JP6319671B2 - 車体の補強構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車体の補強構造に関し、特に強化材を含有する合成樹脂製の帯板材を介して補強された車体の補強構造に関する。
従来より、フロアパネル、ボンネット、トランクリッド、ルーフパネル等のパネル部材は、サスペンションからの入力等によって変形し易いことが知られている。
特に、車室の底面を形成するフロアパネルは、車幅方向中間部分に車室内に突出して前後方向に延びるトンネル部が設けられているため、トンネル部を形成しない平板構造に比べて剛性が低下し、上下に変位する膜振動が増加する要因になっていた。
このフロアパネルの振動増加は、車室騒音を招くことから、乗り心地性能が低下する虞があった。
近年、炭素繊維樹脂(Carbon-Fiber-Reinforced-Plastic: CFRP)は、高比強度(強度/比重)と高比剛性(剛性/比重)、所謂軽さと強度・剛性とを併せ持つ物質特性を有するため、航空機や車両等の構造材料として広く使用に供されている。
この炭素繊維樹脂は、炭素繊維が強度等の力学的特性を分担し、母材樹脂(マトリックス)が炭素繊維間の応力伝達機能と繊維の保護機能を分担しているため、繊維方向と非繊維方向(負荷の掛かる方向)によって物性が大きく異なる異方性材料である。
これらの知見を踏まえて、本出願人は、炭素繊維樹脂を車体補強部材として用いた技術を提案している。
特許文献1の車両用パネル構造は、四隅においてサイドシル及び第2フロアフレームに連結された減衰パネル部材を有し、この減衰パネル部材は、パネル状の合成樹脂からなる粘弾性部材と、この粘弾性部材内に埋め込まれて減衰パネル部材の四隅に固定され且つ粘弾性部材よりも高剛性で且つ長手方向に配列された炭素繊維部材により構成されている。
これにより、外部からの騒音を遮音するアンダカバーを構成しながら、アンダカバー自体に発生する膜振動を減衰している。
特許文献2の車体補強構造は、炭素繊維が長手方向に配列された状態で組み込まれた炭素繊維樹脂製の複数の帯板材の長手方向の両端部が、フロアパネルの下部で且つ前後方向及び車幅方向に離隔して配設された車体側連結部に夫々連結されている。
これにより、車体全体に発生する振動減衰を図っている。
通常、炭素繊維樹脂製帯板材に入力された振動エネルギーは、歪エネルギーと運動エネルギーに変換され、この歪エネルギーは部材内部に剪断歪として一旦蓄えられる。
その後、蓄積された歪エネルギー(剪断歪)は、運動エネルギーに再び変換される。このとき、歪エネルギーの一部が熱エネルギーに変換され、散逸される。
それ故、帯板材内部に蓄積される歪エネルギーを増大させることで、散逸される熱エネルギーを増加し、結果的に、車両の振動減衰能を増加することができる。
図13に、捩りモーメントが作用する前の炭素繊維樹脂の部分拡大図を示し、図14に、捩りモーメントが作用した後の炭素繊維樹脂の部分拡大図を示す。
図13,図14に示すように、特許文献2の車体補強構造は、帯板材にフロアパネルの振動エネルギーに基づく捩りモーメントが作用したとき、炭素繊維Cが夫々独立して捩れ変形するため、炭素繊維C間に存在する母材Mに剪断変形が生じるものの、炭素繊維C間の母材Mが微小量であることから、炭素繊維C間の母材Mに剪断歪が増加し、これに伴って母材M内に蓄積される歪エネルギーが増加されている。
特開2015−174611号公報 特願2015−186256号
特許文献2の車体補強構造は、左右1対のトンネルサイドフレームの底壁部を車幅方向に連結する帯板材によって車体全体に発生する車体捩りモードを抑制しつつ、合わせて、トンネルサイドフレームの底壁部とフロアフレームの底壁部とを車幅方向に連結する帯板材によってフロアパネルに発生する膜振動モードについても抑制を図っている。
しかし、特許文献2の技術では、帯板材の振動減衰能力を更に高めることができる余地がある。
特許文献2の帯板材は、トンネルサイドフレームの底壁部とフロアフレームの底壁部とを連結しているため、フロアパネルと略同様の捩り変形と帯板材に直交する面直方向への曲げ変形(面外変形)とが発生している。
帯板材の捩り変形は、歪エネルギーとして帯板材の内部に蓄積され、この蓄積された歪エネルギーは運動エネルギーと熱エネルギーに順次変換されることから、結果的に、車体振動の減衰に寄与している。
一方、帯板材の曲げ変形は、帯板材の内部に歪エネルギーとして蓄積されるが、エネルギーを散逸させる樹脂には蓄積されにくいため、効率が悪く車体の振動減衰への寄与度が低い。
車体を振動源として誘発される帯板材の変形のうち、曲げ変形の割合が大きい程、帯板材の振動減衰能力は減少し、捩り変形の割合が大きい程、帯板材の振動減衰能力は増加する。即ち、帯板材の変形を積極的に大きくしながら、捩り変形の割合を大きくすることができれば、振動減衰能力を高くすることができるものの、その具体的な構成について未だ十分に検討が成されていない。
本発明の目的は、強化材を含有する合成樹脂製の帯板材の振動減衰能力を有効に活用可能な車体の補強構造等を提供することである。
請求項1の発明は、断面矩形状の閉断面を構成する第1フレーム部材と、この第1フレーム部材のうちのその軸心に平行な複数の壁部のうち第1連結壁部に長手方向一側端部が連結され且つ断面矩形状の閉断面を構成する第2フレーム部材と、前記第2フレーム部材の長手方向他側端部に連結された断面矩形状の閉断面を構成する第3フレーム部材と、前記第1連結壁部に長手方向一側端部が連結され且つ前記第3フレーム部材のうちのその軸心に平行な複数の壁部のうち第3連結壁部に長手方向他側端部が連結された断面矩形状の閉断面を構成する第4フレーム部材と、前記第1,第2フレーム部材及び第3,第4フレーム部材が対角状に向かい合う2辺に夫々結合された矩形状パネル部材と、前記第1フレーム部材の前記第1連結壁部以外の壁部のうち第1接続壁部に長手方向一側端部が接続され且つ強化材を含有する合成樹脂製の帯板材とを備えた車体の補強構造において、前記帯板材は、長手方向一側端部が前記第2フレーム部材のうちのその軸心に平行な複数の壁部のうち前記第1連結壁部に臨む第2連結壁部を軸心方向に延長した第1延長面と前記第1接続壁部とが交差する第1交差部またはその近傍領域を含む第1接続領域に接続され且つ長手方向他側端部が前記第4フレーム部材のうちのその軸心に平行な複数の壁部のうち前記第3連結壁部に臨む第4連結壁部を軸心方向に延長した第2延長面と前記第3フレーム部材の前記第3連結壁部以外の壁部のうち第3接続壁部とが交差する第2交差部及びその近傍領域を含む第2接続領域に接続されていることを特徴としている。
この構成によれば、帯板材の長手方向一側端部が、前記第2フレーム部材のうちのその軸心に平行な複数の壁部のうち前記第1連結壁部に臨む第2連結壁部を軸心方向に延長した第1延長面と前記第1接続壁部とが交差する第1交差部またはその近傍領域を含む第1接続領域に接続されている。また、帯板材の長手方向他側端部が、第4フレーム部材のうちのその軸心に平行な複数の壁部のうち第3連結壁部に臨む第4連結壁部を軸心方向に延長した第2延長面と第3フレーム部材の第3連結壁部以外の壁部のうち第3接続壁部とが交差する第2交差部及びその近傍領域を含む第2接続領域に接続されている。そのため、第1接続壁部のうち変形角度が大きな第1接続領域に帯板材の一側端部を接続することができ、第3接続壁部のうち変形角度が大きな第2接続領域に帯板材の他側端部を接続することができるので、第1,第2接続領域の変形角度を帯板材の捩り変形に変換することができ、帯板材に蓄積される歪エネルギーを増加することができる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記帯板材は、主に長手方向に延びる複数の炭素繊維を含むことを特徴としている。
この構成によれば、帯板材の振動減衰能力を高めつつ、帯板材の長手方向の車体剛性を高くすることができる。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、帯板材は、前記第2連結壁部に対して交差するように配置されていることを特徴としている。
この構成によれば、簡単な構成で振動低減と剛性向上とを両立することができる。
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れか1項の発明において、前記第1接続領域は、前記第2フレーム部材の前記第2連結壁部に対向する壁部を軸心方向に延長した基準延長面からの距離が前記第1延長面と基準延長面との距離に対して0.87〜1.29の比率になるように設定されていることを特徴としている。
この構成によれば、第1接続領域を第1接続壁部のうち変形角度が最も大きな領域に設定することができる。
請求項の発明は、請求項1〜4の何れか1項の発明において、前記パネル部材がフロアパネル、前記第1フレーム部材がサイドシル、前記第3フレーム部材がトンネルサイドフレーム、前記第2,第4フレーム部材がクロスメンバであることを特徴としている。
この構成によれば、下部車体構造の振動減衰を図ることができる。
本発明の車体の補強構造によれば、強化材を含有する合成樹脂製の帯板材の歪エネルギー蓄積能力を十分に発揮させることにより、車体の振動減衰能を向上することができる。
実施例1に係る車両を斜め下方から視た図である。 車両の部分底面図である。 車室内を斜め後方から視た図である。 図2のIV−IV線断面図である。 構造体の斜視図である。 構造体の要部拡大図である。 帯板材を省略した構造体の斜視図である。 変形時の構造体の斜視図である。 第1の解析結果を示すグラフである。 接続壁部の変形挙動の説明図である。 第2の解析結果を示すグラフである。 実施例2に係る図4相当図である。 捩りモーメントが作用する前の炭素繊維樹脂の要部拡大図である。 捩りモーメントが作用した後の炭素繊維樹脂の要部拡大図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明は、本発明を車両の下部車体構造に適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
尚、図において、矢印Fは前方を示し、矢印Lは左方を示し、矢印Uは上方を示すものとして説明する。
以下、本発明の実施例1について図1〜図11に基づいて説明する。
まず、車両Vの全体構成について説明する。
図1〜図3に示すように、車両Vは、モノコック式ボディで構成され、車室Rの底面を形成するフロアパネル1(パネル部材)と、このフロアパネル1の前端部分から上方へ立ち上がるように形成され且つエンジンルームEと車室Rとを仕切るダッシュパネル2と、このダッシュパネル2から前方に延びる左右1対のフロントサイドフレーム3と、フロアパネル1の後端側部分から後方に延びる左右1対のリヤサイドフレーム4と、左右1対の構造体S等を備えている。
また、この車両Vは、フロアパネル1の左右両端部に配設された左右1対のサイドシル5(第1フレーム部材)と、これら1対のサイドシル5の前端部から上方に延びる左右1対のヒンジピラー6と、1対のサイドシル5の中間部から上方に延びる左右1対のセンタピラー7と、1対のヒンジピラー6の上端部から後方上がり傾斜状に後方に延びる左右1対のフロントピラー8と、これら1対のフロントピラー8の後端部から後方に延び且つ1対のセンタピラー7の上端部に夫々連結された左右1対のルーフサイドレール9等を備えている。
次に、フロアパネル1の周辺構造について説明する。
図1〜図4に示すように、フロアパネル1は、平面視にて略矩形状に形成され、車幅方向中央部分に、前後に延び且つ車室Rに向けて突出したトンネル部10を備えている。
トンネル部10の左右両端部には、前後に延びる左右1対のトンネルサイドフレーム11(第3フレーム部材)が設けられ、このトンネルサイドフレーム11はフロアパネル1の下面及びトンネル部10の側面と協働して略平行状に前後に延びる断面略矩形状の閉断面を構成している。
左右1対のサイドシル5と左右1対のトンネルサイドフレーム11との間には、前後に延びる断面略ハット状のフロアフレーム12が夫々設けられている。
このフロアフレーム12は、後側程車幅方向外側に移行するように配設され、フロアパネル1の下面と協働して前後に延びる断面略矩形状の閉断面を構成している。
フロアフレーム12の前端部は、フロントサイドフレーム3の後端部に連結され、後端部はリヤサイドフレーム4の前端部に連結されている。
サイドシル5及びトンネルサイドフレーム11の閉断面内には、後述する帯板材20を固定するためのナットnが夫々収容され、各々の接続壁部5b(第1接続壁部)の取付穴5c及び接続壁部11b(第3接続壁部)の取付穴11cに対応するように溶接にて固着されている。
図3に示すように、フロアパネル1は、車室R内にトンネル部10を跨いで左右に延びる前後1対のクロスメンバ13,14(第2フレーム部材,第4フレーム部材)を備えている。これらクロスメンバ13,14は、断面略ハット状に夫々形成され、サイドシル5の車幅方向内側壁部である連結壁部5a(第1連結壁部)からトンネル部10の側壁部及びトンネルサイドフレーム11の車幅方向外側壁部である連結壁部11a(第3連結壁部)に亙ってフロアパネル1の上面と協働して左右に延びる断面略矩形状の閉断面を夫々構成している。
前側クロスメンバ13は、ヒンジピラー6とセンタピラー7との中間部に対応する位置に配置され、クロスメンバ13の前側壁部には、フロアフレーム12の前端側部分にフロアパネル1を介在させて接合された上側フレーム15の後端部が連結されている。
後側クロスメンバ14は、クロスメンバ13に略平行状に配設され、センタピラー7に対応する位置に配置されている。
前側クロスメンバ13の車幅方向外側端部に対応したサイドシル5(接続壁部5b)の取付穴5cと後側クロスメンバ14の車幅方向内側端部に対応したトンネルサイドフレーム11(接続壁部11b)の取付穴11cとを対角線状(逆ハ字状)に連結する左右1対の帯板材20が夫々設けられている。
次に、1対の帯板材20について説明する。
1対の長尺状の帯板材20は、炭素繊維を強化材とした炭素繊維樹脂(CFRP)を成形(例えばホットプレス等)することによって形成されている。
炭素繊維は、帯板材20の長手方向の一端から他端に亙って連続して長手方向に一様に延びる単繊維(フィラメント)が所定数(例えば12k)束ねられた繊維束(トウ)で構成されている。炭素繊維の単繊維の直径は、例えば7〜10μmである。第3ブレース部材20の母材には、例えば熱硬化性エポキシ系合成樹脂が使用されている。
図4に示すように、1対の帯板材20は、板状部材16に挿通されたボルトbをナットnに締結することにより、車幅方向外側端部が板状部材16と接続壁部5bに挟持され、車幅方向内側端部が板状部材16と接続壁部11bに挟持されている。
以上により、フロアパネル1と、サイドシル5と、1対のクロスメンバ13,14と、帯板材20とは、下部車体構造の振動減衰機能を備えた左右1対のロ字状構造体Sを構成している。
次に、図5,図6に基づき、構造体Sについて説明する。
尚、1対の構造体Sは、左右対称構造であるため、右側構造体Sについて主に説明する。
また、以下、理解を容易にするため、各部材をモデル化して表している。
図5,図6に示すように、平面視にて矩形状の構造体Sには、前側右端部の第1接続領域A1に形成された取付穴5cと後側左端部の第2接続領域A2に形成された取付穴11cとに帯板材20の長手方向両端部がボルトbにて夫々締結固定されている。
図6に示すように、第1接続領域A1は、連結壁部5aに臨む、所謂対向関係にある前側クロスメンバ13の連結壁部13a(第2連結壁部)を左方に延長した延長面P1(第1延長面)と接続壁部5bとが交差する交差部X1(第1交差部)及びその近傍領域を含むように設定されている。
取付穴5cは、交差部X1上で且つ接続壁部5bの左右中間部に形成されている。
同様に、第2接続領域A2は、連結壁部11aに臨む後側クロスメンバ14の連結壁部14a(第4連結壁部)を右方に延長した延長面P2(第2延長面)と接続壁部11bとが交差する交差部X2(第2交差部)及びその近傍領域を含むように設定されている。
取付穴11cは、交差部X2上で且つ接続壁部11bの左右中間部に形成されている。
次に、本実施例の車体の補強構造における作用、効果について説明する。
作用、効果の説明に当り、前後2対のサスペンションを振動入力源とした通常直線走行時の構造体S及び構造体Sから帯板材20を省略した構造体Saの変形挙動についてCAE(Computer Aided Engineering)による2種類の解析を行った。
尚、解析の前提条件として、サイドシル5とトンネルサイドフレーム11の軸心方向寸法を600mm、前側及び後側クロスメンバ13,14の軸心方向寸法を500mmに規定し、何れも同一断面形状に形成している。帯板材20については、縦寸法を4mm、横寸法を40mm、長手方向寸法を850mmに設定し、炭素繊維や母材は前述した仕様に設定されている。
第1の解析では、構造体Saを用いて、サイドシル5の底壁部に相当する接続壁部5bの変形挙動を求めている。
図7に示すように、第1の解析では、接続壁部5bの前端から長手方向(後方)に離隔した長手方向距離D毎に水平面に対する接続壁部5bの傾斜角度を変形角度として算出した。左方への接続壁部5bの傾斜をマイナス、右方への接続壁部5bの傾斜をプラスとして検出している。
図8〜図10に、第1の解析結果を示す。
図8に示すように、構造体Saに車体変形に起因した変位が生じたとき、接続壁部5bの前端側部分は、左方に対向するよう(マイナス側)に傾斜し、接続壁部5bの後端側部分は、右方に対向するよう(プラス側)に傾斜した。
図9に示すように、距離Dがαのとき、マイナス側の最大変形角度になり、距離Dがβのとき、プラス側の最大変形角度になっている。
ここで、α地点は、連結壁部5aと連結壁部13aとの接合位置であり、β地点は、連結壁部11aと連結壁部14aとの接合位置である。
図10に示すように、サイドシル5の連結壁部5aに平行な左側壁部に上向きの剪断力τaが作用したとき、相対的に連結壁部5aには下向きの剪断力τaが作用する。
一方、前側クロスメンバ13の連結壁部13aに平行な前側壁部に上向きの剪断力τbが作用したとき、相対的に連結壁部13aには下向きの剪断力τbが作用する。
それ故、α地点には、下向きの剪断力τa及び下向きの剪断力τbの合力として下向きの剪断力(τa+τb)が作用するため、α地点におけるサイドシル5の断面形状が変形し、接続壁部5bのα地点における変形角度が最大値になる。
尚、前側クロスメンバ13については、連結壁部5aの前端側部分が節機能を発揮しているため、α地点における前側クロスメンバ13の断面形状の変形が抑制されている。
トンネルサイドフレーム11の前端側部分では、前述した現象と同様の現象が発生し、サイドシル5及びトンネルサイドフレーム11の後端側部分では、前述した現象と反対(逆位相)の現象が発生していることが判明した。
第2の解析では、構造体S(図5参照)を用いて、帯板材20に一定の捩り変形を与えたとき、帯板材20に作用する歪エネルギーを求めている。
第2の解析では、前側クロスメンバ13の前側壁部を左方に延長したときの延長面を基準延長面として、取付穴5cを基準延長面から順次離隔するように移動させた。
そして、基準延長面と延長面P1との距離に対する基準延長面と取付穴5cとの距離の比率Rを求め、この比率Rにおける帯板材20の歪エネルギーを算出した。
尚、取付穴11cは、取付穴5cに対して対称位置に設定している。
図11に基づき、第2の解析結果について説明する。
図11に示すように、比率Rが0.87から1.29の範囲のとき、帯板材20に作用する歪エネルギーが急激に増加することが判明した。それ故、上記範囲に取付穴5cを設定することで、帯板材20の振動減衰能を高くすることができる。
より好ましくは、比率Rが0.89から1.14の範囲のとき、帯板材20により高い歪エネルギーを蓄積することが可能である。
この車体の補強構造によれば、帯板材20の長手方向一側端部が、前側クロスメンバ13の連結壁部13aを軸心方向左方に延長した延長面P1と接続壁部5bとが交差する交差部X1及びその近傍領域を含む第1接続領域A1に接続されているため、接続壁部5bのうち変形角度が大きな第1接続領域A1に帯板材20の一側端部を接続することができる。
帯板材20の長手方向他側端部が、連結壁部13a及び延長面P1を除いた第2接続領域A2に接続されているため、第1接続領域A1の変形角度を、帯板材20の曲げ変形に変換することなく、帯板材20の捩り変形に変換することができ、帯板材20に蓄積される歪エネルギーを増加することができる。
帯板材20は、主に長手方向に延びる複数の炭素繊維を含むため、帯板材20の振動減衰能力を高めつつ、帯板材20の長手方向の車体剛性を高くすることができる。
帯板材20は、連結壁部13aに対して交差するように配置されているため、簡単な構成で振動低減と剛性向上とを両立することができる。
第1接続領域A1は、前側クロスメンバ13の連結壁部13aに対向する壁部を軸心方向に延長した基準延長面からの距離が延長面P1と基準延長面との距離に対して0.87〜1.29の比率になるように設定されているため、第1接続領域A1を接続壁部5bのうち変形角度が最も大きな領域に設定することができる。
フロアパネル1と、前側クロスメンバ13の車幅方向内側端部に連結された断面矩形状の閉断面を構成するトンネルサイドフレーム11と、連結壁部5aに車幅方向外側端部が連結され且つ連結壁部11aに車幅方向内側端部が連結された断面矩形状の閉断面を構成する後側クロスメンバ14とを備え、サイドシル5と前側クロスメンバ13及びトンネルサイドフレーム11と後側クロスメンバ14がフロアパネル1の対角状に向かい合う2辺に夫々結合され、第2接続領域A2が、連結壁部14aを軸心方向右方に延長した延長面P2と接続壁部11bとが交差する交差部X2及びその近傍領域を含む領域に設定されている。これにより、接続壁部11bのうち変形角度が大きな第2接続領域A2に帯板材20の他側端部を接続することができ、帯板材20の振動減衰能力を一層高くすることができる。
パネル部材がフロアパネル1、第1フレーム部材がサイドシル5、第3フレーム部材がトンネルサイドフレーム11、第2,第4フレーム部材が前側及び後側クロスメンバ13,14であるため、下部車体構造の振動減衰を図ることができる。
次に、実施例2に係る構造体SAについて、図12に基づいて説明する。
尚、実施例1と同様の部材には、同じ符号を付している。
実施例1では、前側クロスメンバ13(後側クロスメンバ14)の車幅方向内側端部がトンネルサイドフレーム11の車幅方向外側壁部である連結壁部11aに直接的に連結されていたのに対し、実施例2では、前側クロスメンバ13の車幅方向内側端部がトンネル部10に連結されている。
図12に示すように、車両VAは、フロアパネル1Aと、トンネルサイドフレーム11Aと、前側クロスメンバ13Aと、後側クロスメンバ(図示略)と、構造体SA等を備えている。フロアパネル1Aはトンネル部10と一体的に形成され、その左右端部は1対のサイドシル5の連結壁部5aに夫々接合されている。
左右1対のトンネルサイドフレーム11Aは、車幅方向外側壁部である連結壁部11sと、底壁部である接続壁部11tとを備え、フロアパネル1Aの下面と協働して略平行状に前後に延びる断面略矩形状の閉断面を夫々構成している。
フロアパネル1Aは、車室R内にトンネル部10を跨いで左右に延びる前側クロスメンバ13A等を備えている。
前側クロスメンバ13Aは、断面略ハット状に形成され、サイドシル5の車幅方向内側壁部である連結壁部5aからトンネル部10の側壁部に亙ってフロアパネル1Aの上面と協働して左右に延びる断面略矩形状の閉断面を夫々構成している。
それ故、前側クロスメンバ13Aの車幅方向内側端部分は、トンネルサイドフレーム11Aとフロアパネル1Aを介して連結されている。
尚、後側クロスメンバは、前側クロスメンバ13Aと略同様に構成されている。
構造体SAは、フロアパネル1Aと、サイドシル5と、前側クロスメンバ13Aと、後側クロスメンバと、帯板材20等を備えている。
帯板材20の車幅方向外側端部は、接続壁部5bに形成された第1接続領域A1に連結され、帯板材20の車幅方向内側端部は、接続壁部11tに形成された第2接続領域に連結されている。第2接続領域は、後側クロスメンバの前側壁部と上下に重畳する領域に設定されている。これにより、帯板材20に蓄積される歪エネルギーを増加することができ、車体振動を減衰することができる。
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、サイドシルとトンネルサイドフレームと1対のクロスメンバからなるロ字状構造体を形成した例を説明したが、少なくとも、第1連結壁部に対して対向関係にある第2連結壁部を形成するように第1フレーム部材に第2フレーム部材が連結されていれば良く、2つのフレーム部材以外の構成は任意に設定することができ、様々な部位、例えばルーフ等上部車体構造にも適用することができる。
2〕前記実施形態においては、ロ字状構造体に対して対角線状に帯板材を配置した例を説明したが、少なくとも、帯板材に捩り変形が発生すれば良く、帯板材の軸心と第2連結壁部とが所定角度で交差する位置関係に配置されれば、帯板材に歪エネルギーを蓄積させることができる。
3〕前記実施形態においては、炭素繊維が帯板材の長手方向に一様に配置された例を説明したが、少なくとも、帯板材の長手方向に配置された炭素繊維の体積当たりの繊維量(Vf:Fiber volume content 繊維体積含有率)が50%以上であれば良く、帯板材の剛性強化を目的として長手方向に対して配向±45°の炭素繊維を適宜加えることも可能である。
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
1 フロアパネル
5 サイドシル
5a (第1)連結壁部
5b (第1)接続壁部
11 トンネルサイドフレーム
11a (第3)連結壁部
11b (第3)接続壁部
13 前側クロスメンバ
13a (第2)連結壁部
14 後側クロスメンバ
14a (第4)連結壁部
A1 第1接続領域
A2 第2接続領域
P1 (第1)延長面
P2 (第2)延長面
X1 (第1)交差部
X2 (第2)交差部

Claims (5)

  1. 断面矩形状の閉断面を構成する第1フレーム部材と、この第1フレーム部材のうちのその軸心に平行な複数の壁部のうち第1連結壁部に長手方向一側端部が連結され且つ断面矩形状の閉断面を構成する第2フレーム部材と、前記第2フレーム部材の長手方向他側端部に連結された断面矩形状の閉断面を構成する第3フレーム部材と、前記第1連結壁部に長手方向一側端部が連結され且つ前記第3フレーム部材のうちのその軸心に平行な複数の壁部のうち第3連結壁部に長手方向他側端部が連結された断面矩形状の閉断面を構成する第4フレーム部材と、前記第1,第2フレーム部材及び第3,第4フレーム部材が対角状に向かい合う2辺に夫々結合された矩形状パネル部材と、前記第1フレーム部材の前記第1連結壁部以外の壁部のうち第1接続壁部に長手方向一側端部が接続され且つ強化材を含有する合成樹脂製の帯板材とを備えた車体の補強構造において、
    前記帯板材は、長手方向一側端部が前記第2フレーム部材のうちのその軸心に平行な複数の壁部のうち前記第1連結壁部に臨む第2連結壁部を軸心方向に延長した第1延長面と前記第1接続壁部とが交差する第1交差部またはその近傍領域を含む第1接続領域に接続され且つ長手方向他側端部が前記第4フレーム部材のうちのその軸心に平行な複数の壁部のうち前記第3連結壁部に臨む第4連結壁部を軸心方向に延長した第2延長面と前記第3フレーム部材の前記第3連結壁部以外の壁部のうち第3接続壁部とが交差する第2交差部及びその近傍領域を含む第2接続領域に接続されていることを特徴とする車体の補強構造。
  2. 前記帯板材は、主に長手方向に延びる複数の炭素繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載の車体の補強構造。
  3. 前記帯板材は、前記第2連結壁部に対して交差するように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の車体の補強構造。
  4. 前記第1接続領域は、前記第2フレーム部材の前記第2連結壁部に対向する壁部を軸心方向に延長した基準延長面からの距離が前記第1延長面と基準延長面との距離に対して0.87〜1.29の比率になるように設定されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車体の補強構造。
  5. 前記パネル部材がフロアパネル、前記第1フレーム部材がサイドシル、前記第3フレーム部材がトンネルサイドフレーム、前記第2,第4フレーム部材がクロスメンバであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車体の補強構造。
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