JP2017214575A - ポリ乳酸系樹脂用難燃剤及び難燃性樹脂組成物 - Google Patents

ポリ乳酸系樹脂用難燃剤及び難燃性樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】ハロゲンを含まない難燃剤であって、優れた難燃性を有するとともに、難燃剤等の樹脂添加剤によって引き起こされる樹脂の劣化に伴う樹脂物性等の低下が、抑制ないしは防止されたポリ乳酸系樹脂用難燃剤を提供する。【解決手段】ポリ乳酸系樹脂に添加するための難燃剤であって、(1)N,N’−ジアシルヒドラジン系成分及び芳香族ホスホン酸エステル類を含み、(2)前記N,N’−ジアシルヒドラジン系成分として特定の構造を有するN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体が中心金属に配位してなる有機金属錯体を含むポリ乳酸系樹脂用難燃剤に係る。【選択図】なし

Description

本発明は、新規なポリ乳酸系樹脂用難燃剤とそれを含む難燃性樹脂組成物に関する。特に、射出成形品及び押出成形品の成形に適しており、難燃性、加工性、柔軟性等に優れたノンハロゲン型難燃性ポリ乳酸系樹脂組成物及びその成形品に関する。
ポリ乳酸樹脂は、植物由来のバイオマスポリマーであり、地球温暖化の進行の原因の一つとされている二酸化炭素排出低減のため、カーボンニュートラルな合成樹脂として近年注目されている材料である。このポリ乳酸樹脂は、植物由来という特性に加え、廃棄後の処理によって二酸化炭素、水等に分解できることから、従来の石油由来樹脂の代替材料として様々な分野への応用が期待されている。
一般的な石油由来樹脂である合成樹脂(例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、又はそれらの組み合わせによる樹脂アロイ類)は、それぞれ特有の機械的性質、熱的特性、成型加工性等の特徴に応じて、建築材料、電気機器用材料、車輌部品、自動車内装部品、家庭用品のほか、種々の工業用品に広範囲に使用されている。
ポリ乳酸樹脂においても、一般的な石油由来の合成樹脂と同じように上記の広範な用途に使用するための検討が行われているものの、石油由来樹脂と同様、燃焼しやすいという欠点を有している。このため、ポリ乳酸樹脂を難燃化するための種々の方法が提案されている。
一般的な合成樹脂の難燃化の方法は、難燃剤を樹脂成分に配合する方法である。従来の難燃化するための方法のうち最も簡便な方法として、酸化アンチモンとハロゲン系有機化合物を添加する方法がある。ところが、ポリ乳酸樹脂の性質上、環境負荷の高いハロゲン系難燃剤は使用の自粛を強く求められている。このような現状に鑑みて、ハロゲン系難燃剤を使用せずに合成樹脂に難燃性を付与させる方法が要請されている。
ハロゲン系難燃剤を使用しない方法として、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ビスフェノールA縮合リン酸ジフェニルエステル、レゾルシノール縮合リン酸ジキシレニルエステル等の有機リン化合物を用いることが提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3等)。
しかし、これらの有機リン化合物はリン酸エステル型難燃剤に属するものであるため、ポリ乳酸樹脂のようなエステル結合部を有する合成樹脂と高温で加熱混練した場合にはエステル交換反応を起こし、合成樹脂の分子量を著しく低下させ、ポリ乳酸樹脂本来の物性を劣化させてしまう。しかも、リン酸エステル型難燃剤自体も空気中の水分等で徐々に加水分解し、リン酸を生成する可能性がある。合成樹脂中でリン酸が生成された場合には、合成樹脂の分子量を低下させたり、電気・電子部品等の用途に用いた場合には、短絡等の原因となるおそれがある。
また、ポリ乳酸樹脂に添加する難燃剤として、特に少量で効果があると言われている無機系難燃剤がある。例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属塩のほか、エチレンジアミン四酢酸銅、アセチルアセタナート鉄等の有機金属錯体等がある(特許文献4)。
ところが、これらの金属酸化物、金属塩又は有機金属錯体は、ポリ乳酸樹脂に対する熱分解(解重合)触媒として作用するため、特に高い温度で混練又は加工する際、ポリ乳酸樹脂の分子量低下を誘起し、得られる成形物の外観、機械的性質等を大幅に劣化させてしまうおそれがある。また、この現象を抑制するため、架橋促進剤(加水分解抑制剤)としてカルボジイミド系化合物の添加、金属塩等の多孔質シリカへの担持等の方法が提案されているが、高温での耐熱性、耐水性及び分子量低下の抑制を達成しつつ、高度な難燃性を付与することは困難である。
一方、本願出願人は、先に合成樹脂用のノンハロゲン型難燃剤のうち、薄肉成形品においても非常に高度な難燃性を有し、さらに耐水性、耐加水分解性、樹脂の機械的性質及び安定性を高次に調和させる難燃剤として、いくつかのホスホン酸エステル型難燃剤を提案している(特許文献5、特許文献6)。例えば、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド−10−アリールオキシホスホネート等の芳香族ホスホン酸エステル類は、ポリエステル系合成樹脂に対して非常に高度な難燃性を有する。これは、ホスファフェナントレン環を有する芳香族ホスホン酸エステル類から燃焼時に分解発生するラジカル(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド−10−イルラジカル)が、ハロゲン系難燃剤のように気相中でラジカルトラップ効果を発揮することにより、リン酸エステル、縮合リン酸エステル等とは異なるメカニズムで燃焼を抑制するためと考えられる。さらに、上記の芳香族ホスホン酸エステル類は、いわゆる「ドリップ型難燃剤」とよばれる難燃剤であるが、他のリン酸エステル系難燃性可塑剤と異なり、燃焼中に生じた火炎ドリップを滴下中に消炎させることが可能であり、ドリップ型であるにもかかわらず、例えばUL94V燃焼試験等の高次の難燃性が必要な場合においても、合成樹脂に対してV−0相当の難燃性を付与することが可能な極めて特異的な難燃剤である。
特開2005−89546 特開2016−60908 特開2014−74148 特開2005−344042 特開2011−184687 特開2013−28731
上記のような芳香族ホスホン酸エステル系難燃剤を用いても、ポリ乳酸樹脂に効果的に難燃性を付与するためにはさらなる改善が必要である。特に、ポリ乳酸樹脂の加工性、機械的性質等を向上させるために可塑剤が添加される場合、可塑化効果による燃焼時のドリップ性の著しい昂進によって、ドリップ中に消炎させることができないことがある。特に、ポリ乳酸樹脂に対して非常に効果の高い可塑剤としてフタル酸エステル、コハク酸エステル、アジピン酸エステル等のカルボン酸エステル系可塑剤をポリ乳酸樹脂に添加した場合、可塑剤が高い可燃性を有することと相俟って上記のようなドリップ型難燃剤で高度な難燃性を得ることは極めて困難である。
このように、ノンハロゲン型難燃剤のうち、ポリ乳酸樹脂に対して耐加水分解性、樹脂の機械的性質及び耐熱分解性を高次に発現させつつ、非常に高度な難燃性を付与できる難燃剤は未だ存在しない。
従って、本発明の主な目的は、ポリ乳酸樹脂本来の特性を効果的に維持しつつ、優れた難燃性を付与できるノンハロゲン型難燃剤を提供することにある。さらに、優れた難燃性及び機械的性質を兼ね備えたポリ乳酸系樹脂組成物を提供することも目的とする。
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の難燃成分の組み合わせを含む難燃剤をポリ乳酸樹脂に適用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記のポリ乳酸系樹脂用難燃剤及び難燃性樹脂組成物に係る。
1. ポリ乳酸系樹脂に添加するための難燃剤であって、
(1)N,N’−ジアシルヒドラジン系成分及び芳香族ホスホン酸エステル類を含み、
(2)前記N,N’−ジアシルヒドラジン系成分として、
(2−1)下記一般式(I)又は(II);
[式中、R及びRは、互いに同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していても良い炭化水素基を示す。Rは、置換基を有していていも良い炭化水素基を示す。]で表されるN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体の少なくとも1種が配位子として中心金属M(ただし、Mは、遷移金属を示す。)に配位してなる有機金属錯体、及び
(2−2)前記一般式(I)又は(II)で表されるN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体の少なくとも1種と金属M(ただし、Mは、遷移金属を示す。)の金属塩との組み合わせの少なくとも一方を含むことを特徴とするポリ乳酸系樹脂用難燃剤。
2. 前記N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体が、
(a)N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン及び
(b)デカメチレンカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド
の少なくとも1種である、前記項1に記載のポリ乳酸系樹脂用難燃剤。
3. 前記M及び/又はMが第4周期元素の遷移金属である、前記項1又は2に記載のポリ乳酸系樹脂用難燃剤。
4. 前記(2−1)におけるN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体Aと中心金属Mとの構成モル比が、A:M=1/n:4〜4/n:1[ただし、nは、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体1分子中におけるジアシルヒドラジン官能基数を示す。]であり、かつ、
前記(2−2)におけるN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体Aと金属塩に含まれるMとの構成モル比が、A:M=1/n:4〜4/n:1[ただし、nは、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体1分子中におけるジアシルヒドラジン官能基数を示す。]である、
前記項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂用難燃剤。
5. 芳香族ホスホン酸エステル類が、
(1)下記式(III)
[式中、R〜R10は、互いに同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していても良い炭化水素基を示す。]で表される芳香族ホスホン酸エステル及び
(2)下記式(IV)
[式中、Rは、炭素数が1〜18であり、アルキレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基、シクロアルキレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基又はヘテロアリーレン基であって、置換基を有していても良いものを示す。]で表される芳香族縮合ホスホ酸エステル
の少なくとも1種を含む、前記項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂用難燃剤。
6. 1)ポリ乳酸系樹脂と2)前記項1に記載の有機金属錯体及び芳香族ホスホン酸エステル類とを含む難燃性樹脂組成物。
7. 前記項6に記載の難燃性樹脂組成物を成形してなる難燃性樹脂成形品。
8. 電気・電子部品、OA機器部品、家電機器部品、自動車用部品又は機器機構部品に用いられる、前記項7に記載の難燃性樹脂成形品。
本発明難燃剤によれば、特定の化学構造を有する有機金属錯体及び芳香族ホスホン酸エステル類の組み合わせを樹脂成分中に含有させることができるので、ポリ乳酸系樹脂(特にポリ乳酸樹脂)の本来の機械的性質を効果的に保持したままで高度な難燃性を付与すことができる。その理由は定かではないが、以下のような作用機序によるものと考えられる。すなわち、本発明では、金属成分を金属塩等の形態ではなく、特定の有機金属錯体として樹脂成分中に含有させるので、通常時(樹脂組成物の使用段階)には金属成分の作用を効果的に抑制(すなわち、樹脂の劣化を抑制)して高い物理的特性を発現させる一方、非常時(燃焼時)には金属成分の作用(例えば樹脂の低分子化)を発現させ、芳香族ホスホン酸エステルの作用とともに、ドリップが生じやすい性質に変えることによって、高度な難燃性が実現されるものと考えられる。すなわち、本発明難燃剤は、ポリ乳酸系樹脂に添加されている場合、主として、燃焼時にドリップを落下させながら消炎する、いわゆるドリップ型難燃剤として機能し得る。より具体的には、本発明難燃剤を含む樹脂組成物に着火した際、燃焼部分がドリップ化(液滴化)して樹脂組成物本体から切り離される機能を発現する。これによって、樹脂組成物本体の延焼を遮断することができる。また同時に、ドリップ化した燃焼部分は、本発明難燃剤のラジカルトラップ効果によって消火される。これによって、地面(例えばカーペット、床材等)に燃焼部分が落下することによる延焼も未然に防ぐことができる。
このため、本発明では、特に可燃性の可塑剤を樹脂成分中に含有している場合でも、優れた難燃性とともに物理的特性を発揮させることが可能である。例えば、可燃性のフタル酸エステル、コハク酸エステル又はアジピン酸エステル等のカルボン酸エステル系可塑剤等を併用した場合でも、より少ない量の難燃剤で優れた分解安定性及び難燃性を発揮することができる。一般に、可塑剤を配合すれば樹脂組成物がドリップ化しやすくなるのでそれだけ延焼しやくなるが、本発明難燃剤によれば上記のようなラジカルトラップ効果によって延焼を効果的に防止することができる。
従って、このような難燃剤を含む難燃性樹脂組成物及び成形品は、種々の樹脂が本来有する物性を良好に維持しつつ、従来技術と同等又はそれ以上の高度な難燃性を発揮することができる。
さらに、樹脂成分中の難燃成分となる有機金属錯体及び芳香族ホスホン酸エステルはいずれも分子中にハロゲン元素を含まないため、難燃性樹脂及び成形品が燃焼した場合でも有害ガスの発生が抑制されている。
化合物(23)(上図)及び化合物(1)(下図)の各IRチャートをそれぞれ示す。 化合物(26)(上図)及び化合物(27)(下図)の各IRチャートをそれぞれ示す。 化合物(23)(上図)及び化合物(33)(下図)の各IRチャートをそれぞれ示す。
1.ポリ乳酸系樹脂用難燃剤
本発明のポリ乳酸系樹脂用難燃剤(本発明難燃剤)は、ポリ乳酸系樹脂に添加するための難燃剤であって、
(1)N,N’−ジアシルヒドラジン系成分及び芳香族ホスホン酸エステル類を含み、
(2)前記N,N’−ジアシルヒドラジン系成分として、
(2−1)下記一般式(I)又は(II);
[式中、R及びRは、互いに同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していても良い炭化水素基を示す。Rは、置換基を有していても良い炭化水素基を示す。]で表されるN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体の少なくとも1種が配位子として中心金属M(ただし、Mは、遷移金属を示す。)に配位してなる有機金属錯体、及び
(2−2)前記一般式(I)又は(II)で表されるN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体の少なくとも1種と金属M(ただし、Mは、遷移金属を示す。)の金属塩との組み合わせの少なくとも一方を含むことを特徴とする。
本発明難燃剤は、上記(1)に示すようにN,N’−ジアシルヒドラジン系成分及び芳香族ホスホン酸エステル類という2種類の成分を含むことを前提としたうえで、前記N,N’−ジアシルヒドラジン系成分として上記(2−1)及び/又は(2−2)に示すような成分を含むものである。
なお、上記(2−1)及び(2−2)における特定のN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体は、以下においてそれぞれ「N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体A」及び「N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体A」と表記することがある。
(A)N,N’−ジアシルヒドラジン系成分
上記(2−1)の有機金属錯体
a)有機金属錯体の構成
上記(2−1)は、配位子としてN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体、中心金属としてMを含む有機金属錯体を示す。本発明の有機金属錯体は、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体を配位子として、中心金属Mに配位結合してなる有機金属錯体より構成されているものであり、本発明難燃剤の有効成分(難燃化成分)の一つとして機能するものである。本発明難燃剤としては、このような有機金属錯体の1種又は2種以上を含有する。
N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体としては、下記一般式(I)又は(II);
[式中、R及びRは、互いに同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していても良い炭化水素基を示す。Rは、置換基を有していていも良い炭化水素基を示す。]で表されるN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体の少なくとも1種を採用することができる。
上記R及びRにおける炭化水素基としては、鎖状(直鎖及び分岐鎖のいずれでも良い。)及び環状(単環、縮合多環、架橋環及びスピロ環のいずれでも良い。)のいずれであっても良い。例えば、側鎖を有する環状炭化水素基が挙げられる。また、炭化水素基は、飽和及び不飽和のいずれでも良い。例えば、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、水酸基等の置換基を有していても良い。アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基又は水酸基を有していても良い。アリールアルキル基としては、アリールアルキル基中のアリール基は前記アリール基と同様、アリールアルキル基中のアルキル基も前記アルキル基と同様である。
一般式(II)の中のRは、置換基を有していても良い炭化水素基を表し、飽和及び不飽和のいずれでも良い。炭化水素基としては、特に限定されず、例えばアルキレン基等が挙げられる。アルキレン基は、特に炭素数1〜20の直鎖状アルキレン基が好ましい。
一般式(I)又は(II)で表されるN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体の具体例としては、例えばN,N’−ジホルミルヒドラジン、N,N’−ジアセチルヒドラジン、N,N’−ジプロピオニルヒドラジン、N,N’−ジブチリルヒドラジン、N,N’−ジベンゾイルヒドラジン、N,N’−ジトルオイルヒドラジン、N,N’−ジサチリロイルヒドラジン、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン(下記式(1)の化合物)、デカメチレンカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド(下記式(2)の化合物)等が挙げられる。
これらジアシルヒドラジン誘導体は、公知の方法で製造することが可能であるが、市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば(株)ADEKA製の商品名「アデカスタブCDA−10」(化合物(1))、「アデカスタブCDA-6」(化合物(2))等が挙げられる。
金属Mとしては、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体が配位子となって錯体を形成できる中心金属となり得るものであれば限定されないが、特に第4周期遷移金属が好ましい。例えば、スカンジウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等を挙げることができるが、特に入手の容易さ及びコストという点において、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛の少なくとも1種が好ましい。
有機金属錯体における、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体Aと中心金属Mの構成モル比は、A:M=1/n:4〜4/n:1[nは、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体1分子中におけるジアシルヒドラジン官能基数を表す。]の割合とすれば良い。より好ましくはA:M=1/n:1〜A:M=2/n:1の構成モル比の有機金属錯体が使用される。
例えば、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体Aが化合物(1)であった場合、1分子中にジアシルヒドラジン官能基は1つなので、より好ましい割合として、化合物(1):M=1:1〜2:1となる。また、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体Aが化合物(2)であった場合、1分子中にジアシルヒドラジン官能基は2つなので、より好ましい割合として、化合物(1):M=0.5:1〜1:1となる。
有機金属錯体の性状は、特に制限されないが、一般的には粉末状であり、その平均粒径は特に制限されないが、例えば0.1〜1000μmの範囲内で好適に使用することができる。また、粉末の粒径等を粉砕、分級等の公知の方法により適宜調整することも可能である。
本発明難燃剤中の有機金属錯体の含有量は、特に制限されないが、通常は0.01〜99重量%、好ましくは0.1〜90重量%の範囲内で適宜設定することができる。
b)有機金属錯体の合成
このような有機金属錯体は、例えば公知の合成方法により入手することができる。例えば、Mのイオンを含む溶液にN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体を添加し、反応させることにより有機金属錯体を不溶性沈殿物として生成させる工程を含む方法を好適に採用することができる。
上記N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体は、前記「a)有機金属錯体」に示した各化合物を用いることができる。
上記溶液については、金属Mのイオンの供給源としてMの金属塩(以下「金属塩B1」という。)を好適に用いることができる。前記金属塩は、無機酸及び有機酸の遷移金属塩のうち、1種又は2種以上の混合物を用いることができる。これらの塩は、水和物又は無水物のいずれであっても良い。
前記金属塩の金属種としては、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体が配位結合し得るものであれば限定されないが、特に第4周期遷移金属が好ましい。例えば、スカンジウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等が挙げることができるが、このうち、特にマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛の少なくとも1種が好ましい。これらの金属の塩は、鉱酸等より調製される無機酸塩及び有機酸より調製される有機酸塩のどちらも有用である。無機酸塩の例としては、例えば塩化物、臭化物、ヨウ化物、水酸化物、硝酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩等が挙げられる。有機酸塩の例としては、例えば酢酸塩、酪酸塩、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等のアルカン酸塩のほか、乳酸塩、シュウ酸塩、安息香酸塩等を挙げることができる。
上記溶液の溶媒としては、各種の有機溶媒を用いることができる。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケ−トン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶媒、n−ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素系有機溶媒、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体A又は金属塩Bをそれぞれ溶解させうる多くの有機溶媒のうち、1つ以上の溶媒を組み合わせて反応に使用することができる。また、反応系としては、均一系溶液中又は不均一系溶液中のどちらでも反応させることが可能である。不均一系溶液中では、例えば水−有機溶媒を組み合わせて反応させることができる。
出発原料としてのN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体Aと金属塩Bの構成モル比は、A:B=1/n:4〜4/n:1[nは、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体1分子中におけるジアシルヒドラジン官能基数を表す。]の割合で反応生成した錯体を使用することが可能である。より好ましくはA:B=1/n:1〜2/n:1の構成モル比の有機金属錯体が使用される。
例えば、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体Aが化合物(1)であった場合、1分子中にジアシルヒドラジン官能基は1つなので、より好ましい割合として、化合物(1):金属塩B=1:1〜2:1となる。また、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体Aが化合物(2)であった場合、1分子中にジアシルヒドラジン官能基は2つなので、より好ましい割合として、化合物(1):B=0.5:1〜1:1となる。
本発明では、上記溶液中には、必要に応じて反応触媒としてアルキルアミン類等の有機アミン系触媒を使用しても良い。例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、4−ジメチルアミノピリジン等を好適に用いることができる。このような反応触媒を用いることにより、より効率的に有機金属錯体を生成させることができる。
反応温度は、特に常温〜加熱条件下のどちらで行われても良い。例えば、M1のイオンを含む溶液にN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体を添加し、50〜150℃の加熱下で反応させることができる。このようにして得られた不溶性沈殿物をろ過等により固液分離した後、必要に応じて洗浄及び乾燥することによって有機金属錯体を得ることができる。
上記(2−2)の組み合わせ
上記(2−2)は、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体Aと金属Mの金属塩(以下「金属塩B」と表記する。)との組み合わせを示す。
このような組み合わせをポリ乳酸系樹脂に配合し、溶融混練することにより、樹脂組成物中で上記(2−1)のような有機金属錯体が形成される結果、上記(2−1)の有機金属錯体を添加した場合と同様の難燃効果等を得ることができる。
本発明において、上記「組み合わせ」とは、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体Aと金属塩Bとの混合物のほか、ポリ乳酸系樹脂に添加するまで少なくとも上記N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体Aと金属塩Bとが別々に収容されたキットも包含する。
本発明難燃剤をキット化する場合は、例えば1)N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体A、2)金属塩及び3)芳香族ホスホン酸エステル類からなる3剤型;1)N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体Aと、2)の金属塩B及び芳香族ホスホン酸エステル類の混合物との2剤型;1)N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体A及び芳香族ホスホン酸エステル類の混合物と、2)金属塩Bとの2剤型等を挙げることができる。
N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体A及び金属塩Bとしては、上記(2−1)で掲示した各成分を用いることができる。従って、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体Aと金属塩Bの構成モル比も、上記(2−1)で示したN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体Aと金属塩Bの構成モル比と同様にすれば良い。
その他の組み合わせ
本発明では、上記(2−1)の有機金属錯体を単独で用いる場合、上記(2−2)の組み合わせを単独で用いる場合のほか、上記(2−1)の有機金属錯体と上記(2−2)の組み合わせとを併用することもできる。かかる併用の場合、中心金属Mと金属塩のMとは互いに同じ又は異なっていても良い。また、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体AとN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体Aとは互いに同じ又は異なっていても良い。特に、本発明では、未反応金属塩の残存を確実に回避することにより溶融混練時のポリ乳酸系樹脂の品質劣化をより効果的に回避できるという点において、上記(2−1)の有機金属錯体を単独で用いることがより好ましい。
(B)芳香族ホスホン酸エステル類
本発明のポリ乳酸樹脂用難燃剤においては、N,N’−ジアシルヒドラジン系成分とともに、芳香族ホスホン酸エステル類を含む。芳香族ホスホン酸エステル類も、難燃剤として機能するものであり、その限りにおいて特にその種類は限定されない。また、芳香族ホスホン酸エステルは、1種又は2種以上を含有しても良い。それらの中でも、本発明では、特に下記一般式(III)
〔式中、R〜R10は、互いに同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していても良い炭化水素基を示す。〕
で表される芳香族ホスホン酸エステルを含むことが好ましい。すなわち、一般式(III)で示される芳香族ホスホン酸エステルも、本発明難燃剤の有効成分として機能するものである。
一般式(III)の中のR〜R10は、水素原子又は置換基を有していても良い炭化水素基を示す。この場合、それぞれのR〜R10は、互いに同一の炭化水素基であっても良く、互いに異なる炭化水素基であっても良い。R〜R10は、置換基を有していても良い炭化水素基よりも、水素原子である方が経済的には好ましい。特に、本発明では、R〜R10は、すべて水素原子であることがより好ましい。
上記炭化水素基としては、鎖状(直鎖及び分岐鎖のいずれでも良い。)及び環状(単環、縮合多環、架橋環及びスピロ環のいずれでも良い。)のいずれであっても良い。例えば、側鎖を有する環状炭化水素基が挙げられる。また、炭化水素基は、飽和及び不飽和のいずれでも良い。
このような炭化水素基としては、特に限定されないが、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。これらの炭化水素基の炭素数としては1〜18が好ましく、特に1〜4程度がより好ましい。この炭素数は、置換基を有する場合は置換基の炭素数も含む炭素数である。
一般式(III)で表される芳香族ホスホン酸エステルの具体例としては、下記式(3)〜(10)で表される化合物が挙げられる。
また、本発明のポリ乳酸樹脂用難燃剤は、芳香族ホスホン酸エステル類として、下記一般式(IV)
〔式中、Rは、炭素数が1〜18であり、置換基を有していても良いアルキレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基、シクロアルキレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基又はヘテロアリーレン基を示す。〕で表される芳香族縮合ホスホン酸エステルを含有していても良い。
一般式(IV)の中のRは、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアリーレン基又はヘテロシクロアルキレン基であって、置換基を有していても良いものを示す。上記置換基としては、ハロゲン以外の置換基であれば良く、例えばアミノ基、アミド基、ニトロ基等の窒素系置換基、スルホン酸基等の硫黄系置換基、カルボキシル基、アルコキシ基等の炭素系置換基等が挙げられる。また、Rの炭素数は1〜18であるが、前記炭素数は置換基を有する場合は置換基も含めた炭素数を示す。
アルキレン基としては、直鎖状又は分岐状のアルキレン基のいずれでも良い。具体例としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等が挙げられる。すなわち、本発明では、アルキレン基は無置換のものを好適に用いることができる。これらのアルキレン基の炭素数としては1〜12程度が好ましく、特に2〜6がより好ましい。
アリーレン基としては、置換基を有していても良い環状(単環、縮合多環、架橋環及びスピロ環のいずれでも良い。)のいずれであっても良い。例えば、フェニレン基、ペンタレニレン基、インデニレン基、ナフタレニレン基、アズレニレン基、フェナレニレン基、ビフェニレン基等の単環式、二環式又は三環式のアリーレン基、及びプロピルジフェニレン基等のアルキルアリーレン基が挙げられる。一般式(IV)のRとしては、炭素数6〜18のアリーレン基が好ましく、例えばフェニレン基、プロピルジフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。本発明では、フェニレン基がより好ましい。
シクロアルキレン基としては、置換基を有していても良い環状(単環、縮合多環、架橋環及びスピロ環の水素化物のいずれでも良い。)のいずれであっても良い。例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基等が挙げられる。一般式(IV)のRとしては、炭素数3〜8のシクロアルキレン基であることが好ましい。
ヘテロアルキレン基としては、前記アルキレン基を構成する炭素原子の少なくとも1つがヘテロ原子(特に酸素原子、窒素原子及び硫黄原子の少なくとも1種)に代置されている基が挙げられる。一般式(IV)のRとしては、ヘテロ原子が酸素原子で代置されている炭素数1〜12のヘテロアルキレン基が最も好ましい。より具体的には、3−オキサペンチレン、3,6−ジオキサオクチレン、3,6,9−トリオキサウンデカレン、1,4−ジメチル−3−オキサ−1,5−ペンチレン、1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサ−1,8−オクチレン、1,4,7,10−テトラメチル−3,6,9−トリオキサ−1,11−ウンデセン等が例示される。このうち、3−オキサペンチレン又は1,4−ジメチル−3−オキサ−1,5−ペンチレンが好ましい。
ヘテロシクロアルキレン基としては、前記シクロアルキレン基を構成する炭素原子の少なくとも1つがヘテロ原子(特に酸素原子、窒素原子及び硫黄原子の少なくとも1種)に代置されている基が挙げられる。一般式(IV)のRとしては、5員環又は6員環の環状ヘテロアリーレン基であることが好ましい。より具体的には、ピペリジンジイル基、ピロリジンジイル基、ピペラジジイル基、オキセタンジイル基、テトラヒドロフランジイル基等であることが好ましい。
ヘテロアリーレン基としては、前記アリーレン基を構成する炭素原子の少なくとも1つがヘテロ原子(特に酸素原子、窒素原子及び硫黄原子の少なくとも1種)に代置されている基が挙げられる。一般式(IV)のRとしては、5員環又は6員環の環状ヘテロアリール基であることが好ましい。より具体的には、フランジイル基、ピロリジンジイル基、ピリジンジイル基、ピリミジンジイル基、キノリジンジイル基、イソキノリンジイル基等がより好ましい。
一般式(IV)で表される芳香族縮合ホスホン酸エステルの具体例としては、下記式(11)〜(22)で表される化合物が挙げられる。これら化合物自体は、公知又は市販のものを使用することができる。また、公知の合成方法により製造することもできる。
すなわち、一般式(IV)で示される芳香族縮合ホスホン酸エステルも、一般式(III)で示される芳香族ホスホン酸エステル同様、本発明難燃剤の有効成分として機能するものであり、1種又は2種以上を含有しても良い。
上記のような芳香族ホスホン酸エステル類は、公知のものを使用することができる。また、例えば特開2006−83491、特開2007−223934、特開2009−108089、特開2011−184687、特開2013−28731等に記載されているホスホン酸エステルの製造方法によって得られる芳香族ホスホン酸エステル類を使用することもできる。
本発明難燃剤中の芳香族ホスホン酸エステル類の含有量は、特に制限されないが、通常は1〜99.9重量%程度の範囲内とし、好ましくは10〜90重量%の範囲内で適宜設定することができる。
また、本発明難燃剤中の有機金属錯体と芳香族ホスホン酸エステル類との比率は限定的ではないが、通常は有機金属錯体/芳香族ホスホン酸エステル類(重量比)=1/1000〜100/1重量部、好ましくは1/100〜10/1重量部の範囲内で設定すれば良い。
(C)その他の成分
本発明難燃剤には、前記の有機金属錯体及び芳香族ホスホン酸エステル類のほか、必要に応じて副成分が含まれていても良い。例えば、難燃助剤を副成分として好適に用いることができる。
難燃助剤としては、有機金属錯体及び芳香族ホスホン酸エステル類以外のリン含有化合物、窒素含有化合物、硫黄含有化合物、ケイ素含有化合物、無機金属系化合物等を本発明の有機金属錯体及び芳香族ホスホン酸エステル類が有する難燃機能等を妨げない範囲内で適宜配合することができる。
前記リン含有化合物としては、例えば赤リン、リン酸、亜リン酸等の非縮合又は縮合リン酸のアミン塩又は金属塩、リン酸ホウ素のような無機リン含有化合物、リン酸オルトリン酸エステル又はその縮合物、リン酸エステルアミド、上記以外のホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステルのようなリン含有エステル化合物、トリアジン又はトリアゾール系化合物又はその塩(金属塩、(ポリ)リン酸塩、硫酸塩等)、尿素化合物、(ポリ)リン酸アミド、ヒンダードアミン(HALS,特にNOR型HALS等)含有化合物のような窒素含有化合物、有機スルホン酸(アルカンスルホン酸、パーフルオロアルカンスルホン酸、アレーンスルホン酸等)又はその金属塩、スルホン化ポリマー、有機スルホン酸アミド又はその塩(アンモニウム塩、金属塩等)のような硫黄含有化合物、(ポリ)オルガノシロキサンを含む樹脂・エラストマー・オイル等のシリコーン系化合物、ゼオライト等のようなシリコン含有化合物、ホウ酸塩等の無機酸の金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物等のような無機金属系化合物が挙げられる。これら難燃助剤は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
難燃助剤の含有量は、特に限定されないが、例えば芳香族ホスホン酸エステル類/難燃助剤(重量比)=1/100〜100/1、好ましくは10/100〜100/10の範囲内となるように適宜設定することができる。
2.ポリ乳酸系樹脂用難燃剤の使用
本発明難燃剤は、ポリ乳酸系樹脂に対して難燃性を付与するのに適しており、いわゆる合成樹脂内部添加型難燃剤として好適に用いることができる。すなわち、樹脂成分に混合することにより当該樹脂成分に難燃性を付与するための難燃剤として有用である。具体的な使用方法としては、同じタイプの公知又は市販の難燃剤と同様にすれば良く、例えば本発明難燃剤を樹脂に混合することにより当該樹脂に難燃性を付与することができる。混合方法は、本発明難燃剤を樹脂中に均一に混合できれば良く、例えば乾式混合、湿式混合、溶融混練等のいずれの方法であっても良い。本発明では、前記(2−1)及び前記(2−2)のいずれも適用できるという点で溶融混練により本発明難燃剤を添加・混合することにより難燃性樹脂組成物を調製することが好ましい)。ただし、本発明では、最終的には成形時に溶融混練されるので、難燃性樹脂組成物はドライブレンド品であっても良い。
3.難燃性樹脂組成物
本発明は、a)ポリ乳酸系樹脂と、b)本発明のポリ乳酸系樹脂用難燃剤の有機金属錯体と芳香族ホスホン酸エステル類とを含む難燃性樹脂組成物(ポリ乳酸樹脂を含む難燃性樹脂組成物)を包含する。以下、各成分について説明する。
a)ポリ乳酸系樹脂
ポリ乳酸系樹脂は、ポリ乳酸樹脂単独又はポリ乳酸樹脂を主成分とするものである。配合される樹脂成分としては、特に制限されるものではなく、例えば成形用、フィルム用、シート用、糸用等として利用されるポリ乳酸系樹脂のほか、種々の樹脂の組成物を適用することができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂を構成し得る樹脂成分としては、ポリ乳酸樹脂のほか、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエーテル・エーテルケトン樹脂、ポリフェニレン・スルフィド樹脂、ポリアミド・イミド樹脂、ポリエーテル・スルフォン樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリメチル・ペンテン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂等の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のホモポリマーあるいはコポリマーの単独又はそれらの組み合わせによるポリマーアロイ類が挙げられる。
ポリマーアロイ類としては、例えば2種以上の樹脂成分を相溶化剤の共存下又は非共存下に混練して製造されたアロイ樹脂が挙げられる。このようなアロイ樹脂としては、例えばポリプロピレン/ポリアミド、ポリプロピレン/ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体/ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体/ポリアミド、ポリカーボネート/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリカーボネート/ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート/ポリアミド、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
本発明の難燃性樹脂組成物中における樹脂成分の含有量は、樹脂成分の種類、用途等に応じて適宜設定できるが、通常は50重量%以上とし、好ましくは60〜99重量%、より好ましくは65〜98重量%、最も好ましくは70〜95重量%とすれば良い。以下、特にポリ乳酸系樹脂を構成し得る各樹脂成分について説明する。
a−1)ポリ乳酸樹脂
ポリ乳酸樹脂としては、できるだけL体純度の高い乳酸を主成分とする高結晶性・高融点の乳酸重合物であるポリ−L−乳酸(PLLA)が望ましく、ポリ−L−乳酸(PLLA)中のD体含有率は5モル%未満(特に4.8%モル以下)であることが望ましい。また、乳酸以外の他の共重合成分を含有しても良く、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレンジオールからなるグリコール化合物、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸類、カプロラクトン等のラクトン類等を挙げることができる。これらの共重合成分含有率は0〜50モル%であることが望ましく、0〜10モル%であることがより好ましい。
本発明のポリ乳酸の重量平均分子量(「Styragel HR4(内径7.8mm×300mm,ウォーターズ社製)」をカラムとした場合におけるGPC法によるポリスチレン換算値)は10,000〜400,000、好ましくは50,000〜250,000である。また、190℃及び荷重21.2Nにおけるメルトフローレートは0.1〜50g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分である。メルトフローレートが50g/10分を超える場合には、溶融粘度が低すぎて成形体の機械的性質又は耐熱性が劣ることがある。またメルトフローレートが0.1g/10分未満の場合には、成形加工時の負荷が高くなりすぎて生産性が低下することがある。
ポリ乳酸自体は、公知の製造方法によって製造することができる。例えば、溶融重合法により乳酸を脱水縮合することによりポリ乳酸を得る製造方法、さらに減圧加熱してラクチド(環状二量体)を得た後、オクタン酸スズ等の重合触媒にて開環重合して高分子量ポリ乳酸を得るラクチド法による製造方法等が挙げられる。また、ポリ乳酸自体は、市販品を使用することもできる。例えば、商品名「テラマックTE−2000」、「テラマックTE−4000」(いずれもユニチカ(株)製)、商品名「レイシアH−100」、「レイシアH−400」(いずれも三井化学(株)製)等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明におけるポリ乳酸系樹脂(樹脂成分)におけるポリ乳酸樹脂の含有量は特に限定されないが、通常は50〜100重量%、好ましくは80〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%、最も好ましくは95〜100重量%とすれば良い。ポリ乳酸樹脂の含有量が100重量%未満の場合、本発明の効果を妨げない範囲内において、以下に示すような樹脂成分が含まれていても良い。
a−2)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィンの単独重合体、前記のα―オレフィンどうしのランダムあるいはブロック共重合体の単体及び混合物等の樹脂、さらにこれと酢酸ビニル、無水マレイン酸等が共重合された樹脂等のポリオレフィン系樹脂が好適に使用することができる。例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体等のようなポリプロピレン系樹脂、低密度エチレン単独重合体、高密度エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体のようなポリエチレン系樹脂等が挙げられる。また、本発明において難燃性樹脂組成物の物性を改良するために、例えばポリエチレン系合成ゴム、ポリオレフィン系合成ゴム等のゴム類を配合しても良い。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
a−3)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂としては、例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等のようなスチレン系単量体の単独重合体又は共重合体、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸等のα,β−モノオレフィン性不飽和カルボン酸又は酸無水物あるいはそのエステル等のビニル単量体とスチレン系単量体との共重合体、スチレン系グラフト共重合体、スチレン系ブロック共重合体等が挙げられる。好ましくは、ポリスチレン(GPPS)、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、ゴム成分にスチレン系単量体が重合した耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリスチレン系グラフト又はブロック共重合体等が使用できる。ポリスチレン系グラフト共重合体としては、ゴム成分に少なくともスチレン系単量体及び共重合性単量体がグラフト重合した共重合体(例えば、ポリブタジエンにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合したABS樹脂、アクリルゴムにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合したAAS樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体にスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合した重合体、エチレン−プロピレンゴムにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合した重合体、ポリブタジエンにスチレンとメタクリル酸メチルをグラフト重合したMBS樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムにスチレン及びアクリロニトリルがグラフト重合した樹脂等が挙げられる。ブロック共重合体としては、ポリスチレンブロックとジエン又はオレフィンブロックとで構成された共重合体(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)ブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレン(SEPS)ブロック共重合体)等が挙げられる。これらのスチレン系樹脂は、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
a−4)ポリビニル系樹脂
ポリビニル系樹脂としては、ビニル系単量体(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、クロトン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル;塩素含有ビニル単量体(例えば、塩化ビニル、クロロプレン);フッ素含有ビニル単量体(例えば、フルオロエチレン等);メチルビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のビニルアミン類等)の単独又は共重合体、あるいは他の共重合可能なモノマーとの共重合体等が含まれる。前記ビニル系樹脂の誘導体(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等)も使用できる。これらのビニル系樹脂は単独又は2種以上組み合わせて使用できる。
a−5)ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂としては、例えばε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタム等の開環重合体(ω−アミノカルボン酸重合体)のほか、ジアミンとジカルボン酸との共重縮合体等を挙げることができ、具体的には、ポリアミド3、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T等が挙げられる。これらのポリアミド系樹脂は、単独又は2種以上組み合わせて使用できる。
a−6)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂としては、アルキレンテレフタレート、アルキレンナフタレート等のアルキレンアリレート単位を主成分とする単独重合体又は共重合体等が例示できる。より具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の単独重合体、アルキレンテレフタレート及び/又はアルキレンナフタレートを主成分として含有する共重合体等が挙げられる。特に好ましいポリエステル系樹脂として、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、テトラメチレン−2,6−ナフタレート等のアルキレンアリレート単位の単独重合体、又はそれらの共重合体を挙げることができる。これらのポリエステル系樹脂は単独又は2種以上組み合わせて使用できる。なお、ポリエステル系樹脂は、溶融成形性等を損なわない限り、直鎖状のみならず分岐鎖構造を有していても良く、架橋されていても良い。また、液晶ポリエステルであっても良い。
a−7)ポリエーテル系樹脂
ポリエーテル系樹脂としては、例えばアルキレンエーテルの単独重合体、スチレン系化合物をグラフト共重合せしめたポリアルキレンエーテル、ポリアルキレンエーテルとスチレン系重合体を混合したもの等が挙げられる。より具体的には、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリアルキレンエーテルの単独重合体、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン等のスチレン系化合物をグラフト共重合せしめたポリフェニレンエーテルが挙げられる。好ましくは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル及びポリスチレンをグラフト共重合せしめたポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル[変性ポリフェニレンエーテル]を挙げることができる。ポリフェニレンオキシド系樹脂は、単独又は2種以上組み合わせて使用できる
a−8)ポリカーボネート系樹脂
ポリカーボネート系樹脂には、ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン又はジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとの反応により得られる重合体等が例示できる。ジヒドロキシ化合物は、脂環族化合物等であっても良いが、好ましくはビスフェノール化合物である。ビスフェノール化合物としては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン等のビス(ヒドロキシアリール)C1−6アルカン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)C4−10シクロアルカン;4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル;4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン;4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド;4,4′−ジヒドロキシジフェニルケトン等が挙げられる。好ましいポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールA型ポリカーボネートが含まれる。ポリカーボネート系樹脂は、単独又は2種以上組み合わせて使用できる。
a−9)アクリル系樹脂
アクリル系樹脂には、例えば(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリル酸又はそのエステル等)の単独又は共重合体のほか、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体等が含まれる。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
a−10)酸変性樹脂
本発明では、前記の各合成樹脂の変性物も使用できる。例えば、合成樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のような不飽和カルボン酸類、シロキサン等によりグラフトさせて得られる変性物も用いることができる。前記の酸変性合成樹脂としては、例えば酸変性ポリオレフィン等が好適に使用することができる。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
酸変性ポリオレフィンの場合、重量平均分子量10,000〜50,000の無水マレイン酸変性ポリオレフィンが特に好ましい。これらは市販品も使用することができる。例えば、商品名「ユーメックス1001」、「ユーメックス1010」(いずれも三洋化成工業(株)製)等を好適に用いることができる。これらの無水マレイン酸変性ポリオレフィンをポリ乳酸系樹脂組成物に添加することによって、有機金属錯体及び芳香族ホスホン酸エステル類の合成樹脂への相溶性を向上させ、ブルーミング又はマイグレーションを抑制することができる。この場合の配合量は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましく、特に0.1〜5重量部であることがより好ましい。
a−11)フッ素含有樹脂
フッ素含有樹脂は、フィブリル形成能を有するフッ素含有ポリマーを配合することができる。これにより、難燃性樹脂組成物の燃焼性試験(特にUL規格の垂直燃焼試験(UL94V))において、燃焼時の試験片からのドリップ速度調節が期待できる。
フィブリル形成能を有するフッ素含有樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体等が挙げられるが、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。このフィブリル形成能を有するPTFEとしては、テトラフロオロエチレンを乳化重合して得られるラテックスを凝集後、乾燥した粉末状のものであり、分子量として数平均分子量で100万〜1000万であり、好ましくは200万〜900万である。PTFE粉末の粒子径としては、1次粒子径で0.1〜0.5μmの範囲のものが好ましく、2次粒子径では10〜500μmの範囲のものが好ましい。具体的には、商品名「テフロン(登録商標)PTFE 6J」(三井デュポンフロロケミカル(株)製)、商品名「ポリフロンMPA、FA−500」(ダイキン化学工業(株)製)等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
さらに、PTFEと他のビニル系重合物も、合成樹脂に対する分散相溶性の改良されたフィブリル形成能を有するPTFEとして好適に使用でき、具体的には、商品名「メタブレンA−3000」、「メタブレンA−3700」、「メタブレンA−3800」(いずれも三菱レイヨン(株)製)等が挙げられる。
フッ素含有樹脂の配合量は、ドリップコントロール剤として用いる場合には、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.001〜1重量部であることが好ましく、特に0.01〜0.5重量部であることがより好ましい。難燃性樹脂組成物に過剰にフッ素含有樹脂を配合して樹脂中に強固なフィブリルが形成されてしまうとドリップが完全に停止してしまうおそれがあり、そうなると今度は試験片全体への延焼を引き起こして逆に難燃性を阻害することがある。このため、本発明のようなドリップタイプの難燃性樹脂組成物中にフィブリル形成能を有するフッ素含有樹脂を配合する場合には、ドリップ落下速度をコントロールしながら効果的に燃焼継続を抑制するために、上記範囲のようにごく少量の添加にとどめることが望ましい。
b)難燃剤
本発明の難燃性樹脂組成物では、有機金属錯体及び芳香族ホスホン酸エステル類の2つの物質を難燃剤として併用する。
上記(2−1)の場合、有機金属錯体の含有量は、通常は樹脂成分100重量部に対して0.01〜10重量部であり、好ましくは0.1〜3重量部とする。かかる難燃剤の組成割合が0.01重量部を下回ると難燃性が不十分となり、10重量部を超えるとポリ乳酸樹脂の分子量低下により耐熱性が悪化するおそれがある。従って、難燃性樹脂組成物中の含有量としては、例えば0.1〜5重量%とし、特に0.2〜5重量%とし、また例えば0.3〜3重量%と設定することもできる。
また、芳香族ホスホン酸エステル類の含有量は、通常は樹脂成分100重量部に対して1〜100重量部であり、好ましくは1〜50重量部とする。かかる難燃剤の組成割合が1重量部を下回ると難燃性が不十分となり、50重量部を超えると難燃性樹脂組成物の可塑性が強くなりすぎて、樹脂成分本来の特性が得られなくなるおそれがある。従って、難燃性樹脂組成物中の含有量としては、例えば5〜50重量%とし、特に6〜30重量%とし、また例えば8〜15重量%とし、さらには9〜12重量%と設定することもできる。
上記(2−2)の場合、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体と金属塩をポリ乳酸系樹脂に配合する場合は、その配合によって生成し得る有機金属錯体の含有量が上記のような範囲内になるように各成分の添加量を調整すれば良い。その目安として、例えば樹脂成分100重量部に対する金属塩の添加量を0.01〜10重量部(好ましくは0.1〜3重量部)としたうえで、その金属Mをすべて有機金属錯体とするのに必要な当量又はそれよりも過剰な量(好ましくは前記当量の1.1〜1.5倍)のN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体を添加すれば良い。従って、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体の難燃性樹脂組成物中の含有量としては、例えば0.1〜5重量%とし、さらに0.2〜5重量%とし、また例えば0.3〜3重量%と設定することもできる。また、金属塩の難燃性樹脂組成物中の含有量としては、例えば0.1〜5重量%とし、特に0.2〜5重量%とし、さらには0.3〜3重量%と設定することもできる。
また、芳香族ホスホン酸エステル類の含有量は、上記(2−1)の場合と同様にすれば良い。すなわち、通常は樹脂成分100重量部に対して1〜100重量部であり、好ましくは1〜50重量部とする。前記含有量が1重量部を下回ると難燃性が不十分となるおそれがある。また、前記含有量が100重量部を超えると難燃性樹脂組成物の可塑性が強くなりすぎて、樹脂成分本来の特性が得られなくなるおそれがある。従って、難燃性樹脂組成物中の含有量としては、例えば5〜50重量%とし、特に6〜30重量%とし、また例えば8〜15重量%とし、さらには9〜12重量%と設定することもできる。
c)難燃助剤
また、本発明難燃剤が前記の難燃助剤を副成分として含む場合、これらの難燃助剤の含有量については、用いる難燃助剤の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、リン含有化合物では樹脂成分100重量部に対して1〜100重量部、窒素含有化合物では樹脂成分100重量部に対して1〜50重量部、硫黄含有化合物では樹脂成分100重量部に対して0.1〜20重量部、ケイ素含有化合物では樹脂成分100重量部に対して0.1〜10重量部、無機金属系化合物では樹脂成分100重量部に対して1〜100重量部程度とすれば良い。
d)その他の添加剤
本発明の難燃性樹脂組成物では、本発明の効果を妨げない範囲において、必要に応じて難燃剤及び難燃助剤以外の各種の添加剤を適宜配合することができる。
これらを例示すると、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、コハク酸エステル等のカルボン酸エステル系化合物等の可塑剤、脂肪酸金属塩等の滑剤、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート、フェニルホスホン酸金属塩(亜鉛、カルシウム、又はマグネシウム等)、タルク、クレー等の結晶化促進剤、ポリカルボジイミド系化合物等の架橋促進剤、フェノール系化合物、ホスフィン系化合物、チオエーテル系化合物等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチレート系化合物、ヒンダードアミン系化合物等の紫外線吸収剤又は耐光剤、カチオン系化合物、アニオン系化合物、ノニオン系化合物、両性化合物、金属酸化物、π系導電性高分子化合物、カーボン等の帯電防止剤及び導電剤、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、ガラス繊維、ガラスビーズ、低融点ガラス等の充填剤をはじめとして、金属不活性化剤、着色剤、ブルーミング防止剤、表面改質剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、粘着剤、ガス吸着剤、鮮度保持剤、酵素、消臭剤、香料等が挙げられる。
本発明では、特に、ポリ乳酸系樹脂に対して柔軟性及び透明性を付与し、かつ、溶融混練時の流動性を向上させる上で可塑剤を用いることが好ましい。可塑剤としては、公知又は市販の可塑剤を使用できるが、特にカルボン酸(好ましくはジカルボン酸)と1価アルコール又は多価アルコール(好ましくはポリアルキレングリコール)とのカルボン酸エステル系可塑剤を好適に用いることができる。このようなカルボン酸エステル系可塑剤としては、例えばフタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、コハク酸エステル系可塑剤等の少なくとも1種を挙げることができる。好ましくは、アジピン酸ジエチレングリコールエステル等のように、ジカルボン酸とポリアルキレングリコールとのカルボン酸エステル系可塑剤を例示することができる。なお、本発明では、可塑剤としてリン酸エステル系可塑剤が含まれないことが好ましい。
ここに、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、コハク酸エステル等のカルボン酸エステル系可塑剤を多量に添加すると、燃焼時に激しく火炎ドリップ滴下の誘発を促進する現象がみられる。例えば、フタル酸、コハク酸、アジピン酸等とポリアルキレングリコール類とのエステル化合物は、ポリ乳酸系樹脂に対して柔軟性、透明性、流動性等を向上させることから、可塑剤として好ましく使用することができる。この場合の可塑剤の添加量は、一般的には樹脂成分100重量部に対して5〜30重量部であることが好ましく、さらに好ましくは10〜20重量部であるとされている。
ところが、これらのエステル類は可燃性及び燃焼継続性が高く、なおかつ、流動性向上によってドリップ性が高められているので、着火した火炎ドリップが消炎することなく急速に滴下する。その結果として、上記のような添加量をポリ乳酸系樹脂に適用すると、UL−94V燃焼試験におけるV−0判定のような高度な燃焼性を獲得できなくなるおそれがある。
これに対し、ドリップ型難燃剤である本発明難燃剤をポリ乳酸系樹脂に使用した場合、特に芳香族ホスホン酸エステル類がポリ乳酸系樹脂に対して難燃性及び可塑性の両方の特性を付与することができるので、樹脂に対して上記の可塑剤を使用したとしても、より添加量を低減することが可能である。ポリ乳酸系樹脂に対する難燃剤、特に芳香族ホスホン酸エステル類と可塑剤との合計添加量が、ポリ乳酸樹脂の機械的性質(可塑性、流動性、透明性、耐衝撃性等の諸物性)に影響を与えているので一概には指定できないが、本発明の適用する難燃剤量を添加する場合には、樹脂成分100重量部に対して可塑剤3〜10重量部程度の添加量でも、ドリッピング速度の調節による高度な難燃性と実用上良好な柔軟性、透明性及び流動性を両立させることが可能である。
4.難燃性樹脂組成物の製造
本発明の難燃性ポリ乳酸系樹脂組成物は、上記各成分を任意の方法で混合することによって製造することができる。その場合、混練順序も特に限定されず、各々を同時に混合しても良く、あるいは数種類を予め混合し、残りを後から混合しても良い。混合方法の例として、例えばタンブラー式V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー等の高速撹拌機、単軸、二軸連続混練機、ロールミキサー等を単独で又は組み合わせて用いる方法が採用できる。さらに、予め数種をマスターバッチとして樹脂成分の一部と高濃度の難燃剤を含む組成物を作成し、その後さらに樹脂成分と混合希釈し、所定の難燃性樹脂組成物を得る方法も採用できる。
なお、本発明の難燃性樹脂組成物としては、これら各成分のドライブレンド品、溶融混練物等のいずれの形態も包含する。
5.難燃性樹脂組成物の使用
本発明の難燃性ポリ乳酸系樹脂組成物は、優れた難燃性を有する成形品として好適に用いることができる。すなわち、本発明の難燃性ポリ乳酸系樹脂組成物は、後記6に示すような成形品の製造のための樹脂組成物として好適に用いることができる。これにより、難燃性に優れた成形品を提供することができる。
6.成形品
本発明は、本発明の難燃性樹脂組成物を成形してなる成形品も包含する。例えば、本発明の難燃性樹脂組成物からなる成形品を用いることができる。難燃性樹脂組成物の成形法には特に制限がなく、例えば射出成形、押出成形等の方法が使用できる。例えば、フィルム又はシートを成形する手段として、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等の押出成形機による方法のほか、一度シートを作製し、これを真空成形、プレス成形等の二次加工を施す方法、射出成形機による方法等が挙げられる。特に、シート、薄肉での射出成形が好ましい。射出成形においても、その形式等は限定されず、通常のコールドランナー方式の射出成形法のほか、ランナーレスを可能にするホットランナー方式によって成形品を製造することができ、さらに例えばガスアシスト射出成形、射出圧縮成形、超高速射出成形等も採用することができる。
本発明の成形品は、少なくとも上記成形段階において、加熱により難燃性樹脂組成物が溶融される結果、前記(2−1)及び(2−2)のいずれの場合にも有機金属錯体及び芳香族ホスホン酸エステルが成形品中に共存した状態とすることができる。これにより、所定の難燃性等を発現させることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物からなる成形品は、薄肉での難燃性に優れ、樹脂本来の持つ各種の機械的性質を大きく損なうことなく、また配合によってはヘイズが低く、透明性が高いものも製造することが可能であるため、OA機器、家電製品等の内部部品又は筐体、自動車分野等における難燃性を必要とされる部品等の各種用途に適用することができる。
具体的には、電線・ケーブル等の絶縁被覆材料、各種電気部品、インストルメンタルパネル、センターコンソールパネル、ランプハウジング、ランプリフレクター、コルゲートチューブ、電線被覆材、バッテリー部品、カーナビゲーション部品、カーステレオ部品等の各種自動車、船舶、航空機部品、洗面台部品、便器部品、風呂場部品、床暖房部品、照明器具、エアコン等の各種住宅設備部品、屋根材、天井材、壁材、床材等各種建築材料、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンハウジング及び内部部品、CRTディスプレーハウジング及び内部部品、プリンターハウジング及び内部部品、携帯端末ハウジング及び内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD等)ドライブハウジング及び内部部品、コピー機のハウジング及び内部部品等の電気電子部品等に使用することができ、さらにはテレビ、ラジオ、録画・録音機器、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、炊飯器、照明機器等の家庭電化製品等の用途に好適に用いられるほか、各種機械部品、雑貨等の各種用途にも有用である。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、本実施例中における「%」は「重量%」を意味する。
<1.有機金属錯体の合成>
下記の合成例により、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体と金属塩より有機金属錯体(A)を調製した。なお、合成した有機金属錯体は、次の方法により構造同定を行った。
1)錯体中の金属及び配位子の比の同定
マイクロウェーブ試料分解装置(ETHOS1:マイルストーンゼネラル社製)にて湿式分解後に高周波結合プラズマ発光分析装置(ICP−OES、720ES:バリアン社製)にて各々の生成化合物中の金属含有量を定量した。
2)化学構造の同定
赤外吸収分析装置(FT−IR、FT−720:堀場製作所(株)製)によるIRスペクトルにて各々の生成化合物の構造同定を行った。
[化合物(1)−金属錯体]
合成例1−1
側管付滴下漏斗及び温度計を備えた撹拌装置付4ツ口フラスコに、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン((株)ADEKA製、商品名「アデカスタブCDA−10」)(化合物(1))28.0g、塩化亜鉛(II)8.3g、トリエチルアミン2.7g及びメタノール700mlを加えてから撹拌を開始し、65℃にて2時間加熱還流を行った。放冷後、析出した固体をろ過し、得られた固体をメタノール及び水にて十分に洗浄した後、減圧乾燥を行うことにより白色粉体状の化合物(23)25.1gを得た(収率80.5%)。
図1に示すIRチャートより、有機金属錯体の原料である化合物(1)には、アシルヒドラジン構造のN−H伸縮振動に由来する3100〜3400cm−1、C=O伸縮振動及びN−H変角振動に由来する1600〜1700cm−1の特徴的なピークが存在している。錯体生成反応後に得られた化合物(23)のIRを測定すると、有機金属錯体の中心金属である亜鉛に化合物(1)が配位した結果、これらのピークは消失していることがわかった。また、得られた化合物(23)の亜鉛の定量をICP−OESで行ったところ、化合物中の亜鉛の含有量が11.1%であったことから、得られた化合物(23)は、化合物(1)−亜鉛(1:1)錯体であることが同定された(1:1錯体の亜鉛含有量理論値10.6%)。
合成例1−2
トリエチルアミンを使わずに加熱還流による反応を2時間行った以外は合成例1と同様に反応を行い、白色粉体状の化合物(23)29.6gを得た(収率94.6%)。得られた化合物の構造同定をIRで、亜鉛の定量をICP−OESで行ったところ、得られた化合物(23)は、化合物(1)−亜鉛(1:1)錯体であった(1:1錯体の亜鉛含有量理論値10.6%に対し、実測値10.8%であった)。
合成例2
塩化亜鉛(II)を酢酸銅(II)1水和物10.3gに変更した以外は合成例1と同様に反応を行い、濃緑色粉体状の化合物(24)28.4gを得た(収率91.1%)。得られた化合物の構造同定をIRで、銅の定量をICP−OESで行ったところ、得られた化合物(24)は、化合物(1)−銅(1:1)錯体であった(1:1錯体の銅含有量理論値10.3%に対し、実測値10.5%であった)。
合成例3
塩化亜鉛(II)を酢酸ニッケル(II)4水和物12.9gに変更した以外は合成例1と同様に反応を行い、紫白色粉体状の化合物(25)27.9gを得た(収率90.5%)。得られた化合物の構造同定をIRで、ニッケルの定量をICP−OESで行ったところ、得られた化合物(25)は、化合物(1)−ニッケル(1:1)錯体であった(1:1錯体のニッケル含有量理論値9.6%に対し、実測値10.6%であった)。
合成例4
塩化亜鉛(II)を塩化鉄(II)4水和物10.3gに変更した以外は合成例1と同様に反応を行い、紫色粉体状の化合物(26)3.4gを得た(収率11.1%)。得られた化合物の構造同定をIRで、鉄の定量をICP−OESで行ったところ、得られた化合物(26)は、化合物(1)−鉄(1:1)錯体であった(1:1錯体の鉄含有量理論値9.2%に対し、実測値10.2%であった)。
合成例5
合成例4と同様に反応を行った後、ろ過した後のろ過残渣物ではなく、ろ液のメタノール溶液の方を減圧濃縮して固形物を取り出した。得られた固形物を十分に水洗した後、減圧乾燥することによって、紫色粉体状の化合物(27)25.9gを得た(収率88.0%)。
メタノールに不溶である化合物(26)に対し、化合物(27)はメタノールに溶解する。得られた化合物をIRで確認したところ、図2に示すように、原料の化合物(1)とは全く異なり、ほぼ化合物(26)に近似したスペクトルを示している。しかし、化合物(26)では完全に消失しているアシルヒドラジン構造のN−H伸縮振動に由来する3100〜3400cm−1等の特徴的なピークが化合物(27)では残存していることが確認された。
さらに、鉄の定量をICP−OESで行ったところ、得られた化合物(27)は、化合物(1)−鉄(2:1)錯体であった(2:1錯体の鉄含有量理論値:4.8%に対し、実測値4.9%であった)。
合成例6
塩化鉄(II)4水和物を酢酸マンガン(II)4水和物12.7gに変更した以外は合成例5と同様に反応を行い、茶褐色粉体状の化合物(28)23.4gを得た(収率79.7%)。得られた化合物の構造同定をIRで、マンガンの定量をICP−OESで行ったところ、得られた化合物(28)は、化合物(1)−マンガン(2:1)錯体であった(2:1錯体のマンガン含有量理論値4.7%に対し、実測値4.7%であった)。
[化合物(2)−金属錯体]
合成例7
側管付滴下漏斗及び温度計を備えた撹拌装置付4ツ口フラスコに、デカメチレンカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド((株)ADEKA製、商品名「アデカスタブCDA−6」)(化合物(2))28.0g、酢酸亜鉛(II)2水和物25.1g、トリエチルアミン5.8g及びDMF670mlを加えてから撹拌を開始し、110℃にて3時間加熱還流を行った。放冷後、析出した固体をろ過し、得られた固体をDMF、水及びアセトンにて十分に洗浄した後、減圧乾燥を行うことにより白色粉体状の化合物(29)33.7gを得た(収率96.0%)。
IR測定結果より、有機金属錯体の原料である化合物(2)には、化合物(1)の場合と同様、アシルヒドラジン構造のN−H伸縮振動に由来する3200〜3300cm−1、C=O伸縮振動及びN−H変角振動に由来する1630〜1670cm−1の特徴的なピークが存在している。錯体生成反応後に得られた化合物(29)のIRを測定すると、有機金属錯体の中心金属である亜鉛に化合物(2)が配位した結果、これらのピークは消失していることが確認された。また、得られた化合物(29)の亜鉛の定量をICP−OESで行ったところ、化合物中の亜鉛の含有量が20.9%であったことから、化合物(2)−亜鉛(1:2)錯体であることが同定された(1:2錯体の亜鉛含有量理論値20.9%)。
合成例8
酢酸亜鉛(II)2水和物を酢酸銅(II)1水和物22.9gに変更した以外は合成例7と同様に反応を行い、濃緑色粉体状の化合物(30)30.0gを得た(収率85.8%)。得られた化合物の構造同定をIRで、銅の定量をICP−OESで行ったところ、得られた化合物(30)は、化合物(2)−銅(1:2)錯体であった(1:2錯体の銅含有量理論値20.4%に対し、実測値21.6%であった)。
合成例9
酢酸亜鉛(II)2水和物を酢酸ニッケル(II)4水和物28.5gに変更した以外は合成例7と同様に反応を行い、微褐色粉体状の化合物(31)32.2gを得た(収率93.6%)。得られた化合物の構造同定をIRで、ニッケルの定量をICP−OESで行ったところ、得られた化合物(31)は、化合物(2)−ニッケル(1:2)錯体であった(1:2錯体のニッケル含有量理論値19.2%に対し、実測値18.2%であった)。
合成例10
酢酸亜鉛(II)2水和物を塩化鉄(II)4水和物22.8gに変更した以外は合成例7と同様に反応を行い、微褐色粉体状の化合物(32)29.7gを得た(収率95.6%)。得られた化合物の構造同定をIRで、鉄の定量をICP−OESで行ったところ、得られた化合物(32)は、化合物(2)−鉄(1:1)錯体であった(1:1錯体の鉄含有量理論値11.4%に対し、実測値10.1%であった)。
<2.難燃性ポリ乳酸系樹脂組成物の調製>
前記の各合成例で得られた有機金属錯体(A)を用いて難燃性ポリ乳酸系樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を構成する成分は、ポリ乳酸樹脂、難燃剤、その他の添加剤を含有する。すなわち、下記成分を表1〜3に示す配合割合(重量部)に従って各成分をドライブレンドした後、プレス成形用として混練・押出成形評価試験装置「ラボプラストミル4C150」((株)東洋精機製作所製)にて170〜190℃の温度で溶融混合して混練を行い、難燃性樹脂組成物を得た。また、同様に射出成形用として二軸混練押出機「KTX30型」((株)神戸製鋼所製、スクリュウ径30mm、L/D=37、ベント付き)にて190〜210℃の温度で溶融混合して押出混練し、ストランドをカットしてペレット状の難燃性樹脂組成物を得た。
合成樹脂
PLA−1:ポリ乳酸樹脂、テラマックTE−2000(重量平均分子量Mw120,000、ユニチカ(株)製)
PLA−2:上記PLA−1の100重量部に対して、可塑剤としてアジピン酸(ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びベンジルアルコール)エステル、DAIFATTY−101(大八化学工業(株)製)を10重量部及び充填剤としてクラウンタルクP(松村産業(株)製)を10重量部配合したもの
難燃剤
[有機金属錯体]
FR−1:化合物(23)
FR−2:化合物(24)
FR−3:化合物(25)
FR−4:化合物(26)
FR−5:化合物(27)
FR−6:化合物(28)
FR−7:化合物(29)
FR−8:化合物(30)
FR−9:化合物(31)
FR−10:化合物(32)
FR−11:アセチルアセタナート鉄、Fe(acac)3錯体
FR−12:アセチルアセタナート亜鉛、Zn(acac)2錯体
FR−13:サレン鉄[N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン鉄アセテート]、Fe(salen)OAc錯体
FR−14:サレン亜鉛[N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン亜鉛]、Zn(salen)錯体
[N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体]
FR−15:化合物(1)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、商品名「アデカスタブCDA−10」((株)ADEKA製)
FR−16:化合物(2)、デカメチレンカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド、商品名「アデカスタブCDA−6」((株)ADEKA製)
[金属塩]
FR−17:ステアリン酸亜鉛、商品名「SZ−P」(堺化学工業(株)製)
FR−18:ステアリン酸マグネシウム、商品名「SM−P」(堺化学工業(株)製)
FR−19:ステアリン酸カルシウム、商品名「SC−P」(堺化学工業(株)製)
[芳香族ホスホン酸エステル類]
FR−20:化合物(3)、商品名「ノンネン73」(丸菱油化工業(株)製)
FR−21:化合物(16)、商品名「ノンネン75」(丸菱油化工業(株)製)
[芳香族リン酸エステル類]
FR−22:レゾルシノール ビス(ジキシレニルホスフェート)、商品名「PX−200」(大八化学工業(株)製)
FR−23:ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)、商品名「CR−741」(大八化学工業(株)製)
<3.難燃性ポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形品の各種物性評価>
前記2.で調製された難燃性ポリ乳酸系樹脂組成物を用いて射出成形又はプレス成形により成形品を作製した。
プレス成形では、厚さ1.5mmの型枠を用いて、圧縮プレス成形機「F−37(株)神藤金属工業所製」にて、200℃で3分余熱した後、10MPaで3分間加熱プレスを行い、その後10℃で3分冷却プレスすることによりシートを得た。このシートよりそれぞれの試験用に切断され、得られた試験片を23℃及び50%RHの条件で48時間状態調整処理してから、それぞれの物性評価を行った。また、射出成形では、射出成形機「FE80S型」(日精樹脂工業(株)製、型締圧80トン)を使用して成形品(各種物性試験用の試験片)を得た。得られた試験片を23℃及び50%RHの条件で48時間状態調整処理してから、それぞれの物性評価を行った。なお、上記プレス成形品は燃焼性の評価用サンプルとして使用し、上記射出成形品は耐衝撃性及び機械的性質の評価用サンプルとして使用した。
1)燃焼性
燃焼性の評価は、UL94垂直燃焼試験法に準拠して、1.5mm(1/16inch)厚の試験片を作成した後、燃焼試験を行った。UL94垂直燃焼試験の結果は、「V−0」、「V−1」、「V−2」、「Burn(全焼)」の4段階評価を行った。その結果を表1〜表3に示す。
2)分子量
重量平均分子量の測定を、示差屈折率(RIF)検出器付ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ウォーターズ社製GPCアライアンスシステム)にて、ポリスチレン換算値より求めた。試験結果は、未処理のポリ乳酸の分子量を100とした場合、各種配合加工後の分子量の相対百分率で評価を行った。その結果を表2〜表3に示す。
3)耐衝撃性
耐衝撃性の評価として、JIS K7110記載のアイゾッド衝撃試験用試験片(3.2mm)を射出成形機で作成した後、ノッチを切削し、アイゾッド衝撃試験機((株)東洋精機製作所製)にてJIS K7110に準拠してアイゾッド衝撃強度を測定した。その結果を表3に示す。
4)機械的性質
機械的性質の評価として、JIS K7111記載の引張試験用試験片(2号形試験片)を射出成形機で作成した後、精密万能試験機AGS−5KNX((株)島津製作所製)にてJIS K7111に準拠して、引張速度50mm/分で引張試験(破断強度、伸度)を行った。その結果を表3に示す。
5)有機金属錯体の分取及び同定
溶融混練された樹脂組成物中で有機金属錯体が生成されることを確認した。より具体的には、有機金属錯体の分取及び同定を行うため、ポリ乳酸樹脂(PLA−1)110gに対して、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体(FR−15)9g及び金属塩(FR−17)3gをドライブレンドした後、混練・押出成形評価試験装置「ラボプラストミル4C150」((株)東洋精機製作所製)にて170〜190℃の温度で溶融混合して混練を行い、ポリ乳酸系樹脂組成物を得た。この組成物のうち、10gをクロロホルム240mLで3時間加熱還流させると白濁溶液となった。得られた白濁溶液からクロロホルムでデカンテーションを繰り返すことでポリ乳酸成分及び有機溶媒可溶成分を除去し、アセトンにてろ別洗浄後、真空乾燥した白色不溶性沈澱物である化合物(33)0.1gを得た。この化合物(33)について、IR測定にて同定を行った結果を図3に示す。
表1〜表3の結果からも明らかなように、比較例の成形品は難燃性又は機械的性質の少なくともいずれかの点で問題があるのに対し、本発明による成形品は優れた難燃性を発揮するとともにポリ乳酸樹脂に対して熱分解(解重合)を起こすことなく、耐熱性に優れた特性が得られることがわかる。具体的には、表1の結果より明らかなように、ポリ乳酸樹脂そのものの燃焼性については、非常に燃焼しやすく、UL−94の結果より全焼している(比較例1)が、ポリ乳酸樹脂に本発明難燃剤の1成分である芳香族ホスホン酸エステル類を5〜10%重量部程度の少量添加することによって、一般的に使用されている芳香族リン酸エステルに比較して容易にV−0レベルの高度な難燃性を付与することが可能である(例えば、比較例2〜4)。
ポリ乳酸樹脂の物性改良のためにポリ乳酸樹脂に可塑剤及び充填剤が配合されたポリ乳酸系樹脂組成物の場合、芳香族リン酸エステル同様に、芳香族ホスホン酸エステル類であっても、単独使用ではV−0レベルの高度な難燃性を獲得することは困難である(例えば、比較例9)。
一方、ポリ乳酸樹脂の物性改良のため、ポリ乳酸樹脂に可塑剤及び充填剤が配合されたポリ乳酸系樹脂組成物に対して、本発明難燃剤のもう一つの成分である有機金属錯体を単独でごく少量(例えば、比較例6〜8のように、樹脂組成物100重量部に対して0.3〜1.0重量部)添加しても、特段の効果は得られなかった。
これに対し、本発明難燃剤の有機金属錯体及び芳香族ホスホン酸エステル類を併用した場合には、芳香族リン酸エステルとは異なり、比較的少ない添加量であるにもかかわらず、V−0レベルの高度な難燃性を発揮できるポリ乳酸系樹脂組成物が得られることがわかる(例えば、実施例1〜4)。
また、有機金属錯体の構成成分であるN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体と金属塩とをポリ乳酸樹脂に別々に添加した場合においても、得られるポリ乳酸系樹脂組成物の難燃性は全く同じものであった(例えば、実施例5〜7)。
このことは、図3からも明らかである。すなわち、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体と金属塩とをポリ乳酸樹脂に別々に添加して調製した難燃性樹脂組成物より、クロロホルムにてポリ乳酸成分を溶解除去させた後に分離されてくる不溶性粉体を分取し、その不溶性粉体のIR測定を行うと、予め合成された有機金属錯体のIRスペクトルとほぼ一致することが確認された。その結果から、樹脂混練中に有機金属錯体が形成され、その有機金属錯体によって同等の難燃効果等が得られることがわかる(化合物(23)及び化合物(33))。
表2の結果から明らかなように、本発明難燃剤の有機金属錯体は、樹脂成分100重量部に対して少量添加(例えば、実施例8〜19のように0.3〜1.0重量部の範囲内で添加)しても分子量の顕著な低下を引き起こすことはない。これに対し、本発明難燃剤における有機金属錯体以外の錯体(アセチルアセタナート錯体、サレン錯体等)をポリ乳酸樹脂に添加すると、たとえ少量の添加であったとしても分子量の低下を引き起こすことがわかる(例えば比較例28〜31)。
また、ポリ乳酸樹脂に金属塩を添加する場合、金属塩の種類によっては大きく分子量を低下させ、樹脂物性の劣化を引き起こすが(例えば比較例20〜21)、本発明難燃剤に使用するN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体を併用添加することにより、分子量低下ないしは物性の低下を効果的に抑制できることがわかる(例えば実施例5)。
さらに表3の結果からも明らかなように、ポリ乳酸樹脂に可塑剤及び充填剤を配合したポリ乳酸系樹脂組成物は、耐衝撃性及び伸度が改良されている(例えば、比較例1、比較例5)。そこに有機金属錯体及び芳香族ホスホン酸エステル類を併用して添加した場合には、良好な機械的性質を維持したまま難燃性を高度に強化することができる(例えば、実施例2〜3、実施例5〜6)。これに対し、有機金属錯体及び芳香族ホスホン酸エステル類のどちらか一方のみを単独使用した場合には、難燃性及び機械的性質のどちらも満足するレベルに保持することは非常に困難であることもわかる(例えば比較例9、比較例34〜35)。

Claims (8)

  1. ポリ乳酸系樹脂に添加するための難燃剤であって、
    (1)N,N’−ジアシルヒドラジン系成分及び芳香族ホスホン酸エステル類を含み、
    (2)前記N,N’−ジアシルヒドラジン系成分として、
    (2−1)下記一般式(I)又は(II);
    [式中、R及びRは、互いに同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していても良い炭化水素基を示す。Rは、置換基を有していても良い炭化水素基を示す。]で表されるN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体の少なくとも1種が配位子として中心金属M(ただし、Mは、遷移金属を示す。)に配位してなる有機金属錯体、及び
    (2−2)前記一般式(I)又は(II)で表されるN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体の少なくとも1種と金属M(ただし、Mは、遷移金属を示す。)の金属塩との組み合わせ
    の少なくとも一方を含むことを特徴とするポリ乳酸系樹脂用難燃剤。
  2. 前記N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体が、
    (a)N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン及び
    (b)デカメチレンカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド
    の少なくとも1種である、請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂用難燃剤。
  3. 前記M及び/又はMが第4周期元素の遷移金属である、請求項1又は2に記載のポリ乳酸系樹脂用難燃剤。
  4. 前記(2−1)におけるN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体A1と中心金属Mとの構成モル比が、A:M=1/n:4〜4/n:1[ただし、nは、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体1分子中におけるジアシルヒドラジン官能基数を示す。]であり、かつ、
    前記(2−2)におけるN,N’−ジアシルヒドラジン誘導体Aと金属塩に含まれるMとの構成モル比が、A:M=1/n:4〜4/n:1[ただし、nは、N,N’−ジアシルヒドラジン誘導体1分子中におけるジアシルヒドラジン官能基数を示す。]である、
    請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂用難燃剤。
  5. 芳香族ホスホン酸エステル類が、
    (1)下記式(III)
    [式中、R〜R10は、互いに同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していても良い炭化水素基を示す。]で表される芳香族ホスホン酸エステル及び
    (2)下記式(IV)
    [式中、Rは、炭素数が1〜18であり、アルキレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基、シクロアルキレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基又はヘテロアリーレン基であって、置換基を有していても良いものを示す。]で表される芳香族縮合ホスホン酸エステル
    の少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂用難燃剤。
  6. 1)ポリ乳酸系樹脂と2)請求項1に記載の有機金属錯体及び芳香族ホスホン酸エステル類とを含む難燃性樹脂組成物。
  7. 請求項6に記載の難燃性樹脂組成物を成形してなる難燃性樹脂成形品。
  8. 電気・電子部品、OA機器部品、家電機器部品、自動車用部品又は機器機構部品に用いられる、請求項7に記載の難燃性樹脂成形品。
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