JP2017216422A - シート材の製造方法およびシート材 - Google Patents

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基 永沢
秀行 大国
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秀行 大国
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久也 濱
英章 粟田
Hideaki Awata
英章 粟田
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Abstract

【課題】放熱性に優れるシート材を提供すること。【解決手段】シート材の製造方法は、β−Si3N4結晶粒子を準備すること、酸素分圧が1×10-3Pa以上1×10-1Pa以下である雰囲気中で、該β−Si3N4結晶粒子を加熱することにより、該β−Si3N4結晶粒子の表面に酸化物層を形成すること、該酸化物層を含む該β−Si3N4結晶粒子と、樹脂とを混合することにより、粘性組成物を調製すること、第1磁束密度の第1磁場中で、該粘性組成物をシート状に成形すること、および第2磁束密度の第2磁場中で、シート状に成形された該粘性組成物を固化させることにより、シート材を形成すること、を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、シート材の製造方法およびシート材に関する。
特開2012−227417号公報(特許文献1)には、樹脂組成物内に分散している無機フィラーを、磁場により所定方向に配向させる技術が開示されている。
特開2012−227417号公報
樹脂組成物に含有される無機フィラーが所定方向に配向した状態で、樹脂組成物が固化することにより、各種の機能性シート材が製造され得る。
たとえば、無機フィラーの一種であるβ−Si34結晶粒子は、c軸方向に高い熱伝導率を示す。そこで、β−Si34結晶粒子のc軸が、シート材の厚さ方向に沿うように、β−Si34結晶粒子を配向させることが考えられる。これにより、厚さ方向に高い熱伝導率を示す放熱シートが実現されると考えられるためである。
しかしながら、高い熱伝導率が実現されるためには、樹脂組成物が、相応量のβ−Si34結晶粒子を含有する必要がある。β−Si34結晶粒子の含有量に応じて、樹脂組成物の粘度は高くなる。粘性組成物内では、β−Si34結晶粒子が回転し難い。すなわち、磁場により、β−Si34結晶粒子を配向させることが困難である。
本開示の目的は、放熱性に優れるシート材を提供することである。
本発明の一態様に係るシート材の製造方法は、β−Si34結晶粒子を準備すること、酸素分圧が1×10-3Pa以上1×10-1Pa以下である雰囲気中で、該β−Si34結晶粒子を加熱することにより、該β−Si34結晶粒子の表面に酸化物層を形成すること、該酸化物層を含む該β−Si34結晶粒子と、樹脂とを混合することにより、粘性組成物を調製すること、第1磁束密度の第1磁場中で、該粘性組成物をシート状に成形すること、および第2磁束密度の第2磁場中で、シート状に成形された該粘性組成物を固化させることにより、シート材を形成すること、を含む。
上記によれば、放熱性に優れるシート材が提供される。
本発明の実施形態に係るシート材の製造方法の概略を示すフローチャートである。 β−Si34結晶を説明するための図である。 磁場中成形および固化を説明するための第1図である。 磁場中成形および固化を説明するための第2図である。 シート材の構成を説明するための図である。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様が列記されて、説明される。
〔1〕本発明の一態様に係るシート材の製造方法は、
(a)β−Si34結晶粒子を準備すること、
(b)酸素分圧が1×10-3Pa以上1×10-1Pa以下である雰囲気中で、β−Si34結晶粒子を加熱することにより、β−Si34結晶粒子の表面に酸化物層を形成すること、
(c)酸化物層を含むβ−Si34結晶粒子と、樹脂とを混合することにより、粘性組成物を調製すること、
(d)第1磁束密度の第1磁場中で、粘性組成物をシート状に成形すること、および
(e)第2磁束密度の第2磁場中で、シート状に成形された粘性組成物を固化させることにより、シート材を形成すること、を含む。
上記において「酸化物層を形成すること」は、「酸化物層を厚くすること」も含む。β−Si34結晶粒子の表面には、数nmの厚さを有する酸化物層が形成されている場合がある。この酸化物層の厚さがナノメートルレベルで制御されることにより、β−Si34結晶粒子の磁場応答が鋭敏になることが見出された。酸素分圧が1×10-3Pa以上1×10-1Pa以下である雰囲気中で、β−Si34結晶粒子が加熱されることにより、β−Si34結晶粒子の表面に、適度な厚さの酸化物層が形成される。このβ−Si34結晶粒子は、粘性組成物中であっても、磁場により配向することができる。
加熱時の酸素分圧が1×10-3Pa未満であると、適度な厚さの酸化物層が形成されない可能性がある。そのため、β−Si34結晶粒子の磁場応答が鈍く、所望の放熱性を示すシート材が製造されない可能性がある。
加熱時の酸素分圧が1×10-1Paを超えると、酸化物層が過度に厚く形成される可能性がある。過度に厚い酸化物層は、熱伝導を阻害する。また過度に厚い酸化物層は、β−Si34結晶粒子の磁場応答を阻害する可能性もある。すなわち、所望の放熱性を示すシート材が製造されない可能性がある。
β−Si34結晶粒子は、c軸方向に高い熱伝導率を示す。上記〔1〕の製造方法では、β−Si34結晶粒子が所定方向(典型的にはシート材の厚さ方向)に強く配向する。したがって、β−Si34結晶粒子の含有量が比較的低くても、所定方向に高い熱伝導率を示すシート材が製造され得る。さらにβ−Si34結晶粒子の含有量が比較的低いことにより、シート材において、絶縁性および形状自由度の向上も期待される。
なお本明細書の「粘性組成物」は、粘度が1Pa・s以上である組成物を示す。粘度の測定方法は、後述される。
〔2〕粘性組成物は、β−Si34結晶粒子を10質量%以上40質量%以下含有するように調製されてもよい。
β−Si34結晶粒子の含有量が10質量%以上であることにより、シート材において、β−Si34結晶粒子による熱伝導パスが連続しやすくなる。これにより、シート材の放熱性の向上が期待される。
β−Si34結晶粒子の含有量が40質量%以下であることにより、粘性組成物において、β−Si34結晶粒子が回転しやすくなる。すなわち、β−Si34結晶粒子が磁場に応答しやすくなる。これにより、シート材の放熱性の向上が期待される。さらにβ−Si34結晶粒子の含有量が40質量%以下であることにより、シート材の絶縁性および形状自由度の向上も期待される。
〔3〕粘性組成物は、粘度が3500Pa・s以下となるように調製されてもよい。
粘性組成物の粘度が3500Pa・s以下であることにより、β−Si34結晶粒子が回転しやすくなる。すなわち、β−Si34結晶粒子の磁場応答が鋭敏になる。これにより、シート材の放熱性の向上が期待される。
本明細書の「粘度」は、キャピラリーレオメータにより測定される。キャピラリーレオメータとしては、たとえば、日本ダイニスコ社製の「LCR7000シリーズ」またはこれと同等品が用いられる。粘度は、少なくとも5回測定される。少なくとも5回の測定結果の算術平均値が、粘度として採用される。
〔4〕第1磁束密度および第2磁束密度の少なくとも一方は、1T以上10T以下であってもよい。
磁束密度が1T以上であることにより、β−Si34結晶粒子の配向が進みやすい。これにより、シート材の放熱性の向上が期待される。磁束密度が10T以下であることにより、大型の強磁場発生装置が不要である。これにより、生産性の向上および製造コストの低減が期待される。第2磁束密度は、第1磁束密度と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本明細書の「磁束密度」は、磁束密度計により測定される。磁束密度計としては、たとえば、日本電磁測器社製のテスラメータ「TGX−1000」等、またはこれと同等品が用いられる。
〔5〕成形することは、射出成形により、粘性組成物をシート状に成形することを含んでもよい。生産性の向上が期待されるためである。
〔6〕酸化物層は、10nm以上50nm以下の厚さを有するように形成されてもよい。
酸化物層の厚さが10nm以上であることにより、磁場応答が鋭敏になる傾向がある。厚さが50nm以下の酸化物層は、熱伝導への影響が小さい。すなわち、酸化物層の厚さが10nm以上50nm以下であることにより、シート材の放熱性の向上が期待される。
本明細書の「酸化物層の厚さ」は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope,TEM)とエネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X−ray spectroscopy,EDX)との組み合わせ(TEM−EDX)により、測定される。酸化後のβ−Si34結晶粒子の断面がTEM−EDXにより元素分析され、酸素(O)が検出される表層領域の厚さ(すなわち酸化物層の厚さ)が測定される。酸化物層の厚さは、1つの粒子につき、少なくとも5個所で測定される。5個所の厚さの算術平均値が、当該粒子における酸化物層の厚さとして採用される。さらに酸化物層の厚さは、少なくとも5個のβ−Si34結晶粒子について測定される。少なくとも5個のβ−Si34結晶粒子の酸化物層の厚さの算術平均値が、β−Si34結晶粒子の酸化物層の厚さとして採用される。
〔7〕本発明の一態様に係るシート材の製造方法は、
(a)β−Si34結晶粒子を準備すること、
(b)酸素分圧が1×10-3Pa以上1×10-1Pa以下である雰囲気中で、β−Si34結晶粒子を加熱することにより、β−Si34結晶粒子の表面に、10nm以上50nm以下の厚さを有する酸化物層を形成すること、および
(c)酸化物層を含むβ−Si34結晶粒子と、樹脂とを混合することにより、粘性組成物を調製すること、を含む。
粘性組成物は、β−Si34結晶粒子を10質量%以上40質量%以下含有し、かつ粘度が3500Pa・s以下となるように調製される。
さらに、シート材の製造方法は、
(d)1T以上10T以下の第1磁場中での射出成形により、粘性組成物をシート状に成形すること、および
(e)1T以上10T以下の第2磁場中で、シート状に成形された粘性組成物を固化させることにより、シート材を形成すること、を含む。
上記によれば、放熱性に優れるシート材が提供される。
〔8〕本発明の一態様に係るシート材は、所定の厚さを有するシート材である。シート材は、β−Si34結晶粒子および樹脂を含有する。β−Si34結晶粒子は、c軸がシート材の厚さ方向に沿うように配向している。
β−Si34結晶粒子は、c軸方向に高い熱伝導率を示す。したがって、c軸がシート材の厚さ方向に沿うように、β−Si34結晶粒子が配向していることにより、シート材は、厚さ方向に優れた放熱性を示す。
以下、「c軸がシート材の厚さ方向に沿うように配向している」は、単に「配向している」と記されることがある。
〔9〕上記のように「β−Si34結晶粒子が配向している」ことは、たとえば、シート材の厚さ方向に平行な面からの回折X線が観測されるX線回折(X−Ray Diffraction,XRD)測定において、β−Si34(20−20)回折線の強度に対する、β−Si34(0002)回折線の強度の比率が、90%以上100%以下であることにより、確認されてもよい。
以下、当該強度の比率は、「配向率」とも記される。XRD測定は、一般的なXRD装置により実施される。XRD装置としては、たとえば、リガク社製の「SmartLab」等、またはこれと同等品が用いられる。
回折線の強度は、回折線の積分面積を示す。通常、β−Si34結晶のXRDパターンにおいて、β−Si34(20−20)回折線は、メインピークとなる。配向率は、β−Si34(0002)回折線の積分面積が、β−Si34(20−20)回折線の積分面積で除された値(百分率)である。
なお通常、ミラー指数において、指数が負の値を取ることは、指数の上に「−(バー)」が付されることにより表現される。ただし本明細書では、便宜上、指数の前に負の符号が付されることにより、指数が負の値を取ることが表現されている。
また、本明細書の「平行」は、幾何学的に「完全な平行」のみを示すものではない。本明細書の「平行」には、「実質的に平行」とみなされる場合も含まれる。たとえば、ある方向(直線)とある平面とのなす角が±5°以内である場合、それらは実質的に平行であるとみなされる。
〔10〕シート材は、β−Si34結晶粒子を10質量%以上40質量%以下含有してもよい。
β−Si34結晶粒子の含有量が10質量%以上であることにより、シート材において、β−Si34結晶粒子による熱伝導パスが連続しやすくなる。これにより、放熱性の向上が期待される。β−Si34結晶粒子の含有量が40質量%以下であることにより、絶縁性、形状自由度等の向上が期待される。
〔11〕β−Si34結晶粒子は、酸化物層を含んでもよい。酸化物層は、β−Si34結晶粒子の表面に形成されており、かつ10nm以上50nm以下の厚さを有するものであってもよい。
酸化物層の厚さが10nm以上であることにより、配向率が高くなりやすい。酸化物層の厚さが50nm以下であることにより、放熱性の向上が期待される。
〔12〕本発明の一態様に係るシート材は、所定の厚さを有するシート材である。シート材は、β−Si34結晶粒子を10質量%以上40質量%以下、および、樹脂を残部として含有する。β−Si34結晶粒子は、c軸がシート材の厚さ方向に沿うように配向している。β−Si34結晶粒子は、酸化物層を含む。酸化物層は、β−Si34結晶粒子の表面に形成されており、かつ10nm以上50nm以下の厚さを有する。シート材の厚さ方向に平行な面からの回折X線が観測されるX線回折測定において、β−Si34(20−20)回折線の強度に対する、β−Si34(0002)回折線の強度の比率は、90%以上100%以下である。
上記のシート材は、厚さ方向の放熱性に優れる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態(以下「本実施形態」と記される)が説明される。ただし、以下の説明は、本発明を限定するものではない。
<シート材の製造方法>
図1は、本実施形態に係るシート材の製造方法の概略を示すフローチャートである。シート材の製造方法は、フィラー粒子の準備(101)、フィラー粒子の酸化(102)、粘性組成物の調製(103)、磁場中成形(104)および磁場中固化(105)を含む。以下、シート材の製造方法が、順を追って説明される。
《フィラー粒子の準備(101)》
シート材の製造方法は、β−Si34結晶粒子を準備することを含む。本実施形態のβ−Si34結晶粒子は、熱伝導性フィラーである。
(β−Si34結晶粒子)
図2は、β−Si34結晶を説明するための図である。β−Si34結晶は、六方晶系に属する。β−Si34結晶において、c軸(主軸)は、六角形状の底面の中心を通り、六角柱の高さ方向に伸びる。a軸は、c軸と直交する面内を三方に伸びる。
β−Si34結晶は、熱伝導率に異方性を有する。a軸方向の熱伝導率は、69W・m-1・K-1程度である。これに対し、c軸方向の熱伝導率は、180W・m-1・K-1程度である。したがって、β−Si34結晶粒子がc軸方向に配向することにより、シート材において放熱性の向上が期待される。
β−Si34結晶粒子は、粉末状態で準備される。β−Si34結晶粒子の平均粒径は、特に限定されない。平均粒径は、たとえば、0.1μm以上10μm以下であってもよいし、1μm以上10μm以下であってもよいし、1μm以上9μm以下であってもよいし、2μm以上8μm以下であってもよい。平均粒径が適度に小さいことにより、β−Si34結晶粒子の磁場応答が鋭敏になる可能性もある。
本明細書の「平均粒径」は、体積基準の粒度分布において、微粒側から累計50%の粒径を示す。平均粒径は、レーザ回折/散乱法によって測定される。平均粒径は、1つの粉末サンプルにつき、少なくとも5回測定される。少なくとも5回の算術平均値が、平均粒径として採用される。
β−Si34結晶粒子は、たとえば柱状粒子である。β−Si34結晶粒子のアスペクト比は特に限定されない。アスペクト比は、たとえば1以上50以下であってもよいし、5以上50以下であってもよいし、10以上40以下であってもよい。アスペクト比が、これらの範囲内であることにより、たとえば、シート材において、熱伝導パスが連続しやすくなることが期待される。
本明細書の「アスペクト比」は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)またはTEMにより、測定される。アスペクト比は、粒子の長軸径を、粒子の短軸径で除した値である。長軸径は、粒子の2次元投影像における最大径を示す。短軸径は、同2次元投影像において、長軸径と直交する径のうち、最大径を示す。アスペクト比は、1つの粉末サンプルにおいて、少なくとも10個の粒子で測定される。少なくとも10個の測定結果の算術平均値が、アスペクト比として採用される。
《フィラー粒子の酸化(102)》
シート材の製造方法は、酸素分圧が1×10-3Pa以上1×10-1Pa以下である雰囲気中で、β−Si34結晶粒子を加熱することにより、β−Si34結晶粒子の表面に酸化物層を形成することを含む。
β−Si34結晶粒子の表面に、適度な厚さの酸化物層が形成されることにより、β−Si34結晶粒子の磁場応答が鋭敏になる。これにより、高粘度の粘性組成物中でも、β−Si34結晶粒子が磁場により配向することができる。
酸素分圧が1×10-3Pa以上1×10-1Pa以下である雰囲気は、たとえば、アルゴン(Ar)ガス、窒素(N2)ガス、ヘリウム(He)ガス等の不活性ガスの酸素分圧が、酸素分圧制御装置によって制御されることにより、形成される。
本実施形態では、加熱時の酸素分圧が1×10-3Pa以上1×10-1Pa以下である。そのためβ−Si34結晶粒子の表面に、適度な厚さの酸化物層が形成され得る。加熱時の酸素分圧が1×10-3Pa未満であると、酸化物層が十分厚く形成されない可能性がある。その結果、β−Si34結晶粒子の磁場応答が鈍く、所望の放熱性を示すシート材が製造されない可能性がある。
加熱時の酸素分圧が1×10-1Paを超えると、酸化物層が過度に厚く形成される可能性がある。過度に厚い酸化物層は、熱伝導を阻害する。さらに過度に厚い酸化物層は、β−Si34結晶粒子の磁場応答を阻害する可能性もある。すなわち、所望の放熱性を示すシート材が製造されない可能性がある。
酸素分圧は、2×10-3Pa以上8×10-2Pa以下であってもよいし、5×10-3Pa以上5×10-2Pa以下であってもよい。これにより、シート材の放熱性の向上が期待される。
加熱は、たとえば、酸素分圧が1×10-3Pa以上1×10-1Pa以下に調整されている熱処理炉内で実施される。加熱温度は、たとえば、400℃以上1200℃以下であってもよいし、500℃以上1100℃以下であってもよいし、600℃以上1000℃以下であってもよい。加熱時間は、たとえば、10分以上10時間以下であってもよいし、30分以上5時間以下であってもよいし、30分以上2時間以下であってもよい。
(酸化物層の厚さ)
酸化物層は、10nm以上50nm以下の厚さを有するように形成されてもよい。酸化物層の厚さが10nm以上であることにより、磁場応答が鋭敏になる傾向がある。厚さが50nm以下の酸化物層は、熱伝導への影響が小さい。すなわち、酸化物層の厚さが10nm以上50nm以下であることにより、シート材の放熱性の向上が期待される。酸化物層の厚さは、16nm以上47nm以下であってもよいし、20nm以上40nm以下であってもよいし、30nm以上40nm以下であってもよい。これにより、シート材の放熱性の向上が期待される。
酸化物層の厚さは、後述されるシート材の厚さ方向に平行な断面において、測定されてもよい。測定用の断面サンプルには、たとえば、クロスセクションポリッシャ(Cross section Polisher,CP)、集束イオンビーム(Focused Ion Beam,FIB)等により、所定の断面加工が施されてもよい。
《粘性組成物の調製(103)》
シート材の製造方法は、酸化物層を含むβ−Si34結晶粒子と、樹脂とを混合することにより、粘性組成物を調製することを含む。
(樹脂)
本実施形態の樹脂は、典型的には、熱可塑性樹脂である。ただし、粘性組成物が調製され得る限り、樹脂は、熱硬化性樹脂(たとえば、エポキシ樹脂等)、紫外線硬化性樹脂等であってもよい。
熱可塑性樹脂は、たとえば、ポリプロピレン(polypropylene,PP)樹脂、ポリエチレン(polyethylene,PE)樹脂、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride,PVC)樹脂、ポリメタクリル酸メチル(polymethyl methacrylate,PMMA)樹脂、ポリスチレン(polystyrene,PS)樹脂、ABS(acrylonitrile−butadiene−styrene)樹脂等の汎用プラスチック;ポリアミド6(polyamide6,PA6)樹脂、ポリアミド66(polyamide66,PA66)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate,PBT)樹脂、ポリカーボネート(polycarbonate,PC)樹脂等の汎用エンジニアリングプラスチック;ポリフェニレンスルファイド(polyphenylenesulfide,PPS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone,PEEK)樹脂、ポリアミドイミド(polyamide−imide,PAI)樹脂等のスーパーエンジニアリングプラスチック;等であってもよい。樹脂は、1種単独で使用されてもよいし、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。
熱可塑性樹脂は、加熱により、溶融状態とされる。溶融状態の熱可塑性樹脂に、β−Si34結晶粒子の粉末が投入される。樹脂およびβ−Si34結晶粒子の混合物が混練される。これにより、粘性組成物が調製される。混練には、一般的な溶融混練機が使用される。溶融混練機は、連続式であってもよいし、バッチ式であってもよい。粘性組成物には、樹脂およびβ−Si34結晶粒子の他、たとえば、可塑剤等の各種添加剤が配合されてもよい。
混合(混練)操作も、低酸素分圧下で実施されてもよい。大気中で混練が実施されると、β−Si34結晶粒子が大気中の僅かな水分等と接触することにより、酸化が進む可能性がある。すなわち、酸化物層が厚くなる可能性がある。これにより、シート材の放熱性が低下する可能性もある。低酸素分圧下で、混練が実施されることにより、β−Si34結晶粒子と、大気中の水分等との接触が抑制され得る。たとえば、混練は、酸素分圧が1×10-3Pa以上1×10-1Pa以下に調整されている混合槽内で、実施されてもよい。混合時間は、たとえば、1時間以上10時間以下であってもよいし、3時間以上5時間以下であってもよい。
(フィラー含有量)
粘性組成物は、β−Si34結晶粒子を10質量%以上40質量%以下含有するように調製されてもよい。β−Si34結晶粒子の含有量が40質量%以下であることにより、粘性組成物において、β−Si34結晶粒子が回転しやすくなる。すなわち、β−Si34結晶粒子が磁場に応答しやすくなる。これにより、シート材の放熱性の向上が期待される。またβ−Si34結晶粒子の含有量が40質量%以下であることにより、シート材の絶縁性および形状自由度の向上も期待される。粘性組成物は、β−Si34結晶粒子を20質量%以上30質量%以下含有するように調製されてもよい。これにより、シート材の放熱性、絶縁性および形状自由度の向上が期待される。
(粘度)
粘性組成物は、粘度が3500Pa・s以下となるように調製されてもよい。粘度が3500Pa・s以下であることにより、β−Si34結晶粒子が回転しやすくなる。すなわち、β−Si34結晶粒子の磁場応答が鋭敏になる。これにより、シート材の放熱性の向上が期待される。
粘度は、たとえば、樹脂の種類、混合条件(たとえば混合時間等)、フィラー含有量等により、調整され得る。粘度は、3400Pa・s以下であってもよいし、3300Pa・s以下であってもよい。これにより、シート材の放熱性の向上が期待される。
粘度は、1000Pa・s以上であってもよいし、2000Pa・s以上であってもよいし、3000Pa・s以上であってもよい。粘度が適度に高いことにより、β−Si34結晶粒子の沈降が抑制され得る。これにより、シート材において、広範囲に亘る熱伝導パスが形成されることが期待される。すなわち、シート材の放熱性の向上が期待される。
《磁場中成形(104)》
シート材の製造方法は、第1磁束密度の第1磁場中で、粘性組成物をシート状に成形することを含む。
本実施形態では、β−Si34結晶粒子が、その表面に適度な厚さの酸化物層を含む。そのため、β−Si34結晶粒子が磁場に鋭敏に応答する。その結果、β−Si34結晶粒子の配向率が高いシート材が製造され得る。
磁場中成形も、酸素分圧が1×10-3Pa以上1×10-1Pa以下に制御されている雰囲気中で、実施されてもよい。これによりβ−Si34結晶粒子と、大気中の水分等との接触が抑制され得る。
粘性組成物がシート状に成形され得る限り、成形方法は特に限定されない。樹脂が熱可塑性樹脂である場合、粘性組成物は、たとえば、押出成形、射出成形、注型成形等によりシート状に成形される。樹脂が熱硬化性樹脂である場合、粘性組成物は、たとえば、圧縮成形等によりシート状に成形される。ここでは一例として、射出成形により、粘性組成物をシート状に成形する方法が説明される。射出成形は生産性に優れる。
(射出成形)
図3は、磁場中成形および固化を説明するための第1図である。先ず、成形金型200が準備される。成形金型200は、第1型201および第2型202を含む。第1型201には、注入口203が設けられている。第1型201と第2型202との間には、キャビティ204が形成されている。キャビティ204は、粘性組成物300が成形されるべき形状を有する。
粘性組成物300は、図示しないシリンダから射出される。射出された粘性組成物300は、注入口203を通って、キャビティ204に至る。シリンダの温度(成形温度)、および成形金型200の温度(金型温度)は、樹脂の種類に応じて適宜変更される。
キャビティ204は、第1磁場401中に配置されている。第1磁場401は、シート材の厚さ方向となるべき方向と平行に印加されている。図4は、磁場中成形および固化を説明するための第2図である。図4には、図3の領域IVが示されている。
図4に示されるように、粘性組成物300は、β−Si34結晶粒子301および樹脂302を含有する。β−Si34結晶粒子301は、第1磁場401に応答する。β−Si34結晶粒子301は、c軸が磁場と平行になるように配向する性質を有する。本実施形態では、第1磁場401が、シート材の厚さ方向となるべき方向と平行に印加されている。したがって、β−Si34結晶粒子301は、c軸がシート材の厚さ方向に沿うように配向することになる。
(第1磁束密度)
成形時の第1磁場401は、第1磁束密度を有する。第1磁束密度は、1T以上10T以下であってもよい。第1磁束密度が1T以上であることにより、β−Si34結晶粒子301の配向が進みやすい。これにより、シート材において、放熱性の向上が期待される。第1磁束密度が10T以下であることにより、大型の強磁場発生装置が不要である。これにより、生産性の向上および製造コストの低減が期待される。
第1磁束密度は、2T以上9T以下であってもよいし、3T以上7T以下であってもよい。第1磁束密度がこれらの範囲内であることにより、放熱性の向上、生産性の向上、および製造コストの低減が期待される。
《磁場中固化(105)》
シート材の製造方法は、第2磁束密度の第2磁場中で、シート状に成形された粘性組成物を固化させることにより、シート材を形成することを含む。
これにより、β−Si34結晶粒子301の配向が更に進行し、放熱性に優れるシート材が製造され得る。
キャビティ204に充填された粘性組成物300は、たとえば、冷却により、固化する。たとえば、第2型202内を巡回する水により、粘性組成物300が冷却される。冷却速度および冷却時間は、樹脂の種類に応じて適宜変更される。粘性組成物300が固化した後、シート材が脱型される。なお樹脂が熱硬化性樹脂である場合は、たとえば、加熱および重合反応等により、粘性組成物300が固化する。
磁場中固化も、酸素分圧が1×10-3Pa以上1×10-1Pa以下に制御されている雰囲気中で、実施されてもよい。これによりβ−Si34結晶粒子と、大気中の水分等との接触が抑制され得る。
粘性組成物300が固化する際、第2磁場402が印加される。第2磁場402も、シート材の厚さ方向となるべき方向と平行に印加される。
(第2磁束密度)
固化時の第2磁場402は、第2磁束密度を有する。第2磁束密度は、1T以上10T以下であってもよい。第2磁束密度は、第1磁束密度と同じであってもよいし、異なっていてもよい。すなわち、第1磁束密度および第2磁束密度の少なくとも一方は、1T以上10T以下であってもよい。
第2磁束密度が1T以上であることにより、β−Si34結晶粒子301の配向が進みやすい。これにより、シート材において放熱性の向上が期待される。第2磁束密度が10T以下であることにより、大型の強磁場発生装置が不要である。これにより、生産性の向上および製造コストの低減が期待される。
第2磁束密度は、2T以上9T以下であってもよいし、3T以上7T以下であってもよい。第2磁束密度がこれらの範囲内であることにより、放熱性の向上、生産性の向上、および製造コストの低減が期待される。
<シート材>
以下、本実施形態に係るシート材が説明される。本実施形態のシート材は、厚さ方向の熱伝導率が高い。したがって、本実施形態のシート材は、たとえば、放熱シートとして有用である。放熱シートは、たとえば、半導体装置等で発生した熱を、放熱部品へと伝達するために用いられる。
図5は、シート材の構成を説明するための図である。図5中、Z軸方向がシート材の厚さ方向に相当する。X軸方向およびY軸方向は、シート材の面内方向に相当する。
シート材1000は、所定の厚さを有する。シート材1000の厚さは、たとえば、0.1mm以上10mm以下であってもよいし、0.5mm以上5mm以下であってもよいし、1mm以上3mm以下であってもよい。
《フィラー含有量》
シート材1000は、β−Si34結晶粒子301および樹脂302を含有する。たとえば、シート材1000は、β−Si34結晶粒子301を10質量%以上40質量%以下含有し、樹脂302を残部として含有していてもよい。
β−Si34結晶粒子301の含有量が10質量%以上であることにより、シート材1000において、β−Si34結晶粒子301による熱伝導パスが連続しやすくなる。これにより、放熱性の向上が期待される。β−Si34結晶粒子301の含有量が40質量%以下であることにより、絶縁性、形状自由度等の向上が期待される。β−Si34結晶粒子301の含有量は、20質量%以上30質量%以下であってもよい。これにより、放熱性、絶縁性および形状自由度の向上が期待される。
シート材1000は、樹脂302として、1種の樹脂を単独で含有していてもよいし、2種以上の樹脂を含有していてもよい。またシート材1000において、β−Si34結晶粒子301を除く残部には、樹脂302の他、たとえば、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、流動性調整剤、離型剤、難燃剤、顔料等が含有されていてもよい。
《酸化物層》
β−Si34結晶粒子301は、酸化物層(図示せず)を含んでいてもよい。酸化物層は、β−Si34結晶粒子301の表面に形成されていてもよい。酸化物層の厚さは、10nm以上50nm以下であってもよい。
酸化物層の厚さが10nm以上であることにより、配向率が高くなりやすい。酸化物層の厚さが50nm以下であることにより、放熱性の向上が期待される。酸化物層の厚さは、16nm以上47nm以下であってもよいし、20nm以上40nm以下であってもよい。これにより、放熱性の向上が期待される。
《配向性》
β−Si34結晶粒子301は、c軸がシート材1000の厚さ方向に沿うように配向している。たとえば、β−Si34結晶粒子301が柱状粒子である場合、シート材1000の厚さ方向に平行な断面が、SEM等で観察されてもよい。これにより、β−Si34結晶粒子301が配向していることが確認され得る。
ここで、β−Si34結晶粒子301が配向しているとは、シート材1000に含有される全てのβ−Si34結晶粒子301が一様に配向していることのみを示すものではない。すなわち、シート材1000は、厚さ方向に配向していないβ−Si34結晶粒子301を一部含有していてもよい。
《XRD測定》
β−Si34結晶粒子301の配向性は、XRD測定によっても確認され得る。たとえば、シート材1000の厚さ方向に平行な面からの回折X線が観測されるXRD測定が実施されてもよい。
(回折線)
XRD測定において、実質的に全てのβ−Si34結晶粒子301が配向している場合、β−Si34(10−11)回折線、β−Si34(0002)回折線、およびβ−Si34(20−20)回折線のみが観測される。
配向していないβ−Si34結晶粒子が所定量存在する場合、たとえば、β−Si34(21−30)回折線等も観測されることになる。配向していないβ−Si34結晶粒子の存在量が更に多くなると、β−Si34結晶に帰属する全ての回折線が観測されることになる。
(配向率)
β−Si34結晶粒子301の配向性は、配向率によっても評価され得る。配向率は、β−Si34(0002)回折線の積分面積が、β−Si34(20−20)回折線の積分面積で除された値である。
配向率が90%以上100%以下であれば、実質的に全てのβ−Si34結晶粒子301が配向していると考えてよい。配向率は、92%以上100%以下であってもよいし、94%以上100%以下であってもよいし、96%以上100%以下であってもよいし、98%以上100%以下であってもよい。配向率が高い程、放熱性の向上が期待される。
《熱伝導率》
シート材1000は、β−Si34結晶粒子301の配向性に基づき、その厚さ方向に高い熱伝導率を示す。シート材1000の厚さ方向の熱伝導率は、20W・m-1・K-1以上であってもよいし、30W・m-1・K-1以上であってもよいし、40W・m-1・K-1以上であってもよいし、50W・m-1・K-1以上であってもよい。シート材1000の厚さ方向の熱伝導率が高い程、シート材1000は放熱性に優れるといえる。シート材1000の厚さ方向の熱伝導率の上限は、特に限定されない。シート材1000の厚さ方向の熱伝導率の上限は、たとえば、100W・m-1・K-1であってもよい。
本明細書の「熱伝導率」は、レーザフラッシュ法により測定される。測定には、たとえば、アドバンス理工社製の熱拡散率測定装置「TC−1200RH」等、またはこれと同等品が用いられる。測定は、少なくとも5回実施される。少なくとも5回の測定結果の算術平均値が、熱伝導率として採用される。
以下、実施例が説明される。ただし、以下の例は、本発明を限定するものではない。
<シート材の製造方法>
以下のようにして、No.1〜14に係るシート材(縦10mm×横10mm×厚さ2mm)が製造された。
《No.1》
1.フィラー粒子の準備(101)
β−Si34結晶粒子の粉末が準備された。粉末の平均粒径は、5μmであった。
2.フィラー粒子の酸化(102)
酸素分圧が1×10-2Paである雰囲気中、β−Si34結晶粒子が800℃で1時間加熱された。
3.粘性組成物の調製(103)
PPS樹脂が準備された。酸素分圧が1×10-2Paである雰囲気中、PPS樹脂が300℃に加熱された。これによりPPS樹脂が溶融状態になった。混練機により、β−Si34結晶粒子(10質量部)と溶融状態のPPS樹脂(90質量部)とが3時間混合された。これにより、粘性組成物が調製された。すなわち、粘性組成物は、β−Si34結晶粒子を10質量%含有するように調製された。キャピラリーレオメータ(日本ダイニスコ社製、「LCR7000シリーズ」)により、粘性組成物の粘度が測定された。測定結果は、下記表1に示されている。
4.磁場中成形(104)
磁場中での射出成形により、粘性組成物がシート状に成形された。成形温度は300℃とされた。成形時、粘性組成物には、シート材の厚さ方向となるべき方向と平行に、第1磁束密度の第1磁場が印加された。第1磁束密度は、5Tとされた。成形も、酸素分圧が1×10-2Paである雰囲気中で実施された。
5.磁場中固化(105)
シート状に成形された粘性組成物が、磁場中で冷却された。これにより、粘性組成物が固化し、シート材が形成された。固化時、粘性組成物には、シート材の厚さ方向となるべき方向と平行に、第2磁束密度の第2磁場が印加された。第2磁束密度は、5Tとされた。固化も酸素分圧が1×10-2Paである雰囲気中で実施された。以上より、No.1に係るシート材が製造された。
《No.2》
下記表1に示されるように、粘性組成物の調製(103)において、混合時間が5時間とされ、かつ粘性組成物がβ−Si34結晶粒子を40質量%含有するように調製されることを除いては、No.1と同じ手順により、No.2に係るシート材が製造された。
《No.3〜10》
下記表1に示されるように、磁場中成形(104)および磁場中固化(105)において、磁束密度が変更されることを除いては、No.2と同じ手順により、No.3〜8に係るシート材がそれぞれ製造された。下記表1に示されるように、フィラー粒子の酸化(102)において、酸素分圧が変更されることを除いては、No.2と同じ手順により、No.9および10に係るシート材がそれぞれ製造された。
《No.11》
下記表1に示されるように、フィラー粒子の酸化(102)が実施されず、かつ粘性組成物の調製(103)において、粘性組成物がβ−Si34結晶粒子を50質量%含有するように調製されることを除いては、No.1と同じ手順により、No.11に係るシート材が製造された。
《No.12》
下記表1に示されるように、No.10では、酸素を含有せず、水素分圧が1×10-2Paである雰囲気中で、β−Si34結晶粒子の粉末が800℃で1時間加熱された。これを除いては、No.2と同じ手順により、No.12に係るシート材が製造された。
《No.13》
下記表1に示されるように、フィラー粒子の酸化(102)において、酸素分圧が15Paである雰囲気中、β−Si34結晶粒子が1000℃で1時間加熱された。これを除いては、No.2と同じ手順により、No.13に係るシート材が製造された。
《No.14》
下記表1に示されるように、磁場が印加されていない状態で、粘性組成物の成形(104)および固化(105)が実施されることを除いては、No.2と同じ手順により、No.14に係るシート材が製造された。
Figure 2017216422
<評価>
以下のようにして、各シート材が評価された。
《TEM−EDX測定》
各シート材から、厚さ方向に平行な断面サンプルが切り出された。断面サンプルにおいて、TEM−EDXにより、β−Si34結晶粒子の表面に形成されている酸化物層の厚さが測定された。測定結果は、上記表1に示されている。
《XRD測定》
各シート材から、厚さ方向に平行な断面サンプルが切り出された。厚さ方向に平行な面にX線が入射し、かつ当該面から回折X線が出射するようにして、XRD測定が実施された。すなわち、シート材の厚さ方向に平行な面からの回折X線が観測されるように、XRD測定が実施された。測定条件は、次のように設定された。
(XRD測定条件)
XRD装置:リガク社製「SmartLab」
線源:Cu−Kα(45kV、200mA)
測定範囲(2θ):10°〜80°
スキャンスピード:10°/min
サンプリング幅:0.01°
JCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction StandardS)カード中のβ−Si34結晶のXRDパターンとの対比により、XRDパターンに含まれる各回折線が特定された。
No.1〜10では、実質的にβ−Si34(10−11)回折線、β−Si34(0002)回折線、およびβ−Si34(20−20)回折線のみが観測された。No.11および13では、β−Si34(21−30)回折線も観測された。No.12および14では、β−Si34結晶に帰属する全ての回折線が観測された。
β−Si34(0002)回折線の積分面積が、β−Si34(20−20)回折線の積分面積で除されることにより、配向率が算出された。測定結果は、上記表1に示されている。
《熱伝導率測定》
アドバンス理工社製の熱拡散率測定装置「TC−1200RH」により、各シート材において、シート材の厚さ方向と平行な方向の熱伝導率が測定された。測定結果は、上記表1に示されている。熱伝導率が高いことは、シート材が放熱性に優れることを示している。
<結果と考察>
No.1〜10は、熱伝導率が高い。酸素分圧が1×10-3Pa以上1×10-1Pa以下である雰囲気中で、β−Si34結晶粒子が加熱されたためと考えられる。すなわち、β−Si34結晶粒子の表面に、適度な厚さの酸化物層が形成され、これにより磁場応答が鋭敏になったと考えられる。
No.11は、熱伝導率が低い。フィラー粒子の酸化(102)が実施されていないため、β−Si34結晶粒子の磁場応答が鈍かったと考えられる。
No.12も熱伝導率が低い。No.12では、水素分圧が制御された還元雰囲気中で、β−Si34結晶粒子が加熱された。その結果、酸化物層が還元されることにより、酸化物層が薄くなっている。これにより、β−Si34結晶粒子の磁場応答が鈍くなったと考えられる。
No.13も熱伝導率が低い。No.13では、フィラー粒子の酸化(102)において、酸素分圧が1×10-1Paを超えていたため、酸化物層が過度に厚く形成されていた。すなわち厚い酸化物層が熱伝導を阻害していると考えられる。
No.14も熱伝導率が低い。成形(104)および固化(105)において、磁場が印加されていないため、β−Si34結晶粒子が配向していないと考えられる。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
101 フィラー粒子の準備
102 フィラー粒子の酸化
103 粘性組成物の調製
104 磁場中成形
105 磁場中固化
200 成形金型
201 第1型
202 第2型
203 注入口
204 キャビティ
300 粘性組成物
301 β−Si34結晶粒子
302 樹脂
401 第1磁場
402 第2磁場
1000 シート材

Claims (12)

  1. β−Si34結晶粒子を準備すること、
    酸素分圧が1×10-3Pa以上1×10-1Pa以下である雰囲気中で、前記β−Si34結晶粒子を加熱することにより、前記β−Si34結晶粒子の表面に酸化物層を形成すること、
    前記酸化物層を含む前記β−Si34結晶粒子と、樹脂とを混合することにより、粘性組成物を調製すること、
    第1磁束密度の第1磁場中で、前記粘性組成物をシート状に成形すること、および
    第2磁束密度の第2磁場中で、シート状に成形された前記粘性組成物を固化させることにより、シート材を形成すること、
    を含む、シート材の製造方法。
  2. 前記粘性組成物は、前記β−Si34結晶粒子を10質量%以上40質量%以下含有するように調製される、
    請求項1に記載のシート材の製造方法。
  3. 前記粘性組成物は、粘度が3500Pa・s以下となるように調製される、
    請求項1または請求項2に記載のシート材の製造方法。
  4. 前記第1磁束密度および前記第2磁束密度の少なくとも一方は、1T以上10T以下である、
    請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシート材の製造方法。
  5. 前記成形することは、射出成形により、前記粘性組成物をシート状に成形することを含む、
    請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のシート材の製造方法。
  6. 前記酸化物層は、10nm以上50nm以下の厚さを有するように形成される、
    請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のシート材の製造方法。
  7. β−Si34結晶粒子を準備すること、
    酸素分圧が1×10-3Pa以上1×10-1Pa以下である雰囲気中で、前記β−Si34結晶粒子を加熱することにより、前記β−Si34結晶粒子の表面に、10nm以上50nm以下の厚さを有する酸化物層を形成すること、および
    前記酸化物層を含む前記β−Si34結晶粒子と、樹脂とを混合することにより、粘性組成物を調製すること、
    を含み、
    前記粘性組成物は、前記β−Si34結晶粒子を10質量%以上40質量%以下含有し、かつ粘度が3500Pa・s以下となるように調製され、
    さらに、
    1T以上10T以下の第1磁場中での射出成形により、前記粘性組成物をシート状に成形すること、および
    1T以上10T以下の第2磁場中で、シート状に成形された前記粘性組成物を固化させることにより、シート材を形成すること、
    を含む、シート材の製造方法。
  8. 所定の厚さを有するシート材であって、
    β−Si34結晶粒子および樹脂を含有し、
    前記β−Si34結晶粒子は、c軸が前記シート材の厚さ方向に沿うように配向している、
    シート材。
  9. 前記厚さ方向に平行な面からの回折X線が観測されるX線回折測定において、
    β−Si34(20−20)回折線の強度に対する、β−Si34(0002)回折線の強度の比率は、90%以上100%以下である、
    請求項8に記載のシート材。
  10. 前記シート材は、前記β−Si34結晶粒子を10質量%以上40質量%以下含有する、
    請求項8または請求項9に記載のシート材。
  11. 前記β−Si34結晶粒子は、酸化物層を含み、
    前記酸化物層は、前記β−Si34結晶粒子の表面に形成されており、かつ10nm以上50nm以下の厚さを有する、
    請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載のシート材。
  12. 所定の厚さを有するシート材であって、
    β−Si34結晶粒子を10質量%以上40質量%以下、および
    樹脂を残部として
    含有し、
    前記β−Si34結晶粒子は、c軸が前記シート材の厚さ方向に沿うように配向しており、
    前記β−Si34結晶粒子は、酸化物層を含み、
    前記酸化物層は、前記β−Si34結晶粒子の表面に形成されており、かつ10nm以上50nm以下の厚さを有し、
    前記厚さ方向に平行な面からの回折X線が観測されるX線回折測定において、
    β−Si34(20−20)回折線の強度に対する、β−Si34(0002)回折線の強度の比率は、90%以上100%以下である、
    シート材。
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