JP2004259949A - 熱伝導性反応硬化型樹脂成形体及びその製造方法 - Google Patents

熱伝導性反応硬化型樹脂成形体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱伝導性を容易に向上させることができる熱伝導性反応硬化型樹脂成形体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】熱伝導性反応硬化型樹脂成形体は、反応硬化型樹脂及び熱伝導性充填剤を含有する反応硬化型樹脂組成物から得られる。反応硬化型樹脂組成物には、反応硬化型樹脂100重量部に対して、熱伝導性充填剤が5〜800重量部配合されている。熱伝導性反応硬化型樹脂成形体における反応硬化型樹脂の分子鎖は、熱伝導方向に配向されている。熱伝導方向の熱伝導率は、反応硬化型樹脂組成物を硬化して得られる無配向反応硬化型樹脂成形体の熱伝導率の1.2〜10倍であることが好ましい。この熱伝導性反応硬化型樹脂成形体を製造するには、まず反応硬化型樹脂が反応硬化する前の反応硬化型樹脂組成物に磁場を印加し、この磁場を印加した状態で反応硬化型樹脂を硬化させる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品等から発生する熱を伝導する熱伝導性反応硬化型樹脂成形体及びその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、熱伝導性を容易に向上させることができる熱伝導性反応硬化型樹脂成形体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器においては高性能化、小型化、軽量化等に伴って半導体パッケージの高密度実装化、LSIの高集積化及び高速化等が行われている。これらに伴って、各種の電子部品において発生する熱が増大するため、電子部品から熱を効果的に外部へ放散させる熱対策が非常に重要な課題になっている。このような熱対策として、プリント配線基板、半導体パッケージ、筐体、ヒートパイプ、放熱板、熱拡散板等の放熱部材には、金属、セラミックス、高分子組成物等の放熱材料からなる熱伝導性成形体が適用されている。
【0003】
これらの放熱部材の中でも、反応硬化型樹脂組成物から成形される熱伝導性反応硬化型樹脂成形体は、耐熱性、機械的性質等に優れている。特にエポキシ樹脂組成物から成形される熱伝導性反応硬化型樹脂成形体は、電気絶縁性、機械的性質、耐熱性、耐薬品性、接着性等に優れているため、注型品、積層板、封止剤、接着剤等として電気電子分野を中心に広く使用されている。
【0004】
熱伝導性反応硬化型樹脂成形体を構成する反応硬化型樹脂組成物は、樹脂、ゴム等の高分子マトリックス材料中に、熱伝導率の高い熱伝導性充填剤を配合したものが知られている。
【0005】
一方、さらに高い熱伝導性が要求される場合には、反応硬化型樹脂としてのエポキシ樹脂に特殊な熱伝導性充填剤を配合した反応硬化型樹脂組成物や熱伝導性反応硬化型樹脂成形体が提唱されている。この種の熱伝導性充填剤としては表面改質酸化アルミニウム、球状クリストバライト、特定粒度の無機フィラー等が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特公平6−51778号公報(表1)
【特許文献2】
特開2001−172472号公報(表2)
【特許文献3】
特開2001−348488号公報(表1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体では、熱伝導性充填剤の種類を選択したり、熱伝導性充填剤の配合量を増大させることによって熱伝導性を向上させている。熱伝導性充填剤の配合によって熱伝導性を向上させるには、反応硬化型樹脂に対する分散性、反応硬化型樹脂組成物の成形性等の影響を考慮する必要がある。従って、熱伝導性を容易に向上させることが困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、熱伝導性を容易に向上させることができる熱伝導性反応硬化型樹脂成形体及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体では、反応硬化型樹脂及び熱伝導性充填剤を含有する反応硬化型樹脂組成物を硬化して得られる熱伝導性反応硬化型樹脂成形体であって、前記反応硬化型樹脂組成物には反応硬化型樹脂100重量部に対して、5〜800重量部の熱伝導性充填剤が配合され、前記反応硬化型樹脂の分子鎖が熱伝導方向に配向されているものである。
【0010】
請求項2に記載の発明の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体では、請求項1に記載の発明において、前記熱伝導方向の熱伝導率は、前記反応硬化型樹脂組成物を成形して得られる無配向反応硬化型樹脂成形体の熱伝導率の1.2〜10倍であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、分子内にメソゲン基を有する液晶性反応硬化型樹脂であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体では、請求項3に記載の発明において、前記液晶性反応硬化型樹脂は、液晶性エポキシ樹脂であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法では、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法において、前記反応硬化型樹脂が反応硬化する前の反応硬化型樹脂組成物に磁場を印加することによって前記反応硬化型樹脂の分子鎖を熱伝導方向に配向させた後、磁場を印加した状態で反応硬化型樹脂を硬化させたことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法では、請求項1又は請求項2に記載の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法において、前記反応硬化型樹脂として分子内にメソゲン基を有する液晶性エポキシ樹脂を用い、前記液晶性エポキシ樹脂が液晶状態に相転移された反応硬化型樹脂組成物に、磁場を印加することによって前記液晶性エポキシ樹脂の分子鎖を熱伝導方向に配向させた後、前記液晶性エポキシ樹脂を固体状態に相転移させたことを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法では、請求項5又は請求項6に記載の発明において、前記反応硬化型樹脂組成物をシート状に成形した後、前記反応硬化型樹脂の分子鎖を熱伝導方向に配向させたことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態における熱伝導性反応硬化型樹脂成形体は、反応硬化型樹脂組成物を硬化して得られるものである。反応硬化型樹脂組成物には、反応硬化型樹脂及び熱伝導性充填剤が含有され、反応硬化型樹脂100重量部に対して、5〜800重量部の熱伝導性充填剤が配合されている。熱伝導性反応硬化型樹脂成形体における反応硬化型樹脂の分子鎖は、熱伝導方向に配向されている。
【0017】
この熱伝導性反応硬化型樹脂成形体は、プリント配線基板、半導体パッケージ、筐体、ヒートパイプ、放熱板、熱拡散板、熱伝導性接着層等の放熱部材に適用することができる。そして、この熱伝導性反応硬化型樹脂成形体は、各種電子部品で発生する熱を伝導伝熱させ、その熱を電子機器の外部に放熱することができるものである。
【0018】
まず、反応硬化型樹脂について説明する。
反応硬化型樹脂組成物に含有する反応硬化型樹脂は、分子中に2個以上の反応基を有し、適切な方法で硬化させることにより三次元構造を形成する樹脂である。反応硬化型樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、アリル樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの反応硬化型樹脂の中でも、電気絶縁性、機械的性質、耐熱性及び耐薬品性に優れるとともに汎用的であることから、好ましくはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂から選ばれる少なくとも一種、より好ましくはエポキシ樹脂である。このエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0019】
これらの反応硬化型樹脂の中でも、その分子鎖を配向させ易いことから、分子内にメソゲン基を有する液晶性反応硬化型樹脂が好ましい。ここで、メソゲン基とは液晶性を発現させる官能基を示し、具体的には、ビフェニル、シアノビフェニル、ターフェニル、シアノターフェニル、フェニルベンゾエート、アゾベンゼン、アゾメチン、アゾキシベンゼン、スチルベン、フェニルシクロヘキシル、ビフェニルシクロヘキシル、フェノキシフェニル、ベンジリデンアニリン、ベンジルベンゾエート、フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、ベンゾイルアニリン、トラン等及びこれらの誘導体が挙げられる。液晶性反応硬化型樹脂の1分子内には、少なくとも1つのメソゲン基を有していればよく、2つ以上のメソゲン基を有していてもよい。また、複数のメソゲン基の連結部分やメソゲン基の末端部分は、屈曲鎖(スペーサ)と呼ばれる柔軟構造部によって構成される。柔軟構造部としては、脂肪族炭化水素基、脂肪族エーテル基、脂肪族エステル基、シロキサン結合等が挙げられる。このような液晶性反応硬化型樹脂は、ある温度領域でメソゲン基が規則的に配列する液晶状態となる性質を有している。この液晶性は、直交偏光子を利用した偏光検査法によって確認することができ、液晶状態の液晶性反応硬化型樹脂は強い複屈折性を発現する。液晶状態の種類としては、ネマティック、スメクティック、コレステリック、ディスコティック等が挙げられる。
【0020】
これらの液晶性反応硬化型樹脂の中でも、好ましくは液晶性エポキシ樹脂、液晶性ウレタン樹脂、液晶性アクリル樹脂、液晶性ポリイミド樹脂、液晶性不飽和ポリエステル樹脂、液晶性アミノ樹脂、液晶性シリコーン樹脂及び液晶性フッ素樹脂から選ばれる少なくとも一種、より好ましくは液晶性エポキシ樹脂である。
【0021】
反応硬化型樹脂組成物には、反応硬化型樹脂を硬化させる硬化剤が配合されることが好ましい。硬化剤のタイプは、反応硬化型樹脂と混合した状態で保存することができ、加熱や紫外線照射等によって反応硬化型樹脂を硬化させる一液性(潜在性)硬化剤でもよく、反応硬化型樹脂と混合することによって反応性硬化樹脂を硬化させる二液性硬化剤でもよい。反応硬化型樹脂組成物に硬化剤を配合する場合、一種の硬化剤を配合してもよく、複数の硬化剤を組み合わせて配合してもよい。
【0022】
反応硬化型組成物に対する硬化剤の配合量は、反応基1モルに対して硬化剤の化学当量が0.005〜5当量、さらに好ましくは0.01〜3当量、最も好ましくは0.5〜1.5当量である。この配合量が反応基1モルに対して0.005当量未満であると、反応硬化型樹脂を速やかに硬化することができないおそれがある。一方、5当量を超えて配合すると、硬化反応が速すぎるおそれがあり、反応硬化型樹脂を十分に配向させることが困難となるおそれがある。なお、ここでの化学当量は、例えば硬化剤としてエポキシ樹脂及び硬化剤としてアミン系硬化剤を使用した際は、エポキシ基1モルに対するアミンの活性水素のモル数を表す。
【0023】
反応硬化型樹脂としてエポキシ樹脂又は液晶性エポキシ樹脂を使用した場合、二液性硬化剤の具体例としては、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。
【0024】
アミン系硬化剤の具体例としては、脂肪族アミン類、ポリエーテルポリアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられる。脂肪族アミン類としては、エチレンジアミン、1,3‐ジアミノプロパン、1,4‐ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、2,5‐ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N‐ヒドロキシエチルエチレンジアミン、テトラ(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等が挙げられる。ポリエーテルポリアミン類としては、トリエチレングリコールジアミン、テトラエチレングリコールジアミン、ジエチレングリコールビス(プロピルアミン)、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン類等が挙げられる。脂環式アミン類としては、イソホロンジアミン、メタセンジアミン、N‐アミノエチルピペラジン、ビス(4‐アミノ‐3‐メチルジシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9‐ビス(3‐アミノプロピル)2,4,8,10‐テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、ノルボルネンジアミン等が挙げられる。芳香族アミン類としては、テトラクロロ‐p‐キシレンジアミン、m‐キシレンジアミン、p‐キシレンジアミン、m‐フェニレンジアミン、o‐フェニレンジアミン、p‐フェニレンジアミン、2,4‐ジアミノアニゾール、2,4‐トルエンジアミン、2,4‐ジアミノジフェニルメタン、4,4’‐ジアミノジフェニルメタン、4,4’‐ジアミノ‐1,2‐ジフェニルエタン、2,4‐ジアミノジフェニルスルホン、4,4’‐ジアミノジフェニルスルホン、m‐アミノフェノール、m‐アミノベンジルアミン、ベンジルジメチルアミン、2‐(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエタノールアミン、メチルベンジルアミン、α‐(m‐アミノフェニル)エチルアミン、α‐(p‐アミノフェニル)エチルアミン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、α,α’‐ビス(4‐アミノフェニル)‐p‐ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0025】
酸無水物系硬化剤の具体例としては、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、無水ヘット酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、5‐(2,5‐ジオキソテトラヒドロ‐3‐フラニル)‐3‐メチル‐3‐シクロヘキサン‐1,2‐ジカルボン酸無水物、3,4‐ジカルボキシ‐1,2,3,4‐テトラヒドロ‐1‐ナフタレンコハク酸二無水物、1‐メチル‐ジカルボキシ‐1,2,3,4‐テトラヒドロ‐1‐ナフタレンコハク酸二無水物等が挙げられる。
【0026】
フェノール系硬化剤の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、o‐クレゾールノボラック、m‐クレゾールノボラック、p‐クレゾールノボラック、キシレノールノボラック、ポリ‐p‐ヒドロキシスチレン、レゾルシン、カテコール、t‐ブチルカテコール、t‐ブチルハイドロキノン、フルオログリシノール、ピロガロール、t‐ブチルピロガロール、アリル化ピロガロール、ポリアリル化ピロガロール、1,2,4‐ベンゼントリオール、2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、1,2‐ジヒドロキシナフタレン、1,3‐ジヒドロキシナフタレン、1,4‐ジヒドロキシナフタレン、1,5‐ジヒドロキシナフタレン、1,6‐ジヒドロキシナフタレン、1,7‐ジヒドロキシナフタレン、1,8‐ジヒドロキシナフタレン、2,3‐ジヒドロキシナフタレン、2,4‐ジヒドロキシナフタレン、2,5‐ジヒドロキシナフタレン、2,6‐ジヒドロキシナフタレン、2,7‐ジヒドロキシナフタレン、2,8‐ジヒドロキシナフタレン、上記ジヒドロキシナフタレンのアリル化物又はポリアリル化物、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化フェノールノボラック、アリル化ピロガロール等が挙げられる。
【0027】
また、反応硬化型樹脂としてエポキシ樹脂又は液晶性エポキシ樹脂を使用した場合、一液性硬化剤の具体例としては、ジシアンジアミド、グアニジン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等の窒素含有化合物や、アミンイミド類、3級アミン塩、イミダゾール塩、ルイス酸及びそれらの塩、ブレンステッド酸塩等が挙げられる。
【0028】
反応硬化型樹脂としてのエポキシ樹脂又は液晶性エポキシ樹脂を使用した場合、反応硬化型樹脂組成物に塩化アルミニウム(AlCl)、四塩化スズ(SnCl)、四塩化チタン(TiCl)、三フッ化ホウ素(BF)、五塩化リン(PCl)及び五フッ化アンチモン(SbF)のような酸並びにそれらの塩を配合し、カチオン重合することにより硬化させることも可能である。また、エポキシ樹脂又は液晶性エポキシ樹脂を使用した場合、反応硬化型樹脂組成物に臭化テトラブチルアンモニウム、塩化ジメチルジベンジルアンモニウム等のようなアンモニウム塩を配合し、アニオン重合することによって硬化させることも可能である。
【0029】
熱伝導性充填剤は、得られる熱伝導性反応硬化型樹脂成形体に熱伝導性を付与するために配合される。熱伝導性充填剤の具体例としては、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、金属被覆樹脂、炭素繊維、黒鉛化炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、球状黒鉛粒子、メソカーボンマイクロビーズ、ウィスカー状カーボン、マイクロコイル状又はナノコイル状カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等が挙げられる。金属としては、銀、銅、金、白金、アルミニウム、ジルコン等、金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等、金属窒化物としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等、金属窒化物としては、炭化ケイ素、炭化タングステン等、金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。得られる熱伝導性反応硬化型樹脂成形体を電気絶縁性が要求される用途に用いる場合、これらの熱伝導性充填剤の中でも電気絶縁性の熱伝導性充填剤を併用することが好ましい。電気絶縁性を有する熱伝導性充填剤としては、上記の金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等が挙げられる。
【0030】
熱伝導性充填剤の配合量は、反応硬化型樹脂100重量部に対して、5〜800重量部、好ましくは30〜600重量部、さらに好ましくは50〜500重量部である。この配合量が5重量部未満であると、熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の熱伝導性が不十分となる。一方、800重量部を超えて配合すると、反応硬化型樹脂組成物の粘度が増大し、反応硬化型樹脂に熱伝導性充填剤を均一に分散させることが困難となるとともに気泡が混入する等の不具合が生じ、熱伝導性反応硬化型樹脂成形体を得るのが困難となる。
【0031】
また、反応硬化型樹脂組成物には必要に応じて顔料、染料、蛍光増白剤、分散剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、可塑剤、溶剤、ガラス繊維等の補強材等を添加することも可能である。
【0032】
次に、熱伝導性反応硬化型樹脂成形体について詳述する。
熱伝導性反応硬化型樹脂成形体は、反応硬化型樹脂組成物における反応硬化型樹脂を配向させるとともに反応硬化型樹脂を硬化して得られたものである。この熱伝導性反応硬化型樹脂成形体は、反応硬化型樹脂の分子鎖が熱伝導方向に配向され、熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の熱伝導方向における熱伝導率λが向上されるようになっている。
【0033】
熱伝導方向の熱伝導率λは、反応硬化型樹脂組成物を硬化して得られる反応硬化型樹脂組成物が配向していない無配向反応硬化型樹脂成形体の熱伝導率λの好ましくは1.2〜10倍、より好ましくは1.4〜10倍、さらに好ましくは1.6〜10倍である。この熱伝導率λが1.2倍未満であると、反応硬化型樹脂が十分に配向されず、熱伝導性の向上が十分に得られないおそれがある。一方、10倍を超える熱伝導率λは、反応硬化型樹脂の配向特性からは得られにくい。なお、熱伝導性反応硬化型樹脂成形体における反応硬化型樹脂の分子鎖の配向の有無は、X線回折装置により測定したX線回折図から確認することができる。
【0034】
熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の熱伝導方向における熱伝導率λは、好ましくは1.0〜50W/(m・K)、さらに好ましくは1.3〜50W/(m・K)、最も好ましくは1.5〜50W/(m・K)である。この熱伝導率λが1.0W/(m・K)未満であると、優れた熱伝導性を発揮することができないおそれがある。一方、50W/(m・K)超える熱伝導性反応硬化型樹脂成形体は、熱伝導性充填剤の配合量の増大に伴って、成形が困難となるおそれがある。
【0035】
反応硬化型樹脂組成物から熱伝導性反応硬化型樹脂成形体を得るには、まず成形装置によって反応硬化する前の反応硬化型樹脂組成物を成形するとともに、各種配向方法によって反応硬化型樹脂の分子鎖を配向させる。次に、反応硬化型樹脂の分子鎖が配向した状態で反応硬化型樹脂を硬化させる。
【0036】
この熱伝導性反応硬化型樹脂成形体は、反応硬化型樹脂として液晶性反応硬化型樹脂を配合することにより、液晶性反応硬化型樹脂の液晶性(分子鎖の配向秩序性)を利用することができ、液晶性反応硬化型樹脂の分子鎖を高度に配向させることができる。
【0037】
反応硬化型樹脂を配向させる方法としては、流動場、せん断場、磁場及び電場から選ばれる少なくとも一種の場による配向方法が挙げられる。これらの配向方法の中でも、配向する方向を容易に制御できる点から、磁場による配向方法が好ましい。磁場を利用して反応硬化型樹脂を配向させるには、まず反応硬化型樹脂組成物に含有される反応硬化型樹脂を溶融状態又は液晶状態に相転移させる。次に、反応硬化型樹脂が相転移された反応硬化前の反応硬化型樹脂組成物に磁場を印加し、反応硬化型樹脂の分子鎖を磁力線と平行方向又は垂直方向に磁場配向させる。続いて、磁場を印加した状態で反応硬化型樹脂を溶融状態又は液晶状態から固体状態に相転移(硬化反応)させることにより、熱伝導性反応硬化型樹脂成形体を得ることができる。
【0038】
磁場を発生するための磁場発生手段としては、永久磁石、電磁石、超電導磁石、コイルなどが挙げられる。これらの磁場発生手段の中でも、実用的な磁束密度を有する磁場を発生させることができることから超電導磁石が好ましい。
【0039】
反応硬化型樹脂組成物に印加する磁場の磁束密度は、好ましくは0.5〜20テスラ(T)、さらに好ましくは1〜20T、最も好ましくは2〜10Tである。この磁束密度が0.5T未満であると、反応硬化型樹脂の分子鎖を十分に配向させることができないおそれがあり、熱伝導性が十分に向上されないおそれがある。一方、磁束密度が20Tを超える磁場は、実用上得られにくい。この磁束密度の範囲が2〜10Tであると、熱伝導性を十分に向上することができるとともに、実用的となる。
【0040】
成形装置としては、トランスファー成形装置、プレス成形装置、注型成形装置、射出成形装置、押出成形装置等、反応硬化型樹脂を成形する装置を用いることができる。反応硬化型樹脂組成物は、シート状、フィルム状、ブロック状、粒状、繊維状等の様々な形状の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体に成形することができる。
【0041】
反応硬化型樹脂組成物に含有する反応硬化型樹脂を硬化させる方法としては、反応硬化型樹脂が有する反応基を自己重合反応させる方法、硬化剤を反応させる方法等が挙げられる。これらの反応形態としては、熱硬化反応、光硬化反応、放射線硬化反応、湿気硬化反応等が挙げられる。
【0042】
この熱伝導性反応硬化型樹脂成形体をシート状に成形する場合、その厚さは好ましくは0.02〜10mm、さらに好ましくは0.1〜7mm、最も好ましくは0.2〜5mmである。この厚さが0.02mm未満であると、放熱部材に適用する際、操作性が悪化するおそれがある。一方、10mmを超えると、電子機器等の適用物の軽量化を妨げるおそれがある。
【0043】
次いで、反応硬化型樹脂組成物から熱伝導性反応硬化型樹脂成形体を製造する方法について図1〜図3に基づいて詳細に説明する。図1に示す熱伝導性反応硬化型樹脂成形体としてのシート状の熱伝導性シート11は、図示しないプリント配線基板、放熱シート等の放熱部材として電子機器等に適用することができるものである。
【0044】
まず、熱伝導性シート11の厚さ方向(図1におけるZ軸方向)に反応硬化型樹脂の分子鎖を配向させる場合について説明する。図2に示すように、金型12aの内部には、キャビティ13aがシート状に形成されている。また、金型12aの上下には磁場発生手段としての一対の永久磁石14aが配設され、永久磁石14aによって発生する磁場の磁力線M1は、キャビティ13aの厚さ方向に一致するようになっている。
【0045】
このキャビティ13aに反応硬化型樹脂組成物15を充填させる。ここで、金型12aには図示しない加熱装置が備えられ、キャビティ13aに充填された反応硬化型樹脂組成物15に含有される反応硬化型樹脂は溶融状態に維持される。また、反応硬化型樹脂組成物15に反応硬化型樹脂としての液晶性反応硬化型樹脂を含有させた場合には、液晶性反応硬化型樹脂は液晶状態に維持される。次に、永久磁石14aによってキャビティ13aに充填された反応硬化型樹脂組成物15に所定の磁束密度の磁場を印加する。なお、磁場はキャビティ13aに反応硬化型樹脂組成物15を充填する前に予め印加しておいてもよい。このとき、磁力線M1は、シート状の反応硬化型樹脂組成物15の厚さ方向に一致するため、反応硬化型樹脂の分子鎖はシート状の反応硬化型樹脂組成物15の厚さ方向に配向される。この配向状態で反応硬化型樹脂を硬化反応させ、金型12aから取り出すと、反応硬化型樹脂の分子鎖が厚さ方向に配向した熱伝導性シート11を得ることができる。この熱伝導性シート11は、厚さ方向を熱伝導方向とし、その方向において高い熱伝導率を有する。従って、厚さ方向に高い熱伝導性が要求される回路基板材料、半導体パッケージ用の放熱シート等に適用することができる。この熱伝導性シート11の厚さ方向の熱伝導率λは、前述の理由により、好ましくは1.0〜50W/(m・K)、さらに好ましくは1.3〜50W/(m・K)、最も好ましくは1.5〜50W/(m・K)である。
【0046】
次に、熱伝導性シート11の面内方向(図1におけるX軸方向、Y軸方向等)に反応硬化型樹脂の分子鎖を配向させる場合について説明する。図3に示すように、金型12bに形成されるキャビティ13bの面内方向に磁力線M2が一致するように、一対の永久磁石14bを金型12bの両側方に対向させて配設する。次に、永久磁石14bによってキャビティ13bに充填された反応硬化型樹脂組成物15に磁場を印加する。このとき、磁力線M2はシート状の反応硬化型樹脂組成物15の面内方向に一致するため、反応硬化型樹脂の分子鎖は反応硬化型樹脂組成物15の面内方向に配向される。この配向状態で反応硬化型樹脂を硬化反応させ、金型12bから取り出すと、反応硬化型樹脂の分子鎖が面内方向に配向した熱伝導性シート11を得ることができる。この熱伝導性シート11は、面内方向を熱伝導方向とし、その方向において高い熱伝導率を有する。従って、面内方向に高い熱伝導性が要求される回路基板材料、半導体パッケージ用の放熱シート等に適用することができる。この熱伝導性シート11の面内方向の熱伝導率λは、前述の理由により、好ましくは1.0〜50W/(m・K)、さらに好ましくは1.3〜50W/(m・K)、最も好ましくは1.5〜50W/(m・K)である。
【0047】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ この実施形態の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体においては、反応硬化型樹脂組成物を硬化して得られるものである。この反応硬化型樹脂組成物は、反応硬化型樹脂100重量部に対して、熱伝導性充填剤5〜800重量部を配合したものである。また、熱伝導性反応硬化型樹脂成形体における反応硬化型樹脂の分子鎖は、熱伝導方向に配向されている。ここで、従来技術のように熱伝導性充填剤の分散性や、反応硬化型樹脂組成物の成形性を考慮しつつ、熱伝導性充填剤の配合量を限界まで増大させて熱伝導性を向上させようとするのは困難である。本実施形態の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体では、熱伝導性充填剤の配合による熱伝導性の付与に加えて、反応硬化型樹脂の分子鎖の配向によって、熱伝導方向の熱伝導率λを向上させることができるため、熱伝導性を容易に向上させることができる。また、熱伝導性充填剤の増量に伴う弊害を勘案して、熱伝導性充填剤の配合量を抑制した場合でも、反応硬化型樹脂の分子鎖の配向によって、熱伝導方向の熱伝導率λを向上させることができるため、優れた熱伝導性を有する熱伝導性反応硬化型樹脂成形体を容易に得ることができる。
【0048】
・ この実施形態の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体においては、熱伝導方向の熱伝導率λは、反応硬化型樹脂組成物を成形して得られる無配向反応硬化型樹脂成形体の熱伝導率λの1.2〜10倍であることが好ましい。このように構成した場合、熱伝導性を十分に発揮させることができる。
【0049】
・ この実施形態の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体においては、反応硬化型樹脂は、分子内にメソゲン基を有する液晶性反応硬化型樹脂であることが好ましい。このように構成した場合、液晶性反応硬化型樹脂の液晶性(分子鎖の配向秩序性)によって、液晶性反応硬化型樹脂の分子鎖が高度に配向されるため、優れた熱伝導性を発揮させることができる。
【0050】
・ この実施形態の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体においては、液晶性反応硬化型樹脂は、分子内にメソゲン基を有する液晶性エポキシ樹脂であることが好ましい。このように構成した場合、液晶性エポキシ樹脂の分子鎖が高度に配向されるため、優れた熱伝導性を発揮させることができる。また、電気絶縁性、機械的性質、耐熱性、耐薬品性、接着性、低密度、汎用性等の液晶性エポキシ樹脂の特徴を十分に発揮させることができる。
【0051】
・ この実施形態の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法においては、反応硬化型樹脂が反応硬化する前の反応硬化型樹脂組成物には磁場が印加され、反応硬化型樹脂の分子鎖が熱伝導方向に配向されている。その後、磁場を印加した状態で反応硬化型樹脂を硬化させることにより、熱伝導性反応硬化型樹脂成形体が製造されている。この製造方法の場合、磁場によって、反応硬化型樹脂の分子鎖が配向された状態を容易に維持することができるとともに、反応硬化型樹脂の硬化反応を利用して容易に硬化させることができる。従って、熱伝導性が向上された熱伝導性反応硬化型樹脂成形体を容易に得ることができる。
【0052】
・ この実施形態の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法においては、液晶性エポキシ樹脂を液晶状態に相転移させ、磁場を印加することによって液晶性エポキシ樹脂の分子鎖を熱伝導方向に配向させている。そして、配向された液晶性エポキシ樹脂を固体状態に相転移させている。この製造方法によると、液晶性エポキシ樹脂の液晶性(分子鎖の配向秩序性)及び磁場を利用して液晶性エポキシ樹脂を容易に配向させることができ、熱伝導性が向上された熱伝導性反応硬化型樹脂成形体を容易に得ることができる。
【0053】
・ この実施形態の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法においては、反応硬化型樹脂成形体組成物をシート状に成形した後、反応硬化型樹脂の分子鎖を熱伝導方向に配向させることが好ましい。この製造方法によると、シート状であって、熱伝導性が向上された熱伝導性反応硬化型樹脂成形体を容易に得ることができる。また、押出機等で連続的に製造することもでき、生産効率を向上させることもできる。
【0054】
・ この実施形態の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法においては、反応硬化型樹脂組成物にさらに硬化剤を含有させ、この反応硬化型樹脂組成物を加熱するとともに磁場発生手段によって反応硬化型樹脂組成物に磁場を印加させることが好ましい。加熱された反応硬化型樹脂は溶融状態又は液晶状態に相転移される。そして、磁場によって反応硬化型樹脂の分子鎖は熱伝導方向に配向されつつ、加熱によって反応硬化型樹脂と硬化剤が徐々に反応し反応硬化型樹脂が硬化される。この製造方法によると、反応硬化型樹脂の分子鎖の配向と反応硬化型樹脂の硬化を容易に行うことができる。従って、熱伝導性が向上された熱伝導性反応硬化型樹脂成形体を容易に得ることができる。
【0055】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記反応硬化型樹脂組成物には、熱伝導性充填剤以外のガラス繊維等の通常の充填剤を配合してもよい。
【0056】
・ 前記反応硬化型樹脂組成物には、液晶性を有しない反応硬化型樹脂のみを含有させてもよく、液晶性反応硬化型樹脂のみを含有させてもよい。また、反応硬化型樹脂組成物には反応硬化型樹脂と液晶性反応硬化型樹脂の両方を含有させてもよい。
【0057】
・ 前記液晶性反応硬化型樹脂は、熱液晶性反応硬化型樹脂(サーモトロピック液晶性反応硬化型樹脂)でもよく、ライオトロピック液晶性反応硬化型樹脂でもよい。熱液晶性反応硬化型樹脂は、加熱溶融すると、ある温度範囲において光学的異方性溶融相を示す液晶状態となる反応硬化型樹脂である。一方、ライオトロピック液晶性反応硬化型樹脂は、溶媒に溶解すると、ある濃度範囲において光学的異方性を示す液晶状態となる反応硬化型樹脂である。これらの液晶性反応硬化型樹脂の中でも、液晶状態を容易に発現させることができるとともに、成形加工が容易であることから、熱液晶性反応硬化型樹脂が好ましい。
【0058】
・ 前記反応硬化型樹脂組成物には、メソゲン基を有し、液晶性を示す硬化剤を配合してもよい。
・ 前記永久磁石14a、14bは、金型12a、12bを挟むように一対配設されているが、一方の永久磁石14a、14bを省略してもよい。
【0059】
・ 前記永久磁石14a、14bは、S極とN極とが互いに対向するように一対配設されているが、S極同士又はN極同士が対向するように配設してもよい。
・ 前記磁力線M1、M2は、直線状であるが、曲線状等でもよい。また、前記永久磁石14a、14bは磁力線M1、M2が一方向に延びるように配設されているが、磁力線M1、M2が二方向以上に延びるように永久磁石14a、14bを配設してもよい。さらに、磁力線M1、M2又は金型12a、12bを回転させてもよい。
【0060】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
反応硬化型樹脂として液晶性エポキシ樹脂であるテレフタリリデン−ビス−(4−アミノ−3−メチルフェノール)ジグリシジルエーテル(以下、エポキシ樹脂Aという。)、硬化剤として4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン(以下、硬化剤Aという。)及び熱伝導性充填剤として球状の酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、以下、熱伝導性充填剤Aという。)を表1に示す配合量で配合し、混合することにより反応硬化型樹脂組成物を調製した。この反応硬化型樹脂組成物を温度170℃に加熱した金型におけるシート状のキャビティに入れて溶融させた。その後、磁束密度10テスラの磁場中にて、170℃、10分間でエポキシ樹脂Aを硬化させ、熱伝導性反応硬化型樹脂成形体としての厚さ2mmの熱伝導性シートを作製した。なお、磁力線の方向はシート状の反応硬化型樹脂組成物における厚さ方向とした。
(実施例2〜5)
エポキシ樹脂A、硬化剤A及び熱伝導性充填剤Aを表1に示す配合量で配合し、混合することにより反応硬化型樹脂組成物を調製した。なお、実施例4では、熱伝導性充填剤Aに加えて、熱伝導性充填剤として球状の酸化マグネシウム(協和化学工業株式会社製、以下、熱伝導性充填剤Bという。)を表1に示す配合量で配合した。表1に示すように実施例2の磁束密度を5テスラに変更した以外は、実施例1と同様に熱伝導性シートを作製した。
(比較例1)
実施例1と同一の反応硬化型樹脂組成物を、温度170℃に加熱した金型におけるシート状のキャビティに入れて溶融させた後、磁場を印加せずに170℃、10分間で硬化させ、厚さ2mmのエポキシ樹脂シートを作製した。
(熱伝導率の測定及び配向の確認)
実施例1〜5及び比較例1について、厚さ方向の熱伝導率λをレーザーフラッシュ法によって測定した熱拡散率に密度と比熱を乗じて求めた。液晶性エポキシ樹脂の分子鎖の配向については、X線回折装置(株式会社マック・サイエンス製)によって測定したX線回折線図によって解析した。X線回折線図から、厚さ方向に対する液晶性エポキシ樹脂の分子鎖について、配向の有無を確認した。これらの結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
Figure 2004259949
表1の結果から明らかなように、実施例1〜5では、熱伝導方向である厚さ方向に対して液晶性エポキシ樹脂の分子鎖の配向が確認された。
【0062】
実施例1の反応硬化型樹脂組成物の配合は比較例1と同一であるにも関わらず、液晶性エポキシ樹脂が配向されているため、比較例1の熱伝導率λに対して実施例1の熱伝導率λは1.7倍を超える高い値を示し、熱伝導率が十分に向上されていることがわかる。
【0063】
実施例2〜5の熱伝導率の結果から、熱伝導性充填剤の配合量や種類を変化させたことに加え、液晶性エポキシ樹脂の分子鎖の配向によって、優れた熱伝導性を有する熱伝導性シートが得られることがわかる。
(実施例6)
反応硬化型樹脂として液晶性エポキシ樹脂である1,5‐ビス‐[4‐[2‐アザ‐2‐(メチル‐4‐ヒドロキシフェニル)‐ビニル]フェノキシ]ペンタンジグリシジルエーテル(以下、エポキシ樹脂Bという。)、硬化剤A及び熱伝導性充填剤Aを表2に示す配合量で配合し、混合することにより反応硬化型樹脂組成物を調製した。この反応硬化型樹脂組成物を温度150℃に加熱した金型におけるシート状のキャビティに入れて溶融させた。その後、磁束密度10テスラの磁場中にて、105℃、60分間で硬化させ、熱伝導性反応硬化型樹脂成形体としての厚さ2mmの熱伝導性シートを作製した。なお、磁力線の方向はシート状の反応硬化型樹脂組成物における厚さ方向とした。
(実施例7)
反応硬化型樹脂として液晶性エポキシ樹脂であるジヒドロキシ‐α‐メチルスチルベンジグリシジルエーテル(以下、エポキシ樹脂Cという。)、硬化剤A及び熱伝導性充填剤Aを表2に示す配合量で配合し、混合することにより反応硬化型樹脂組成物を調製した。この反応硬化型樹脂組成物を温度150℃に加熱した金型におけるシート状のキャビティに入れて溶融させた。その後、磁束密度10テスラの磁場中にて、150℃、60分間で硬化させ、熱伝導性反応硬化型樹脂成形体としての厚さ2mmの熱伝導性シートを作製した。なお、磁力線の方向はシート状の反応硬化型樹脂組成物における厚さ方向とした。
(実施例8)
反応硬化型樹脂として液晶性エポキシ樹脂である1,4‐ビス‐[4‐(4‐ヒドロキシベンゾエート)フェノキシ]ブタンジグリシジルエーテル(以下、エポキシ樹脂Dという。)、硬化剤A及び熱伝導性充填剤Aを表2に示す配合量で配合し、混合することにより反応硬化型樹脂組成物を調製した。この反応硬化型樹脂組成物から実施例7と同様に熱伝導性シートを作製した。
(比較例2)
実施例6と同一の反応硬化型樹脂組成物を、温度150℃に加熱した金型におけるシート状のキャビティに入れて溶融させた後、磁場を印加せずに105℃、60分間で硬化させ、厚さ2mmのエポキシ樹脂シートを作製した。
(比較例3)
実施例7と同一の反応硬化型樹脂組成物を、温度150℃に加熱した金型におけるシート状のキャビティに入れて溶融させた後、磁場を印加せずに150℃、60分間で硬化させ、厚さ2mmのエポキシ樹脂シートを作製した。
(比較例4)
実施例8と同一の反応硬化型樹脂組成物を、温度150℃に加熱した金型におけるシート状のキャビティに入れて溶融させた後、磁場を印加せずに150℃、60分間で硬化させ、厚さ2mmのエポキシ樹脂シートを作製した。
(熱伝導率の測定及び配向の確認)
実施例1〜5と同様に厚さ方向の熱伝導率λを測定した。また、実施例1〜5と同様に厚さ方向に対する液晶性エポキシ樹脂の分子鎖について配向の有無を確認した。これらの結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
Figure 2004259949
表2の結果から明らかなように、実施例6〜8では、熱伝導方向である厚さ方向に液晶性エポキシ樹脂の分子鎖の配向が確認された。
【0065】
実施例6の反応硬化型樹脂組成物の配合は比較例2と同一であるにも関わらず、液晶性エポキシ樹脂が配向されているため、比較例2の熱伝導率λに対して実施例6の熱伝導率λが1.6倍を超える高い値を示し、熱伝導率が十分に向上されていることがわかる。また、実施例7の熱伝導率λは、比較例3の熱伝導率λに対して1.4倍を超える高い値を示し、熱伝導率が十分に向上されていることがわかる。加えて、実施例8の熱伝導率λは、比較例4の熱伝導率λに対して1.4倍を超える高い値を示し、熱伝導率が十分に向上されていることがわかる。
【0066】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1) シート状をなし、その厚さ方向が前記熱伝導方向である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体。このように構成した場合、回路基板材料、放熱シート等、シート状であってその厚さ方向に高い熱伝導性が要求される用途に適用することができる。
【0067】
(2) 前記熱伝導方向の熱伝導率が1.0〜50W/(m・K)である請求項1から請求項4及び上記(1)のいずれか一項に記載の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体。このように構成した場合、優れた熱伝導性を発揮することができる。
【0068】
(3) 前記熱伝導性充填剤は、電気絶縁性を有するものである請求項1から請求項4、上記(1)及び(2)のいずれか一項に記載の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体。このように構成した場合、電気絶縁性が要求される用途に適用することができる。
【0069】
(4) 請求項1、請求項2及び上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法において、前記反応硬化型樹脂として分子内にメソゲン基を有する液晶性エポキシ樹脂を用い、前記反応硬化型樹脂組成物の加熱、又は前記反応硬化型樹脂組成物に対する溶媒の配合により、前記液晶性エポキシ樹脂を液晶状態に相転移させ、磁場を印加することによって前記液晶性エポキシ樹脂を熱伝導方向に配向させた後、反応硬化型樹脂組成物の冷却又は溶媒の除去によって、前記液晶性エポキシ樹脂を固体状態に相転移させたことを特徴とする熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法。
【0070】
(5) 請求項1から請求項4及び上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法において、前記反応硬化型樹脂組成物に反応硬化型樹脂と反応して反応硬化型樹脂を硬化させる硬化剤を含有させ、該硬化剤を含有する反応硬化型樹脂組成物を加熱することによって、反応硬化型樹脂を溶融状態又は液晶状態に相転移させ、磁場発生手段によって磁場を印加させながら加熱によって反応硬化型樹脂を硬化反応させることを特徴とする熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法。この製造方法の場合、反応硬化型樹脂と硬化剤の反応を利用し、熱伝導性が向上された熱伝導性反応硬化型樹脂成形体をさらに容易に得ることができる。
【0071】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体によれば、熱伝導性を容易に向上させることができる。
【0072】
請求項2に記載の発明の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、熱伝導性を十分に発揮させることができる。
請求項3に記載の発明の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、熱伝導性をさらに発揮させることができる。
【0073】
請求項4に記載の発明の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体によれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、液晶性エポキシ樹脂の特徴を十分に発揮させることができる。
【0074】
請求項5から請求項7に記載の発明の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法によれば、熱伝導性が向上された熱伝導性反応硬化型樹脂成形体を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における熱伝導性シートを示す斜視図。
【図2】厚さ方向を熱伝導方向とする熱伝導性シートの製造方法を示す概念図。
【図3】面内方向を熱伝導方向とする熱伝導性シートの製造方法を示す概念図。
【符号の説明】
11…熱伝導性反応硬化型樹脂成形体としての熱伝導性シート、12a、12b…金型、13a、13b…キャビティ、14a、14b…磁場発生手段としての永久磁石、M1、M2…磁力線、15…反応硬化型樹脂組成物。

Claims (7)

  1. 反応硬化型樹脂及び熱伝導性充填剤を含有する反応硬化型樹脂組成物を硬化して得られる熱伝導性反応硬化型樹脂成形体であって、前記反応硬化型樹脂組成物には反応硬化型樹脂100重量部に対して、5〜800重量部の熱伝導性充填剤が配合され、前記反応硬化型樹脂の分子鎖が熱伝導方向に配向されていることを特徴とする熱伝導性反応硬化型樹脂成形体。
  2. 前記熱伝導方向の熱伝導率は、前記反応硬化型樹脂組成物を成形して得られる無配向反応硬化型樹脂成形体の熱伝導率の1.2〜10倍であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体。
  3. 前記反応硬化型樹脂は、分子内にメソゲン基を有する液晶性反応硬化型樹脂である請求項1又は請求項2に記載の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体。
  4. 前記液晶性反応硬化型樹脂は、液晶性エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法において、前記反応硬化型樹脂が反応硬化する前の反応硬化型樹脂組成物に磁場を印加することによって前記反応硬化型樹脂の分子鎖を熱伝導方向に配向させた後、磁場を印加した状態で反応硬化型樹脂を硬化させたことを特徴とする熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法。
  6. 請求項1又は請求項2に記載の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法において、前記反応硬化型樹脂として分子内にメソゲン基を有する液晶性エポキシ樹脂を用い、前記液晶性エポキシ樹脂が液晶状態に相転移された反応硬化型樹脂組成物に、磁場を印加することによって前記液晶性エポキシ樹脂の分子鎖を熱伝導方向に配向させた後、前記液晶性エポキシ樹脂を固体状態に相転移させたことを特徴とする熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法。
  7. 前記反応硬化型樹脂組成物をシート状に成形した後、前記反応硬化型樹脂の分子鎖を熱伝導方向に配向させたことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の熱伝導性反応硬化型樹脂成形体の製造方法。
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