JP2017219638A - 眼鏡レンズ、眼鏡レンズの設計方法、眼鏡レンズの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 プリズム処方を含む眼鏡レンズであって、眼球側光学面を有し、プリズム測定基準点を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、一方をプリズム基底方向(鼻側)と同一側とし、他方をプリズム基底方向とは反対側としたとき、眼球側光学面のカーブRの最小値が、プリズムの基底方向(鼻側)と同一側にある。プリズム測定基準点を挟んでプリズム基底方向はプリズム測定基準点の平均カーブより小さく、反対の方向ではプリズム測定基準点の平均カーブより大きくなるので、左右両眼の視線のずれが解消される。
【選択図】図2
Description
プリズムなしレンズと比較したときに、このように見る方向によってプリズム効果が異なってしまう眼鏡レンズで両眼視をすると、正面の方向を見るときには左右のレンズのプレズム効果が同じ量になるが、左右の方向や上下の方向を両眼で見ると正面方向を見た時とは異なる量のプリズム効果が作用するため、プリズム処方の眼鏡を装用する場合に眼鏡に慣れ難いことがある。
特許文献1のプリズム処方レンズでは、プリズム測定基準点近傍でのみ所望の処方プリズムが得られるように面を傾け、かつ、かつ視力を改善するように収差を補正するという発想であり、プリズム測定基準点からプリズム基底方向と同一側では所望のプリズム量より小さすぎ、プリズム基底方向に対して反対側では大きすぎることになる(以下、この状態をプリズムの不均衡とする)。これが左右両眼で見たときの視線のずれを生むため、上記の問題を解決されていない。
処方プリズムに対応したプリズムが付加されたレンズをプリズム処方レンズとし、プリズム処方以外の処方値が同じでプリズムが付加されていないレンズを基準レンズとし、複数の物体点から発せられた光線が、基準レンズの物体側光学面に入射し、プリズム処方レンズの眼球側光学面から出射する光線のうち、眼球回旋点に向かう複数の光線を目標光線群とし、複数の物体点から発せられた光線が、プリズム処方レンズの物体側光学面に入射し、プリズム処方レンズの眼球側光学面から出射する光線のうち、眼球回旋点に向かう複数の光線をプリズム光線群としたとき、プリズム光線群を構成する光線が、同じ位置を通る目標光線群の光線に対して平行となるように、眼球側光学面の傾きを含む形状を決定することを特徴とする。
本発明の実施形態にかかる眼鏡レンズを図1から図10に基づいて説明する。
眼鏡レンズの概略を図1に基づいて説明する。
図1は、累進屈折力レンズ(単焦点非球面レンズ)の形状を示す。
累進屈折力レンズの場合では、プリズム測定基準点Oに対して左右対称なアライメント基準マークMがそれぞれある。これらのアライメント基準マークMを結ぶ線LCの方向に平行な方向をX方向とする。線分LC上にプリズム測定基準点Oがあり、かつ、プリズム測定基準点Oは線分LCの中点である。
そして、線分LCに直交する方向をY方向とする。また、本願においてプリズム測定基準点Oは光学中心と一致することもある。プリズム測定基準点Oとはレンズのプリズム作用を測定するために製造業者によって規定されるレンズ上の点である。例えば、累進屈折力レンズにおいて、プリズム測定基準点は、メーカーが指定する2つのアライメント基準点の中間点に、単焦点非球面レンズにおいては光学中心Oと同一にそれぞれ配置される。
一方、単焦点非球面レンズの場合では、プリズム測定基準点を通りプリズム基底方向と直交する方向をY方向とし、プリズム測定基準点Oを通りプリズム基底方向と平行な方向をX方向とする。
そして、鼻側とは、眼鏡装用状態において装用者の鼻側に位置するレンズの位置を示し、耳側とは、眼鏡装用状態において装用者の耳側に位置するレンズの位置を示す。
なお、本願発明のレンズは、例えば固視ずれ、または斜位等の矯正のためのプリズムを含む処方がなされたプリズム処方用の眼鏡レンズである。
図2から図4には単焦点非球面レンズでの実施例が示され、図5から図10には累進屈折力レンズでの実施例が示されている。これらについて、以下詳細に説明を行う。
まず、図2から図4の各(A)図の横軸はプリズム測定基準点Oからの距離を示し、縦軸は平均カーブ(mean curvature)を示している。また、図2から図4の各(B)図の横軸はプリズム測定基準点Oからの距離を示し、縦軸はレンズのプリズム測定基準点Oからの高さ(sagittal height)を示す。なお、平均カーブとは、1点または2以上の点での平均曲率×(レンズの屈折率−1)×1000)と定義される。
図2から図10の実施例において、平均カーブは、眼球側光学面の図1のX方向、すなわちアライメント基準マークM及びプリズム測定基準点Oを通る直線に沿って測定されている。
図8から図10の実施例では、プリズム基底方向が耳側(X方向と同じくする方向)
であり、プリズム基底方向に対して反対側が鼻側(X方向に対して反対方向)である。
図2において、X方向の向きはプリズム測定基準点Oからプリズム基底方向に対して反対側の方向をプラスの方向、プリズム基底方向側をマイナスの方向とし、それぞれプリズム測定基準点Oから離れるに従って、絶対値が大きくなる。
図2(A)において、平均カーブTはプリズム処方がない単焦点非球面レンズの眼球側光学面(出射面)の平均カーブを表す。平均カーブTの平均カーブは、プリズム測定基準点Oで最小値の2.53であり、プリズム測定基準点を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、平均カーブTの平均カーブの平均値はプリズム基底方向と同一側と、プリズム基底方向に対して反対側とで同じ値となる。ここで平均カーブの平均値はX方向で所定間隔(例えば、1mmの等間隔)で測定した平均カーブを平均した値(平均値)である。またプリズム基底方向と同一側とは、プリズム測定基準点を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、プリズム測定基準点を基準とてプリズム基底方向と同一方向にある領域のことを示す。
なお、本実施形態では、出射面は眼球側光学面であり、入射面は物体側光学面である。眼球側光学面とは眼鏡装用状態で眼鏡レンズの眼球側に配置されるレンズ光学面のことである。一方物体側光学面とは眼鏡装用状態で眼鏡レンズの眼球とは反対側に配置されるレンズ光学面のことである。
図2(A)から、耳側(プリズム基底方向に対して反対側)の平均カーブRの平均カーブの平均値は、鼻側(プリズム基底方向と同一側)の平均カーブRの平均カーブの平均値に比べて大きいことがかわる。
具体的には、図2の平均カーブRの平均値は、−30mm≦X≦0mmの範囲(鼻側)では、2.50Dであり、0mm≦X≦30mmの範囲(耳側)では、2.97Dである。したがって、平均カーブRはプリズム測定基準点を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、眼球側光学面の平均カーブの平均値が、プリズム基底方向と同一側の平均値と比べ大きいことを示す。これにより、プリズム不均衡が緩和される。
なお、平均カーブRは光学中心に対して耳側に向かうに従って平均カーブが大きくなる。さらに、平均カーブRの光学中心でのカーブの変化率は0ではなく、正の値をとる。
図2(B)において、本実施例のレンズでは、入射面の高さPTはプリズム測定基準点で0であり、耳側と鼻側とにそれぞれ向かうに従って値が大きくなる。出射面の高さPRはプリズム測定基準点よりも耳側に最も高さが低い位置があり、この位置から鼻側と耳側とに向かうに従って高さが高くなる。これに対して、プリズム測定基準点を含むレンズ全面に処方プリズムを付加した従来例では、出射面の高さPRoが本実施例の高さPRに比べて、耳側では低く、鼻側では高い。つまり、図2で示される実施例では、プリズム測定基準点に対してプリズム基底方向の曲面が入射面の平均カーブTに比べて小さくて浅くなり、反対の方向が大きくて深くなる。
図3には表記単焦点非球面レンズの実施例が示されている。
図3は図2に対応した図である。図3においても、図2と同様に、プリズム基底方向と同一側が鼻側であり、プリズム基底方向と反対側が耳側である。
図3(A)において、平均カーブTは、プリズム測定基準点で4.39Dであり、耳側と鼻側とにそれぞれ向かうに従って値が小さくなる。平均カーブTの形状はXが0の位置を挟んで耳側と鼻側とで対称であり、平均カーブTの平均値は、鼻側と耳側とでは同じである。カーブの変化率は、入射面のプリズム測定基準点では0である。
平均カーブRは、Xが−20mmの位置(すなわちプリズム基底方向と同一側)において最小値の4.19Dとなり、+20mmの位置(すなわちプリズム基底方向に対して反対側)において最大値4.56Dとなる。出射面では、プリズム測定基準点でのカーブの変化率は0ではなく、正の値をとる。したがって平均カーブRはプリズム測定基準点を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、眼球側光学面のカーブの最小値が、プリズム基準位置を基準に、プリズム基底方向と同一側にあることを示す。
図3(A)から、平均カーブRの平均値は、耳側が鼻側に比べて大きいことがかわる。具体的には図3の平均カーブRの平均値は、−30mm≦X≦0mmの範囲では、4.23Dであり、0mm≦X≦30mmの範囲では、4.52Dである。
したがって平均カーブRはプリズム測定基準点を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、眼球側光学面の平均カーブの平均値が、前記プリズム基底方向と同一側の平均値と比べ大きいことを示す。
図3(B)において、本実施例のレンズでは、入射面の高さPTはプリズム測定基準点で0であり、耳側と鼻側とにそれぞれ向かうに従って値が大きくなる。出射面の高さPRはプリズム測定基準点よりも耳側に最も高さが低い位置があり、この位置から鼻側と耳側とに向かうに従って高さが高くなる。これに対して、プリズム測定基準点にのみ処方プリズムを付加した従来例では、出射面の高さPRoが本実施例の高さPRに比べて、耳側では低く、鼻側では高い。
つまり、図3で示される実施例では、プリズム測定基準点Oに対してプリズム基底方向の曲面が入射面の平均カーブTに比べて小さくて浅くなり、反対の方向が大きく深くなる。
図4には単焦点非球面レンズの実施例が示されている。
図4は図2に対応した図である。図4においても、図2と同様に、プリズム基底方向と同一側が鼻側であり、プリズム基底方向と反対側が耳側である。
図4(A)において、平均カーブTは、プリズム測定基準点であるプリズム測定基準点で6.21Dであり、耳側と鼻側とにそれぞれ向かうに従って値が小さくなり、それぞれ最小値をとる。平均カーブTの形状はXが0の位置を挟んで耳側と鼻側とで対称であり、平均カーブTの平均値は、鼻側と耳側とでは同じである。カーブの変化率は入射面のプリズム測定基準点では0である。
平均カーブRは、Xが−22mmの位置(すなわちプリズム基底方向と同一側)で最小値の5.93Dとなり、+5mmの位置で最大値となる。図4(A)から、平均カーブRの平均値は、耳側が鼻側に比べて大きいことがかわる。具体的には図4の平均カーブRの平均値は、−30mm≦X≦0mmの範囲では、6.03Dであり、0mm≦X≦30mmの範囲では、6.17Dである。したがって平均カーブRはプリズム測定基準点を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、眼球側光学面の平均カーブの平均値が、前記プリズム基底方向と同一側の平均値と比べ大きいことを示す。
図4(B)において、出射面の高さPRはプリズム測定基準点よりも耳側に最も高さが低い位置があり、この位置から鼻側と耳側とに向かうに従って高さが高くなる。これに対して、プリズム測定基準点にのみ処方プリズムを付加した従来例では、出射面の高さPRoが本実施例の高さPRに比べて、耳側では若干低く、鼻側では若干高い。
つまり、図4で示される実施例では、プリズム測定基準点に対してプリズム基底方向の曲面が入射面の平均カーブTに比べて小さくて浅くなり、反対の方向が大きくて深くなる。
図5には、累進屈折力レンズの実施例が示されている。図5から図10の横軸はプリズム測定基準点Oからの距離を示し、縦軸は平均カーブ(mean curvature)を示している。
図5は図2(A)に対応した図である。図5においても、図2と同様に、プリズム基底方向と同一側が鼻側であり、プリズム基底方向と反対側が耳側である。なお、累進屈折力レンズでは、図1の想像線で示される通り、フィッテングポイントF、遠用度数測定位置FM、近用度数測定位置NMがあり、遠用度数測定位置FMから上方が遠用部とされ、近用度数測定位置NMから下方が近用部とされ、遠用部と近用部との間が累進部とされている。
図5において、Tはプリズム処方がない累進屈折力レンズの出射面の平均カーブを表す。平均カーブTは、プリズム測定基準点で2.10Dであり、プリズム測定基準点から耳側の領域において最小値をとる。ここで、累進屈折力レンズにおけるプリズム測定基準点は、メーカーが指定する2つのアライメント基準値の中間点である。図5では、プリズム測定基準点はXが0の位置である。
平均カーブTの平均値は、−30mm≦X≦0mmの範囲では、2.18Dであり、0mm≦X≦30mmの範囲では、2.04Dである。ここで、平均カーブTの平均値は、Xにおいて、1mmピッチ毎に平均カーブの値を求め、それを平均したものである。
平均カーブRの平均値は、−30mm≦X≦0mmの範囲では、1.89Dであり、0mm≦X≦30mmの範囲では、2.31Dである。つまり、平均カーブRの平均値は、耳側が鼻側に比べて大きい。
したがって、平均カーブRはプリズム測定基準点を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、眼球側光学面の平均カーブの平均値が、前記プリズム基底方向と同一側の平均値と比べ大きいことを示す。
図6には、累進屈折力レンズの実施例が示されている。図6は図2(A)に対応した図である。図6においても、図2と同様に、プリズム基底方向と同一側が鼻側であり、プリズム基底方向と反対側が耳側である。
図6において、プリズム処方がない累進屈折力レンズの平均カーブTは、プリズム測定基準点で0であり、プリズム測定基準点から耳側の領域において最小値をとる。
本実施例における平均カーブRは、Xが−18mmの位置(すなわちプリズム基底方向と同一側)において、最小値の3.81Dであり、プリズム測定基準点では4.12Dとなる。
図5の実施例と同様の方法により、平均カーブT,Rの平均値を求める。平均カーブTの平均値は、−30mm≦X≦0mmの範囲では、4.13Dであり、0mm≦X≦30mmの範囲では、3.86Dである。平均カーブRの平均値は、−30mm≦X≦0mmの範囲では、3.85Dであり、0mm≦X≦30mmの範囲では、4.10Dである。つまり、平均カーブRの平均値は、耳側が鼻側に比べて大きい。
したがって、平均カーブRはプリズム測定基準点を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、眼球側光学面の平均カーブの平均値が、前記プリズム基底方向と同一側の平均値と比べ大きいことを示す。
図7には、累進屈折力レンズの実施例が示されている。図7は図2(A)に対応した図である。図7においても、図2と同様に、プリズム基底方向と同一側が鼻側であり、プリズム基底方向と反対側が耳側である。
図7において、プリズム処方がない累進屈折力レンズの平均カーブTは、プリズム測定基準点で6.13Dであり、プリズム測定基準点から耳側の領域において最小値をとる。
本実施例における平均カーブRは、Xが−18mmの位置(すなわちプリズム基底方向と同一側)において、最小値の5.86Dであり、プリズム測定基準点では6.13Dとなる。
平均カーブTの平均値は、−30mm≦X≦0mmの範囲では、6.16Dであり、0mm≦X≦30mmの範囲では、5.78Dである。平均カーブRの平均値は、−30mm≦X≦0mmの範囲では、5.91Dであり、0mm≦X≦30mmの範囲では、6.00Dである。つまり、平均カーブRの平均値は、耳側が鼻側に比べて大きい。
したがって、平均カーブRはプリズム測定基準点を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、眼球側光学面の平均カーブの平均値が、前記プリズム基底方向と同一側の平均値と比べ大きいことを示す。
図8には、累進屈折力レンズの実施例が示されている。図8は図2(A)に対応した図である。図8では、図2とは異なり、プリズム基底方向と同一側が耳側(X方向と同じくする方向)であり、プリズム基底方向と反対側が鼻側(X方向に対して反対方向)である。
図8から図10の実施例では、プリズム基底方向が耳側(X方向と同じくする方向)
であり、プリズム基底方向に対して反対側が鼻側(X方向に対して反対方向)である。
図8において、プリズム処方がない累進屈折力レンズの平均カーブTは、プリズム測定基準点で2.10Dであり、プリズム測定基準点から鼻側の領域において最小値をとる。
本実施例における平均カーブRは、Xが8mmの位置(すなわちプリズム基底方向と同一側)において、最小値の1.83Dであり、プリズム測定基準点では2.10Dとなる。
平均カーブTの平均値は、−30mm≦X≦0mmの範囲では、2.04Dであり、0mm≦X≦30mmの範囲では、2.18Dである。平均カーブRの平均値は、−30mm≦X≦0mmの範囲では、2.31Dであり、0mm≦X≦30mmの範囲では、1.89Dである。つまり、平均カーブRの平均値は、鼻側が耳側に比べて大きい。
したがって平均カーブRはプリズム測定基準点を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、眼球側光学面の平均カーブの平均値が、前記プリズム基底方向と同一側の平均値と比べ大きいことを示す。
図9には、累進屈折力レンズの実施例が示されている。図9は図8に対応した図である。
図9において、プリズム処方がない累進屈折力レンズの平均カーブTは、プリズム測定基準点で0であり、プリズム測定基準点から鼻側の領域において最小値をとる。
本実施例における平均カーブRは、Xが18mmの位置(すなわちプリズム基底方向と同一側)において、最小値の3.81Dであり、プリズム測定基準点では0となる。
平均カーブTの平均値は、−30mm≦X≦0mmの範囲では、3.86Dであり、0mm≦X≦30mmの範囲では、4.13Dである。平均カーブRの平均値は、−30mm≦X≦0mmの範囲では、−0.018であり、0mm≦X≦30mmの範囲では、3.85Dである。つまり、平均カーブRの平均値は、鼻側が耳側に比べて大きい。
したがって平均カーブRはプリズム測定基準点を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、眼球側光学面の平均カーブの平均値が、前記プリズム基底方向と同一側の平均値と比べ大きいことを示す。
図10には、累進屈折力レンズの実施例が示されている。図10は図8に対応した図である。
図10において、プリズム処方がない累進屈折力レンズの平均カーブTは、プリズム測定基準点で0であり、プリズム測定基準点から鼻側の領域において最小値をとる。
本実施例における平均カーブRは、Xが18mmの位置(すなわちプリズム基底方向と同一側)において、最小値の5.86Dであり、プリズム測定基準点では0となる。
平均カーブTの平均値は、−30mm≦X≦0mmの範囲では、5.78Dであり、0mm≦X≦30mmの範囲では、6.16Dである。平均カーブRの平均値は、−30mm≦X≦0mmの範囲では、6.00Dであり、0mm≦X≦30mmの範囲では、5.91Dである。つまり、平均カーブRの平均値は、鼻側が耳側に比べて大きい。
したがって平均カーブRはプリズム測定基準点を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、眼球側光学面の平均カーブの平均値が、前記プリズム基底方向と同一側の平均値と比べ大きいことを示す。
本実施例における図2から図10における測定位置はレンズの物体側光学面である出射面LOの上であって、プリズム測定基準点を通過し、プリズム基底方向と同じ、または逆の方向となる直線上である。図2から図10におけるX=0(mm)のレンズ上の位置はプリズム測定基準位置に対応する。
平均カーブを算出するための測定範囲は、プリズム測定基準点を中点とする60mmの範囲で行った。
(測定点の配置について)
平均カーブを算出するための測定点の配置は、等間隔に1mmの配置とし、平均カーブは各位置での以下の計算式によって計算された面屈折力とする。
計算式:各位置での平均曲率×(レンズの屈折率−1)×1000 ・・・(式1)
(測定方法)
平均カーブの値の測定は、TALYSURF(TAYLOR HOBSON社製)で眼球側光学面に接触して行なった。
なお、測定位置は累進屈折力レンズ等において基準位置、例えば、2点のアライメント基準マークが確認できる場合は、アライメント基準マークを通過する位置を測定位置としても良い。また、測定範囲は50mmから60mmの範囲が好ましい。そして平均カーブの値を算出するための測定点の数は、10点から10000点程度の範囲で選択することができるが、100点以上であることが好ましい。
測定装置は、商品名UA3P(松下電器産業社製)、商品名超高精度CNC三次元測定機LEGEX9106(株式会社ミツトヨ社製)、商品名PMD100(schneider社製)、商品名Dual LensMapper(Automation & Robotqics社製)等が好適である。本実施形態における、測定方法は、説明した上記のみならず下記のような測定をしてもよい。例えば、レンズ全面の測定後、その測定結果を分析し、プリズム測定基準点Oを通過し、プリズム基底方向と同じ方向となる直線を特定することでもよい。
本発明の眼鏡レンズの設計装置及び設計方法の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図11には本実施形態の眼鏡レンズの設計装置の概略が示されている。
図11において、眼鏡レンズの設計装置3は、入射面に入射される光線が出射面から眼球回旋点に向けて出射される眼鏡レンズを設計する装置である。そして、設計装置3は、制御部30、記憶部31及び表示部32を備えるレンズ面形状決定部3(本発明においては設計装置3に含まれる)を備えている。レンズ面形状決定部は、出射面の傾斜を設定するレンズ面形状決定部3Aを備え、レンズ面形状決定部3Aは、制御部30、記憶部31及び表示部32を備えて構成されている。
制御部30は、CPU等の演算回路、RAM等の記憶回路により構成され、記憶部31に記憶されているプログラムをRAMに展開し、RAMに展開されたプログラムとの協働で各種処理を実行する。
送受信部33は、図示しない検眼装置から装用者の検眼情報を取得する検眼情報入手部としても機能するものであり、眼鏡レンズの設計に必要な情報を図示しないコンピュータから受信し、他のコンピュータに設計データ等を送信する。
ここで、検眼情報とは、装用者の固視ずれに関する情報(プリズム量ΔP、鼻側(In方向)、耳側(Out方向)、上側(Up方向)、下側(Down方向)、斜位に関する情報、眼鏡レンズの球面屈折力S、累進屈折力レンズの第一領域(例えば、近用部)で付与する第一屈折力、第二領域(例えば、遠用部)で付与する第二屈折力、累進帯長、加入度、そり角、瞳孔間距離、頂点間距離、その他の情報である。
そして、図11で示されるデータ作成部34では、後述する処方プリズムの分布、基準プリズム分布及び差分プリズム分布を、光線追跡法、その他の方法で作成する。データ作成部34で作成されたデータは、一度、記憶部31で記憶される。
補正前プリズム作用演算部36は、後述するプリズム処方レンズベクトル保存部311で保存された入射光線ベクトル及び出射光線ベクトルから、プリズム処方がない基準レンズのプリズム作用を演算する。
理想的プリズム作用演算部37は、プリズム処方レンズベクトル保存部311で保存された入射光線ベクトルと後述する目標光線群保存部312で保存された出射光線ベクトルとから、プリズム処方レンズに光線を入射させたときに得られる理想的な出射光線を得るためのプリズム作用を演算する。
補正プリズム量演算部38は、補正前プリズム作用演算部36で求めたプリズム作用と理想的プリズム作用演算部37で得られたプリズム作用との差分に基づき出射面の傾きを補正するための補正プリズム量を演算する。
補正前プリズム作用演算部36、理想的プリズム作用演算部37及び補正プリズム量演算部38を備えて演算部300が構成される。
補正部39は、補正プリズム量演算部38で求められた補正プリズム量に基づいて出射面の傾きを補正する。
記憶部本体310は、眼鏡レンズの設計装置3の動作を制御するための各種プログラムや、各種情報を記憶する。各種情報としては、送受信部33で入手した装用者毎の検眼情報、眼鏡レンズの材料、屈折率、その他、設計するにあたり必要な設計情報である。
プリズム処方レンズベクトル保存部311は、プリズム処方レンズCLの入射面LIに光線を入射させた入射光線ベクトルL21A,L22A,L23Aと出射面LOから出射する出射光線ベクトルL21B,L22B,L23B(図12(B)参照)とを保存する。
目標光線群保存部312は、基準レンズBLの処方プリズム量に対応した角度γの分だけ回転された入射面LIに入射する入射光線ベクトルL11A,L12A,L13Aと出射面LOから出射する出射光線ベクトルL11B,L12B,L13B(図12(A)参照)とを記憶部31に保存する。ここで、入射光線ベクトルL11A,L12A,L13Aが目標光線群である。
以上の構成の設計装置3を用いて眼鏡レンズを設計する方法を説明する。
眼鏡レンズの設計方法を説明するために前提となる概念を図12に基づいて説明する。
図12(A)には、プリズム基準レンズBLが示されている。
基準レンズBLはプリズム処方以外の処方値(眼鏡レンズの球面屈折力、乱視屈折力、乱視軸、累進屈折力レンズの第一領域(例えば、近用部)で付与する第一屈折力、第二領域(例えば、遠用部)で付与する第二屈折力、累進帯長、加入屈折力、瞳孔間距離等)が全て同一で処方プリズムが付加されていないレンズである。
図12(A)において、基準レンズBLは、物体側光学面である入射面LIと眼球側光学面である出射面LOとを有する。
無限遠方、あるいは、有限距離にある複数の物体点A1,A2,A3を仮定し、これらの物体点A1,A2,A3から発せられる光線を、基準レンズBLの入射面LIを通って出射面LOから出射させるシミュレーションをする。これらの複数の光線のうち、基準レンズBLの出射面LOの任意の点から出射してそれぞれが眼球回旋点Eに向かう光線ベクトルL01,L02,L03を基準レンズBLの各注視線方向の基準光線群LB0とする。ここで、有限距離とは無限遠方と同一視できる程度の距離をいう。
光線ベクトルL02は、物体点A2から発せられ入射面LIに入射する入射光線ベクトルL02Aと、入射光線ベクトルL02Aの入射位置から出射面LOの任意のレンズ周辺部O2に向かうベクトルと、出射面LOのレンズ周辺部O2から眼球回旋点Eに向かう出射光線ベクトルL02Bとからなる。
光線ベクトルL03は、物体点A3から発せられ入射面LIに入射する入射光線ベクトルL03Aと、入射光線ベクトルL03Aの入射位置から出射面LOの任意のレンズ周辺部O3に向かうベクトルと、出射面LOのレンズ周辺部O3から眼球回旋点Eに向かう出射光線ベクトルL03Bとからなる。
基準レンズBLの光線ベクトルL01,L02,L03のそれぞれに、プリズム測定基準点に付与した処方プリズム量に対応した角度γの分だけ回転された複数の光線ベクトルがL11,L12,L13で示されている。光線ベクトルL11,L12,L13のうち入射光線ベクトルがL11A,L12A,L13Aで示され、出射光線ベクトルがL11B,L12B,L13Bで示されている。ここで、基準レンズBLの入射光線ベクトルL11A,L12A,L13Aを目標光線郡とする。すなわち、基準レンズBLにおいて、処方プリズムに対応した角度γの分だけ回転された複数の光線ベクトル(L11,L12,L13)が出射面LOから出射されて眼球回旋点Eに向かうように基準レンズに複数の光線を入射させた場合の、入射光線ベクトル(L11A,L12A,L13A)を目標光線群とする。
複数の物体点A1,A2,A3から発せられる光線を、プリズム処方レンズCLの入射面LIと通って眼球側光学面の出射面LOから出射させるシミュレーションをする。これらの複数の光線のうち、プリズム処方レンズCLの入射面LIに入射し出射面LOのうち任意の点から出射してそれぞれが眼球回旋点Eに向かう光線ベクトルL21,L22,L23をプリズム処方レンズCLの各注視線方向のプリズム光線群LC0とする。
光線ベクトルL22は、物体点A2から発せられ入射面LIに入射する入射光線ベクトルL22Aと、入射光線ベクトルL22Aの入射位置から出射面LOの任意のレンズ周辺部O2に向かうベクトルと、出射面LOのレンズ周辺部O2から眼球回旋点Eに向かう出射光線ベクトルL22Bとからなる。
光線ベクトルL23は、物体点A3から発せられ入射面LIに入射する入射光線ベクトルL23Aと、入射光線ベクトルL23Aの入射位置から出射面LOの任意のレンズ周辺部O3に向かうベクトルと、出射面LOのレンズ周辺部O3から眼球回旋点Eに向かう出射光線ベクトルL23Bとからなる。
本実施形態では、プリズム処方レンズCLの入射面LIに入射する入射光線ベクトルL21A,L22A,L23Aをプリズム光線郡とする。
出射面LOの傾斜が変更されたプリズム処方レンズに対して、同様のシミュレーションを実施し、最終的に、角度θ1、角度θ2及び角度θ3の差が最も少なくなるような角度θ、理想的には、角度θ1、角度θ2及び角度θ3がそれぞれ角度θとなるように、眼球側光学面の出射面LOの傾斜が決定される。
すなわち、プリズム光線群を構成する複数の光線のうち、任意の点と同じ位置を通る光線ベクトルが目標光線群に対して平行となるように、前記複数の光線の任意の点に対応した各点の局所的な、物体側光学面(入射面LI)又は眼球側光学面(出射面LO)の傾斜を決定するレンズ面形状決定工程により眼鏡レンズの設計を行う。なお前述の傾斜とは、物体側光学面(入射面LI)又は眼球側光学面(出射面LO)の傾きのことである。
また、なお、前述の傾斜は複数の光線に対応した任意の点における各点の局所的な傾斜であり、また前述の傾斜は、複数の任意の点に対応した各点の光学面の傾き含む。
本実施形態の設計方法を図13に基づいて具体的に説明する。
図13のフローチャートで示される通り、まず、プリズム処方レンズベクトル保存工程S1と目標光線群保存工程S2とを実施する。なお、本実施形態では、プリズム処方レンズベクトル保存工程S1と目標光線群保存工程S2とを実施する順番は限定されるものではなく、目標光線群保存工程S2を実施した後、プリズム処方レンズベクトル保存工程S1を実施するものでもよく、両者同時に実施するものでもよい。
物体点A1,A2,A3から発せられた光線であってプリズム処方レンズCLに入射し、プリズム処方レンズCLの眼球側光学面から出射する光線のうち眼球回旋点Eに向かう複数の光線からなるプリズム光線群LC0をデータ作成部34で作成する。データ作成部34では、シミュレーションをして、物体点A1,A2,A3から入射面LIに光線を入射させた入射光線ベクトルL21A,L22A,L23Aと出射面LOから出射して眼球回旋点Eに向かう光線の出射光線ベクトルL21B,L22B,L23Bとを作成する。作成された入射光線ベクトルL21A,L22A,L23A及び出射光線ベクトルL21B,L22B,L23Bをプリズム処方レンズベクトル保存部311に保存する(S1)。
物体点A1,A2,A3から発せられた光線であって基準レンズBLに入射し、基準レンズBLから出射する光線のうち眼球回旋点Eに向かう複数の光線からなる基準光線群LB0を作成し、基準光線群LB0に基づいて、出射光線ベクトルL01B,L02B,L03Bのそれぞれに処方プリズム量に対応した角度γの分だけ回転された複数の光線が出射されて眼球回旋点に向かうように基準レンズに複数の光線を入射された場合における入射光線ベクトルL11A,L12A,L13Aをデータ作成部34で作成する。データ作成部34では、シミュレーションによって、基準光線群LB0を構成する入射光線ベクトルL01A,L02A,L03Aと出射光線ベクトルL01B,L02B,L03Bを作成し、さらに、目標光線群を構成する入射光線ベクトルL11A,L12A,L13Aと出射光線ベクトルL11B,L12B,L13Bを作成し、これら光線ベクトルを目標光線群保存部312に保存する(S2)。
プリズム処方レンズベクトル保存部311から、入射光線ベクトルL21A,L22A,L23A及び出射光線ベクトルL21B,L22B,L23Bを呼び出し、補正前、つまり、現在の基準レンズBLのプリズム作用を補正前プリズム作用演算部36で演算する(S3)。
[理想的プリズム作用演算工程]
プリズム処方レンズベクトル保存工程S1から、出射光線ベクトルL21B,L22B,L23Bと、目標光線群保存工程S2で保存された出射光線ベクトルL11B,L12B,L13Bとを呼び出し、プリズム処方レンズCLに光線を入射させたときに得られる理想的な出射光線を得るためのプリズム作用を理想的プリズム作用演算部37で演算する(S4)。理想的な出射光線とは、物体点A1,A2,A3から入射され基準レンズBLの出射面LOから出射する出射光線ベクトルL11B,L12B,L13Bの方向と、物体点A1,A2,A3から入射されプリズム処方レンズCLの出射面LOから出射する出射光線ベクトルL21B,L22B,L23Bの方向とがなす角度θ1,θ2,θ3が角度θとなるような出射光線である。理想的プリズム作用演算部37により、角度θを演算する。
補正プリズム量演算部38によって、補正前プリズム作用演算工程で求めたプリズム作用と理想的プリズム作用演算保存工程で得られたプリズム作用との差分を演算し、その差分に基づいて出射面L0の傾きを補正するために補正プリズム量を演算する(S5)。つまり、補正プリズム量演算部38では、角度θ1と角度θとの差、角度θ2と角度θとの差、角度θ3と角度θとの差をそれぞれ演算する。
[補正工程]
補正プリズム量演算工程で求められた補正プリズム量に基づいて出射面LOの傾きを補正部39で補正する(S6)。
つまり、補正プリズム量演算部38で演算された角度θ1と角度θとの差、角度θ2と角度θとの差、角度θ3と角度θとの差が少なくなるように出射面LOの光学中心O及びレンズ周辺部O2,O3を含む全面での傾斜を変更する(図5の一点鎖線LOA参照)。
出射面LOの傾きが補正されたら、出射面LOに基づいて、工程S1、工程S3、工程S5を実施し、工程S5で求められたプリズム作用の差分、つまり、角度θ1と角度θとの差、角度θ2と角度θとの差、角度θ3と角度θとの差が目標値以下か否かを判定する(S7)。ここで、目標値とは、眼鏡レンズの種類、屈折力等に応じて適宜設定されるものである。目標値は、記憶部31に予め記憶されている。
プリズム作用の差分が目標値以下である場合(YES)には、設計が終了する。プリズム作用の差分が目標値を超える場合(NO)には、工程S6で実施される補正の回数をカウントし、カウントされた回数が所定回数未満か否かを判定する(S8)。
所定回数は、適宜設定されるものであり、例えば、3回である。設定された回数は記憶部31に予め記憶される。カウントされた回数が所定の回数未満である場合(YES)には、工程S1から工程S6までを繰り返し実施する。カウントされた回数が所定の回数に達した場合(NO)には、設計が終了する。
以上の構成の眼鏡レンズの設計方法は、コンピュータの設計プログラムのより実施される。
種々の眼鏡レンズに前述の設計方法を適用した具体例を図面に基づいて説明する。
まず、図14から図23に基づいて単焦点レンズの場合について説明する。
[実施例1:プリズム基底方向が鼻側(In方向)でプリズム屈折力が2.5Δ(プリズムディオプトリ)、球面屈折力Sが+3.0ディオプトリの単焦点非球面レンズ]
図14には図2で示される実施例に対応する。
図14(A)には、固視ずれのプリズム処方された処方プリズムの分布が示されている。なお、後述する図16(A)(B)(C)等は図14(A)(B)(C)に相当するものであり、これらの図において、座標は出射面LOの座標位置であり、各図の左側が鼻側であり、右側が耳側である。
図14(A)のプリズム処方された眼鏡レンズは、球面屈折力Sが+3.0ディオプトリの単焦点レンズであり、光学中心Oにおいて、プリズム量ΔPが鼻側(In方向)に2.5Δ(プリズムディオプトリ)が保証されている。
図14(A)のプリズム分布はプリズム処方レンズベクトル保存工程S1で保存される。
処方プリズム分布は、位置Pcを中心として外側に向かうに従ってプリズム量ΔPが1Δ(プリズムディオプトリ)単位で大きくなる楕円形である。
基準プリズム分布は、図14(B)に示される通り、光学中心Oから鼻側に8mm離れた位置Pcを境として、鼻側と耳側とで対称であり、上下で対称である。つまり、基準プリズム分布は、位置Pcを含む最小の楕円領域は0ディオプトリの領域P0であり、光学中心Oと同心上に径の異なる楕円領域が配置される。
図14(C)には、差分プリズム分布が示されている。図14(C)の差分プリズム分布は、補正プリズム量演算工程S5で求められる。つまり、図14(C)の差分プリズム分布は、図14(A)で示される「処方プリズムありのプリズム分布」から図14(B)で示される「基準プリズム分布」を差し引くことで作成される。図14(C)の差分プリズム分布に基づいて補正工程S6で出射面LOの傾斜が補正される。
図14(C)において、差分プリズム分布は、光学中心Oを含む領域が0.0〜0.25ディオプトリであり、その領域の外側に位置する領域のプリズム量が0.25〜0.50ディオプトリであり、さらに、その外側に位置する領域のプリズム量が0.50〜0.75ディオプトリである。
図15は、眼球から5m先の平板を見た場合、平板がどのように見えるかシミュレーションをした図である。図15によって、プリズムによる歪みと左右での視線のずれを見ることできる。シミュレーションにおいて追跡する点は、平板の中心点と眼球中心とを結ぶ線と眼球中心と平板の見る位置とを結ぶ線とのなす角度が−20°から+20°であり、5°ピッチで設定した。
図15において、実線が右眼で見た状態であり、想像線が左眼で見た状態である。
図15(C)には、固視ずれのない理想的な状態が示されている。理想的な状態では、右眼で見る格子線と左眼で見る格子線とはほぼ一致する。なお、図15(C)では、見やすくするため、実線と想像線とは、敢えてずらして示されている。
図15(A)には、補正前のレンズ、つまり、プリズム処方レンズを左右の眼で見た場合が示されている、図15(A)で示される通り、座標(0,0)で示される光学中心Oから離れるに従って、右眼と左眼とで見える格子線のずれが大きくなる。
図15(B)には、補正工程後のレンズを左右の眼で見た場合が示されている。図15(B)で示される補正後のレンズで見る格子線は、図15(A)に比べて、右眼と左眼とで見えるずれが小さくなっており、図15(C)で示される理想的な状態に極めて近いことがわかる。
図16は図3で示される実施例に対応する。
図16(A)には、固視ずれのプリズム処方された処方プリズムの分布が示されている。図16(A)において、光学中心Oから鼻側に8mm離れた位置Pc、つまり、座標(−8,0)は、プリズム量ΔPが2.25〜2.50Δ(プリズムディオプトリ)の領域P0の中心に位置する。そして、領域P0の外側はプリズム量ΔPが2.50〜2.75Δ(プリズムディオプトリ)の領域P1であり、領域P1の外側はプリズム量ΔPが2.75〜3.00Δ(プリズムディオプトリ)の領域P2である。
図16(B)には、基準レンズにおける基準プリズム分布(目標分布)が示されている。基準プリズム分布は、位置Pcを含む領域は2.25〜2.50ディオプトリであり、その耳側の領域に位置するに従って、屈折力が大きくなり、鼻側に位置する領域は屈折力が小さくなる。図16(B)のプリズム分布は、目標光線群保存工程S2で保存される。
図16(C)には、単焦点レンズの場合における差分プリズム分布が示されている。図16(C)の差分プリズム分布は、光学中心Oを含む領域が0.00〜0.25ディオプトリであり、その外側に0.25〜0.50ディオプトリの領域がある。これらの領域は光学中心Oを境に耳側と鼻側とでほぼ対称となる。図16(C)の差分プリズム分布に基づいて補正工程S6で出射面LOの傾斜が補正される。
図17(C)は、固視ずれのない理想的な状態が示されているため、右眼で見る格子線と左眼で見る格子線とはほぼ一致する。なお、図17(A)では、屈折力が0であるため、格子は長方形状である。
図17(A)は、補正前のプリズム処方レンズを左右の眼で見た場合が示されている。図17(A)で示される通り、座標(0,0)で示される光学中心Oから離れるに従って、右眼と左眼とで見える格子線のずれが大きくなる。図17(B)で示される補正後のレンズで見る格子線は、図17(A)に比べて、右眼と左眼とで見えるずれが小さくなっており、図17(C)で示される理想的な状態に極めて近いことがわかる。
図18は図4で示される実施例に対応する。
図18(A)において、光学中心Oから耳側に8mm離れた位置Pc、つまり、座標(8,0)は、プリズム量ΔPが0〜1Δ(プリズムディオプトリ)の領域P0の中心位置である。そして、領域P0の外側はプリズム量ΔPが1.0〜2.0Δ(プリズムディオプトリ)の領域P1であり、領域P1の外側はプリズム量ΔPが2.0〜3.0Δ(プリズムディオプトリ)の領域P2であり、領域P2の外側はプリズム量ΔPが3.0〜4.0Δ(プリズムディオプトリ)の領域P3である。図18(A)のプリズム分布はプリズム処方レンズベクトル保存工程S1で保存される。
単焦点レンズにおける基準プリズム分布は、座標(10,0)を含む最小の領域P0が0〜1ディオプトリの領域P0であり、領域P0と同心上に径が1ディオプトリずつピッチの大きい楕円領域が配置される。図18(B)のプリズム分布は、目標光線群保存工程S2で保存される。
図18(C)には、差分プリズム分布が示されている。図18(C)の差分プリズム分布は、光学中心Oを含む領域が0.00〜0.25ディオプトリであり、その外側が0.25〜0.50ディオプトリの領域である。図18(C)の差分プリズム分布に基づいて補正工程S6で出射面LOの傾斜が補正される。
図19(C)は、固視ずれのない理想的な状態が示されているため、右眼で見る格子線と左眼で見る格子線とはほぼ一致する。
図19(A)は、プリズム処方レンズを左右の眼で見た場合が示されている、図19(A)で示される通り、座標(0,0)から外側に離れるに従って、右眼と左眼とで見える格子線のずれが大きくなる。図19(B)で示される補正後のレンズで見る格子線は、図19(A)に比べて、右眼と左眼とで見えるずれが小さくなっており、図19(C)で示される理想的な状態に極めて近いことがわかる。
[実施例4:プリズム基底方向が耳側(Out方向)でプリズム屈折力が2.5Δ(プリズムディオプトリ)の単焦点非球面レンズ]
図14から図19で示される例は、光学中心Oにプリズム量ΔPが鼻側(In方向)に2.5ディオプトリが保証されている例であるが、光学中心Oにプリズム量ΔPが耳側(Out方向)に2.5Δ(プリズムディオプトリ)が保証された例でも同じようにシミュレーションを行ったが、同様の結果が生じた。これは、光学中心Oにプリズム量ΔPが耳側(Out方向)に2.5Δ(プリズムディオプトリ)が保証された例では、図14、図16及び図18で示されるプリズム分布図に比べて、光学中心Oを挟んで鼻側と耳側とが反転したものだからである。
これらの実施例では、プリズム基底方向がY方向であり(図1参照)、Y方向と直交するX方向を境に、一方の領域が他方の領域に比べて平均カーブの平均値が大きい。平均カーブはY方向のうち光学中心Oを通る直線に沿って測定されている。
[実施例5:プリズム基底方向が下側(Down方向)でプリズム屈折力が2.5Δ(プリズムディオプトリ)、球面屈折力Sが+3.0ディオプトリの単焦点非球面レンズ]
図20(A)において、光学中心Oから下に8mm離れた位置Pc、つまり、座標(0,−8)は、プリズム量ΔPが0〜1Δ(プリズムディオプトリ)の領域P0の中心位置である。そして、領域P0の外側は1〜2Δ(プリズムディオプトリ)の領域P1であり、領域P1の外側は2〜3Δ(プリズムディオプトリ)の領域P2である。図20(A)のプリズム分布はプリズム処方レンズベクトル保存工程S1で保存される。
図20(B)には、基準レンズにおける基準プリズム分布(目標分布)が示されている。基準プリズム分布では、位置Pcを含む領域は0〜1ディオプトリの領域P0である。領域P0と同心上に1ディオプトリずつピッチの大きい楕円領域が配置される。図20(B)のプリズム分布は、目標光線群保存工程S2で保存される。
図20(C)の差分プリズム分布に基づいて補正工程S6で出射面LOの傾斜が補正される。
以上の手順の設計方法で固視ずれが解消されていることを図21に基づいて説明する。
図21(A)には、補正前のレンズ、つまり、プリズム処方レンズを左右の眼で見た場合が示されている、図21(A)で示される通り、座標(0,0)で示される光学中心Oから離れるに従って、右眼と左眼とで見える格子線のずれが大きくなる。図21(B)には、補正工程後のレンズを左右の眼で見た場合が示されている。図21(B)で示される補正後のレンズで見る格子線は、図21(A)に比べて、右眼と左眼とで見えるずれが小さくなっていることがわかる。
図22(A)において、光学中心Oから上に8mm離れた位置Pc、つまり、座標(0,8)は、0〜1ディオプトリの領域P0の中心である。そして、領域P0の外側は1〜2ディオプトリの領域P1であり、領域P1の外側は2〜3ディオプトリの領域P2である。図22(A)のプリズム分布はプリズム処方レンズベクトル保存工程S1で保存される。
図22(C)には、差分プリズム分布が示されている。図22(C)の差分プリズム分布は、光学中心Oを含む領域が0.00〜0.25ディオプトリであり、その外側に0.25〜0.50ディオプトリの領域がある。図22(C)の差分プリズム分布に基づいて補正工程S6で出射面LOの傾斜が補正される。
図23(A)には、補正前のレンズを左右の眼で見た場合が示されている。光学中心Oから離れるに従って、右眼と左眼とで見える格子線のずれが大きくなる。図23(B)には、補正工程後のレンズを左右の眼で見た場合が示されている。図23(B)で示される補正後のレンズで見る格子線は、図23(A)に比べて、右眼と左眼とで見えるずれが小さくなっていることがわかる。
[実施例7:プリズム基底方向が上側(Up方向)でプリズム屈折力が2.5Δ(プリズムディオプトリ)の単焦点非球面レンズ]
図20から図23で示される例は、光学中心Oにプリズム量ΔPが下側(Down方向)に2.5Δ(プリズムディオプトリ)が保証されている例であるが、光学中心Oにプリズム量ΔPが上側(Up方向)に2.5Δ(プリズムディオプトリ)保証された例でも同じようにシミュレーション結果が生じた。これは、光学中心Oにプリズム量ΔPが上側に2.5Δ(プリズムディオプトリ)が保証された例では、図20及び図22で示されるプリズム分布図に比べて、光学中心Oを境に上下に反転しただけであるからである。
[実施例8:プリズム基底方向が鼻側(In方向)でプリズム屈折力が2.5Δ(プリズムディオプトリ)、球面屈折力Sが+3.0ディオプトリ、加入度ADDが2.5ディオプトリ、累進長が14mmの累進屈折力レンズ]
図24は図5で示される実施例に対応する。
図24(A)で示される処方プリズムの分布は、座標(0,0)の原点におけるプリズム量ΔPをPaとすると、Paは2.5Δ(プリズムディオプトリ)である。原点から鼻側に5mm離れた位置Pc、つまり、座標(−5,0)は、プリズム量ΔPが0〜1Δ(プリズムディオプトリ)の領域P0の中心である。そして、領域P0の外側はプリズム量ΔPが1〜2Δ(プリズムディオプトリ)の領域P1であり、領域P1の外側はプリズム量ΔPが2〜3Δ(プリズムディオプトリ)の領域P2であり、領域P2の外側はプリズム量ΔPが2〜3Δ(プリズムディオプトリ)の領域P3である。処方プリズム分布は、位置Pcを中心として外側に向かうに従ってプリズム量ΔPが1Δ(プリズムディオプトリ)単位で大きくなる。図24(A)のプリズム分布はプリズム処方レンズベクトル保存工程S1で保存される。
基準プリズム分布は、図24(B)に示される通り、原点から鼻側に5mm離れた位置Pcを含む最小の楕円領域が0〜1ディオプトリの領域P0であり、プリズム測定基準点(原点と同じ位置)と同心上に径の異なる楕円領域が配置される。図24(B)のプリズム分布は、目標光線群保存工程S2で保存される。
図24(C)において、差分プリズム分布は、原点から上に3mmの位置(座標(0,3))を含む領域が0.0〜0.25ディオプトリであり、その領域の外側に位置する領域のプリズム量が0.25〜0.50ディオプトリであり、さらに、その外側に位置する領域のプリズム量が0.50〜0.75ディオプトリである。
図24(C)で示される差分プリズム分布は、補正プリズム量演算工程S5で求められる。
図25(A)には、補正前のレンズを左右の眼で見た場合が示されている、図25(A)で示される通り、座標(0,0)の原点から離れるに従って、右眼と左眼とで見える格子線のずれが大きくなる。
図25(B)には、補正工程後のレンズを左右の眼で見た場合が示されている。図25(B)で示される補正後のレンズで見る格子線は、図25(A)に比べて、右眼と左眼とで見えるずれが小さくなっており、図25(C)で示される理想的な状態に極めて近いことがわかる。
図26は図7で示される実施例に対応する。
図26(A)では、座標(12,−3)の位置Pcは、0〜1ディオプトリの領域P0の中心である。図26(A)のプリズム分布はプリズム処方レンズベクトル保存工程S1で保存される。
図26(C)で示される差分プリズム分布では、座標(0,0)の原点を含む領域が0.00〜0.25ディオプトリであり、その外側が0.25〜0.50ディオプトリの領域である。図26(C)で示される差分プリズム分布は、補正プリズム量演算工程S5で求められる。
以上の手順の設計方法で固視ずれが解消されていることを図27に基づいて説明する。
図27(C)は、固視ずれのない理想的な状態が示されているため、右眼で見る格子線と左眼で見る格子線とはほぼ一致する。
図27(A)は、プリズム処方レンズを左右の眼で見た場合が示されており、座標(0,0)から外側に離れるに従って、右眼と左眼とで見える格子線のずれが大きくなる。図27(B)で示される補正後のレンズで見る格子線は、図27(C)で示される理想的な状態に極めて近いことがわかる。
図28は図10で示される実施例に対応する。
図28(A)では、座標(−12,−5)の位置Pcは、0〜1ディオプトリの領域P0の中心である。図28(A)のプリズム分布はプリズム処方レンズベクトル保存工程S1で保存される。
図28(B)で示される基準プリズム分布は、座標(12,−3)を含む最小の領域P0が0〜1ディオプトリの領域P0であり、領域P0と同心上に径が異なりかつ1ディオプトリであり、ピッチ毎大きくなる楕円領域が配置される。図28(B)のプリズム分布は、目標光線群保存工程S2で保存される。
図28(C)で示される差分プリズム分布では、座標(0,0)を含む領域が0.00〜0.25ディオプトリであり、その外側が0.25〜0.50ディオプトリの領域である。図28(C)で示される差分プリズム分布は、補正プリズム量演算工程S5で求められる。
以上の手順の設計方法で固視ずれが解消されていることを図29に基づいて説明する。図29(A)は、プリズム処方レンズを左右の眼で見た場合が示されており、座標(0,0)から外側に離れるに従って、右眼と左眼とで見える格子線のずれが大きくなるが、図29(B)で示される補正後のレンズで見る格子線は格子線のずれが小さくなっていることがわかる。
[実施例11:プリズム基底方向が下側(Down方向)でプリズム屈折力が2.5Δ(プリズムディオプトリ)、球面屈折力Sが+3.0ディオプトリ、加入度ADDが2.5ディオプトリ、累進長が14mmの累進屈折力レンズ]
図30(A)において、座標(0,0)から下に5mm離れた位置Pc、つまり、座標(0,−5)は、プリズム量ΔPが0〜1Δ(プリズムディオプトリ)の領域P0の中心である。そして、領域P0の外側は1〜2Δ(プリズムディオプトリ)の領域P1であり、領域P1の外側は2〜3Δ(プリズムディオプトリ)の領域P2である。図30(A)のプリズム分布はプリズム処方レンズベクトル保存工程S1で保存される。
図30(C)には、累進屈折力レンズの場合における差分プリズム分布が示されている。図30(C)の差分プリズム分布は、座標(0,2)を含む領域が0.00〜0.25ディオプトリであり、その外側に0.25〜0.50ディオプトリの領域がある。図30(C)で示される差分プリズム分布は、補正プリズム量演算工程S5で求められる。
図31(A)には、補正前のレンズを左右の眼で見た場合が示されている。図31(A)で示される通り、座標(0,0)から離れるに従って、右眼と左眼とで見える格子線のずれが大きくなるが、図31(B)で示される補正工程後のレンズでは、格子線が、図31(A)に比べて、右眼と左眼とで見えるずれが小さくなっていることがわかる。
図32(A)において、座標(0,0)から上に8mm離れた位置Pc、つまり、座標(0,8)は、プリズム量ΔPが0〜1Δ(プリズムディオプトリ)の領域P0の中心である。そして、領域P0の外側は1〜2Δ(プリズムディオプトリ)の領域P1であり、領域P1の外側は2〜3Δ(プリズムディオプトリ)の領域P2である。図32(A)のプリズム分布はプリズム処方レンズベクトル保存工程S1で保存される。
図32(C)には、差分プリズム分布が示されている。図32(C)の差分プリズム分布は、座標(0,2)を含む領域が0.00〜0.25ディオプトリであり、その外側に0.25〜0.50ディオプトリの領域がある。図32(C)で示される差分プリズム分布は、補正プリズム量演算工程S5で求められる。
図33(A)には、補正前のレンズを左右の眼で見た場合が示されている。図33(A)で示される通り、座標(0,0)から離れるに従って、右眼と左眼とで見える格子線のずれが大きくなるが、図33(B)で示される補正工程後のレンズでは、格子線が、図33(A)に比べて、右眼と左眼とで見えるずれが小さくなっていることがわかる。
図34(A)において、座標(0,0)から上に8mm離れた位置Pc、つまり、座標(0,8)は、プリズム量ΔPが0〜1Δ(プリズムディオプトリ)の領域P0の中心である。そして、領域P0の外側は1〜2Δ(プリズムディオプトリ)の領域P1であり、領域P1の外側は2〜3Δ(プリズムディオプトリ)の領域P2である。図34(A)のプリズム分布はプリズム処方レンズベクトル保存工程S1で保存される。
図34(B)で示される基準プリズム分布では、位置Pcを含む領域が0〜1ディオプトリである。図34(B)のプリズム分布は、目標光線群保存工程S2で保存される。
図34(C)で示される差分プリズム分布では、座標(0,2)を含む領域が0.00〜0.25ディオプトリであり、その外側に0.25〜0.50ディオプトリの領域がある。図34(C)で示される差分プリズム分布は、補正プリズム量演算工程S5で求められる。
図35(A)には、補正前のレンズを左右の眼で見た場合が示されている。図35(A)で示される通り、座標(0,0)から離れるに従って、右眼と左眼とで見える格子線のずれが大きくなるが、図35(B)で示される補正工程後のレンズでは、格子線が、図35(A)に比べて、右眼と左眼とで見えるずれが小さくなっていることがわかる。
図36(A)において、座標(0,0)から下に20mm離れた位置Pc、つまり、座標(0,−20)は、プリズム量ΔPが0〜1Δ(プリズムディオプトリ)の領域P0にある。そして、領域P0の外側は1〜2Δ(プリズムディオプトリ)の領域P1であり、領域P1の外側は2〜3Δ(プリズムディオプトリ)の領域P2である。図36(A)のプリズム分布はプリズム処方レンズベクトル保存工程S1で保存される。
図36(B)で示される基準プリズム分布では、位置Pcを含む領域が0〜1ディオプトリである。図36(B)のプリズム分布は、目標光線群保存工程S2で保存される。
図36(C)で示される差分プリズム分布では、座標(0,0)を含む領域が0.00〜0.25ディオプトリであり、その外側に0.25〜0.50ディオプトリの領域がある。図36(C)で示される差分プリズム分布は、補正プリズム量演算工程S5で求められる。
図37(A)には、補正前のレンズを左右の眼で見た場合が示されている。図37(A)で示される通り、座標(0,0)から離れるに従って、右眼と左眼とで見える格子線のずれが大きくなるが、図37(B)で示される補正工程後のレンズでは、格子線が、図37(A)に比べて、右眼と左眼とで見えるずれが小さくなっていることがわかる。
次に、本発明の眼鏡レンズの製造装置の一実施形態を図38に基づいて説明する。
図38において、眼鏡レンズの製造装置4は、眼鏡レンズを設計する眼鏡レンズ設計部と、眼鏡レンズ設計部で設計された眼鏡レンズを加工する加工部40と、を備えている。
眼鏡レンズ設計部は、図11で示される眼鏡レンズの設計装置3と同じである。
加工部40は、レンズ素材に加工を行う加工部本体(図示せず)と、加工部本体を駆動する加工駆動部41と、眼鏡レンズの設計装置3で設計されたデータを受信する受信部42と、受信部42で受信されたデータに基づいて加工駆動部41を制御する制御部43とを備えて構成されている。
受信部42は、眼鏡レンズの設計装置3の送受信部33から送信されるデータを受信する。ここで、受信部42と送受信部33とは無線あるいはコードを介して電気的に接続されている。また、本実施形態では、眼鏡レンズの設計装置3で設計されたデータをUSBメモリー等の記憶媒体に記憶させておき、この記憶媒体から受信部42に設計データを受信するものでもよい。
次に、本発明の眼鏡レンズの製造方法を図39に基づいて説明する。
図39において、まず、眼鏡レンズの設計装置3で眼鏡レンズの設計工程を実施する(S201)。眼鏡レンズの設計工程は、図13で示される眼鏡レンズの設計方法の手順により実施される。
そして、眼鏡レンズを設計する工程で設計された眼鏡レンズを加工する加工工程を実施する。
即ち、受信部42で眼鏡レンズの設計装置3の送受信部33から送信されるデータを受信すると(S202)、制御部43により制御されながら加工駆動部41により工具等を駆動してレンズ素材を加工する(S203)。
(1)図1から図10に示される通り、眼球側光学面である出射面LOのカーブ(平均カーブ)の最小値が、プリズム基底方向と同一側にあるから、眼球が回旋してみた視線の方向に対応するレンズの出射面上の位置における面の傾きがプリズム基底方向に向かうにつれてプリズム測定基準点における面の傾きより徐々に緩やかになり、反対の方向に向かうにつれて徐々に、急になる。ゆえに、プリズム不均衡が解消されることとなるため、左右両眼の視線のずれが解消される。
さらに、眼球が回旋してみた視線の方向に対応するレンズの眼球側光学面上の位置における面の傾きがプリズム基底方向に向かうにつれてプリズム測定基準点における面の傾きより徐々に緩やかになり、反対の方向に向かうにつれて徐々に、急になる。ゆえに、プリズム不均衡が解消されることとなるため、左右両眼の視線のずれが解消される。
(2)図1から図10に示される通り、出射面LOのプリズム基底方向と反対側の平均カーブの平均値が、プリズム基底方向と同一側の平均値と比べ大きいから、この点からも、プリズム不均衡が解消され、左右両眼の視線のずれが解消される。
(3)図1から図4に示される通り、単焦点非球面レンズにおいて、出射面LOのカーブの変化率がプリズム測定基準点で0でないから、プリズム測定基準点において平均カーブの変化率がゼロではなく、プリズム測定基準点を挟んで基底方向はプリズム測定基準点の平均カーブより小さく、反対の方向ではプリズム測定基準点の平均カーブより大きくなるようにカーブが変化している。そのため、左右両眼の視線のずれが解消される。
さらに、眼球が回旋してみた視線の方向に対応するレンズの眼球側光学面上の位置における面の傾きがプリズム基底方向に向かうにつれてプリズム測定基準点における面の傾きより徐々に緩やかになり、反対の方向に向かうにつれて徐々に、急になる。ゆえに、プリズム不均衡が解消されることとなるため、左右両眼の視線のずれが解消される。
(8)演算された補正プリズム量に基づいて出射面LOの傾斜面を補正した後に、所定回数の補正を行ったか否かの判定をするので、所定回数繰り返した場合には出射面LOを補正の補正を終了するので、設計時間の短縮を図ることができる。
例えば、実施形態の眼鏡レンズの設計方法では、プリズム処方レンズCLの出射面LOの傾斜を補正したが、本発明では、プリズム処方レンズCLの入射面LI、つまり、物体側光学面の傾斜を補正するものでもよい。ここで、眼球側光学面とは、出射面であり、眼球側の面であり、後面、凹面とも称されることがある。物体側光学面とは、入射面であり、物体側の面であり、前面、凸面とも称されることもある。
[1]図1から図10を参照して説明する。
本発明の実施形態は、プリズム処方用の眼鏡レンズであって、眼球側光学面(出射面LO)を有し、プリズム測定基準点(光学中心O)を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、一方をプリズム基底方向と同一側とし、他方をプリズム基底方向に対して反対側としたとき、眼球側光学面(出射面LO)のカーブの最小値が、プリズムの基底方向と同一側にあることを特徴とする眼鏡レンズ。
[2]図1から図10を参照して説明する。
本発明の実施形態は、プリズム処方用の眼鏡レンズであって、眼球側光学面(出射面LO)を有し、プリズム測定基準点(光学中心O)を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、一方をプリズム基底方向と同一側とし、他方をプリズム基底方向と反対側としたとき、眼球側光学面(出射面LO)のプリズム基底方向と反対側の平均カーブの平均値が、プリズム基底方向と同一側の平均値と比べ大きいことを特徴とする眼鏡レンズ。
[3]図12を参照して説明する。
本発明の実施形態は、プリズム処方用の眼鏡レンズを設計する方法であって、処方プリズムに対応したプリズムが付加されたレンズをプリズム処方レンズCLとし、プリズム処方以外の処方値が全て同じでプリズムが付加されていないレンズを基準レンズBLとし、基準レンズBLに処方プリズムに対応した角度γの分だけ回転された複数の光線が出射されて眼球回旋点Eに向かうように基準レンズBLに複数の光線を入射させた場合における、入射光線ベクトルL11A,L12A,L13Aを目標光線群とし、複数の物体点A1,A2,A3から発せられたそれぞれの光線がプリズム処方レンズCLの物体側光学面(入射面LI)に入射し、プリズム処方レンズCLの眼球側光学面(出射面LO)から出射する光線のうち眼球回旋点Eに向かう複数の光線をプリズム処方レンズCLの各注視線方向のプリズム光線群LCOとしたとき、プリズム光線群LCOを構成する光線のうち任意の点と同じ位置を通る複数の光線ベクトルL21A,L22A,L23Aが目標光線群に対して平行となるように、複数の光線の任意の点に対応した各点の局所的な物体側光学面(入射面LI)又は眼球側光学面(出射面LO)の傾きを含む形状を決定するレンズ面形状決定工程を備えたことを特徴とする眼鏡レンズの設計方法。
[4]図12及び図13を参照して説明する。
本発明の好ましい実施形態は、前述の眼鏡レンズの設計方法において、レンズ面形状決定工程は、プリズム処方レンズCLに光線を物体側光学面(入射面LI)に入射させた入射光線ベクトルと眼球側光学面(出射面LO)から出射する出射光線ベクトルとを保存するプリズム処方レンズベクトル保存工程S1と、目標光線群を保存する目標光線群保存工程S2と、プリズム処方レンズベクトル保存工程S1で保存された入射光線ベクトル及び出射光線ベクトルから、補正前のプリズム処方レンズCLのプリズム作用を演算する補正前プリズム作用演算工程S3と、プリズム処方レンズベクトル保存工程S1で保存された入射光線ベクトルと目標光線群保存工程S2で保存された目標光線群とから、基準レンズBLから出射する出射光線ベクトルの方向とプリズム処方レンズCLから出射する出射光線ベクトルの方向とのなす角度θ1,θ2,θ3が任意の点でそれぞれ同一もθとなる理想的な出射光線を得るためのプリズム作用を演算する理想的プリズム作用演算工程S4と、補正前プリズム作用演算工程S3で求めたプリズム作用と理想的プリズム作用演算工程S4で得られたプリズム作用との差分に基づき物体側光学面(入射面LI)又は眼球側光学面(出射面LO)の傾きを補正するために補正プリズム量を演算する補正プリズム量演算工程S5と、補正プリズム量演算工程S5で求められた補正プリズム量に基づいて入射面LI又は出射面LOを補正する補正工程S6と、を備えたことを特徴とする眼鏡レンズの設計方法。
[5]図13を用いて説明する。
本発明のさらに好ましい実施形態は、前述の眼鏡レンズの設計方法において、補正工程S6の後に、プリズム処方レンズベクトル保存工程S1、補正前プリズム作用演算工程S3及び補正プリズム量演算工程S5を実施し、プリズム作用の差分が目標値以下もしくは所定回数の補正を行ったか否かの判定を実施し、プリズム作用の差分が目標値以下もしくは所定回数の補正を行ったら補正工程を終了することを特徴とする眼鏡レンズの設計方法。
[6]図12及び図39を用いて説明する。
本発明の実施形態は、眼鏡レンズの設計工程S201と、眼鏡レンズを設計する工程S201で設計された眼鏡レンズを加工する加工工程S203と、を備え、眼鏡レンズの設計工程S201は、処方プリズムに対応したプリズムが付加されたレンズをプリズム処方レンズCLとし、プリズム処方以外の処方値が全て同じでプリズムが付加されていないレンズを基準レンズBLとし、基準レンズBLに処方プリズムに対応した角度γの分だけ回転された複数の光線が出射されて眼球回旋点Eに向かうように基準レンズBLに複数の光線を入射された場合における、入射光線ベクトルL11A,L12A,L13Aを目標光線群とし、複数の物体点A1,A2,A3から発せられたそれぞれの光線がプリズム処方レンズCLの物体側光学面(入射面LI)に入射し、プリズム処方レンズCLの眼球側光学面(出射面LO)から出射する光線のうち眼球回旋点Eに向かう複数の光線をプリズム処方レンズCLの各注視線方向のプリズム光線群LCOとしたとき、プリズム光線群LCOを構成する光線のうち任意の点と同じ位置を通る複数の光線ベクトルL21A,L22A,L23Aが目標光線群に対して平行となるように、物体側光学面(入射面LI)又は眼球側光学面(出射面LO)の傾斜を決定することを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
Claims (6)
- プリズム処方を含む眼鏡レンズであって、
眼球側光学面を有し、
プリズム測定基準点を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、一方をプリズム基底方向と同一側とし、他方をプリズム基底方向と反対側としたとき、
前記眼球側光学面の平均カーブの最小値が、前記プリズム基底方向と前記同一側にある
ことを特徴とする眼鏡レンズ。 - プリズム処方を含む眼鏡レンズであって、
眼球側光学面を有し、
プリズム測定基準点を通過するプリズム基底方向と直交する方向を境界に、一方をプリズム基底方向と同一側とし、他方をプリズム基底方向と反対側としたとき、
前記眼球側光学面の前記プリズム基底方向と前記反対側の平均カーブの平均値が、前記プリズム基底方向と同一側の平均値と比べ大きい
ことを特徴とする眼鏡レンズ。 - プリズム処方を含む眼鏡レンズを設計する方法であって、
前記処方プリズムに対応したプリズムが付加されたレンズをプリズム処方レンズとし、
前記プリズム処方以外の処方値が同じで前記プリズムが付加されていないレンズを基準レンズとし、
複数の物体点から発せられた光線が、前記基準レンズの物体側光学面に入射し、前記基準レンズの眼球側光学面から出射する光線のうち、眼球回旋点に向かう複数の光線を目標光線群とし、
複数の物体点から発せられた光線が、前記プリズム処方レンズの物体側光学面に入射し、前記プリズム処方レンズの眼球側光学面から出射する光線のうち、眼球回旋点に向かう複数の光線をプリズム光線群としたとき、
前記プリズム光線群を構成する光線が、同じ位置を通る前記目標光線群の光線に対して平行となるように、前記複数の光線の任意の点に対応した各点の局所的な前記眼球側光学面の傾きを含む形状を決定するレンズ面形状決定工程を備えたことを特徴とする眼鏡レンズの設計方法。 - 請求項3に記載された眼鏡レンズの設計方法において、
前記レンズ面形状決定工程は、
前記プリズム光線群のうち前記プリズム処方レンズに光線を入射させた入射光線ベクトルと出射する出射光線ベクトルとを保存するプリズム光線群ベクトル保存工程と、
前記目標光線群のうち前記基準レンズに光線を入射させた入射光線ベクトルと出射する出射光線ベクトルとを保存する目標光線群ベクトル保存工程と、
前記プリズム光線郡を保存するプリズム光線郡保存工程と、
前記目標光線群を保存する目標光線群保存工程と、
前記プリズム光線群ベクトル保存工程で保存された前記入射光線ベクトル及び前記出射光線ベクトルから、補正前の前記プリズム処方レンズのプリズム作用を演算する補正前プリズム作用演算工程と、
前記プリズム光線群ベクトル保存工程で保存されたプリズム光線郡と、
前記目標光線群保存工程で保存された前記目標光線群とから、
前記基準レンズから出射する出射光線ベクトルの方向と、前記プリズム処方レンズから出射する出射光線ベクトルの方向とが任意の点でそれぞれ同一となる理想的な出射光線を得るためのプリズム作用を演算する理想的プリズム作用演算工程と、
前記補正前プリズム作用演算工程で求めたプリズム作用と前記理想的プリズム作用演算保存工程で得られたプリズム作用との差分に基づき前記物体側光学面を補正するためにプリズム量を演算する補正プリズム量演算工程と、
前記補正プリズム量演算工程で求められた補正プリズム量に基づいて前記眼球側光学面を補正する補正工程と、を備えた
ことを特徴とする眼鏡レンズの設計方法。 - 請求項4に記載された眼鏡レンズの設計方法において、
前記補正工程の後に、前記プリズム処方レンズベクトル保存工程、前記補正前プリズム作用演算工程及び前記補正プリズム量演算工程を実施し、前記プリズム作用の差分が目標値以下もしくは所定回数の補正を行ったか否かの判定を実施し、前記プリズム作用の差分が目標値以下もしくは所定回数の補正を行ったら前記補正工程を終了する
ことを特徴とする眼鏡レンズの設計方法。 - 眼鏡レンズの設計工程と、前記眼鏡レンズを設計する工程で設計された眼鏡レンズを加工する加工工程と、を備え、
前記眼鏡レンズの設計工程は、
前記処方プリズムに対応したプリズムが付加されたレンズをプリズム処方レンズとし、
前記プリズム処方以外の処方値が同じで前記プリズムが付加されていないレンズを基準レンズとし、
複数の物体点から発せられた光線が、前記基準レンズの物体側光学面に入射し、前記プリズム処方レンズの眼球側光学面から出射する光線のうち、眼球回旋点に向かう複数の光線を目標光線群とし、
複数の物体点から発せられた光線が、前記プリズム処方レンズの物体側光学面に入射し、前記プリズム処方レンズの眼球側光学面から出射する光線のうち、眼球回旋点に向かう複数の光線をプリズム光線群としたとき、
前記プリズム光線群を構成する光線が、同じ位置を通る前記目標光線群の光線に対して平行となるように、前記眼球側光学面の傾きを含む形状を決定する
ことを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
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