本明細書において、各式の表記は、化合物の化学構造の理解のために、一部を示性式として表記することもある。これに伴い、各式において、部分構造を、(置換)基、イオンまたは原子等と称するが、本明細書において、これらは、(置換)基、イオンまたは原子等のほかに、上記式で表される(置換)基もしくはイオンを構成する原子団、または、元素を意味することがある。
本明細書において、化合物(錯体、色素を含む)の表示については、化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、置換または無置換を明記していない化合物については、目的とする効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有する化合物を含む意味である。このことは、置換基および連結基等(以下、置換基等という)についても同様である。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基等が複数あるとき、または複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接するとき(特に、隣接するとき)には、特段の断りがない限り、それらが互いに連結して環を形成してもよい。また、環、例えば脂肪族環、芳香族環、ヘテロ環はさらに縮環して縮合環を形成していてもよい。
また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
<<光電変換素子>>
本発明の光電変換素子は、光吸収剤を含む感光層を導電性支持体上に有する第一電極と、第一電極に対向する第二電極とを有する。
本発明において、導電性支持体上に感光層を有するとは、導電性支持体の表面に接して感光層を設ける(直接設ける)態様、および、導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を設ける態様を含む意味である。
導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様において、導電性支持体と感光層との間に設けられる他の層としては、太陽電池の電池性能を低下させないものであれば特に限定されない。例えば、多孔質層、ブロッキング層、電子輸送層および正孔輸送層等が挙げられる。
本発明において、導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様としては、例えば、感光層が、多孔質層の表面に薄い膜状(図1A参照)または厚い膜状(図2および図6参照)に設けられる態様、ブロッキング層の表面に薄い膜状または厚い膜状に設けられる態様(図3参照)、電子輸送層の表面に薄い膜状または厚い膜状(図4参照)に設けられる態様、および、正孔輸送層の表面に薄い膜状または厚い膜状(図5参照)に設けられる態様が挙げられる。感光層は、線状または分散状に設けられてもよいが、好ましくは膜状に設けられる。
本発明の光電変換素子において、光吸収剤としてのペロブスカイト化合物は、2種の有機カチオンと、金属原子のカチオンと、アニオン性原子または原子団のアニオンとを有するペロブスカイト型結晶構造を有している。これにより、光電変換素子は、室内でのLED光の照射下においても高い光電変換効率を示す。
本発明の光電変換素子においては、本発明で規定する構成以外の構成は特に限定されず、光電変換素子および太陽電池に関する公知の構成を採用できる。本発明の光電変換素子を構成する各層は、目的に応じて設計され、例えば、単層に形成されても、複層に形成されてもよい。例えば、多孔質層を導電性支持体と感光層との間に設けることもできる(図1A、図2および図6参照)。
以下、本発明の光電変換素子の好ましい態様について説明する。
図1A、図1B、図2〜図6において、同じ符号は同じ構成要素(部材)を意味する。
なお、図1A、図2および図6は、多孔質層12を形成する微粒子の大きさを強調して示している。これらの微粒子は、好ましくは、導電性支持体11に対して水平方向および垂直方向に詰まり(堆積または密着して)、多孔質構造を形成している。
本明細書において、単に光電変換素子10という場合は、特に断らない限り、光電変換素子10A〜10Fを意味する。このことは、システム100、第一電極1についても同様である。また、単に感光層13という場合は、特に断らない限り、感光層13A〜13Cを意味する。同様に、正孔輸送層3という場合は、特に断らない限り、正孔輸送層3Aおよび3Bを意味する。
本発明の光電変換素子の好ましい態様として、例えば、図1Aに示す光電変換素子10Aが挙げられる。図1Aに示されるシステム100Aは、光電変換素子10Aを外部回路6で動作手段M(例えば電動モーター)に仕事をさせる電池用途に応用したシステムである。
この光電変換素子10Aは、第一電極1Aと、第二電極2と、第一電極1Aと第二電極2の間に正孔輸送層3Aとを有している。
第一電極1Aは、支持体11aおよび透明電極11bからなる導電性支持体11と、多孔質層12と、ペロブスカイト型光吸収剤を含む感光層13Aとを有している。図1Aの断面領域bを拡大した図1Bに模式的に示すように、感光層13Aは多孔質層12の表面に設けられている。図1Aでは、透明電極11b上にブロッキング層14が形成され、ブロッキング層14上に多孔質層12が形成されている。このように多孔質層12を有する光電変換素子10Aは、感光層13Aの表面積が大きくなるため、電荷分離および電荷移動効率が向上すると推定される。
図2に示す光電変換素子10Bは、図1Aに示す光電変換素子10Aの感光層13Aを厚く設けた好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Bにおいて、正孔輸送層3Bは薄く設けられている。光電変換素子10Bは、図1Aで示した光電変換素子10Aに対して感光層13Bおよび正孔輸送層3Bの膜厚の点で異なるが、これらの点以外は光電変換素子10Aと同様に構成されている。
図3に示す光電変換素子10Cは、本発明の光電変換素子の別の好ましい態様を模式的に示したものである。光電変換素子10Cは、図2に示す光電変換素子10Bに対して多孔質層12を設けていない点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Bと同様に構成されている。すなわち、光電変換素子10Cにおいて、感光層13Cはブロッキング層14の表面に厚い膜状に形成されている。光電変換素子10Cにおいて、正孔輸送層3Bは正孔輸送層3Aと同様に厚く設けることもできる。
図4に示す光電変換素子10Dは、本発明の光電変換素子のまた別の好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Dは、図3に示す光電変換素子10Cに対してブロッキング層14に代えて電子輸送層15を設けた点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Cと同様に構成されている。第一電極1Dは、導電性支持体11と、導電性支持体11上に順に形成された、電子輸送層15および感光層13Cとを有している。この光電変換素子10Dは、各層を有機材料で形成できる点で、好ましい。これにより、光電変換素子の生産性が向上し、しかも薄型化またはフレキシブル化が可能になる。
図5に示す光電変換素子10Eは、本発明の光電変換素子のさらに別の好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Eを含むシステム100Eは、システム100Aと同様に電池用途に応用したシステムである。
光電変換素子10Eは、第一電極1Eと、第二電極2と、第一電極1Eおよび第二電極2の間に電子輸送層4とを有している。第一電極1Eは、導電性支持体11と、導電性支持体11上に順に形成された、正孔輸送層16および感光層13Cとを有している。この光電変換素子10Eは、光電変換素子10Dと同様に、各層を有機材料で形成できる点で、好ましい。
図6に示す光電変換素子10Fは、本発明の光電変換素子のさらにまた別の好ましい態様を模式的に示したものである。光電変換素子10Fは、図2に示す光電変換素子10Bに対して正孔輸送層3Bを設けていない点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Bと同様に構成されている。
本発明において、光電変換素子10を応用したシステム100は、以下のようにして、太陽電池として、機能する。
すなわち、光電変換素子10において、導電性支持体11を透過して、または第二電極2を透過して感光層13に入射した光は光吸収剤を励起する。励起された光吸収剤はエネルギーの高い電子を有しており、この電子を放出できる。エネルギーの高い電子を放出した光吸収剤は酸化体(カチオン)となる。
光電変換素子10A〜10Dおよび10Fにおいては、光吸収剤から放出された電子は、光吸収剤間を移動して導電性支持体11に到達する。導電性支持体11に到達した電子が外部回路6で仕事をした後、第二電極2を経て(正孔輸送層3がある場合にはさらに正孔輸送層3を経由して)、感光層13に戻る。感光層13に戻った電子により光吸収剤が還元される。
一方、光電変換素子10Eにおいては、光吸収剤から放出された電子は、感光層13Cから電子輸送層4を経て第二電極2に到達し、外部回路6で仕事をした後に導電性支持体11を経て、感光層13に戻る。感光層13に戻った電子により光吸収剤が還元される。
光電変換素子10においては、このような、上記光吸収剤の励起および電子移動のサイクルを繰り返すことにより、システム100が太陽電池として機能する。
光電変換素子10A〜10Dおよび10Fにおいて、感光層13から導電性支持体11への電子の流れ方は、多孔質層12の有無およびその種類等により、異なる。本発明の光電変換素子10においては、光吸収剤間を電子が移動する電子伝導が起こる。したがって、本発明において、多孔質層12を設ける場合、多孔質層12は従来の半導体以外に絶縁体で形成することができる。多孔質層12が半導体で形成される場合、多孔質層12の半導体微粒子内部や半導体微粒子間を電子が移動する電子伝導も起こる。一方、多孔質層12が絶縁体で形成される場合、多孔質層12での電子伝導は起こらない。多孔質層12が絶縁体で形成される場合、絶縁体微粒子に酸化アルミニウム(Al2O3)の微粒子を用いると、比較的高い起電力(Voc)が得られる。
上記他の層としてのブロッキング層14が導体または半導体により形成された場合もブロッキング層14での電子伝導が起こる。
また、電子輸送層15でも電子伝導が起こる。
本発明の光電変換素子および太陽電池は、上記の好ましい態様に限定されず、各態様の構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各態様間で適宜組み合わせることができる。例えば、光電変換素子10Cまたは10Dに対して、光電変換素子10Fのように、正孔輸送層3Bを設けない構成とすることもできる。
本発明において、光電変換素子または太陽電池に用いられる材料および各部材は、光吸収剤を除いて、常法により調製することができる。ペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子または太陽電池については、例えば、非特許文献1〜3を参照することができる。ならびにJ.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051およびScience,338,p.643(2012)を参照することができる。
また、色素増感太陽電池に用いられる材料および各部材についても参考にすることができる。色素増感太陽電池について、例えば、特開2001−291534号公報、米国特許第4,927,721号明細書、米国特許第4,684,537号明細書、米国特許第5,0843,65号明細書、米国特許第5,350,644号明細書、米国特許第5,463,057号明細書、米国特許第5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。
以下、本発明の光電変換素子および太陽電池に用いるのに好適な部材および化合物の好ましい態様について、説明する。
<第一電極1>
第一電極1は、導電性支持体11と感光層13とを有し、光電変換素子10において作用電極として機能する。
第一電極1は、図1A、図2〜図6に示されるように、多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15および正孔輸送層16の少なくとも1つの層を有することが好ましい。
第一電極1は、短絡防止の点で少なくともブロッキング層14を有することが好ましく、光吸収効率の点および短絡防止の点で多孔質層12およびブロッキング層14を有していることがさらに好ましい。
また、第一電極1は、光電変換素子の生産性の向上、薄型化またはフレキシブル化の点で、有機材料で形成された、電子輸送層15または正孔輸送層16を有することが好ましい。
−導電性支持体11−
導電性支持体11は、導電性を有し、感光層13等を支持できるものであれば特に限定されない。導電性支持体11は、導電性を有する材料、例えば金属で形成された構成、または、ガラスもしくはプラスチックの支持体11aと、この支持体11aの表面に形成された導電膜としての透明電極11bとを有する構成が好ましい。
なかでも、図1A、図2〜図6に示されるように、ガラスまたはプラスチックの支持体11aの表面に導電性の金属酸化物を塗設して透明電極11bを成膜した導電性支持体11がさらに好ましい。プラスチックで形成された支持体11aとしては、例えば、特開2001−291534号公報の段落番号0153に記載の透明ポリマーフィルムが挙げられる。支持体11aを形成する材料としては、ガラスおよびプラスチックの他にも、セラミック(特開2005−135902号公報)、導電性樹脂(特開2001−160425号公報)を用いることができる。金属酸化物としては、スズ酸化物(tin oxide:TO)が好ましく、インジウム−スズ酸化物(スズドープ酸化インジウム、indium tin oxide;ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(fluorine-doped tin oxide:FTO)等のフッ素ドープスズ酸化物が特に好ましい。このときの金属酸化物の塗布量は、支持体11aの表面積1m2当たり0.1〜100gが好ましい。導電性支持体11を用いる場合、光は支持体11a側から入射させることが好ましい。
導電性支持体11は、実質的に透明であることが好ましい。本発明において、「実質的に透明である」とは、光(波長300〜1200nm)の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上が好ましく、80%以上が特に好ましい。
支持体11aおよび導電性支持体11の厚みは、特に限定されず、適宜の厚みに設定される。例えば、0.01μm〜10mmであることが好ましく、0.1μm〜5mmであることがさらに好ましく、0.3μm〜4mmであることが特に好ましい。
透明電極11bを設ける場合、透明電極11bの膜厚は、特に限定されず、例えば、0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることがさらに好ましく、0.05〜20μmであることが特に好ましい。
導電性支持体11または支持体11aは、表面に光マネージメント機能を有してもよい。例えば、導電性支持体11または支持体11aの表面に、特開2003−123859号公報に記載の、高屈折膜および低屈折率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜を有してもよく、特開2002−260746号公報に記載のライトガイド機能を有してもよい。
−ブロッキング層14−
本発明においては、光電変換素子10A〜10Cおよび10Fのように、好ましくは、透明電極11bの表面に、すなわち、導電性支持体11と、多孔質層12、感光層13または正孔輸送層3等との間に、ブロッキング層14を有している。
光電変換素子および太陽電池において、例えば感光層13または正孔輸送層3と、透明電極11b等とが電気的に接続すると逆電流を生じる。ブロッキング層14は、この逆電流を防止する機能を果たす。ブロッキング層14は短絡防止層ともいう。
ブロッキング層14を、光吸収剤を担持する足場として機能させることもできる。
このブロッキング層14は、光電変換素子が電子輸送層を有する場合にも設けてもよい。例えば、光電変換素子10Dの場合、導電性支持体11と電子輸送層15との間に設けてもよく、光電変換素子10Eの場合、第二電極2と電子輸送層4との間に設けてもよい。
ブロッキング層14を形成する材料は、上記機能を果たすことのできる材料であれば特に限定されず、可視光を透過する物質であって、導電性支持体11(透明電極11b)等に対する絶縁性物質であることが好ましい。「導電性支持体11(透明電極11b)に対する絶縁性物質」とは、具体的には、伝導帯のエネルギー準位が、導電性支持体11を形成する材料(透明電極11bを形成する金属酸化物)の伝導帯のエネルギー準位以上であり、かつ、多孔質層12を構成する材料の伝導帯や光吸収剤の基底状態のエネルギー準位より低い化合物(n型半導体化合物)をいう。
ブロッキング層14を形成する材料は、例えば、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等が挙げられる。また、一般的に光電変換材料に用いられる材料でもよく、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化タングステン等も挙げられる。なかでも、酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等が好ましい。
ブロッキング層14の膜厚は、0.001〜10μmが好ましく、0.005〜1μmがさらに好ましく、0.01〜0.1μmが特に好ましい。
本発明において、各層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)等を用いて光電変換素子10の断面を観察することにより、測定できる。
−多孔質層12−
本発明においては、光電変換素子10A、10Bおよび10Fのように、好ましくは、透明電極11b上に多孔質層12を有している。ブロッキング層14を有している場合、多孔質層12をブロッキング層14上に形成することが好ましい。
多孔質層12は、表面に感光層13を担持する足場として機能する層である。太陽電池において、光吸収効率を高めるためには、少なくとも太陽光等の光を受ける部分の表面積を大きくすることが好ましく、多孔質層12の全体としての表面積を大きくすることが好ましい。
多孔質層12は、多孔質層12を形成する材料の微粒子を堆積または密着させた、細孔を有する微粒子層であることが好ましい。多孔質層12は、2種以上の微粒子が堆積してなる微粒子層であってもよい。多孔質層12が細孔を有する微粒子層であると、光吸収剤の担持量(吸着量)を増量できる。
多孔質層12の表面積を大きくするには、多孔質層12を構成する個々の微粒子の表面積を大きくすることが好ましい。本発明では、多孔質層12を形成する微粒子を導電性支持体11等に塗設した状態で、この微粒子の表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はなく、通常5000倍程度である。多孔質層12を形成する微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径において、1次粒子として0.001〜1μmが好ましい。微粒子の分散物を用いて多孔質層12を形成する場合、微粒子の上記平均粒径は、分散物の平均粒径として0.01〜100μmが好ましい。
多孔質層12を形成する材料は、導電性に関しては特に限定されず、絶縁体(絶縁性の材料)であっても、導電性の材料または半導体(半導電性の材料)であってもよい。
多孔質層12を形成する材料としては、例えば、金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(光吸収剤として用いるペロブスカイト化合物を除く。)、ケイ素の酸化物(例えば、二酸化ケイ素、ゼオライト)、またはカーボンナノチューブ(カーボンナノワイヤおよびカーボンナノロッド等を含む)を用いることができる。
金属のカルコゲニドは特に限定されず、好ましくは、チタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、アルミニウムまたはタンタルの各酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。金属のカルコゲニドの結晶構造として、アナターゼ型、ブルッカイト型またはルチル型が挙げられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は特に限定されず、遷移金属酸化物等が挙げられる。例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸バリウム、スズ酸バリウム、ジルコン酸鉛、ジルコン酸ストロンチウム、タンタル酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム、鉄酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸バリウムランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸ビスマスが挙げられる。なかでも、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が好ましい。
カーボンナノチューブは、炭素膜(グラフェンシート)を筒状に丸めた形状を有する。カーボンナノチューブは、1枚のグラフェンシートが円筒状に巻かれた単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube:SWCNT)、2枚のグラフェンシートが同心円状に巻かれた2層カーボンナノチューブ(double-walled carbon nanotube:DWCNT)、複数のグラフェンシートが同心円状に巻かれた多層カーボンナノチューブ(multi-walled carbon nanotube:MWCNT)に分類される。多孔質層12としては、いずれのカーボンナノチューブも特に限定されず、用いることができる。
多孔質層12を形成する材料は、なかでも、チタン、スズ、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウムもしくはケイ素の酸化物、またはカーボンナノチューブが好ましく、酸化チタンまたは酸化アルミニウムがさらに好ましい。
多孔質層12は、上述の、金属のカルコゲニド、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、ケイ素の酸化物およびカーボンナノチューブのうち少なくとも1種で形成されていればよく、複数種で形成されていてもよい。
多孔質層12の膜厚は、特に限定されず、通常0.05〜100μmの範囲であり、好ましくは0.1〜100μmの範囲である。太陽電池として用いる場合は、0.1〜50μmが好ましく、0.2〜30μmがより好ましい。
−電子輸送層15−
本発明においては、光電変換素子10Dのように、透明電極11bの表面に電子輸送層15を有していてもよい。
電子輸送層15は、感光層13で発生した電子を導電性支持体11へと輸送する機能を有する。電子輸送層15は、この機能を発揮することができる電子輸送材料で形成される。電子輸送材料は特に限定されず、有機材料(有機電子輸送材料)が好ましい。有機電子輸送材料としては、[6,6]−Phenyl−C61−Butyric Acid Methyl Ester(PC61BM)等のフラーレン化合物、ペリレンテトラカルボキシジイミド(pelylene tetracarboxylic diimide:PTCDI)等のペリレン化合物、その他、テトラシアノキノジメタン(tetracyanoquinodimethane:TCNQ)等の低分子化合物、または、高分子化合物等が挙げられる。
電子輸送層15の膜厚は、特に限定されず、0.001〜10μmが好ましく、0.01〜1μmがより好ましい。
−正孔輸送層16−
本発明においては、光電変換素子10Eのように、透明電極11bの表面に正孔輸送層16を有していてもよい。
正孔輸送層16は、形成される位置が異なること以外は、後述する正孔輸送層3と同じである。
−感光層(光吸収層)13−
感光層13は、好ましくは、多孔質層12(光電変換素子10A、10Bおよび10F)、ブロッキング層14(光電変換素子10C)、電子輸送層15(光電変換素子10D)、または正孔輸送層16(光電変換素子10E)の各層の表面(感光層13が設けられる表面が凹凸の場合の凹部内表面を含む。)に設けられる。
本発明において、光吸収剤は、後述する式(1)で表される第1の有機カチオン(以下、第1の有機カチオン(A1)ということがある。)と、式(2)で表される第2の有機カチオン(以下、第2の有機カチオン(A2)ということがある。)とをそれぞれ少なくとも1種有するペロブスカイト化合物を含有していればよい。
また、光吸収剤は、ペロブスカイト化合物と併せて、ペロブスカイト化合物以外の光吸収剤を含んでいてもよい。ペロブスカイト化合物以外の光吸収剤としては、例えば金属錯体色素および有機色素が挙げられる。このとき、ペロブスカイト化合物と、それ以外の光吸収剤との割合は特に限定されない。
感光層13は、単層であっても2層以上の積層であってもよい。感光層13が2層以上の積層構造である場合、互いに異なった光吸収剤からなる層を積層してなる積層構造でもよく、また、感光層と感光層の間に正孔輸送材料を含む中間層を有する積層構造でもよい。感光層13が2層以上の積層構造である場合、少なくとも1層(いずれかの層でも、すべての層でもよい)に、第1の有機カチオン(A1)と第2の有機カチオン(A2)とをそれぞれ少なくとも1種有するペロブスカイト化合物を有していればよい。
感光層13を導電性支持体11上に有する態様は、上述した通りである。感光層13は、好ましくは、励起した電子が導電性支持体11または第二電極2に流れるように、上記各層の表面に設けられる。このとき、感光層13は、上記各層の表面全体に設けられていてもよく、その表面の一部に設けられていてもよい。
感光層13の膜厚は、導電性支持体11上に感光層13を有する態様に応じて適宜に設定され、特に限定されない。通常、膜厚は、例えば、0.001〜100μmが好ましく、0.01〜10μmがさらに好ましく、0.01〜5μmが特に好ましい。
多孔質層12を有する場合、多孔質層12の膜厚との合計膜厚は、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましく、0.3μm以上が特に好ましい。また、合計膜厚は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。合計膜厚は、上記値を適宜に組み合わせた範囲とすることができる。ここで、図1Aのように、感光層13が薄い膜状である場合に、感光層13の膜厚は、多孔質層12の表面に垂直な方向に沿う、多孔質層12との界面と後述する正孔輸送層3との界面との距離をいう。
光電変換素子10において、多孔質層12および正孔輸送層3を有する場合、多孔質層12と感光層13と正孔輸送層3との合計膜厚は、特に限定されず、例えば、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましく、0.3μm以上が特に好ましい。また、この合計膜厚は、200μm以下が好ましく、50μm以下が好ましく、30μm以下が好ましく、5μm以下が好ましい。合計膜厚は、上記値を適宜に組み合わせた範囲とすることができる。
本発明において、感光層を厚い膜状に設ける場合(感光層13Bおよび13C)、この感光層に含まれる光吸収剤は正孔輸送材料として機能することもある。
[光吸収剤]
感光層13は、光吸収剤として、「カチオン性有機基A」と、「金属原子M」と、「アニオン性原子または原子団X」とを有するペロブスカイト化合物(ペロブスカイト型光吸収剤ともいう)を含有する。
ペロブスカイト化合物のカチオン性有機基A、金属原子Mおよびアニオン性原子または原子団Xは、それぞれ、ペロブスカイト型結晶構造において、有機カチオン(便宜上、有機カチオンAということがある)、金属カチオン(便宜上、金属カチオンMということがある)およびアニオン(便宜上、アニオンXということがある)の各構成イオンとして存在する。
本発明において、カチオン性有機基とは、ペロブスカイト型結晶構造において有機カチオンAになる性質を有する有機基をいう。このカチオン性有機基Aは、それぞれ後述する第1および第2の有機カチオンとなる、少なくとも2種の有機基を含む。
アニオン性原子または原子団とは、ペロブスカイト型結晶構造においてアニオンになる性質を有する原子または原子団をいう。
本発明の光電変換素子において、光吸収剤としてのペロブスカイト化合物は、特定の有機基を有する第1の有機カチオン(A1)および特定の有機基を有する第2の有機カチオン(A2)の2種と、金属原子のカチオンと、アニオン性原子もしくは原子団のアニオンとを有するペロブスカイト型結晶構造を有し、かつ、第1の有機カチオンの含有量[A1]と、第2の有機カチオンの含有量[A2]とが、999<[A2]/[A1]≦99999で規定されるモル比の関係を満たす。
これらの条件を満たす光電変換素子および太陽電池は、室温でのLED光の照射下で高い光電変換効率を示す。
本発明においては、少量成分である第1の有機カチオンは第2の有機カチオンと電位がほぼ同等であり、この場合、結晶粒界に偏在する第1の有機カチオンが電荷のトラップとなることはなく、逆に何らかの理由で結晶粒子間の電荷輸送を促進すると推測される。
有機カチオン(A1)は下記式(1)で表される。
式(1) R1−N(R1a)3 +
式中、R1は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基または脂肪族へテロ環基を表す。ただし、R1が炭素数1または2のアルキル基である場合、アルキル基は、それぞれ、下記置換基群Zから選択される置換基を有する。
R1として採り得るアルキル基は、直鎖アルキル基および分岐アルキル基を含む。このアルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、5〜18がより好ましく、5〜12が特に好ましい。このアルキル基の好ましい具体例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、オクタデシルが挙げられる。
ただし、R1が炭素数1または2のアルキル基である場合、アルキル基は、それぞれ、下記置換基群Zから選択される置換基を有する。炭素数1または2のアルキル基がそれぞれ有する置換基において、好ましい基および各基の好ましい範囲は、それぞれ、後述する置換基群Zにおいて説明する好ましい基および範囲と同じである。
R1として採り得るシクロアルキル基は、その炭素数が3〜8が好ましい。このシクロアルキル基の好ましい具体例としては、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられる。
R1として採り得るアルケニル基は、直鎖アルケニル基および分岐アルケニル基を含む。このアルケニル基の炭素数は好ましくは2〜18、より好ましくは2〜7、さらに好ましくは2〜5である。このアルケニル基の好ましい具体例として、例えば、ビニル、アリル、ブテニルおよびヘキセニルが挙げられる。
R1として採り得るアルキニル基は、直鎖アルキニル基および分岐アルキニル基を含む。このアルキニル基の炭素数は好ましくは2〜18、より好ましくは2〜7、さらに好ましくは2〜5である。このアルキニル基の好ましい具体例としては、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ヘキシニルおよびオクチニルが挙げられる。
R1として採り得るアリール基は、その炭素数が6〜14であることが好ましい。このアリール基の好ましい具体例としては、例えば、フェニルおよびナフチルが挙げられ、フェニルがさらに好ましい。
R1として採り得るヘテロアリール基は、芳香族ヘテロ環のみからなる基と、芳香族ヘテロ環に他の環、例えば、芳香族環、脂肪族環またはヘテロ環が縮合した縮合ヘテロ環からなる基とを包含する。
芳香族ヘテロ環を構成する環構成ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。また、芳香族ヘテロ環の環員数としては、3〜8員環が好ましく、5員環または6員環がより好ましい。芳香族ヘテロ環の炭素数は0〜20であることが好ましく、0〜18であることがより好ましい。
5員環の芳香族ヘテロ環および5員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、フラン環、チオフェン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インドリン環またはインダゾール環が挙げられる。また、6員環の芳香族ヘテロ環および6員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環またはキナゾリン環が挙げられる。
R1として採り得る脂肪族ヘテロ環基は、脂肪族ヘテロ環のみからなる基と、脂肪族ヘテロ環に他の環、例えば、脂肪族環が縮合した脂肪族縮合ヘテロ環からなる基とを包含する。脂肪族ヘテロ環を構成する環構成ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。また、脂肪族ヘテロ環の環員数としては、3〜8員環が好ましく、5員環または6員環がより好ましい。脂肪族ヘテロ環の炭素数は0〜24であることが好ましく、1〜18であることがより好ましい。
脂肪族ヘテロ環の好ましい具体例としては、ピロリジン環、オキソラン環、チオラン環、ピペリジン環、テトラヒドロフラン環、オキサン環、チアン環、ピペラジン環、モルホリン環、キヌクリジン環、ピロリジン環、アゼチジン環、オキセタン環、アジリジン環、ジオキサン環、ペンタメチレンスルフィド環、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。
R1としては、なかでも、炭素数5以上のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基または脂肪族へテロ環基が好ましく、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基または脂肪族へテロ環基がさらに好ましい。
R1として採り得る上記各基は置換基を有していてもよい。この場合の置換基は、特に限定されず、アルキル基または下記置換基群Zから選択される置換基が好ましい。
R1が置換基を有する態様は特に限定されず、例えば、R1が置換基を有する態様と、R1が2個以上の置換基を組み合わせた複合置換基を有する態様と、R1が置換基および複合置換基を有する態様とを包含する。
本発明において、R1が置換基を有する場合、R1、次いでR1に直接結合する置換基、の順で炭素数が多くなるように、R1および置換基を決定する。複合置換基の場合も同様にR1に近い置換基ほど炭素数が多くなるように各置換基を決定する。
置換基群Zは、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アリールチオカルボニル基、ヘテロアリールチオカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ヘテロアリールカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルチオ基、アリールカルボニルチオ基、ヘテロアリールカルボニルチオ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アシル基、ハロゲン原子、シアノ基、テロアリール基、およびシリル基を含む。
本発明において、アルキル基をシクロアルキル基と区別して記載している場合、アルキル基は、直鎖アルキル基および分岐アルキル基を包含する意味で用いる。一方、アルキル基をシクロアルキル基と区別して記載していない場合(単に、アルキル基と記載されている場合)、および、特段の断りがない場合、アルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基およびシクロアルキル基を包含する意味で用いる。このことは、環状構造を採りうる基(アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等)を含む基(アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニルオキシ基等)、環状構造を採り得る基を含む化合物についても同様である。置換基群Zの説明において、アルキル基については、特段の断りがなく、シクロアルキル基を含むものとして、記載してある。
置換基群Zにおいて、アルケニル基、アルキニル基およびヘテロアリール基の好ましい範囲は、上記R1における対応する各基の好ましい範囲と同じである。
アシル基は、炭素数1〜19が好ましく、2〜19がより好ましい。アシル基の好ましい具体例としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、オクタデカノイル、ベンゾイルまたはアクリリルが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられ、ヨウ素原子または臭素原子が好ましい。
本発明において、置換基群Zのうち、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アリールチオカルボニル基、ヘテロアリールチオカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ヘテロアリールカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルチオ基、アリールカルボニルチオ基、ヘテロアリールカルボニルチオ基は、それぞれ、下記式(W−1)〜(W−6)のいずれかで表すことができる。
式(W−1)〜(W−6)中、*は上記式(1)のN原子、または、置換基群Zから選択される他の置換基との結合位置を表す。
Rwは、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基のいずれかを表す。アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基それぞれの好ましい範囲は、上記R1のアルキル基(シクロアルキル基を含む)、アリール基およびヘテロアリール基それぞれの好ましい範囲と同じである。
置換基群Zに含まれる上記各置換基と、上記式(W−1)〜(W−6)で表される基との対応関係を下記表1に示す。
R1が有する置換基群Zから選択される置換基のうち、少なくとも一つがシリル基であることが好ましい。
置換基群Zから選択される置換基はさらに置換基を有していてもよい(複合置換基を有する態様)。これらの態様において、さらに有していてもよい置換基は、特に限定されず、好ましくはアルキル基もしくは上記置換基群Zから選択される置換基が挙げられる。さらに有していてもよい置換基の好ましい範囲は、上記R1もしくは上記置換基群Zの好ましい範囲と同じである。
これらの態様において、アルキル基もしくは置換基群Zから選択される複数の置換基の組み合わせは、特に限定されず、例えば、ハロゲン原子と他の置換基との組み合わせ、アルキル基と他の置換基との組み合わせ、アルキルチオ基と他の置換基との組み合わせ、またはシリル基と他の置換基の組み合わせが挙げられる。
ハロゲン原子と他の置換基との組み合わせとしては、例えば、アルコキシ基とハロゲン原子、アリールオキシ基とハロゲン原子、ヘテロアリールオキシ基とハロゲン原子、アルキルチオ基とハロゲン原子、アリールチオ基とハロゲン原子、ヘテロアリールチオ基とハロゲン原子、アシル基とハロゲン原子、または、ヘテロアリール基とハロゲン原子の、各組み合わせが挙げられる。
アルキル基と他の置換基との組み合わせとしては、例えば、アリールオキシ基とアルキル基、ヘテロアリールオキシ基とアルキル基、アリールチオ基とアルキル基、ヘテロアリールチオ基とアルキル基、アリールオキシカルボニル基とアルキル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基とアルキル基、アリールチオカルボニル基とアルキル基、ヘテロアリールチオカルボニル基とアルキル基、アリールカルボニルオキシ基とアルキル基、ヘテロアリールカルボニルオキシ基とアルキル基、アリールカルボニルチオ基とアルキル基、ヘテロアリールカルボニルチオ基とアルキル基、または、ヘテロアリール基とアルキル基、シリル基とアルキル基の、各組み合わせが挙げられる。
アルキルチオ基と他の置換基との組み合わせとしては、例えば、アリールオキシ基とアルキルチオ基、ヘテロアリールオキシ基とアルキルチオ基、アリールチオ基とアルキルチオ基、ヘテロアリールチオ基とアルキルチオ基、アリールオキシカルボニル基とアルキルチオ基、ヘテロアリールオキシカルボニル基とアルキルチオ基、アリールチオカルボニル基とアルキルチオ基、ヘテロアリールチオカルボニル基とアルキルチオ基、アリールカルボニルオキシ基とアルキルチオ基、ヘテロアリールカルボニルオキシ基とアルキルチオ基、アリールカルボニルチオ基とアルキルチオ基、ヘテロアリールカルボニルチオ基とアルキルチオ基、アシル基とアルキルチオ基、または、ヘテロアリール基とアルキルチオ基の、各組み合わせが挙げられる。
R1が有することができる置換基の数は、上記いずれの態様においても、特に限定されず、好ましくは置換基の種類によって適宜に設定される。例えば、置換基群Zから選択される置換基がハロゲン原子である場合、置換基数は1〜37個(複合置換基のときは2〜37個)が好ましく、1〜19個(複合置換基のときは2〜19個)であることがより好ましく、1〜13個(複合置換基のときは2〜13個)であることがさらに好ましく、1〜7個(複合置換基のときは2〜7個)であることが特に好ましい。置換基群Zから選択される置換基がアルコキシ基またはアルキルチオ基である場合、置換基数は1〜8個(複合置換基のときは2〜8個)であることが好ましく、1〜4個(複合置換基のときは2〜4個)であることがより好ましい。置換基群Zから選択される置換基がハロゲン原子、アルコキシ基およびアルキルチオ基以外の置換基である場合、置換基数は1〜6個(複合置換基のときは2〜6個)であることが好ましく、1〜3個(複合置換基のときは2個または3個)であることがより好ましい。
また、本発明においては、光電変換素子の安定性の観点から、R1のClogP値が2.3〜15であることが好ましい。ClogP値は化合物の脂溶性の指標として知られており、適度なClogP値を有することで脂溶性の向上とともに疎水性が向上し、水分による光電変換素子の劣化が抑えられると推定される。
ClogP値とは、化合物の1−オクタノールと水への分配係数Pの常用対数logPを計算によって求めた値である。オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、一般にJIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積ることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))、Viswanadhan’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989))、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.,19,71(1984))などが知られている。
式(1)において、R1aは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および脂肪族ヘテロ環基から選ばれる基を表す。
R1aとして採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および脂肪族ヘテロ環基は、それぞれ、上記R1として採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および脂肪族ヘテロ環基それぞれと同義であり、好ましい範囲も同じである。N原子に連結し、隣接して存在する2つのR1aは互いに連結して環を形成してもよい。この場合、形成される環は、環構成原子としてヘテロ原子を有してもよい。R1aは、水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
以下に、本発明に用いるペロブスカイト化合物が有しうる第1の有機カチオン(A1)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
特に好ましい第1の有機カチオン(A1)は、a3、a4、a5、a6、a59の有機カチオンである。
第2の有機カチオン(A2)は下記式(2)で表される。
式(2) R2−N(R2a)3 +
式(2)中、R2aは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基または脂肪族ヘテロ環基を表す。
R2aとして採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および脂肪族ヘテロ環基は、それぞれ、上記R1として採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および脂肪族ヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同じである。N原子に連結し、隣接して存在する2つのR2aは互いに連結して環を形成してもよい。この場合、形成される環は、環構成原子としてヘテロ原子を有してもよい。
R2aは、水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
式(2)中、R2は、メチル基、エチル基または下記式(2a)で表される基を表す。
式(2a)で表すことができる基において、XaはNR2c、酸素原子または硫黄原子を表し、NR2cが好ましい。ここで、R2cは、水素原子または置換基を表す。R2cとして採り得る置換基は特に限定されず、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基または脂肪族へテロ環基が挙げられる。R2cとしては水素原子が好ましい。
R2bは、水素原子または置換基を表し、水素原子が好ましい。R2bとして採り得る置換基は特に限定されないが、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基または脂肪族へテロ環基が挙げられる。
R2bおよびR2cがそれぞれ採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および脂肪族へテロ環基は、それぞれ、上記式(1)におけるR1として採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および脂肪族基それぞれと同義であり、好ましい範囲も同じである。
式(2a)で表すことができる基としては、例えば、(チオ)アシル基、(チオ)カルバモイル基、イミドイル基またはアミジノ基が挙げられる。
(チオ)アシル基は、アシル基およびチオアシル基を包含する。アシル基は、総炭素数が1〜7のアシル基が好ましく、例えば、ホルミル、アセチル(CH3C(=O)−)、プロピオニル、ヘキサノイル等が挙げられる。チオアシル基は、総炭素数が1〜7のチオアシル基が好ましく、例えば、チオホルミル、チオアセチル(CH3C(=S)−)、チオプロピオニル等が挙げられる。
(チオ)カルバモイル基は、カルバモイル基(H2NC(=O)−)およびチオカルバモイル基(H2NC(=S)−)を包含する。
イミドイル基は、R2b−C(=NR2c)−で表される基であり、R2bおよびR2cはそれぞれ水素原子またはアルキル基が好ましい。アルキル基は上記R1のアルキル基と同義である。例えば、ホルムイミドイル(HC(=NH)−)、アセトイミドイル(CH3C(=NH)−)、プロピオンイミドイル(CH3CH2C(=NH)−)等が挙げられる。なかでも、ホルムイミドイルが好ましい。
式(2)で表すことができる基としてのアミジノ基は、上記イミドイル基のR2bがアミノ基でR2cが水素原子である構造(−C(=NH)NH2)を有する。
***は式(2)のN原子との結合位置を表す。
本発明において、3個のR2aがいずれも水素原子である場合、第2の有機カチオン(A2)は、上記式(2)のR2とNH3 +とが結合してなる有機アンモニウムカチオンとなる。この有機アンモニウムカチオンが共鳴構造を採り得る場合、第2の有機カチオン(A2)は有機アンモニウムカチオンに加えて共鳴構造のカチオンを含む。例えば、上記式(2a)で表すことができる基においてXaがNH(R2cが水素原子)である場合、有機カチオンは、有機アンモニウムカチオンに加えて、この有機アンモニウムカチオンの共鳴構造の1つである有機アミジニウムカチオンをも包含する。有機アミジニウムカチオンとしては、下記式(Aam)で表されるカチオンが挙げられる。本明細書において、下記式(Aam)で表されるカチオンを便宜上、「R2bC(=NH)−NH3 +」と表記することがある。
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、第1の有機カチオン(A1)の含有量[A1]に対する第2の有機カチオン(A2)の含有量[A2]は、モル比で下記式(i)で規定される関係を満たし、下記式(ii)で規定される関係を満たすことが好ましく、下記式(iii)で規定される関係を満たすことがより好ましい。[A1]は第1の有機カチオン(A1)の含有量を、[A2]は第2の有機カチオン(A2)の含有量を、それぞれ、モル量で表す。
式(i)
999<[A2]/[A1]≦99999
式(ii)
999<[A2]/[A1]≦49999
式(iii)
1999<[A2]/[A1]≦9999
第1の有機カチオン(A1)の含有量に対する第2の有機カチオン(A2)の含有量をモル比で上記式(i)に規定される関係を満たすように設定することにより、低照度環境下、たとえば室内でのLED光の照射下においても高い光電変換効率を示す光電変換素子および太陽電池を得ることができる。
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、金属原子Mのカチオンは、周期表第一族元素以外の金属原子のカチオンであることが好ましい。金属原子Mとしては、例えば、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、カドミウム(Cd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、イッテルビウム(Yb)、ユウロピウム(Eu)、インジウム(In)、チタン(Ti)、ビスマス(Bi)、タリウム(Tl)等の金属原子が挙げられる。なかでも、Pb原子、Cu原子、Ge原子またはSn原子が特に好ましい。
金属原子Mのカチオンは、1種のカチオンでもよく、2種以上のカチオンでもよい。2種以上のカチオンである場合、これらの割合(含有量の比率)は特に限定されない。
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、アニオンXは、アニオン性原子または原子団Xのアニオンを表す。このアニオンは、好ましくはハロゲン原子のアニオン、または、NCS−、NCO−、OH−、NO3 −、CH3COO−もしくはHCOO−の、各原子団のアニオンが挙げられる。なかでも、ハロゲン原子のアニオンであることがさらに好ましい。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等が挙げられる。
アニオンXは、1種のアニオン性原子または原子団のアニオンであってもよく、2種以上のアニオン性原子または原子団のアニオンであってもよい。1種のアニオン性原子または原子団のアニオンである場合には、ヨウ素原子のアニオンが好ましい。一方、2種以上のアニオン性原子または原子団のアニオンである場合には、2種のハロゲン原子のアニオン、特に塩素原子のアニオンおよびヨウ素原子のアニオンが好ましい。2種以上のアニオンの割合(含有量の比率)は特に限定されない。
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、上記の各構成イオンを有するペロブスカイト型結晶構造を有し、例えば下記式(I)で表されるペロブスカイト化合物が好ましい。
式(I) AaMmXx
式中、Aはカチオン性有機基を表す。Mは金属原子を表す。Xはアニオン性原子または原子団を表す。aは1または2を表し、mは1を表し、a、mおよびxはa+2m=xを満たす。
式(I)において、カチオン性有機基は、ペロブスカイト型結晶構造の上記有機カチオンAを形成する。カチオン性有機基は、上記第1の有機カチオン(A1)を発生するカチオン性有機基1種以上と、上記第2の有機カチオン(A2)を発生するカチオン性有機基1種以上とを含む。これらのカチオン性有機基およびモル比等は、上記有機カチオンAで説明したものと同義であり、好ましいものも同じである。
金属原子Mは、ペロブスカイト型結晶構造の上記金属カチオンMを形成する金属原子である。したがって、金属原子Mは、上記金属カチオンMとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる原子であれば、特に限定されない。金属原子Mは、上記金属カチオンMで説明した上記金属原子と同義であり、好ましいものも同じである。
アニオン性原子または原子団Xは、ペロブスカイト型結晶構造の上記アニオンXを形成する。したがって、アニオン性原子または原子団Xは、上記アニオンXとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる原子または原子団であれば、特に限定されない。アニオン性原子または原子団Xは、上記アニオンXで説明したアニオン性原子または原子団と同義であり、好ましいものも同じである。
式(I)で表されるペロブスカイト化合物は、aが1である場合、下記式(I−1)で表されるペロブスカイト化合物であり、aが2である場合、下記式(I−2)で表されるペロブスカイト化合物である。
式(I−1) AMX3
式(I−2) A2MX4
式(I−1)および式(I−2)において、Aはカチオン性有機基を表し、上記式(I)のカチオン性有機基Aと同義であり、好ましいものも同じである。Mは、金属原子を表し、上記式(I)の金属原子Mと同義であり、好ましいものも同じである。Xは、アニオン性原子または原子団を表し、上記式(I)のアニオン性原子または原子団Xと同義であり、好ましいものも同じである。
ペロブスカイト化合物は、カチオンとして、さらに、周期表第一族元素のカチオン、または第1の有機カチオン(A1)および第2の有機カチオン(A2)となるカチオン性有機基以外の有機カチオンを有していてもよい。
周期表第一族元素のカチオンは特に限定されず、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)またはセシウム(Cs)の各元素のカチオン(Li+、Na+、K+、Cs+)が挙げられ、特にセシウムのカチオン(Cs+)が好ましい。
第1の有機カチオン(A1)および第2の有機カチオン(A2)以外の有機カチオンは、上記性質を有するカチオンであれば、特に限定されない。
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、ペロブスカイト型結晶構造を構成するカチオンの総モル量に対する、第1の有機カチオン(A1)、第2の有機カチオン(A2)、および金属原子Mのカチオンの合計モル量の比率が、90〜100モル%であることが好ましく、95〜100モル%であることがより好ましい。
また、本発明に用いるペロブスカイト化合物は、ペロブスカイト型結晶構造を構成するアニオンの総モル量に対する、ハロゲン原子のアニオンの合計モル量の比率が、90〜100モル%であることが好ましく、95〜100モル%であることがより好ましく、98〜100モル%であることがさらに好ましい。
ペロブスカイト化合物は、例えば下記式(II)で表される化合物と下記式(III)で表される化合物とから合成することができる。
式(II) AX
式(III) MX2
式(II)中、Aはカチオン性有機基を表し、式(I)のカチオン性有機基Aと同義であり、好ましいものも同じである。式(II)中、Xはアニオン性原子または原子団を表し、式(I)のアニオン性原子または原子団Xと同義であり、好ましいものも同じである。
式(III)中、Mは金属原子を表し、式(I)の金属原子Mと同義であり、好ましいものも同じである。式(III)中、Xはアニオン性原子または原子団を表し、式(I)のアニオン性原子または原子団Xと同義であり、好ましいものも同じである。
ペロブスカイト化合物の合成方法については、例えば上記非特許文献1〜3が挙げられる。また、Akihiro Kojima, Kenjiro Teshima, Yasuo Shirai, and Tsutomu Miyasaka, “Organometal Halide Perovskites as Visible−Light Sensitizers for Photovoltaic Cells”, J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051も挙げられる。
光吸収剤の使用量は、感光層に隣接して設けられる層の表面の少なくとも一部を覆う量であればよく、表面全体を覆う量が好ましい。
感光層13中、ペロブスカイト化合物の含有量は、通常は1〜100質量%である。
<正孔輸送層3>
本発明の光電変換素子は、光電変換素子10A〜10Dのように、第一電極1と第二電極2との間に正孔輸送層3を有することが好ましい態様の1つである。この態様において、正孔輸送層3は感光層13と接触(積層)していることが好ましい。正孔輸送層3は、好ましくは第一電極1の感光層13と第二電極2の間に設けられる。
正孔輸送層3は、光吸収剤の酸化体に電子を補充する機能を有し、好ましくは固体状の層(固体正孔輸送層)である。
正孔輸送層3を形成する正孔輸送材料は、液体材料でも固体材料でもよく、特に限定されない。例えば、CuI、CuNCS等の無機材料、および、例えば特開2001−291534号公報の段落番号0209〜0212に記載の有機正孔輸送材料等が挙げられる。有機正孔輸送材料としては、好ましくは、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリシラン等の導電性高分子、2個の環がC、Siなど四面体構造をとる中心原子を共有するスピロ化合物、トリアリールアミン等の芳香族アミン化合物、トリフェニレン化合物、含窒素複素環化合物または液晶性シアノ化合物が挙げられる。
正孔輸送材料は、溶液塗布可能で固体状になる有機正孔輸送材料が好ましく、具体的には、2,2’,7,7’−テトラキス−(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン(2,2',7,7'-tetrakis-(N,N-di-p-methoxyphenylamine)-9,9'-spirobifluorene:spiro−MeOTADともいう)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)、4−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒド ジフェニルヒドラゾン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(poly(3,4-ethylenedioxythiophene):PEDOT)等が挙げられる。
正孔輸送層3の膜厚は、特に限定されず、50μm以下が好ましく、1nm〜10μmがより好ましく、5nm〜5μmがさらに好ましく、10nm〜1μmが特に好ましい。なお、正孔輸送層3の膜厚は、第二電極2と感光層13の表面との平均距離に相当し、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)等を用いて光電変換素子の断面を観察することにより、測定できる。
<電子輸送層4>
本発明の光電変換素子は、光電変換素子10Eのように、第一電極1と第二電極2との間に電子輸送層4を有することも好ましい態様の1つである。この態様において、電子輸送層4は感光層13と接触(積層)していることが好ましい。
電子輸送層4は、電子の輸送先が第二電極である点、および、形成される位置が異なること以外は、上記電子輸送層15と同じである。
<第二電極2>
第二電極2は、太陽電池において正極として機能する。第二電極2は、導電性を有していれば特に限定されず、通常、導電性支持体11と同じ構成とすることができる。強度が十分に保たれる場合は、支持体11aは必ずしも必要ではない。
第二電極2の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。感光層13に光が到達するためには、導電性支持体11と第二電極2との少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の太陽電池においては、導電性支持体11が透明であって太陽光等を支持体11a側から入射させるのが好ましい。この場合、第二電極2は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。
第二電極2を形成する材料としては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、インジウム(In)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスニウム(Os)、アルミニウム(Al)等の金属、上述の導電性の金属酸化物、炭素材料および伝導性高分子等が挙げられる。炭素材料としては、炭素原子同士が結合してなる、導電性を有する材料であればよく、例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン等が挙げられる。
第二電極2としては、金属もしくは導電性の金属酸化物の薄膜(蒸着してなる薄膜を含む)、または、この薄膜を有するガラス基板もしくはプラスチック基板が好ましい。ガラス基板もしくはプラスチック基板としては、金もしくは白金の薄膜を有するガラス、または、白金を蒸着したガラスが好ましい。
第二電極2の膜厚は、特に限定されず、0.01〜100μmが好ましく、0.01〜10μmがさらに好ましく、0.01〜1μmが特に好ましい。
<その他の構成>
本発明においては、第一電極1と第二電極2との接触を防ぐために、ブロッキング層14に代えて、または、ブロッキング層14等とともに、スペーサーやセパレータを用いることもできる。
また、第二電極2と正孔輸送層3の間に正孔ブロッキング層を設けてもよい。
<<太陽電池>>
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子を用いて構成される。例えば図1A、図2〜図6に示されるように、外部回路6に対して仕事させるように構成した光電変換素子10を太陽電池として用いることができる。第一電極1(導電性支持体11)および第二電極2に接続される外部回路6は、公知のものを特に制限なく用いることができる。
本発明は、例えば、非特許文献1〜3、J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051およびScience,338,p.643(2012)に記載の各太陽電池に適用することができる。
本発明の太陽電池は、構成物の劣化および蒸散等を防止するために、側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。
<<光電変換素子および太陽電池の製造方法>>
本発明の光電変換素子および太陽電池は、感光層の形成以外は、公知の製造方法、例えば非特許文献1〜3、J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051、Science,338,p.643(2012)等に記載の方法によって製造できる。
以下に、本発明の光電変換素子および太陽電池の製造方法を簡単に説明する。
本発明の製造方法においては、まず、導電性支持体11の表面に、所望によりブロッキング層14、多孔質層12、電子輸送層15および正孔輸送層16の少なくとも一つを形成する。
ブロッキング層14は、例えば、上記絶縁性物質またはその前駆体化合物等を含有する分散物を導電性支持体11の表面に塗布して焼成する方法またはスプレー熱分解法等によって、形成できる。
多孔質層12を形成する材料は、好ましくは微粒子として用いられ、さらに好ましくは微粒子を含有する分散物として用いられる。
多孔質層12を形成する方法は特に限定されず、例えば、湿式法、乾式法、その他の方法(例えば、Chemical Review,第110巻,6595頁(2010年刊)に記載の方法)が挙げられる。これらの方法において、導電性支持体11の表面またはブロッキング層14の表面に分散物(ペースト)を塗布した後に、100〜800℃の温度で10分〜10時間、例えば空気中で焼成することが好ましい。これにより、微粒子同士を密着させることができる。
焼成を複数回行う場合、最後の焼成以外の焼成の温度(最後以外の焼成温度)を、最後の焼成の温度(最後の焼成温度)よりも低い温度で行うのがよい。例えば、酸化チタンペーストを用いる場合、最後以外の焼成温度を50〜300℃の範囲内に設定することができる。また、最後の焼成温度を、100〜600℃の範囲内において、最後以外の焼成温度よりも高くなるように、設定することができる。支持体11aとしてガラス支持体を用いる場合、焼成温度は60〜500℃が好ましい。
多孔質層12を形成するときの、多孔質材料の塗布量は、多孔質層12の膜厚および塗布回数等に応じて適宜に設定され、特に限定されない。導電性支持体11の表面積1m2当たりの、多孔質材料の塗布量は、例えば、0.5〜500gが好ましく、さらには5〜100gが好ましい。
電子輸送層15または正孔輸送層16を設ける場合、それぞれ、後述する正孔輸送層3または電子輸送層4と同様にして、形成することができる。
次いで、感光層13を設ける。
感光層13の形成には、ペロブスカイト化合物を合成可能な化合物を用いる。例えば、ペロブスカイト化合物を合成可能な化合物として、上記式(II)で表される化合物AX、および、上記式(III)で表される化合物MX2が挙げられる。これらの化合物は、それぞれ、単独で用いてもよく、また、組成物(溶液、懸濁液、ペースト等の形態を含む)として用いてもよい。
本発明においては、上記化合物すべてを含有する光吸収剤組成物を用いて感光層13を形成することができる。また、下記式(1b)で表される第1のハロゲン化物および下記式(2b)で表される第2のハロゲン化物を含有する組成物(本発明の組成物であり、光吸収剤組成物と区別するため、便宜上、アンモニウム塩組成物ということがある)と、化合物MX2とを用いて、感光層13を形成することもできる。
上記式(II)で表される化合物AX、および、上記式(III)で表される化合物MX2において、A、MおよびXは、上記式(I)のA、MおよびXと同義である。
本発明においては、化合物AXとして、化合物R1−N(R1a)3Xと、化合物R2−N(R2a)3Xとを用いることが好ましい。ここで、R1、R2、R1aおよびR2aは、それぞれ、上記式(1)および(2)におけるR1、R2、R1aおよびR2aと同義であり、好ましいものも同じである。上記化合物において、Xはハロゲン原子が好ましく、この場合、上記両化合物は、それぞれ、下記式(1b)および(2b)で表される第1および第2のハロゲン化物であり、好ましいものも同じである。
式(1b) R1−N(R1a)3Hal
式(2b) R2−N(R2a)3Hal
式中、R1、R2、R1aおよびR2aは、それぞれ、上記式(1)および(2)におけるR1、R2、R1aおよびR2aと同義であり、好ましいものも同じである。Halは、それぞれ、ハロゲン原子を表し、好ましくは、ヨウ素原子、塩素原子または臭素原子を表す。
光吸収剤組成物は、化合物AXおよび化合物MX2を含有する。
この光吸収剤組成物は、化合物AXおよび化合物MX2を所定のモル比で混合した後に加熱することにより、調製できる。この形成液は通常溶液(光吸収剤溶液)であるが、懸濁液でもよい。加熱する条件は、特に限定されない。例えば、加熱温度は30〜200℃が好ましく、70〜150℃がさらに好ましい。加熱時間は0.5〜100時間が好ましく、1〜3時間がさらに好ましい。溶媒または分散媒は後述するものを用いることができる。
アンモニウム塩組成物は、式(1b)で表される第1のハロゲン化物および式(2b)で表される第2のハロゲン化物を、それぞれ1種ずつ含むものであればよく、2種以上含んでいてもよい。
アンモニウム塩組成物は、化合物MX2、好ましくはハロゲン化金属(Xがハロゲン原子である場合)を含有していてもよい。この場合、アンモニウム塩組成物は光吸収剤組成物の好ましい一態様になる。
ハロゲン化金属としては、上述した、本発明に用いるペロブスカイト化合物が有する、金属原子Mのハロゲン化物(すなわち、M(Hal)2で表される化合物、Halはハロゲン原子を表す。)を挙げることができる。好ましくは、Pbのハロゲン化物およびSnのハロゲン化物から選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましくは、Pbのヨウ化物、Pbの塩化物、Snのヨウ化物およびSnの塩化物から選ばれる少なくとも1種であり、特に好ましくは、PbI2およびSnI2から選ばれる少なくとも1種である。
アンモニウム塩組成物が化合物MX2を含有していない場合、化合物MX2、好ましくはハロゲン化金属を含有する金属塩組成物を用いる。この金属塩組成物は、溶液であることが好ましく、必要により、加熱調製される。加熱する条件は、特に限定されない。例えば、加熱温度は30〜200℃が好ましく、50〜120℃がさらに好ましい。加熱時間は5分〜48時間が好ましく、0.5〜24時間がさらに好ましい。
光吸収剤組成物、アンモニウム塩組成物および金属塩組成物は、いずれも、固形(紛体、粒状等)であってもよく、溶液であることが好ましい。これらの組成物が溶液である場合、用いる媒体としては有機溶媒が好ましい。有機溶媒については後述する。
上記組成物は、いずれも、上記化合物に加えて、他の成分を含んでもよい。他の成分として、周期表第一族元素のハロゲン化物等が挙げられる。
上記組成物は、いずれも、本発明の光電変換素子における感光層の形成において、化合物MX2と化合物AXの供給源として好適に用いることができる。これらの組成物が紛体、粒状等である場合、組成物を溶媒に溶解して適切な濃度の溶液を調製し、必要により、ろ過、精製等を実施した後に、用いることができる。また、組成物が溶液である場合には、そのまま、または濃縮、希釈、ろ過、精製等した後に、用いることができる。
上記組成物は、いずれも、本発明の光電変換素子の製造において、感光層の形成に好適に用いることができる。
光吸収剤組成物およびアンモニウム塩組成物は、それぞれ、R1−N(R1a)3Halで表される第1のハロゲン化物の含有量[a1]と、R2−N(R2a)3Halで表される第2のハロゲン化物の含有量[a2]とが、下記式(r1−1)で規定されるモル比の関係を満たし、下記式(r1−2)で規定されるモル比の関係を満たすことがより好ましく、下記式(r1−3)で規定されるモル比の関係を満たすことが特に好ましい。
式(r1−1)
999<[a2]/[a1]≦99999
式(r1−2)
999<[a2]/[a1]≦49999
式(r1−3)
1999<[a2]/[a1]≦9999
また、光吸収剤組成物、および、アンモニウム塩組成物と金属塩組成物とにおいて、それぞれ、R1−N(R1a)3Halで表される第1のハロゲン化物の含有量[a1]と、R2−N(R2a)3Halで表される第2のハロゲン化物の含有量[a2]と、化合物MX2の含有量[c]とは、ペロブスカイト化合物が形成できる範囲で、適宜に設定される。ペロブスカイト化合物を形成する場合、通常は、含有量[c]に対して含有量[a1]と含有量[a2]との合計含有量が過剰となるように設定され、場合によっては、例えば後述するアンモニウム塩組成物と金属塩組成物とを別々に塗布する方法によっては、具体的な使用量を特定できないこともある。本発明において、含有量[c]を特定できる場合、上記含有量[a1]と[a2]と[c]とは、下記式(r2−1)で規定されるモル比の関係を満たすことが好ましく、下記式(r2−2)で規定されるモル比の関係を満たすことがより好ましい。
式(r2−1) 1≦([a1]+[a2])/[c]≦10
式(r2−2) 1≦([a1]+[a2])/[c]≦5
光吸収剤組成物、および、アンモニウム塩組成物と金属塩組成物とにおいて、それぞれ、R1−N(R1a)3Halで表される第1のハロゲン化物の含有量[a1]と、R2−N(R2a)3Halで表される第2のハロゲン化物の含有量[a2]と、化合物MX2の含有量[c]とのモル比a1:a2:cは、上記式(r1−1)〜(r1−3)と、上記式(r2−1)および(r2−2)の各式とを、適宜に組み合わせて、設定することができる。
光吸収剤組成物、アンモニウム塩組成物および金属塩組成物それぞれの固形分濃度は特に限定されない。例えば、光吸収剤組成物の固形分濃度は、0.1〜99質量%であることが好ましく、1〜70質量%であることがより好ましい。アンモニウム塩組成物の固形分濃度は、0.05〜90質量%であることが好ましく、0.1〜55質量%であることがより好ましい。金属塩組成物の固形分濃度は、0.05〜95質量%であることが好ましく、0.1〜80質量%であることがより好ましい。
感光層13を設ける方法は、湿式法および乾式法が挙げられ、特に限定されない。本発明においては、湿式法が好ましく、例えば、表面に感光層13を形成する層(光電変換素子10においては、多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15または正孔輸送層16のいずれかの層)の表面に、光吸収剤組成物またはアンモニウム塩組成物を接触させる方法が好ましい。
上記光吸収剤組成物を上記表面に接触させる方法は、具体的には、光吸収剤組成物を上記表面に塗布または浸漬することが好ましい。接触させる温度は5〜100℃であることが好ましく、浸漬時間は5秒〜24時間であるのが好ましく、20秒〜1時間がより好ましい。塗布した光吸収剤組成物を乾燥させる場合、乾燥は熱による乾燥が好ましく、通常は、20〜300℃、好ましくは50〜170℃に加熱することで乾燥させる。
また、上記ペロブスカイト化合物の合成方法に準じて感光層を形成することもできる。
上記アンモニウム塩組成物を上記表面に接触させる方法は、アンモニウム塩組成物と、金属塩組成物とを、別々に塗布(浸漬法を含む)し、必要により乾燥する方法が好ましく挙げられる。この方法では、いずれの組成物を先に表面に塗布してもよく、好ましくは金属塩組成物を先に表面に塗布する。この方法における塗布条件および乾燥条件は、光吸収剤組成物を上記表面に接触させる方法と同じである。アンモニウム塩組成物を表面に接触させる方法では、アンモニウム塩組成物および金属塩組成物の塗布に代えて、アンモニウム塩組成物または金属塩組成物を蒸着させることもできる。
さらに他の方法として、上記光吸収剤組成物の溶媒を除去した混合物を用いた、真空蒸着等の乾式法が挙げられる。例えば、上記化合物AXおよび上記化合物MX2を、同時または順次、蒸着させる方法も挙げられる。
これらの方法等により、ペロブスカイト化合物が多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15または正孔輸送層16の表面に感光層として形成される。
このようにして設けられた感光層13上に、好ましくは、正孔輸送層3または電子輸送層4を形成する。
正孔輸送層3は、正孔輸送材料を含有する正孔輸送材料溶液を塗布し、乾燥して、形成することができる。正孔輸送材料溶液は、塗布性に優れる点、および多孔質層12を有する場合は多孔質層12の孔内部まで侵入しやすい点で、正孔輸送材料の濃度が0.1〜1.0M(モル/L)であるのが好ましい。
電子輸送層4は、電子輸送材料を含有する電子輸送材料溶液を塗布し、乾燥して、形成することができる。
正孔輸送層3または電子輸送層4を形成した後に、第二電極2を形成して、光電変換素子が製造される。
各層の膜厚は、各分散液または溶液の濃度、塗布回数を適宜に変更して、調整できる。例えば、膜厚が厚い感光層13Bおよび13Cを設ける場合には、光吸収剤組成物、または、アンモニウム塩組成物もしくは金属塩組成物を複数回塗布、乾燥すればよい。
上述の各分散液および溶液は、それぞれ、必要に応じて、分散助剤、界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。
光電変換素子の製造方法に使用する溶媒または分散媒としては、特開2001−291534号公報に記載の溶媒が挙げられるが、特にこれに限定されない。本発明においては、有機溶媒が好ましく、さらに、アルコール溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒、炭化水素溶媒、ラクトン溶媒、ハロゲン溶媒および、これらの2種以上の混合溶媒が好ましい。混合溶媒としては、アルコール溶媒と、アミド溶媒、ニトリル溶媒または炭化水素溶媒から選ばれる溶媒との混合溶媒が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、または、これらの混合溶媒が好ましい。
各層を形成する溶液または分散剤の塗布方法は、特に限定されず、スピンコート、エクストルージョンダイコート、ブレードコート、バーコート、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、インクジェット印刷法、浸漬法等、公知の塗布方法を用いることができる。なかでも、スピンコート法、スクリーン印刷法等が好ましい。
本発明の光電変換素子は、必要に応じて、アニール、ライトソーキング、酸素雰囲気下での放置等の効率安定化処理を行ってもよい。
上記のようにして作製した光電変換素子は、第一電極1および第二電極2に外部回路6を接続して、太陽電池として用いることができる。
以下に実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
(実施例1)
以下に示す手順により、図1Aに示した光電変換素子10Aを製造した。感光層13の膜厚が大きい場合は、図2に示した光電変換素子10Bに対応する。
[光電変換素子(試料番号105)の製造]
<導電性支持体11の作製>
支持体11aとしての厚さ2.2mmのガラス基板上に、透明電極11bとして膜厚300nmのフッ素ドープSnO2導電膜を形成し、導電性支持体11を作製した。
<ブロッキング層用溶液の調製>
15質量%チタニウム ジイソプロポキシドビス(アセチルアセトナート)/イソプロパノール溶液(アルドリッチ社製)を1−ブタノールで希釈して、0.02Mのブロッキング層用溶液を調製した。
<ブロッキング層14の形成>
調製した0.02Mのブロッキング層用溶液を用いてスプレー熱分解法により、450℃にて、導電性支持体11のSnO2導電膜上に膜厚100nmの酸化チタンからなるブロッキング層14を形成した。
<酸化チタンペーストの調製>
平均粒径20nmのアナターゼ型酸化チタンのエタノール分散液に、エチルセルロース、ラウリン酸およびテルピネオールを加えて、酸化チタンペーストを調製した。
<多孔質層12の形成>
調製した酸化チタンペーストをブロッキング層14の上にスクリーン印刷法で塗布し、焼成した。この酸化チタンペーストの塗布および焼成をそれぞれ2回行った。1回目の焼成を130℃で0.5時間行い、2回目の焼成を500℃で1時間行った。得られた酸化チタンの焼成体を40mMのTiCl4水溶液に浸した後、60℃で1時間加熱し、続けて500℃で30分間加熱して、膜厚250nmのTiO2からなる多孔質層12を形成した。
<感光層13Aの形成>
27.86mLの40質量%メチルアミン/メタノール溶液と、30mLの57質量%ヨウ化水素水溶液(ヨウ化水素酸)を、フラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮して、CH3NH3Iの粗体を得た。得られたCH3NH3Iの粗体をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルで再結晶した。析出した結晶をろ取し、60℃で5時間減圧乾燥して、精製CH3NH3I(式(2b)で表される第2のハロゲン化物であって、第2の有機カチオン(A2)を発生させる化合物。)を得た。
100gの10質量%n−ブチルアミン/エタノール溶液と38gの57質量%ヨウ化水素水溶液を、フラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮により溶媒を除去した。さらに60℃で24時間減圧乾燥して、精製n−C4H9NH3I(式(1b)で表される第1のハロゲン化物であって、第1の有機カチオン(A1)を発生させる化合物。後述するc59。)を得た。
次いで、精製CH3NH3Iと精製n−C4H9NH3IとPbI2(ハロゲン化金属)を、混合モル比([a2]/[a1])が1000である割合で、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide:DMF)中、60℃で12時間攪拌して混合した。その後、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene:PTFE)シリンジフィルターでろ過して、40質量%の光吸収剤溶液A(ハロゲン化金属を含有するアンモニウム塩組成物)を調製した。
調製した光吸収剤溶液Aを、2000rpm、60秒の条件でスピンコート法により多孔質層12の上に、塗布温度60℃で塗布した。塗布した光吸収剤溶液Aをホットプレートにより100℃で90分間乾燥して、ペロブスカイト化合物を有する感光層13Aを形成した。多孔質層12の膜厚は250nm、多孔質層12と感光層13Aとの合計の膜厚は300nmであった。
このようにして、第一電極1を作製した。
<正孔輸送材料溶液の調製>
180mgの正孔輸送材料としての2,2’,7,7’−テトラキス−(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)9,9’−スピロビフルオレン(spiro−OMeTAD)を1mLのクロロベンゼンに溶解させた。また、170mgのリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを1mLのアセトニトリルに溶解させてアセトニトリル溶液を調製した。上記のクロロベンゼン溶液に、37.5μLの得られたアセトニトリル溶液と、17.5μLのt−ブチルピリジン(t-butylpyridine:TBP)とを加えて混合し、正孔輸送材料溶液を調製した。
<正孔輸送層3の形成>
次いで、感光層13上に、正孔輸送材料溶液をスピンコート法により塗布し、乾燥して、膜厚100nmの正孔輸送層3を形成した。
<第二電極2の作製>
正孔輸送層3上に金を蒸着して、膜厚0.1μmの第二電極2を作製した。
このようにして、試料番号105の光電変換素子10を製造した。
各膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して、測定した。
[光電変換素子(試料番号101〜104、106〜111)の製造]
上述した試料番号105の光電変換素子の製造において、精製n−C4H9NH3Iと精製CH3NH3Iとの混合モル比([a2]/[a1])を、表2に示す値に変更したこと以外は、試料番号105の光電変換素子の製造と同様にして、試料番号101〜104、106〜111の光電変換素子10を製造した。
なお、第1のハロゲン化物(1b)としては、化合物b1〜b6、b8〜b11、b13、b14、b16、b32、b40、b43、b44、b46またはb54から合成した、各化合物c1〜c6、c8〜c11、c13、c14、c16、c32、c40、c43、c44、c46またはc54を用いることができる。また、c7、c48、c50、c59またはc60〜c66を用いることもできる。
下記具体例において、Meはメチルを表す。
[光電変換素子(試料番号112)の製造]
上述した試料番号105の光電変換素子の製造において、光吸収剤溶液に精製n−C4H9NH3I(第1のハロゲン化物(1b))を用いず、精製CH3NH3I(第2のハロゲン化物(2b))とPbI2とを用いたこと以外は、試料番号105の光電変換素子の製造と同様にして、試料番号112の光電変換素子10を製造した。
[光電変換素子(試料番号113)の製造]
上述した試料番号105の光電変換素子の製造において、光吸収剤溶液に精製CH3NH3I(第2のハロゲン化物(2b))を用いず、精製n−C4H9NH3I(第1のハロゲン化物(1b))とPbI2とを用いたこと以外は、試料番号105の光電変換素子の製造と同様にして、試料番号113の光電変換素子10を製造した。
[光電変換素子(試料番号114〜126)の製造]
上述した試料番号110の光電変換素子の製造において、第1のハロゲン化物をc59から表3に示す第1のハロゲン化物に変更したこと以外は、試料番号110の光電変換素子の製造と同様にして、試料番号114〜126の光電変換素子10を製造した。
[光電変換素子(試料番号127〜131)の製造]
上述した試料番号105の光電変換素子の製造において、第1のハロゲン化物をc59からc61に変更し、第1のハロゲン化物と第2のハロゲン化物との混合モル比([a2]/[a1])を、表3に示す値に変更したこと以外は、試料番号105の光電変換素子の製造と同様にして、試料番号127〜131の光電変換素子10を製造した。
[光電変換素子(試料番号132〜136)の製造]
上述した試料番号105の光電変換素子の製造において、第1のハロゲン化物をc59からc46に変更し、第1のハロゲン化物と第2のハロゲン化物との混合モル比([a2]/[a1])を、表3に示す値に変更したこと以外は、試料番号105の光電変換素子の製造と同様にして、試料番号132〜136の光電変換素子10を製造した。
[光電変換素子(試料番号137)の製造]
上述した試料番号110の光電変換素子の製造において、第1のハロゲン化物をc59から下記化合物cz1に変更したこと以外は、試料番号110の光電変換素子の製造と同様にして、試料番号137の光電変換素子10を製造した。
上記のようにして製造した各光電変換素子において、ペロブスカイト型結晶構造を形成する第1の有機カチオンの含有量[A1]に対する第2の有機カチオンの含有量[A2]のモル比([A2]/[A1])は、光吸収剤溶液Aまたはアンモニウム塩組成物等の混合モル比([a2]/[a1])で代替できる。試料番号101〜137の各光電変換素子において、感光層中の第1の有機カチオンの含有量[A1]に対する第2の有機カチオンの含有量[A2]のモル比は、第1のハロゲン化物(1b)と第2のハロゲン化物(2b)の混合モル比とほぼ一致した。この際の解析手段は、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)とした。GC−MSの測定においては、必要に応じて、サンプルを塩基処理し、アミンとして検出し、または誘導体化して検出することができる。これらの手段でも解析が困難である場合、X線回折(XRD)や液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS)で代替することもできる。
また、試料番号101〜137の各光電変換素子において、モル比(([A1]+[A2])/[PbI2])は、光吸収剤溶液Aの混合モル比(([a1]+[a2])/[c])とほぼ一致した。また、モル比[A2]:[A1]:[PbI2]は、必要に応じてこれらの方法に加えてイオンクロマトグラフィー(ICP)を用いることで、同様に測定でき、混合モル比[a1]:[a2]:[c]とほぼ一致した。
本発明の各光電変換素子(試料番号101〜137)において、ペロブスカイト型結晶構造を構成するカチオンの総モル量に対する、第1の有機カチオン(A1)、第2の有機カチオン(A2)および金属カチオンの合計モル量の比率は、いずれも、100モル%であった。また、ペロブスカイト型結晶構造を構成するアニオンの総モル量に対する、ハロゲン原子のアニオンのモル量の比率は、いずれも、100モル%であった。
<低照度環境下での光電変換効率の評価>
製造したそれぞれの光電変換素子を用いて低照度環境下での電池特性試験を行った。電池特性試験は、東芝製の白色LED(型番:LDA8N−G−K/D/60W)を用いて行った。渋谷工学から販売されているNDフィルター(ND1〜ND80)を用いて、白色LEDの照度を300μW/cm2(1000ルクス)に調整した。オーシャンフォトニクス社製の分光器USB4000を用いて白色LEDの照度を測定することにより目的の照度に調節されていることを確認した。
I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、室温でのLED光の照射下での光電変換効率を求めた。
下記表2(試料番号101〜113)および表3(試料番号114〜137)に、室温でのLED光の照射下での光電変換効率の結果を示す。光電変換効率の評価基準は以下のとおりである。
AAA:試料番号112の光電変換効率に対して1.30倍以上
AA:試料番号112の光電変換効率に対して1.25倍以上、1.30倍未満
A:試料番号112の光電変換効率に対して1.2倍以上、1.25倍未満
B:試料番号112の光電変換効率に対して1.1倍以上、1.2倍未満
C:試料番号112の光電変換効率に対して1.0倍より大きく、1.1倍未満
D:試料番号112の光電変換効率に対して1.0倍
E:試料番号112の光電変換効率に対して0.9倍以上1.0倍未満
F:試料番号112の光電変換効率に対して0.2倍以上0.9倍未満
G:試料番号112の光電変換効率に対して0.2倍未満
ここで、種々の第1のハロゲン化物を用いた場合の変換効率の相違は、第1のハロゲン化物を構成する第1の有機カチオン中のR1部位の疎水性に起因する可能性があることが予想された。そこで、各種の第1の有機カチオン中のR1部位のClogP値を求めて比較した。ClogP値は、第1の有機カチオンにおいてNH3を水素原子に置き換えた上で、ChemBioDraw(PerkinElmer)を用いて求めた。その結果を表4に示す。
表2において、[a2]/[a1]は第1のハロゲン化物の含有量[a1]に対する第2のハロゲン化物の含有量[a2]のモル比であり、これは、[A2]/[A1]、すなわち第1の有機カチオンの含有量[A1]に対する第2の有機カチオンの含有量[A2]のモル比とほぼ一致する。
表2の結果から以下のことが分かる。
第1の有機カチオンの含有量[A1]に対する第2の有機カチオンの含有量[A2]のモル比[A2]/[A1]が、999<[A2]/[A1]≦99999の関係を満たしている試料105〜110の光電変換素子は、基準とした試料番号112の光電変換素子よりも、室温でのLED光の照射下で高い光電変換効率を示した。
これに対して、第1の有機カチオンの含有量[A1]に対する第2の有機カチオンの含有量[A2]のモル比[A2]/[A1]が999未満である試料101〜104の光電変換素子、モル比[A2]/[A1]が99999を超えている試料111の光電変換素子、および第2の有機カチオンのみを用いた試料113の光電変換素子は、基準とした試料番号112の光電変換素子と比較して、室温でのLED光の照射下での光電変換効率が同等以下であった。
また、表2〜表4を総合的に評価して、以下のことがわかる。すなわち、第1のハロゲン化物(第1の有機カチオン)として、R1が炭素数5以上のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基または脂肪族へテロ環基であるものを用いることが好ましい。また、第1のハロゲン化物(第1の有機カチオン)として、R1がシクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基または脂肪族へテロ環基であるものを用いることがより好ましい。また、第1のハロゲン化物(第1の有機カチオン)のR1が置換基としてシリル基を有しているものがより好ましい。さらに、第1のハロゲン化物(第1の有機カチオン)としては、R1で表わされる部位のClogP値が2.3〜15であるものも好ましい。