JP2015143463A - 建物と補強構造と支持構造とを有する建造物 - Google Patents

建物と補強構造と支持構造とを有する建造物 Download PDF

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Abstract

【課題】簡単な構成で、高い耐震性を有する支持構造、及び補強構造、及びこの支持構造とこの補強構造とを含む建造物を提供する。【解決手段】建造物1aは、建物2と、建物2と支持構造3aとを連結する補強構造50と、四角錐台形に構成された支持構造3aと、地盤に固定された基礎10とを含んでいる。そして、建物2の重心と支持構造3aの剛心とが略一致するように配置し、建物2と補強構造50とを連結し、補強構造50と支持構造3aとを連結し、支持構造3aと前記地盤に固定された基礎10とを連結することにより、補強構造50、及び支持構造3aを介して、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重が前記地盤に固定された基礎10に伝達されるようにした。【選択図】図1

Description

本発明は、既存の建物に組み込み可能な支持構造と補強構造とを含む耐震建物、及びこの支持構造とこの補強構造とを含む仮設構造物に関する。
近年、これまでにない規模の巨大地震が世界各地で発生している。例えば、日本においては、1995年に発生した阪神淡路大震災、2011年に発生した東日本大震災などが記憶に新しい。また、近い将来、いわゆる東海地震、東南海地震、あるいは、南海地震といった巨大地震の発生が予測されており、国民の関心が高まっている。
ところで、従来の耐震建物では、例えば、特許文献1(特開2012−241403号公報)に記載された構造パネルのような耐震要素をバランスよく配置して、地震力等の水平荷重が作用したときに建物全体に働くねじれの力を小さくしている。これは、建物の重さの中心である重心と建物の強さの中心である剛心とのずれ、すなわち偏心が大きくなればなるほど、地震力等の水平荷重が作用したときに建物全体に大きなねじれの力が作用し、このねじれの力によって建物の構造耐力上主要な部分のうち最も弱い部分が崩壊し、それが引き金となって建物全体が崩壊するおそれがあるためである。
特開2012−241403号公報
しかし、前記従来の耐震建物を大きな地震に耐え得る建物にするためには、非常に多くの耐震要素を建物に配置する必要がある。そのため、この従来の技術による耐震建物では、所望の耐震性を得るためには構成が複雑になるという課題があった。
そこで、本発明の課題は、簡単な構成で、高い耐震性を有する支持構造、及び補強構造、及びこの支持構造とこの補強構造とを含む耐震建物、並びに、この支持構造とこの補強構造とを含む仮設構造物を提供することにある。
前記課題を解決するため、本発明の耐震建物は、建物と、補強構造と、支持構造と、地盤に固定された基礎とを有し、前記建物と前記補強構造とを連結し、前記補強構造と前記支持構造とを連結し、前記支持構造と前記地盤に固定された基礎とを連結することにより、前記補強構造、及び前記支持構造を介して、前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重が前記地盤に固定された基礎に伝達されるようにした。
また、本発明の耐震建物は、次の構成(A)を任意に採用するのが好ましい。
(A)平面視において、前記建物の重心と、前記支持構造の剛心とが略一致する。
本発明の支持構造は、1つ又は複数の柱を有し、前記補強構造と前記1つ又は複数の柱とを連結し、前記1つ又は複数の柱と前記地盤に固定された基礎とを連結して、前記補強構造、及び前記1つ又は複数の柱を介して、前記補強構造とそれに連結した前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重が前記地盤に固定された基礎に伝達されるようにした。
また、本発明の支持構造は、次の構成(B)を任意に採用するのが好ましい。
(B)複数の前記柱を相互に連結する柱連結部を有する。
また、本発明の支持構造は、次の構成(C)を任意に採用するのが好ましい。
(C)縦断面において、複数の前記柱を、その中心を通る直線が相互に直交しないように配置する。
本発明の補強構造は、1つ又は複数の補強体を有し、前記建物と前記1つ又は複数の補強体とを連結し、前記1つ又は複数の補強体と前記支持構造とを連結して、前記1つ又は複数の補強体を介して、前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重が前記支持構造に伝達されるようにした。
また、本発明の補強構造は、次の構成(D)を任意に採用するのが好ましい。
(D)前記1つ又は複数の補強体は、高い引張強度を有する。
本発明の仮設構造物は、補強構造と支持構造とを有し、建物と前記補強構造とを連結し、前記補強構造と前記支持構造とを連結して、前記補強構造とそれに連結した前記建物とを前記支持構造で支持して移動し、移動した状態を維持できるようにした。
本発明の耐震建物によれば、前記建物、前記補強構造、前記支持構造、及び前記地盤に固定された基礎が連結されており、前記補強構造、及び前記支持構造を介して、前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重を前記地盤に固定された基礎に伝達できる。このため、簡単な構成で、耐震性の高い耐震建物を得ることができる。
また、上記構成(A)によれば、平面視において、前記建物の重心と、前記支持構造の剛心とが略一致するように構成しているので、簡単な構成で、高い耐震性を発揮できる。
本発明の支持構造によれば、前記補強構造と前記1つ又は複数の柱とが連結され、前記1つ又は複数の柱と前記地盤に固定された基礎とが連結されており、前記補強構造、及び前記1つ又は複数の柱を介して、前記補強構造とそれに連結した前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重を前記地盤に固定された基礎に伝達できる。このため、簡単な構成で、耐震性の高い支持構造を得ることができる。
また、上記構成(B)によれば、前記柱連結部を介して、複数の前記柱が相互に連結されており、前記補強構造、及び前記柱連結部で相互に連結された前記複数の柱を介して、前記補強構造とそれに連結した前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重を前記地盤に固定された基礎に分散して伝達できる。このため、簡単な構成で、耐震性の高い支持構造を得ることができる。
また、上記構成(C)によれば、縦断面において、前記複数の柱は、その中心を通る直線が相互に直交しないように配置されていることから、前記支持構造は、前記複数の柱の中心を通る直線の交点を頂点とする力学的に有利な構造を有することができる。このため、耐震性の高い支持構造を得ることができる。
本発明の補強構造によれば、前記建物と前記1つ又は複数の補強体とが連結され、前記1つ又は複数の補強体と前記支持構造とが連結されているので、前記1つ又は複数の補強体を介して、前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重を前記支持構造に伝達できる。このため、簡単な構成で、耐震性を発揮できる。
また、上記構成(D)によれば、前記1つ又は複数の補強体は、高い引張強度を有するので、例えば、地震力を受けて前記建物の軸組に引張荷重が生じた場合には、前記建物に連結された前記高い引張強度を有する1つ又は複数の補強体を介して、前記建物の軸組に生じた引張荷重を前記支持構造に伝達できる。このため、簡単な構成で、耐震性を発揮できる。
また、上記構成(D)によれば、高い引張強度を有する前記1つ又は複数の補強体は、前記建物の積載荷重を支持しない構成にできる。このため、簡単な構成で、耐震性を発揮できる。
本発明の仮設構造物によれば、建物、前記補強構造、及び前記支持構造が連結されており、前記補強構造とそれに連結した前記建物とを前記支持構造で支持して移動し、移動した状態を維持できる。このため、前記建物を建物基礎から切り離し、前記建物を移動し、前記建物基礎を除去し、耐震性の高い新設建物基礎を設け、前記建物を再び移動して、前記耐震性の高い新設建物基礎に連結できる。このため、耐震性の高い耐震建物を得ることができる。
本発明の耐震建物の縦断面模式図である。 図1の耐震建物の模式斜視図である。 本発明の耐震建物の他の例を示す縦断面模式図である。 図3の耐震建物の支持構造の上面図である。 図3の耐震建物の支持構造の立面図である。 図3の耐震建物の支持構造の柱連結部及び昇降装置を示す部分拡大図である。 図3の耐震建物の補強構造及び支持構造連結部を示す模式斜視図である。 本発明の支持構造の他の例を示す縦断面模式図である。 本発明の支持構造の他の例を示す縦断面模式図である。 本発明の支持構造の他の例を示す縦断面模式図である。 本発明の支持構造の他の例を示す縦断面模式図である。 図3の耐震建物の内部の一例を示す縦断面模式図である。 図3の耐震建物の支持構造の柱に取り付けられた継ぎ手部材を示す部分拡大図である。 本発明の仮設構造物の施工方法を示す立面図である。 本発明の仮設構造物の施工方法を示す立面図である。 本発明の仮設構造物の施工方法を示す立面図である。 本発明の仮設構造物の施工方法を示す立面図である。 本発明の仮設構造物の施工方法を示す立面図である。 本発明の仮設構造物の施工方法を示す立面図である。 本発明の仮設構造物の施工方法を示す立面図である。 本発明の仮設構造物の施工方法を示す立面図である。 本発明の仮設構造物の施工方法を示す立面図である。 本発明の仮設構造物の施工方法の他の例を示す立面図である。 本発明の仮設構造物の施工方法の他の例を示す立面図である。 本発明の仮設構造物の施工方法の他の例を示す立面図である。 本発明の仮設構造物の施工方法の他の例を示す立面図である。 本発明の仮設構造物の施工方法の他の例を示す立面図である。
以下、本発明を図示の実施形態により詳細に説明する。
図1及び図2に示した実施例1において、支持構造3aは建物2の内部に四角錐台形を構成している。
図3〜図13に示した実施例2において、支持構造3bは建物2の内部に四角錐形を構成している。
図14〜図22に示した実施例3において、支持構造3eは建物2の外部に屋根形を構成している。
図14〜図16及び図23〜図27に示した実施例4において、支持構造3aは建物2の底部に四角錐台形を構成している。
本実施形態は、図1及び図2に示す。
本発明の耐震建物1aは、図1に示すように、建物2と、四角錐台形に構成された支持構造3aと、建物2と支持構造3aとを連結する補強構造50と、地盤に固定された複数の基礎10とから構成されている。建物2は、地盤に固定された建物基礎4上に配置されている。なお、本実施形態では、建物2は、平屋の木造家屋である。
支持構造3aは、図1に示すように、地盤に固定された複数の基礎10の上面に設けられた複数の基礎連結部11と、下端が基礎連結部11に連結された複数の柱20と、複数の柱20を相互に連結している複数の柱連結部30aとから構成されており、図2に示すように、四角錐台構造体を形成している。
なお、平面視における支持構造3aの剛心は、図2に示すように、四角錐台形に構成された支持構造3aの水平断面H(斜線部)と一致する。したがって、平面視において、水平断面H(すなわち面)と建物2の重心(すなわち点)とが重なるように支持構造3aを形成して、支持構造3aの剛心と建物2の重心とを一致させるようにしている。なお、建物2の重心は、建築構造計算によって算出する。
基礎10は、立方体形状を有し、鉄筋コンクリートで構成されている独立基礎である。基礎10は、図3に示すように、建物2の建物基礎4の内側に、建物基礎4とは独立して形成されており、水平方向に互いに離間して配置されている。このように、基礎10と建物基礎4とが力学的に相互作用を及ぼさないようにしている。また、この基礎10の上面には、基礎連結部11が設けられている。
基礎10の強度は、この基礎10が支持する支持構造3aに加わる荷重に応じて、設計により決定される。なお、支持構造3aが支持する荷重には、建物2の鉛直荷重(固定荷重、積載荷重、積雪荷重)に加えて、建物2が受ける水平荷重(風圧力、地震力等)が含まれる。また、基礎10の種類に制限はなく、直接基礎であってもよいし、杭基礎であってもよい。
基礎連結部11は、鉄板等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、柱20と基礎10とを連結している。
柱20は、図1及び図2に示すように、直線形状を有し、支持構造3aの設計条件に応じて、例えば、木材、鋼管、鉄骨あるいは鉄筋コンクリートで構成されている。
補強構造50は、図1及び図2に示すように、建物2の軸組に沿って取り付けられた複数の補強体51から構成されており、建物2の内部にフレーム状の構造体を形成している。
補強体51は、例えば、直線形状の鋼管またはH鋼で構成されており、建物2と補強体51とを連結する建物連結部60thと、複数の補強体51を相互に連結する補強体連結部60hhと、補強体51と柱20とを連結する支持構造連結部60hsとのうち少なくとも2つの連結部を有しており、この少なくとも2つの連結部を介して建物2の軸組、複数の補強体、及び複数の柱20を相互に連結して、補強構造50を構成している。
建物連結部60thは、鉄等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、建物2と補強体51とを連結して、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を補強体51に確実に伝達できるように構成されている。
補強体連結部60hhは、鉄等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、複数の補強体51を相互に連結して、補強体51が受ける荷重を、複数の補強体51から構成された補強構造50の全体に確実に伝達できるように構成されている。
支持構造連結部60hsは、鉄等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、補強体51と柱20とを連結して、補強構造50とそれに連結した建物2の荷重を柱20に確実に伝達できるように構成されている。
次に、前記構成の耐震建物1aの施工方法について説明する。ここでは、既存の建物2に支持構造3aと補強構造50とを組み込む施工方法を説明する。
まず、図1に示すように、建物2の建物基礎4とは独立した、支持構造3aの基礎10を形成する。基礎10の形成に先立って、基礎10を形成するために必要なスペースを確保するため、建物2内の床組の一部または全部を除去しておく。また、基礎10の上面に基礎連結部11を取り付けるためのアンカーボルト等を取り付けておく。
そして、形成された基礎10の上に基礎連結部11を取り付けて、柱20の下端を基礎連結部11に固定するとともに、図1及び図2に示すように、複数の柱20を柱連結部30aで相互に連結して支持構造3aを形成する。このとき、基礎10を形成するときと同様に、支持構造3aを形成するために必要なスペースを確保するため、建物2内の床組、壁、天井等の一部または全部を除去しておく。
次に、図1に示すように、建物2の軸組と複数の補強体51とを建物連結部60thを介して連結する。このとき、基礎10を形成するときと同様に、補強体51と建物2の軸組とを連結するために必要なスペースを確保するため、建物2の床組、壁、天井等の一部または全部を除去しておく。
そして、図1及び図2に示すように、複数の補強体51を補強体連結部60hhを介して相互に連結する。
最後に、図1及び図2に示すように、複数の補強体51から構成された補強構造50と支持構造3aとを支持構造連結部60hsを介して連結し、耐震建物1aを形成する。
前記構成の耐震建物1aによれば、建物2、補強構造50、支持構造3a、及び地盤に固定された基礎10とが連結されており、補強構造50、及び支持構造3aを介して、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重が地盤に固定された複数の基礎10に伝達されるように構成している。このため、簡単な構成で、高い耐震性を有する耐震建物1aを得ることができる。
また、前記構成の耐震建物1aによれば、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を支持構造3aで支持できることから、例えば、建物2が老朽化した建物であっても、高い耐震性を発揮できる。
また、前記構成の耐震建物1aによれば、支持構造3aの剛心と建物2の重心とを一致させるようにしている。このように、支持構造3aの剛心と建物2の重心とを一致させるようにすることで、耐震建物1aの偏心を低減している。このため、簡単な構成で、高い耐震性を有する耐震建物1aを得ることができる。
前記構成の支持構造3aによれば、支持構造連結部60hsを介して補強構造50と複数の柱20とが連結され、柱連結部30aを介して複数の柱20が相互に連結され、複数の基礎連結部11を介して複数の柱20と複数の基礎10とが連結されており、これにより補強構造50とそれに連結した建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重が、補強構造50、及び支持構造3aを介して複数の基礎10に伝達されるように構成している。このため、簡単な構成で、高い耐震性を発揮できる。
また、前記構成の支持構造3aによれば、図2に示すように、柱20は四角錐台構造体を形成している。これにより、支持構造3aが力学的に有利な構造を有するので、耐震性の高い支持構造3aを得ることができる。
また、前記構成の支持構造3aによれば、平面視において、支持構造3aの剛心は水平断面Hで示した平面と一致することから、平面視において、支持構造3aの剛心と建物2の重心とを一致させるためには、水平断面H(すなわち面)と建物2の重心(すなわち点)とが重なるように支持構造3aを形成すればよい。このため、設計及び施工が容易となり、工費を低減できる。
本発明の補強構造50によれば、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を、建物連結部60thを介して建物2の軸組から支持構造3aに伝達できる。このため、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を力学的に有利な支持構造3aで確実に支持することができる。
(変形例)
(1)支持構造3a及び補強構造50は、既存、新築を問わず、また、木造、鉄筋コンクリート造等の工法を問わず、任意の建物2に組み込むことができる。
(2)支持構造3aの形状は、四角錐台形に限られない。支持構造3aは、補強構造50、及び支持構造3aを介して建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を基礎10に伝達できるものであれば任意の形状にできる。例えば、複数の柱20を配置する力学的に有利な構造として、図3〜図5に示すように、四角錐構造体としてもよい。
(3)支持構造3aには、トラス構造を採用できる。
(4)支持構造3aは、1つの基礎10と、1つの基礎10に連結された1つの柱20とで構成できる。
(5)支持構造3aは、力学的に安定な形状であり、強い外力が作用した場合でも支持構造3aの形状を維持できることから、耐震シェルタとして利用できる。
(6)基礎10は、独立基礎に限らず、布基礎等の連続基礎であってもよい。基礎連結部11を水平方向に互いに離間して設けることができる基礎であれば、任意の種類の基礎を採用できる。
(7)基礎連結部11には、例えば、免震構造体(例えば積層ゴム,金属球、樹脂等の貯留液体)あるいは制振構造体(例えば制振ダンパー、耐震リング)あるいは断震構造体(例えば空気等の貯留気体)を採用してもよい。このとき免震構造体、制振構造体および断震構造体には、公知の技術を用いてもよいし、新規の技術を用いてもよい。
(8)基礎連結部11において、柱20と基礎10とは、剛接合のほか、ピン接合など任意の接合方法にできる。
(9)また、基礎連結部11において、例えば、柱20の下部形状を概球形に構成して、柱20と地盤面とがなす角度が自由に変わるように設計してもよい。また、このとき、他の物質(例えば油、樹脂、空気層)を介して柱20と基礎10とを連結してもよい。
(10)補強構造50は、支持構造3aを介さずに基礎10に連結してもよい。
(11)補強構造50の構成要素には、補強体51に加えて任意の要素を追加できる。
(12)補強体51は、建物2と補強体51とを連結する建物連結部60thと、複数の補強体51を相互に連結する補強体連結部60hhと、補強体51と柱20とを連結する支持構造連結部60hsとのうち少なくとも2つの連結部を有しているが、これに限らない。補強体51には、任意の連結部を追加できる。
(13)建物連結部60th、補強体連結部60hh、及び支持構造連結部60hsの材料は、公知の材料に限られない。高い接合強度を発揮できる材料であれば、任意の材料を採用できる。
(14)建物連結部60thには、例えば、免震構造体(例えば積層ゴム,金属球、樹脂等の貯留液体)あるいは制振構造体(例えば制振ダンパー、耐震リング)あるいは断震構造体(例えば空気等の貯留気体)を採用してもよい。このとき免震構造体、制振構造体および断震構造体には、公知の技術を用いてもよいし、新規の技術を用いてもよい。
(15)補強構造50には、トラス構造を採用できる。
(16)補強構造50は、耐震性を備えた任意の材料で構成できる。例えば、高い圧縮強度を有する材料(例えばコンクリート、土、ガラス、金属、樹脂等の固体、及び油脂、樹脂等の液体、及び空気等の気体)、高い引張強度を有する材料(例えば鉄骨、鋼管、ワイヤー、チェーン、金網等の金属材料、アラミド繊維シート、クモの糸等の繊維材料)、高いせん断強度を有する材料、及び高い曲げ強度を有する材料のうち、1つ以上の強度特性を有する材料を組み合わせて構成できる。
(17)なお、高い引張強度を有する材料で構成された補強構造50は、建物2の常時荷重(固定荷重及び積載荷重)を支持しない構成にできる。これにより、簡単な構成で、耐震性を有する耐震建物を得ることができる。
(18)また、高い引張強度を有する補強構造50は、建物2の構造耐力上主要な部分のX軸(例えば南北方向に配置された土台と梁)、Y軸(例えば東西方向に配置された土台と梁)、及びZ軸(例えば柱と基礎)の一部又は全部を連結して、建物2の軸組と高い引張強度を有する補強構造50とが力学的な単一構造体を構成するように取り付けてもよい。これにより、建物2の軸組が受ける引張荷重をこの単一構造体で支持するように構成できる。このため、簡単な構成で、耐震性を有する耐震建物を得ることができる。
(19)高い引張強度を有する補強構造50の施工方法は、例えばボルト等で建物2に固定してもよいし、樹脂等を用いて建物2に接着してもよいし、建物2から補強構造50を吊り下げるようにしてもよい。つまり、建物2の軸組が受ける引張荷重を補強構造50で確実に支持できる構成であれば、任意の施工方法を採用できる。
(20)また、高い引張強度を有する補強構造50は、耐震材としての用途に加え、例えば、建物2の内装用又は外装用の下地材(例えば金網)、あるいは建物2の内装用又は外装用の仕上材(例えばクロス、カーペット、塗装材)の用途を兼ね備えることができる。
(21)本実施形態の耐震建物1aでは、支持構造3aと補強構造50とは独立した2つの構造体としているが、この構成に限られない。支持構造3aと補強構造50とは単一構造体として形成してもよい。
(22)耐震建物1aは、支持構造3aと補強構造50に加えて、任意の耐震要素を備えることができる。
(23)また、図示していないが、補強構造50と支持構造3aとの連結は、支持構造連結部60hsを介する連結に加えて、例えばチェーン、ワイヤー、メッシュ等を用いた公知又は新規の技術を用いて繋留するようにしてもよい。これにより、例えば、災害時の水圧、風圧等の臨時荷重を受けて建物2がそれを支持していた地盤面から離れて移動した場合には、建物2を移動しようとする荷重を補強構造50を介して支持構造3aで支持することができる。これにより、建物2の移動範囲を限定できることから、災害による被害を軽減できる可能性がある。なお、ここで繋留とは、常時は数十センチメートル以内の離間距離をおいて相互に連結されている補強構造50と支持構造3aとが、非常時には例えば数メートルから数十メートルの離間距離をおいて相互に連結された状態となる連結方法をいう。
本実施形態は、図3〜図13に示す。
本発明の耐震建物1bは、図3に示すように、建物2と、四角錐形に構成された支持構造3bと、建物2と支持構造3bとを連結する補強構造1050と、地盤に固定された4つの基礎10とから構成されている。建物2は、地盤に固定された建物基礎4上に配置されている。なお、本実施形態では、建物2は、平屋の木造家屋である。
支持構造3bは、図3〜図5に示すように、地盤に固定された4つの基礎10の上面に設けられた4つの基礎連結部1011と、下端1020aが基礎連結部1011に連結された4本の柱20と、4本の柱の上端1020bを連結している柱連結部30bと、柱連結部30bと補強構造1050とを連結している支持構造連結部1060とから構成されており、柱連結部30bを頂点とする四角錐構造体を形成している。
基礎10は、立方体形状を有し、鉄筋コンクリートで構成されている独立基礎である。基礎10は、図3に示すように、建物2の建物基礎4の内側に、建物基礎4とは独立して形成されており、図4に示すX,Y方向に沿って、水平方向に互いに離間して配置されている。このように、基礎10と建物基礎4とが力学的に相互作用を及ぼさないようにしている。また、この基礎10の上面には、基礎連結部11が設けられている。
基礎10の強度は、この基礎10が支持する支持構造3bに加わる荷重に応じて、設計により決定される。なお、支持構造3bが支持する荷重には、建物2の鉛直荷重(固定荷重、積載荷重、積雪荷重)に加えて、建物2が受ける水平荷重(風圧力、地震力等)が含まれる。また、基礎10の種類に制限はなく、直接基礎であってもよいし、杭基礎であってもよい。
基礎連結部1011は、鉄板等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、プレート1012と下側柱固定部1013とからなっている。
プレート1012は、基礎10の上面と略等しい寸法の正方形状を有しており、例えば基礎10の上面に埋め込んだアンカーボルトを介して、基礎10に取り付けられている。また、下側柱固定部1013は、プレート1012の上面の略中央に配置されており、斜め上方に延在している。この下側柱固定部1013に、柱20の下端1020aがそれぞれ連結されている。なお、下側柱固定部1013は、支持構造3bの設計条件に応じて、任意の角度でプレート1012に配置できる。
柱20は、直線形状を有し、支持構造3bの設計条件に応じて、例えば、木材、鋼管、鉄骨あるいは鉄筋コンクリートで構成されている。柱20は、図4に示すように、平面視において、4つの基礎10を角とする四角形の対角線を成す直線L1,L2に沿って配置されている。柱20の上端1020bは、直線L1,L2の交点CLを中心として配置された柱連結部30bで互いに連結されている。また、柱20は、図5に示すように、立面視において、基礎連結部1011から直線L1,L2の交点CLに向かって斜め上方に延びている。
なお、直線L1,L2の交点CLは、設計により、支持構造3bの剛心と一致させている。
柱連結部30bは、鉄板等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、平板部1031と、平板部1031の下面に固定されている上側柱固定部1032と、平板部1031の中央に取り付けられた昇降装置1033とからなっている。
なお、前述のように、柱連結部30bの中心は、直線L1,L2の交点CLに位置しているため、設計上、柱連結部30bの中心と支持構造3bの剛心とは一致している。
平板部1031は、図4に示すように、平面円形状を有し、昇降装置1033が作動するためのねじ孔1031aが中央に形成されている。上側柱固定部1032は、図5に示すように、基礎10上の下側柱固定部1013に向かって、それぞれ斜め下方に延びている。この上側柱固定部1032に、柱20の上端1020bがそれぞれ連結されている。
なお、上側柱固定部1032と下側柱固定部1013とは、同じ部材を用いてもよいし、それぞれ異なる部材としてもよい。
昇降装置1033は、例えば、ねじジャッキであり、図6に示すように、作動させると平板部1031のねじ孔1031aからねじ軸が上昇するように構成されている。ねじ軸の上端は、支持構造連結部1060と接合可能な形状を有している。また、昇降装置1033は、直線L1,L2の交点CLが中心に位置するように配置されている。
支持構造連結部1060は、鉄板等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、柱連結部30bの昇降装置1033と補強構造1050とを連結している。支持構造連結部1060は、柱連結部30bと補強構造1050とを連結できるものであればよく、任意の構造または形状等を採用できる。
補強構造1050は、図7に示すように、小屋組1043を構成する部材のうち最下部の横架材である小屋梁5及び桁6(共に図1及び図3に示す)の下部全体にバランスよく配置された第1の補強体1051と、1階床組1041を構成する部材のうち最下部の横架材である土台7(図1及び図3に示す)の下部全体にバランスよく配置された第2の補強体1052と、第1,第2の補強体1051,1052を相互に連結するための補強連結部1053とからなっている。
第1,第2の補強体1051,1052は、例えば、複数の直線形状のチャンネル鋼またはH鋼を組み合わせた構造体であり、建物2の横架材に沿って取り付けられている。チャンネル鋼またはH鋼の接合部分は、例えば溶接により固定されている。
第1の補強体1051を建物2に取り付けることによって、建物2の小屋梁5及び桁6を持ち上げて、建物2の小屋組を吊り上げることが可能になる。また、第2の補強体1052を建物2に取り付けることによって、建物2の土台7を持ち上げること、すなわち、建物2の建物基礎4よりも上部の構造体を、その形状を維持した状態で吊り上げることが可能になる。
補強連結部1053は、例えば、直線形状のチャンネル鋼またはH鋼であり、建物2の縦架材(柱等)に沿って取り付けられている。補強連結部1053には、第1,第2の補強体1051,1052がそれぞれ接合され、補強連結部1053と第1,第2の補強体1051,1052とが一体となって、補強構造1050を構成している。補強連結部1053と第1,第2の補強体1051,1052との接合部分は、例えば溶接により固定されている。
このように、補強構造1050は、建物2の軸組と相互に絡まり合うように配置された、いわばジャングルジムのような構造体を形成している。この補強構造1050を建物2に取り付けることによって、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を、補強構造1050を介して建物2の軸組から支持構造連結部1060に伝達できる。従って、建物2の土台7と建物基礎4とを切り離して、補強構造1050を昇降装置1033により持ち上げることで、建物2の建物基礎4よりも上部の構造体を持ち上げることができる。
なお、「建物2の建物基礎4よりも上部の構造体」とは、建築基準法における「構造耐力上主要な部分」のうち、基礎及び基礎ぐいを除いたものをいう。
前記耐震建物1bでは、図3に示すように、第1の補強体1051の中央部Cに支持構造連結部1060が連結されている。支持構造連結部1060は、設計により、建物2の平面における重心と略一致するように配置している。一方、昇降装置1033は、直線L1,L2の交点CL、すなわち、支持構造3bの剛心が中心に位置するように配置されている。従って、支持構造連結部1060を介して、昇降装置1033を第1の補強体1051に連結することで、建物2の重心と支持構造3bの剛心とが略一致するようになる。このように、建物2の重心と支持構造3bの剛心とを一致させるようにすることで、耐震建物1bの偏心を低減している。なお、建物2の重心及び支持構造3bの剛心は、建築構造計算によって算出する。
また、図示していないが、前記耐震建物1bでは、昇降装置1033により建物2の建物基礎4よりも上部の構造体を持ち上げて、持ち上げた状態(鳥籠の状態)を維持している。つまり、前記耐震建物1bは、建物2を支持構造3bで吊り下げた吊構造を有している。このため、建物2に加わる荷重を確実に支持構造3bに伝達させることができる。また、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重が支持構造3bにより支持されているので、建物基礎4の構成を簡略化でき、基礎工事のコストを低減できる。
また、建物2を支持構造3bで吊り下げているので、従来の外壁の代わりに膜構造の外壁を用いることも可能となり、大スパンの開放的な居室空間を実現できる。また、支持構造3bを建物2の内部に配置しているので、支持構造3bの外部、すなわち建物2と支持構造3bとで囲まれた空間も居室利用でき、従来の外壁をピラミッド形状とした建物が持つ容積率の不利益を解消できる。
次に、前記構成の耐震建物1bの施工方法について説明する。ここでは、既存の建物2に支持構造3bと補強構造1050とを組み込む施工方法を説明する。
まず、図3に示すように、建物2の建物基礎4とは独立した、支持構造3bの基礎10を形成する。基礎10の形成に先立って、基礎10を形成するために必要なスペースを確保するため、建物2内の床組の一部または全部を除去しておく。また、基礎10の上面に基礎連結部1011を取り付けるためのアンカーボルト等を取り付けておく。
そして、形成された基礎10の上に基礎連結部1011を取り付けて、柱20の下端1020aを下側柱固定部1013に固定する。そして、柱20の上端1020bを柱連結部30bの上側柱固定部1032に固定する。このとき、基礎10を形成するときと同様に、支持構造3bを形成するために必要なスペースを確保するため、建物2内の床組、壁、天井等の一部または全部を除去しておく。
次に、図3に示すように、柱連結部30bの昇降装置1033と補強構造1050とを支持構造連結部1060を介して連結する。そして、建物2と建物基礎4とを切り離し、昇降装置1033を作動させて、建物2を持ち上げる。
なお、昇降装置1033により建物2を持ち上げるので、建物2の底部の工事を容易に行える。例えば、既存の建物基礎4を撤去して、地盤改良工事を行ったあと、新たな建物基礎を形成することも容易に実現できる。
前記構成の耐震建物1bによれば、建物2、補強構造1050、支持構造3b、及び地盤に固定された4つの基礎10が連結されているので、高い耐震性を発揮できる。なお、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を支持構造3bで支持できるため、例えば、建物2が老朽化した建物であっても、高い耐震性を発揮できる。
前記構成の支持構造3bによれば、支持構造連結部1060、柱連結部30b、4つの柱20、及び4つの基礎連結部1011が連結されており、これにより、支持構造連結部1060、柱連結部30b、4つの柱20、及び4つの基礎連結部1011を介して、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重が基礎10に伝達されるように構成している。このため、簡単な構成で、高い耐震性を有する支持構造3bを得ることができる。
また、支持構造3bの縦断面において、4つの柱20は、その中心を通る直線L1,L2が相互に直交しない角度を持って接合している。これにより、支持構造3bが、柱連結部30bを頂点とする力学的に有利な構造を有するので、耐震性の高い支持構造3bを得ることができる。
前記構成の補強構造1050によれば、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を建物2の軸組から支持構造連結部1060を介して地盤に固定された4つの基礎10に伝達できる。このため、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を力学的に有利な支持構造3bで確実に支持することができ、耐震性の高い耐震建物1bを得ることができる。
また、前記工法を用いることで、前記支持構造3bを建物2に組み込むことができ、簡単な構成で、高い耐震性を有する耐震建物1bを提供できる。
(変形例)
(1)補強構造1050及び支持構造3bは、既存、新築を問わず、また、木造、鉄筋コンクリート造等の工法を問わず、任意の建物2に組み込むことができる。
(2)支持構造3bは、支持構造連結部1060、柱連結部30b、柱20、及び基礎連結部1011が連結されており、支持構造連結部1060、柱連結部30b、柱20、及び基礎連結部1011を介して建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重が基礎10に伝達できるものであればよく、四角錐構造体に限られない。例えば、4つの柱20の中心を通る直線L1,L2が相互に直交しないように、柱20を配置する力学的に有利な構造として、図1〜図2に示すように、四角錐台構造体としてもよい。また、図8に示すように、半球(ドーム、釣鐘、またはこれらの変形)形状を有する支持構造3cを採用してもよいし、図9に示すように、球形状を有する支持構造3dを採用してもよいし、図17〜図19に示すように、屋根形の支持構造3eを採用してもよいし、また、図示していないが、ヴォールト型形状を採用してもよい。
(3)支持構造3b及び/又は補強構造1050の外周に膜構造の外壁を設けてもよい。支持構造3b及び/又は補強構造1050の外周に膜構造の外壁を設けることで、例えば外観のデザイン性を高めることができる。
(4)基礎10は、独立基礎に限らず、布基礎等の連続基礎であってもよい。基礎連結部1011を水平方向に互いに離間して設けることができる基礎であれば、任意の種類の基礎を採用できる。
(5)基礎10は、建物基礎4の内側に形成されているが、これに限られず、図8及び図10に示すように、建物の外部に形成してもよいし、支持構造の設計条件に応じて、図9に示すように、建物の中央部等の任意の位置に形成してもよい。また、基礎10と建物基礎4とは、独立して設ける必要はなく、例えば、基礎を建物基礎に接する位置に設けてもよいし、図11に示すように、基礎と建物基礎とを一体に形成してもよい。
(6)基礎連結部1011は、例えば、免震構造体(例えば積層ゴム,金属球、樹脂等の貯留液体)あるいは制振構造体(例えば制振ダンパー、耐震リング)あるいは断震構造体(例えば空気等の貯留気体)を介して基礎10に配置してもよい。このとき免震構造体、制振構造体および断震構造体には、公知の技術を用いてもよいし、新規の技術を用いてもよい。
(7)基礎連結部1011において、柱20と基礎10とは、剛接合のほか、ピン接合など任意の接合方法にできる。例えば、ピン接合によりトラス構造体を形成してもよいし、また柱20の下部形状を概球形として、柱20と地盤面とがなす角度が固定されず、1つ以上の角度を取るように設計してもよい。
(8)図12に示すように、柱20に継ぎ手部材1021を設けてもよい。継ぎ手部材1021は、必要に応じて、例えば図13に示すような断面T字形状の腕部1022を有し、柱20の任意の位置に取り付けられる。腕部1022によって、例えば、2階床組1042を支える梁1040、あるいは可動壁1071の支持部材1070を任意の位置で支持できるので、建物2内部の設計の自由度を高めることができる。そのため、継ぎ手部材1021は、必要な耐荷重強度に応じて、木材、鋼管、鉄骨あるいは鉄筋コンクリート等で構成される。
(9)可動壁1071は、可動壁1071の上部及び下部に取り付けられたレールによって移動可能であり、居室空間の任意の場所に配置できる。また、図12に示すように、可動壁1071は、必要に応じて、可動本棚、ベッドあるいは机などの可動家具1072に置き換えることができる。これらの可動壁1071及び可動家具1072は、継ぎ手部材1021を介して支持構造3bに吊り下げられていることから、地震時にも転倒することなく、安全な居室空間が実現できる。
(10)平板部1031は、平面円形状に限らず、平面正方形状等、任意の形状を採用できる。
(11)昇降装置1033は、任意の構造あるいは形状を有する昇降装置を採用することができる。また、建物を下から押し上げるジャッキ型のものに限らず、建物を上から引き上げるタイプのものを採用してもよい。この場合、図8、図11に示すように、柱連結部30bが支持構造連結部1060よりも上方に位置することになる。
(12)昇降装置1033には、曳家、エレベーター、クレーン等に用いられる公知の技術を用いてもよいし、新規の技術を用いてもよい。
(13)昇降装置1033は、必要時に手動及び/又は自動で作動する昇降装置を採用することができる。例えば、津波・浸水等の被害が予測される場合、手動及び/又は自動で作動する昇降装置を作動させることにより、建物2と地盤面間の距離を変えることができる。これにより、災害による被害を軽減できる可能性がある。
(14)昇降装置1033は、必ずしも設ける必要はない。この場合でも、支持構造が建物の荷重及び/又は建物が受ける荷重の一部を支持できるので、耐震性の高い耐震建物を提供できる。なお、この場合の建物と支持構造との連結は、支持構造連結部1060と柱連結部の平板部とを直接接合することにより行う。また、昇降装置を建物の底部に配置して、建物を持ち上げて支持構造と連結したあとで取り外すようにしてもよい。
(15)補強構造1050は、第1の補強体1051と、第2の補強体1052と、第1,第2の補強体1051,1052を相互に連結するための補強連結部1053とから構成されているが、これに限らない。少なくとも第1の補強体を建物の小屋組に取り付けることで、建物を支持構造によって持ち上げることができる。また、第2の補強体1052及び補強連結部1053は、例えば、建物を安全かつ確実に持ち上げることが困難な場合(例えば木造建物あるいは老朽化建物)に、必要に応じて、建物に取り付けるようにしてもよい。
(16)また、図示していないが、補強構造1050と支持構造3bとは、支持構造連結部1060を介する連結方法に加えて、例えばチェーン、ワイヤー、メッシュ等を用いた公知又は新規の技術を用いて繋留するようにしてもよい。これにより、例えば、災害時の水圧、風圧等の臨時荷重を受けて建物2がそれを支持していた地盤面から離れて移動した場合には、建物2を移動しようとする荷重を補強構造1050を介して支持構造3bで支持することができる。これにより、建物2の移動範囲を限定できることから、災害による被害を軽減できる可能性がある。なお、ここで繋留とは、常時は数十センチメートル以内の離間距離をおいて相互に連結されている補強構造1050と支持構造3bとが、非常時には例えば数メートルから数十メートルの離間距離をおいて相互に連結された状態となる連結方法をいう。
(17)建物2の補強は、補強構造1050を用いる方法に限らず、他の周知の方法を用いてもよい。つまり、安全かつ確実に建物を持ち上げることができれば、任意の方法を採用できる。
(18)前述のように構成された支持構造3bは、力学的に安定な形状であることから、一般的な構成の建物を倒壊するような強い外力が作用した場合にも、支持構造3bの形状を比較的長く維持できる。このため、耐震シェルタとしても機能する。また、図12に示すように、支持構造3bの内部空間に、例えば、立体トラス形状の防災シェルタ1081,1082を配置してもよい。防災シェルタ1081,1082の内部には、防災用品などを収納できる。なお、防災シェルタ1081,1082の形状は立体トラスに限られず、任意の形状を採用できる。さらに、支持構造3bの内部空間に、津波あるいは浸水に備えるために小型ボートまたは耐水性の避難シェルタを設けることもできる。
本実施形態は、図14〜図22に示す。本実施形態では、建物2の周囲に、支持構造3eと補強構造50とを形成できるスペースが確保されている。
本発明の耐震建物1cは、図14〜図22に示すように、仮設構造物2001を用いて建物2を移動し、建物基礎4を除去し、耐震性の高い新設建物基礎401を設け、建物2を再び移動し、建物2と新設建物基礎401とを連結することにより、耐震建物1cを得ている。
本発明の仮設構造物2001は、図17〜図20に示すように、建物2の外部にフレーム状に構成された補強構造50と、補強構造50の外部に屋根形に構成された支持構造3eと、補強構造50と支持構造3eとを連結する可動式の補助連結部62とから構成されており、建物連結部60thを介して建物2と補強構造50とを連結し、可動式の補助連結部62を介して補強構造50と支持構造3eとを連結している。
補助連結部62は、例えば、ワイヤー、チェーン等の高い引張強度を発揮できる公知の材料で構成されており、補強構造50と支持構造3eとを連結している。なお、補助連結部62は公知の技術を用いて可動式としている。
支持構造3eは、図17〜図20に示すように、複数の柱20と地盤面に対して斜め上方に延びる複数の柱連結部30cとから構成されており、支持構造節部61を介して複数の柱20と複数の柱連結部30cとを連結して、屋根形の構造体を形成している。なお、ここで支持構造3eは、補強構造50の外部に配置している。
柱20と柱連結部30cとは、図17〜図20に示すように、直線形状を有し、支持構造3eの設計条件に応じて、例えば、木材、鋼管、あるいは鉄骨で構成されている。
支持構造節部61は、鉄等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、柱20と柱連結部30cとを連結して支持構造3eを形成している。
補強構造50は、図16〜図21に示すように、建物2の外部に配置された複数の補強体51から構成されており、建物2の底部を含む外部に建物2を取り囲むフレーム状の構造体を形成している。
補強体51は、例えば、直線形状の鋼管またはH鋼で構成されており、図16〜図21に示すように、建物2と補強体51とを連結する建物連結部60thと、複数の補強体51を相互に連結する補強体連結部60hhと、補強体51と柱20とを連結する支持構造連結部60hsとのうち少なくとも2つの連結部を有しており、この少なくとも2つの連結部を介して建物2の軸組、複数の補強体、及び複数の柱20を相互に連結して、補強構造50を構成している。
建物連結部60thは、鉄等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、建物2と補強体51とを連結して、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を補強体51に確実に伝達できるように構成されている。
補強体連結部60hhは、鉄等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、複数の補強体51を相互に連結して、補強体51が受ける荷重を、複数の補強体51から構成された補強構造50の全体に確実に伝達できるように構成されている。
支持構造連結部60hsは、鉄等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、補強体51と柱20とを連結して、補強構造50とそれに連結した建物2の荷重を柱20に確実に伝達できるように構成されている。
新設建物基礎401は、立方体形状を有し、鉄筋コンクリートで構成されている布基礎である。新設建物基礎401は、図19〜図22に示すように、建物2の下部に配置されており、この新設建物基礎401の上面には、建物2と連結するためのアンカーボルト等が取り付けられている。
新設建物基礎401の強度は、この新設建物基礎401が支持する建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重に応じて、設計により決定される。また、基礎10の種類に制限はなく、直接基礎であってもよいし、杭基礎であってもよい。
次に、前記構成の仮設構造物2001を用いた耐震建物1cの施工方法について説明する。
図14に示すように、建物2は地盤に固定された建物基礎4に連結されている。
まず、図15に示すように、建物2を建物基礎4から切り離し、建物2をジャッキアップして地盤面から持ち上げ、建物2の底部に複数の井桁2010を配置し、建物2の荷重を複数の井桁2010で支持する。井桁2010は、例えば木材、鉄骨、角鋼等の高い強度を発揮できる公知の材料で構成されている。
次に、図16に示すように、建物2の軸組と複数の補強体51とを建物連結部60thを介して連結し、複数の補強体51を補強体連結部60hhを介して相互に連結して、建物2の底部を含む外部に建物2を取り囲むようにして補強構造50を形成する。なお、補強構造50の設置に先立って、建物2の軸組と補強構造50との連結に必要なスペースを確保するため、建物2の床、壁、屋根等の一部または全部を除去しておく。
次に、図17に示すように、支持構造節部61を介して複数の柱20と複数の柱連結部30cとを連結して、補強構造50の外部に支持構造3eを形成する。
続いて、図17に示すように、可動式の補助連結部62、及び支持構造連結部60hsを介して支持構造3eと補強構造50とを連結する。なお、可動式の補助連結部62を介して、補強構造50とそれに連結した建物2の荷重を支持構造3eで安全、確実に支持できる場合には、支持構造連結部60hsを介する支持構造3eと補強構造50との連結は省略できる。
次に、図18に示すように、可動式の補助連結部62を作動して、補強構造50とそれに連結した建物2とを支持構造3eで支持して吊り下げて移動し、複数の井桁2010及び建物基礎4を除去する。
そして、図19に示すように、建物2の底部に新設建物基礎401を形成する。このとき、図示していないが、新設建物基礎401の上面に建物2と連結するためのアンカーボルト等を取り付けておく。
続いて、図20に示すように、建物2を新設建物基礎401の上に降ろし、建物2と新設建物基礎401とを新設建物基礎401の上面に取り付けられたアンカーボルト等で連結する。
次に、図21に示すように、支持構造3eを除去する。
最後に、図22に示すように、補強構造50を除去する。
前記構成の耐震建物1cによれば、仮設構造物2001を用いて建物2を移動し、建物基礎4を除去し、耐震性の高い新設建物基礎401を設け、建物2を再び移動して、建物2と新設建物基礎401とを連結できる。このため、耐震性の高い耐震建物1cを得ることができる。
前記構成の仮設構造物2001によれば、建物連結部60thを介して建物2と補強構造50とが連結され、また可動式の補助連結部62を介して補強構造50と支持構造3eとが連結されているので、可動式の補助連結部62を作動することで補強構造50とそれに連結した建物2とを支持構造3eで支持して吊り下げ、その吊り下げた状態を維持できる。このため、補強構造50とそれに連結した建物2の底部に重機等の工作機械を侵入するスペースが確保でき、井桁2010の設置と除去、建物基礎4の除去、新設建物基礎401の設置、地盤改良工事、杭工事等を容易に実現でき、工費を低減できる。
また、前記構成の仮設構造物2001によれば、耐震建物1cの完成後に仮設構造物2001を除去できる。このため、耐震建物1cの周辺スペースを有効活用できるとともに、美観を維持できる。
また、除去した仮設構造物2001は再利用することができる。このため、工費を低減できる。
前記構成の支持構造3eによれば、支持構造3eは複数の柱20と複数の柱連結部30cとが連結されて、補強構造50の外部に屋根形の構造体を形成している。また、可動式の補助連結部62を介して支持構造3eと補強構造50とが連結されている。このため、可動式の補助連結部62を作動することで補強構造50とそれに連結した建物2とを支持構造3eで吊り下げることができ、補強構造50とそれに連結した建物2の荷重を支持構造3eで確実に支持することができる。
前記構成の補強構造50によれば、補強構造50は建物2の底部を含む外部に建物2を取り囲むフレーム状の構造体を形成しており、可動式の補助連結部62を介して補強構造50とそれに連結した建物2の荷重を支持構造3eに伝達できる。このため、補強構造50とそれに連結した建物2の荷重を力学的に有利な支持構造3eで確実に支持することができる。
前記構成の可動式の補助連結部62によれば、補強構造50と支持構造3eとが可動式の補助連結部62を介して連結されているので、補助連結部62を作動することで補強構造50とそれに連結した建物2とを支持構造3eで支持して吊り下げ、その吊り下げた状態を維持できる。このため、補強構造50とそれに連結した建物2の荷重を支持構造3eで確実に支持できる。
また、前記工法を用いることで、簡単な構成で、耐震性の高い耐震建物1cを得ることができる。
(変形例)
(1) 本実施形態の仮設構造物2001では、補強構造50とそれに連結した建物2とを支持構造3eで吊り下げて鉛直方向に移動しているが、これに限られない。補強構造50とそれに連結した建物2とは、支持構造3eで支持して任意の方向に移動できる。
(2)支持構造3eには、図1、図3〜図5、及び図8〜図12に示すように、仮設又は常設の基礎10を設けることができる。
(3)支持構造3eの形状は、屋根形に限られない。補強構造50を介して建物2の荷重を支持構造3eで確実に支持することができる構成であれば、支持構造3eには任意の形状を採用できる。
(4)柱連結部30cは、図17〜図20では、地盤面に対して斜め上方に延びるように配置されているが、これに限られない。図1及び図2に示すように、水平に配置してもよい。
(5)補強構造50の構成要素は、補強体51に限られない。補強構造50には、任意の構成要素を追加できる。
(6)建物連結部60th、補強体連結部60hh、及び支持構造連結部60hsの材料は、公知の材料に限られない。高い接合強度を発揮できる材料であれば、任意の材料を採用できる。
(7)建物連結部60thには、例えば、免震構造体(例えば積層ゴム,金属球、樹脂等の貯留液体)あるいは制振構造体(例えば制振ダンパー、耐震リング)あるいは断震構造体(例えば空気等の貯留気体)を採用してもよい。このとき免震構造体、制振構造体および断震構造体には、公知の技術を用いてもよいし、新規の技術を用いてもよい。
(8)補助連結部62の材料は、例えば、ワイヤー、チェーン等の高い引張強度を発揮できる公知の材料で構成されているが、これに限られない。補助連結部62には、補強構造50と補助連結部62とを介して、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を支持構造3eに確実に伝達できるものであれば、任意の材料、及び構成を採用できる。また、補助連結部62は、公知の技術を用いて可動式としているが、これに限られない。任意の技術、及び構成を採用できる。
(9)新設建物基礎401は、布基礎等の連続基礎に限らず、独立基礎であってもよい。建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を支持することができる基礎であれば、任意の種類の基礎を採用できる。
(10)建物2と新設建物基礎401との連結は、図15〜図21に示した方法に限られない。建物2と建物基礎4との切り離し、建物2の移動、及び建物2と新設建物基礎401との連結には、公知の技術(例えば曳家、エレベーター、クレーン)を用いてもよいし、新規の技術を用いてもよい。つまり、安全かつ確実に建物2と新設建物基礎401とを連結できる方法であれば、任意の方法を採用できる。
本実施形態は、図14〜図16及び図23〜図27に示す。本実施形態では、建物2の周囲に、補強構造50を形成できるスペースが確保されている。
本発明の耐震建物1cは、図14〜図16及び図23〜図27に示すように、仮設構造物2002を用いて建物2を移動し、建物基礎4を除去し、耐震性の高い新設建物基礎401を設け、建物2を再び移動し、建物2と新設建物基礎401とを連結することにより、耐震建物1cを得ている。
本発明の仮設構造物2002は、図23〜図25に示すように、建物2の外部にフレーム状に構成された補強構造50と、補強構造50の底部に四角錐台形に構成された支持構造3aとから構成されており、建物連結部60thを介して建物2と補強構造50とを連結し、支持構造連結部60hsを介して補強構造50と支持構造3aとを連結している。
支持構造3aは、図23〜図25に示すように、複数の柱20と、複数の柱連結部30aとから構成されており、支持構造連結部60hsを介して複数の柱20と複数の柱連結部30aと補強構造50とを連結して、補強構造50の底部に四角錐台構造体を形成している。
柱20と柱連結部30aとは、図23〜図25に示すように、直線形状を有し、支持構造3aの設計条件に応じて、例えば、木材、鋼管、あるいは鉄骨で構成されている。
補強構造50は、図23〜図25に示すように、建物2の外部に配置された複数の補強体51から構成されており、建物2の底部を含む外部に建物2を取り囲むフレーム状の構造体を形成している。
補強体51は、例えば、直線形状の鋼管またはH鋼で構成されており、図23〜図25に示すように、建物2と補強体51とを連結する建物連結部60thと、複数の補強体51を相互に連結する補強体連結部60hhと、補強体51と柱20とを連結する支持構造連結部60hsとのうち少なくとも2つの連結部を有しており、この少なくとも2つの連結部を介して建物2の軸組、複数の補強体、及び複数の柱20を相互に連結して、補強構造50を構成している。
建物連結部60thは、鉄等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、建物2と補強体51とを連結して、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を補強体51に確実に伝達できるように構成されている。
補強体連結部60hhは、鉄等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、複数の補強体51を相互に連結して、補強体51が受ける荷重を、複数の補強体51から構成された補強構造50の全体に確実に伝達できるように構成されている。
支持構造連結部60hsは、鉄等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、補強体51と柱20とを連結して、補強構造50とそれに連結した建物2の荷重を柱20に確実に伝達できるように構成されている。
新設建物基礎401は、立方体形状を有し、鉄筋コンクリートで構成されている布基礎である。新設建物基礎401は、図25〜図27に示すように、建物2の下部に配置されており、この新設建物基礎401の上面には、建物2と連結するためのアンカーボルト等が取り付けられている。
新設建物基礎401の強度は、この新設建物基礎401が支持する建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重に応じて、設計により決定される。また、基礎10の種類に制限はなく、直接基礎であってもよいし、杭基礎であってもよい。
次に、前記構成の仮設構造物2002を用いた耐震建物1cの施工方法について説明する。
図14に示すように、建物2は地盤に固定された建物基礎4に連結されている。
まず、図15に示すように、建物2を建物基礎4から切り離し、建物2をジャッキアップして地盤面から持ち上げ、建物2の底部に複数の井桁2010を配置し、建物2の荷重を複数の井桁2010で支持する。井桁2010は、例えば木材、鉄骨、角鋼等の高い強度を発揮できる公知の材料で構成されている。
次に、図16に示すように、建物2の軸組と複数の補強体51とを建物連結部60thを介して連結し、複数の補強体51を補強体連結部60hhを介して相互に連結して、建物2の底部を含む外部に建物2を取り囲むようにして補強構造50を形成する。なお、補強構造50の設置に先立って、建物2の軸組と補強構造50との連結に必要なスペースを確保するため、建物2の床、壁、屋根等の一部または全部を除去しておく。
続いて、図23に示すように、建物2の底部に支持構造3aを形成し、支持構造連結部60hsを介して補強構造50と支持構造3aとを連結する。
次に、図24に示すように、補強構造50とそれに連結した建物2の荷重を支持構造3aで支持し、複数の井桁2010及び建物基礎4を除去する。
そして、図25に示すように、建物2の底部に新設建物基礎401を形成する。このとき、図示していないが、新設建物基礎401の上面に建物2と連結するためのアンカーボルト等を取り付けておく。
続いて、図示していないが、補強構造50の底部に複数の井桁2010を配置する。
そして、図26に示すように、補強構造50とそれに連結した建物2の荷重を複数の井桁2010で支持し、支持構造3aと補強構造50とを除去する。なお、図示していないが、補強構造50とそれに連結した建物2の荷重を複数の井桁2010で支持するためには、公知の技術(例えば曳家、ジャッキアップ)を用いている。
最後に、図27に示すように、複数の井桁2010を除去し、建物2を新設建物基礎401の上部に降ろし、建物2と新設建物基礎401とを新設建物基礎401の上面に取り付けられたアンカーボルト等で連結する。
前記構成の耐震建物1cによれば、仮設構造物2002を用いて建物2を移動し、建物基礎4を除去し、耐震性の高い新設建物基礎401を設け、建物2を再び移動して、建物2と新設建物基礎401とを連結できる。このため、耐震性の高い耐震建物1cを得ることができる。
前記構成の仮設構造物2002によれば、建物連結部60thを介して建物2と補強構造50とが連結され、また支持構造連結部60hsを介して補強構造50と支持構造3aとが連結されているので、補強構造50とそれに連結した建物2とを地盤面から持ち上げ、支持構造3aで支持してその持ち上げた状態を維持できる。このため、補強構造50とそれに連結した建物2の底部に重機等の工作機械を侵入するスペースが確保でき、井桁2010の設置と除去、建物基礎4の除去、新設建物基礎401の設置、地盤改良工事、杭工事等を容易に実現でき、工費を低減できる。
また、前記構成の仮設構造物2002によれば、耐震建物1cの完成後に仮設構造物2002を除去できる。このため、耐震建物1cの周辺スペースを有効活用できるとともに、美観を維持できる。
また、除去した仮設構造物2002は再利用することができる。このため、工費を低減できる。
前記構成の支持構造3aによれば、支持構造3aは複数の柱20と複数の柱連結部30aとが連結されて、補強構造50の底部に四角錐台構造体を形成している。また、支持構造連結部60hsを介して支持構造3aと補強構造50とが連結されている。このため、補強構造50とそれに連結した建物2の荷重を力学的に有利な支持構造3aで確実に支持することができる。
前記構成の補強構造50によれば、補強構造50は建物2の底部を含む外部に建物2を取り囲むフレーム状の構造体を形成しており、支持構造連結部60hsを介して、補強構造50とそれに連結した建物2の荷重を支持構造3aに伝達できる。このため、補強構造50とそれに連結した建物2の荷重を力学的に有利な支持構造3aで確実に支持することができる。
また、前記工法を用いることで、簡単な構成で、耐震性の高い耐震建物1cを得ることができる。
(変形例)
(1)支持構造3aには、図1、図3〜図5、及び図8〜図12に示すように、仮設又は常設の基礎10を設けることができる。
(2)支持構造3aの形状は、四角錐台形に限られない。補強構造50を介して建物2の荷重を力学的に有利な支持構造3aで確実に支持することができる構成であれば、支持構造3aには任意の形状を採用できる。
(3)補強構造50の構成要素は、補強体51に限られない。補強構造50には、任意の構成要素を追加できる。
(4)建物連結部60th、補強体連結部60hh、及び支持構造連結部60hsの材料は、公知の材料に限られない。高い接合強度を発揮できる材料であれば、任意の材料を採用できる。
(5)建物連結部60thには、例えば、免震構造体(例えば積層ゴム,金属球、樹脂等の貯留液体)あるいは制振構造体(例えば制振ダンパー、耐震リング)あるいは断震構造体(例えば空気等の貯留気体)を採用してもよい。このとき免震構造体、制振構造体および断震構造体には、公知の技術を用いてもよいし、新規の技術を用いてもよい。
(6)新設建物基礎401は、布基礎等の連続基礎に限らず、独立基礎であってもよい。建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を支持することができる基礎であれば、任意の種類の基礎を採用できる。
(7)建物2と新設建物基礎401との連結は、図23〜図26に示した方法に限られない。建物2と建物基礎4との切り離し、建物2の移動、及び建物2と新設建物基礎401との連結には、公知の技術(例えば曳家、エレベーター、クレーン)を用いてもよいし、新規の技術を用いてもよい。つまり、安全かつ確実に建物2と新設建物基礎401とを連結できる方法であれば、任意の方法を採用できる。
1a,1b,1c 耐震建物
2 建物
3a,3b,3c,3d,3e 支持構造
4 建物基礎
401 新設建物基礎
5 小屋梁
6 桁
7 土台
10 基礎
11,1011 基礎連結部
1012 プレート
1013 下側柱固定部
20 柱
1020a 下端
1020b 上端
1021 継ぎ手部材
1022 腕部
30a,30b,30c 柱連結部
1031 平板部
1031a ねじ孔
1032 上側柱固定部
1033 昇降装置
1040 梁
1041 1階床組
1042 2階床組
1043 小屋組
50,1050 補強構造
51,1051,1052 補強体
1053 補強連結部
60th 建物連結部
60hh 補強体連結部
60hs,1060 支持構造連結部
61 支持構造節部
62 補助連結部
1070 支持部材
1071 可動壁
1072 可動家具
1081,1082 防災シェルタ
2001,2002 仮設構造物
2010 井桁
H 水平断面
L1,L2 直線
CL 交点
C 中央部
GL 地盤面
本発明は、建物と補強構造と支持構造とを含む建造物に関する。
近年、これまでにない規模の巨大地震が世界各地で発生している。例えば、日本においては、1995年に発生した阪神淡路大震災、2011年に発生した東日本大震災などが記憶に新しい。また、近い将来、いわゆる東海地震、東南海地震、あるいは、南海地震といった巨大地震の発生が予測されており、国民の関心が高まっている。
ところで、従来の補強建物には、耐震構造、免震構造、制振構造等の技術が用いられている。例えば、耐震構造を用いる前記従来の補強建物では、特許文献1(特開2012−241403号公報)に記載された構造パネルのような耐震要素をバランスよく配置して、地震力等の水平荷重が作用したときに建物全体に働くねじれの力を小さくしている。これは、建物の重さの中心である重心と建物の強さの中心である剛心とのずれ、すなわち偏心が大きくなればなるほど、地震力等の水平荷重が作用したときに建物全体に大きなねじれの力が作用し、このねじれの力によって建物の構造耐力上主要な部分のうち最も弱い部分が崩壊し、それが引き金となって建物全体が崩壊するおそれがあるためである。
特開2012−241403号公報
しかし、前記従来の補強建物を大きな地震に耐え得る建物にするためには、非常に多くの耐震要素を建物に配置する必要がある。そのため、この従来の技術による補強建物では、所望の耐震性を得るためには構成が複雑になるという課題があった。
そこで、本発明の課題は、簡単な構成で、高い耐震性を有する補強構造、及び支持構造、及びこの補強構造とこの支持構造とを含む建造物を提供することにある。
前記課題を解決するため、本発明の建造物は、建物と、補強構造と、支持構造と、地盤に固定された基礎とを有し、平面視において、前記建物の重心と前記支持構造の剛心とが略一致するように配置され、前記建物と前記補強構造とを連結し、前記補強構造と前記支持構造とを連結し、前記支持構造と前記地盤に固定された基礎とを連結することにより、前記補強構造、及び前記支持構造を介して、前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重が前記地盤に固定された基礎に伝達されるようにした。
本発明の支持構造は、1つ又は複数の柱を有し、前記補強構造と前記1つ又は複数の柱とを連結し、前記1つ又は複数の柱と前記地盤に固定された基礎とを連結して、前記補強構造、及び前記1つ又は複数の柱を介して、前記補強構造とそれに連結した前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重が前記地盤に固定された基礎に伝達されるようにした。
また、本発明の支持構造は、次の構成(A)を任意に採用するのが好ましい。
(A)複数の前記柱を相互に連結する柱連結部を有する。
また、本発明の支持構造は、次の構成(B)を任意に採用するのが好ましい。
(B)縦断面において、複数の前記柱を、その中心を通る直線が相互に直交しないように配置する。
本発明の補強構造は、1つ又は複数の補強体を有し、前記建物と前記1つ又は複数の補強体とを連結し、前記1つ又は複数の補強体と前記支持構造とを連結して、前記1つ又は複数の補強体を介して、前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重が前記支持構造に伝達されるようにした。
また、本発明の補強構造は、次の構成(C)を任意に採用するのが好ましい。
(C)前記1つ又は複数の補強体は、高い引張強度を有する。
本発明の建造物によれば、平面視において、前記建物の重心と前記支持構造の剛心とが略一致するように配置され、前記建物、前記補強構造、前記支持構造、及び前記地盤に固定された基礎が連結されており、前記補強構造、及び前記支持構造を介して、前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重を前記地盤に固定された基礎に伝達できる。このため、簡単な構成で、耐震性の高い建造物を得ることができる。
本発明の支持構造によれば、前記補強構造と前記1つ又は複数の柱とが連結され、前記1つ又は複数の柱と前記地盤に固定された基礎とが連結されており、前記補強構造、及び前記1つ又は複数の柱を介して、前記補強構造とそれに連結した前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重を前記地盤に固定された基礎に伝達できる。このため、簡単な構成で、耐震性の高い支持構造を得ることができる。
また、上記構成(A)によれば、前記柱連結部を介して、複数の前記柱が相互に連結されており、前記補強構造、及び前記柱連結部で相互に連結された前記複数の柱を介して、前記補強構造とそれに連結した前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重を前記地盤に固定された基礎に分散して伝達できる。このため、簡単な構成で、耐震性の高い支持構造を得ることができる。
また、上記構成(B)によれば、縦断面において、前記複数の柱は、その中心を通る直線が相互に直交しないように配置されていることから、前記支持構造は、前記複数の柱の中心を通る直線の交点を頂点とする力学的に有利な構造を有することができる。このため、耐震性の高い支持構造を得ることができる。
本発明の補強構造によれば、前記建物と前記1つ又は複数の補強体とが連結され、前記1つ又は複数の補強体と前記支持構造とが連結されているので、前記1つ又は複数の補強体を介して、前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重を前記支持構造に伝達できる。このため、簡単な構成で、耐震性を発揮できる。
また、上記構成(C)によれば、前記1つ又は複数の補強体は、高い引張強度を有するので、例えば、地震力を受けて前記建物の軸組に引張荷重が生じた場合には、前記建物に連結された前記高い引張強度を有する1つ又は複数の補強体を介して、前記建物の軸組に生じた引張荷重を前記支持構造に伝達できる。このため、簡単な構成で、耐震性を発揮できる。
また、上記構成(C)によれば、高い引張強度を有する前記1つ又は複数の補強体は、前記建物の積載荷重を支持しない構成にできる。このため、簡単な構成で、耐震性を発揮できる。
本発明の建造物の縦断面模式図である。 図1の建造物の模式斜視図である。 本発明の建造物の他の例を示す縦断面模式図である。 図3の建造物の支持構造の上面図である。 図3の建造物の支持構造の立面図である。 図3の建造物の支持構造の柱連結部及び昇降装置を示す部分拡大図である。 図3の建造物の補強構造及び支持構造連結部を示す模式斜視図である。 本発明の支持構造の他の例を示す縦断面模式図である。 本発明の支持構造の他の例を示す縦断面模式図である。 本発明の支持構造の他の例を示す縦断面模式図である。 本発明の支持構造の他の例を示す縦断面模式図である。 図3の建造物の内部の一例を示す縦断面模式図である。 図3の建造物の支持構造の柱に取り付けられた継ぎ手部材を示す部分拡大図である。
以下、本発明を図示の実施形態により詳細に説明する。
図1及び図2に示した実施例1において、支持構造3aは建物2の内部に四角錐台形を構成している。
図3〜図13に示した実施例2において、支持構造3bは建物2の内部に四角錐形を構成している。
本実施形態は、図1及び図2に示す。
本発明の建造物1aは、図1に示すように、建物2と、四角錐台形に構成された支持構造3aと、建物2と支持構造3aとを連結する補強構造50と、地盤に固定された複数の基礎10とから構成されている。建物2は、地盤に固定された建物基礎4上に配置されている。なお、本実施形態では、建物2は、平屋の木造家屋である。
支持構造3aは、図1に示すように、地盤に固定された複数の基礎10の上面に設けられた複数の基礎連結部11と、下端が基礎連結部11に連結された複数の柱20と、複数の柱20を相互に連結している複数の柱連結部30aとから構成されており、図2に示すように、四角錐台構造体を形成している。
なお、平面視における支持構造3aの剛心は、図2に示すように、四角錐台形に構成された支持構造3aの水平断面H(斜線部)と一致する。したがって、平面視において、水平断面H(すなわち面)と建物2の重心(すなわち点)とが重なるように支持構造3aを形成して、支持構造3aの剛心と建物2の重心とを一致させるようにしている。なお、建物2の重心は、建築構造計算によって算出する。
基礎10は、立方体形状を有し、鉄筋コンクリートで構成されている独立基礎である。基礎10は、図3に示すように、建物2の建物基礎4の内側に、建物基礎4とは独立して形成されており、水平方向に互いに離間して配置されている。このように、基礎10と建物基礎4とが力学的に相互作用を及ぼさないようにしている。また、この基礎10の上面には、基礎連結部11が設けられている。
基礎10の強度は、この基礎10が支持する支持構造3aに加わる荷重に応じて、設計により決定される。なお、支持構造3aが支持する荷重には、建物2の鉛直荷重(固定荷重、積載荷重、積雪荷重)に加えて、建物2が受ける水平荷重(風圧力、地震力等)が含まれる。また、基礎10の種類に制限はなく、直接基礎であってもよいし、杭基礎であってもよい。
基礎連結部11は、鉄板等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、柱20と基礎10とを連結している。
柱20は、図1及び図2に示すように、直線形状を有し、支持構造3aの設計条件に応じて、例えば、木材、鋼管、鉄骨あるいは鉄筋コンクリートで構成されている。
補強構造50は、図1及び図2に示すように、建物2の軸組に沿って取り付けられた複数の補強体51から構成されており、建物2の内部にフレーム状の構造体を形成している。
補強体51は、例えば、直線形状の鋼管またはH鋼で構成されており、建物2と補強体51とを連結する建物連結部60thと、複数の補強体51を相互に連結する補強体連結部60hhと、補強体51と柱20とを連結する支持構造連結部60hsとのうち少なくとも2つの連結部を有しており、この少なくとも2つの連結部を介して建物2の軸組、複数の補強体、及び複数の柱20を相互に連結して、補強構造50を構成している。
建物連結部60thは、鉄等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、建物2と補強体51とを連結して、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を補強体51に確実に伝達できるように構成されている。
補強体連結部60hhは、鉄等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、複数の補強体51を相互に連結して、補強体51が受ける荷重を、複数の補強体51から構成された補強構造50の全体に確実に伝達できるように構成されている。
支持構造連結部60hsは、鉄等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、補強体51と柱20とを連結して、補強構造50とそれに連結した建物2の荷重を柱20に確実に伝達できるように構成されている。
次に、前記構成の建造物1aの施工方法について説明する。ここでは、既存の建物2に支持構造3aと補強構造50とを組み込む施工方法を説明する。
まず、図1に示すように、建物2の建物基礎4とは独立した、支持構造3aの基礎10を形成する。基礎10の形成に先立って、基礎10を形成するために必要なスペースを確保するため、建物2内の床組の一部または全部を除去しておく。また、基礎10の上面に基礎連結部11を取り付けるためのアンカーボルト等を取り付けておく。
そして、形成された基礎10の上に基礎連結部11を取り付けて、柱20の下端を基礎連結部11に固定するとともに、図1及び図2に示すように、複数の柱20を柱連結部30aで相互に連結して支持構造3aを形成する。このとき、基礎10を形成するときと同様に、支持構造3aを形成するために必要なスペースを確保するため、建物2内の床組、壁、天井等の一部または全部を除去しておく。
次に、図1に示すように、建物2の軸組と複数の補強体51とを建物連結部60thを介して連結する。このとき、基礎10を形成するときと同様に、補強体51と建物2の軸組とを連結するために必要なスペースを確保するため、建物2の床組、壁、天井等の一部または全部を除去しておく。
そして、図1及び図2に示すように、複数の補強体51を補強体連結部60hhを介して相互に連結する。
最後に、図1及び図2に示すように、複数の補強体51から構成された補強構造50と支持構造3aとを支持構造連結部60hsを介して連結し、建造物1aを形成する。
前記構成の建造物1aによれば、建物2、補強構造50、支持構造3a、及び地盤に固定された基礎10とが連結されており、補強構造50、及び支持構造3aを介して、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重が地盤に固定された複数の基礎10に伝達されるように構成している。このため、簡単な構成で、高い耐震性を有する建造物1aを得ることができる。
また、前記構成の建造物1aによれば、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を支持構造3aで支持できることから、例えば、建物2が老朽化した建物であっても、高い耐震性を発揮できる。
また、前記構成の建造物1aによれば、支持構造3aの剛心と建物2の重心とを一致させるようにしている。このように、支持構造3aの剛心と建物2の重心とを一致させるようにすることで、建造物1aの偏心を低減している。このため、簡単な構成で、高い耐震性を有する建造物1aを得ることができる。
前記構成の支持構造3aによれば、支持構造連結部60hsを介して補強構造50と複数の柱20とが連結され、柱連結部30aを介して複数の柱20が相互に連結され、複数の基礎連結部11を介して複数の柱20と複数の基礎10とが連結されており、これにより補強構造50とそれに連結した建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重が、補強構造50、及び支持構造3aを介して複数の基礎10に伝達されるように構成している。このため、簡単な構成で、高い耐震性を発揮できる。
また、前記構成の支持構造3aによれば、図2に示すように、柱20は四角錐台構造体を形成している。これにより、支持構造3aが力学的に有利な構造を有するので、耐震性の高い支持構造3aを得ることができる。
また、前記構成の支持構造3aによれば、平面視において、支持構造3aの剛心は水平断面Hで示した平面と一致することから、平面視において、支持構造3aの剛心と建物2の重心とを一致させるためには、水平断面H(すなわち面)と建物2の重心(すなわち点)とが重なるように支持構造3aを形成すればよい。このため、設計及び施工が容易となり、工費を低減できる。
本発明の補強構造50によれば、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を、建物連結部60thを介して建物2の軸組から支持構造3aに伝達できる。このため、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を力学的に有利な支持構造3aで確実に支持することができる。
(変形例)
(1)支持構造3a及び補強構造50は、既存、新築を問わず、また、木造、鉄筋コンクリート造等の工法を問わず、任意の建物2に組み込むことができる。
(2)支持構造3aの形状は、四角錐台形に限られない。支持構造3aは、補強構造50、及び支持構造3aを介して建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を基礎10に伝達できるものであれば任意の形状にできる。例えば、複数の柱20を配置する力学的に有利な構造として、図3〜図5に示すように、四角錐構造体としてもよい。
(3)支持構造3aには、トラス構造を採用できる。
(4)支持構造3aは、1つの基礎10と、1つの基礎10に連結された1つの柱20とで構成できる。
(5)支持構造3aは、力学的に安定な形状であり、強い外力が作用した場合でも支持構造3aの形状を維持できることから、耐震シェルタとして利用できる。
(6)基礎10は、独立基礎に限らず、布基礎等の連続基礎であってもよい。基礎連結部11を水平方向に互いに離間して設けることができる基礎であれば、任意の種類の基礎を採用できる。
(7)基礎連結部11には、例えば、免震構造体(例えば積層ゴム,金属球、樹脂等の貯留液体)あるいは制振構造体(例えば制振ダンパー、耐震リング)あるいは断震構造体(例えば空気等の貯留気体)を採用してもよい。このとき免震構造体、制振構造体および断震構造体には、公知の技術を用いてもよいし、新規の技術を用いてもよい。
(8)基礎連結部11において、柱20と基礎10とは、剛接合のほか、ピン接合など任意の接合方法にできる。
(9)また、基礎連結部11において、例えば、柱20の下部形状を概球形に構成して、柱20と地盤面とがなす角度が自由に変わるように設計してもよい。また、このとき、他の物質(例えば油、樹脂、空気層)を介して柱20と基礎10とを連結してもよい。
(10)補強構造50は、支持構造3aを介さずに基礎10に連結してもよい。
(11)補強構造50の構成要素には、補強体51に加えて任意の要素を追加できる。
(12)補強体51は、建物2と補強体51とを連結する建物連結部60thと、複数の補強体51を相互に連結する補強体連結部60hhと、補強体51と柱20とを連結する支持構造連結部60hsとのうち少なくとも2つの連結部を有しているが、これに限らない。補強体51には、任意の連結部を追加できる。
(13)建物連結部60th、補強体連結部60hh、及び支持構造連結部60hsの材料は、公知の材料に限られない。高い接合強度を発揮できる材料であれば、任意の材料を採用できる。
(14)建物連結部60thには、例えば、免震構造体(例えば積層ゴム,金属球、樹脂等の貯留液体)あるいは制振構造体(例えば制振ダンパー、耐震リング)あるいは断震構造体(例えば空気等の貯留気体)を採用してもよい。このとき免震構造体、制振構造体および断震構造体には、公知の技術を用いてもよいし、新規の技術を用いてもよい。
(15)補強構造50には、トラス構造を採用できる。
(16)補強構造50は、耐震性を備えた任意の材料で構成できる。例えば、高い圧縮強度を有する材料(例えばコンクリート、土、ガラス、金属、樹脂等の固体、及び油脂、樹脂等の液体、及び空気等の気体)、高い引張強度を有する材料(例えば鉄骨、鋼管、ワイヤー、チェーン、金網等の金属材料、アラミド繊維シート、クモの糸等の繊維材料)、高いせん断強度を有する材料、及び高い曲げ強度を有する材料のうち、1つ以上の強度特性を有する材料を組み合わせて構成できる。
(17)なお、高い引張強度を有する材料で構成された補強構造50は、建物2の常時荷重(固定荷重及び積載荷重)を支持しない構成にできる。これにより、簡単な構成で、耐震性を有する建造物を得ることができる。
(18)また、高い引張強度を有する補強構造50は、建物2の構造耐力上主要な部分のX軸(例えば南北方向に配置された土台と梁)、Y軸(例えば東西方向に配置された土台と梁)、及びZ軸(例えば柱と基礎)の一部又は全部を連結して、建物2の軸組と高い引張強度を有する補強構造50とが力学的な単一構造体を構成するように取り付けてもよい。これにより、建物2の軸組が受ける引張荷重をこの単一構造体で支持するように構成できる。このため、簡単な構成で、耐震性を有する建造物を得ることができる。
(19)高い引張強度を有する補強構造50の施工方法は、例えばボルト等で建物2に固定してもよいし、樹脂等を用いて建物2に接着してもよいし、建物2から補強構造50を吊り下げるようにしてもよい。つまり、建物2の軸組が受ける引張荷重を補強構造50で確実に支持できる構成であれば、任意の施工方法を採用できる。
(20)また、高い引張強度を有する補強構造50は、耐震材としての用途に加え、例えば、建物2の内装用又は外装用の下地材(例えば金網)、あるいは建物2の内装用又は外装用の仕上材(例えばクロス、カーペット、塗装材)の用途を兼ね備えることができる。
(21)本実施形態の建造物1aでは、支持構造3aと補強構造50とは独立した2つの構造体としているが、この構成に限られない。支持構造3aと補強構造50とは単一構造体として形成してもよい。
(22)建造物1aは、支持構造3aと補強構造50に加えて、任意の耐震要素を備えることができる。
(23)また、図示していないが、補強構造50と支持構造3aとの連結は、支持構造連結部60hsを介する連結に加えて、例えばチェーン、ワイヤー、メッシュ等を用いた公知又は新規の技術を用いて繋留するようにしてもよい。これにより、例えば、災害時の水圧、風圧等の臨時荷重を受けて建物2がそれを支持していた地盤面から離れて移動した場合には、建物2を移動しようとする荷重を補強構造50を介して支持構造3aで支持することができる。これにより、建物2の移動範囲を限定できることから、災害による被害を軽減できる可能性がある。なお、ここで繋留とは、常時は数十センチメートル以内の離間距離をおいて相互に連結されている補強構造50と支持構造3aとが、非常時には例えば数メートルから数十メートルの離間距離をおいて相互に連結された状態となる連結方法をいう。
本実施形態は、図3〜図13に示す。
本発明の建造物1bは、図3に示すように、建物2と、四角錐形に構成された支持構造3bと、建物2と支持構造3bとを連結する補強構造1050と、地盤に固定された4つの基礎10とから構成されている。建物2は、地盤に固定された建物基礎4上に配置されている。なお、本実施形態では、建物2は、平屋の木造家屋である。
支持構造3bは、図3〜図5に示すように、地盤に固定された4つの基礎10の上面に設けられた4つの基礎連結部1011と、下端1020aが基礎連結部1011に連結された4本の柱20と、4本の柱の上端1020bを連結している柱連結部30bと、柱連結部30bと補強構造1050とを連結している支持構造連結部1060とから構成されており、柱連結部30bを頂点とする四角錐構造体を形成している。
基礎10は、立方体形状を有し、鉄筋コンクリートで構成されている独立基礎である。基礎10は、図3に示すように、建物2の建物基礎4の内側に、建物基礎4とは独立して形成されており、図4に示すX,Y方向に沿って、水平方向に互いに離間して配置されている。このように、基礎10と建物基礎4とが力学的に相互作用を及ぼさないようにしている。また、この基礎10の上面には、基礎連結部11が設けられている。
基礎10の強度は、この基礎10が支持する支持構造3bに加わる荷重に応じて、設計により決定される。なお、支持構造3bが支持する荷重には、建物2の鉛直荷重(固定荷重、積載荷重、積雪荷重)に加えて、建物2が受ける水平荷重(風圧力、地震力等)が含まれる。また、基礎10の種類に制限はなく、直接基礎であってもよいし、杭基礎であってもよい。
基礎連結部1011は、鉄板等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、プレート1012と下側柱固定部1013とからなっている。
プレート1012は、基礎10の上面と略等しい寸法の正方形状を有しており、例えば基礎10の上面に埋め込んだアンカーボルトを介して、基礎10に取り付けられている。また、下側柱固定部1013は、プレート1012の上面の略中央に配置されており、斜め上方に延在している。この下側柱固定部1013に、柱20の下端1020aがそれぞれ連結されている。なお、下側柱固定部1013は、支持構造3bの設計条件に応じて、任意の角度でプレート1012に配置できる。
柱20は、直線形状を有し、支持構造3bの設計条件に応じて、例えば、木材、鋼管、鉄骨あるいは鉄筋コンクリートで構成されている。柱20は、図4に示すように、平面視において、4つの基礎10を角とする四角形の対角線を成す直線L1,L2に沿って配置されている。柱20の上端1020bは、直線L1,L2の交点CLを中心として配置された柱連結部30bで互いに連結されている。また、柱20は、図5に示すように、立面視において、基礎連結部1011から直線L1,L2の交点CLに向かって斜め上方に延びている。
なお、直線L1,L2の交点CLは、設計により、支持構造3bの剛心と一致させている。
柱連結部30bは、鉄板等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、平板部1031と、平板部1031の下面に固定されている上側柱固定部1032と、平板部1031の中央に取り付けられた昇降装置1033とからなっている。
なお、前述のように、柱連結部30bの中心は、直線L1,L2の交点CLに位置しているため、設計上、柱連結部30bの中心と支持構造3bの剛心とは一致している。
平板部1031は、図4に示すように、平面円形状を有し、昇降装置1033が作動するためのねじ孔1031aが中央に形成されている。上側柱固定部1032は、図5に示すように、基礎10上の下側柱固定部1013に向かって、それぞれ斜め下方に延びている。この上側柱固定部1032に、柱20の上端1020bがそれぞれ連結されている。
なお、上側柱固定部1032と下側柱固定部1013とは、同じ部材を用いてもよいし、それぞれ異なる部材としてもよい。
昇降装置1033は、例えば、ねじジャッキであり、図6に示すように、作動させると平板部1031のねじ孔1031aからねじ軸が上昇するように構成されている。ねじ軸の上端は、支持構造連結部1060と接合可能な形状を有している。また、昇降装置1033は、直線L1,L2の交点CLが中心に位置するように配置されている。
支持構造連結部1060は、鉄板等の高い接合強度を発揮できる公知の材料で構成されており、柱連結部30bの昇降装置1033と補強構造1050とを連結している。支持構造連結部1060は、柱連結部30bと補強構造1050とを連結できるものであればよく、任意の構造または形状等を採用できる。
補強構造1050は、図7に示すように、小屋組1043を構成する部材のうち最下部の横架材である小屋梁5及び桁6(共に図1及び図3に示す)の下部全体にバランスよく配置された第1の補強体1051と、1階床組1041を構成する部材のうち最下部の横架材である土台7(図1及び図3に示す)の下部全体にバランスよく配置された第2の補強体1052と、第1,第2の補強体1051,1052を相互に連結するための補強連結部1053とからなっている。
第1,第2の補強体1051,1052は、例えば、複数の直線形状のチャンネル鋼またはH鋼を組み合わせた構造体であり、建物2の横架材に沿って取り付けられている。チャンネル鋼またはH鋼の接合部分は、例えば溶接により固定されている。
第1の補強体1051を建物2に取り付けることによって、建物2の小屋梁5及び桁6を持ち上げて、建物2の小屋組を吊り上げることが可能になる。また、第2の補強体1052を建物2に取り付けることによって、建物2の土台7を持ち上げること、すなわち、建物2の建物基礎4よりも上部の構造体を、その形状を維持した状態で吊り上げることが可能になる。
補強連結部1053は、例えば、直線形状のチャンネル鋼またはH鋼であり、建物2の縦架材(柱等)に沿って取り付けられている。補強連結部1053には、第1,第2の補強体1051,1052がそれぞれ接合され、補強連結部1053と第1,第2の補強体1051,1052とが一体となって、補強構造1050を構成している。補強連結部1053と第1,第2の補強体1051,1052との接合部分は、例えば溶接により固定されている。
このように、補強構造1050は、建物2の軸組と相互に絡まり合うように配置された、いわばジャングルジムのような構造体を形成している。この補強構造1050を建物2に取り付けることによって、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を、補強構造1050を介して建物2の軸組から支持構造連結部1060に伝達できる。従って、建物2の土台7と建物基礎4とを切り離して、補強構造1050を昇降装置1033により持ち上げることで、建物2の建物基礎4よりも上部の構造体を持ち上げることができる。
なお、「建物2の建物基礎4よりも上部の構造体」とは、建築基準法における「構造耐力上主要な部分」のうち、基礎及び基礎ぐいを除いたものをいう。
前記建造物1bでは、図3に示すように、第1の補強体1051の中央部Cに支持構造連結部1060が連結されている。支持構造連結部1060は、設計により、建物2の平面における重心と略一致するように配置している。一方、昇降装置1033は、直線L1,L2の交点CL、すなわち、支持構造3bの剛心が中心に位置するように配置されている。従って、支持構造連結部1060を介して、昇降装置1033を第1の補強体1051に連結することで、建物2の重心と支持構造3bの剛心とが略一致するようになる。このように、建物2の重心と支持構造3bの剛心とを一致させるようにすることで、建造物1bの偏心を低減している。なお、建物2の重心及び支持構造3bの剛心は、建築構造計算によって算出する。
また、図示していないが、前記建造物1bでは、昇降装置1033により建物2の建物基礎4よりも上部の構造体を持ち上げて、持ち上げた状態(鳥籠の状態)を維持している。つまり、前記建造物1bは、建物2を支持構造3bで吊り下げた吊構造を有している。このため、建物2に加わる荷重を確実に支持構造3bに伝達させることができる。また、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重が支持構造3bにより支持されているので、建物基礎4の構成を簡略化でき、基礎工事のコストを低減できる。
また、建物2を支持構造3bで吊り下げているので、従来の外壁の代わりに膜構造の外壁を用いることも可能となり、大スパンの開放的な居室空間を実現できる。また、支持構造3bを建物2の内部に配置しているので、支持構造3bの外部、すなわち建物2と支持構造3bとで囲まれた空間も居室利用でき、従来の外壁をピラミッド形状とした建物が持つ容積率の不利益を解消できる。
次に、前記構成の建造物1bの施工方法について説明する。ここでは、既存の建物2に支持構造3bと補強構造1050とを組み込む施工方法を説明する。
まず、図3に示すように、建物2の建物基礎4とは独立した、支持構造3bの基礎10を形成する。基礎10の形成に先立って、基礎10を形成するために必要なスペースを確保するため、建物2内の床組の一部または全部を除去しておく。また、基礎10の上面に基礎連結部1011を取り付けるためのアンカーボルト等を取り付けておく。
そして、形成された基礎10の上に基礎連結部1011を取り付けて、柱20の下端1020aを下側柱固定部1013に固定する。そして、柱20の上端1020bを柱連結部30bの上側柱固定部1032に固定する。このとき、基礎10を形成するときと同様に、支持構造3bを形成するために必要なスペースを確保するため、建物2内の床組、壁、天井等の一部または全部を除去しておく。
次に、図3に示すように、柱連結部30bの昇降装置1033と補強構造1050とを支持構造連結部1060を介して連結する。そして、建物2と建物基礎4とを切り離し、昇降装置1033を作動させて、建物2を持ち上げる。
なお、昇降装置1033により建物2を持ち上げるので、建物2の底部の工事を容易に行える。例えば、既存の建物基礎4を撤去して、地盤改良工事を行ったあと、新たな建物基礎を形成することも容易に実現できる。
前記構成の建造物1bによれば、建物2、補強構造1050、支持構造3b、及び地盤に固定された4つの基礎10が連結されているので、高い耐震性を発揮できる。なお、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を支持構造3bで支持できるため、例えば、建物2が老朽化した建物であっても、高い耐震性を発揮できる。
前記構成の支持構造3bによれば、支持構造連結部1060、柱連結部30b、4つの柱20、及び4つの基礎連結部1011が連結されており、これにより、支持構造連結部1060、柱連結部30b、4つの柱20、及び4つの基礎連結部1011を介して、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重が基礎10に伝達されるように構成している。このため、簡単な構成で、高い耐震性を有する支持構造3bを得ることができる。
また、支持構造3bの縦断面において、4つの柱20は、その中心を通る直線L1,L2が相互に直交しない角度を持って接合している。これにより、支持構造3bが、柱連結部30bを頂点とする力学的に有利な構造を有するので、耐震性の高い支持構造3bを得ることができる。
前記構成の補強構造1050によれば、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を建物2の軸組から支持構造連結部1060を介して地盤に固定された4つの基礎10に伝達できる。このため、建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重を力学的に有利な支持構造3bで確実に支持することができ、耐震性の高い建造物1bを得ることができる。
また、前記工法を用いることで、前記支持構造3bを建物2に組み込むことができ、簡単な構成で、高い耐震性を有する建造物1bを提供できる。
(変形例)
(1)補強構造1050及び支持構造3bは、既存、新築を問わず、また、木造、鉄筋コンクリート造等の工法を問わず、任意の建物2に組み込むことができる。
(2)支持構造3bは、支持構造連結部1060、柱連結部30b、柱20、及び基礎連結部1011が連結されており、支持構造連結部1060、柱連結部30b、柱20、及び基礎連結部1011を介して建物2の荷重及び/又は建物2が受ける荷重が基礎10に伝達できるものであればよく、四角錐構造体に限られない。例えば、4つの柱20の中心を通る直線L1,L2が相互に直交しないように、柱20を配置する力学的に有利な構造として、図1〜図2に示すように、四角錐台構造体としてもよい。また、図8に示すように、半球(ドーム、釣鐘、またはこれらの変形)形状を有する支持構造3cを採用してもよいし、図9に示すように、球形状を有する支持構造3dを採用してもよいし、図17〜図19に示すように、屋根形の支持構造3eを採用してもよいし、また、図示していないが、ヴォールト型形状を採用してもよい。
(3)支持構造3b及び/又は補強構造1050の外周に膜構造の外壁を設けてもよい。支持構造3b及び/又は補強構造1050の外周に膜構造の外壁を設けることで、例えば外観のデザイン性を高めることができる。
(4)基礎10は、独立基礎に限らず、布基礎等の連続基礎であってもよい。基礎連結部1011を水平方向に互いに離間して設けることができる基礎であれば、任意の種類の基礎を採用できる。
(5)基礎10は、建物基礎4の内側に形成されているが、これに限られず、図8及び図10に示すように、建物の外部に形成してもよいし、支持構造の設計条件に応じて、図9に示すように、建物の中央部等の任意の位置に形成してもよい。また、基礎10と建物基礎4とは、独立して設ける必要はなく、例えば、基礎を建物基礎に接する位置に設けてもよいし、図11に示すように、基礎と建物基礎とを一体に形成してもよい。
(6)基礎連結部1011は、例えば、免震構造体(例えば積層ゴム,金属球、樹脂等の貯留液体)あるいは制振構造体(例えば制振ダンパー、耐震リング)あるいは断震構造体(例えば空気等の貯留気体)を介して基礎10に配置してもよい。このとき免震構造体、制振構造体および断震構造体には、公知の技術を用いてもよいし、新規の技術を用いてもよい。
(7)基礎連結部1011において、柱20と基礎10とは、剛接合のほか、ピン接合など任意の接合方法にできる。例えば、ピン接合によりトラス構造体を形成してもよいし、また柱20の下部形状を概球形として、柱20と地盤面とがなす角度が固定されず、1つ以上の角度を取るように設計してもよい。
(8)図12に示すように、柱20に継ぎ手部材1021を設けてもよい。継ぎ手部材1021は、必要に応じて、例えば図13に示すような断面T字形状の腕部1022を有し、柱20の任意の位置に取り付けられる。腕部1022によって、例えば、2階床組1042を支える梁1040、あるいは可動壁1071の支持部材1070を任意の位置で支持できるので、建物2内部の設計の自由度を高めることができる。そのため、継ぎ手部材1021は、必要な耐荷重強度に応じて、木材、鋼管、鉄骨あるいは鉄筋コンクリート等で構成される。
(9)可動壁1071は、可動壁1071の上部及び下部に取り付けられたレールによって移動可能であり、居室空間の任意の場所に配置できる。また、図12に示すように、可動壁1071は、必要に応じて、可動本棚、ベッドあるいは机などの可動家具1072に置き換えることができる。これらの可動壁1071及び可動家具1072は、継ぎ手部材1021を介して支持構造3bに吊り下げられていることから、地震時にも転倒することなく、安全な居室空間が実現できる。
(10)平板部1031は、平面円形状に限らず、平面正方形状等、任意の形状を採用できる。
(11)昇降装置1033は、任意の構造あるいは形状を有する昇降装置を採用することができる。また、建物を下から押し上げるジャッキ型のものに限らず、建物を上から引き上げるタイプのものを採用してもよい。この場合、図8、図11に示すように、柱連結部30bが支持構造連結部1060よりも上方に位置することになる。
(12)昇降装置1033には、曳家、エレベーター、クレーン等に用いられる公知の技術を用いてもよいし、新規の技術を用いてもよい。
(13)昇降装置1033は、必要時に手動及び/又は自動で作動する昇降装置を採用することができる。例えば、津波・浸水等の被害が予測される場合、手動及び/又は自動で作動する昇降装置を作動させることにより、建物2と地盤面間の距離を変えることができる。これにより、災害による被害を軽減できる可能性がある。
(14)昇降装置1033は、必ずしも設ける必要はない。この場合でも、支持構造が建物の荷重及び/又は建物が受ける荷重の一部を支持できるので、耐震性の高い建造物を提供できる。なお、この場合の建物と支持構造との連結は、支持構造連結部1060と柱連結部の平板部とを直接接合することにより行う。また、昇降装置を建物の底部に配置して、建物を持ち上げて支持構造と連結したあとで取り外すようにしてもよい。
(15)補強構造1050は、第1の補強体1051と、第2の補強体1052と、第1,第2の補強体1051,1052を相互に連結するための補強連結部1053とから構成されているが、これに限らない。少なくとも第1の補強体を建物の小屋組に取り付けることで、建物を支持構造によって持ち上げることができる。また、第2の補強体1052及び補強連結部1053は、例えば、建物を安全かつ確実に持ち上げることが困難な場合(例えば木造建物あるいは老朽化建物)に、必要に応じて、建物に取り付けるようにしてもよい。
(16)また、図示していないが、補強構造1050と支持構造3bとは、支持構造連結部1060を介する連結方法に加えて、例えばチェーン、ワイヤー、メッシュ等を用いた公知又は新規の技術を用いて繋留するようにしてもよい。これにより、例えば、災害時の水圧、風圧等の臨時荷重を受けて建物2がそれを支持していた地盤面から離れて移動した場合には、建物2を移動しようとする荷重を補強構造1050を介して支持構造3bで支持することができる。これにより、建物2の移動範囲を限定できることから、災害による被害を軽減できる可能性がある。なお、ここで繋留とは、常時は数十センチメートル以内の離間距離をおいて相互に連結されている補強構造1050と支持構造3bとが、非常時には例えば数メートルから数十メートルの離間距離をおいて相互に連結された状態となる連結方法をいう。
(17)建物2の補強は、補強構造1050を用いる方法に限らず、他の周知の方法を用いてもよい。つまり、安全かつ確実に建物を持ち上げることができれば、任意の方法を採用できる。
(18)前述のように構成された支持構造3bは、力学的に安定な形状であることから、一般的な構成の建物を倒壊するような強い外力が作用した場合にも、支持構造3bの形状を比較的長く維持できる。このため、耐震シェルタとしても機能する。また、図12に示すように、支持構造3bの内部空間に、例えば、立体トラス形状の防災シェルタ1081,1082を配置してもよい。防災シェルタ1081,1082の内部には、防災用品などを収納できる。なお、防災シェルタ1081,1082の形状は立体トラスに限られず、任意の形状を採用できる。さらに、支持構造3bの内部空間に、津波あるいは浸水に備えるために小型ボートまたは耐水性の避難シェルタを設けることもできる。
1a,1b,1c 建造物
2 建物
3a,3b,3c,3d,3e 支持構造
4 建物基礎
401 新設建物基礎
5 小屋梁
6 桁
7 土台
10 基礎
11,1011 基礎連結部
1012 プレート
1013 下側柱固定部
20 柱
1020a 下端
1020b 上端
1021 継ぎ手部材
1022 腕部
30a,30b,30c 柱連結部
1031 平板部
1031a ねじ孔
1032 上側柱固定部
1033 昇降装置
1040 梁
1041 1階床組
1042 2階床組
1043 小屋組
50,1050 補強構造
51,1051,1052 補強体
1053 補強連結部
60th 建物連結部
60hh 補強体連結部
60hs,1060 支持構造連結部
61 支持構造節部
62 補助連結部
1070 支持部材
1071 可動壁
1072 可動家具
1081,1082 防災シェルタ
H 水平断面
L1,L2 直線
CL 交点
C 中央部
GL 地盤面

Claims (6)

  1. 建物と、
    補強構造と、
    支持構造と、
    地盤に固定された基礎とを有し、
    前記建物と前記補強構造とを連結し、
    前記補強構造と前記支持構造とを連結し、
    前記支持構造と前記地盤に固定された基礎とを連結して、
    前記補強構造、及び前記支持構造を介して、前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重が前記地盤に固定された基礎に伝達されるようにした、耐震建物。
  2. 平面視において、前記建物の重心と、前記支持構造の剛心とが略一致するようにした、請求項1記載の耐震建物。
  3. 建物と補強構造と支持構造と地盤に固定された基礎とを含む耐震建物を構成する前記支持構造であって、
    1つ又は複数の柱を有し、
    前記補強構造と前記1つ又は複数の柱とを連結し、
    前記1つ又は複数の柱と前記地盤に固定された基礎とを連結して、
    前記補強構造、及び前記1つ又は複数の柱を介して、前記補強構造とそれに連結した前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重が前記地盤に固定された基礎に伝達されるようにした、支持構造。
  4. 建物と補強構造と支持構造と地盤に固定された基礎とを含む耐震建物を構成する前記補強構造であって、
    1つ又は複数の補強体を有し、
    前記建物と前記1つ又は複数の補強体とを連結し、
    前記1つ又は複数の補強体と前記支持構造とを連結して、
    前記1つ又は複数の補強体を介して、前記建物の荷重及び/又は前記建物が受ける荷重が前記支持構造に伝達されるようにした、補強構造。
  5. 建物と補強構造と支持構造と地盤に固定された基礎とを含む耐震建物を構成する前記補強構造であって、
    高い引張強度を有する1つ又は複数の補強体を有し、
    建物と前記高い引張強度を有する1つ又は複数の補強体とを連結し、
    前記高い引張強度を有する1つ又は複数の補強体と支持構造とを連結して、
    前記高い引張強度を有する1つ又は複数の補強体を介して、前記建物の軸組が受ける引張荷重が前記支持構造に伝達されるようにした、補強構造。
  6. 補強構造と、
    支持構造とを有し、
    建物と前記補強構造とを連結し、
    前記補強構造と前記支持構造とを連結して、
    前記補強構造とそれに連結した前記建物とを前記支持構造で支持して移動できるようにした、仮設構造物。
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