本発明の区画体の防火構造は、建築物の区画体が、中空部が間に形成された2つの壁部材を有する壁からなり、かつ配管又はケーブルなどの配管類(管体)が挿通される貫通孔を備えている場合に、中空部から、及び貫通孔を区画形成する壁と管体との隙間から、火災時に火や熱が漏洩することを防止するためのものである。
まず、本発明の第1実施形態の建築物の区画体の防火構造を図1,2を参照しながら説明する。
図1に示すように、第1実施形態の建築物の区画体11の防火構造10(以下、単に防火構造という。)は、1つまたは複数の管体30が挿通される貫通孔15を備えている。区画体11は本実施形態では中空壁12であり、例えば木製又は鋼製の間柱を挟み込むように両側に石膏ボードを固定した間仕切壁などである。
区画体11には貫通孔15が形成されており、貫通孔15により隣接する防火区画A,Bが連通している。
貫通孔15の形状は、図示例では断面視円形状であるが、断面視矩形状など、種々の形状であってもよい。管体30は、各種の配管(例えば水道管、給水管、排水管、冷媒管など)やケーブル(例えば電線、光ファイバケーブルなど)であり、図示例では1本が通されている。なお、本実施形態では、区画体11として、隣接する防火区画A,Bを垂直に仕切る壁からなる例を説明しているが、本発明の範囲はこの実施形態に限定されるものでなく、隣接する防火区画を水平に仕切る天井や床などからなる区画体の防火構造も本発明の範囲に含まれる。
防火構造10は、中空部14が間に形成された2つの壁部材13を有する中空壁12からなる建築物の区画体11と、2つの壁部材13の間を中空部14の全長に渡って延びるよう、貫通孔15に設置された耐火性カバー16とを備えている。2つの壁部材13の各々は、本実施形態では一対の壁部材から構成されている。
耐火性カバー16は、熱膨張性を有する筒状の本体部17と、本体部17の一端17aから、本体部17の軸方向外周に向けて突出するフランジ部18とを有し、フランジ部18は中空壁12の外側に設けられている。つまり、フランジ部18は中空壁12の中空部14とは反対側に配置されている。
本体部17は、両端に開口21,22を有し、かつ外径が軸方向に一定の円筒状に形成されており、内部の空洞20に管体30が挿通されている。また、管体30が貫通孔15内で耐火性カバー16の本体部17の空洞20に配置された状態で、耐火性充填材23が管体30と耐火性カバー16との間に充填されている。耐火性充填材23としては、従来から公知の熱膨張性又は非熱膨張性の粘土状の耐火材、例えば耐火パテを用いることができる。
フランジ部18は、本実施形態では、所定の厚みを有する略円環板状である。なお、フランジ部18は、必ずしも外形が円形である必要はなく、例えば四角形や六角形などの多角形(好ましくは正多角形)であってもよい。フランジ部18の外形(本実施形態では外径)は貫通孔15の外形(本実施形態では直径)よりも大きく、本体部17が区画体11の貫通孔15に挿通された際に、フランジ部18は区画体11の外面に当接する。フランジ部18を、接着剤や粘着剤、粘着テープ、又はその他、ビスなどの固定具を用いて区画体11の外面に固着することで、本体部17が貫通孔15に嵌め込まれていなくても、本体部17を区画体11に固定することができる。フランジ部18は、本体部17と同じ材料で一体に成形することで本体部17の一端に設けることが好ましいが、本体部17とは別材料で形成し、粘着剤や接着剤などを用いて本体部17の一端に後付けで設けてもよい。なお、フランジ部18を本体部17と別材料で形成する場合には、フランジ部18は、必ずしも熱膨張性を有している必要はないが、耐火性を有していることが好ましい。
本体部17の軸方向の長さ(以下、単に本体部17の長さという。)は、特に限定されるものではないが、貫通孔15の全長(すなわち、区画体11の厚み)よりも長く設定されていることが好ましく、本体部17の一端のフランジ部18が区画体11の外面に当接した際に、本体部17の軸方向の他端(以下、単に本体部17の他端という。)が区画体11の貫通孔15の端と同位置となって、貫通孔15の全長にわたって本体部17が配置されることが好ましい。或いは、本体部17の長さは、貫通孔15に挿入しやすいように、貫通孔15の全長よりも短く設定されていてもよく、フランジ部18が区画体11の外面に当接した際に、本体部17の他端が貫通孔15は横切るが区画体11から外側へ突出しない長さであってもよいし、又は本体部17の他端が区画体11の貫通孔15の例えば中央に位置していてもよい。
本体部17の外径は、区画体11の貫通孔15に本体部17を挿通できるのであれば、貫通孔15の直径と同じであっても僅かに大きくてもよく、また、貫通孔15の直径よりも僅かに小さくてもよい。また、本体部17の厚みは、火災時の熱により本体部17が熱膨張した際に、少なくとも貫通孔15を閉塞できる程度の大きさを有していれば、特に限定されるものではない。ただし、本体部17の厚みが大きいと防火性能が向上するが、管体30の挿通が困難になるうえその分のコストが増大するため、本体部17の厚みはこのトレードオフにより設定される。
本体部17、好ましくはさらにフランジ部18は、例えば、樹脂成分に熱膨張性層状無機物と無機充填剤とを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材料により形成される。本体部17、好ましくはさらにフランジ部18が樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材料により形成されるため、作業者が貫通孔15の形状及び寸法に合わせて耐火性カバー16をカットすることができ、貫通孔15の設計に合わせて、現場で簡易に区画体の防火構造を施工することが可能となる。また、貫通孔15に適した寸法の耐火性カバー16を中空壁12の中空部14を閉塞するように配置することで、中空壁12の中空部14における耐火性が向上する。
本体部17、好ましくはさらにフランジ部18は、熱膨張性耐火材料の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練し、公知の成形方法で成形することにより得ることができる。
樹脂成分としては、公知の樹脂成分を広く使用でき、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム物質、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
これらの合成樹脂及び/又はゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
これらの合成樹脂及び/又はゴム物質の中でも、柔軟でゴム的性質を有しているものが好ましい。この様な性質を有する樹脂成分は無機充填剤を高充填することが可能であり、得られる樹脂組成物が柔軟で扱い易いものとなる。より柔軟で扱い易い樹脂組成物を得るためには、ブチル等の非加硫ゴムおよびポリエチレン系樹脂が好適に用いられる。代わりに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
熱膨張性層状無機物は加熱時に膨張するものである。かかる熱膨張性層状無機物に特に限定はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等を挙げることができる。熱膨張性黒鉛とは、加熱時に膨張する従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和してもよい。熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュかそれより小さいと、黒鉛の膨張度が膨張断熱層を得るのに十分であり、また粒度が20メッシュかそれより大きいと、樹脂に配合する際の分散性が良く、物性が良好である。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;難燃剤としての無機リン酸塩;硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
無機充填剤の粒径としては、0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmである。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm以上であると、分散性が良好である。添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましいが、100μm以下の粒径が成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性の点で望ましい。
無機充填剤のうち、水酸化アルミニウムの具体例としては、例えば、水酸化アルミニウムでは、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
無機充填剤は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
さらに、熱膨張性耐火材を構成する樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を含むことができる。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、及び、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウムがより好ましい。
化学式(1)中、R1およびR3は、同一又は異なって、水素、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素数6〜16のアリール基を示す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を示す。
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。ポリリン酸アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。
前記樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ブチルゴム等の樹脂成分100重量部に対し、前記熱膨張性層状無機物を10〜350重量部及び前記無機充填剤を30〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
また、前記熱膨張性層状無機物および前記無機充填剤の合計は、樹脂成分100重量部に対し、50〜600重量部の範囲が好ましい。
かかる樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐火材は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
前記樹脂組成物における熱膨張性層状無機物及び無機充填剤の合計量は、50重量部以上では燃焼後の残渣量を満足して十分な耐火性能が得られ、600重量部以下であると機械的物性が維持される。
さらに本発明に使用する前記樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、可塑剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
熱膨張性耐火材は市販品として入手可能であり、例えば、住友スリーエム社製のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーミキュライトとを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛とを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)、積水化学工業社製フィブロック等の熱膨張性耐火材等も挙げられる。
前記熱膨張性耐火材は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されない。50kW/m2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜50倍のものであれば好ましい。前記体積膨張率が3倍以上であると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めることができ、また50倍以下であると、膨張層の強度が維持され、火炎の貫通を防止する効果が保たれる。
次に、第1実施形態の区画体の防火構造の形成方法について説明する。まず、図3(A)に示すように、防火性カバー16を、区画体により区画される一方の防火区画Aの側から、区画体11の貫通孔15に挿入する。
そして、図3(B)に示すように、中空壁12の2つの壁部材13の間を中空部14に渡って延びるよう耐火性カバー16を貫通孔15内に設置する。ここで耐火性カバー16が「中空壁12の2つの壁部材13の間を中空部14に渡って延びる」とは、加熱による膨張時に耐火性カバー16が貫通孔15における火炎の侵入を阻止又は低減できる程度に耐火性カバー16が中空部14を横切って延びていればよく、耐火性カバー16が中空壁12の2つの壁部材13の厚みの全長に渡っていることを要しないが、図3(B)では耐火性カバー16は、中空部14の全長だけでなく、2つの壁部材13の厚みの全長にも渡って延びる構成が示されている。
防火性カバー16の本体部17の一端17aのフランジ部18が区画体11の外面に当接するまで本体部17を貫通孔15に挿入すると、フランジ部18を、接着剤や粘着剤、粘着テープ、その他、ビスなどの固定具を用いて区画体11の外面に固着することで、本体部17が区画体11に固定される(図3(B))。
そして、図3(C)に示すように、管体30を本体部17の他端17bの側の開口22(防火区画Bの側から)から本体部17内に挿入して一端17aの側の開口21から突き出させる。
その後、図3(D)に示すように、耐火性充填材23を、本体部17の一端17a側の開口21から(防火区画Aの側から)充填して、耐火性充填材23で管体30の周りの隙間を塞ぐ。これにより、図1に示すように、区画体11の貫通部12に対して防火性カバー16が設置され、区画体11の防火構造10が構築される。
上述した防火性カバー16が用いられた防火構造10では、防火区画A又は防火区画Bにおいて火災が起きても、防火性カバー16の少なくとも本体部17が火災の熱により膨張して貫通孔15を埋めるとともに、火災時に管体30が溶融又は焼失して空間ができたとしても、本体部17の熱膨張により管体30が溶融又は焼失してできた空間が埋められる。これにより、中空壁12の中空部14及び区画体11の貫通孔15を完全に閉塞できるため、火炎や熱が貫通孔15から隣接する防火区画に漏洩することを防ぐことができる。また、耐火性充填材23により、本体部17が熱膨張する前に、火炎や熱が貫通孔15を通り抜けること防ぐことができる。よって、良好な防火性能を安定して発現することができる。
以上、本発明を第1実施形態について説明してきたが、本発明は上記第1実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて以下のような種々の変形が可能である。
・フランジ部18は、耐火性カバー16に予め設ける代わりに、耐火性カバー16を一方の防火区画Bから貫通孔15に挿入し、耐火性カバー16の一端が他方の防火区画Aに達した後で、耐火性カバー16の一端を本体部17の軸方向外周に向けて突出させることにより形成してもよい。
・図3(A)−(C)では、耐火性カバー16を区画体11の貫通孔15に挿入してから管体30を耐火性カバー16の本体部17内に挿入しているが、先に管体30を貫通孔15に挿入してから耐火性カバー16を貫通孔15に設置してもよい。
・図4に示すように、本体部17には、フランジ部18も含めて、軸方向の一端から他端まで延びる切り込み19が形成されてもよい。これにより、本体部17は切り込み19の位置での開閉可能となる、つまりは、本体部17の連結部分Cを支点に切り込み7の右側部分Rと左側部分Lとが矢印の方向に離反可能となり、切り込み19の位置に開口が形成される。
切り込み19の位置で本体部17を開いて前記開口から管体30を本体部17内に入れ、再び本体部17を閉じた後、管体30に沿って本体部17をスライドさせて貫通孔15内に挿入することで、防火性カバー16を貫通孔15に設置することができる。つまり、管体30が貫通孔15内に挿通される前だけでなく、本体部17に切り込み19を設けることで、管体30と同時に、または管体30が貫通孔15内に挿通された後でも耐火性カバー16を設置することができる。
また、右側部分Rと左側部分Lを耐火性カバー16(本体部17)の軸方向の内側と外側にずらして、本体部17の外径が縮小する。このため、作業者は、本体部17の外径を縮小させた状態で、フランジ部18を区画体11により区画される一方の区画(B区画)の側から貫通孔内を通して区画体により区画される他方の区画(A区画)へ突出させて、作業者はB区画にいながら、フランジ部18をA区画にて中空壁12の外側に設けることができる。さらに、耐火性充填材23を管体30と耐火性カバー16との間に充填する工程もB区画から行えば、作業者は区画体の防火構造の形成方法の全工程を、片方のB区画から行うことができる。
・上記の2つの変形例を組み合わせて、本体部17に切り込み19を形成し、フランジ部18を、耐火性カバー16の一端を本体部17の軸方向外周に向けて突出させることにより形成するようにしてもよい。この場合、耐火性カバー16は、一枚のシート状の熱膨張性耐火材料から形成することができる。
・図5に示すように、フランジ部18は本体部17の両側にあってもよい。つまり、第1実施形態のフランジ部18は第1のフランジ部18aであり、第1のフランジ部18は中空壁12の一方の壁13の外側に配置され、耐火性カバー16は、本体部17の一端17aとは反対側の端17bから本体部17の軸方向外周に向けて突出する第2のフランジ部18bを有し、第2のフランジ部18bは中空壁12の他方の壁13の外側に配置されてもよい。
・第1実施形態では、貫通孔15が断面視円形状で、耐火性カバー16の本体部17も筒状であるが、耐火性カバー16は断面視略矩形状の貫通孔15に配置される構成であってもよい。例えば、図6(A)に示すように、耐火性カバー16は一枚の略矩形のシート状の熱膨張性耐火材料からなり、実線を切り離し、点線を折り曲げることにより、図6(B)に示すように組み立てて、本体部17とフランジ部18を形成し、貫通孔15に配置するようにしてもよい。また、図5に示すように、フランジ部18を本体部17の両側に設ける場合、一枚の略矩形のシート状の耐火性カバー16の両端に切れ目を入れて折り曲げ、フランジ部18を形成すればよい。
・本体部17が貫通孔15の全長にわたり配置されているが、本体部17の長さを貫通孔15の全長よりも短くしてもよく、フランジ部18が区画体11の外面に当接した際に、本体部17の他端17bが貫通孔15の例えば中央に位置していてもよい。例えば、図7に示すように、2つの耐火性カバー16を、フランジ部18が2つの壁部材13のそれぞれの外面に当接するように、互いに隣接又は接触させて配置してもよい。このように、加熱による膨張時に耐火性カバー16が貫通孔15における火炎の侵入を阻止又は低減できる程度に耐火性カバー16が中空部14に渡って延びていればよく、複数の耐火性カバー16を互いに接触または離間させて貫通孔15の軸方向に沿って並べて配置されてもよい。
・区画体11としての壁の構造は、中空壁12に限定されるものではなく、例えば、鉄筋コンクリート構造(RC)や軽量気泡コンクリート構造(ALC)であってもよい。
次に、本発明の第2実施形態の区画体の防火構造を図8を参照しながら説明する。なお、第1実施形態と同じ部材については説明を省略する。
図8に示すように、第2実施形態の建築物の区画体11の防火構造10の貫通孔15には、1つまたは複数の管体30が挿通されている。建築物の区画体11は、中空部14が間に形成された2つの壁部材13を有する中空壁12からなり、2つの壁部材13の間を中空部14の全長に渡って延びるように膨張性閉塞部材24が設けられている。
膨張性閉塞部材24は、例えば図9(A)に示すように、発泡して硬化する材料24aまたはかかる材料から形成された成形体であってもよいし、図9(B)に示すように、合成樹脂等から形成された、内部に空気を入れて膨張された気密性の袋24bであってもよいし、図9(C)に示すように、合成樹脂等から形成された気密性の袋24c内に発泡して硬化する材料24dを収容した構成であってもよい。袋24b,24cは透明または不透明であってよい。袋24b,24cは、例えば空気孔を開ける等の減圧により圧縮されてもよい。袋24b,24cを構成する合成樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリ塩化ビニルが挙げられる。袋24b,24cを用いることで、膨張性閉塞部材24は重力に抗して中空部14を閉塞することが容易となる。
図8に戻り、本実施形態では、膨張性閉塞部材24は区画貫通孔15の周囲を覆うように略円環状に設けられる。好ましくは膨張性閉塞部材24は、2つの壁部材13の間と、貫通孔15とにより画成された空間に設けられる。このように、中空壁12の2つの壁部材13の間を中空部14に渡って膨張性閉塞部材24を配置することで、中空壁12の中空部14における耐火性が向上する。第1実施形態におけるように、膨張性閉塞部材24は、膨張性閉塞部材24が貫通孔15における火炎の侵入を阻止又は低減できる程度に耐火性カバー16が中空部14を横切って延びていればよく、2つの壁部材13の厚みの全長に渡っていることを要しない。
管体30が貫通孔15内に配置された状態で、耐火性充填材23が管体30と中空壁12(及びその2つの壁部材13)との間に充填されている。耐火性充填材23としては、従来から公知の熱膨張性又は非熱膨張性の粘土状の耐火材、例えば耐火パテを用いることができる。
膨張性閉塞部材24が発泡して硬化する材料24a,24dから形成される場合、その組成は特に限定されないが、好ましくは火災等の熱により発泡して硬化する熱硬化性ウレタンを含有する難燃性ウレタン樹脂組成物であり、そのような例として、PCT/JP2015/055791に記載された難燃性ポリウレタン発泡体を形成できる難燃性ウレタン樹脂組成物が挙げられる。
熱硬化性ウレタンを含有する樹脂組成物は、下記(A)−(F)の成分:
(A)ポリイソシアネートを含む第1液、
(B)ポリオールを含む第2液、
(C)三量化触媒、
(D)発泡剤、
(E)整泡剤、および
(F)赤リンと、リンエステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、および針状フィラーから選ばれる少なくとも1つとを含む添加剤
を混合して形成されるものであり、これが硬化されて難燃性ポリウレタン発泡体となる。
上記の(A)−(F)成分を混合して得られる難燃性ウレタン樹脂組成物は反応して硬化するため、その粘度は時間の経過と共に変化する。そこで難燃性ウレタン樹脂組成物を使用する前は、難燃性ウレタン樹脂組成物を現場発泡システムとして二以上に分割しておいて、難燃性ウレタン樹脂組成物が反応して硬化することを防止する。そして難燃性ウレタン樹脂組成物を使用する際に、二以上に分割しておいた難燃性ウレタン樹脂組成物を一つにまとめることにより、難燃性ウレタン樹脂組成物が得られる。
現場発泡システム、難燃性ウレタン樹脂組成物、および難燃性ポリウレタン発泡体 なお難燃性ウレタン樹脂組成物を二以上に分割するときは、二以上に分割された難燃性ウレタン樹脂組成物のそれぞれの成分単独は硬化が始まらず、難燃性ウレタン樹脂組成物のそれぞれの成分を混合した後に硬化反応が始まるようにそれぞれの成分を分割すればよい。
難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化は混合および常温で行なってもよいが、各成分を予め加熱しておいてもよい。
上記の(C)の三量化触媒、(D)の発泡剤、(E)の整泡剤、および(F)の添加剤は、それぞれ第1液および第2液のいずれに含まれてもよいし、第1液および第2液とは異なる第3液以降の液として提供されてもよいが、好ましくは(C)の三量化触媒、(D)の発泡剤、(E)の整泡剤、および(F)の添加剤は、第2液の中で混合される。また、上記の(G)のその他の成分も、第1液および第2液のいずれに含まれてもよく、第1液および第2液とは異なる第3液以降の液として提供されてもよいが、好ましくは第2液の中で混合される。
以下、(A)〜(F)成分のそれぞれについて詳しく説明する。
(A)ポリイソシアネート
ウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロへキシレンジイソシアネート、メチルシクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロへキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネートは一種もしくは二種以上を使用することができる。ウレタン樹脂の主剤は、使い易いこと、入手し易いこと等の理由から、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが好ましい。
(B)ポリオール
ウレタン樹脂の硬化剤であるポリオールとしては、例えばポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコールなどが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオールなどの水酸基含有化合物と、ジエチレンカーボネート、ジプロピレンカーボネートなどとの脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
脂環族ポリオールとしては、例えばシクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロへキシルメタンジオール、ジメチルジシクロへキシルメタンジオール等が挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、ヒドロキシカルボン酸と上記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
ここで多塩基酸としては、具体的には、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸等が挙げられる。また多価アルコールとしては、具体的には、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
またヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
ポリマーポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、メタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、多価アルコールの変性ポリオールまたは、これらの水素添加物等が挙げられる。
多価アルコールの変性ポリオールとしては、例えば、原料の多価アルコールにアルキレンオキサイドを反応させて変性したもの等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、グリセリンおよびトリメチロールプロパン等の三価アルコール;ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクト−ス、メチルグルコシドおよびその誘導体等の四〜八価のアルコール;フェノール、フロログルシン、クレゾール、ピロガロール、カテコ−ル、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1−ヒドロキシナフタレン、1,3,6,8−テトラヒドロキシナフタレン、アントロール、1,4,5,8−テトラヒドロキシアントラセン、1−ヒドロキシピレン等のフェノールポリブタジエンポリオール;ひまし油ポリオール;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体およびポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2〜100)ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)が挙げられる。
多価アルコールの変性方法は特に限定されないが、アルキレンオキサイド(以下、AOと略す)を付加させる方法が好適に用いられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも一種の存在下に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。
活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオ−ル等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、エチレンジアミン、ブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。 本発明に使用するポリオールは、燃焼した際の総発熱量の低減効果が大きいことからポリエステルポリオール、またはポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
次に前記ウレタン樹脂の主剤と硬化剤との配合比について説明する。
本発明においては、インデックスは(ポリイソシアネートの当量数)×100÷(ポリオールの当量数+水の当量数)により定義される。 ここで前記ポリオール化合物の当量数は、[ポリオール化合物の水酸基価(mgKOH/g)]×[ポリオール化合物の重量(g)]÷[水酸化カリウムの分子量]により表される。 前記ポリイソシアネートの当量数は、[ポリイソシアネート基の分子量]×100÷[イソシアネート基の重量%]により表される。 水の当量数は、[水の重量(g)]×2÷[水の分子量]により表される。
またイソシアネートインデックスは、ポリオールの水酸基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比を百分率で表したものであるが、その値が100を超えるということはイソシアネート基が水酸基より過剰であることを意味する。
本発明に使用するウレタン樹脂のイソシアネートインデックスの範囲は、120〜700の範囲であることが好ましく、200〜600の範囲であればより好ましく、300〜500の範囲であればさらに好ましい。前記当量比が700以下では発泡不良が起こるのを防ぐことができ、120以上では良好な耐熱性を有することができる。
(C)三量化触媒
三量化触媒は、ポリウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する。 イソシアヌレート環の生成を促進するために、例えば、三量化触媒として、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4−ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の窒素含有芳香族化合物;酢酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩;トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用することができる。
現場発泡システムに使用される三量化触媒の添加量はウレタン樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜10重量部の範囲であることが好ましく、0.1重量部〜8重量部の範囲であることがより好ましく、0.1重量部〜6重量部の範囲であることが更に好ましく、0.4重量部〜3.0重量部の範囲であることが最も好ましい。0.1重量部以上の場合にイソシアネートの三量化が阻害される不具合が生じず、10重量部以下の場合は適切な発泡速度を維持することができ、取り扱いやすい。
(D)発泡剤
現場発泡システムに使用される発泡剤は、ウレタン樹脂の発泡を促進する。
前記発泡剤としては、例えば、水、 プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の低沸点の炭化水素、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物、
トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフロオロエタン、CHF3、CH2F2、CH3F、例えばトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン等のハイドロフルオロオレフィン(HFO)等のフッ素化合物、
ジクロロモノフルオロエタン、(例えばHCFC141b(1、1−ジクロロ−1−フルオロエタン)、HCFC22(クロロジフルオロメタン)、HCFC142b(1−クロロ−1、1−ジフルオロエタン)等のハイドロクロロフルオロカーボン化合物、
HFC−245fa(1、1、1、3、3−ペンタフルオロプロパン)、HFC−365mfc(1、1、1、3、3−ペンタフルオロブタン)等のハイドロフルオロカーボン化合物、
ジイソプロピルエーテル等のエーテル化合物、あるいはこれらの化合物の混合物等の有機物理発泡剤、
窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機物理発泡剤等が挙げられる。
発泡剤の範囲は、ウレタン樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部の範囲であることが好ましい。発泡剤は、ウレタン樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜18重量部の範囲であることがより好ましく、0.5重量部〜18重量部の範囲であることが更に好ましく、1重量部〜15重量部の範囲であることが最も好ましい。
発泡剤の範囲が0.1重量部以上の場合は発泡が促進され、得られる成形品の密度を低減することができ、30重量部以下の場合は、発泡体が発泡せず発泡体が形成されないことを防ぐことができる。
(E)整泡剤
整泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。
化学反応により硬化するウレタン樹脂に対する整泡剤の使用量は、使用する化学反応により硬化するウレタン樹脂により適宜設定されるが、一例を示すとすれば、例えば、ウレタン樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜10重量部の範囲であれば好ましい。
三量化触媒、発泡剤および整泡剤はそれぞれ一種もしくは二種以上を使用することができる。
(F)添加剤
添加剤は、赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、および針状フィラーから選ばれる少なくとも1つとを含む。
この場合、使用する添加剤の好ましい組み合わせとしては、例えば、下記の(a)〜(n)のいずれか等が挙げられる。
(a)赤リンおよびリン酸エステル
(b)赤リンおよびリン酸塩含有難燃剤
(c)赤リンおよび臭素含有難燃剤
(d)赤リンおよびホウ素含有難燃剤
(e)赤リンおよびアンチモン含有難燃剤
(f)赤リンおよび金属水酸化物
(g)赤リンおよび針状フィラー
(h) 赤リン、リン酸エステルおよびリン酸塩含有難燃剤
(i) 赤リン、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、および臭素含有難燃剤
(j)赤リン、リン酸エステルおよびホウ素含有難燃剤
(k)赤リン、リン酸エステルおよび針状フィラー
(l)赤リン、リン酸塩含有難燃剤および臭素含有難燃剤
(m)赤リン、リン酸塩含有難燃剤およびホウ素含有難燃剤
(n)赤リン、臭素含有難燃剤およびホウ素含有難燃剤
(o)赤リン、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤および臭素含有難燃剤
(p)赤リン、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤およびホウ素含有難燃剤
(q)上記の(l)〜(p)にさらに針状フィラーを加えたもの
(r) 赤リンと;リン酸エステルおよびリン酸塩含有難燃剤と;ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、および針状フィラーから選ばれる少なくとも1つ
(s)赤リンと;リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、および臭素含有難燃剤から選択される1つまたは2つと;ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、および針状フィラーから選ばれる少なくとも1つ
(t) 赤リンと;リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、および臭素含有難燃剤と;ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、および針状フィラーから選ばれる少なくとも1つ
本発明に使用する赤リンに限定はなく、市販品を適宜選択して使用することができる。
赤リンの添加量は、ウレタン樹脂100重量部に対して、3.0重量部〜18重量部の範囲であることが好ましい。 赤リンの範囲が3.0重量部以上の場合は、難燃性ウレタン樹脂組成物の自己消火性が保持され、また18重量部以下の場合には難燃性ウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。 また本発明に使用するリン酸エステルは特に限定されないが、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用することが好ましい。
モノリン酸エステルとしては、特に限定はないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレ二ルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレ二ルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レジルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ホスフアフエナンスレン、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート等が挙げられる。
縮合リン酸エステルとしては、特に限定はないが、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート(大八化学工業社製、商品名PX−200)、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートならびにこれらの縮合物等の縮合リン酸エステルを挙げられる。
市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(商品名CR−733S)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(商品名CR−741)、芳香族縮合リン酸エステル(商品名CR747)、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(ADEKA社製、商品名アデカスタブPFR)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェ−ト(商品名FP−600、FP−700)等を挙げることができる。
上記の中でも、硬化前の組成物中の粘度を低下させる効果と初期の発熱量を低減させる効果が高いためモノリン酸エステルを使用することが好ましく、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェートを使用することがより好ましい。
リン酸エステルは一種もしくは二種以上を使用することができる。
リン酸エステルの添加量は、ウレタン樹脂100重量部に対して、1.5重量部〜52重量部の範囲であることが好ましく、1.5重量部〜20重量部の範囲であることがより好ましく、2.0重量部〜15重量部の範囲であることが更に好ましく、2.0重量部〜10重量部の範囲であることが最も好ましい。
リン酸エステルの範囲が1.5重量部以上の場合には難燃性ウレタン樹脂組成物からなる成形品が火災の熱により形成される緻密残渣が割れることを防止でき、52重量部以下の場合には難燃性ウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
また本発明に使用するリン酸塩含有難燃剤はリン酸を含むものである。
リン酸塩含有難燃剤に使用されるリン酸は特に限定はないが、モノリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、およびそれらの組み合わせ等の各種リン酸が挙げられる。
リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、各種リン酸と周期律表IA族〜IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンから選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩を挙げることができる。周期律表IA族〜IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
また脂肪族アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。
また芳香族アミンとして、ピリジン、トリアジン、メラミン、アンモニウム等が挙げられる。
なお、上記のリン酸塩含有難燃剤は、シランカップリング剤処理、メラミン樹脂で被覆する等の公知の耐水性向上処理を加えてもよく、メラミン、ペンタエリスリトール等の公知の発泡助剤を加えても良い。
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。
モノリン酸塩としては特に限定されないが、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のアンモニウム塩、リン酸−ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸−ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩、リン酸−リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸−リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩、リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩、リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛等の亜鉛塩等が挙げられる。
またポリリン酸塩としては特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
これらの中でも、リン酸塩含有難燃剤の自己消火性が向上するため、モノリン酸塩を使用することが好ましく、リン酸二水素アンモニウムを使用することがより好ましい。
リン酸塩含有難燃剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
本発明に使用するリン酸塩含有難燃剤の添加量は、ウレタン樹脂100重量部に対して、1.5重量部〜52重量部の範囲であることが好ましく、1.5重量部〜20重量部の範囲であることがより好ましく、2.0重量部〜15重量部の範囲であることが更に好ましく、2.0重量部〜10重量部の範囲であることが最も好ましい。
リン酸塩含有難燃剤の範囲が1.5重量部以上の場合は、難燃性ウレタン樹脂組成物の自己消火性が保持され、また52重量部以下の場合には難燃性ウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
また本発明に使用する臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有する化合物であれば特に限定はないが、例えば、芳香族臭素化化合物等を挙げることができる。
芳香族臭素化化合物の具体例としては、例えば、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフエノキシ)エタン、エチレンービス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー有機臭素化合物;臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、ポリカ−ボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート;臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物;ポリ(臭素化ベンジルアクリレート);臭素化ポリフェニレンエーテル;臭素化ビスフェノールA、塩化シアヌールおよび臭素化フェノールの縮合物;臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン;架橋または非架橋臭素化ポリ(−メチルスチレン)等のハロゲン化された臭素化合物ポリマーが挙げられる。
燃焼初期の発熱量を制御する観点から、臭素化ポリスチレン、ヘキサブロモベンゼン等が好ましく、ヘキサブロモベンゼンがより好ましい。
臭素含有難燃剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
本発明に使用する臭素含有難燃剤の添加量は、ウレタン樹脂100重量部に対して、1.5重量部〜52重量部の範囲であることが好ましく、1.5重量部〜20重量部の範囲であることがより好ましく、2.0重量部〜15重量部の範囲であることが更に好ましく、2.0重量部〜10重量部の範囲であることが最も好ましい。
臭素含有難燃剤の範囲が0.1重量部以上の場合は、難燃性ウレタン樹脂組成物の自己消火性が保持され、また52重量部以下の場合には難燃性ウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
また本発明に使用するホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。
酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。
具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
本発明に使用するホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛であればより好ましい。
ホウ素含有難燃剤は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
本発明に使用するホウ素含有難燃剤の添加量は、ウレタン樹脂100重量部に対して、1.5重量部〜52重量部の範囲であることが好ましく、1.5重量部〜20重量部の範囲であることがより好ましく、2.0重量部〜15重量部の範囲であることが更に好ましく、2.0重量部〜10重量部の範囲であることが最も好ましい。
ホウ素含有難燃剤の範囲が1.5重量部以上の場合は、難燃性ウレタン樹脂組成物の自己消火性が保持され、また52重量部以下の場合には難燃性ウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
また本発明に使用するアンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。
酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。
アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。
ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
本発明に使用するアンチモン含有難燃剤は、酸化アンチモンであることが好ましい。
アンチモン含有難燃剤は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
アンチモン含有難燃剤の添加量は、ウレタン樹脂100重量部に対して、1.5重量部〜52重量部の範囲であることが好ましく、1.5重量部〜20重量部の範囲であることがより好ましく、2.0重量部〜15重量部の範囲であることが更に好ましく、2.0重量部〜10重量部の範囲であることが最も好ましい。
アンチモン含有難燃剤の範囲が1.5重量部以上の場合は、難燃性ウレタン樹脂組成物の自己消火性が保持され、また52重量部以下の場合には難燃性ウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
また本発明に使用する金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等があげられる。
金属水酸化物は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
金属水酸化物の添加量は、ウレタン樹脂100重量部に対して、1.5重量部〜52重量部の範囲であることが好ましく、1.5重量部〜20重量部の範囲であることがより好ましく、2.0重量部〜15重量部の範囲であることが更に好ましく、2.0重量部〜10重量部の範囲であることが最も好ましい。
金属水酸化物の範囲が1.5重量部以上の場合は、難燃性ウレタン樹脂組成物の自己消火性が保持され、また52重量部以下の場合には難燃性ウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
また本発明に使用する針状フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マグネシウム含有ウィスカー、珪素含有ウィスカー、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、エレスタダイト、ベーマイト、棒状ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、スラグ繊維、石膏繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、硼素繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。
本発明に使用する針状フィラーのアスペクト比(長さ/直径)の範囲は、5〜50の範囲であることが好ましく、10〜40の範囲であればより好ましい。
前記針状フィラーは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
本発明に使用する針状フィラーの添加量に特に限定はないが、ウレタン樹脂100重量部に対して、3.0〜30重量部の範囲であることが好ましく、3.0〜20重量部の範囲であることがより好ましく、3.0〜18重量部の範囲であることが更に好ましく、6.0〜18重量部の範囲であることが最も好ましい。
前記針状フィラーの範囲が3.0重量部以上の場合は、本発明に係る難燃断熱材組成物の燃焼後の形状が保持され、また30重量部以下の場合には本発明に係る難燃断熱材組成物の発泡が阻害されない。
本発明に使用する添加剤の添加量はウレタン樹脂100重量部に対して4.5重量部〜70重量部の範囲であることが好ましく、4.5重量部〜40重量部の範囲であることがより好ましく、4.5重量部〜30重量部の範囲であることが更に好ましく、4.5重量部〜20重量部の範囲であることが最も好ましい。
添加剤の範囲が4.5重量部以上の場合には難燃性ウレタン樹脂組成物からなる成形品が火災の熱により形成される緻密残渣が割れることを防止でき、70重量部以下の場合には難燃性ウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
好ましい実施形態において、難燃性ウレタン樹脂組成物は、第1液中の(A)ポリイソシアネートと第2液中の(B)ポリオールとからなるポリウレタン樹脂組成物100重量部を基準として、(C)の三量化触媒が0.1〜10重量部の範囲であり、(D)の発泡剤が0.1〜30重量部の範囲であり、(E)の整泡剤が0.1重量部〜10重量部の範囲であり、(F)の添加剤が4.5重量部〜70重量部の範囲であり、前記赤リンが3重量部〜18重量部の範囲であり、前記赤リンを除く添加剤が1.5重量部〜52重量部の範囲である。
(G)その他の成分
現場発泡システムは、上記の三量化触媒以外の触媒をさらに含んでもよく、そのような触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N−メチルモルホリンビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”, N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N, N, N’−トリメチルアミノエチル−エタノールアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチル, N’−ジメチルアミノエチルピペラジン、イミダゾール環中の第2級アミン官能基をシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物等の窒素原子含有触媒等が挙げられる。
かかる触媒の添加量は、三量化触媒と三量化触媒以外の触媒の合計量で、ウレタン樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜10重量部の範囲であることが好ましく、0.1重量部〜8部の範囲であることがより好ましく、0.1重量部〜6重量部の範囲であることが更に好ましく、0.1重量部〜3.0重量部の範囲であることが最も好ましい。
0.1重量部以上の場合はウレタン結合の形成が阻害される不具合が生じず、10重量部以下の場合は適切な発泡速度を維持することができ、取扱いやすい。
現場発泡システムは、さらに沈降防止剤を含んでもよい。沈降防止剤としては、特に限定はないが、例えば、カーボンブラック、微粉シリカ、水添ヒマシ油ワックス、脂肪酸アミドワックス、有機クレー、酸化ポリエチレン等が挙げられる。
現場発泡システムは、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等の補助成分、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
次に、第2実施形態の区画体の防火構造の形成方法について説明する。まず、図10(A)に示すように、中空壁12の2つの壁部材13の間を中空部14に渡って延びるよう、中空部14を膨張性閉塞部材24で充填する。次に図10(B)に示すように、管体30を貫通孔15内に挿通し、図10(C)に示すように、管体30と膨張性閉塞部材24が充填された中空壁12との間に耐火性充填材23を充填する。
以上、本発明を第2実施形態について説明してきたが、本発明は上記第2実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて以下のような種々の変形が可能である。
・第1実施形態で用いた耐火性カバー16を、第2実施形態にさらに追加して用いてもよい。この場合、膨張性閉塞部材24を2つの壁部材13の間に設けた後で、耐火性カバー16を貫通孔15内に配置する。
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
また、本発明は以下の構成を採用することもできる。
[1]1つまたは複数の管体が挿通される貫通孔を備えた建築物の区画体の防火構造であって、
中空部が間に形成された2つの壁部材を有する壁からなる区画体と、
前記2つの壁部材の間を前記中空部渡って延びるよう、前記貫通孔に設置された耐火性カバーとを備え、前記耐火性カバーは、
熱膨張性を有する筒状の本体部と、
前記本体部の一端から本体部の軸方向外周に向けて突出するフランジ部と
を有し、前記フランジ部は前記壁の外側に配置されている区画体の防火構造。
[2]1つまたは複数の管体と、
前記管体と前記耐火性カバーとの間に充填される耐火性充填材と
をさらに備えた[1]に記載の区画体の防火構造。
[3]前記フランジ部は第1のフランジ部であり、前記第1のフランジ部は前記壁の一方の壁部材の外側に配置され、
前記耐火性カバーは、前記本体部の一端とは反対側の端から本体部の軸方向外周に向けて突出する第2のフランジ部を有し、前記第2のフランジ部は前記壁の他方の壁部材の外側に配置されている[1]又は[2]に記載の区画体の防火構造。
[4][1]〜[3]のいずれか一項に記載の建築物の区画体の防火構造の形成方法であって、
耐火性カバーを前記貫通孔に挿入すること、
前記壁の2つの壁部材の間を前記中空部に渡って延びるよう前記耐火性カバーを前記貫通孔内に設置すること、および
前記フランジ部を前記壁の外側に設けること
からなる区画体の防火構造の形成方法。
[5]前記フランジ部を前記壁の外側に設けることは、
前記耐火性カバーを前記貫通孔に挿入する前に予め設けられたフランジ部を、前記壁の外側に配置すること、または
前記耐火性カバーを一方の防火区画から前記貫通孔に挿入し、前記耐火性カバーの一端が他方の防火区画に達した後でフランジ部を形成すること
からなる[4]に記載の防火構造の形成方法。
[6]1つまたは複数の管体が挿通される貫通孔を備えた建築物の区画体の防火構造であって、
中空部が間に形成された2つの壁部材を有する壁からなる建築物の区画体と、
前記2つの壁部材の間を前記中空部に渡って延びるよう設けられた膨張性閉塞部材と
を備えた区画体の防火構造。
[7]1つまたは複数の管体と、
前記管体と前記膨張性閉塞部材との間に充填される耐火性充填材と
をさらに備えた[6]に記載の区画体の防火構造。
[8]前記膨張性閉塞部材は、発泡して硬化する材料、膨張された気密性の袋、又は発泡して硬化する材料を収容した袋からなる[6]又は[7]に記載の区画体の防火構造。
[9][6]〜[8]のいずれか一項に記載の区画体の防火構造の形成方法であって、
前記2つの壁部材の間を前記中空部に渡って延びるよう、前記中空部を膨張性閉塞部材で充填すること、
からなる区画体の防火構造の形成方法。
[10]前記管体を前記貫通孔内に挿通すること、および
前記管体と前記膨張性閉塞部材が充填された壁との間に耐火性充填材を充填すること、
をさらに含む[8]又は[9]に記載の区画体の防火構造の形成方法。