JP5823134B2 - 難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
で表されるリン含有化合物を多量に樹脂に配合することで、燃焼時以外の状況、例えば光照射等を受けることによって、9,10−ジヒドロ−9−オキソ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド−10−イルラジカル以外の対ラジカル(ベンジルラジカル、アニリノラジカル、アニリノメチルラジカル等)を発生させてしまうことで、本来合成樹脂のもつ諸物性を大きく損なう可能性がある。
1. 下記一般式(I)
で表されるホスホン酸エステルを含む樹脂用難燃剤及び樹脂成分を含む樹脂組成物であって、
樹脂成分が結晶性樹脂であって、結晶性樹脂がポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂の少なくとも1種であり、
樹脂成分100重量部に対して当該ホスホン酸エステル10〜100重量部を含み、
前記樹脂組成物は、各成分を溶融混練することによって得られるものであり、
前記樹脂組成物は、燃焼時にドリップを落下させながら消炎する、
ことを特徴とする難燃性樹脂組成物。
2. ホスホン酸エステルが、10−フェノキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドである、前記項1に記載の難燃性樹脂組成物。
3. 樹脂用難燃剤がハロゲンを含まない、前記項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物。
4. フィブリル形成能を有するフッ素含有ポリマーをさらに含む、前記項1〜3のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
5. 前記項1〜4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物を成形してなる難燃性樹脂成型品。
6. 電気・電子部品、OA機器部品、家電機器部品、自動車用部品又は機器機構部品に用いられる、前記項5に記載の難燃性樹脂成型品。
(1)ホスホン酸エステル及びその合成方法
(1−1)ホスホン酸エステル
本発明の樹脂用難燃剤は、下記一般式(I)
で表されるホスホン酸エステルを含むことを特徴とする。すなわち、下記一般式(I)で示されるホスホン酸エステル(以下、「本発明ホスホン酸エステル」ともいう。)は、本発明難燃剤の有効成分として機能するものである。本発明難燃剤は、本発明ホスホン酸エステルの1種又は2種以上を含有する。
上記一般式(I)で表されるホスホン酸エステルの製造方法は特に限定されないが、例えば特開2009−108089に記載されているホスホン酸エステルの製造方法によって好適に製造することができる。
で表されるホスホン酸エステルの製造方法であって、
(1)下記化学式(III)
で表される化合物を、下記一般式(IV)で表されるフェノール誘導体を反応系中に添加して、脱ハロゲン化水素反応させることにより、
下記一般式(V)
で表される有機リン系化合物を合成する工程(A工程)、
(2)前記有機リン系化合物に対して、アミンの存在下、酸化剤を用いて3価のリン原子を5価に酸化することにより、前記一般式(I)で表されるホスホン酸エステルを得る工程(B工程)
を含む製造方法により、ホスホン酸エステルを好適に製造することができる。
本発明難燃剤には、上記ホスホン酸エステルのほか、必要に応じて副成分が含まれていても良い。例えば、難燃助剤を好適に副成分として好適に用いることができる。
本発明難燃剤は、樹脂(特に合成樹脂)に対して難燃性を付与するのに適しており、いわゆる合成樹脂内部添加型難燃剤として好適に用いることができる。つまり、樹脂中に均一に含有させることにより難燃性を当該樹脂に付与するために用いる難燃剤として有用である。具体的な使用方法としては、同じタイプの公知又は市販の難燃剤と同様にすれば良く、例えば本発明難燃剤を樹脂内部に均一に含まれるように混合することにより当該樹脂に難燃性を付与することができる。混合方法は、本発明難燃剤を樹脂中に均一に混合できる限りは特に制限されず、例えば乾式混合、湿式混合、溶融混練等のいずれの方法であっても良い。
本発明は、本発明難燃剤及び樹脂成分を含む樹脂組成物であって、樹脂成分100重量部に対して当該ホスホン酸エステル1〜100重量部を含む難燃性樹脂組成物を包含する。以下、各成分について説明する。
難燃剤としては、前記1.(1−1)のホスホン酸エステルの少なくとも1種を含む難燃剤(本発明難燃剤)を用いることができる。
本発明における難燃性樹脂組成物に混合される樹脂成分としては、特に制限されるものではなく、成形用として利用される種々の樹脂(特に合成樹脂)に適用することができる。例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエーテル・エーテルケトン樹脂、ポリフェニレン・スルフィド樹脂、ポリアミド・イミド樹脂、ポリエーテル・スルフォン樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリメチル・ペンテン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂等の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のホモポリマーあるいはコポリマーの単独又はそれらの組み合わせによるポリマーアロイ類等が挙げられる。これらの中でも、特にポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等が好ましい。以下、本発明で適用し得る樹脂成分について列挙する。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィンの単独重合体、前記のα―オレフィンどうしのランダム又はブロック共重合体の単体及び混合物等の樹脂、さらにこれと酢酸ビニル、無水マレイン酸等が共重合された樹脂等のポリオレフィン系樹脂が好適に使用することができ、より具体的には、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体等のようなポリプロピレン系樹脂、低密度エチレン単独重合体、高密度エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリエチレン系樹脂等が挙げられる。また、本発明において、難燃性樹脂組成物の物性を改良するために、例えばポリエチレン系合成ゴム、ポリオレフィン系合成ゴム等を配合したものであっても良い。
ポリスチレン系樹脂としては、例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等のようなスチレン系単量体の単独重合体又は共重合体や、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸等のα,β−モノオレフィン性不飽和カルボン酸又は酸無水物或いはそのエステル等のビニル単量体とスチレン系単量体との共重合体や、スチレン系グラフト共重合体、スチレン系ブロック共重合体等が挙げられる。好ましくは、ポリスチレン(GPPS)、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、ゴム成分にスチレン系単量体が重合した耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリスチレン系グラフト又はブロック共重合体等が例示される。ポリスチレン系グラフト共重合体としては、ゴム成分に少なくともスチレン系単量体及び共重合性単量体がグラフト重合した共重合体(例えば、ポリブタジエンにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合したABS樹脂、アクリルゴムにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合したAAS樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体にスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合した重合体、エチレン−プロピレンゴムにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合した重合体、ポリブタジエンにスチレンとメタクリル酸メチルをグラフト重合したMBS樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムにスチレン及びアクリロニトリルがグラフト重合した樹脂等が例示される。ブロック共重合体としては、例えばポリスチレンブロックとジエン又はオレフィンブロックとで構成された共重合体(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)ブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレン(SEPS)ブロック共重合体)等が挙げられる。これらのスチレン系樹脂は、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
ポリビニル系樹脂としては、例えばビニル系単量体(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、クロトン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル;塩素含有ビニル単量体(例えば、塩化ビニル、クロロプレン);フッ素含有ビニル単量体(例えば、フルオロエチレン等);メチルビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のビニルアミン類等)の単独又は共重合体、あるいは他の共重合可能なモノマーとの共重合体等が含まれる。前記ビニル系樹脂の誘導体(例えばポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等)も使用できる。これらのビニル系樹脂は、1種で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
ポリアミド系樹脂としては、例えばε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタム等の開環重合体(ω−アミノカルボン酸重合体)や、ジアミンとジカルボン酸との共重縮合体等を挙げることができる。より具体的には、ポリアミド3、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T等が例示される。これらのポリアミド系樹脂は、1種で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
ポリエステル系樹脂としては、例えばアルキレンテレフタレート、アルキレンナフタレート等のアルキレンアリレート単位を主成分とする単独重合体又は共重合体等が挙げられ、より具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の単独重合体、アルキレンテレフタレート及び/又はアルキレンナフタレートを主成分として含有する共重合体が例示できる。特に好ましいポリエステル系樹脂としては、例えばエチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、テトラメチレン−2,6−ナフタレート等のアルキレンアリレート単位の単独重合体又はそれらの共重合体を挙げることができる。これらのポリエステル系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、ポリエステル系樹脂は、溶融成形性等を損なわない限り、直鎖状のみならず分岐鎖構造を有していても良く、架橋されていても良い。また、液晶ポリエステルであっても良い。
ポリエーテル系樹脂としては、例えばアルキレンエーテルの単独重合体又はスチレン系化合物をグラフト共重合せしめたポリアルキレンエーテル、或いはポリアルキレンエーテルとスチレン系重合体を混合したもの等が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリアルキレンエーテルの単独重合体、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン等のスチレン系化合物をグラフト共重合せしめたポリフェニレンエーテルが例示できる。好ましくは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル及びポリスチレンをグラフト共重合せしめたポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル[変性ポリフェニレンエーテル]等を例示することができる。ポリフェニレンオキシド系樹脂は、1種又は2種以上組み合わせて使用できる。
ポリカーボネート系樹脂には、例えばジヒドロキシ化合物と、ホスゲン又はジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとの反応により得られる重合体が挙げられる。ジヒドロキシ化合物は、脂環族化合物等であっても良いが、好ましくはビスフェノール化合物である。ビスフェノール化合物としては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン等のビス(ヒドロキシアリール)C1−6アルカン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)C4−10シクロアルカン;4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル;4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン;4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド;4,4′−ジヒドロキシジフェニルケトン等が挙げられる。好ましいポリカーボネート系樹脂には、ビスフェノールA型ポリカーボネートが含まれる。ポリカーボネート系樹脂は、1種で又は2種以上組み合わせて使用できる。
アクリル系樹脂には、例えば、(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリル酸又はそのエステル等)の単独又は共重合体の他、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体等が含まれる。
本発明の難燃性合成樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲内において、必要に応じて公知の樹脂組成物に含まれている添加剤を適宜配合することができる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得ることができる。好ましくは、上記各成分を溶融混練することによって製造することができる。その場合の混練順序も特に限定されず、各々を同時に混合しても良いし、あるいは数種類を予め混合し、残りを後から混合しても良い。
本発明の難燃性樹脂組成物は、優れた難燃性を達成するとともに、ブリードアウト(又はブルーミング)が効果的に抑制できるため、成型品として好適に用いることができる。すなわち、本発明の難燃性樹脂組成物は、成型品の製造のための樹脂組成物として好適に用いることができる。これにより、難燃性に優れた成型品を提供することができる。
本発明は、本発明の難燃性樹脂組成物を成形してなる難燃性樹脂成型品も包含する。
下記の合成例により、化学式(5)(6)(8)(9)(12)で示されるホスホン酸エステルを調製した。なお、合成したホスホン酸エステルは、次の方法により同定及び物性の測定を行った。
(1)純度
FID検出器付ガスクロマトグラフィー(GC−2010:(株)島津製作所製)及びフォトダイオードアレイ(PDA)3次元UV検出器付高速液体クロマトグラフィー(アライアンスHPLCシステム:ウォーターズ社製)にて純度の確認を行った。
(2)融点
融点は、全自動融点測定装置(FP−62:メトラートレド社製)にて測定を行った。
(3)元素分析
元素分析計(EA1110:CEインスツルメンツ社製)にて炭素及び水素を、マイクロウェーブ試料分解装置(ETHOS1:マイルストーンゼネラル社製)にて湿式分解後に高周波結合プラズマ発光分析装置(ICP−OES、720ES:バリアン社製)にてリンを、それぞれの化合物について元素分析を行った。
(4)化学構造の同定
赤外吸収分析装置(FT−IR、FT−720:堀場製作所(株)製)によるIRスペクトル、300MHz核磁気共鳴吸収分析装置(JNM−AL300:日本電子(株)製)による水素核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトル、及び質量分析計付高速液体クロマトグラフィー(LC/MS、インテグリティシステム:ウォーターズ社製)或いは熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析計(PY−GC/MS、PY−2020iD:フロンティア・ラボ(株)製、GCMS−QP2010Plus:(株)島津製作所製)による質量スペクトルより各々の生成化合物の構造同定を行った。
側管付滴下漏斗及び温度計を備えた撹拌装置付4ツ口フラスコに、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド32.4g、フェノール14.1g、トリエチルアミン17.2g、及びジクロロメタン150mlを投入し、側管付滴下漏斗には四塩化炭素30.8gを投入した。滴下漏斗の上端に塩化カルシウム管を取り付けて空気中の水分が反応系内に混入しないようにした後に撹拌を開始し、フラスコを氷水に浸して10℃まで冷却した。四塩化炭素を反応液温が15℃を超えないように滴下し、滴下後更に1時間そのまま撹拌を続けた。反応液を2%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、更に水道水及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。乾燥した反応液を減圧濃縮することにより淡黄色液状の粗生成物を得て、メタノール−水で再結晶することにより融点100℃の白色粉末状の化合物43.5gを得た。得られた化合物の純度は99.1%であった。この化合物IRチャートが図1、1H−NMRチャートが図6で示され、PY−GC/MSによる分子イオンピークM+が、図11より[(計算値:C18H13O3P=308.27、基準ピークは、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド−10−イルラジカルのm/z=215)]m/z=308であったことから、得られた化合物は、化学式(5)で表される10−フェノキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドであることが確認できた。
側管付滴下漏斗、コンデンサー及び温度計を備えた攪拌機付4つ口フラスコに、2−フェニルフェノール100.00g及びトリフルオロメタンスルホン酸1.20gを投入し、側管付滴下漏斗には三塩化リン100.00gを投入した。マントルヒーターでフラスコを加熱し、約60℃でフラスコ内の固体が溶解したのを確認してから攪拌を開始し始め、フラスコ内の温度が150℃達するまで昇温させた。フラスコ内の温度が150℃に達した後、三塩化リンの滴下を開始した。三塩化リンの滴下開始と共に反応液より塩化水素ガスの発生を確認した。約4時間かけて全量の三塩化リンを滴下し、更に150℃で攪拌を2時間続けたところ、塩化水素ガスの発生が無くなった。コンデンサーを蒸留器具に繋ぎ換え、側管付滴下漏斗にトルエン50.00gを投入し、徐々に滴下しつつトルエンと共に反応液中に残存する過剰の三塩化リンを抜き出した。
蒸留器具を再びコンデンサーに戻し、側管付滴下漏斗に2,6−キシレノール73.26gをトルエン50.00gに溶かした溶液を投入し、反応液が緩やかに還流する速度で、約1時間かけて徐々に滴下した。滴下の開始とともに再び塩化水素ガスの発生が確認された。滴下終了後も加熱還流を約2時間続けたところ、塩化水素ガスの発生が無くなった。反応液を室温程度まで冷却し、トルエン450.00g及びトリエチルアミン5.95gを加え、更に10℃以下まで冷却した。側管付滴下漏斗に30%過酸化水素水73.32gを投入し、反応液が20℃を超えないように約1時間30分かけて徐々に滴下した。滴下後さらに1時間そのまま撹拌を続けたところ、反応液中に化合物の析出が確認された。スラリー状の反応物をろ過、ケーキを水洗し、これをメタノール−水で再結晶後、減圧乾燥することにより、融点113℃の白色結晶168.56gを得た。得られた化合物の純度は99.6%であった。この化合物IRチャートが図2、1H−NMRチャートが図7で示され、元素分析の結果が炭素:水素:リン=71.72:4.76:9.2(理論値71.24:5.09:9.21)であった。この結果から、得られた化合物は、化学式(8)で表される10−(2,6−ジメチルフェノキシ)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドであることが確認できた。
2,6−キシレノール73.26gを2−クレゾール64.88gに変更した以外は合成例2と同様に反応を行い、式(6)で表わされる融点65℃の化合物166.74gの白色結晶を得た。得られた化合物の純度は99.1%であった。この化合物IRチャートが図3、1H−NMRチャートが図8で示され、元素分析の結果が炭素:水素:リン=70.78:4.34:9.68(理論値70.81:4.69:9.61)であった。この結果から、得られた化合物は、化学式(6)で表される10−(2−メチルフェノキシ)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドであることが確認できた。
2,6−キシレノール73.26gを2−tert.−ブチルフェノール90.13gに変更した以外は合成例2と同様に反応を行い、式(9)で表わされる融点91℃の化合物145.75gの白色結晶を得た。得られた化合物の純度は99.3%であった。この化合物IRチャートが図4、1H−NMRチャートが図9で示され、元素分析の結果が炭素:水素:リン=70.70:5.78:8.70(理論値72.52:5.81:8.50)であった。この結果から、得られた化合物は、化学式(9)で表される10−(2−tert.−ブチルフェノキシ)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドであることが確認できた。
2,6−キシレノール73.26gを2,6−ジ−tert.−ブチルフェノール123.79gに変更した以外は合成例2と同様に反応を行い、黄色粘稠性液体の粗生成物122gを得た。この粗生成物1.5gから、シリカゲルカラムを用いたフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:n−ヘキサン/酢酸エチル=10/1)にて分離精製することによって、白色粘稠性の化合物0.11gを得た。得られた化合物の純度は99.0%であった。この化合物のIRチャートが図5、1H−NMRチャートが図10で示され、LC/MSによる分子イオンピークM+がm/z=420(計算値:C26H29O3P=420.48)であった。この結果から、得られた化合物は、化学式(12)で表される10−(2,6−ジ−tert.−ブチルフェノキシ)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドであることが確認できた。
前記の各合成例で得られたホスホン酸エステルを用いて難燃性合成樹脂組成物を調製した。難燃性合成樹脂組成物を構成する成分は、合成樹脂(A成分)、難燃剤(B成分)、及びその他の添加剤(C成分)からなり、下記にそれぞれの成分を示す。この下記成分を表1に記載してある配合割合(重量部)に従って、各成分をドライブレンドした後、2軸押出機にて溶融混合して押出混練し、ストランドをカットしてペレット状難燃性樹脂組成物を得た。2軸押出機としては、(株)神戸製鋼所製の2軸押出機「KTX30型」(スクリュウ径30mm、L/D=37、ベント付き)を用いた。
合成樹脂(A成分)
A−1:パンライトL−1225L(帝人化成(株)製、PC)
A−2:マルチロンT−3714(帝人化成(株)製、PC/ABSアロイ)
A−3:ジュラネックス2000(ウィンテックポリマー(株)製、PBT)
A−4:スタイラックABS120(旭化成ケミカルズ(株)製、ABS)
A−5:住友ノーブレンAY564(住友化学(株)製、PP)
A−6:アクリペットMF(三菱レイヨン(株)製、PMMA)
A−7:UBEナイロン6(宇部興産(株)製、ナイロン6)
A−8:ザイロン200H(旭化成ケミカルズ(株)製、PS変性PPE)
A−9:エバフレックスEV360(三井・デュポンポリケミカル(株)製、EVA)
難燃剤(B成分)
B−1:化合物(5)
B−2:化合物(8)
B−3:10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光(株)製、HCA)
B−4:10−ベンジル−10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(特開昭47−16436記載の方法に準じて調製した。)
B−5:PX−200(大八化学(株)製)
B−6:CR−741(大八化学(株)製)
その他添加剤(C成分)
C−1:メタブレンA−3000(三菱レイヨン(株)製、PTFE)
C−2:テフロン(登録商標)PTFE 6J(三井デュポンフロロケミカル(株)製、PTFE)
C−3:ポリフロンMPA FA−500(ダイキン化学工業(株)製、PTFE)
前記で得られた難燃性合成樹脂組成物を用いて射出成形法により成型品を作製した。射出成形は、日精樹脂工業(株)製射出成形機「FE80S型」(型締圧80トン)を使用した。射出成型して試験片を得た後、その試験片を23℃、50%RHの条件で48時間状態調整処理してから、それぞれ燃焼性評価及びブルーミング評価を行った。その結果を表1〜9に示す。なお、これらの評価方法は、具体的には以下の方法によって行った。
(1)燃焼性
燃焼性の評価は、UL94垂直燃焼試験法に準拠して、1.6mm(1/16inch)厚及び0.8mm(1/32inch)厚の試験片を作成し、燃焼試験を行った。UL94垂直燃焼試験の結果は、「V−0」、「V−1」、「V−2」、「Burn」の4段階評価を行った。
(2)ブルーミング
1.6mm厚のUL94V試験片を80℃で150時間加熱し、その後、試験片について23℃、50%Rhの条件で48時間の状態調整処理(エージング処理)を施した後、試験片表面へのホスホン酸エステルの染み出しの有無を目視観察した。ブルーミング試験の結果は、「○(染み出しが全くみられない)」、「△(若干の染み出しがみられる)」、「×(著しい染み出しがみられるか、もしくはブルーミングがみられる)」の3段階で評価を行った。
(3)物性
実施例及び比較例のサンプルについて引張強度及び引張伸度測定した。その結果を表10に示す。物性の評価として、メルトインデクサー(S−111、(株)東洋精機製作所製)にてメルトフローレート(MFR)の測定を、引張試験機にて(TENSILON/UTM−4−100、(株)東洋精機製作所製)引張強度及び引張伸度の測定を行った。MFR(メルトフローレート)は、JIS K7210に準拠して測定した。但し、温度と荷重は下記のように設定した。
a.ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT):235℃、2.16kgf
b.ポリカーボネート樹脂(PC):280℃、2.16kgf
c.ポリカーボネート/ゴム変性ポリスチレン樹脂アロイ(PC/ABS):250℃、5.00kgf
また、引張強度及び引張伸度は、JIS K7113に準拠して2号ダンベル(2.0mm厚)にて測定した。但し、引張速度は下記のように設定した。
a.ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT):50mm/分
b.ポリカーボネート樹脂(PC):50mm/分
c.ポリカーボネート/ゴム変性ポリスチレン樹脂アロイ(PC/ABS):50mm/分
Claims (6)
- 下記一般式(I)
で表されるホスホン酸エステルを含む樹脂用難燃剤及び樹脂成分を含む樹脂組成物であって、
樹脂成分が結晶性樹脂であって、結晶性樹脂がポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂の少なくとも1種であり、
樹脂成分100重量部に対して当該ホスホン酸エステル10〜100重量部を含み、
前記樹脂組成物は、各成分を溶融混練することによって得られるものであり、
前記樹脂組成物は、燃焼時にドリップを落下させながら消炎する、
ことを特徴とする難燃性樹脂組成物。 - ホスホン酸エステルが、10−フェノキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドである、請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
- 樹脂用難燃剤がハロゲンを含まない、請求項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物。
- フィブリル形成能を有するフッ素含有ポリマーをさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物を成形してなる難燃性樹脂成型品。
- 電気・電子部品、OA機器部品、家電機器部品、自動車用部品又は機器機構部品に用いられる、請求項5に記載の難燃性樹脂成型品。
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