JP2017216270A - 光電変換素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高湿度環境下の使用においても、素子間の光電変換効率の経時的なばらつきが抑えられ、また、短絡電流密度(Jsc)が高く光電変換効率に優れた光電変換素子を得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】感光層13Aを導電性支持体11上に有する第一電極1Aと、第一電極に対向する第二電極2とを有する光電変換素子の製造方法であって、感光層13Aの形成工程が、下記式(1)の化合物と、下記式(2)の化合物と、下記式(3)の化合物とを含有する層を、相対湿度2.0%以下の雰囲気中で形成することを含む、製造方法。式(1)R−NR1a 、式(2)R−NR2a 、式(3)MX [R及びRは互いに異なる特定の置換基を示す。R1a及びR2aは水素原子又は特定の置換基を示す。Mは金属原子を示す。X〜Xはアニオンを示す。]
【選択図】図1

Description

本発明は、光電変換素子の製造方法に関する。
光電変換素子は、各種の光センサー、複写機、太陽電池等に用いられている。太陽電池は、非枯渇性の太陽エネルギーを利用するものとして、その本格的な実用化が期待されている。この中でも、増感剤として有機色素又はRuビピリジル錯体等を用いた色素増感太陽電池は、研究開発が盛んに進められ、光電変換効率が11%程度に到達している。
その一方で、近年、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物として金属ハロゲン化物を用いた太陽電池が、比較的高い光電変換効率を達成できるとの研究成果が報告され、注目を集めている。
例えば、非特許文献1には、CHNHPbIClで表される金属ハロゲン化物を光吸収剤として用いた太陽電池が記載されている。
また、非特許文献2には、(PEA)(MA)[Pb10]で表される層状ペロブスカイト(layered perovskite)を用いた太陽電池が記載されている。ここで、PEAはC(CHNH を表し、MAはCHNH を表す。
さらに、非特許文献3には、TiO層と、ZrO層と、(5−AVA)(MA)1−xPbIからなる層との3層構造を有するペロブスカイト太陽電池が記載されている。ここで、5−AVAは5−アミノバレリル酸カチオンを表し、MAはメチルアンモニウムカチオンを表す。
Science,2012年,vol.338,p.643−647 Angew.Chem.Int.Ed.2014,53,p.11232−11235 Science,2014年,vol.345,p.295
上述のように、ペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物(以下、「ペロブスカイト化合物」ともいう)を用いた光電変換素子は、光電変換効率の向上において一定の成果が得られている。しかし、ペロブスカイト化合物は高湿環境下で損傷を受けやすいという問題がある。すなわち、ペロブスカイト化合物を感光層に用いた光電変換素子は、特に高湿環境下において光電変換効率の経時的な低下幅が広がる傾向があり、しかも、その低下量も素子間で一様とならない。そのため、ペロブスカイト化合物を感光層に用いた光電変換素子は一般に、素子間の品質のばらつきが大きいものとなる。
本発明は、ペロブスカイト化合物を含む感光層を有する光電変換素子の製造方法であって、高湿度環境で使用した場合においても、素子間の光電変換効率の経時的なばらつきが抑えられ、また、短絡電流密度(Jsc)が高く光電変換効率に優れた光電変換素子を得ることができる、光電変換素子の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、少なくとも一部がペロブスカイト化合物で構成された感光層を有する光電変換素子の製造において、上記感光層の形成において特定構造の少なくともの2種の有機アンモニウム塩を併用し、さらに上記感光層を特定の低湿度条件下で形成することにより、得られる光電変換素子が高湿環境下での使用においても素子間の耐湿性のばらつきが少ないこと、また、得られる光電変換素子のJscを効果的に高めることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
すなわち、本発明の上記の課題は以下の手段により解決された。
〔1〕
感光層を導電性支持体上に有する第一電極と、上記第一電極に対向する第二電極とを有する光電変換素子の製造方法であって、
上記感光層の形成工程が、下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物とを含有する層Lyを、相対湿度2.0%以下の雰囲気中で形成することを含む、光電変換素子の製造方法。
式(1) R−NR1a
式(2) R−NR2a
式(3) MX
式中、Rは下記式(1a)で表される基又はアリール基を示す。
Figure 2017216270
式(1a)中、R1bはメチル基、水酸基又はシリル基を示す。R1cは水素原子又はメチル基を示す。nは0〜2の整数であり、nは1〜3の整数である。
但し、R1bがメチル基でnが0の場合、nは2又は3であり、R1bがメチル基でnが1の場合、nは1又は2である。
*は式(1)中のN(R1aとの連結部位を示す。
はメチル基、エチル基又は下記式(2a)で表すことができる基を示す。
Figure 2017216270
はNR2c、酸素原子又は硫黄原子を示す。R2b及びR2cは水素原子又は置換基を示す。
Mは金属原子を示す。
1a及びR2aは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基又は脂肪族ヘテロ環基を示す。
〜Xはアニオン性原子又はアニオン性原子団を示す。
〔2〕
上記式(1)で表される化合物が下記式(1b)で表される化合物である、〔1〕記載の光電変換素子の製造方法。
Figure 2017216270
式中、R1a、R1b、R1c及びXは、それぞれ上記式(1)におけるR1a、R1b、R1c及びXと同義である。
1dはメチル基又はエチル基を示し、R1eは水素原子、メチル基又はエチル基を示す。
1aは0〜2の整数である。但し、R1bがメチル基の場合、n1aは0又は1である。
〔3〕
上記R1eがメチル基又はエチル基である、〔2〕記載の光電変換素子の製造方法。
〔4〕
上記R1bがメチル基又はシリル基である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
〔5〕
上記層Lyを相対湿度0.5%以下の雰囲気中で形成する、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
〔6〕
上記層Lyを、上記式(1)で表される化合物と、上記式(2)で表される化合物と、上記式(3)で表される化合物とを含有する組成物を用いて形成する、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
〔7〕
上記層Lyの形成に用いる上記組成物の含水率が0.1質量%以下である、〔6〕記載の光電変換素子の製造方法。
〔8〕
上記感光層の形成工程が、上記層Lyの乾燥処理を含む、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
〔9〕
上記層Lyを相対湿度0.02%以上の雰囲気中で形成する、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
〔10〕
上記感光層の形成工程のすべてを、相対湿度2.0%以下の雰囲気中で行う、〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
本明細書において、各式の表記は、化合物の化学構造の理解のために、一部を示性式として表記することもある。これに伴い、各式において、部分構造を、(置換)基、イオン又は原子等と称するが、本明細書において、これらは、(置換)基、イオン又は原子等のほかに、上記式で表される(置換)基もしくはイオンを構成する元素団、又は、元素を意味することがある。
本明細書において、化合物(錯体、色素を含む)の表示については、化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、置換又は無置換を明記していない化合物については、目的とする効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有する化合物を含む意味である。このことは、置換基及び連結基等(以下、置換基等という)についても同様である。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基等が複数あるとき、又は複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接するとき(特に、隣接するとき)には、特段の断りがない限り、それらが互いに連結して環を形成してもよい。また、環、例えば脂肪族環、芳香族環、ヘテロ環はさらに縮環して縮合環を形成していてもよい。
また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の光電変換素子の製造方法によれば、感光層中にペロブスカイト化合物を含有しながらも、素子間の耐湿性のばらつきが効果的に抑えられ、また、Jscが高く光電変換効率に優れた光電変換素子を得ることができる。
図1は本発明の製造方法で得られる光電変換素子の好ましい態様について、層中の円部分の拡大図も含めて模式的に示した断面図である。 図2は本発明の製造方法で得られる光電変換素子の厚い感光層を有する好ましい態様について模式的に示す断面図である。 図3は本発明の製造方法で得られる光電変換素子の別の好ましい態様について模式的に示した断面図である。 図4は本発明の製造方法で得られる光電変換素子のまた別の好ましい態様について模式的に示した断面図である。 図5は本発明の製造方法で得られる光電変換素子のさらに別の好ましい態様について模式的に示した断面図である。 図6は本発明の製造方法で得られる光電変換素子のさらにまた別の好ましい態様について模式的に示した断面図である。
[光電変換素子]
本発明の製造方法で得られる光電変換素子は、導電性支持体上に感光層が設けられた形態の第一電極と、この第一電極に対向する第二電極とを有する。ここで、第一電極と第二電極が対向するとは、第一電極と第二電極が互いに接した状態で積層された形態、第一電極と第二電極とが他の層を介して積層された形態(すなわち第一電極と第二電極が他の層を挟んで互いに対向して設けられた形態)の両形態を含む意味である。また、第一電極において、上記感光層は、導電性支持体よりも第二電極側に配される。
上記感光層は、特定の2種の有機カチオンと、金属カチオンと、アニオンとを有する光吸収剤を含み、この光吸収剤の一部はペロブスカイト型結晶構造を有する。光吸収剤中にペロブスカイト型結晶構造でない部分が存在する場合、このペロブスカイト型結晶構造でない部分において、上記カチオンとアニオンはイオン結合で結合した状態をとることもできる。
本発明において、導電性支持体上に感光層を有するとは、導電性支持体の表面に接して感光層を設ける(直接設ける)態様、及び、導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を設ける態様を含む意味である。
導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様において、導電性支持体と感光層との間に設けられる他の層としては、太陽電池の電池性能を低下させないものであれば特に限定されない。例えば、多孔質層、ブロッキング層、電子輸送層及び正孔輸送層等が挙げられる。
本発明において、導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様としては、例えば、感光層が、多孔質層の表面に薄い膜状(図1参照)又は厚い膜状(図2及び図6参照)に設けられる態様、ブロッキング層の表面に薄い膜状又は厚い膜状に設けられる態様(図3参照)、電子輸送層の表面に薄い膜状又は厚い膜状(図4参照)に設けられる態様、及び、正孔輸送層の表面に薄い膜状又は厚い膜状(図5参照)に設けられる態様が挙げられる。感光層は、線状又は分散状に設けられてもよいが、好ましくは膜状に設けられる。
本発明の製造方法で得られる光電変換素子において、感光層は特定の2種の有機カチオンと、金属カチオンと、アニオンとを有する光吸収剤を含有し、この光吸収剤の少なくとも一部がペロブスカイト化合物で構成される。このペロブスカイト化合物を含む感光層の成膜工程は、特定の原料を用いて、特定の雰囲気中で行われる。すなわち、詳細は後述するが、特定構造の少なくとも2種の有機アンモニウム塩と、金属塩とを用いて特定の低湿条件下で成膜し、所望により加熱等して乾燥させて感光層を形成することにより、光電変換素子の耐湿性のばらつきを効果的に低減することができ、素子間の品質のばらつきを抑制できると共に、光電変換素子のJscを効果的に高めることができ、光電変換効率の向上も実現することができる。
本発明の製造方法で得られる光電変換素子は、本発明で規定する構成以外の構成は特に限定されず、光電変換素子及び太陽電池に関する公知の構成を採用できる。本発明の光電変換素子を構成する各層は、目的に応じて設計され、例えば、単層に形成されても、複層に形成されてもよい。例えば、多孔質層を導電性支持体と感光層との間に設けることもできる(図1、図2及び図6参照)。
以下、本発明の製造方法で得られる光電変換素子の好ましい態様について説明する。
図1〜図6において、同じ符号は同じ構成要素(部材)を意味する。
なお、図1、図2及び図6は、多孔質層12を形成する微粒子の大きさを強調して示してある。これらの微粒子は、好ましくは、導電性支持体11に対して水平方向及び垂直方向に詰まり(堆積又は密着して)、多孔質構造を形成している。
本明細書において、単に光電変換素子10という場合は、特に断らない限り、光電変換素子10A〜10Fを意味する。このことは、システム100、第一電極1についても同様である。また、単に感光層13という場合は、特に断らない限り、感光層13A〜13Cを意味する。同様に、正孔輸送層3という場合は、特に断らない限り、正孔輸送層3A及び3Bを意味する。
本発明の製造方法で得られる光電変換素子の好ましい態様として、例えば、図1に示す光電変換素子10Aが挙げられる。図1に示されるシステム100Aは、光電変換素子10Aを外部回路6で動作手段M(例えば電動モーター)に仕事をさせる電池用途に応用したシステムである。
この光電変換素子10Aは、第一電極1Aと、第二電極2と、第一電極1Aと第二電極2の間に正孔輸送層3Aとを有している。
第一電極1Aは、支持体11a及び透明電極11bからなる導電性支持体11と、多孔質層12と、図1において断面領域aを拡大した拡大断面領域aに模式的に示されるように多孔質層12の表面に、ペロブスカイト型光吸収剤で設けられた感光層13Aとを有している。また透明電極11b上にブロッキング層14を有し、ブロッキング層14上に多孔質層12が形成される。このように多孔質層12を有する光電変換素子10Aは、感光層13Aの表面積が大きくなるため、電荷分離及び電荷移動効率が向上すると推定される。
図2に示す光電変換素子10Bは、図1に示す光電変換素子10Aの感光層13Aを厚く設けた好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Bにおいて、正孔輸送層3Bは薄く設けられている。光電変換素子10Bは、図1で示した光電変換素子10Aに対して感光層13B及び正孔輸送層3Bの膜厚の点で異なるが、これらの点以外は光電変換素子10Aと同様に構成されている。
図3に示す光電変換素子10Cは、本発明の製造方法で得られる光電変換素子の別の好ましい態様を模式的に示したものである。光電変換素子10Cは、図2に示す光電変換素子10Bに対して多孔質層12を設けていない点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Bと同様に構成されている。すなわち、光電変換素子10Cにおいて、感光層13Cはブロッキング層14の表面に厚い膜状に形成されている。光電変換素子10Cにおいて、正孔輸送層3Bは正孔輸送層3Aと同様に厚く設けることもできる。
図4に示す光電変換素子10Dは、本発明の製造方法で得られる光電変換素子のまた別の好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Dは、図3に示す光電変換素子10Cに対してブロッキング層14に代えて電子輸送層15を設けた点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Cと同様に構成されている。第一電極1Dは、導電性支持体11と、導電性支持体11上に順に形成された、電子輸送層15及び感光層13Cとを有している。この光電変換素子10Dは、各層を有機材料で形成できる点で、好ましい。これにより、光電変換素子の生産性が向上し、しかも薄型化又はフレキシブル化が可能になる。
図5に示す光電変換素子10Eは、本発明の製造方法で得られる光電変換素子のさらに別の好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Eを含むシステム100Eは、システム100Aと同様に電池用途に応用したシステムである。
光電変換素子10Eは、第一電極1Eと、第二電極2と、第一電極1E及び第二電極2の間に電子輸送層4とを有している。第一電極1Eは、導電性支持体11と、導電性支持体11上に順に形成された、正孔輸送層16及び感光層13Cとを有している。この光電変換素子10Eは、光電変換素子10Dと同様に、各層を有機材料で形成できる点で、好ましい。
図6に示す光電変換素子10Fは、本発明の製造方法で得られる光電変換素子のさらにまた別の好ましい態様を模式的に示したものである。光電変換素子10Fは、図2に示す光電変換素子10Bに対して正孔輸送層3Bを設けていない点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Bと同様に構成されている。
本発明において、光電変換素子10を応用したシステム100は、以下のようにして、太陽電池として機能する。
すなわち、光電変換素子10において、導電性支持体11を透過して、又は第二電極2を透過して感光層13に入射した光は光吸収剤を励起する。励起された光吸収剤はエネルギーの高い電子を有しており、この電子を放出できる。エネルギーの高い電子を放出した光吸収剤は酸化体(カチオン)となる。
光電変換素子10A〜10D及び10Fにおいては、光吸収剤から放出された電子は、光吸収剤間を移動して導電性支持体11に到達する。導電性支持体11に到達した電子が外部回路6で仕事をした後、第二電極2を経て(正孔輸送層3がある場合にはさらに正孔輸送層3を経由して)、感光層13に戻る。感光層13に戻った電子により光吸収剤が還元される。
一方、光電変換素子10Eにおいては、光吸収剤から放出された電子は、感光層13Cから電子輸送層4を経て第二電極2に到達し、外部回路6で仕事をした後に導電性支持体11を経て、感光層13に戻る。感光層13に戻った電子により光吸収剤が還元される。
光電変換素子10においては、このような、上記光吸収剤の励起及び電子移動のサイクルを繰り返すことにより、システム100が太陽電池として機能する。
光電変換素子10A〜10D及び10Fにおいて、感光層13から導電性支持体11への電子の流れ方は、多孔質層12の有無及びその種類等により、異なる。本発明の光電変換素子10においては、光吸収剤間を電子が移動する電子伝導が起こる。したがって、本発明において、多孔質層12を設ける場合、多孔質層12は従来の半導体以外に絶縁体で形成することができる。多孔質層12が半導体で形成される場合、多孔質層12の半導体微粒子内部や半導体微粒子間を電子が移動する電子伝導も起こる。一方、多孔質層12が絶縁体で形成される場合、多孔質層12での電子伝導は起こらない。多孔質層12が絶縁体で形成される場合、絶縁体微粒子に酸化アルミニウム(Al)の微粒子を用いると、比較的高い起電力(Voc)が得られる。
上記他の層としてのブロッキング層14が導体又は半導体により形成された場合もブロッキング層14での電子伝導が起こる。
また、電子輸送層15でも電子伝導が起こる。
本発明の製造方法で得られる光電変換素子は、上記の好ましい態様に限定されず、各態様の構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各態様間で適宜組み合わせることができる。例えば、光電変換素子10C又は10Dに対して、光電変換素子10Fのように、正孔輸送層3Bを設けない構成とすることもできる。
本発明において、光電変換素子に用いられる材料及び各部材は、光吸収剤を除いて、常法により調製することができる。ペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子又は太陽電池については、例えば、非特許文献1〜3を参照することができる。ならびにJ.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051及びScience,338,p.643(2012)を参照することができる。を参照することができる。
また、色素増感太陽電池に用いられる材料及び各部材についても参考にすることができる。色素増感太陽電池について、例えば、特開2001−291534号公報、米国特許第4,927,721号明細書、米国特許第4,684,537号明細書、米国特許第5,0843,65号明細書、米国特許第5,350,644号明細書、米国特許第5,463,057号明細書、米国特許第5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。
以下、本発明の製造方法で得られる光電変換素子が備える部材及び化合物の好ましい態様について、説明する。
<第一電極1>
第一電極1は、導電性支持体11と感光層13とを有し、光電変換素子10において作用電極として機能する。
第一電極1は、図1〜図6に示されるように、多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15及び正孔輸送層16の少なくとも1つの層を有することが好ましい。
第一電極1は、短絡防止の点で少なくともブロッキング層14を有することが好ましく、光吸収効率の点及び短絡防止の点で多孔質層12及びブロッキング層14を有していることがさらに好ましい。
また、第一電極1は、光電変換素子の生産性の向上、薄型化又はフレキシブル化の点で、有機材料で形成された、電子輸送層15又は正孔輸送層16を有することが好ましい。
− 導電性支持体11 −
導電性支持体11は、導電性を有し、感光層13等を支持できるものであれば特に限定されない。導電性支持体11は、導電性を有する材料、例えば金属で形成された構成、又は、ガラスもしくはプラスチックの支持体11aと、この支持体11aの表面に形成された導電膜としての透明電極11bとを有する構成が好ましい。
なかでも、図1〜図6に示されるように、ガラス又はプラスチックの支持体11aの表面に導電性の金属酸化物を塗設して透明電極11bを成膜した導電性支持体11がさらに好ましい。プラスチックで形成された支持体11aとしては、例えば、特開2001−291534号公報の段落番号0153に記載の透明ポリマーフィルムが挙げられる。支持体11aを形成する材料としては、ガラス及びプラスチックの他にも、セラミック(特開2005−135902号公報)、導電性樹脂(特開2001−160425号公報)を用いることができる。金属酸化物としては、スズ酸化物(TO)が好ましく、インジウム−スズ酸化物(スズドープ酸化インジウム;ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等のフッ素ドープスズ酸化物が特に好ましい。このときの金属酸化物の塗布量は、支持体11aの表面積1m当たり0.1〜100gが好ましい。導電性支持体11を用いる場合、光は支持体11a側から入射させることが好ましい。
導電性支持体11は、実質的に透明であることが好ましい。本発明において、「実質的に透明である」とは、光(波長300〜1200nm)の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上が好ましく、80%以上が特に好ましい。
支持体11a及び導電性支持体11の厚みは、特に限定されず、適宜の厚みに設定される。例えば、0.01μm〜10mmであることが好ましく、0.1μm〜5mmであることがさらに好ましく、0.3μm〜4mmであることが特に好ましい。
透明電極11bを設ける場合、透明電極11bの膜厚は、特に限定されず、例えば、0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることがさらに好ましく、0.05〜20μmであることが特に好ましい。
導電性支持体11又は支持体11aは、表面に光マネージメント機能を有してもよい。例えば、導電性支持体11又は支持体11aの表面に、特開2003−123859号公報に記載の、高屈折膜及び低屈折率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜を有してもよく、特開2002−260746号公報に記載のライトガイド機能を有してもよい。
− ブロッキング層14 −
本発明においては、光電変換素子10A〜10C及び10Fのように、好ましくは、透明電極11bの表面に、すなわち、導電性支持体11と、多孔質層12、感光層13又は正孔輸送層3等との間に、ブロッキング層14を有している。
光電変換素子において、例えば感光層13又は正孔輸送層3と、透明電極11b等とが電気的に接続すると逆電流を生じる。ブロッキング層14は、この逆電流を防止する機能を果たす。ブロッキング層14は短絡防止層ともいう。
ブロッキング層14を、光吸収剤を担持する足場として機能させることもできる。
このブロッキング層14は、光電変換素子が電子輸送層を有する場合にも設けられてもよい。例えば、光電変換素子10Dの場合、導電性支持体11と電子輸送層15との間に設けられてもよく、光電変換素子10Eの場合、第二電極2と電子輸送層4との間に設けられてもよい。
ブロッキング層14を形成する材料は、上記機能を果たすことのできる材料であれば特に限定されないが、可視光を透過する物質であって、導電性支持体11(透明電極11b)等に対する絶縁性物質であることが好ましい。「導電性支持体11(透明電極11b)に対する絶縁性物質」とは、具体的には、伝導帯のエネルギー準位が、導電性支持体11を形成する材料(透明電極11bを形成する金属酸化物)の伝導帯のエネルギー準位以上であり、かつ、多孔質層12を構成する材料の伝導帯や光吸収剤の基底状態のエネルギー準位より低い化合物(n型半導体化合物)をいう。
ブロッキング層14を形成する材料は、例えば、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等が挙げられる。また、一般的に光電変換材料に用いられる材料でもよく、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化タングステン等も挙げられる。なかでも、酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等が好ましい。
ブロッキング層14の膜厚は、0.001〜10μmが好ましく、0.005〜1μmがさらに好ましく、0.01〜0.1μmが特に好ましい。
本発明において、各層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて光電変換素子10の断面を観察することにより、測定できる。
− 多孔質層12 −
本発明においては、光電変換素子10A、10B及び10Fのように、好ましくは、透明電極11b上に多孔質層12を有している。ブロッキング層14を有している場合、多孔質層12はブロッキング層14上に形成されることが好ましい。
多孔質層12は、表面に感光層13を担持する足場として機能する層である。太陽電池において、光吸収効率を高めるためには、少なくとも太陽光等の光を受ける部分の表面積を大きくすることが好ましく、多孔質層12の全体としての表面積を大きくすることが好ましい。
多孔質層12は、多孔質層12を形成する材料の微粒子が堆積又は密着してなる、細孔を有する微粒子層であることが好ましい。多孔質層12は、2種以上の微粒子が堆積してなる微粒子層であってもよい。多孔質層12が細孔を有する微粒子層であると、光吸収剤の担持量(吸着量)を増量できる。
多孔質層12の表面積を大きくするには、多孔質層12を構成する個々の微粒子の表面積を大きくすることが好ましい。本発明では、多孔質層12を形成する微粒子を導電性支持体11等に塗設した状態で、この微粒子の表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。多孔質層12を形成する微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径において、1次粒子として0.001〜1μmが好ましい。微粒子の分散物を用いて多孔質層12を形成する場合、微粒子の上記平均粒径は、分散物の平均粒径として0.01〜100μmが好ましい。
多孔質層12を形成する材料は、導電性に関しては特に限定されず、絶縁体(絶縁性の材料)であっても、導電性の材料又は半導体(半導電性の材料)であってもよい。
多孔質層12を形成する材料としては、例えば、金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(光吸収剤として用いるペロブスカイト化合物を除く。)、ケイ素の酸化物(例えば、二酸化ケイ素、ゼオライト)、又はカーボンナノチューブ(カーボンナノワイヤ及びカーボンナノロッド等を含む)を用いることができる。
金属のカルコゲニドとしては、特に限定されないが、好ましくは、チタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、アルミニウム又はタンタルの各酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。金属のカルコゲニドの結晶構造として、アナターゼ型、ブルッカイト型又はルチル型が挙げられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物としては、特に限定されないが、遷移金属酸化物等が挙げられる。例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸バリウム、スズ酸バリウム、ジルコン酸鉛、ジルコン酸ストロンチウム、タンタル酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム、鉄酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸バリウムランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸ビスマスが挙げられる。なかでも、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が好ましい。
カーボンナノチューブは、炭素膜(グラフェンシート)を筒状に丸めた形状を有する。カーボンナノチューブは、1枚のグラフェンシートが円筒状に巻かれた単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、2枚のグラフェンシートが同心円状に巻かれた2層カーボンナノチューブ(DWCNT)、複数のグラフェンシートが同心円状に巻かれた多層カーボンナノチューブ(MWCNT)に分類される。多孔質層12としては、いずれのカーボンナノチューブも特に限定されず、用いることができる。
多孔質層12を形成する材料は、なかでも、チタン、スズ、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウムもしくはケイ素の酸化物、又はカーボンナノチューブが好ましく、酸化チタン又は酸化アルミニウムがさらに好ましい。
多孔質層12は、上述の、金属のカルコゲニド、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、ケイ素の酸化物及びカーボンナノチューブのうち少なくとも1種で形成されていればよく、複数種で形成されていてもよい。
多孔質層12の膜厚は、特に限定されないが、通常0.05〜100μmの範囲であり、好ましくは0.1〜100μmの範囲である。太陽電池として用いる場合は、0.1〜50μmが好ましく、0.2〜30μmがより好ましい。
− 電子輸送層15−
本発明においては、光電変換素子10Dのように、好ましくは、透明電極11bの表面に電子輸送層15を有している。
電子輸送層15は、感光層13で発生した電子を導電性支持体11へと輸送する機能を有する。電子輸送層15は、この機能を発揮することができる電子輸送材料で形成される。電子輸送材料としては、特に限定されないが、有機材料(有機電子輸送材料)が好ましい。有機電子輸送材料としては、[6,6]−Phenyl−C61−Butyric Acid Methyl Ester(PC61BM)等のフラーレン化合物、ペリレンテトラカルボキシジイミド(PTCDI)等のペリレン化合物、その他、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)等の低分子化合物、又は、高分子化合物等が挙げられる。
電子輸送層15の膜厚は、特に限定されないが、0.001〜10μmが好ましく、0.01〜1μmがより好ましい。
− 正孔輸送層16−
本発明においては、光電変換素子10Eのように、好ましくは、透明電極11bの表面に正孔輸送層16を有している。
正孔輸送層16は、形成される位置が異なること以外は、後述する正孔輸送層3と同じである。
− 感光層(光吸収層)13 −
感光層13は、好ましくは、多孔質層12(光電変換素子10A、10B及び10F)、ブロッキング層14(光電変換素子10C)、電子輸送層15(光電変換素子10D)、又は、正孔輸送層16(光電変換素子10E)の各層の表面(感光層13が設けられる表面が凹凸の場合の凹部内表面を含む。)に設けられる。
本発明において、感光層13中には光吸収剤が含まれる。この光吸収剤は、後述する式(I)で表される有機カチオン(以下、有機カチオン(A1)ということがある。)と式(II)で表される有機カチオン(以下、有機カチオン(A2)ということがある。)とをそれぞれ少なくとも1種含有し、さらに金属原子のカチオンとアニオンとを含有する。この光吸収剤は、その少なくとも一部がペロブスカイト型結晶構造とる。
また、感光層は上記光吸収剤以外に、例えば金属錯体色素、有機色素等の光吸収成分を有してもよい。
感光層13は、単層であっても2層以上の積層であってもよい。感光層13が2層以上の積層構造である場合、互いに異なった光吸収剤からなる層を積層してなる積層構造でもよく、また、感光層と感光層の間に正孔輸送材料を含む中間層を有する積層構造でもよい。感光層13が2層以上の積層構造である場合、少なくとも1層に、有機カチオン(A1)と有機カチオン(A2)とをそれぞれ少なくとも1種有するペロブスカイト化合物を有していれば、いずれの層に有していてもよく、すべての層に有していてもよい。
感光層13を導電性支持体11上に有する態様は、上述した通りである。感光層13は、好ましくは、励起した電子が導電性支持体11又は第二電極2に流れるように、上記各層の表面に設けられる。このとき、感光層13は、上記各層の表面全体に設けられていてもよく、その表面の一部に設けられていてもよい。
感光層13の膜厚は、導電性支持体11上に感光層13を有する態様に応じて適宜に設定され、特に限定されない。通常、膜厚は、例えば、0.001〜100μmが好ましく、0.01〜10μmがさらに好ましく、0.01〜5μmが特に好ましい。
多孔質層12を有する場合、多孔質層12の膜厚との合計膜厚は、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましく、0.3μm以上が特に好ましい。また、合計膜厚は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。合計膜厚は、上記値を適宜に組み合わせた範囲とすることができる。ここで、図1のように、感光層13が薄い膜状である場合に、感光層13の膜厚は、多孔質層12の表面に垂直な方向に沿う、多孔質層12との界面と後述する正孔輸送層3との界面との距離をいう。
光電変換素子10において、多孔質層12及び正孔輸送層3を有する場合、多孔質層12と感光層13と正孔輸送層3との合計膜厚は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましく、0.3μm以上が特に好ましい。また、この合計膜厚は、200μm以下が好ましく、50μm以下が好ましく、30μm以下が好ましく、5μm以下が好ましい。合計膜厚は、上記値を適宜に組み合わせた範囲とすることができる。
本発明において、感光層を厚い膜状に設ける場合(感光層13B及び13C)、この感光層に含まれる光吸収剤は正孔輸送材料として機能することもある。
〔光吸収剤〕
本発明の製造方法で得られる光電変換素子において、感光層を構成する光吸収剤は、互いに構造の異なる特定の2種の有機カチオン(A1)及び(A2)と、金属原子のカチオンと、アニオン性原子もしくはアニオン性原子団のアニオンとを有し、光吸収剤の少なくとも一部がペロブスカイト型結晶構造を有している。
従来のペロブスカイト化合物を光吸収剤として用いた光電変換素子においては、光吸収剤が外部又は予め内部に存在する水分によって分解されやすく、特に高湿環境下において、光電変換効率が大きく低下する。これは、感光層と感光層に隣接する層(例えば、正孔輸送層3、電子輸送層4又は第二電極2、以下、単に「隣接層」ともいう。)との界面に欠陥が生じ、この界面欠陥から水が感光層に入り込むこと等によって、ペロブスカイト化合物等の分解が進行することによるものと考えられる。
しかし、本発明においては感光層を構成する光吸収剤中に、親疎水性及び立体的嵩高さが異なる2種の有機カチオン(A1)及び(A2)が併存する。これにより、隣接層の表面状態に適した有機カチオンが隣接層に接することができ、感光層と隣接層との親和性が向上すると推定される。そして、この親和性向上により界面欠陥が生じにくくなり、また生じた欠陥の度合も一定の範囲内に収まるようになり、結果、本発明の光電変換素子は、高湿環境下の使用においても耐湿性のばらつきが低減されて、素子間の品質のばらつきが抑えられるものと推定される。
さらに、本発明の製造方法により、得られる光電変換素子のJscを効果的に高めることができる。その理由は定かではないが次のように推定される。すなわち、本発明の製造方法によれば、感光層中の光吸収剤を構成する2つの有機カチオンが特定の構造を有し、且つ、その分子サイズの差が適度な範囲に収まっており、これと、後述するように、感光層を特定の低湿条件下で形成することによる凝集体形成抑制作用とが相俟って電荷輸送が効率化されるなどして、得られる光電変換素子のJscが効果的に高められるものと考えられる。
本発明において、「高湿」とは、例えば、相対湿度50%以上の環境をいう。
光吸収剤を構成する上記有機カチオン(A1)は下記式(I)で表される。
式(I) R−NR1a
式(I)中、R及びR1aは、後述する式(1)におけるR及びR1aと同義であり、好ましい形態も同じである。つまり、式(I)で表される有機カチオン(A1)は後記式(1)で表される化合物の有機アンモニウム構造に由来する有機カチオンである。
光吸収剤を構成する上記有機カチオン(A2)は下記式(II)で表される。
式(II) R−NR2a
式(II)中、R及びR2aは、後述する式(2)におけるR及びR2aと同義であり、好ましい形態も同じである。つまり、式(II)で表される有機カチオン(A2)は後記式(2)で表される化合物の有機アンモニウム構造に由来する有機カチオンである。
本発明の製造方法で得られる光電変換素子において、光吸収剤の少なくとも一部を構成するペロブスカイト化合物は、例えば下記式(i)で表される。
式(i) A
式中、Aはカチオン性有機基を示す。Mは金属原子を示す。Xはアニオン性原子又はアニオン性原子団を示す。
aは1又は2を表し、mは1を表し、a、m及びxはa+2m=xを満たす。
式(i)において、カチオン性有機基Aは、ペロブスカイト型結晶構造中において有機カチオンとして存在する。すなわちカチオン性有機基Aは、上記有機カチオン(A1)となるカチオン性有機基1種以上と、上記有機カチオン(A2)となるカチオン性有機基1種以上とを含む。
金属原子Mは、ペロブスカイト型結晶構造中において金属カチオンとして存在する金属原子である。金属原子Mは、本発明の製造方法において感光層の原料として用いる、後述する式(3)中の金属原子Mに由来するものである。
アニオン性原子又はアニオン性原子団Xは、ペロブスカイト型結晶構造中においてアニオンとして存在する。アニオン性原子又はアニオン性原子団Xは、本発明の製造方法において感光層の原料として用いる、後述する式(1)〜(3)におけるX〜Xに由来するものである。
式(i)で表されるペロブスカイト化合物は、aが1である場合、下記式(i−1)で表されるペロブスカイト化合物であり、aが2である場合、下記式(i−2)で表されるペロブスカイト化合物である。
式(i−1) AMX
式(i−2) AMX
上記ペロブスカイト化合物の結晶構造中にはさらに、周期表第一族元素のカチオン、有機カチオン(A1)及び(A2)以外の有機カチオンが含まれていてもよい。
上記周期表第一族元素のカチオンとしては、特に限定されず、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)又はセシウム(Cs)の各元素のカチオン(Li、Na、K、Cs)が挙げられ、特にセシウムのカチオン(Cs)が好ましい。
有機カチオン(A1)及び有機カチオン(A2)以外の有機カチオンは、ペロブスカイト結晶構造中においてカチオンとして存在できれば特に制限されない。
本発明の製造方法で得られる光電変換素子において、感光層を構成する光吸収剤中のカチオンの総モル量に占める、有機カチオン(A1)、有機カチオン(A2)、及び、金属原子Mのカチオンの合計モル量の割合が、90〜100モル%であることが好ましく、95〜100モル%であることがより好ましい。
また、本発明の製造方法で得られる光電変換素子において、感光層を構成する光吸収剤中のアニオンの総モル量に占める、ハロゲン原子のアニオンの合計モル量の割合が、90〜100モル%であることが好ましく、95〜100モル%であることがより好ましく、98〜100モル%であることがさらに好ましい。
ペロブスカイト化合物は、一般に、下記式(ii)で表される化合物と下記式(iii)で表される化合物とから合成することができる。
式(ii) AX
式(iii) MX
式(ii)及び(iii)中、A、M及びXは、それぞれ式(i)のA、M及びXと同義である。
ペロブスカイト化合物の合成方法については、例えば上記非特許文献1〜3が挙げられる。また、Akihiro Kojima, Kenjiro Teshima, Yasuo Shirai, and Tsutomu Miyasaka, “Organometal Halide Perovskites as Visible−Light Sensitizers for Photovoltaic Cells”, J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051も挙げられる。
光吸収剤の使用量は、第一電極1の表面の少なくとも一部を覆う量であればよく、表面全体を覆う量が好ましい。
感光層13中、光吸収剤の含有量は、通常は1〜100質量%である。
<正孔輸送層3>
本発明の光電変換素子は、光電変換素子10A〜10Dのように、第一電極1と第二電極2との間に正孔輸送層3を有することが好ましい態様の1つである。この態様において、正孔輸送層3は感光層3Cと接触(積層)していることが好ましい。正孔輸送層3は、好ましくは第一電極1の感光層13と第二電極2の間に設けられる。
正孔輸送層3は、光吸収剤の酸化体に電子を補充する機能を有し、好ましくは固体状の層(固体正孔輸送層)である。
正孔輸送層3を形成する正孔輸送材料は、液体材料でも固体材料でもよく、特に限定されない。例えば、CuI、CuNCS等の無機材料、及び、例えば特開2001−291534号公報の段落番号0209〜0212に記載の有機正孔輸送材料等が挙げられる。有機正孔輸送材料としては、好ましくは、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール及びポリシラン等の導電性高分子、2個の環がC、Siなど四面体構造をとる中心原子を共有するスピロ化合物、トリアリールアミン等の芳香族アミン化合物、トリフェニレン化合物、含窒素複素環化合物又は液晶性シアノ化合物が挙げられる。
正孔輸送材料は、溶液塗布可能で固体状になる有機正孔輸送材料が好ましく、具体的には、2,2’,7,7’−テトラキス−(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン(spiro−MeOTADともいう)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)、4−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒド ジフェニルヒドラゾン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等が挙げられる。
正孔輸送層3の膜厚は、特に限定されないが、50μm以下が好ましく、1nm〜10μmがより好ましく、5nm〜5μmがさらに好ましく、10nm〜1μmが特に好ましい。なお、正孔輸送層3の膜厚は、第二電極2と感光層13の表面との平均距離に相当し、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて光電変換素子の断面を観察することにより、測定できる。
<電子輸送層4>
本発明の光電変換素子は、光電変換素子10Eのように、第一電極1と第二電極2との間に電子輸送層4を有することも好ましい態様の1つである。この態様において、電子輸送層4は感光層3Cと接触(積層)していることが好ましい。
電子輸送層4は、電子の輸送先が第二電極である点、及び、形成される位置が異なること以外は、上記電子輸送層15と同じである。
<第二電極2>
第二電極2は、太陽電池において正極として機能する。第二電極2は、導電性を有していれば特に限定されず、通常、導電性支持体11と同じ構成とすることができる。強度が十分に保たれる場合は、支持体11aは必ずしも必要ではない。
第二電極2の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。感光層13に光が到達するためには、導電性支持体11と第二電極2との少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の太陽電池においては、導電性支持体11が透明であって太陽光等を支持体11a側から入射させるのが好ましい。この場合、第二電極2は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。
第二電極2を形成する材料としては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、インジウム(In)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスニウム(Os)、アルミニウム(Al)等の金属、上述の導電性の金属酸化物、炭素材料及び伝導性高分子等が挙げられる。炭素材料としては、炭素原子同士が結合してなる、導電性を有する材料であればよく、例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン等が挙げられる。
第二電極2としては、金属もしくは導電性の金属酸化物の薄膜(蒸着してなる薄膜を含む)、又は、この薄膜を有するガラス基板もしくはプラスチック基板が好ましい。ガラス基板もしくはプラスチック基板としては、金もしくは白金の薄膜を有するガラス、又は、白金を蒸着したガラスが好ましい。
第二電極2の膜厚は、特に限定されず、0.01〜100μmが好ましく、0.01〜10μmがさらに好ましく、0.01〜1μmが特に好ましい。
<その他の構成>
本発明においては、第一電極1と第二電極2との接触を防ぐために、ブロッキング層14に代えて、又は、ブロッキング層14等とともに、スペーサーやセパレータを用いることもできる。
また、第二電極2と正孔輸送層3の間に正孔ブロッキング層を設けてもよい。
[光電変換素子の製造方法]
本発明の光電変換素子は、感光層の形成以外は、公知の製造方法、例えば非特許文献1〜3、J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051、Science,338,p.643(2012)等に記載の方法によって製造できる。
以下に、本発明の光電変換素子及び太陽電池の製造方法を説明する。
本発明の製造方法においては、まず、導電性支持体11の表面に、所望によりブロッキング層14、多孔質層12、電子輸送層15及び正孔輸送層16の少なくとも一つを形成する。
ブロッキング層14は、例えば、上記絶縁性物質又はその前駆体化合物等を含有する分散物を導電性支持体11の表面に塗布し、焼成する方法又はスプレー熱分解法等によって、形成できる。
多孔質層12を形成する材料は、好ましくは微粒子として用いられ、さらに好ましくは微粒子を含有する分散物として用いられる。
多孔質層12を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、湿式法、乾式法、その他の方法(例えば、Chemical Review,第110巻,6595頁(2010年刊)に記載の方法)が挙げられる。これらの方法において、導電性支持体11の表面又はブロッキング層14の表面に分散物(ペースト)を塗布した後に、100〜800℃の温度で10分〜10時間、例えば空気中で焼成することが好ましい。これにより、微粒子同士を密着させることができる。
焼成を複数回行う場合、最後の焼成以外の焼成の温度(最後以外の焼成温度)を、最後の焼成の温度(最後の焼成温度)よりも低い温度で行うのがよい。例えば、酸化チタンペーストを用いる場合、最後以外の焼成温度を50〜300℃の範囲内に設定することができる。また、最後の焼成温度を、100〜600℃の範囲内において、最後以外の焼成温度よりも高くなるように、設定することができる。支持体11aとしてガラス支持体を用いる場合、焼成温度は60〜500℃が好ましい。
多孔質層12を形成するときの、多孔質材料の塗布量は、多孔質層12の膜厚及び塗布回数等に応じて適宜に設定され、特に限定されない。導電性支持体11の表面積1m当たりの、多孔質材料の塗布量は、例えば、0.5〜500gが好ましく、さらには5〜100gが好ましい。
電子輸送層15又は正孔輸送層16を設ける場合、それぞれ、後述する正孔輸送層3又は電子輸送層4と同様にして、形成することができる。
次いで、感光層13を設ける。本発明において、感光層13の形成工程は、下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物とを含有する層(以下、「層Ly」ともいう。)を、相対湿度2.0%以下の雰囲気中で形成することを含む。下記式(1)〜(3)の各式で表される化合物は感光層中にペロブスカイト化合物を形成する原料となる。感光層13の形成工程において形成する層Lyは、下記式(1)〜(3)の各式で表される化合物以外の成分を含んでもよい。かかる成分は本発明の効果を阻害しない範囲で使用できる。例えば、周期表第一族元素のハロゲン化物、増感色素等が挙げられる。
式(1) R−NR1a
式(2) R−NR2a
式(3) MX
式(1)において、Rは下記式(1a)で表される基又はアリール基を示す。
Figure 2017216270
式(1a)中、R1bはメチル基、水酸基又はシリル基を示し、メチル基又はシリル基であることが好ましい。R1cは水素原子又はメチル基を示す。nは0〜2の整数であり、nは1〜3の整数である。
但し、R1bがメチル基でnが0の場合、nは2又は3である。つまり、R1bがメチル基でnが0の場合、nは必ず2又は3となるが、R1bがメチル基でnが2又は3である場合において、nは必ずしも0である必要はなく、nが1又は2であってもよい。
また、R1bがメチル基でnが1の場合、nは1又は2である。つまり、R1bがメチル基でnが1の場合、nは必ず1又は2となるが、R1bがメチル基でnが1又は2である場合において、nは必ずしも1である必要はなく、nが2又は3であってもよい。
*は式(1)中の「NR1a 」の窒素原子との連結部位を示す。
として採り得るアリール基は、炭素数が6〜14であることが好ましい。このアリール基の好ましい具体例としては、例えば、フェニル及びナフチルが挙げられ、フェニルがさらに好ましい。
1aは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基又は脂肪族ヘテロ環基を示す。
1aとして採り得るアルキル基は、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基を含む。このアルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜18がより好ましく、1〜12がさらに好ましく、2〜6が特に好ましい。このアルキル基の好ましい具体例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、オクタデシルが挙げられる。
1aとして採り得るシクロアルキル基は、その炭素数が3〜8が好ましい。このシクロアルキル基の好ましい具体例としては、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
1aとして採り得るアルケニル基は、直鎖アルケニル基及び分岐アルケニル基を含む。このアルケニル基の炭素数は好ましくは2〜18、より好ましくは2〜7、さらに好ましくは2〜5である。このアルケニル基の好ましい具体例として、例えば、ビニル、アリル、ブテニル及びヘキセニルが挙げられる。
1aとして採り得るアルキニル基は、直鎖アルキニル基及び分岐アルキニル基を含む。このアルキニル基の炭素数は好ましくは2〜18、より好ましくは2〜7、さらに好ましくは2〜5である。このアルキニル基の好ましい具体例としては、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ヘキシニル及びオクチニルが挙げられる。
1aとして採り得るアリール基は、その炭素数が6〜14であることが好ましい。このアリール基の好ましい具体例としては、例えば、フェニル及びナフチルが挙げられ、フェニルがさらに好ましい。
1aとして採り得るヘテロアリール基は、芳香族ヘテロ環のみからなる単環の基と、芳香族ヘテロ環に他の環(例えば、芳香族環、脂肪族環やヘテロ環)が縮合した縮合ヘテロ環からなる基とを包含する。
芳香族ヘテロ環を構成する環構成ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。また、芳香族ヘテロ環の環員数としては、3〜8員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましい。
5員環の芳香族ヘテロ環及び5員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、フラン環、チオフェン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インドリン環又はインダゾール環が挙げられる。また、6員環の芳香族ヘテロ環及び6員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環又はキナゾリン環が挙げられる。
1aとして採り得る脂肪族ヘテロ環基は、脂肪族ヘテロ環のみからなる単環の基と、脂肪族ヘテロ環に他の環(例えば、脂肪族環)が縮合した脂肪族縮合ヘテロ環からなる基とを包含する。脂肪族ヘテロ環を構成する環構成ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。また、脂肪族ヘテロ環の環員数としては、3〜8員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましい。脂肪族ヘテロ環の炭素数は0〜24であることが好ましく、1〜18であることがより好ましい。
脂肪族ヘテロ環の好ましい具体例としては、ピロリジン環、オキソラン環、チオラン環、ピペリジン環、テトラヒドロフラン環、オキサン環、チアン環、ピペラジン環、モルホリン環、キヌクリジン環、ピロリジン環、アゼチジン環、オキセタン環、アジリジン環、ジオキサン環、ペンタメチレンスルフィド環、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。
窒素原子に連結し、隣接して存在する2つのR1aは互いに連結して環を形成してもよい。この場合、形成される環は、環構成原子としてヘテロ原子を有してもよい。
1aは、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
はアニオン性原子又はアニオン性原子団を示す。Xがアニオン性原子である場合、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子)が好ましい。Xがアニオン性原子団の場合、NCS、NCO、OH、NO、CHCOO又はHCOOが好ましい。Xがハロゲン原子、NCS、NCO、OH、NO、CHCOO又はHCOOである場合、このXは光吸収剤中において1価のマイナスイオンとして存在する。
上記式(1)で表される化合物は、下記式(1b)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2017216270
式(1b)中、R1a、R1b、R1c及びXは、それぞれ上記式(1)ないし式(1a)におけるR1a、R1b、R1c及びXと同義であり、好ましい形態も同じである。
1dはメチル基又はエチル基を示す。
1eは水素原子、メチル基又はエチル基を示し、メチル基又はエチル基が好ましい。
1aは0〜2の整数である。但し、R1bがメチル基の場合、n1aは0又は1である。
上記式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記式中Xはハロゲン原子を示す。
Figure 2017216270
式(2)中、Rは、メチル基、エチル基又は下記式(2a)で表すことができる基を示す。
Figure 2017216270
式(2a)で表すことができる基において、XはNR2c、酸素原子又は硫黄原子を示し、NR2cが好ましい。ここで、R2cは、水素原子又は置換基を表す。R2cとして採り得る置換基としては、特に限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基又は脂肪族へテロ環基が好ましい。R2cは水素原子であることが好ましい。
2bは、水素原子又は置換基を表し、水素原子が好ましい。R2bとして採り得る置換基としては、特に限定されないが、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基又は脂肪族へテロ環基が挙げられる。
2b及びR2cが採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基及び脂肪族へテロ環基は、それぞれ、上記式(1)におけるR1aとして採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基及び脂肪族へテロ環基それぞれと同義であり、好ましい範囲も同じである。
式(2a)で表すことができる基としては、例えば、(チオ)アシル基、(チオ)カルバモイル基、イミドイル基又はアミジノ基が挙げられる。
(チオ)アシル基は、アシル基及びチオアシル基を包含する。アシル基は、総炭素数が1〜7のアシル基が好ましく、例えば、ホルミル、アセチル(CHC(=O)−)、プロピオニル、ヘキサノイル等が挙げられる。チオアシル基は、総炭素数が1〜7のチオアシル基が好ましく、例えば、チオホルミル、チオアセチル(CHC(=S)−)、チオプロピオニル等が挙げられる。
(チオ)カルバモイル基は、カルバモイル基(HNC(=O)−)及びチオカルバモイル基(HNC(=S)−)を包含する。
イミドイル基は、R2b−C(=NR2c)−で表される基であり、R2b及びR2cはそれぞれ水素原子又はアルキル基が好ましく、アルキル基は上記Rのアルキル基と同義であるのがより好ましい。このイミドイル基として例えば、ホルムイミドイル(HC(=NH)−)、アセトイミドイル(CHC(=NH)−)、プロピオンイミドイル(CHCHC(=NH)−)等が挙げられる。なかでも、ホルムイミドイルが好ましい。
式(2a)で表すことができる基としてのアミジノ基は、上記イミドイル基のR2bがアミノ基でR2cが水素原子である構造(−C(=NH)NH)を有する。
***は式(2)中の窒素原子との結合部位を表す。
式(2)中、R2aは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基又は脂肪族ヘテロ環基を表す。
2aとして採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基及び脂肪族ヘテロ環基は、それぞれ、上記R1aとして採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基及び脂肪族ヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同じである。窒素原子に連結し、隣接して存在する2つのR2aは互いに連結して環を形成してもよい。この場合、形成される環は、環構成原子としてヘテロ原子を有してもよい。
2aは、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
式(2)において、3個のR2aがいずれも水素原子である場合、式(2)で表される化合物は、上記式(2)中のRとNHとが結合して有機アンモニウムカチオンを有する構造となる。この有機アンモニウムカチオンが共鳴構造を採り得る場合、この有機アンモニウムカチオンに加えて共鳴構造のカチオンを含む。例えば、上記式(2a)で表すことができる基においてXがNH(R2cが水素原子)である場合、式(2)のR−NR2a で表される部分の構造は、有機アンモニウムカチオン構造に加えて、この有機アンモニウムカチオンの共鳴構造の1つである有機アミジニウムカチオンの構造も採り得る。この有機アミジニウムカチオンとしては、下記式(Aam)で表されるカチオンが挙げられる。本明細書において、下記式(Aam)で表されるカチオンを便宜上、「R2bC(=NH)−NH 」と表記することがある。
Figure 2017216270
式(2)中のXは、上記式(1)におけるXと同義であり、好ましい形態も同じである。
式(3)中、Mは金属原子を示す。金属原子Mは、周期表第一族元素以外の金属原子であることが好ましい。金属原子Mとしては、例えば、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、カドミウム(Cd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、イッテルビウム(Yb)、ユウロピウム(Eu)、インジウム(In)、チタン(Ti)、ビスマス(Bi)、タリウム(Tl)等の金属原子が挙げられる。なかでも、Pb、Cu、Ge又はSnが特に好ましい。
は式(1)におけるXと同義であり、好ましい形態も同じである。式(1)〜(3)において、X、X及びXは、互いに同一でも異なっていてもよく、互いに同一であることが好ましい。
層Lyは、例えば、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物とを含有する組成物(以下、この組成物を「光吸収剤前駆組成物」ともいう。この光吸収剤前駆組成物は好ましくは溶液、懸濁液、ペースト等の形態である。)を調製し、この光吸収剤前駆組成物を用いて形成することができる。この光吸収剤前駆組成物は、式(1)〜(3)の各式で表される化合物を溶媒中に混合し、加熱することにより調製することが好ましい。加熱する条件は特に限定されない。例えば、加熱温度は30〜200℃が好ましく、50〜150℃がさらに好ましい。加熱時間は0.5〜100時間が好ましく、1〜3時間がさらに好ましい。溶媒又は分散媒は後述するものを用いることができる。
層Lyは、式(1)及び(2)の各式で表される化合物を含む組成物(以下、この組成物を「有機アンモニウム塩組成物」ともいう。この有機アンモニウム塩組成物は好ましくは溶液、懸濁液、ペースト等の形態である。)と、式(3)で表される化合物を含む組成物(以下、この組成物を「金属塩組成物」ともいう。この金属塩組成物は好ましくは溶液、懸濁液、ペースト等の形態である。)を別々に調製し、これらの有機アンモニウム塩組成物と金属塩組成物のそれぞれを用いて順次成膜して形成することも好ましい。各組成物の調製は、各成分を溶媒中に混合し、加熱することにより調製することが好ましい。加熱条件は上述した光吸収剤前駆組成物の調製における好ましい加熱条件とすることができる。
層Lyの形成に用いる上記各組成物は溶液であることが好ましい。これらの組成物が溶液である場合、用いる媒体としては有機溶媒が好ましい。有機溶媒については後述する。
層Lyの形成に用いる上記組成物はいずれも、上述した化合物に加えて、他の成分を含んでもよい。他の成分は、本発明の効果を奏する範囲で含ませることができ、例えば、周期表第一族元素のハロゲン化物等が挙げられる。
層Lyの形成に用いる上記組成物はいずれも、ペロブスカイト化合物の形成において、原料となる上述した式(ii)の化合物AX及び/又は式(iii)の化合物MXを提供する。これらの組成物が紛体、粒状等である場合、組成物を溶媒に溶解して適切な濃度の溶液を調製し、必要により、ろ過、精製等を実施した後に、用いることができる。また、組成物が溶液である場合には、そのまま、又は濃縮、希釈、ろ過、精製等した後に、用いることができる。
上記の層Lyを形成するための上記各組成物は、成分の凝集をより効果的に防ぐ観点から、その含水率が、1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。上記組成物の含水率の下限に特に制限はなく、通常は0.0001質量%以上となる。
含水率は、カールフィッシャーッシャー法により測定することができる。
本発明の製造方法において、層Lyを形成する際、形成される層Ly中における、式(1)で表される化合物の含有量a1と、式(2)で表される化合物の含有量a2のモル比を、下記式(r1−1)を満たすようにすることが好ましく、下記式(r1−2)を満たすようにすることがより好ましく、下記式(r1−3)を満たすようにすることが特に好ましい。
式(r1−1) 0.001≦a2/a1≦999
式(r1−2) 4≦a2/a1≦499
式(r1−3) 19≦a2/a1≦199
また、層Lyを形成する際、形成される層Ly中における、式(1)で表される化合物の含有量a1と、式(2)で表される化合物の含有量a2と、上記式(3)で表される化合物の含有量cのモル比は、ペロブスカイト化合物が形成できる範囲で、適宜に設定される。通常は、層Ly中の含有量cに対して、この層Ly中の、含有量a1と含有量a2との合計が、過剰となるように設定される。層Ly中における上記含有量a1とa2とcとは、下記式(r2−1)を満たすことが好ましく、下記式(r2−2)を満たすことがより好ましい。
式(r2−1) 1≦(a1+a2)/c≦10
式(r2−2) 1≦(a1+a2)/c≦5
上記各組成物中において、各成分の濃度は特に限定されず、本発明の効果を奏する範囲で適宜に調整することができる。例えば、組成物中の固形分濃度を、0.1〜99質量%とすることが好ましく、1〜70質量%とすることがより好ましい。
上記光吸収剤前駆組成物を用いて層Lyを設ける方法は、光吸収剤前駆組成物を用いて、相対湿度2.0%以下の雰囲気中で層Lyを形成すること以外は特に制限されない。例えば、湿式法及び乾式法が挙げられ、なかでも湿式法が好ましい。例えば、表面に感光層13を形成する層(光電変換素子10においては、多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15又は正孔輸送層16のいずれかの層)における上記表面に、上記光吸収剤前駆組成物の層を、相対湿度2.0%以下の雰囲気中で形成する方法を含むことが好ましい。
相対湿度2.0%以下という低湿度条件下で層Lyを形成することにより、上述したように、得られる光電変換素子のJscを効果的に高めることができ、優れた光電変換効率を実現することができる。上記光吸収剤前駆組成物による層Lyの形成は、相対湿度1.5%以下の雰囲気中で行うことが好ましく、より好ましくは相対湿度1.0%以下、さらに好ましくは相対湿度0.5%以下の雰囲気中で行う。一方、層Ly形成時の相対湿度が低すぎるとJscは逆に低下する傾向がある。つまり、層Ly形成時の雰囲気中の湿度とJscとの関係は、単純な反比例の関係にはない。この観点から、上記光吸収剤前駆組成物による層Lyの形成は、相対湿度0.02%以上の雰囲気中で行うことが好ましく、より好ましくは相対湿度0.05%以上、さらに好ましくは相対湿度0.08%以上の雰囲気中で行う。
かかる低湿度条件下における感光層の形成は、例えば、乾燥した窒素等の不活性ガスで満たされたグローブボックスの中で成膜することにより実現することができる。
上記光吸収剤前駆組成物による層Lyの形成方法は、具体的には、光吸収剤前駆組成物を上記表面に塗布したり、上記表面を上記光吸収剤前駆組成物に浸漬したりする方法を採用することができる。組成物により層Lyを形成する際の温度は5〜100℃であることが好ましく、浸漬時間は5秒〜24時間であるのが好ましく、20秒〜1時間がより好ましい。組成物の塗布により形成した層Lyは、通常は乾燥させて溶媒を揮発させて感光層とする。乾燥は熱による乾燥が好ましく、通常は、20〜300℃、好ましくは50〜170℃に加熱することで乾燥させる。乾燥時の相対湿度も、2.0%以下で実施することが好ましく、相対湿度1.5%以下の雰囲気中で行うことがより好ましく、さらに好ましくは相対湿度1.0%以下、さらに好ましくは相対湿度0.5%以下の雰囲気中で行う。
また、上記ペロブスカイト化合物の合成方法に準じてペロブスカイト化合物を形成させ、感光層を形成することもできる。
また、上記有機アンモニウム塩組成物と、金属塩組成物とを別々に調製し、調製した各組成物を用いて順次層を形成することにより層Lyを形成することもできる。すなわち、相対湿度2.0%以下の雰囲気中で、アンモニウム塩組成物と、金属塩組成物とを、別々に塗布(浸漬法を含む)し、必要により乾燥する方法が好ましく挙げられる。この方法では、いずれの組成物を先に表面に塗布してもよいが、好ましくは金属塩組成物を先に上記表面に塗布する。この方法における塗布条件及び乾燥条件は、上述した、光吸収剤前駆組成物を上記表面に塗布し、乾燥する際の条件と同じである。
本発明において、感光層の形成工程のすべてを、相対湿度2.0%以下の雰囲気中で行うことが好ましい。
これらの方法等により、多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15又は正孔輸送層16の表面に感光層13(ペロブスカイト化合物を含む光吸収剤の層)が形成される。
このようにして設けられた感光層13上に、好ましくは、正孔輸送層3又は電子輸送層4を形成する。
正孔輸送層3は、正孔輸送材料を含有する正孔輸送材料溶液を塗布し、乾燥して、形成することができる。正孔輸送材料溶液は、塗布性に優れる点、及び多孔質層12を有する場合は多孔質層12の孔内部まで侵入しやすい点で、正孔輸送材料の濃度が0.1〜1.0M(モル/L)であるのが好ましい。
電子輸送層4は、電子輸送材料を含有する電子輸送材料溶液を塗布し、乾燥して、形成することができる。
正孔輸送層3又は電子輸送層4を形成した後に、第二電極2を形成して、光電変換素子及び太陽電池が製造される。
各層の膜厚は、各分散液又は溶液の濃度、塗布回数を適宜に変更して、調整できる。例えば、膜厚が厚い感光層13B及び13Cを設ける場合には、光吸収剤組成物、又は、アンモニウム塩組成物もしくは金属塩組成物を複数回塗布、乾燥すればよい。
上述の各分散液及び溶液は、それぞれ、必要に応じて、分散助剤、界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。
光電変換素子の製造方法に使用する溶媒又は分散媒としては、特開2001−291534号公報に記載の溶媒が挙げられるが、特にこれに限定されない。本発明においては、有機溶媒が好ましく、さらに、アルコール溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒、炭化水素溶媒、ラクトン溶媒、ハロゲン溶媒及び、これらの2種以上の混合溶媒が好ましい。混合溶媒としては、アルコール溶媒と、アミド溶媒、ニトリル溶媒又は炭化水素溶媒から選ばれる溶媒との混合溶媒が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、又は、これらの混合溶媒が好ましい。
各層を形成する溶液又は分散剤の塗布方法は、特に限定されず、スピンコート、エクストルージョンダイコート、ブレードコート、バーコート、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、インクジェット印刷法、浸漬法等、公知の塗布方法を用いることができる。なかでも、スピンコート法、スクリーン印刷法等が好ましい。
本発明の光電変換素子は、必要に応じて、アニール、ライトソーキング、酸素雰囲気下での放置等の効率安定化処理を行ってもよい。
上記のようにして作製した光電変換素子は、第一電極1及び第二電極2に外部回路6を接続して、太陽電池として用いることができる。
以下に実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
(実施例1)
以下に示す手順により、図1に示される光電変換素子10Aを製造した。感光層13の膜厚が大きい場合は、図2に示される光電変換素子10Bに対応することになる。
[光電変換素子(試料番号101)の製造]
<導電性支持体11の作製>
ガラス基板(支持体11a、厚さ2.2mm)上にフッ素ドープされたSnO導電膜(透明電極11b、膜厚300nm)を形成し、導電性支持体11を作製した。
<ブロッキング層用溶液の調製>
チタニウム ジイソプロポキシド ビス(アセチルアセトナート)の15質量%イソプロパノール溶液(アルドリッチ社製)を1−ブタノールで希釈して、0.02Mのブロッキング層用溶液を調製した。
<ブロッキング層14の形成>
調製した0.02Mのブロッキング層用溶液を用いてスプレー熱分解法により、450℃にて、導電性支持体11のSnO導電膜上に酸化チタンからなるブロッキング層14(膜厚100nm)を形成した。
<酸化チタンペーストの調製>
酸化チタン(アナターゼ、平均粒径20nm)のエタノール分散液に、エチルセルロース、ラウリン酸及びテルピネオールを加えて、酸化チタンペーストを調製した。
<多孔質層12の形成>
調製した酸化チタンペーストをブロッキング層14の上にスクリーン印刷法で塗布し、焼成した。この酸化チタンペーストの塗布及び焼成をそれぞれ2回行った。焼成温度は、1回目の焼成を130℃で行い、2回目の焼成を500℃で1時間行った。得られた酸化チタンの焼成体を、40mMのTiCl水溶液に浸した後、60℃で1時間加熱し、続けて500℃で30分間加熱して、TiOからなる多孔質層12(膜厚250nm)を形成した。
<感光層13Aの形成>
メチルアミンの40%メタノール溶液(27.86mL)と、57質量%のヨウ化水素の水溶液(ヨウ化水素酸、30mL)を、フラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮して、CHNHIの粗体を得た。得られたCHNHIの粗体をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルで再結晶した。析出した結晶をろ取し、60℃で24時間減圧乾燥して、精製CHNHI(式(2)で表される化合物であって、有機カチオン(A2)を生じる化合物。)を得た。
下記化合物(1a)の10%エタノール溶液(100g)と57質量%のヨウ化水素の水溶液(38g)を、フラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮により溶媒を除去し、さらに60℃で24時間減圧乾燥して、下記化合物(h1a)(式(1)で表される化合物であって、有機カチオン(A1)を生じる化合物。)を得た。
次いで、精製CHNHIと化合物(h1a)とPbI(ハロゲン化金属)を、混合モル比を下記の通りとして、DMF中、60℃で12時間攪拌して混合した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、固形分40質量%の光吸収剤前駆組成物(溶液−1、含水率0.1質量%)を調製した。
精製CHNHI/化合物(h1a)=99
[精製CHNHI+化合物(h1a)]/PbI=1.01
精製CHNHI:化合物(h1a):PbI=99:1:99.5
調製した溶液−1を、スピンコート法(2000rpmで60秒)により多孔質層12の上に塗布して塗布層(層Ly)を形成した(塗布温度:60℃、塗布時における塗布雰囲気中の相対湿度:1.0%)、層Lyをホットプレートにより100℃で90分間乾燥して(乾燥時の相対湿度:1.0%)、ペロブスカイト化合物を有する感光層13A(膜厚300nm(多孔質層12の膜厚250nmを含む))を形成した。
このようにして、第一電極1を作製した。
<正孔輸送材料溶液の調製>
正孔輸送材料としてのspiro−MeOTAD(180mg)をクロロベンゼン(1mL)に溶解した。このクロロベンゼン溶液に、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(170mg)をアセトニトリル(1mL)に溶解させたアセトニトリル溶液(37.5μL)と、t−ブチルピリジン(TBP、17.5μL)とを加えて混合し、正孔輸送材料溶液を調製した。
<正孔輸送層3の形成>
次いで、正孔輸送材料溶液を、スピンコート法により、第一電極1の感光層13上に塗布し、塗布した正孔輸送材料溶液を乾燥して、正孔輸送層3(膜厚0.1μm)を形成した。
<第二電極2の作製>
蒸着法により金(膜厚0.1μm)を正孔輸送層3上に蒸着して、第二電極2を作製した。
このようにして、試料番号101の光電変換素子10を製造した。
各膜厚は、上記方法に従って、SEMにより観察して、測定した。
[光電変換素子(試料番号102〜116、c201〜c205)の製造]
上述した試料番号101の光電変換素子の製造において、感光層の形成に用いる有機アンモニウム塩の種類を下記表1に示す組合せとし、また、光吸収剤前駆組成物をスピンコートにより塗布して層Lyを形成する雰囲気中の相対湿度を下記表1に示す通りとした以外は、試料番号101の光電変換素子の製造と同様にして、試料番号102〜116、c201〜c205の光電変換素子10を製造した。なお、試料番号c203以外は、精製CHNHI(表1の「有機アンモニウム塩の組合せ」における右側のカラム)と、他の有機基アンモニウム塩((表1の「有機アンモニウム塩の組合せ」における左側のカラム)と、PbIの各使用量のモル比は、試料番号101の光電変換素子の製造におけるモル比と同じとした。また、試料番号c203については、精製CHNHIとPbIの使用量のモル比を、精製CHNHI:PbI=1:1とした。
Figure 2017216270
[光電変換効率の測定と耐湿性]
<初期光電変換効率の測定>
初期光電変換効率を以下のようにして評価した。
各試料番号の光電変換素子を7検体ずつ製造した。7検体それぞれについて、電池特性試験を行って、初期(製造後)の光電変換効率(η/%)を測定した。
電池特性試験は、ソーラーシミュレーター「WXS−85H」(WACOM社製)を用いて、AM1.5フィルタを通したキセノンランプから1000W/mの擬似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、光電変換効率(η/%)を求めた。
試料番号101〜116(実施例)の光電変換素子における初期光電変換効率(η/%)は、光電変換素子ないし太陽電池として十分に機能するレベルにあった。
<高湿下での光電変換効率の測定>
光電変換素子を下記の高湿下に静置したときの光電変換効率(高湿下光電変換効率という)を以下のようにして評価した。
初期光電変換効率を測定した上記7検体の光電変換素子それぞれを、温度45℃、湿度55%RHの高湿環境にある恒温恒湿槽内に24時間保持してから、上記<初期光電変換効率の測定>と同様にして電池特性試験を行い、高湿下光電変換効率(η/%)を測定した。
試料番号101〜116(実施例)の光電変換素子における高湿下光電変換効率(η/%)は、24時間保持後でも初期光電変換効率(η)に対する低下量が小さく、上記高湿環境下で光電変換素子ないし太陽電池として十分に機能するレベルにあった。
<高湿下での耐湿性ばらつきの評価>
各試料番号の光電変換素子において、測定した初期光電変換効率及び高湿下光電変換効率から、光電変換素子の高湿下での耐湿性ばらつきを、以下のようにして評価した。
7検体の光電変換素子それぞれにおいて、光電変換効率の低下率を下記式から算出し、その平均値を平均低下率とした。この光電変換効率の平均低下率を1.0(基準)としたとき、この平均低下率に対する、7検体それぞれの光電変換効率の低下率を、相対値(相対低下率)として算出した。算出した相対低下率と、基準とした平均低下率1.0との差分(相対低下率−1.0)をそれぞれ求め、得られた差分のうち、その絶対値が最も大きな差分が含まれる範囲を、下記評価基準で分級して、高湿下での耐湿性ばらつきを評価した。結果を「耐湿性ばらつき」として下記表1に示す。

低下率(%)=100−{100×[(高湿下光電変換効率η)/(初期光電変換効率η)]}

− 高湿下での耐湿性ばらつきの評価基準 −
相対低下率と基準との差分(相対低下率−1.0)の絶対値のうち最大値が、
A: ±0.18以内の範囲にあったもの
B: ±0.18を超え、±0.21以内の範囲にあったもの
C: ±0.21を超え、±0.24以内の範囲にあったもの
D: ±0.24を超え、±0.28以内の範囲にあったもの
E: ±0.28を超え、±0.32以内の範囲にあったもの
F :±0.32を超える範囲にあったもの
<短絡電流密度(Jsc)の測定>
Jscを以下のようにして評価した。
各試料番号の光電変換素子を7検体ずつ製造した。7検体それぞれについて、電池特性試験を行って、初期(製造後)のJscを測定した。試料番号c203のJscを1として、各試料番号の光電変換素子のJscを、試料番号c203のJscに対する相対値として算出し(Jsc相対値)、下記基準にて評価した。
− Jscの評価基準 −
AA:Jsc相対値が0.95以上
A :Jsc相対値が0.90以上0.95未満
B :Jsc相対値が0.85以上0.90未満
C :Jsc相対値が0.81以上0.85未満
D :Jsc相対値が0.77以上0.81未満
E :Jsc相対値が0.77未満
Figure 2017216270
表1に示される通り、感光層の形成に用いる有機アンモニウム塩が、CHNHIのみの場合、得られる光電変換素子は素子間の耐湿性のばらつきが大きかった。すなわち、得られる光電変換素子は、素子間の品質のばらつきが大なものとなる(試料番号c203)。
また、感光層の形成に用いる有機アンモニウム塩として2種類の有機アンモニウム塩を用いた場合であっても、式(1)で表される構造の有機アンモニウム塩を有しない場合には、やはり素子間の耐湿性のばらつきが大きかった。またこの場合、得られる光電変換素子のJscは低く、このJscは、感光層形成時の相対湿度を低下させても向上しなかった(試料番号c201、c202、c204)。
また、感光層の形成に用いる有機アンモニウム塩として、本発明で規定する2種類の有機アンモニウム塩を用いた場合でも、感光層形成時の相対湿度が本発明で規定するよりも高い場合には、Jscが低く光電変換効率に劣るものとなった(試料番号c205)。
これに対し、本発明の製造方法で製造した光電変換素子は、素子間の耐湿性のばらつきが抑えられており、さらに、Jscも効果的に高められることから、光電変換効率にも優れた素子が得られることがわかる(試料番号101〜116)。
1A〜1F 第一電極
11 導電性支持体
11a 支持体
11b 透明電極
12 多孔質層
13A〜13C 感光層
14 ブロッキング層
2 第二電極
3A、3B、16 正孔輸送層
4、15 電子輸送層
6 外部回路(リード)
10A〜10F 光電変換素子
100A〜100F 太陽電池を利用したシステム
M 電動モーター

Claims (10)

  1. 感光層を導電性支持体上に有する第一電極と、前記第一電極に対向する第二電極とを有する光電変換素子の製造方法であって、
    前記感光層の形成工程が、下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物とを含有する層Lyを、相対湿度2.0%以下の雰囲気中で形成することを含む、光電変換素子の製造方法。
    式(1) R−NR1a
    式(2) R−NR2a
    式(3) MX
    式中、Rは下記式(1a)で表される基又はアリール基を示す。
    Figure 2017216270
    式(1a)中、R1bはメチル基、水酸基又はシリル基を示す。R1cは水素原子又はメチル基を示す。nは0〜2の整数であり、nは1〜3の整数である。
    但し、R1bがメチル基でnが0の場合、nは2又は3であり、R1bがメチル基でnが1の場合、nは1又は2である。
    *は式(1)中のN(R1aとの連結部位を示す。
    はメチル基、エチル基又は下記式(2a)で表すことができる基を示す。
    Figure 2017216270
    はNR2c、酸素原子又は硫黄原子を示す。R2b及びR2cは水素原子又は置換基を示す。
    Mは金属原子を示す。
    1a及びR2aは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基又は脂肪族ヘテロ環基を示す。
    〜Xはアニオン性原子又はアニオン性原子団を示す。
  2. 前記式(1)で表される化合物が下記式(1b)で表される化合物である、請求項1記載の光電変換素子の製造方法。
    Figure 2017216270
    式中、R1a、R1b、R1c及びXは、それぞれ前記式(1)におけるR1a、R1b、R1c及びXと同義である。
    1dはメチル基又はエチル基を示し、R1eは水素原子、メチル基又はエチル基を示す。
    1aは0〜2の整数である。但し、R1bがメチル基の場合、n1aは0又は1である。
  3. 前記R1eがメチル基又はエチル基である、請求項2記載の光電変換素子の製造方法。
  4. 前記R1bがメチル基又はシリル基である、請求項1〜3のいずれか1項記載の光電変換素子の製造方法。
  5. 前記層Lyを相対湿度0.5%以下の雰囲気中で形成する、請求項1〜4のいずれか1項記載の光電変換素子の製造方法。
  6. 前記層Lyを、前記式(1)で表される化合物と、前記式(2)で表される化合物と、前記式(3)で表される化合物とを含有する組成物を用いて形成する、請求項1〜5のいずれか1項記載の光電変換素子の製造方法。
  7. 前記層Lyの形成に用いる前記組成物の含水率が0.1質量%以下である、請求項6記載の光電変換素子の製造方法。
  8. 前記感光層の形成工程が、前記層Lyの乾燥処理を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の光電変換素子の製造方法。
  9. 前記層Lyを相対湿度0.02%以上の雰囲気中で形成する、請求項1〜8のいずれか1項記載の光電変換素子の製造方法。
  10. 前記感光層の形成工程のすべてを、相対湿度2.0%以下の雰囲気中で行う、請求項1〜9のいずれか1項記載の光電変換素子の製造方法。
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