JP2018010756A - 内燃機関用のスパークプラグ - Google Patents
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Abstract
【課題】絶縁碍子の耐電圧確保、及び、中心電極の長寿命化を図ることができる内燃機関用のスパークプラグを提供すること。【解決手段】内燃機関用のスパークプラグ1は、接地電極2と絶縁碍子3と中心電極4とを備える。絶縁碍子3は、接地電極2の先端よりも先端側へ突出した碍子突出部31を備える。中心電極4は、絶縁碍子3の先端よりも先端側へ突出した電極突出部41を有する。スパークプラグ1は、中心電極4に高周波電圧を印加することによって、接地電極2と中心電極4との間に放電を生じさせるよう構成されている。接地電極2の先端から絶縁碍子3の先端までのプラグ軸方向Zの長さをA、中心電極4の電極突出部41の直径をD、プラグ径方向における絶縁碍子3の碍子突出部31の厚みをTとする。長さA、直径D、及び厚みTは、それぞれ、A≦3mm、1.7mm≦D≦2.5mm、1.12mm≦T≦1.52mmを満たす。【選択図】図2
Description
本発明は、中心電極に高周波電圧を印加することによって、接地電極と中心電極との間に放電を生じさせる内燃機関用のスパークプラグに関する。
特許文献1には、内燃機関用のスパークプラグとして、中心電極に高周波電圧を印加することによって、接地電極と中心電極との間に放電を生じさせるものが開示されている。特許文献1に開示されたスパークプラグは、筒状の接地電極の内側に、先端が突出するように筒状の絶縁碍子が配置され、さらに絶縁碍子の内側に、先端が突出するように中心電極が配置されている。
かかる沿面放電型のスパークプラグにおいては、中心電極に高周波の交流電圧やパルス電圧を印加すると、接地電極と中心電極との間において、絶縁碍子の表面を這うような沿面放電が形成される。そして、当該沿面放電によって生じた放電の両起点間の部位は、燃焼室内の気流によって絶縁碍子の表面から引き離され、燃焼室内の気中に伸長される。これにより、放電と混合気との接触領域を稼ぎ、混合気への着火性を向上させることができる。
しかしながら、特許文献1に記載のスパークプラグにおいては、絶縁碍子の耐電圧を確保すること、及び、中心電極の長寿命化を図ることに関し、特に考慮されておらず、かかる観点から改善の余地がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、絶縁碍子の耐電圧確保、及び、中心電極の長寿命化を図ることができる内燃機関用のスパークプラグを提供しようとするものである。
本発明の一態様は、筒状の接地電極(2)と、
該接地電極の内側に保持されると共に、上記接地電極の先端よりも先端側へ突出した碍子突出部(31)を備えた筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内側に保持されると共に、該絶縁碍子の先端よりも先端側へ突出した電極突出部(41)を有する中心電極(4)と、を備え、
該中心電極に高周波電圧を印加することによって、上記接地電極と上記中心電極との間に放電を生じさせるよう構成された、内燃機関用のスパークプラグ(1)であって、
上記接地電極の先端から上記絶縁碍子の先端までのプラグ軸方向(Z)の長さをA、上記中心電極の上記電極突出部の直径をD、プラグ径方向における上記絶縁碍子の上記碍子突出部の厚みをTとしたとき、上記長さA、上記直径D、及び上記厚みTは、それぞれ、A≦3mm、1.7mm≦D≦2.5mm、1.12mm≦T≦1.52mmを満たす、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
該接地電極の内側に保持されると共に、上記接地電極の先端よりも先端側へ突出した碍子突出部(31)を備えた筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内側に保持されると共に、該絶縁碍子の先端よりも先端側へ突出した電極突出部(41)を有する中心電極(4)と、を備え、
該中心電極に高周波電圧を印加することによって、上記接地電極と上記中心電極との間に放電を生じさせるよう構成された、内燃機関用のスパークプラグ(1)であって、
上記接地電極の先端から上記絶縁碍子の先端までのプラグ軸方向(Z)の長さをA、上記中心電極の上記電極突出部の直径をD、プラグ径方向における上記絶縁碍子の上記碍子突出部の厚みをTとしたとき、上記長さA、上記直径D、及び上記厚みTは、それぞれ、A≦3mm、1.7mm≦D≦2.5mm、1.12mm≦T≦1.52mmを満たす、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
上記内燃機関用のスパークプラグにおいては、上記長さA、上記直径D、及び上記厚みTは、それぞれ、A≦3mm、1.7mm≦D≦2.5mm、1.12mm≦T≦1.52mmを満たす。それゆえ、絶縁碍子の耐電圧確保、及び、中心電極の長寿命化を図ることができる。
すなわち、上記長さA、上記直径D、及び上記厚みTは、それぞれ、A≦3mm、D≦2.5mm、T≧1.12mm、を満たす。そのため、絶縁碍子の耐電圧を、接地電極と中心電極との間に放電を生じさせるために要求される要求電圧以上とすることができる。これらの数値に関しては、後述する実験例によって裏付けられる。
また、上記直径D及び上記厚みTは、それぞれ、D≧1.7mm、T≦1.52mmを満たす。それゆえ、中心電極の消耗を抑制し、中心電極の長寿命化を図ることができる。また、中心電極の製造上の観点からも、D≧1.7mmが好ましい。
以上のごとく、上記態様によれば、絶縁碍子の耐電圧確保、及び、中心電極の長寿命化を図ることができる内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグの実施形態につき、図1〜図4を用いて説明する。
本実施形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、図1に示すごとく、筒状の接地電極2と筒状の絶縁碍子3と中心電極4とを備える。絶縁碍子3は、接地電極2の内側に保持されている。図1、図2に示すごとく、絶縁碍子3は、接地電極2の先端よりも先端側へ突出した碍子突出部31を備える。図1に示すごとく、中心電極4は、絶縁碍子3の内側に保持されている。図1、図2に示すごとく、中心電極4は、絶縁碍子3の先端よりも先端側へ突出した電極突出部41を有する。
内燃機関用のスパークプラグの実施形態につき、図1〜図4を用いて説明する。
本実施形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、図1に示すごとく、筒状の接地電極2と筒状の絶縁碍子3と中心電極4とを備える。絶縁碍子3は、接地電極2の内側に保持されている。図1、図2に示すごとく、絶縁碍子3は、接地電極2の先端よりも先端側へ突出した碍子突出部31を備える。図1に示すごとく、中心電極4は、絶縁碍子3の内側に保持されている。図1、図2に示すごとく、中心電極4は、絶縁碍子3の先端よりも先端側へ突出した電極突出部41を有する。
スパークプラグ1は、中心電極4に高周波電圧を印加することによって、接地電極2と中心電極4との間に放電を生じさせるよう構成されている。
図2に示すごとく、接地電極2の先端から絶縁碍子3の先端までのプラグ軸方向Zの長さをA、中心電極4の電極突出部41の直径をD、プラグ径方向における絶縁碍子3の碍子突出部31の厚みをTとする。このとき、長さA、直径D、及び厚みTは、それぞれ、A≦3mm、1.7mm≦D≦2.5mm、1.12mm≦T≦1.52mmを満たす。
本実施形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車等の車両用の内燃機関における着火手段として用いることができる。図4に示すごとく、スパークプラグ1は、その軸方向であるプラグ軸方向Zの一端側において後述する高周波電源部101と接続され、他端側が内燃機関の燃焼室8内に配される。プラグ軸方向Zにおける、スパークプラグ1が燃焼室8に挿入される側を先端側、その反対側を基端側という。
図2に示すごとく、接地電極2は、プラグ径方向に厚みを有する。図3に示すごとく、接地電極2は、プラグ軸方向Zから見た形状が、円環状を呈している。本実施形態において、接地電極2はSUS304からなる。図2に示すごとく、本実施形態において、接地電極2の先端面21は、プラグ径方向の内周側に向かうほどプラグ軸方向Zの先端側に向かうよう傾斜している。図1〜図3に示すごとく、接地電極2は、絶縁碍子3を全周から囲むように形成されている。
図2に示すごとく、絶縁碍子3は、プラグ径方向に厚みを有する。絶縁碍子3は、一部を接地電極2の内側に配しつつ、碍子突出部31を接地電極2の先端よりも先端側へ突出させて配されている。図3に示すごとく、碍子突出部31は、プラグ軸方向Zから見た形状が円環状を呈している。図2、図3に示すごとく、絶縁碍子3は、接地電極2と微小隙間を介してプラグ径方向に対向している。
図2に示すごとく、本実施形態においては、接地電極2の先端面21における内周端縁から、碍子突出部31の先端面311までのプラグ軸方向Zの長さがAである。本実施形態において、長さAは、A≧2mmを更に満たす。すなわち、本実施形態において、長さAは、2mm≦A≦3mmを満たす。
碍子突出部31におけるプラグ径方向の厚みは、碍子突出部31におけるプラグ軸方向Zの略全体において一定である。なお、絶縁碍子3の先端面311と外周面との間をつなぐ角部32は、滑らかな曲面状に形成されている。本実施形態において、碍子突出部31の上述の厚みTは、碍子突出部31における角部32の基端側の部位の厚みをいう。そして、上述のごとく、厚みTは、1.12mm≦T≦1.52mmを満たす。
図1に示すごとく、絶縁碍子3の内側における先端側の部位に、中心電極4が挿通保持されている。中心電極4は、全体として略円柱状を呈している。本実施形態において、中心電極4は、Ni、Cr、Fe、Al、Mn、Si、Cu、C、S、Mg、Coからなる。なお、図2に示すごとく、中心電極4は、接地電極2の先端よりも先端側の部位に、その基端側の部位よりも小径に形成された小径部410を有する。そして、中心電極4の小径部410における先端側の部位が、絶縁碍子3の先端面311よりも先端側へ突出した電極突出部41を構成している。小径部410と絶縁碍子3とは、微小隙間を介してプラグ径方向に対向している。
電極突出部41は、円柱形状を呈している。電極突出部41の直径Dは、上述のごとく、1.7mm≦D≦2.5mmを満たす。本実施形態において、直径Dは、D≦2.3mmを更に満たす。すなわち、本実施形態において、直径Dは、1.7mm≦D≦2.3mmを満たす。絶縁碍子3の碍子突出部31の少なくとも一部は、中心電極4の電極突出部41と接地電極2の先端面21との間に介在している。
また、プラグ軸方向Zにおける、電極突出部41の長さLは、1.5mm以下であることが好ましい。上記長さLが1.5mmを超えると、振動による中心電極4の振れにより、絶縁碍子3に作用する応力が高くなるおそれがある。
図1に示すごとく、接地電極2は、ハウジング5の先端から、先端側に向かって延設されている。ハウジング5は、筒状を呈しており、絶縁碍子3を内側に保持している。ハウジング5の外周面には、内燃機関に螺合するための取付ネジ部51が形成されている。ハウジング5における、取付ネジ部51が設けられた部位から、先端側に向かって、接地電極2が延設されている。なお、図3においては、ハウジングの図示を省略している。
絶縁碍子3の内側における中心電極4の基端側には、ステム6が挿通保持されている。ステム6は、中心電極4と導通されている。また、ステム6は、基端部が絶縁碍子3から突出している。
次に、図4を参照しつつ、本実施形態のスパークプラグ1を内燃機関に取り付けてなる点火装置10につき説明する。
図4に示すごとく、点火装置10は、スパークプラグ1と高周波電源部101とを有する。高周波電源部101は、スパークプラグ1の中心電極4に高周波電圧を印加する。
図4に示すごとく、点火装置10は、スパークプラグ1と高周波電源部101とを有する。高周波電源部101は、スパークプラグ1の中心電極4に高周波電圧を印加する。
高周波電源部101は、例えば、交流電圧発生器と昇圧トランスとを組み合わせたものを用いることができる。交流電圧発生器は、例えば、電界効果トランジスタを備え、入力した直流電圧を、高周波の交流電圧に変換して出力するものとすることができる。交流電圧発生器の出力電圧は、昇圧トランスに入力される。そして、昇圧トランスは、例えば、100V程度の入力電圧を、20kV程度にまで昇圧し、出力する。そして、昇圧トランスから出力された高周波の高電圧は、スパークプラグ1に入力される。
高周波電源部101は、スパークプラグ1のステム6の基端部に接続されている。高周波電源部101が中心電極4に印加する高周波電圧の周波数は、例えば、200kHz〜1MHzとすることができる。そして、高周波電源部101は、中心電極4に、5kV〜25kVのピークピーク値を持つ交流電圧を印加するものとすることができる。
スパークプラグ1は、取付ネジ部51において、エンジンヘッド7に設けられた雌ネジ孔71に螺合されている。これにより、スパークプラグ1がエンジンヘッド7に締結固定されている。さらに、スパークプラグ1の先端部分が燃焼室8内に配される。
次に、本実施形態の作用効果につき説明する。
内燃機関用のスパークプラグ1においては、長さA、直径D、及び厚みTは、それぞれ、A≦3mm、1.7mm≦D≦2.5mm、1.12mm≦T≦1.52mmを満たす。それゆえ、絶縁碍子3の耐電圧確保、及び、中心電極4の長寿命化を図ることができる。
内燃機関用のスパークプラグ1においては、長さA、直径D、及び厚みTは、それぞれ、A≦3mm、1.7mm≦D≦2.5mm、1.12mm≦T≦1.52mmを満たす。それゆえ、絶縁碍子3の耐電圧確保、及び、中心電極4の長寿命化を図ることができる。
すなわち、長さA、直径D、及び厚みTは、それぞれ、A≦3mm、D≦2.5mm、T≧1.12mm、を満たす。そのため、絶縁碍子3の耐電圧を、接地電極2と中心電極4との間に放電を生じさせるために要求される要求電圧以上とすることができる。さらに、本実施形態においては、D≦2.3mmを更に満たす。それゆえ、絶縁碍子3の耐電圧を、上記要求電圧よりも確実に高くすることができる。これらの数値に関しては、後述する実験例によって裏付けられる。
また、直径D及び厚みTは、それぞれ、D≧1.7mm、T≦1.52mmを満たす。それゆえ、中心電極4の消耗を抑制し、中心電極4の長寿命化を図ることができる。また、中心電極4の製造上の観点からD≧1.7mmが好ましい。
また、長さAは、A≧2mmを更に満たす。それゆえ、混合気への着火性を確保することができる。この数値に関しても、後述する実験例によって裏付けられる。
以上のごとく、本実施形態によれば、絶縁碍子の耐電圧確保、及び、中心電極の長寿命化を図ることができる内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
(実験例1)
本例は、実施形態1のスパークプラグ1と基本構造を同じとしつつ、上述の直径D、厚みT、及び長さAを種々変更したスパークプラグについて、要求電圧を算出した例である。さらに、厚みTを種々変更したときの、絶縁碍子3の耐電圧の測定も行った。そして、これらの結果から、要求電圧を超える絶縁碍子3の耐電圧を確保することができる、直径D、厚みT、長さAの数値範囲を特定した。
本例は、実施形態1のスパークプラグ1と基本構造を同じとしつつ、上述の直径D、厚みT、及び長さAを種々変更したスパークプラグについて、要求電圧を算出した例である。さらに、厚みTを種々変更したときの、絶縁碍子3の耐電圧の測定も行った。そして、これらの結果から、要求電圧を超える絶縁碍子3の耐電圧を確保することができる、直径D、厚みT、長さAの数値範囲を特定した。
まず、要求電圧の算出に関して説明する。要求電圧は、下記の式(1)に基づいて算出した。
式(1)は、背後電極が存在する場合の沿面放電のブレイク電圧を算出する実験式において、正弦波のブレイク電圧を仮定した式である。式(1)において、Kdは正極性インパルス、ωはスパークプラグに印加される電圧の角周波数、εrは絶縁碍子の比誘電率、C0は比誘電率が1の場合の絶縁碍子の固有容量、dは電極間距離である。ここで、電極間距離dは、プラグ軸方向Zにおける、中心電極4の先端から接地電極2の先端までの距離である。本例において、Kd=135.5、ω=1000000、εr=8.5、ε0=8.854×10-12としている。
要求電圧の算出対象のスパークプラグとしては、絶縁碍子3の碍子突出部31の外径を、5.75mmと固定しつつ、長さA、直径D、及び厚みTを種々変更した12個の試料を想定した。具体的には、長さAを1mmとした試料群αと、長さAを3mmとした試料群βと、長さAを5mmとした試料群γとを想定した。試料群α〜試料群γの各試料群は、図5に示す直径D及び厚みTを有する4つの試料からなる。
なお、上述のごとく、絶縁碍子3の碍子突出部31の外径を固定しつつ、直径D、厚みTを変更しているため、図5に示すごとく、直径Dの変化に応じて厚みTも変化している。例えば、中心電極4の電極突出部41の直径Dを大きくすると、碍子突出部31の厚みTは小さくなっており、直径Dを小さくすると、厚みTは大きくなっている。
なお、上述のごとく、絶縁碍子3の碍子突出部31の外径を固定しつつ、直径D、厚みTを変更しているため、図5に示すごとく、直径Dの変化に応じて厚みTも変化している。例えば、中心電極4の電極突出部41の直径Dを大きくすると、碍子突出部31の厚みTは小さくなっており、直径Dを小さくすると、厚みTは大きくなっている。
結果を図6に示す。図6において、試料群αの結果を、破線Lαでつないだプロットにて表している。また、試料群βの結果を、破線Lβでつないだプロットにて表している。さらに、試料群γの結果を、破線Lγでつないだプロットにて表している。
図6から分かるように、各試料群において、直径Dを大きくするほど、すなわち厚みTを小さくするほど、要求電圧は小さくなる傾向が分かる。また、試料群α〜試料群γ相互の結果の比較から、長さAを小さくするほど、要求電圧は小さくなる傾向が分かる。
次に、絶縁碍子3の耐電圧の測定に関して説明する。絶縁碍子3の耐電圧の測定に関しては、試料群α〜試料群γの各試料群が有する4つの試料の絶縁碍子3と同じ4つの絶縁碍子を用意した。
絶縁碍子3の耐電圧の測定においては、各試料を装着したスパークプラグの先端部を絶縁油に浸漬することにより放電が生じない状態にした。かかる状態において、中心電極4と接地電極2との間に電圧を印加した。そして、中心電極4と接地電極2との間に印加する電圧を徐々に増加させ、絶縁碍子3が絶縁破壊されたときの電圧を、耐電圧として測定した。その結果も図6に示す。図6において、絶縁碍子3の耐電圧の測定結果は、実線RLでつないだプロットにて表している。なお、耐電圧の測定結果に関して、図6においては、各試料の厚みTの値を図5に従って直径Dに変換したものをプロットしている。
図6から分かるように、各試料において、直径Dが小さくなるほど、つまり厚みTが大きくなるほど、絶縁碍子3の耐電圧が増加している傾向が分かる。
そして、図6における、上記要求電圧の試験と上記絶縁碍子3の耐電圧の試験との双方の結果から、次のことが分かる。まず、長さAが1mmである試料群αの要求電圧の算出結果を見ると、本試験における直径D、厚みTの範囲において、絶縁碍子3の耐電圧が要求電圧を上回っていることが分かる。一方、長さAが5mmである試料群γの要求電圧の算出結果を見ると、本試験における直径D、厚みTの範囲において、絶縁碍子3の耐電圧が要求電圧を下回ってしまっていることが分かる。そして、長さAが3mmである試料群βの要求電圧の算出結果を見ると、D=2.5mm(このとき、T=1.12mm)に、絶縁碍子3の耐電圧のグラフと、要求電圧のグラフとの交点があり、D≦2.5mm、すなわちT≧1.12mmであるとき、絶縁碍子3の耐電圧が、要求電圧を上回ることが分かる。
以上の結果から、長さA、直径D、及び厚みTが、それぞれ、A≦3mm、D≦2.5mm、T≧1.12mmを満たすことにより、絶縁碍子3の耐電圧を要求電圧以上とすることができることが分かる。さらに、試料群βにおけるD=2.25mmのプロットにおいては、絶縁碍子3の耐電圧が要求電圧を上回っていることが分かる。それゆえ、D≦2.3mmを更に満たすことにより、絶縁碍子3の耐電圧を要求電圧よりも確実に高くすることができることが分かる。
(実験例2)
本例は、図7に示すごとく、中心電極4の電極突出部41の直径Dを種々変更したスパークプラグ1のそれぞれにつき、耐久試験を行い、中心電極4の耐消耗性を評価した例である。中心電極4の耐消耗性は、ギャップ拡大量を測定することにより行った。ギャップとは、接地電極2から電極突出部41までの、碍子突出部31の表面に沿った沿面距離をいい、ギャップ拡大量とは、試験前後のギャップの変化量をいう。ギャップ拡大量が小さいほど、中心電極4の消耗が小さく、中心電極4の耐消耗性に優れているといえる。
本例は、図7に示すごとく、中心電極4の電極突出部41の直径Dを種々変更したスパークプラグ1のそれぞれにつき、耐久試験を行い、中心電極4の耐消耗性を評価した例である。中心電極4の耐消耗性は、ギャップ拡大量を測定することにより行った。ギャップとは、接地電極2から電極突出部41までの、碍子突出部31の表面に沿った沿面距離をいい、ギャップ拡大量とは、試験前後のギャップの変化量をいう。ギャップ拡大量が小さいほど、中心電極4の消耗が小さく、中心電極4の耐消耗性に優れているといえる。
本試験においては、基本構造を実施形態1のスパークプラグ1と同様としつつ、中心電極4の電極突出部41の直径Dを種々変更した5つの試料を用意した。5つの試料は、実験例1と同様、絶縁碍子3の碍子突出部31の外径を5.75mmと固定しつつ、直径Dを変更することにより行った。このときの各試料の直径Dと厚みTとの関係は、実験例1と同様、図5に示すような関係としている。
本耐久試験は、各試料を、2.5Lのエンジンに取り付けて行った。そして、圧力0.6MPa、エンジン回転数6000rpmの高速回転の条件とし、200時間継続して放電を繰り返した。そして、各試料において、ギャップ拡大量を測定した。
結果を図7に示す。図7から分かるように、直径Dを大きくするほど、ギャップ拡大量が小さくなることが分かる。すなわち、中心電極4の耐消耗性の観点から、直径Dは大きいことが好ましいことが分かる。そして、直径Dが1.7mm以上のとき、ギャップ拡大量0.4mm以下と充分な耐消耗性を確保することができる。一方、直径Dが1.7mm未満になると、ギャップ拡大量は、0.4mmを超えてしまう。そして、図5に示した直径Dと厚みTとの対応関係から、D≧1.7mmは、T≦1.52mmに相当する。すなわち、D≧1.7mm、T≦1.52mmを満たすことにより、中心電極4の耐消耗性を確保することができる。
(実験例3)
本例は、図8に示すごとく、長さAの値を種々変更したときの混合気への着火性への影響を調べた例である。着火性の評価は、リーン限界A/Fを指標として行った。つまり、各試料を取り付けた内燃機関において、混合気の空燃比(すなわち、A/F)を徐々に変化させて、着火できる限界の空燃比(すなわち、リーン限界A/F)を測定した。
本例は、図8に示すごとく、長さAの値を種々変更したときの混合気への着火性への影響を調べた例である。着火性の評価は、リーン限界A/Fを指標として行った。つまり、各試料を取り付けた内燃機関において、混合気の空燃比(すなわち、A/F)を徐々に変化させて、着火できる限界の空燃比(すなわち、リーン限界A/F)を測定した。
本例においては、基本構造を実施形態1のスパークプラグ1と同様としつつ、長さAを、1mm、2mm、3mm、4mmとした4つの試料を用意した。そして、各試料を、2.5Lの試作エンジンに取り付けた。そして、圧力0.6MPa、エンジン回転数1200rpmの条件で運転した。以上の条件の下、各試料のリーン限界A/Fを測定した。結果を図8に示す。
図8から、長さAが2mm以上の試料については、長さAにほとんど影響されることなく、充分なリーン限界A/Fを確保できていることが分かる。一方、長さAが2mmから1mmとなると、急激にリーン限界A/Fの値が低減していることが分かる。それゆえ、長さAが、A≧2mmを満たすことにより、混合気への充分な着火性を確保することができることが分かる。
(実施形態2)
本実施形態は、図9、図10に示すごとく、実施形態1に対して、接地電極2の形状を変更した実施形態である。
本実施形態において、接地電極2は、プラグ周方向の一部かつプラグ径方向の全体において、先端面21が基端側に向かって凹んだ接地凹部22を有する。接地凹部22は、少なくとも、プラグ軸方向Zに直交するX方向における中心電極4及び絶縁碍子3の両側に形成されている。なお、以下において、プラグ軸方向Z及びX方向の双方に直交する方向をY方向という。
本実施形態は、図9、図10に示すごとく、実施形態1に対して、接地電極2の形状を変更した実施形態である。
本実施形態において、接地電極2は、プラグ周方向の一部かつプラグ径方向の全体において、先端面21が基端側に向かって凹んだ接地凹部22を有する。接地凹部22は、少なくとも、プラグ軸方向Zに直交するX方向における中心電極4及び絶縁碍子3の両側に形成されている。なお、以下において、プラグ軸方向Z及びX方向の双方に直交する方向をY方向という。
本実施形態において、接地電極2は、先端側に向かって突出した一対の接地突出部23を有する。一対の接地突出部23は、絶縁碍子3及び中心電極4を挟んで互いにY方向に対向している。図9に示すごとく、接地突出部23は、先端面21が、プラグ径方向の内周側に向かうほど、プラグ軸方向Zの先端側に向かうよう傾斜している。そして、本実施形態において、長さAは、接地突出部23の先端部から、碍子突出部31の先端面311までのプラグ軸方向Zの長さである。
接地電極2におけるプラグ周方向の一対の接地突出部23の間に、一対の接地凹部22が形成されている。接地凹部22は、接地電極2の内周端から外周端までにわたって形成されている。Y方向において、接地凹部22の寸法は、碍子突出部31の寸法よりも大きい。そして、図9に示すごとく、X方向から見たとき、絶縁碍子3は、Y方向における接地凹部22の内側に収まっている。
また、本実施形態のスパークプラグ1を内燃機関に取り付けてなる点火装置(図4の符号10参照)において、スパークプラグ1は、Y方向が、碍子突出部31周辺を通過する混合気の気流の方向となる姿勢で配置される。
その他は、実施形態1と同様である。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
本実施形態においては、接地凹部22に混合気の気流を通過させることができるため、接地電極2と中心電極4との間に生じた絶縁碍子3の碍子突出部31の表面を這う沿面放電を、気流によって一層引き伸ばしやすい。それゆえ、混合気への着火性を一層向上させやすい。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
(実施形態3)
本実施形態は、図11、図12に示すごとく、接地電極2の先端部に、貴金属からなる接地チップ24が配されている実施形態である。なお、図12においては、接地チップ24の配置範囲にハッチングを施している。本実施形態の基本構造は、実施形態2と同様である。そして、図11、図12に示すごとく、接地チップ24は、接地突出部23の先端面21の略全面に配されている。接地チップ24は、Ir、Pt、又はRhを主成分としてなる。図11に示すごとく、本実施形態において、長さAは、接地チップ24のプラグ軸方向Zの先端部から、碍子突出部31の先端面311までのプラグ軸方向Zの長さである。その他は、実施形態2と同様である。
本実施形態は、図11、図12に示すごとく、接地電極2の先端部に、貴金属からなる接地チップ24が配されている実施形態である。なお、図12においては、接地チップ24の配置範囲にハッチングを施している。本実施形態の基本構造は、実施形態2と同様である。そして、図11、図12に示すごとく、接地チップ24は、接地突出部23の先端面21の略全面に配されている。接地チップ24は、Ir、Pt、又はRhを主成分としてなる。図11に示すごとく、本実施形態において、長さAは、接地チップ24のプラグ軸方向Zの先端部から、碍子突出部31の先端面311までのプラグ軸方向Zの長さである。その他は、実施形態2と同様である。
本実施形態においては、比較的消耗し難い貴金属からなる接地チップ24が、放電の起点となるため、接地電極2の電極消耗を抑制することができる。また、本実施形態において、接地チップ24は、Ir、Pt、又はRhを主成分としてなるため、放電による電極の溶融、飛散を低減できる。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
(実施形態4)
本実施形態は、図13、図14に示すごとく、実施形態3に対して、接地チップ24の配置範囲を変更した実施形態である。すなわち、接地チップ24は、少なくとも、接地突出部23の先端面21における、Y方向の絶縁碍子3側端縁部に配置されている。本実施形態において、接地チップ24は、接地突出部23の先端面21における、Y方向の絶縁碍子3側の端縁部のみに配置されている。
その他は、実施形態3と同様である。
本実施形態は、図13、図14に示すごとく、実施形態3に対して、接地チップ24の配置範囲を変更した実施形態である。すなわち、接地チップ24は、少なくとも、接地突出部23の先端面21における、Y方向の絶縁碍子3側端縁部に配置されている。本実施形態において、接地チップ24は、接地突出部23の先端面21における、Y方向の絶縁碍子3側の端縁部のみに配置されている。
その他は、実施形態3と同様である。
本実施形態においては、貴金属からなら接地チップ24の形成範囲を、必要最低限とすることができる。そのため、コスト低減を図りやすい。
その他、実施形態3と同様の作用効果を有する。
なお、例えば、接地電極2の形状が実施形態1で示したような形状であった場合、すなわち、接地電極2が接地凹部22を有さないような形状であった場合は、接地電極2の先端面21におけるプラグ径方向の内周側端縁部のみに、円環状の接地チップ24を配置する構成を採用することもできる。
その他、実施形態3と同様の作用効果を有する。
なお、例えば、接地電極2の形状が実施形態1で示したような形状であった場合、すなわち、接地電極2が接地凹部22を有さないような形状であった場合は、接地電極2の先端面21におけるプラグ径方向の内周側端縁部のみに、円環状の接地チップ24を配置する構成を採用することもできる。
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
1 内燃機関用のスパークプラグ
2 接地電極
3 絶縁碍子
31 碍子突出部
4 中心電極
41 電極突出部
Z プラグ軸方向
2 接地電極
3 絶縁碍子
31 碍子突出部
4 中心電極
41 電極突出部
Z プラグ軸方向
Claims (6)
- 筒状の接地電極(2)と、
該接地電極の内側に保持されると共に、上記接地電極の先端よりも先端側へ突出した碍子突出部(31)を備えた筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内側に保持されると共に、該絶縁碍子の先端よりも先端側へ突出した電極突出部(41)を有する中心電極(4)と、を備え、
該中心電極に高周波電圧を印加することによって、上記接地電極と上記中心電極との間に放電を生じさせるよう構成された、内燃機関用のスパークプラグ(1)であって、
上記接地電極の先端から上記絶縁碍子の先端までのプラグ軸方向(Z)の長さをA、上記中心電極の上記電極突出部の直径をD、プラグ径方向における上記絶縁碍子の上記碍子突出部の厚みをTとしたとき、上記長さA、上記直径D、及び上記厚みTは、それぞれ、A≦3mm、1.7mm≦D≦2.5mm、1.12mm≦T≦1.52mmを満たす、内燃機関用のスパークプラグ(1)。 - 上記長さAは、A≧2mmを更に満たす、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
- 上記直径Dは、D≦2.3mmを更に満たす、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
- 上記接地電極の先端部には、貴金属からなる接地チップ(24)が配されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
- 上記接地チップは、Ir、Pt、又はRhを主成分としてなる、請求項4に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
- 上記接地電極は、プラグ周方向の一部かつプラグ径方向の全体において、先端面(21)が基端側に向かって凹んだ接地凹部(22)を有し、該接地凹部は、少なくとも、プラグ軸方向に直交する方向における上記中心電極及び上記絶縁碍子の両側に形成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
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-
2016
- 2016-07-12 JP JP2016137719A patent/JP2018010756A/ja active Pending
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