称構造であるため、右側構造体Sについて主に説明する。
また、以下、理解を容易にするため、各部材をモデル化して表している。
図5,図6に示すように、平面視にて矩形状の構造体Sには、前側右端部の第1接続領域A1に形成された取付穴5cと後側左端部の第2接続領域A2に形成された取付穴11cとに帯板材20の長手方向両端部がボルトbにて夫々締結固定されている。
取付穴5cは、交差部X1上で且つ接続壁部5bの左右中間部に形成されている。
同様に、第2接続領域A2は、連結壁部11aに臨む後側クロスメンバ14の連結壁部14a(第4連結壁部)を右方に延長した延長面P2(第2延長面)と接続壁部11bとが交差する交差部X2(第2交差部)及びその近傍領域を含むように設定されている。
取付穴11cは、交差部X2上で且つ接続壁部11bの左右中間部に形成されている。
作用、効果の説明に当り、前後2対のサスペンションを振動入力源とした通常直線走行時の構造体S及び構造体Sから帯板材20を省略した構造体Saの変形挙動についてCAE(Computer Aided Engineering)による2種類の解析を行った。
尚、解析の前提条件として、サイドシル5とトンネルサイドフレーム11の軸心方向寸法を600mm、前側及び後側クロスメンバ13,14の軸心方向寸法を500mmに規定し、何れも同一断面形状に形成している。帯板材20については、縦寸法を4mm、横寸法を40mm、長手方向寸法を850mmに設定し、炭素繊維や母材は前述した仕様に設定されている。
図7に示すように、第1の解析では、接続壁部5bの前端から長手方向(後方)に離隔した長手方向距離D毎に水平面に対する接続壁部5bの傾斜角度を変形角度として算出した。左方への接続壁部5bの傾斜をマイナス、右方への接続壁部5bの傾斜をプラスとして検出している。
図8に示すように、構造体Saに車体変形に起因した変位が生じたとき、接続壁部5bの前端側部分は、左方に対向するよう(マイナス側)に傾斜し、接続壁部5bの後端側部分は、右方に対向するよう(プラス側)に傾斜した。
図9に示すように、距離Dがαのとき、マイナス側の最大変形角度になり、距離Dがβのとき、プラス側の最大変形角度になっている。
ここで、α地点は、連結壁部5aと連結壁部13aとの接合位置であり、β地点は、連結壁部11aと連結壁部14aとの接合位置である。
一方、前側クロスメンバ13の連結壁部13aに平行な前側壁部に上向きの剪断力τbが作用したとき、相対的に連結壁部13aには下向きの剪断力τbが作用する。
それ故、α地点には、下向きの剪断力τa及び下向きの剪断力τbの合力として下向きの剪断力(τa+τb)が作用するため、α地点におけるサイドシル5の断面形状が変形し、接続壁部5bのα地点における変形角度が最大値になる。
尚、前側クロスメンバ13については、連結壁部5aの前端側部分が節機能を発揮しているため、α地点における前側クロスメンバ13の断面形状の変形が抑制されている。
トンネルサイドフレーム11の前端側部分では、前述した現象と同様の現象が発生し、サイドシル5及びトンネルサイドフレーム11の後端側部分では、前述した現象と反対(逆位相)の現象が発生していることが判明した。
第2の解析では、前側クロスメンバ13の前側壁部を左方に延長したときの延長面を基準延長面として、取付穴5cを基準延長面から順次離隔するように移動させた。
そして、基準延長面と延長面P1との距離に対する基準延長面と取付穴5cとの距離の比率Rを求め、この比率Rにおける帯板材20の歪エネルギーを算出した。
尚、取付穴11cは、取付穴5cに対して対称位置に設定している。
図11に示すように、比率Rが0.87から1.29の範囲のとき、帯板材20に作用する歪エネルギーが急激に増加することが判明した。それ故、上記範囲に取付穴5cを設定することで、帯板材20の振動減衰能を高くすることができる。
より好ましくは、比率Rが0.89から1.14の範囲のとき、帯板材20により高い歪エネルギーを蓄積することが可能である。
帯板材20の長手方向他側端部が、連結壁部13a及び延長面P1を除いた第2接続領域A2に接続されているため、第1接続領域A1の変形角度を、帯板材20の曲げ変形に変換することなく、帯板材20の捩り変形に変換することができ、帯板材20に蓄積される歪エネルギーを増加することができる。
帯板材20は、連結壁部13aに対して交差するように配置されているため、簡単な構成で振動低減と剛性向上とを両立することができる。
尚、実施例1と同様の部材には、同じ符号を付している。
実施例1では、前側クロスメンバ13(後側クロスメンバ14)の車幅方向内側端部がトンネルサイドフレーム11の車幅方向外側壁部である連結壁部11aに直接的に連結されていたのに対し、実施例2では、前側クロスメンバ13の車幅方向内側端部がトンネル部10に連結されている。
左右1対のトンネルサイドフレーム11Aは、車幅方向外側壁部である連結壁部11sと、底壁部である接続壁部11tとを備え、フロアパネル1Aの下面と協働して略平行状に前後に延びる断面略矩形状の閉断面を夫々構成している。
前側クロスメンバ13Aは、断面略ハット状に形成され、サイドシル5の車幅方向内側壁部である連結壁部5aからトンネル部10の側壁部に亙ってフロアパネル1Aの上面と協働して左右に延びる断面略矩形状の閉断面を夫々構成している。
それ故、前側クロスメンバ13Aの車幅方向内側端部分は、トンネルサイドフレーム11Aとフロアパネル1Aを介して連結されている。
尚、後側クロスメンバは、前側クロスメンバ13Aと略同様に構成されている。
帯板材20の車幅方向外側端部は、接続壁部5bに形成された第1接続領域A1に連結され、帯板材20の車幅方向内側端部は、接続壁部11tに形成された第2接続領域に連結されている。第2接続領域は、後側クロスメンバの前側壁部と上下に重畳する領域に設定されている。これにより、帯板材20に蓄積される歪エネルギーを増加することができ、車体振動を減衰することができる。
1〕前記実施形態においては、サイドシルとトンネルサイドフレームと1対のクロスメンバからなるロ字状構造体を形成した例を説明したが、少なくとも、第1連結壁部に対して対向関係にある第2連結壁部を形成するように第1フレーム部材に第2フレーム部材が連結されていれば良く、2つのフレーム部材以外の構成は任意に設定することができ、様々な部位、例えばルーフ等上部車体構造にも適用することができる。
5 サイドシル
5a (第1)連結壁部
5b (第1)接続壁部
11 トンネルサイドフレーム
11a (第3)連結壁部
11b (第3)接続壁部
13 前側クロスメンバ
13a (第2)連結壁部
14 後側クロスメンバ
14a (第4)連結壁部
A1 第1接続領域
A2 第2接続領域
P1 (第1)延長面
P2 (第2)延長面
X1 (第1)交差部
X2 (第2)交差部
Claims (6)
- 断面矩形状の閉断面を構成する第1フレーム部材と、この第1フレーム部材のうちのその軸心に平行な複数の壁部のうち第1連結壁部に長手方向一側端部が連結され且つ断面矩形状の閉断面を構成する第2フレーム部材と、前記第1フレーム部材の前記第1連結壁部以外の壁部のうち第1接続壁部に長手方向一側端部が接続され且つ強化材を含有する合成樹脂製の帯板材とを備えた車体の補強構造において、
前記帯板材は、長手方向一側端部が前記第2フレーム部材のうちのその軸心に平行な複数の壁部のうち前記第1連結壁部に臨む第2連結壁部を軸心方向に延長した第1延長面と前記第1接続壁部とが交差する第1交差部またはその近傍領域を含む第1接続領域に接続され且つ長手方向他側端部が前記第2連結壁部及び第1延長面を除いた第2接続領域に接続されていることを特徴とする車体の補強構造。 - 前記帯板材は、主に長手方向に延びる複数の炭素繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載の車体の補強構造。
- 前記帯板材は、前記第2連結壁部に対して交差するように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の車体の補強構造。
- 前記第1接続領域は、前記第2フレーム部材の前記第2連結壁部に対向する壁部を軸心方向に延長した基準延長面からの距離が前記第1延長面と基準延長面との距離に対して0.87〜1.29の比率になるように設定されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車体の補強構造。
- 矩形状パネル部材と、
前記第2フレーム部材の長手方向他側端部に連結された断面矩形状の閉断面を構成する第3フレーム部材と、
前記第1連結壁部に長手方向一側端部が連結され且つ前記第3フレーム部材のうちのその軸心に平行な複数の壁部のうち第3連結壁部に長手方向他側端部が連結された断面矩形状の閉断面を構成する第4フレーム部材とを備え、
前記第1,第2フレーム部材及び第3,第4フレーム部材が前記矩形状パネル部材の対角状に向かい合う2辺に夫々結合され、
前記第2接続領域が、前記第4フレーム部材のうちのその軸心に平行な複数の壁部のうち前記第3連結壁部に臨む第4連結壁部を軸心方向に延長した第2延長面と前記第3フレーム部材の前記第3連結壁部以外の壁部のうち第3接続壁部とが交差する第2交差部及びその近傍領域を含む領域に設定されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車体の補強構造。 - 前記パネル部材がフロアパネル、前記第1フレーム部材がサイドシル、前記第3フレーム部材がトンネルサイドフレーム、前記第2,第4フレーム部材がクロスメンバであることを特徴とする請求項5に記載の車体の補強構造。
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