JP2017223464A - クリープ損傷評価方法 - Google Patents
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Abstract
Description
さらに、繰り返し負荷がかかる場合にすべり帯が発達して結晶粒程度の微小き裂となる。
したがって、ボイドや微小き裂といった微視的な損傷の発生や、その後の成長が機器の健全性を支配すると考えられる。
一方、材料特性のばらつきに関しては、特許文献3では、材料強度特性のばらつきを確率論的に評価する方法が記載されている。
さらに、非特許文献2では、クリープ破断強度が応力とラーソンミラーパラメータの関係で記載されている。
非特許文献1の記載では、マスターカーブを作製する際に用いた試験結果の99%信頼性区間の上限と下限では、クリープ損傷率で約0.2の差が生じている。
非特許文献2の記載では、特に高応力側でばらつきが大きいことが分かる。
しかし、この試験結果にはばらつきが存在しているため、最小二乗近似曲線を求め、マスターカーブとしている。
(クリープ損傷率(寿命比))=(試験時間)/(試験条件でのクリープ破断時間)
使用中の機器の評価パラメータのキャビティ面積率を測定し、機器の材料のマスターカーブを図10のマスターカーブとして、このマスターカーブからクリープ破断時間を求め、クリープ破断時間から機器の使用時間を減算して、余寿命が求められる。
そこで、余寿命評価の精度を向上し、プラント等の効率的運用を実現するためにも損傷評価のさらなる高精度化が望まれている。
<<実施形態1>>
図1(a)の左図は本発明の実施形態1における評価パラメータの時刻歴測定結果の模式図であり、図1(a)の右図は実施形態1の評価パラメータとクリープ損傷率の関係の模式図である。図1(b)はクリープ破断強度を示すグラフであり、図1(b)の横軸はラーソン・ミラー・パラメータであり、縦軸は材料の応力である。
そして、この近似曲線に基づき機器のクリープ破断時間を求め、機器の余寿命を求める。
なお、測定結果(図1(a)の右図の黒丸)は、評価パラメータの測定値とクリープ損傷率(=使用時間/仮定したクリープ破断時間)との関係で表される。なお、使用時間とは機器の使用時間である。
(1)レプリカ法は、機器材料の複製を評価する。レプリカ法としては、組織対比法、ボイド面積率法、結晶粒変形係数法、Aパラメータ法等がある。
組織対比法はデータベースにある予め取得した組織と実際の機器の組織をボイドの発生、析出物等で対比する。ボイド面積率法は、ボイドがある面積率で表す。
結晶粒変形係数法は、結晶粒の変形を損傷率との関係で定量化して表す。Aパラメータ法は、ある線上における観察粒界数に対するボイドがある粒界数の比で表す。
超音波法は、圧電素子を機器に接触させて超音波を発生させ、反射波を測定する。電磁超音波共鳴法は、機器に非接触で電磁超音波を当て、共鳴による反射波をセンシングする。電気抵抗法は、機器材料の経時変化を電気抵抗値で測定する。
例えば、ビッカース硬度計で機器材料の硬度を測定し、硬度の変化で機器材料の変化を評価する。
(クリープ損傷率(寿命比))=(試験時間(損傷時間))/(試験条件でのクリープ破断時間) (1)
一方、使用中の機器の部材では、(2)式で表わされる。
(クリープ損傷率)=(使用時間)/(部材のクリープ破断時間) (2)
(2)式を変形して、下記の(3)式とする。
(3)式の関係を前提に、測定した評価パラメータとクリープ損傷率の関係を示すマスターカーブを用いて、クリープ損傷率を推定する。そして、推定したクリープ損傷率を、(3)式に代入することにより(部材のクリープ破断時間)を求める。
(4)式により、余寿命を算出する。
(余寿命)= (部材のクリープ破断時間) - (使用時間) (4)
しかしながら、部材のクリープ破断時間Trは不明である。
ここで、マスターカーブを作成するための試験体を図2、図3に示す。
図2(a)〜(c)は、JISG0567に基づく丸棒試験片であり、それぞれ正面図、右側面図、I−I断面図を示す。
図3(a)〜(c)は、JISZ2241−14Bに基づく板状試験片であり、それぞれ正面図、右側面図、II−II断面図を示す。
図2(c)、図3(c)は、それぞれ次式(5)、(6)で表される平行部の断面積を示している。クリープ試験前の平行部の断面積を原断面積と呼ぶ。
板状試験片の原断面積 S0=TSW (6)
図2(a)〜(c)の丸棒試験片は掴み部がねじ込み式である。
図3(a)〜(c)の板状試験片は掴み部が挟み込み式である。板状試験片の掴み部には位置出し用のピン穴が加工される。
標準的なクリープ試験法は、JISZ2271「金属材料のクリープおよびクリープ破断試験方法」に詳述されている。
図4の左図、右図にそれぞれクリープ試験の負荷測定の測定開始時の時間“0”、測定経過時間の時間“t”の模式図を示す。
応力 σ=F/S0 (7)
式(7)で計算される負荷応力が降伏応力σy以下であれば、試験片は弾性変形するが重りを取り除けば元の長さに戻る。しかし、高温で荷重をかけたまま保持すると、徐々に塑性変形のクリープ変形が起こる。
こうして、温度と負荷を定めてクリープ試験が行われ、マスターカーブが求められる。
変位計1の測定値を変位xとすると、
歪 ε=x/L0 (8)
クリープ試験では、荷重負荷後の時間(使用時間)tと変位計1における変位xに基づく歪ε等を計測する。
標点距離には試験前の平行部の長さPを用いる。歪εは、平行部の伸びxPを用いて、(9)式と表せ、(9)式で求められる歪ε等を計測する。
歪 ε=xP/P (9)
マスターカーブを作成するためのサンプル測定数は、荷重を変えて、3点から8点等様々である。
図5に、本発明の実施形態1のクリープ破断時間を求める例を処理フローで示す。
まず、仮のクリープ破断時間Trを仮定する(図5のステップS101)(第1のステップ)。仮のクリープ破断時間Trとしては、機器(部材)の設計温度と設計応力を用いて求めたクリープ破断曲線(図1(b)参照)からクリープ破断時間を求め、当該クリープ破断時間をステップS101で仮定するクリープ破断時間の初期値とする方法がある。これにより、初期値を簡単に設定できる。なお、その他の方法で、クリープ破断時間を仮定してもよい。
次に、予めクリープ損傷を付与した試験体を用いて作成した、評価パラメータの測定値とクリープ損傷率の平均的関係を示すマスターカーブ(図1(a)の右図参照)の横軸のクリープ損傷率に沿った平行移動量を仮定する(ステップS104)(第3のステップ)。
一方、仮定した平行移動量が所定の範囲内の場合(ステップS105でYes)、ステップS104で仮定した平行移動量を用いて、マスターカーブを平行移動した評価カーブ(近似曲線)を作成する(ステップS106)(第4のステップ)。
次に、ステップS104に移行し、新しい平行移動量を仮定する。
ステップS109(第7のステップ)では、最後に、ステップS108で記憶した誤差が最も誤差が小さい場合なので、そのクリープ破断時間を真のクリープ破断時間Trtとする。真のクリープ破断時間Trtから評価パラメータを測定した時までの使用時間tとの差が当該機器の部材の余寿命となる。
従って、より高精度に供用中の機器の余寿命を評価できるクリープ損傷評価方法を実現できる。
次に、実施形態2のクリープ損傷評価方法について説明する。
実施形態2は、マスターカーブの変化率を平行移動して、機器のクリープ破断時間Trtを求めるものである。
以下、実施形態2のクリープ損傷評価方法を処理フローを用いて説明する。
図7に、本発明の実施形態2のクリープ破断時間を求める例を処理フローで示す。
ステップS201で仮定したTrが、予め定めた範囲内であるかを判定する(ステップS202)。換言すれば、ステップS202では、予め定めた範囲でのTrの仮定が終了したかを判定する。
次に、評価パラメータの隣り合う測定値の変化率(ΔSi)(図6参照)を求める(ステップS204)。
次に、ステップS205で求めたマスターカーブ上の隣り合う点の変化率(ΔMi)(図6参照)を求める(ステップS206)。
次に、実施形態3のクリープ損傷評価方法について説明する。
実施形態3は、マスターカーブが1つの連続関数で表現できない場合には、それぞれの区間内では、マスターカーブを連続関数で表現できる複数の区間に分割し、各区間でのマスターカーブと平行に近くなるように各機器のマスターカーブを求めるものである。
機器の材料によっては、図8に示すように、マスターカーブがクリープ損傷率50%程度まで立ち上がらず、クリープ損傷率50%程度から急激にマスターカーブが立ち上がるものがある。
図8、図9の材料の場合、マスターカーブがクリープ損傷率のある区間毎に急変しており、マスターカーブが1つの連続関数で表現することが困難である。
図9の場合、区間1と区間2と区間3に分け、区間1と区間2と区間3とのそれぞれの3つの区間について、評価パラメータの測定値の時刻歴データに対して、評価パラメータの測定値の近似曲線がマスターカーブと最も平行に近くなるようにクリープ破断時間を推定する。
クリープ破断時間の推定方法は実施形態1、2と同様である。
実施形態1〜3において、実測値を反映させた場合に「平行移動」と評価するための時間の一例について説明する。
「平行移動」と評価するためには、一例として、50%以上の損傷率で少なくとも2点以上の実測値をとる。
なお、前記実施形態1〜3は、本発明の一例を示したものであり、本発明は特許請求の範囲内で様々な具体的形態、変形形態が可能である。
a 評価パラメータ(測定値)
t 使用時間
Tr クリープ破断時間
Φ クリープ損傷率
Claims (6)
- 検査対象の部材の測定値の時刻歴データに対して、当該測定値と前記部材のクリープ損傷率との関係を示す近似曲線を、前記部材と同じ材料を用いて、予め試験により作成した、測定値と損傷時間/クリープ破断時間を示すクリープ損傷率との関係を表わすマスターカーブと平行に近くなるように作成し、
前記近似曲線に基づいて、前記部材のクリープ破断時間を推定する
ことを特徴とするクリープ損傷評価方法。 - 検査対象の部材の測定値の時刻歴データに対して、クリープ破断時間を仮定する第1のステップと、
前記仮定したクリープ破断時間で、測定値に至る負荷を加えた時間の使用時間を除して、前記部材のクリープ損傷率を求める第2のステップと、
前記部材と同じ材料を用いて、予め作製された、測定値と損傷時間/クリープ破断時間を示すクリープ損傷率との関係を表わすマスターカーブの平行移動量を定める第3のステップと、
前記平行移動量に従って、前記マスターカーブを前記クリープ損傷率の軸に沿って平行移動する第4のステップと、
前記平行移動したマスターカーブと、前記測定値と前記部材のクリープ損傷率との関係を示す測定結果との誤差を求める第5のステップと、
平行移動量を変えて、前記第3ステップから、前記第5のステップを繰返し、前記誤差が最小となる平行移動量を求めて、当該平行移動量と誤差を記憶する第6のステップと、
前記第1のステップで新たなクリープ破断時間を仮定して、前記第2のステップから前記第6のステップを繰返して行い、前記誤差が最小となる前記部材のクリープ破断時間を求める第7のステップとを含む
ことを特徴とするクリープ損傷評価方法。 - 請求項2のクリープ損傷評価方法において、
前記第1のステップの前記仮定するクリープ破断時間の初期値は、前記部材の設計温度と設計応力を用いて求められるクリープ破断曲線から求めたクリープ破断時間である
ことを特徴とするクリープ損傷評価方法。 - 請求項2のクリープ損傷評価方法において、
前記第1のステップでは、前記部材の設計温度と設計応力を用いて求めたクリープ破断曲線の99%信頼区間から上限のクリープ破断時間および下限のクリープ破断時間を求め、当該上限のクリープ破断時間と当該下限のクリープ破断時間との範囲内でクリープ破断時間を設定する
ことを特徴とするクリープ損傷評価方法。 - 請求項2のクリープ損傷評価方法において、
前記マスターカーブを複数の区間に分割し、当該各区間ごとに、前記部材の測定値の時刻歴データに対して、当該測定値と前記仮定したクリープ破断時間のクリープ損傷率との関係を表わす近似曲線が前記マスターカーブと平行に近くなるように前記部材のクリープ破断時間を推定する
ことを特徴とするクリープ損傷評価方法。 - 検査対象の部材の測定値の時刻歴データの変化率と、前記部材と同じ材料を用いて、予め試験により作成した、測定値と損傷時間/クリープ破断時間を示すクリープ損傷率との関係を表わすマスターカーブの変化率との誤差が、最小となるように前記部材のクリープ破断時間を推定する
ことを特徴とするクリープ損傷評価方法。
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