JP2017215585A - 樹脂基材のハードコート形成用組成物、ハードコートの形成方法およびそれを用いた物品 - Google Patents

樹脂基材のハードコート形成用組成物、ハードコートの形成方法およびそれを用いた物品 Download PDF

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Abstract

【課題】熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の基材に、プライマー層なしでも優れた密着性、耐擦傷性を有し、さらに、フレキシブル化可能な樹脂基材に適用した場合でも、耐曲げ性(耐クラック性)および表面硬度を有するハードコート形成用組成物を提供する。【解決手段】少なくとも、金属酸化物微粒子;有機ケイ素化合物の加水分解物;アルコキシシリル基を有する密着促進成分;硬化触媒;および溶剤を含み、ハードコート形成用組成物であって、ポリカーボネート基材やポリイミド基材1に対して密着するハードコート3を形成することができるハードコート形成用組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂基材の表面保護のためのハードコート形成用組成物に関する。より詳しくは、ポリカーボネートからなるプラスチックレンズのようなハードプラスチック基材やエレクトロニクス材料に用いるポリイミドからなるフレキシブルな樹脂フィルムなどの表面を保護するための、ハードコート形成用組成物およびハードコートの形成方法、ならびにそれを用いた物品に関する。
従来、ポリカーボネートなどのプラスチック製の化成品の表面を傷や汚れなどから保護するためにハードコート剤による処理が広く行われてきている。しかしながら、プラスチック基材にコーティング組成物を塗布し、ハードコート層を形成させようとしても、密着性が足りず、実用に耐えうるものではなかった。そのため、密着性を付与するためにプライマー液をプラスチック基材に塗布し、その後にハードコート剤を塗布するという2段階の工程を必要としていた。特にポリカーボネートからなるプラスチック基材においては、ハードコート層との密着性が悪くプライマー処理が不可欠であった。
ポリカーボネート基材に対して、プライマー処理なしでも密着するハードコート層を得るものとして密着促進成分を含有させることにより、熱可塑性シートと密着するコーティング組成物が開示されているが(特許文献1〜3)、硬度、外観等の性能を維持したまま十分な密着性を得られるに至っていない。
また、近年、液晶、有機EL、電子ペーパー等のディスプレイや、太陽電池、タッチパネル等のエレクトロニクスの急速な進歩に伴い、デバイスの薄型化や軽量化、更には、フレキシブル化が要求されている。そこでこれらのデバイスに用いられているガラス基材に代えて、薄型化、軽量化、フレキシブル化が可能な樹脂フィルム基材が検討されている。ポリイミドはその優れた耐熱性、機械特性からガラス代替基材として広く検討されているが、これらの基材に対して十分な密着性、耐曲げ性、表面硬度を併せ持つハードコートはまだ開発されていない。
特開2006-251413号公報 特開平6-256718号公報 特開2001-247769号公報
本発明は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の基材に、プライマー処理なしでも優れた密着性、耐擦傷性を有し、さらに、フレキシブル化可能な樹脂基材に適用した場合でも、耐曲げ性(耐クラック性)および表面硬度を有するハードコート形成用組成物を提供することを目的とする。さらに、そのようなハードコート形成用組成物を用いたハードコートの形成方法およびそれを用いた物品も提供する。
本発明者らは、下記A〜E成分を配合することにより、ポリカーボネート樹脂基材およびポリイミド樹脂基材などの熱可塑性または熱硬化性の様々な樹脂基材に対して優れた密着性と耐擦傷性を有するハードコート形成用組成物を提供することができることを見出した。
A成分:金属酸化物微粒子
B成分:有機ケイ素化合物またはその加水分解物
C成分:アルコキシシリル基を有する密着促進成分
D成分:硬化触媒
E成分:溶剤
本発明のハードコート形成用組成物は、反応性官能基としてアルコキシシリル基を有する密着促進成分を含むので、従来は不可欠であったプライマー処理なしでもポリカーボネート基材やポリイミド基材に対して密着するハードコートを形成することができる。
本発明のハードコート形成用組成物を用いれば、密着性を付与するためにプライマー液を樹脂基材に塗布する必要がなく、優れた密着性を有し、かつ、高い耐擦傷性、耐曲げ性および表面硬度を併せ持つハードコート層を形成することができる。
本発明のハードコート形成用組成物を用いて樹脂基材の上にハードコートを形成する手順を説明する模式図。 従来のハードコート形成用組成物を用いて樹脂基材の上にハードコートを形成する手順を説明する模式図。
本発明のハードコート形成用組成物は、少なくとも、
A成分:金属酸化物微粒子
B成分:有機ケイ素化合物またはその加水分解物
C成分:アルコキシシリル基を有する密着促進成分
D成分:硬化触媒
E成分:溶剤
を含む。
<金属酸化物微粒子>
金属酸化物微粒子は、形成されるハードコートの耐擦傷性の向上および屈折率調整のために用いられる。ハードコート層を形成する金属酸化物微粒子としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化タングステン、または、これらの複合体等が挙げられ、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズが好ましい。金属酸化物微粒子は、例えば、水、有機溶媒またはそれらの混合物中に分散させたコロイダルゾルとして用いることができる。
<有機ケイ素化合物およびその加水分解物>
加水分解可能な官能基をもつ有機ケイ素化合物は、加水分解によって生じるシラノール基同士の脱水縮合によるシロキサン結合の形成、または、有機官能基同士の反応による化学結合形成によってハードコートの架橋密度を上げるために用いられる。加水分解可能な官能基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。これらの加水分解可能な官能基は、水性溶液中で容易に加水分解されシラノール基を生じる。
有機ケイ素化合物としては、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、アクリル基、ビニル基、メタクリル基、スチリル基、ウレイド基およびメルカプト基よりなる群から選択される官能基を有する炭化水素基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種以上を用いることが好適である。例えば、
一般式(1):
Figure 2017215585
(式中、aは0〜3の整数を示し、1または複数個のR1は、それぞれ、同一または異なって、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、アクリル基、ビニル基、メタクリル基、スチリル基、ウレイド基、メルカプト基および炭化水素基よりなる群から選択される官能基を有する炭素数1〜20の炭化水素基を示し、1または複数個のR2は、それぞれ、同一または異なって、炭素数1〜3の炭化水素基を示す。)で表わされる有機ケイ素化合物、それらの加水分解物および部分加水分解オリゴマー;
一般式(2):
Figure 2017215585
(式中、bおよびcは、それぞれ、同一または異なって0〜2の整数を示し、1または複数個のR3〜R6は、それぞれ、同一または異なって炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xは炭素数1〜20のアルキレン基を示す。)で表わされる有機ケイ素化合物およびそれらの加水分解物;ならびに
一般式(3):
Figure 2017215585
(式中、dは1〜20の整数を示し、R7、R8および複数個のR9は、それぞれ、同一または異なって炭素数1〜3のアルキル基を示し、複数個のYは、それぞれ、同一または異なってビニル基、エポキシ基、メタクリル基、メルカプト基を示し、波線で示される炭素数1〜3のアルキレン基を介してSi元素に結合する。)で表される有機ケイ素化合物およびそれらの加水分解物;
よりなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。
<アルコキシシリル基を有する密着促進成分>
密着促進成分としては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートなどの種々の化合物を適用することができる。
これら密着促進成分へのアルコキシシリル基の導入は、例えば官能基としてヒドロキシル基を有する上記ポリマーに対してイソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物をウレタン化反応により化学的に導入することができるが、これに限定するものではない。
反応性官能基としてアルコキシシリル基を導入することで、その加水分解で生じるシラノール基が金属酸化物微粒子表面の水酸基または有機ケイ素化合物の加水分解で生じるシラノール基と脱水縮合反応により共有結合を形成することができる。これにより、密着促進成分を塗膜内に共有結合を介して組み込んで固定化することができ、それによりハードコート膜の耐熱試験や経時変化による密着性低下が抑制され、安定した密着性を得ることができる。また、密着促進成分にアルコキシシリル基を導入することでハードコート樹脂中の密着促進成分の相溶性が向上し、それにより硬化後のハードコート膜の白化を抑制することができる。
密着促進成分として、例えば、一般式(4):
Figure 2017215585
(式中、eおよびfは0〜2の整数を示し、R10はポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートよりなる群から選択される密着促進性のポリマー主鎖を示し、2個のR11は、それぞれ、同一または異なって、炭素数1〜20のアルキレン基を示し、当該アルキレン基は、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子を有していてもよく、1または複数個のR12およびR13は、それぞれ、同一または異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、2つのZは、それぞれ、同一または異なって、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、スルフィド結合、チオウレタン結合、チオウレア結合、チオエステル結合よりなる群から選択される化学結合を示す。)で表される、両末端にアルコキシシリル基を有する化合物を用いることができる。
ポリウレタン系ポリマー主鎖の場合、R10は、一般式(5):
Figure 2017215585
(式中、gはポリマー主鎖の分子量が500〜50000に対応する整数を示し、複数個のR14およびR15は、それぞれ、同一または異なって、炭素数1〜20のアルキレン基を示し、当該アルキレン基は、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子を有していてもよい。)で表される。
または、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等のポリオールと後述する1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有するイソシアネート基含有化合物とを反応させることにより得られるポリウレタン等が挙げられる。1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有するイソシアネート基含有化合物としては、例えば以下の脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、及び芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。又は、それらの混合物でもよい。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(ジイソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4'−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4',4''−トリフェニルメタントリイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(MDI)等が挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ω,ω'−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω'−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω'−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
ポリエステル系ポリマー主鎖の場合、R10は、一般式(6):
Figure 2017215585
(式中、hはポリマー主鎖の分子量が500〜50000に対応する整数を示し、複数個のR16およびR17は、それぞれ、同一または異なって、炭素数1〜20のアルキレン基を示し、当該アルキレン基は、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子を有していてもよい。)で表される。
ポリカーボネート系ポリマー主鎖の場合、R10は、一般式(7):
Figure 2017215585
(式中、kはポリマー主鎖の分子量が500〜50000に対応する整数を示し、複数個のR18は、それぞれ、同一または異なって、炭素数1〜20のアルキレン基を示し、当該アルキレン基は、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子を有していてもよい。)で表される。
ポリエステルカーボネート系ポリマー主鎖の場合、R10は、一般式(8):
Figure 2017215585
{式中、mはポリマー主鎖の分子量が500〜50000に対応する整数を示し、複数個のR19は、それぞれ、同一または異なって、一般式(9):
Figure 2017215585
(式中、nはR19の分子量が150〜25000に対応する整数を示し、複数個のR20およびR21は、それぞれ、同一または異なって、炭素数1〜20のアルキレン基を示し、当該アルキレン基は、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子を有していてもよい。)で表される。}で表される。
本明細書において、例えば、「1または複数個のR3〜R6は、それぞれ、同一または異なって炭素数1〜3のアルキル基を示し」との表記は、1または複数個のR3、1または複数個のR4、1または複数個のR5および1または複数個のR6の各基が、独立して、炭素数1〜3のアルキル基であって、各基は、互いに、同一のアルキル基であっても、異なるアルキル基であってもいいことを意味する。その他の類似の表記についても、同様である。
<硬化触媒>
本発明のコーティング組成物中に混和し得る硬化触媒の例は、(i)金属アセチルアセトネート;(ii)ジアミド;(iii)イミダゾール;(iv)アミンおよびアンモニウム塩;(v)有機スルホン酸およびそれらのアミン塩;(vi)カルボン酸およびそれらのアルカリ金属塩;(vii)アルカリ金属水酸化物;(viii)フッ化物塩;(ix)有機スズ化合物;ならびに(x)過塩素酸塩である。
そのような触媒の例には、グループ(i)として、アルミニウム、亜鉛、鉄およびコバルトのアセチルアセトネートなど;グループ(ii)として、ジシアンジアミド;グループ(iii)として、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールおよび1−シアノエチル−2−プロピルイミダゾールなど;グループ(iv)として、ベンジルジメチルアミンおよび1,2−ジアミノシクロヘキサンなど;グループ(v)として、トリフルオロメタンスルホン酸など;グループ(vi)として、酢酸ナトリウムなど;グループ(vii)として、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなど;グループ(viii)として、テトラn−ブチルアンモニウムフルオリド;グループ(ix)として、ジラウリン酸ジブチルすずなど;ならびにグループ(x)として、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸アルミニウムなどが含まれる。
<溶剤>
揮発性溶媒として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類、メチルエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などが挙げられる。これらの揮発性溶媒は、単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、これらの揮発性溶媒は、組成物に別途添加することができるが、他の成分、例えば、水、有機溶媒またはそれらの混合物中に分散させたコロイダルゾルに由来する溶媒も含まれる。
<その他>
本発明のハードコート形成用組成物には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲で、所望により、ハードコート剤にアンチブロッキング剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等を添加してもよい。
<樹脂基材上へのハードコートの形成方法>
本発明のハードコート形成用組成物を用いて樹脂基材上にハードコートを形成する方法を説明する(図1)。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの樹脂基材1上に(図1a)、ハードコート形成用組成物をディップコート、ロールコート、スピンコート、フローコート、スプレーコート、グラビアコート等の一般的な方法で塗布して、樹脂層2を形成する(図1b)。得られた樹脂層2を加熱して硬化させて硬化体であるハードコート3を形成して、樹脂基材と、前記樹脂基材上に直接形成されたハードコート層との積層体を作製する(図1c)。
一方、従来のハードコート形成用組成物を用いた場合、樹脂基材1の表面にまずプライマー4を塗布して、表面処理を行う(図2b)。プライマー処理した表面上に、ハードコート形成用組成物を塗布して、樹脂層2を形成する(図2c)。得られた樹脂層2を加熱硬化させて、ハードコート3を形成して、プライマーにより表面処理した樹脂基材およびハードコート層の積層体を得る(図2d)。
すなわち、本発明のハードコート形成用組成物は、樹脂基材に対する密着性が高いので、本発明の組成物を用いれば、プライマー処理の必要がなく、直接、樹脂基材上に塗布し、硬化させることで、樹脂基材とハードコート層の2層からなる積層体を得ることができる。
例えば、ポリカーボネート製のレンズに適用すれば、プライマー処理が必要ないので、プライマー処理工程の省略による生産性の向上、および製品収率の向上が期待できる。また、今まで開発されていなかった、エレクトロニクス用のフレキシブル基材に対するハードコート用組成物として使用しても、十分な密着性、耐曲げ性、表面硬度を発揮する。
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に記載された態様のみに限定されない。
[密着促進成分の合成]
実施例1
ポリエステルポリオールへの末端アルコキシシリル基の導入
温度計、撹拌装置、還流冷却器、および窒素導入管を取り付けた200ミリリットルの反応容器にポリエステルポリオール(商品名:ニューエースV14−90、株式会社ADEKA製、固形分濃度100%、水酸基価56.2mgKOH/g)40.0質量部、乾燥アセトニトリル40.0質量部、ジラウリン酸ジブチルすず0.03質量部を窒素気流下で仕込んだ。ここへ3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン9.92質量部を室温下10分かけて滴下した。その後、窒素気流下で反応容器を70℃まで昇温し、その温度で終夜反応させて、不揮発固形分50.5%の生成物を得た。
得られた生成物の赤外吸収スペクトルを測定したところ、イソシアネート基の吸収が消失していることを確認した。
この実施例で合成した生成物を密着性ポリマーAという。
実施例2
ポリウレタンポリオールへの末端アルコキシシリル基導入
温度計、撹拌装置、還流冷却器、および窒素導入管を取り付けた200ミリリットルの反応容器にポリウレタンポリオール(商品名:タケラックE−550、三井化学株式会社製、固形分濃度50%、水酸基価20mgKOH/g)80.0質量部、ジラウリン酸ジブチルすず0.03質量部を窒素気流下で仕込んだ。ここへ3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン7.06質量部を室温下10分かけて滴下した。その後、窒素気流下で反応容器を70℃まで昇温し、その温度で終夜反応させて、不揮発固形分50.4%の生成物を得た。
得られた生成物の赤外吸収スペクトルを測定したところ、イソシアネート基の吸収が消失していることを確認した。
この実施例で合成した生成物を密着性ポリマーBという。
実施例3
ポリカーボネートポリオールへの末端アルコキシシリル基導入
温度計、撹拌装置、還流冷却器、および窒素導入管を取り付けた200ミリリットルの反応容器にポリカーボネートポリオール(商品名:プラクセルCD220PL、株式会社ダイセル製、固形分濃度100%、水酸基価59.6mgKOH/g)40.0質量部、乾燥アセトニトリル40.0質量部、ジラウリン酸ジブチルすず0.03質量部を窒素気流下で仕込んだ。ここへ3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン10.5質量部を室温下10分かけて滴下した。その後、窒素気流下で反応容器を70℃まで昇温し、その温度で終夜反応させて、不揮発固形分50.6%の生成物を得た。
得られた生成物の赤外吸収スペクトルを測定したところ、イソシアネート基の吸収が消失していることを確認した。
この実施例で合成した生成物を密着性ポリマーCという。
実施例4
ポリエステル/カーボネートポリオールへの末端アルコキシシリル基導入
温度計、撹拌装置、還流冷却器、および窒素導入管を取り付けた200ミリリットルの反応容器にポリエステル/カーボネートポリオール(商品名:Desmophen C1200、住化バイエルウレタン株式会社製、固形分濃度100%、水酸基含有率1.77%)40.0質量部、乾燥アセトニトリル49.8質量部、ジラウリン酸ジブチルすず0.03質量部を窒素気流下で仕込んだ。ここへ3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン10.2質量部を室温下10分かけて滴下した。その後、窒素気流下で反応容器を70℃まで昇温し、その温度で終夜反応させて、不揮発固形分45.6%の生成物を得た。
得られた生成物の赤外吸収スペクトルを測定したところ、イソシアネート基の吸収が消失していることを確認した。
この実施例で合成した生成物を密着性ポリマーDという。
[ハードコート形成用組成物およびハードコート層の形成]
実施例5(ポリエステル原料使用処方)
<組成物調製>
2L容のビーカー中で、撹拌下、水分散コロイダルシリカゾル(商品名:スノーテックスR O、日産化学工業株式会社製、固形分濃度 20%)75.0質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散コロイダルシリカゾル(商品名:PGM−ST、日産化学工業株式会社製、固形分濃度30%)303.0質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)388.0質量部を混合し、室温で撹拌した。ここへ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)225.0質量部、実施例1で合成した密着性ポリマーA 10.9質量部の混合物を室温下で1時間かけて滴下した。その後、溶液温度を30℃まで昇温し、その温度で2時間撹拌した。冷却後に、さらに、アルミニウムトリスアセチルアセトネート 9.0質量部、シリコーン系界面活性剤(商品名:DOW CORNING TORAY L-7001、東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.4質量部を加えて室温下2時間撹拌して、ハードコート形成用組成物を調製した。
<ハードコートレンズ作成>
ポリカーボネート樹脂製プラスチックレンズ基材上に、上記ハードコート形成用組成物をディップコートし、80℃で10分間の予備乾燥後に120℃で1時間熱硬化させ、表面にハードコート層を有するポリカーボネートレンズを得た。
実施例6(ポリウレタン原料使用処方)
密着性ポリマーを実施例2で合成した密着性ポリマーB 10.9質量部に変更した以外は実施例5と同様の操作により表面にハードコート層を有するポリカーボネートレンズを得た。
実施例7(ポリカーボネート原料使用処方)
密着性ポリマーを実施例3で合成した密着性ポリマーC 10.9質量部に変更した以外は実施例5と同様の操作により表面にハードコート層を有するポリカーボネートレンズを得た。
実施例8(ポリエステルカーボネート原料使用処方)
密着性ポリマーを実施例4で合成した密着性ポリマーD 12.1質量部に変更した以外は実施例5と同様の操作により表面にハードコート層を有するポリカーボネートレンズを得た。
比較例1(アルコキシシリル基を導入していない密着性ポリマー)
密着性ポリマーを末端にアルコキシシリル基を導入していないポリエステルポリオール(商品名:ニューエースV14−90)5.5質量部に変更した以外は、実施例5と同様の操作により表面にハードコート層を有するポリカーボネートレンズを得た。
比較例2(密着性ポリマーなし、プライマー処理あり)
<組成物調製>
2L容のビーカー中で、撹拌下、水分散コロイダルシリカゾル(商品名:スノーテックスO、日産化学工業株式会社製、固形分濃度 20%)75.0質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散コロイダルシリカゾル(商品名:PGM−ST、日産化学工業株式会社製、固形分濃度30%)303.0質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)388.0質量部を混合し、室温で撹拌した。ここへ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)225.0質量部を室温下で1時間かけて滴下した。その後、溶液温度を30℃まで昇温し、その温度で2時間撹拌した。冷却後に、さらに、アルミニウムトリスアセチルアセトネート 9.0質量部、シリコーン系界面活性剤(商品名:DOW CORNING TORAY L-7001、東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.4質量部を加えて室温下2時間撹拌した。
<ハードコートレンズ作成>
予めポリウレタン系プライマー層をコートしたポリカーボネート樹脂製プラスチックレンズ基材上に、上記混合液をディップコートし、80℃で10分間の予備乾燥後に120℃で1時間熱硬化させ、表面にハードコート層を有するポリカーボネートレンズを得た。
Figure 2017215585
Figure 2017215585
実施例9(ポリエステル原料使用処方)
<塗料調製>
2L容のビーカー中で、撹拌下、水分散コロイダルシリカゾル(商品名:スノーテックスR O、日産化学工業株式会社製、固形分濃度 20%)178.0質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散コロイダルシリカゾル(商品名:PGM−ST、日産化学工業株式会社製、固形分濃度30%)574.0質量部を混合し、撹拌しながら40℃まで昇温した。ここへ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)225.0質量部、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン101.0質量部、実施例1で合成した密着性ポリマーA 13.6質量部の混合物を1時間かけて滴下した。その後、溶液温度を40℃で維持したまま2時間撹拌した。冷却後に、さらに、アルミニウムトリスアセチルアセトネート 12.8質量部、シリコーン系界面活性剤(商品名:DOW CORNING TORAY L-7001、東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.4質量部を加えて室温下2時間撹拌した。
<ハードコートフィルム作成>
ポリイミドフィルム(住友化学株式会社製、厚み50μm)の一方の面に上記混合液をバーコーターで塗工し、130℃で2分間加熱硬化させた。得られた塗膜の厚みは10μmであった。
実施例10(ポリウレタン原料使用処方)
密着性ポリマーを実施例2で合成した密着性ポリマーB 13.7質量部に変更した以外は実施例9と同様の操作により表面にハードコート層を有するハードコートフィルムを得た。
実施例11(ポリカーボネート原料使用処方)
密着性ポリマーを実施例3で合成した密着性ポリマーC 13.6質量部に変更した以外は実施例9と同様の操作により表面にハードコート層を有するハードコートフィルムを得た。
実施例12(ポリエステルカーボネート原料使用処方)
密着性ポリマーを実施例4で合成した密着性ポリマーD 15.1質量部に変更した以外は実施例9と同様の操作により表面にハードコート層を有するハードコートフィルムを得た。
実施例13(ポリエステルカーボネート原料使用処方)
<組成物調製>
2L容のビーカー中で、攪拌下、水分散コロイダルシリカゾル(商品名:スノーテックスR O−40、日産化学工業株式会社製、固形分濃度 40%)173.3質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散コロイダルシリカゾル(商品名:PGM−ST、日産化学工業株式会社製、固形分濃度30%)303.0質量部、水分散コロイダルシリカゾル(商品名:オプトレイク3342、日揮触媒化成株式会社製、固形分濃度 30%)69.3質量部を混合し、撹拌しながら、40℃まで昇温した。ここへ、反応性シランオリゴマー(商品名:KR-516、信越化学工業株式会社製、固形分濃度71.7%)92.1質量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)93.2質量部、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン88.5質量部、実施例4で合成した密着性ポリマーD 8.8質量部、メチルシリケートオリゴマー(商品名:MKC(R)シリケートMS51、三菱化学株式会社製、固形分濃度:51.1%)5.4質量部、テトラエトキシシラン10質量部の混合物を1時間かけて滴下した。その後、溶液温度を50℃まで昇温し、その温度で30分攪拌した。40℃まで温度を下げたのち、1時間30分攪拌を行った。液温を25℃以下まで冷却後に、さらに、アルミニウムトリスアセチルアセトナート 14.9質量部、シリコーン系界面活性剤(商品名:DOW CORNING TORAY L-7001、東レ・ダウコーニング株式会社製) 4.8質量部を加えて30分以上攪拌し、ハードコート形成用組成物を調製した。
<ハードコートフィルム作成>
ポリイミドフィルム(住友化学株式会社製、厚み50μm)の一方の面に上記混合液をバーコーターで塗工し、130℃で2分で加熱硬化させた。得られた塗膜厚みは10μmであった。
比較例3(密着性ポリマーなし)
<塗料調製>
2L容のビーカー中で、撹拌下、水分散コロイダルシリカゾル(商品名:スノーテックスR O、日産化学工業株式会社製、固形分濃度 20%)178.0質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散コロイダルシリカゾル(商品名:PGM−ST、日産化学工業株式会社製、固形分濃度30%)574.0質量部を混合し、撹拌しながら40℃まで昇温した。ここへ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)225.0質量部、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン101.0質量部の混合物を1時間かけて滴下した。その後、溶液温度を40℃で維持したまま2時間撹拌した。冷却後に、さらに、アルミニウムトリスアセチルアセトネート 12.8質量部、シリコーン系界面活性剤(商品名:BYK−347、BYK−Chemie社製) 0.4質量部を加えて室温下2時間撹拌した。
<ハードコートフィルム作成>
ポリイミドフィルム(住友化学株式会社製、厚み50μm)の一方の面に上記混合液をバーコーターで塗工し、130℃で2分間加熱硬化させた。得られた塗膜の厚みは10μmであった。
比較例4(密着性ポリマーなし、フィルムコロナ処理)
予めポリイミドフィルム表面をコロナ放電処理した以外は、比較例3と同様の操作により表面にハードコート層を有するハードコートフィルムを得た。
Figure 2017215585
Figure 2017215585
[ハードコート層の特性評価]
上記実施例および比較例で得られたハードコートレンズまたはハードコートフィルムのハードコート層の各特性を以下の条件で測定した。
実施例5〜8の測定結果を表1に、比較例1および2の測定結果を表2に示した。
実施例9〜12の測定結果を表3に、比較例3および4の測定結果を表4に示した。
<塗膜の鉛筆硬度>
塗膜の硬度を評価するため、JIS規格(JIS K 5600-5-4)に準拠して鉛筆硬度試験を行った。
具体的には、異なる鉛筆濃度の芯で表面を引っ掻き、傷が生じない最も硬い鉛筆濃度を鉛筆硬度とする。鉛筆濃度は、柔らかい側から硬い側に向かって、6B、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4H、5H、6Hである。
<塗膜の耐擦傷性試験(スチールウール擦傷試験)>
塗膜の耐擦傷性を評価するため、以下の条件でスチールウール擦傷試験を行った。
表面性測定機(型番:TYPE14DR、新東科学社製)のスチールウールホルダーに#0000のスチールウールを固定し、1000gの荷重をかけて、表面を100回往復摩擦した。評価基準は以下の通り。
A・・・傷が確認できない
B・・・若干の傷が確認できる(1〜10本)
C・・・多くの傷が確認できる(11本以上)
<塗膜外観>
塗膜外観の評価のため、ASTM規格(ASTM D1003)に準拠してヘイズ値測定を行った。
ヘイズメーター(BYKガードナー・ヘイズ‐ガードプラス、BYK Gardner製;ASTM規格)を用いて、レンズのヘイズ値を測定した。評価基準は下記の通り。
A・・・ヘイズ値0.2%未満
B・・・ヘイズ値0.2%以上1%未満
C・・・ヘイズ値1%以上
<塗膜の密着>
密着性の評価のため、旧JIS規格(JIS K5400-8.5; JIS D0202:1988)の100マス碁盤目試験法に準拠してクロスハッチ試験を行った。
具体的には、基材上に形成した塗膜に、単一刃切り込み器具(カッターナイフ)を用いて、2mm間隔で基材にまで達する切り込みを11本入れ、90°向きを変えて同様に切り込みを11本入れ、切り傷を碁盤目状に付ける。碁盤目状の切り傷の上に粘着テープを付着させる。このテープを塗膜面に対して直角に保ち、瞬間的に引きはがす。
表中の数字は100個の碁盤目の内、剥離が確認されなかった碁盤目の個数を示している。
<マンドレル屈曲試験>
耐曲げ性の評価のため、JIS規格(JIS K 5600-5-1)に準拠してマンドレル屈曲試験を行った。
具体的には、ハードコート塗工面を外側にし、直径2mmのマンドレルに沿って180°折り曲げ、クラック発生の有無を評価した。
評価基準は以下の通り。
○・・・ハードコート層にクラックが発生しない
×・・・ハードコート層にクラックが発生する
本発明のハードコート形成用組成物を用いれば、有用な樹脂フィルム基材の表面にプライマーなしで密着性よくコート膜を形成できるので、従来のアプリケーションであるポリカーボネートからなるプラスチック基材に対するハードコートのみならず、高い耐曲げ性および表面硬度を併せ持つので、近年注目されているポリイミドのようなフレキシブル樹脂フィルム基材に対するハードコートとしても非常に有用である。
1 樹脂基材
2 ハードコート形成用組成物層
3 硬化層(ハードコート)
4 プライマー

Claims (6)

  1. 少なくとも、以下:
    A成分:金属酸化物微粒子
    B成分:有機ケイ素化合物またはその加水分解物
    C成分:アルコキシシリル基を有する密着促進成分
    D成分:硬化触媒
    E成分:溶剤
    を含む、ハードコート形成用組成物。
  2. 前記アルコキシシリル基を有する密着促進成分が、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートより成る群から選択された化合物の両末端に、反応性官能基であるアルコキシシリル基が結合していることを特徴とする、請求項1に記載のハードコート形成用組成物。
  3. 前記アルコキシシリル基を有する密着促進成分が、一般式(4):
    Figure 2017215585
    (式中、eおよびfは0〜2の整数を示し、R10はポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートよりなる群から選択される密着促進性のポリマー主鎖を示し、2個のR11は、それぞれ、同一または異なって、炭素数1〜20のアルキレン基を示し、当該アルキレン基は、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子を有していてもよく、1または複数個のR12およびR13は、それぞれ、同一または異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、2つのZは、それぞれ、同一または異なって、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、スルフィド結合、チオウレタン結合、チオウレア結合、チオエステル結合よりなる群から選択される化学結合を示す。)で表される、両末端にアルコキシシリル基を有する化合物である、請求項1に記載のハードコート形成用組成物。
  4. 樹脂基材と、前記樹脂基材上に直接形成されたハードコート層との積層体であって、前記ハードコート層が、請求項1〜3いずれかに記載のハードコート形成用組成物の硬化体である、積層体。
  5. 前記樹脂基材が、ポリカーボネートのレンズ基材であることを特徴とする、請求項4に記載の積層体。
  6. 前記樹脂基材が、ポリイミドのフレキシブル基材であることを特徴とする、請求項4に記載の積層体。
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