JP2018009360A - 木造ユニットを用いた木造積層建築物、及び木造積層建築物の施工方法 - Google Patents
木造ユニットを用いた木造積層建築物、及び木造積層建築物の施工方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
このような木造多重塔は、内部中心に吹き抜けが形成されて階層を重ねた塔身と、その塔身の吹き抜け状の内部中心に設けられた木製心柱と、を有する。木製心柱は、下端部が地上から自立しており、階層間で層間変位が生じたときの各層の浮き上がりを抑制する機能を有している。
また、木造建築物を高層化するための構造として、従来、コアウォール構造や耐力壁併用のラーメン構造等がある。しかしながら、構造が複雑なうえ木造であるので建築物の用途や機能に合わせたデザインの自由度が小さいという課題があり、その点で改善の余地があった。
また、木造ピースを組み合わせることで木造ユニットが構成されるため、建築物の用途や機能に合わせて自由な形状で、任意の箇所に自由に開口部等を設けた木造ユニットを形成することができる。
また、複数層の木造ユニット同士を連結する係留索が設けられているので、係留索によって繋がれた木造ユニットの転倒を抑制することができる。そして、木造ユニット同士を連結する係留索が地震時に引張軸力を負担するため、軽量な木造ユニットには、地震時に木造ユニットに鉛直変位が生じるが、係留索の引張軸力により木造ユニット同士が互いに引き戻され、木造ユニットの浮き上がりを抑制することができる。
このように、支承装置と係留索とを組み合わせた構成とすることで木造積層建築物の高層化を実現することができる。
このように、本発明では、地組により木造ユニットを組み立てることができ、さらに組み立てた木造ユニットをクレーンで吊り上げるといった作業がなくなるので、大型のタワークレーンを設置する必要がなく、施工にかかるコストを低減できる。
木造積層建築物1は、本実施の形態では5層の木造ユニット2A、2B、…2Eが積層されており、地盤に設けられた基礎部11上に設置されている。なお、本実施の形態では、各木造ユニット2A〜2Eは、それぞれ同形状で、上方から見た平面視で正方形状をなしている。
CLT板からなる木造ピース21の大きさとしては、工場から工事現場まで輸送可能な大きさであることが好ましく、例えば最大長さのもので幅3m×長さ15mに設定される。
木造ユニット2の天版22及び底版23(最上層の第1木造ユニット2Aの場合は底版23のみ)には、後述する係留索4が非固着状態で挿通される貫通孔2bが複数(ここでは4つ)設けられている。これら貫通孔2bは、上方から見た平面視で天版22及び底版23のそれぞれの中心から一定の距離だけ離れた位置に設けられ、各層の木造ユニット2における貫通孔2bの位置が上下方向Yに同軸となるように設けられている。
また、木造ユニット2に設けられる内部柱26としては、例えば図3(a)では上方に向けて大径となるラチス柱となっており、図3(b)では斜め柱となっており、図3(c)では上下方向Yに延びる小径柱となっており、図3(d)では上下方向Yに延びる大径柱となっている。
なお、中間床25の上下方向Yの位置は、中間床25によって区画されるフロア高さに合わせて自由に設定することができる。
このような構成のロッキング支承3は、地震時に上下の木造ユニット2、2が水平力を受けると束柱が回転して水平方向及び鉛直方向の変位が生じるとともに、支持する鉛直力に応じた復元力で復元する耐震機能を有している(なお、建物全体を長周期化させるという意味では免震機能を有しているともいえる。)。束柱は、回転により傾斜すると、木製の上部支持体の下面及び下部支持体の上面にめり込みながら、支持する鉛直力に応じた復元力で元の位置に戻る動きをする。
係留索4は、上端部4aが最上層の第1木造ユニット2Aに連結され、下端部4bが基礎部11に連結されており、地震時には水平変位とロッキング支承3に生じる鉛直変位に応じた引張軸力を負担する。
図4(b)に示すように、小変形時には、図1に示すロッキング支承3の回転により鉛直変位(矢印Y1方向)が生じ、木造ユニット2、2同士の間で水平変位(矢印X1方向)が生じる。また、係留索4による引張軸力が傾斜復元力を負荷する。
また、図4(c)に示すように、大変形時には、ロッキング支承3の回転により鉛直変位Y1が大きくなるとともに、木造積層建築物1全体で水平変位X1が生じる。また、係留索4による引張軸力(矢印Y2方向)が木造積層建築物1全体の転倒を抑制する。
先ず、図1に示すように、木造積層建築物1の設置する位置で地盤を掘削し、コンクリートを打設することにより基礎部11が施工される。そして、図5(a)、(b)に示すように、基礎部11上にジャッキアップ装置5を設置し、そのジャッキアップ装置5の周囲に作業構台50を設置する。ジャッキアップ装置5は、木造ユニット2が配置可能なスペースを有する昇降パレット51と、昇降パレット51を上下に移動させるための昇降ジャッキ52と、作業構台50の最上部に設置され昇降パレット51をワイヤで吊り上げ可能とした巻上機53と、を備えたものである。
ジャッキアップ装置5は、建築対象となる木造積層建築物の全層分の木造ユニットの重量(本実施の形態では5層分の木造ユニット2A〜2Eの全重量)を昇降可能な能力を昇降ジャッキ52及び巻上機53に備えたものとされる。作業構台50は、少なくとも1層分の木造ユニット2よりも上方の位置で作業が可能な高さになっている。
ここで、第1木造ユニット2Aの内部空間Rの施工は、例えば天井クレーン等を使用することで並行して進めることができるので、仮設材を低減することができるうえ、工期短縮を図ることができる。
続いて、図5(c)に示すように、第3工程において、ジャッキアップ装置5の第1昇降パレット51Aが上昇位置の状態(第1木造ユニット2Aがジャッキアップされた状態)で、基礎部11上に別の第2昇降パレット51Bを備えたジャッキアップ装置5を設ける。そして、第2昇降パレット51Bの上で第2木造ユニット2B(後行木造ユニット)を上述した第1木造ユニット2Aと同様に地組する。
また、5層の木造ユニット2A〜2Eが積層された適宜なタイミングで、各木造ユニット2A〜2Eの天版22及び底版23に形成される貫通孔2bに係留索4を挿通させて、その係留索4の下端部4bを基礎部11に固定し、上端部4aを第1木造ユニット2Aの底版23に固定することで、係留索4が設置され、木造積層建築物1の施工が完了となる。
なお、施工中の地震に備えて昇降パレット51を係留索4を設置するまで残す、又は支承層(ロッキング支承3が設置される層)となる天版22と底版23との間に、仮設の係留索を設置する等の手順とすることも可能である。
本実施の形態では、複数の木造ピース21を枠状に組み合わせて外殻体を構成した木造ユニット2がユニット化されているので、全体の剛性を確保しつつも、木製により軽量な構造となることから、木造ユニット2を例えば積み木のように積み上げた構造となり、複数層にわたる積層構造を実現することができる。そして、木造ユニット2がユニット化されているので、効率よく施工を行うことができ、施工にかかるコストや工期を低減することが可能となる。
また、木造ピース21を組み合わせることで木造ユニット2が構成されるため、建築物の用途や機能に合わせて自由な形状で、任意の箇所に自由に開口部等を設けた木造ユニット2を形成することができる。
このように、ロッキング支承3と係留索4とを組み合わせた構成とすることで木造積層建築物1の高層化を実現することができる。
例えば、本実施の形態では、複数(5つ)の木造ユニット2のすべてが同形状であり、上下方向に同軸に積層された構成の木造積層建築物1とされているが、このような構成であることに限定されることはない。例えば、木造ユニット2は鉄筋コンクリート造に比べて軽量であり、鉛直方向の荷重の負担が小さいことから、異なる形状の木造ユニット2を積層することが可能である。
例えば、係留索を接続する方法も重量や剛性バランスに合わせて自由に設計することができる。つまり、本実施の形態では基礎部から最上層までを連続して係留索4によって連結しているが、これに限定されることはなく、基礎部から中間層の区間のみを係留索で連結する構造や、中間層から最上層の区間のみを係留索で連結する構造、あるいは中間層の所定の2層間のみを係留索で連結する構成であってもよい。さらには、本実施の形態のような基礎部から最上層までの係留索4に加え、中間層から基礎部(最上層)の係留索を組み合わせた構成とすることも可能である。
2、2A〜2E 木造ユニット
2b 貫通孔
3 ロッキング支承(支承装置)
4 係留索
5 ジャッキアップ装置
10 柔節構造部
11 基礎部
21 木造ピース
22 天版
23 底版
24 側壁
25 中間床
26 内部柱
51、51A、51B 昇降パレット
52 昇降ジャッキ
R 内部空間
Y 上下方向
X 水平方向
Claims (7)
- 任意な形状に形成された複数の木造ピースを枠状に組み合わせて空間を形成した外殻体を構成するとともに、上下方向に積層された箱状の木造ユニットと、
積層された前記木造ユニット同士を層間変位自在に設けるとともに、上下方向に連結する柔節構造部と、
を備えていることを特徴とする木造ユニットを用いた木造積層建築物。 - 前記柔節構造部は、
前記木造ユニット同士の間に介装され、水平力を受けることで水平方向を回転軸にして回転し水平方向及び鉛直方向に変位を生じるとともに、支持する前記木造ユニットの鉛直力に応じた復元力によって元の姿勢に復元する木製の支承装置と、
上下に積層される複数層の前記木造ユニット同士を連結する係留索と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の木造ユニットを用いた木造積層建築物。 - 前記係留索の下端は、当該木造積層建築物の基礎部に連結されていることを特徴とする請求項2に記載の木造ユニットを用いた木造積層建築物。
- 複数層の前記木造ユニットのうち少なくとも1つが他の前記木造ユニットと異なる形状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の木造ユニットを用いた木造積層建築物。
- 前記木造ユニットの内部空間には、該内部空間を上下に仕切る中間床が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の木造ユニットを用いた木造積層建築物。
- 前記木造ユニットの内部空間には、該木造ユニットの天版及び底版に接続される内部柱が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の木造ユニットを用いた木造積層建築物。
- 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の木造ユニットを積層させることで木造積層建築物の施工方法であって、
先行木造ユニットを地組する工程と、
前記先行木造ユニットを1層以上の高さに上昇させる工程と、
上昇した前記先行木造ユニットの下方スペースにおいて、前記先行木造ユニットの下層に位置する後行木造ユニットを地組する工程と、
前記先行木造ユニットを下降させて地組した前記後行木造ユニット上に前記柔節構造部を介装させた状態で一体的に連結する工程と、
一体的に連結された前記先行木造ユニット及び前記後行木造ユニットを1層以上の高さに上昇させる工程と、
を有し、
前記工程を順次繰り返すことで、複数の前記木造ユニットを下側から順次積層し、積層された複数層の前記木造ユニットを上下方向に連結することを特徴とする木造積層建築物の施工方法。
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