JP2017214489A - ゴム組成物及びタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】アイスグリップ性能を高い水準で備えるタイヤを与えることができるゴム組成物及び該ゴム組成物を用いたタイヤを提供する。【解決手段】SBR(A)及び天然ゴム(B)を含む固形ゴム成分と、ファルネセン由来の単量体単位(a)を含む液状重合体(C)と、フィラー(D)とを含有するゴム組成物であって、液状重合体(C)の含有量が、該固形ゴム成分100質量部に対して1〜50質量部であり、フィラー(D)の含有量が、該固形ゴム成分100質量部に対して20〜150質量部であり、該固形ゴム成分におけるSBR(A)の含有量が50質量%超100質量%未満であり、SBR(A)の溶解度パラメータδA、天然ゴム(B)の溶解度パラメータδB、及び液状重合体(C)の溶解度パラメータδCが、|δA−δC|<|δA−δB|を満たす、ゴム組成物、及び該ゴム組成物を少なくとも一部に用いたタイヤである。【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物及び該ゴム組成物を用いたタイヤに関する。
タイヤは、乾燥路面での操縦安定性(ドライグリップ性能)や湿潤路面での操縦安定性(ウェットグリップ性能)の他、低温時や氷雪路面での操縦安定性(アイスグリップ性能)等の様々な制動性能が要求される。特に冬用タイヤにおいては、アイスグリップ性能等の広範な条件下での高いレベルの制動性能が要求される。
アイスグリップ性能を向上させるには、タイヤを構成するゴムと氷雪との接触面積を大きくすることが有効であることから、タイヤ用のゴムには高い柔軟性が求められている。柔軟性を付与する方法として、オイル等の軟化剤が用いられている。
例えば、特許文献1には、ゴム成分として溶液重合スチレンブタジエンゴム及び天然ゴムを特定の割合で含有し、軟化剤としてナフテン系天然オイル、MES(Mild Extracted Solvates)、TDAE(Treated Distilled Aromatic Extracts)等を含有するゴム組成物が記載され、湿潤路面、冬季の路面における摩擦や抵抗等が改善することが記載されている。
しかしながら、かかるゴム組成物においてはオイルの添加によってブリードアウトが生じてしまい、硬化することによりアイスグリップ性能が低下するという経年劣化が問題となっている。そこで、オイルに代えてファルネセン樹脂を軟化剤として添加し、低温時や氷雪路面での柔軟性を改善する試みがなされている。
特許文献2には、ゴム成分及びファルネセン樹脂を特定の割合で含有するゴム組成物が記載され、氷雪上性能及び耐摩耗性等が良好で、硬度変化等が少ないことが記載されている。
特許文献3には、ゴム成分中にスチレンブタジエンゴム、ハイシスポリブタジエン、ポリイソプレン系ゴムを特定の割合で含有し、特定の窒素吸着比表面積を有するシリカ、及びファルネセン樹脂を含有するゴム組成物が記載され、耐摩耗性及び操縦安定性等が改善されることが記載されている。
特許文献4には、ファルネセン由来の単量体単位を特定の割合で含み、特定の重量平均分子量を有する共重合体と、ゴム成分と、カーボンブラック又はシリカとを特定の割合で含有するゴム組成物が記載され、耐摩耗性、ウェットグリップ性能及びアイスグリップ性能等を高い水準で備えることが記載されている。
欧州特許出願公開第1270657号明細書 特開2014−218631号公報 特開2015−54875号公報 特開2015−74699号公報
しかしながら、特許文献1〜4に記載のゴム組成物は、従来のものと比較して耐摩耗性や各種制動性能が向上するものの、アイスグリップ性能においては未だ十分ではなく、更なる改善が望まれている。
本発明は、上記の現状を鑑みてなされたものであり、アイスグリップ性能を高い水準で備えるタイヤを与えることができるゴム組成物及び該ゴム組成物を用いたタイヤを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、スチレンブタジエンゴム及び天然ゴムを含む固形ゴム成分と、ファルネセン由来の単量体単位を含む液状重合体と、フィラーとを含有するゴム組成物であって、該ゴム組成物中における前記液状重合体及びフィラーの含有量、及び該固形ゴム成分におけるスチレンブタジエンゴムの含有量が特定の範囲であり、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム及び前記液状重合体の各溶解度パラメータが、特定の関係を満たすことによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は下記[1]及び[2]に関する。
[1] スチレンブタジエンゴム(A)及び天然ゴム(B)を含む固形ゴム成分と、ファルネセン由来の単量体単位(a)を含む液状重合体(C)と、フィラー(D)とを含有するゴム組成物であって、
液状重合体(C)の含有量が、該固形ゴム成分100質量部に対して1〜50質量部であり、
フィラー(D)の含有量が、該固形ゴム成分100質量部に対して20〜150質量部であり、
該固形ゴム成分におけるスチレンブタジエンゴム(A)の含有量が50質量%超100質量%未満であり、
スチレンブタジエンゴム(A)の溶解度パラメータδA、天然ゴム(B)の溶解度パラメータδB、及び液状重合体(C)の溶解度パラメータδCが、下記式(1)を満たす、ゴム組成物。
|δA−δC|<|δA−δB| (1)
[2] 上記[1]に記載のゴム組成物を少なくとも一部に用いたタイヤ。
本発明によれば、アイスグリップ性能を高い水準で備えるタイヤを与えることができるゴム組成物及び該ゴム組成物を用いたタイヤを提供することができる。
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、スチレンブタジエンゴム(以下、単に「SBR」とも称する)(A)及び天然ゴム(B)を含む固形ゴム成分(以下、単に「固形ゴム成分」とも称する)と、ファルネセン由来の単量体単位(a)を含む液状重合体(C)(以下、単に「重合体(C)」とも称する)と、フィラー(D)とを含有するゴム組成物であって、重合体(C)の含有量が、該固形ゴム成分100質量部に対して1〜50質量部であり、フィラー(D)の含有量が、該固形ゴム成分100質量部に対して20〜150質量部であり、
該固形ゴム成分におけるSBR(A)の含有量が50質量%超100質量%未満であり、SBR(A)の溶解度パラメータδA、天然ゴム(B)の溶解度パラメータδB、及び重合体(C)の溶解度パラメータδCが、下記式(1)を満たすものである。
|δA−δC|<|δA−δB| (1)
本発明において「溶解度パラメータδ」とは、Hoyの推算法に基づき計算されるものであり、前記推算法は凝集エネルギー密度とモル分子容とを基に分子構造から推算されるものである(D.W. Van Krevelen, K. te Nijenhuis, “Properties of Polymers, Fourth Edition”, Elsevier Science, 2009, pp.216-221)。
前記推算法では、SBR(A)、天然ゴム(B)又は重合体(C)の各々において10モル%以上を占める構造の全てを考慮する。また10モル%未満の構造についても、構造及びモル分率が明らかなものについては計算に加えるものとする。
前記推算法により計算できない場合は、溶解度パラメータが既知の溶媒に対し溶解するか否かの判定による実験法により溶解度パラメータを算出し、それを代用することができる(「ポリマーハンドブック 第4版(Polymer Handbook Fourth Edition)」ジェー・ブランド(J.Brand)著、ワイリー(Wiley)社1998年発行)。この場合、溶解度パラメータの算出に用いるSBR(A)、天然ゴム(B)及び重合体(C)の溶解度パラメータは、同一の実験法により得られた値を用いる。
〔固形ゴム成分〕
本発明において固形ゴム成分は、SBR(A)及び天然ゴム(B)を含み、該固形ゴム成分におけるSBR(A)の含有量が50質量%超100質量%未満である。
本発明において「固形ゴム」とは、液状ではない固形のゴムであって、通常100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)が20〜200のゴムをいう。
<スチレンブタジエンゴム(A)>
固形ゴム成分として用いるSBR(A)は、タイヤ用途に用いられる一般的なものを使用できるが、具体的には、スチレン含量が0.1〜70質量%のものが好ましく、5〜50質量%のものがより好ましい。また、ビニル含量が0.1〜60質量%のものが好ましく、0.1〜55質量%のものがより好ましい。
SBRの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10万〜250万、より好ましくは15万〜200万、更に好ましくは20万〜150万の範囲である。上記の範囲内である場合、成形加工性と得られるタイヤの機械強度とを両立することができる。
示差熱分析法により求めたSBR(A)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−95〜0℃、より好ましくは−95〜−5℃の範囲である。Tgが上記の範囲内であると、ゴム組成物の高粘度化を抑制することができ、取り扱いが容易になる。
本発明において用いることができるSBRは、スチレンとブタジエンとを共重合して得られる。SBRの製造方法について特に制限はなく、乳化重合法、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができ、乳化重合法、溶液重合法が好ましい。
乳化重合スチレンブタジエンゴム(以下、「E−SBR」とも称する)は、通常の乳化重合法により製造でき、例えば、所定量のスチレン及びブタジエン単量体を乳化剤の存在下に乳化分散し、ラジカル重合開始剤により乳化重合することにより得られる。また、得られるE−SBRの分子量を調整するため、連鎖移動剤を使用することもできる。重合反応停止後、得られたラテックスから必要に応じて未反応単量体を除去し、次いで、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム等の塩を凝固剤とし、必要に応じて硝酸、硫酸等の酸を添加して凝固系のpHを所定の値に調整しながら共重合体を凝固させた後、分散溶媒を分離することによって共重合体をクラムとして回収できる。該クラムを水洗、次いで脱水後、バンドドライヤー等で乾燥することで、E−SBRが得られる。
溶液重合スチレンブタジエンゴム(以下、「S−SBR」とも称する)は、通常の溶液重合法により製造でき、例えば、溶媒中でアニオン重合可能な活性金属を使用して、所望により極性化合物の存在下、スチレン及びブタジエンを重合することにより製造できる。アニオン重合可能な活性金属としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、アルカリ金属がより好ましく、有機アルカリ金属化合物が更に好ましい。
有機アルカリ金属化合物としては、例えばn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム等の有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。これらの中でも有機リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物がより好ましい。有機アルカリ金属化合物の使用量は、要求されるS−SBRの分子量によって適宜決められる。
溶媒としては、例えばn−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は通常、単量体濃度が1〜50質量%となる範囲で用いることが好ましい。
極性化合物としては、アニオン重合において反応を失活させず、ブタジエン部位のミクロ構造やスチレンの共重合体鎖中の分布を調整するために通常用いられるものであれば特に制限はない。例えばジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の第3級アミン;アルカリ金属アルコキシド、ホスフィン化合物等が挙げられる。
重合反応の温度は、通常−80〜150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは30〜90℃の範囲である。重合様式は、回分式あるいは連続式のいずれでもよい。重合反応は、重合停止剤としてメタノール、イソプロパノール等のアルコールを添加して反応を停止できる。重合停止剤を添加する前に重合末端変性剤を添加してもよい。重合反応停止後の重合溶液は、直接乾燥やスチームストリッピング等により溶媒を分離して、目的のS−SBRを回収できる。なお、溶媒を除去する前に、予め重合溶液と伸展油とを混合し、油展ゴムとして回収してもよい。
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、SBRに官能基が導入された変性SBRを用いてもよい。官能基としては、例えばアミノ基、アルコキシシリル基、水酸基、エポキシ基、及びカルボキシル基等が挙げられる。この変性SBRにおいて、重合体中の官能基が導入される位置については重合体末端であってもよく、重合体の側鎖であってもよい。
これらSBRは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上のSBRを混合して用いる場合、その組み合わせは本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択でき、またその組み合わせによって、物性値を調整できる。
固形ゴム成分におけるSBR(A)の含有量は、50質量%超100質量%未満であり、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは65〜80質量%の範囲である。
また、固形ゴム成分として、本発明の効果を損なわない範囲でSBR(A)以外の他の合成ゴムを含有してもよい。
他の合成ゴム成分としては、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリル共重合体ゴム、及びクロロプレンゴム等が挙げられる。これらの中でも、ブタジエンゴム及びイソプレンゴムから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ブタジエンゴムがより好ましい。また、これらの製造方法は特に限定されず、市販されているものを使用できる。
(ブタジエンゴム)
ブタジエンゴムとしては、例えばチーグラー系触媒、ランタノイド系希土類金属触媒、有機アルカリ金属化合物等を用いて重合して得られる市販のブタジエンゴムを用いることができる。これらの中でも、シス体含量が高い観点から、チーグラー系触媒を用いて重合して得られるブタジエンゴムが好ましい。また、ランタノイド系希土類金属触媒を用いて得られる超高シス体含量のブタジエンゴムを用いてもよい。
ブタジエンゴムのビニル含量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。ビニル含量が50質量%以下であると機械強度が良好になる。ビニル含量の下限は特に限定されない。
示差熱分析法により求めたブタジエンゴムのガラス転移温度(Tg)は、ビニル含量によって変化するが、好ましくは−40℃以下、より好ましくは−50℃以下である。
ブタジエンゴムの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは9万〜200万、より好ましくは15万〜150万、更に好ましくは25万〜80万の範囲である。重量平均分子量が上記範囲にある場合、成形加工性と得られるタイヤの機械強度が良好となる。
上記ブタジエンゴムは、その一部が多官能型変性剤、例えば四塩化錫、四塩化珪素、エポキシ基を分子内に有するアルコキシシラン、又はアミノ基含有アルコキシシランのような変性剤を用いることにより分岐構造又は極性官能基を有していてもよい。
(イソプレンゴム)
イソプレンゴムとしては、例えばチーグラー系触媒、ランタノイド系希土類金属触媒、有機アルカリ金属化合物等を用いて重合して得られる市販のイソプレンゴムを用いることができる。これらの中でも、シス体含量が高い観点から、チーグラー系触媒を用いて重合して得られるイソプレンゴムが好ましい。また、ランタノイド系希土類金属触媒を用いて得られる超高シス体含量のイソプレンゴムを用いてもよい。
イソプレンゴムのビニル含量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。ビニル含量が50質量%以下であると機械強度が良好になる。ビニル含量の下限は特に限定されない。
示差熱分析法により求めたイソプレンゴムのガラス転移温度(Tg)はビニル含量によって変化するが、好ましくは−20℃以下、より好ましくは−30℃以下である。
イソプレンゴムの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは9万〜200万、より好ましくは15万〜150万、更に好ましくは50万〜150万、より更に好ましくは80万〜150万の範囲である。重量平均分子量が上記の範囲内にある場合、成形加工性と得られるタイヤの機械強度が良好となる。
上記イソプレンゴムは、その一部が多官能型変性剤、例えば四塩化錫、四塩化珪素、エポキシ基を分子内に有するアルコキシシラン、又はアミノ基含有アルコキシシランのような変性剤を用いることにより分岐構造又は極性官能基を有していてもよい。
固形ゴム成分がSBR(A)以外の他の合成ゴムを含む場合、固形ゴム成分における他の合成ゴムの含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下であり、固形ゴム成分はSBR(A)と天然ゴム(B)のみからなることがより更に好ましい。
<天然ゴム(B)>
固形ゴム成分として用いる天然ゴム(B)は、例えばSMR、SIR、STR等のTSRやRSS等のタイヤ工業において一般的に用いられる天然ゴム、高純度天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、水酸基化天然ゴム、水素添加天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等が挙げられる。これらの中でも、品質のばらつきが少ない点及び入手容易性の点から、SMR20、STR20やRSS#3が好ましい。
示差熱分析法により求めた天然ゴム(B)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−95〜0℃、より好ましくは−95〜−5℃の範囲である。Tgが上記の範囲内であると、ゴム組成物の高粘度化を抑制することができ、取り扱いが容易になる。
これら天然ゴムは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上の天然ゴムを混合して用いる場合、その組み合わせは本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択でき、またその組み合わせによって、物性値を調整できる。
固形ゴム成分における天然ゴム(B)の含有量は、0質量%超50質量%未満であり、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは20〜35質量%の範囲である。
<液状重合体(C)>
本発明に用いる重合体(C)は、ファルネセン由来の単量体単位(a)(以下、単に「単量体単位(a)」とも称する)を含む液状重合体である。
本発明において「液状重合体」とは、常温において液状である重合体であり、通常100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)が20未満の重合体をいう。
〔単量体単位(a)〕
単量体単位(a)は、α−ファルネセン由来の単量体単位であってもよく、また、下記式(I)で表されるβ−ファルネセン由来の単量体単位であってもよく、α−ファルネセン由来の単量体単位とβ−ファルネセン由来の単量体単位とを含むものでもよいが、製造容易性の観点から、β−ファルネセン由来の単量体単位を含有することが好ましい。
β−ファルネセン由来の単量体単位の含有量は、製造容易性の観点から、単量体単位(a)中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは100モル%であること、すなわち単量体単位(a)のすべてがβ−ファルネセン由来の単量体単位である。
重合体(C)における単量体単位(a)の含有量は、アイスグリップ性能及び耐ブリード性を向上させる観点から、好ましくは1〜75質量%、より好ましくは10〜70質量%、更に好ましくは15〜65質量%、より更に好ましくは20〜55質量%の範囲である。
〔単量体単位(b)〕
重合体(C)は、さらにファルネセン以外の他の単量体に由来する単量体単位(b)(以下、単に「単量体単位(b)」とも称する)含む共重合体であってもよい。
重合体(C)が単量体単位(a)と単量体単位(b)の共重合体である場合、
重合体(C)における単量体単位(b)の含有量は、好ましくは25〜99質量%、より好ましくは30〜90質量%、更に好ましくは35〜85質量%、より更に好ましくは45〜80質量%の範囲である。
かかる単量体単位(b)を形成できるファルネセン以外の他の単量体としては、ファルネセンと共重合可能なものであれば特に限定されず、例えば芳香族ビニル化合物、ファルネセン以外の共役ジエン化合物、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体、メタクリルアミド及びその誘導体、並びにアクリロニトリル等が挙げられる。
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、及びα−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、N,N−ジエチル−4−アミノエチルスチレン、4−メトキシスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン等のスチレン誘導体;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピリジン等が挙げられる。これらの中でもスチレン及びその誘導体が好ましく、スチレンがより好ましい。これらの芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニルブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3,7−オクタトリエン、ミルセン、クロロプレン等が挙げられる。これらの中でもブタジエン、イソプレン及びミルセンが好ましく、ブタジエンがより好ましい。これらの共役ジエンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記アクリル酸の誘導体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、アクリル酸テトラエチレングリコール、アクリル酸トリプロピレングリコール、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
上記メタクリル酸の誘導体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジルメタクリルアミド等が挙げられる。
上記アクリルアミドの誘導体としては、ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、イソプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩、ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
上記メタクリルアミドの誘導体としては、ジメチルメタクリルアミド、メタクリロイルモルホリン、イソプロピルメタクリルアミド、ジエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリルアミド等が挙げられる。
これら他の単量体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合体(C)は、さらに芳香族ビニル化合物由来の単量体単位(b−1)及びファルネセン以外の共役ジエン化合物由来の単量体単位(b−2)から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、芳香族ビニル化合物由来の単量体単位(b−1)(以下、単に「単量体単位(b−1)」とも称する)を含むことがより好ましい。これにより、アイスグリップ性能及び耐ブリード性を向上させつつ、良好なウェットグリップ性能を維持することができる。
重合体(C)における単量体単位(b−1)の含有量は、アイスグリップ性能及び耐ブリード性を向上させる観点、及び良好なウェットグリップ性能を維持する観点から、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは10〜30質量%の範囲である。
重合体(C)は、アイスグリップ性能及び耐ブリード性を向上させる観点、及び良好なウェットグリップ性能を維持する観点から、さらにファルネセン以外の共役ジエン化合物の単量体単位(b−2)(以下、単に「単量体単位(b−2)」とも称する)を含むことが好ましい。重合体(C)における単量体単位(b−2)の含有量は、好ましくは15〜60質量%、より好ましくは20〜55質量%、更に好ましくは25〜50質量%の範囲である。
重合体(C)は、アイスグリップ性能及び耐ブリード性を向上させる観点、及び良好なウェットグリップ性能を維持する観点から、単量体単位(b)として芳香族ビニル化合物由来の単量体単位(b−1)とファルネセン以外の共役ジエン化合物由来の単量体単位(b−2)とを併用することが好ましい。
重合体(C)における単量体単位(b−2)の含有量に対する単量体単位(b−1)の含有量の質量比〔(b−1)/(b−2)〕は、好ましくは10/90〜50/50、より好ましくは15/85〜45/55、更に好ましくは20/80〜40/60である。
単量体単位(b−1)と単量体単位(b−2)とを併用する場合の単量体単位(b−1)と単量体単位(b−2)の組み合わせとしては、スチレン由来の単量体単位と、ブタジエン、イソプレン及びミルセンから選ばれる少なくとも1種の化合物由来の単量体単位との組み合わせが好ましく、スチレン由来の単量体単位と、ブタジエン及びイソプレンから選ばれる少なくとも1種の化合物由来の単量体単位との組み合わせがより好ましく、スチレン由来の単量体単位とブタジエン由来の単量体単位との組み合わせが更に好ましい。
示差熱分析法により求めた重合体(C)のガラス転移温度(Tg)は、結合様式(ミクロ構造)やファルネセン由来の単量体単位(a)及び必要に応じて用いられるファルネセン以外の他の単量体単位(b)の含有量によっても変化するが、好ましくは−100〜−36℃、より好ましくは−80〜−40℃、更に好ましくは−75〜−45℃、より更に好ましくは−70〜−50℃の範囲である。上記の範囲内であると、柔軟な重合体が得られ、成形加工性、ウェットグリップ性能及びアイスグリップ性能が向上する。
本発明におけるガラス転移温度は、後述する実施例に記載の方法によるものである。
重合体(C)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,000〜50万、より好ましくは4,000〜30万、更に好ましくは6,000〜10万、より更に好ましくは8,000〜5万の範囲である。重量平均分子量(Mw)が上記の範囲内であると、優れた機械強度、並びに流動性及び成形加工性を得ることができる。
重合体(C)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜4.0、より好ましくは1.0〜3.0、更に好ましくは1.0〜2.0、より更に好ましくは1.0〜1.5の範囲である。Mw/Mnが上記の範囲内であると、重合体(C)の粘度のばらつきが小さくなる。
本発明における重量平均分子量及び分子量分布は、後述する実施例に記載の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めたポリスチレン換算によるものである。
重合体(C)の単量体単位(a)のビニル含量は、アイスグリップ性能及び耐ブリード性を向上させる観点から、好ましくは3〜50モル%、より好ましくは5〜40モル%、更に好ましくは10〜30モル%の範囲である。
重合体(C)が共重合体であり、単量体単位(b)がブタジエン由来の単量体単位を含有する場合には、重合体(C)のブタジエン由来の単量体単位のビニル含量は、アイスグリップ性能及び耐ブリード性を向上させる観点から、好ましくは3〜30モル%、より好ましくは5〜25モル%、更に好ましくは7〜20モル%の範囲である。
本発明において「単量体単位(a)のビニル含量」とは、ファルネセン由来の単量体単位のうち、下記式(II)のような1,4結合を除く結合様式の含有量のことであり、後述する実施例に記載の1H−NMRを用いた方法により測定できる。
また、「ブタジエン由来の単量体単位のビニル含量」とは、ブタジエン由来の単量体単位のうち、1,4結合を除く結合様式の含有量のことであり、後述する実施例に記載の1H−NMRを用いた方法により測定できる。
ゴム組成物における重合体(C)の含有量は、アイスグリップ性能及び耐ブリード性を向上させる観点から、固形ゴム成分100質量部に対して1〜50質量部であり、好ましくは3〜40質量部、より好ましくは5〜30質量部の範囲である。
(液状重合体(C)の製造方法)
重合体(C)は、ファルネセンを含有する単量体を、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法又は国際公開第2010/027463号、国際公開第2010/027464号に記載の方法等により製造することができる。これらの中でも、乳化重合法又は溶液重合法が好ましく、溶液重合法がより好ましい。
重合体(C)の製造方法に用いる単量体に含まれるファルネセンは、α−ファルネセンであってもよく、また、前記式(I)で表されるβ−ファルネセンであってもよく、α−ファルネセンとβ−ファルネセンとを混合して用いてもよい。本発明の製造方法に用いるファルネセンは、製造容易性の観点から、β−ファルネセンを含有することが好ましく、該ファルネセン全量中のβ−ファルネセンの含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは100モル%である。
重合体(C)の製造方法に用いる単量体中のファルネセンの含有量は、好ましくは1〜75質量%、より好ましくは10〜70質量%、更に好ましくは15〜65質量%、より更に好ましくは20〜55質量%の範囲である。
単量体は、さらにファルネセン以外の他の単量体を含有してもよい。かかる他の単量体としては、前述した単量体単位(b)を形成できる単量体が挙げられる。
重合体(C)の製造方法に用いる単量体中の他の単量体の含有量は、好ましくは25〜99質量%、より好ましくは30〜90質量%、更に好ましくは35〜85質量%、より更に好ましくは45〜80質量%の範囲である。
(溶液重合法)
本発明の製造方法として用いる溶液重合法は、公知の方法を適用できる。例えば、溶媒中で、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒、アニオン重合可能な活性金属を使用して、所望により極性化合物の存在下、ファルネセンを含む単量体を重合する。
アニオン重合可能な活性金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ランタン、ネオジム等のランタノイド系希土類金属等が挙げられる。これらの中でもアルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、アルカリ金属がより好ましい。アルカリ金属の中でも、有機アルカリ金属化合物が更に好ましい。
有機アルカリ金属化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム等の有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、ジリチオナフタレン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。これらの中でも有機リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物がより好ましい。有機アルカリ金属化合物の使用量は要求される液状重合体の分子量によって適宜決められるが、単量体100質量部に対して0.01〜3質量部が好ましい。
有機アルカリ金属化合物はまた、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン等の第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミドとして使用することもできる。
溶媒としては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
極性化合物は、アニオン重合において反応を失活させず、ファルネセン由来部分又はファルネセン以外の他の共役ジエン化合物由来部分のミクロ構造やランダム構造を制御するために用いられる。極性化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;ピリジン;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の第3級アミン;カリウム−t−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物等が挙げられる。極性化合物は、有機アルカリ金属化合物に対して好ましくは0.01〜1,000モル等量の範囲で使用される。
溶液重合の重合温度は、通常、−80〜150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃の範囲である。重合様式は回分式あるいは連続式のいずれでもよい。
重合体(C)が、共重合体である場合には、重合系中のファルネセン及びファルネセン以外の他の単量体の組成比が特定の範囲になるように、反応液中にファルネセン及びファルネセン以外の他の単量体を連続的あるいは断続的に供給してもよい。また、予め特定の組成比に調整したファルネセン及びファルネセン以外の他の単量体の混合物を供給することで、ランダム共重合体を製造することができる。さらに、反応液中でファルネセン及びファルネセン以外の他の単量体を特定の組成比となるように順次重合することで、ブロック共重合体を製造することができる。
重合反応は、重合停止剤としてメタノール、イソプロパノール等のアルコールを添加して、反応を停止できる。得られた重合反応液をメタノール等の貧溶媒に注いで共重合体を析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することにより共重合体を単離できる。
(乳化重合法)
重合体(C)の製造方法として用いる乳化重合法は、公知の方法を適用できる。例えば、所定量のファルネセンを含む単量体を乳化剤の存在下に乳化分散し、ラジカル重合開始剤により乳化重合する。
乳化剤としては、例えば炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩又はロジン酸塩が用いられる。具体例としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸のカリウム塩又はナトリウム塩が挙げられる。
分散剤としては通常、水が使用され、重合時の安定性が阻害されない範囲で、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムのような過硫酸塩、有機過酸化物、過酸化水素等が挙げられる。
得られる重合体(C)の分子量を調整するため、連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、チオグリコール酸、ジテルペン、ターピノーレン、γ−テルピネン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
乳化重合の重合温度は、使用するラジカル重合開始剤の種類によって適宜選択できるが、通常、0〜100℃、好ましくは0〜60℃の範囲である。重合様式は連続式あるいは回分式のいずれでもよい。
重合反応は、重合停止剤の添加により停止できる。重合停止剤としては、例えば、イソプロピルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン等のアミン化合物、ヒドロキノンやベンゾキノン等のキノン系化合物、亜硝酸ナトリウム等が挙げられる。
重合反応停止後、必要に応じて老化防止剤を添加してもよい。重合反応停止後、得られたラテックスから必要に応じて未反応単量体を除去し、次いで、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム等の塩を凝固剤とし、必要に応じて硝酸、硫酸等の酸を添加して凝固系のpHを所定の値に調整しながら、重合体(C)を凝固させた後、分散溶媒を分離することによって重合体(C)を回収する。次いで水洗及び脱水後、乾燥することで、重合体(C)が得られる。なお、凝固の際に、必要に応じて予めラテックスと乳化分散液にした伸展油とを混合し、油展の重合体として回収してもよい。
(溶解度パラメータ)
本発明において固形ゴム成分は、非相容ポリマーブレンド物であることが好ましい。これにより、ゴム組成物を加硫してなるゴムは、海島状の相分離構造を形成し、該固形ゴム成分におけるSBR(A)の含有量が上記の範囲であると、SBR(A)からなる相(以下、単に「(A)相」とも称する)は海相となり、天然ゴム(B)からなる相(以下、単に「(B)相」とも称する)は島相となる。
そして、本発明において、SBR(A)の溶解度パラメータδA、天然ゴム(B)の溶解度パラメータδB、及び重合体(C)の溶解度パラメータδCが、下記式(1)を満たす。
|δA−δC|<|δA−δB| (1)
これにより、重合体(C)が(A)相へ相容し、より多くの重合体(C)が(A)相へ分配され、重合体(C)の可塑効果により、柔軟性が向上し、アイスグリップ性能を向上させることができる。
溶解度パラメータδA、δB、及びδCの序列は、δA>δC>δBの順であっても、δC>δA>δBの順であってもよく、好ましくはδA>δC>δBである。
本発明の効果を損なわない限りδCの上限は特に限定されないが、例えば、δC>δAの場合には、δC<δB+2.0であることが好ましく、δC<δB+1.6であることがより好ましい。
なお、溶解度パラメータの単位は(J/cm31/2である。
SBR(A)と重合体(C)の溶解度パラメータの差の絶対値|δA−δC|は、柔軟性を向上させ、アイスグリップ性能を向上させる観点から、好ましくは0〜0.60(J/cm31/2、より好ましくは0〜0.50(J/cm31/2、更に好ましくは0〜0.40(J/cm31/2、より更に好ましくは0〜0.30(J/cm31/2である。
そして、SBR(A)と天然ゴム(B)の溶解度パラメータの差の絶対値|δA−δB|は、十分に海島状の相分離構造を形成する観点から、好ましくは0.65〜0.90(J/cm31/2、より好ましくは0.70〜0.85(J/cm31/2、更に好ましくは0.75〜0.80(J/cm31/2である。
さらに、天然ゴム(B)と重合体(C)との溶解度パラメータの差の絶対値|δB−δC|は、0.20(J/cm31/2超であることが好ましい。これにより、重合体(C)が(B)相より(A)相へより多く分配され、柔軟性が向上し、アイスグリップ性能を向上させることができる。
このような観点から、天然ゴム(B)と重合体(C)との溶解度パラメータの差|δB−δC|は、好ましくは0.20(J/cm31/2超であり、より好ましくは0.30(J/cm31/2以上、更に好ましくは0.50(J/cm31/2以上である。天然ゴム(B)と重合体(C)との溶解度パラメータの差の絶対値|δB−δC|の上限は特に限定されないが、好ましくは2.0(J/cm31/2未満、より好ましくは1.6(J/cm31/2未満である。
SBR(A)の溶解度パラメータδAは、スチレン含量、ブタジエン含量、及びブタジエンのビニル化度によって変化するが、柔軟性を向上させ、アイスグリップ性能を向上させる観点から、好ましくは18.20〜19.50(J/cm31/2、より好ましくは18.40〜19.10(J/cm31/2、更に好ましくは18.60〜18.90(J/cm31/2である。具体的な溶解度パラメータδAとしては、例えばビニル化度が20%である場合、スチレン含量20質量%、ブタジエン含量80質量%のSBRは18.70(J/cm31/2、スチレン含量40質量%、ブタジエン含量60質量%のSBRは18.95(J/cm31/2、スチレン含量60質量%、ブタジエン含量40質量%のSBRは19.20(J/cm31/2である。また、ビニル化度が60%である場合、スチレン含量20質量%、ブタジエン含量80質量%のSBRは18.21(J/cm31/2、スチレン含量40質量%、ブタジエン含量60質量%のSBRは18.57(J/cm31/2、スチレン含量60質量%、ブタジエン含量40質量%のSBRは18.95(J/cm31/2である。
SBR(A)として2種以上のゴムを併用する場合、SBR(A)の溶解度パラメータδAは、SBR(A)中に20質量%以上含まれるゴムの中で、重合体(C)の溶解度パラメータに最も近い値のものをSBR(A)の溶解度パラメータδAとする。なお、SBR(A)中に、その20質量%以上を占めるゴムが存在しない場合には、SBR(A)中の最も量が多いゴムの溶解度パラメータをSBR(A)の溶解度パラメータδAとする。
天然ゴム(B)の溶解度パラメータδBは、柔軟性を向上させ、アイスグリップ性能を向上させる観点から、好ましくは17.60〜18.50(J/cm31/2、より好ましくは17.80〜18.30(J/cm31/2、更に好ましくは18.00〜18.10(J/cm31/2である。具体的な溶解度パラメータδBとしては、例えば、天然ゴムは18.02(J/cm31/2である。
天然ゴム(B)として2種以上のゴムを併用する場合、天然ゴム(B)の溶解度パラメータは、天然ゴム(B)中に20質量%以上含まれるゴムの中で、重合体(C)の溶解度パラメータに最も近い値のものを天然ゴム(B)の溶解度パラメータとする。なお、天然ゴム(B)中に、その20質量%以上を占めるゴムが存在しない場合には、天然ゴム(B)中の最も量が多いゴムの溶解度パラメータを天然ゴム(B)の溶解度パラメータとする。
重合体(C)の溶解度パラメータδCは、柔軟性を向上させ、アイスグリップ性能を向上させる観点から、好ましくは18.00〜19.50(J/cm31/2、より好ましくは18.10〜19.00(J/cm31/2、更に好ましくは18.30〜18.80(J/cm31/2の範囲である。
重合体(C)として2種以上の重合体(C)を併用する場合、重合体(C)の溶解度パラメータは、各重合体(C)のモル比から加重平均により算出される溶解度パラメータを重合体(C)の溶解度パラメータとして用いる。
本発明において、柔軟性を向上させ、アイスグリップ性能を向上させる観点、及び良好なウェットグリップ性能を維持する観点から、SBR(A)と天然ゴム(B)の溶解度パラメータの差の絶対値に対するSBR(A)と重合体(C)の溶解度パラメータの差の絶対値の比{|δA−δC|/|δA−δB|}(以下、単に「比{|δA−δC|/|δA−δB|}」とも称する)が、さらに下記式(2)を満たすことが好ましい。
{|δA−δC|/|δA−δB|}<0.80 (2)
比{|δA−δC|/|δA−δB|}は、柔軟性を向上させ、アイスグリップ性能を向上させる観点、及び良好なウェットグリップ性能を維持する観点から、好ましくは0〜0.75、より好ましくは0〜0.60、更に好ましくは0〜0.50、より更に好ましく0〜0.40、より更に好ましくは0〜0.30である。
(分配比)
本発明において、SBR(A)及び天然ゴム(B)に対する重合体(C)の分配比〔(A)/(B)〕(以下、単に「分配比〔(A)/(B)〕」とも称する)は55/45以上であることが好ましい。
本発明において「分配比」とは、(A)相と(B)相を有する固形ゴム成分における重合体(C)の各相への分配比をいう。
分配比〔(A)/(B)〕が55/45以上であると、(B)相より(A)相へ重合体(C)がより多く分配され、重合体(C)の可塑効果により、柔軟性が向上し、アイスグリップ性能を向上させることができる。このような観点から、分配比〔(A)/(B)〕は、好ましくは55/45〜100/0、より好ましくは60/40〜100/0、更に好ましくは70/30〜100/0、より更に好ましくは80/20〜100/0の範囲である。
分配比は、SBR(A)、天然ゴム(B)及び重合体(C)を含む測定用ゴム混合物を用いて、示差走査熱量測定(DSC)により測定される該ゴム混合物のTgのベースゴムのTg1からの変化量が0.5℃以上の場合にはDSCにより算出され、該変化量が0.5℃未満の場合には原子間力顕微鏡(AFM)を用いてAFM像の面積比により算出される。
本発明において、DSCを用いた重合体(C)の分配比の算出方法は、内藤ら(Naito (1996), Journal of Applied Polymer Science, 61, 5, 755-762)による報告に基づいたものである。
内藤らは、天然ゴム/ブタジエンゴムや天然ゴム/SBR等の非相容ポリマーブレンド物において、オイル等の添加物が各相に分配現象を示すことを報告し、非相容の複数種のポリマーと、オイルを用いて、ポリマーのガラス転移温度(Tg)の変化より、オイルの分配を定性的に推定する方法を提案している。
そこで、本発明においても、SBR(A)、天然ゴム(B)及び重合体(C)を含むゴム混合物のTgのベースゴム(すなわちSBR(A)又は天然ゴム(B))のTg1からの変化量が0.5℃以上の場合には、内藤らによるに方法に基づき、示差熱量測定(DSC)により測定されるTgの変化から算出する。
以下に、DSCによる分配比の算出方法について説明する。
一般に、ベースゴムと液状ゴムが相容した場合、これらのゴム混合物のTgは下記式(3)のFox式で表される。
(式(3)中、Tgはゴム混合物のガラス転移温度、Tg1はベースゴムのガラス転移温度、Tg2は液状ゴムのガラス転移温度、Xは液状ゴムの重量分率を示す。)
上記式(3)を、液状ゴムの重量分率Xについて整理すると下記式(4)で表される。
なお、下記式(4)中の各符号は、前記式(3)と同義である。
そこで、本発明では、まず、あらかじめベースゴムとしてSBR(A)及び液状ゴムとして重合体(C)を用いて重量分率Xで相容した時のTgを測定し、1/Tgと重合体(C)の重量分率Xとの検量線を作成し、SBR(A)、重合体(C)及び架橋剤を含むゴム混合物に係る式(4)の傾き、切片を得る。
同様に、ベースゴムとして天然ゴム(B)及び液状ゴムとして重合体(C)を用いて重量分率Xで相容した時のTgを測定し、天然ゴム(B)、重合体(C)及び架橋剤を含むゴム混合物に係る式(4)の傾き、切片を得る。
次いで、SBR(A)、天然ゴム(B)、重合体(C)及び架橋剤を含むゴム混合物(質量比〔(A)/(B)/(C)〕=50/50/20)のTgを測定し、得られた2つの検量線を用いて、(A)相に相容する重合体(C)の重量分率XA及び(B)相に相容する重合体(C)の重量分率XBを算出する。そして、このように算出される重量分率XAとXBの比(XA/XB)を、SBR(A)及び天然ゴム(B)に対する重合体(C)の分配比〔(A)/(B)〕とする。
なお、前記ゴム混合物は、SBR(A)、天然ゴム(B)及び重合体(C)を所定の配合処方で架橋剤及びその他添加剤と共に混練してゴム混合物を調製する。前記ゴム混合物は、例えばSBR(A)、天然ゴム(B)及び重合体(C)を所定の配合処方でブラベンダーに投入し、開始温度130℃、回転数100rpmで5分間混練した後、ブラベンダー外に取出して室温まで冷却し、それらと架橋剤及びその他添加剤をブラベンダーに投入し、開始温度80℃、回転数80rpmで2分間混練した後、ブラベンダー外に取り出して室温まで冷却し、ゴム混合物を調製することができる。
次に、AFMを用いた重合体(C)の分配比の算出方法について説明する。
AFMを用いた重合体(C)の分配比の算出は、AFMを用いて加硫シートの断面観察を行い、得られたAFM像を画像解析により(A)相及び(B)相の面積比〔(A)/(B)〕から算出する。
具体的には、まず、重合体(C)を含まないSBR(A)及び天然ゴム(B)のゴム混合物からなる架橋物(加硫ゴム)の加硫シートを作製した後、ウルトラミクロトーム等を用いて加硫シートの平滑な観察断面を作製する。AFMの位相モードと呼ばれる手法において得られる、加硫シート表面の粘弾性を反映した位相差像により、(A)相及び(B)相の相分離構造を示すAFM像を得る。得られたAFM像に対し画像解析を行うことで、(A)相、(B)相の各相の位相差から(A)相及び(B)相の面積比〔(A)/(B)〕を算出することができる。
SBR(A)、天然ゴム(B)及び重合体(C)のゴム混合物からなる架橋物(加硫ゴム)の加硫シートのAFM像を観察した場合、重合体(C)が相容した相の面積比が増加する。そこで本発明において、DSCにより分配比が既知である重合体(C)を含む加硫シートにおける(A)相及び(B)相の面積比〔(A)/(B)〕を算出し、重合体(C)を含まない加硫シートにおける(A)相及び(B)相の面積比〔(A)/(B)〕との差を求め、AFM像より求めた面積比の差をx軸、DSCより求めた分配比〔(A)/(B)〕をy軸として検量線を作製する。
次に、評価する加硫シートのAFM像を観察して面積比を測定し、該検量線を用いることで、AFMを用いた重合体(C)の分配比を算出することができる。分配比の算出方法の詳細は、後述する実施例に記載する。
なお、ゴム混合物の組成によっては、加硫シート中にオリゴマー成分が含まれるため、断面作製後の表面に該オリゴマーがブリードアウトし、表面が不安定になり観察に適さない場合がある。この場合、前処理として、観察断面作製前の加硫シートに対し、固形ゴム成分及び重合体(C)がともに不溶である溶媒に浸漬する等によりオリゴマー成分の抽出処理を行ってもよい。また、上記の加硫シートの観察断面の作製については、液体窒素で加硫シートを凍結させ、破断させることで断面を作製してもよい。
<フィラー(D)>
本発明のゴム組成物は、フィラー(D)を固形ゴム成分100質量部に対して20〜150質量部含有する。
フィラー(D)を用いることにより、機械強度、耐熱性、耐候性等の物性が改善され、硬度の調整、ゴム組成物の増量をすることができる。
本発明で用いるフィラー(D)としては、シリカ、酸化チタン等の酸化物;クレー、タルク、マイカ、ガラス繊維、ガラスバルーン等のケイ酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;カーボンブラック、炭素繊維等の炭素類等の無機フィラー、樹脂粒子、木粉、コルク粉等の有機フィラー等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
フィラー(D)のゴム組成物中の含有量は、固形ゴム成分100質量部に対して20〜150質量部であり、好ましくは25〜130質量部、より好ましくは30〜110質量部の範囲である。フィラー(D)の含有量が上記の範囲であると、成形加工性、制動性能、機械強度、及び耐摩耗性が向上する。
フィラー(D)は、成形加工性、制動性能、機械強度、及び耐摩耗性の向上の観点から、無機フィラーが好ましく、シリカ及びカーボンブラックから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、シリカとカーボンブラックとの併用が更に好ましい。
〔シリカ〕
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられるが、成形加工性、制動性能、機械強度、及び耐摩耗性の向上の観点から、湿式法シリカが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカの平均粒径は、成形加工性、制動性能、機械強度、及び耐摩耗性の向上の観点から、好ましくは0.5〜200nm、より好ましくは5〜150nm、更に好ましくは10〜100nm、より更に好ましくは10〜60nmである。
なお、シリカの平均粒径は、透過型電子顕微鏡により粒子の直径を測定して、その平均値を算出することにより求めることができる。
〔カーボンブラック〕
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック等のカーボンブラックを用いることができる。これらの中でも、ゴム組成物の加硫速度やその加硫物の機械強度を向上させる観点から、ファーネスブラックが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ファーネスブラックの市販品としては、例えば、三菱化学株式会社「ダイアブラック」、東海カーボン株式会社製「シースト」等が挙げられる。アセチレンブラックの市販品としては、例えば、電気化学工業株式会社製「デンカブラック」が挙げられる。ケッチェンブラックの市販品としては、例えば、ライオン株式会社製「ECP600JD」が挙げられる。
カーボンブラックは、ゴム成分への濡れ性や分散性を向上させる観点から、硝酸、硫酸、塩酸又はこれらの混合酸等による酸処理や、空気存在下での熱処理による表面酸化処理を行ってもよい。また、機械強度向上の観点から、黒鉛化触媒の存在下に2,000〜3,000℃で熱処理を行ってもよい。なお、黒鉛化触媒としては、ホウ素、ホウ素酸化物(例えば、B22、B23、B43、B45等)、ホウ素オキソ酸(例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等)及びその塩、ホウ素炭化物(例えば、B4C、B6C等)、窒化ホウ素(BN)、その他のホウ素化合物が好適に用いられる。
カーボンブラックは、粉砕等により平均粒径を調整できる。カーボンブラックの粉砕には、高速回転粉砕機(ハンマーミル、ピンミル、ケージミル)や各種ボールミル(転動ミル、振動ミル、遊星ミル)、撹拌ミル(ビーズミル、アトライター、流通管型ミル、アニュラーミル)等が使用できる。
カーボンブラックの平均粒径は、カーボンブラックの分散性、タイヤの耐摩耗性及び機械強度の向上の観点から、好ましくは5〜100nm、より好ましくは5〜80nm、更に好ましくは10〜70nmである。
なお、カーボンブラックの平均粒径は、透過型電子顕微鏡により粒子の直径を測定して、その平均値を算出することにより求めることができる。
本発明のゴム組成物において、カーボンブラック及びシリカを併用する場合、それぞれの成分の配合比は特に制限はなく、所望の性能に合わせて適宜選択することができる。
<任意成分>
本発明のゴム組成物は、発明の効果を阻害しない範囲で、(A)〜(D)成分以外の任意成分を含有してもよい。ゴム組成物における任意成分の含有量は、固形ゴム成分100質量部に対し、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
(シランカップリング剤)
本発明のゴム組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、スルフィド系化合物、メルカプト系化合物、ビニル系化合物、アミノ系化合物、グリシドキシ系化合物、ニトロ系化合物及びクロロ系化合物等が挙げられる。
スルフィド系化合物としては、例えばビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド及び3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等が挙げられる。
メルカプト系化合物としては、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン及び2−メルカプトエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
ビニル系化合物としては、例えばビニルトリエトキシシラン、及びビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アミノ系化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、及び3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
グリシドキシ系化合物としては、例えばγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及びγ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
ニトロ系化合物としては、例えば3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、及び3−ニトロプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
クロロ系化合物としては、例えば3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、及び2−クロロエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、添加効果が大きい観点及びコストの観点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。
前記シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1〜15質量部が更に好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記の範囲内であると、分散性、カップリング効果、補強性、及びタイヤの耐摩耗性が向上する。
(シリカ及びカーボンブラック以外のフィラー)
本発明のゴム組成物は、機械強度の向上、耐熱性や耐候性等の物性の改良、硬度調整、増量剤を含有させることによる経済性の改善等を目的として、必要に応じてシリカ及びカーボンブラック以外のフィラーをさらに含有していてもよい。
本発明のゴム組成物がシリカ及びカーボンブラック以外のフィラーを含有する場合、その含有量は、固形ゴム成分100質量部に対して0.1〜120質量部が好ましく、5〜90質量部がより好ましく、10〜80質量部が更に好ましい。前記フィラーの含有量が前記範囲内であると、加硫物の機械強度がより一層向上する。
(架橋剤)
本発明のゴム組成物は、架橋剤を添加して架橋(加硫)させて用いることが好ましい。架橋剤としては、例えば硫黄及び硫黄化合物、酸素、有機過酸化物、フェノール樹脂及びアミノ樹脂、キノン及びキノンジオキシム誘導体、ハロゲン化合物、アルデヒド化合物、アルコール化合物、エポキシ化合物、金属ハロゲン化物及び有機金属ハロゲン化物、シランカップリング剤以外のシラン化合物等が挙げられる。これらの中でも硫黄及び硫黄化合物が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。架橋剤の含有量は、固形ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜8質量部がより好ましく、0.8〜5質量部が更に好ましい。
前記架橋剤の中でも、硫黄及び硫黄化合物を用いると、本発明のゴム組成物を加硫させ、加硫ゴムとして利用することもできる。加硫の条件、方法に特に制限はないが、加硫金型を用いて加硫温度120〜200℃及び加硫圧力0.5〜2.0MPaの加圧加熱条件で行うことが好ましい。
本発明のゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。加硫促進剤としては、例えば、グアニジン系化合物、スルフェンアミド系化合物、チアゾール系化合物、チウラム系化合物、チオウレア系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、アルデヒド−アミン系化合物又はアルデヒド−アンモニア系化合物、イミダゾリン系化合物、キサンテート系化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記加硫促進剤を含有する場合、その含有量は、固形ゴム成分100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
本発明のゴム組成物は、さらに加硫助剤を含有してもよい。加硫助剤としては、例えば、ステアリン酸等の脂肪酸;亜鉛華等の金属酸化物;ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記加硫助剤を含有する場合、その含有量は、固形ゴム成分100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。
本発明のゴム組成物は、発明の効果を阻害しない範囲で、成形加工性、流動性等の改良を目的とし、必要に応じてシリコンオイル、アロマオイル、TDAE(Treated Distilled Aromatic Extracts)、MES(Mild Extracted Solvates)、RAE(Residual Aromatic Extracts)、パラフィンオイル、及びナフテンオイル等のプロセスオイル、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、C9系樹脂、ロジン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、フェノール系樹脂等の樹脂成分、低分子量ポリブタジエン、低分子量ポリイソプレン、低分子量スチレンブタジエン共重合体、及び低分子量スチレンイソプレン共重合体等の重合体(C)以外の液状重合体を軟化剤として適宜使用することができる。なお、上記共重合体はブロック又はランダム等のいずれの重合形態であってもよい。上記重合体(C)以外の液状重合体の重量平均分子量は500〜10万であることが成形加工性の観点から好ましい。
本発明のゴム組成物は、発明の効果を阻害しない範囲で、耐候性、耐熱性、耐酸化性等の向上を目的として、必要に応じて老化防止剤、酸化防止剤、ワックス、滑剤、光安定剤、スコーチ防止剤、加工助剤、顔料や色素等の着色剤、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、発泡剤、抗菌剤、防カビ剤、及び香料等の添加剤を1種又は2種以上含有していてもよい。
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、ラクトン系化合物、及びヒドロキシル系化合物等が挙げられる。
老化防止剤としては、例えばアミン−ケトン系化合物、イミダゾール系化合物、アミン系化合物、フェノール系化合物、硫黄系化合物及びリン系化合物等が挙げられる。
(ゴム組成物の製造方法)
本発明のゴム組成物の製造方法は特に限定されず、前記各成分を均一に混合すればよい。均一に混合する方法としては、例えばニーダールーダー、ブラベンダー、バンバリーミキサー、インターナルミキサー等の接線式もしくは噛合式の密閉式混練機、単軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール、ローラー等が挙げられ、通常70〜270℃の温度範囲で行うことができる。
[タイヤ]
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を少なくとも一部に用いたタイヤである。
本発明のゴム組成物は、タイヤの各種部材に使用することができるが、特に乗用車用、トラックバス用、自動二輪車、産業車両用のタイヤトレッドとして好適に使用することができる。
特にアイスグリップ性能等の制動性能が良好であるため、本発明のゴム組成物を少なくとも一部に用いた冬用タイヤとして用いることが好ましい。
なお、本発明のタイヤには、本発明のゴム組成物を架橋した架橋物を用いてもよい。本発明のゴム組成物あるいは本発明のゴム組成物からなる架橋物を用いたタイヤは、アイスグリップ性能等の制動性能等の特性を維持することができる。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例において使用した各成分は以下の通りである。
〔SBR(A)〕
スチレンブタジエンゴム:SBR1500(JSR株式会社製、Tg −53℃、溶解度パラメータ 18.79(J/cm31/2
〔天然ゴム(B)〕
STR20(タイ産):VON BUNDIT社製、Tg −63℃、溶解度パラメータ 18.02(J/cm31/2
〔フィラー(D)〕
シリカ:ULTRASIL7000GR(エボニックジャパン株式会社製、湿式シリカ、平均粒径14nm)
カーボンブラック:ダイヤブラックI(N220)(三菱化学株式会社製、平均粒径20nm)
〔任意成分〕
(シランカップリング剤)
SI75(エボニックジャパン株式会社製)
(架橋剤)
硫黄:微粉硫黄200メッシュ(鶴見化学工業株式会社製)
(加硫助剤)
ステアリン酸:ルナックS−20(花王株式会社製)
亜鉛華:酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製)
(加硫促進剤)
加硫促進剤(1):ノクセラーCZ(大内新興化学工業株式会社製)
加硫促進剤(2):ノクセラーD(大内新興化学工業株式会社製)
加硫促進剤(3):ノクセラーTBT−N(大内新興化学工業株式会社製)
加硫促進剤(4):サンセラーNS(三新化学工業株式会社製)
(その他の成分)
ワックス:サンタイトS(精工化学株式会社製)
老化防止剤:ノクラック6C(大内新興化学工業株式会社製)
TDAE:VivaTec500(H&R社製)
なお、SBR(A)及び天然ゴム(B)のガラス転移温度(Tg)は、後述する測定方法によるものである。
製造例1(重合体C−1の製造)
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン1750g、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)75gを仕込み、50℃に昇温した後、1.6gのテトラヒドロフランを仕込み、予め調製した225gのβ−ファルネセンと176gのスチレンと349gのブタジエンの混合液を5ml/分で加えて4時間重合した。得られた重合反応液にメタノール5gを添加して重合を停止した後、水2Lを用いて重合反応液を洗浄した。洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間減圧乾燥することにより、重合体C−1を製造した。
製造例2(重合体C−2の製造)
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン1750g、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)65.9gを仕込み、50℃に昇温した後、1.5gのテトラヒドロフランを仕込み、予め調製した375gのβ−ファルネセンと176gのスチレンと199gのブタジエンの混合液を5ml/分で加えて4時間重合した。得られた重合反応液にメタノール5gを添加して重合を停止した後、水2Lを用いて重合反応液を洗浄した。洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間減圧乾燥することにより、重合体C−2を製造した。
製造例3(重合体C−3の製造)
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン1140g、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)56.2gを仕込み、50℃に昇温した後、予め調製した1080gのβ−ファルネセンと720gのブタジエンの混合液を10ml/分で加えて1時間重合した。得られた重合反応液にメタノール5gを添加して重合を停止した後、水2Lを用いて重合反応液を洗浄した。洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間減圧乾燥することにより、重合体C−3を製造した。
製造例4(重合体C−4の製造)
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン1201g、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)54.2gを仕込み、60℃に昇温した後、1.7gのテトラヒドロフランを仕込み、予め調製したと206gのスチレンと309gのブタジエンの混合液を5ml/分で加えて4時間重合した。得られた重合反応液にメタノール5gを添加して重合を停止した後、水2Lを用いて重合反応液を洗浄した。洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間減圧乾燥することにより、重合体C−4を製造した。
製造例5(重合体C−5の製造)
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、ヘキサン2211g、n−ブチルリチウム(17質量%ヘキサン溶液)80.7gを仕込み、70℃に昇温した後、イソプレン1000gを加えて1時間重合した。得られた重合反応液にメタノール10gを添加後、重合反応液を水2Lで洗浄した。水を分離して、重合反応液を70℃で12時間乾燥することにより、重合体C−5を得た。
製造例6(重合体C−6の製造)
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン241g、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)28.3gを仕込み、50℃に昇温した後、予め調製した342gのβ−ファルネセンを10ml/分で加えて1時間重合した。得られた重合反応液にメタノール2gを添加して重合を停止した後、水2Lを用いて重合反応液を洗浄した。洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間減圧乾燥することにより、重合体C−6を製造した。
製造例1〜6で得られた重合体C−1〜C−6をサンプルとして用いて、以下に示す方法に従って液状重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
(重量平均分子量及び分子量分布)
東ソー株式会社製「HLC−8320」を使用し、サンプル/テトラヒドロフラン=5mg/10mLの濃度で調整し、測定した。なお、展開溶液としては和光純薬工業株式会社製テトラヒドロフランを使用した。
重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)はGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算で求めた。測定装置及び条件は、以下の通りである。
〔測定装置及び測定条件〕
・装置 :東ソー株式会社製 GPC装置「HLC−8320」
・分離カラム :東ソー株式会社製 カラム「TSKgelSuperHZM−M」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :0.7ml/min
・サンプル濃度:5mg/10ml
・カラム温度 :40℃
(ガラス転移温度(Tg))
アルミニウム製のオープンパンに、サンプル10mgを入れアルミニウム製の蓋をのせてサンプルシーラーでクリンプした。示差走査熱量測定(DSC)により10℃/分の昇温速度条件においてサーモグラムを測定し、DSCのピークトップの値をガラス転移温度(Tg)とした。測定装置及び条件は、以下のとおりである。
〔測定装置及び測定条件〕
・装置:セイコーインスツル株式会社製 示差走査熱量計「DSC6200」
・冷却装置:セイコーインスツル株式会社製 クーリングコントローラー
・検出部:熱流速型
・サンプル重量:10mg
・昇温速度:10℃/min
・冷却条件:10℃/minで冷却後、−130℃で3分間等温保持し、昇温を開始した。
・リファレンス容器:アルミニウム
・リファレンス重量:0mg
(ビニル含量)
重合体(C)50mgを1mlの重水素化クロロホルム(CDCl3)に溶解した溶液を400MHzの1H−NMRを用いて積算回数512回で測定した。
ファルネセン由来のビニル含量について、測定により得られたチャートの4.94〜5.22ppm部分をビニル構造由来のスペクトル、4.45〜4.85ppmの部分をビニル構造と1,4結合の合成スペクトルとし、以下の式に基づきビニル含量を算出した。
{ビニル含量(ファルネセン由来)}=4.94〜5.22ppmの積分値/2/{4.94〜5.22ppmの積分値/2+(4.45〜4.85ppmの積分値−4.94〜5.22ppmの積分値)/3}
ブタジエン由来のビニル含量について、測定により得られたチャートの4.85〜4.94ppm部分をビニル構造由来のスペクトル、5.22〜5.65ppmの部分をビニル構造と1,4結合の合成スペクトルとし、以下の式に基づきビニル含量を算出した。
{ビニル含量(ブタジエン由来)}=4.85〜4.94ppmの積分値/2/{4.85〜4.94ppmの積分値/2+〔5.22〜5.65ppmの積分値−(4.85〜4.94ppmの積分値/2)〕/2}
(溶解度パラメータ)
重合体(C)の溶解度パラメータは、本明細書の段落[0009]に記載のHoyの推算法により算出した。
(分配比)
固形ゴム成分中の重合体(C)の分配比の算出は、SBR(A)、天然ゴム(B)及び重合体(C)を含む測定用ゴム混合物を用いて、示差走査熱量測定(DSC)により測定される該ゴム混合物のTgのベースゴム(すなわちSBR(A)又は天然ゴム(B))のTg1からの変化量が0.5℃以上の場合にはDSCにより算出し、該変化量が0.5℃未満の場合には原子間力顕微鏡(AFM)を用いてAFM像の面積比により算出した。
分配比の算出に用いる前記ゴム混合物として、製造例1〜6で得られた各重合体C−1〜C−6につき、加硫促進剤以外は後述するゴム組成物に用いた各成分と同様のものを用いて、表2に示した配合処方の異なるゴム混合物を6種類調製した。比較例4のゴム混合物は、重合体(C)に代えてTDAEを用いた。
〔測定用ゴム混合物の調製〕
SBR(A)、天然ゴム(B)及び重合体(C)を表2に示した配合処方でブラベンダーに投入し、開始温度130℃、回転数100rpmで5分間混練した後、ブラベンダー外に取出して室温まで冷却し、それらと表2に記載の(A)〜(C)成分以外の成分を表2に示した配合処方でブラベンダーに投入し、開始温度80℃、回転数80rpmで2分間混練した後、ブラベンダー外に取り出して室温まで冷却し、ゴム混合物を調製した。
〔DSCによる分配比の算出〕
(1)検量線の作成
SBR(A)及び重合体(C)を表2に示した配合処方1及び2の任意の重量分率Xで相容させたゴム混合物をプレス成形(プレス条件:160℃、20〜40分)して架橋物(加硫ゴム)の加硫シート(2mm厚)を作製した。得られた加硫シートを用いてDSC測定によりTgを測定し、y軸に1/Tg、x軸に重量分率Xをプロットし、SBR(A)及び重合体(C)からなるゴム混合物の前記式(4)で示される検量線を得て、該検量線の傾き及び切片の数値を算出した。同様に、天然ゴム(B)及び重合体(C)を表2に示した配合処方3及び4の任意の重量分率Xで相容させたゴム混合物についても、同様に加硫シートを作製してTgを測定し、天然ゴム(B)及び重合体(C)からなる混合物の前記式(4)で示される検量線を得て、該検量線の傾き及び切片の数値を得た。
(2)評価
上記で得られた表2に示した配合処方5のゴム混合物をプレス成形(プレス条件:160℃、20〜40分)して架橋物(加硫ゴム)の加硫シート(2mm厚)を作製し、DSCの測定を行った。
次いで、上記(1)で得られた2つの検量線を用いて、(A)相及び(B)相に相容する重合体(C)の重量分率XA及びXBを算出し、これらの比〔XA/XB〕を分配比(算出値)とした。分配比(算出値)を表3に示す。
なお、表3には、上記算出値と共に、該算出値より換算したゴム組成物(質量比〔(A)/(B)/(C)〕=70/30/20)における重合体(C)の分配比(換算値)も示す。
〔AFMによる分配比の算出〕
(1)検量線の作成
重合体(C)を含まない配合処方6のゴム混合物(質量比〔(A)/(B)〕=50/50)をプレス成形(プレス条件:160℃、20〜40分)して架橋物(加硫ゴム)の加硫シート(2mm厚)を作製した。得られた加硫シートより1cm×5cm×2mmの試験片を切り出し、液体窒素中でサンプルを冷却し破断することで観察断面を作製した。下記条件に従ってAFM像を観察し、画像解析ソフト「Imagepro plus」(株式会社日本ローパー製)を用いて、(A)相及び(B)相の面積比〔(A)/(B)〕を算出した。
同様にして、DSCの測定で用いた重合体(C)を含む加硫シート(配合処方5、DSCにより分配比〔XA/XB〕を特定)を用いて、AFM像の観察より(A)相及び(B)相の面積比〔(A)/(B)〕を算出し、前述した、重合体(C)を含まない加硫シートにおける面積比〔(A)/(B)〕との差を算出した。
得られた面積比の差をx軸、DSCにより算出した分配比〔XA/XB〕をy軸として検量線を作製した。
〔測定装置及び測定条件〕
・装置:株式会社島津製作所製 走査型プローブ顕微鏡「SPM−9700」
・カンチレバー:オリンパス株式会社製「OMCL−AC240TS−C3」
・測定モード :位相モード
・測定範囲 :5μm×5μm
・測定周波数 :1Hz
(2)評価
上記で得られた表2に示した配合処方5のゴム混合物をプレス成形(プレス条件:160℃、20〜40分)して架橋物(加硫ゴム)の加硫シート(2mm厚)を作製し、上記と同様にAFM像の観察により、(A)相及び(B)相の面積比〔(A)/(B)〕を算出した。
次いで、上記(1)で得られた検量線を用いて、面積比〔(A)/(B)〕から分配比(算出値)を算出した。分配比(算出値)を表3に示す。
なお、表3には、上記算出値と共に、該算出値より換算したゴム組成物(質量比〔(A)/(B)/(C)〕=70/30/20)における重合体(C)の分配比(換算値)も示す。
実施例1〜3及び比較例1〜4
表3に示した配合割合(質量部)にしたがって、SBR(A)、天然ゴム(B)、重合体(C)、フィラー(D)、加硫助剤、シランカップリング剤及びその他の成分を、それぞれ密閉式バンバリーミキサーに投入して開始温度60℃、樹脂温度が140℃となるように6分間混練した後、ミキサー外に取り出して室温まで冷却した。次いで、この混合物を再度密閉式バンバリーミキサーに投入し、架橋剤及び加硫促進剤を加えて開始温度50℃、到達温度100℃となるように75秒間混練することでゴム組成物を得た。
得られたゴム組成物をプレス成形(プレス条件:160℃、60分)して加硫させ、直径80mm、幅16mmのタイヤ形状の加硫ゴムサンプルを作製し、下記の方法に基づき、氷上摩擦係数(μ)を評価した。
また、上記と同様にして得られたゴム組成物をプレス成形(プレス条件:160℃、20〜25分)して架橋物(加硫ゴム)の加硫シート(2mm厚)を作製し、下記の方法に基づき、tanδを測定し、ウェットグリップ性能を評価した。
さらに、上記と同様にして得られたゴム組成物をプレス成形(プレス条件:160℃、30分)して架橋物(加硫ゴム)の加硫シート(2mm厚)を作製し、下記の方法に基づき、重量減少率を測定し、耐ブリード性を評価した。
結果を表3に示す。
(氷上摩擦係数(μ))
ゴム組成物のアイスグリップ性能の指標として氷上摩擦係数(μ)の評価を行った。
実施例1〜3及び比較例1〜4で得られた加硫ゴムサンプルの氷上摩擦係数を用いて測定した。測定装置及び条件は、以下のとおりである。
タイヤと路面のSlip ratioを0から40%までの範囲で摩擦係数を測定し、得られた摩擦係数の最大値を、氷上摩擦係数(μ)とした。氷上摩擦係数(μ)の数値が高いほど、アイスグリップ性能は良好であることを示す。
なお、表3には、実測値と共に比較例4の数値を100とした際の相対値も示す。
〔測定装置及び測定条件〕
・装置:株式会社上島製作所製 RTM摩擦試験機
・測定温度:−3.0℃
・路面:氷
・速度:30km/hrs
・荷重:50N
・Slip ratio:0〜40%
(ウェットグリップ性能)
実施例1〜3及び比較例1〜4で作製した加硫シートから縦40mm×横7mmの試験片を切り出し、GABO社製動的粘弾性測定装置を用いて、測定温度0℃、周波数10Hz、静的歪み10%、動的歪み2%の条件で、tanδを測定し、ウェットグリップ性能の指標とした。数値が大きいほどゴム組成物のウェットグリップ性能が良好であることを示す。
なお、表3には、実測値と共に比較例4の数値を100とした際の相対値も示す。
(耐ブリード性)
実施例1〜3及び比較例1〜4で作製した2mm厚の加硫シートから縦75mm×横45mmの試験片を1枚切り出した。後述する可塑剤を含まない5mm厚の加硫シートから縦75mm×横45mmの試験片を2枚切り出し、該2mm厚の加硫シートを該5mm厚の加硫シート2枚で挟み、250gの荷重をかけて70℃のオーブン中で20日間放置した。重合体(C)を含有する2mm厚の加硫シートの放置前後の重量を比較し、下記式に従い重量減少率を算出することで、重合体(C)の移行性を評価し、耐ブリード性の指標とした。
重量減少率(重量%)={(放置前の2mm厚の加硫シートの重量)−(20日間放置後の2mm厚の加硫シートの重量)}/(放置前の2mm厚の加硫シートの重量)×100
重量減少率の数値が小さいほど移行性が低く、すなわち耐ブリード性が高く、ゴム組成物の経年による物性変化が小さい。重量減少率は好ましくは3重量%未満である。
なお、前述の可塑剤を含まない5mm厚の加硫シートは、天然ゴム(VON BUNDIT社製「STR20」)100質量部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製「ダイヤブラックI」)40質量部、亜鉛華3.5質量部、ステアリン酸2質量部、老化防止剤(大内新興化学工業株式会社製「ノクラック6C」)1質量部、老化防止剤(川口化学工業株式会社製「アンテージRD」)1質量部、硫黄1.5質量部、加硫促進剤(三新化学工業株式会社製「サンセラーNS−G」)1.2質量部の配合で、プレス条件:145℃、20分に変更した以外は上記実施例の加硫シート(2mm厚)と同様の条件で作製した。
表3より、実施例1〜3のゴム組成物は、重合体(C)が(A)相へ相容し、多くの重合体(C)が(A)相へ分配されるため、比較例1〜4に比べて氷上摩擦係数がいずれも高いことから、アイスグリップ性能に優れ、良好な耐ブリード性を有していることが分かる。
また、実施例1〜2のゴム組成物は、重合体(C)がスチレンに由来する単量体単位を含むため、良好なウェットグリップ性能を維持していることから、アイスグリップ性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性のバランスに優れていることが分かる。
本発明のゴム組成物は、アイスグリップ性能を高い水準で備えており、該ゴム組成物を少なくとも一部に用いたタイヤは、特に冬用タイヤとして好適に用いることができる。

Claims (10)

  1. スチレンブタジエンゴム(A)及び天然ゴム(B)を含む固形ゴム成分と、ファルネセン由来の単量体単位(a)を含む液状重合体(C)と、フィラー(D)とを含有するゴム組成物であって、
    液状重合体(C)の含有量が、該固形ゴム成分100質量部に対して1〜50質量部であり、
    フィラー(D)の含有量が、該固形ゴム成分100質量部に対して20〜150質量部であり、
    該固形ゴム成分におけるスチレンブタジエンゴム(A)の含有量が50質量%超100質量%未満であり、
    スチレンブタジエンゴム(A)の溶解度パラメータδA、天然ゴム(B)の溶解度パラメータδB、及び液状重合体(C)の溶解度パラメータδCが、下記式(1)を満たす、ゴム組成物。
    |δA−δC|<|δA−δB| (1)
  2. スチレンブタジエンゴム(A)及び天然ゴム(B)に対する液状重合体(C)の分配比〔(A)/(B)〕が55/45以上である、請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 液状重合体(C)におけるファルネセン由来の単量体単位(a)の含有量が1〜75質量%である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
  4. 液状重合体(C)が、さらに芳香族ビニル化合物由来の単量体単位(b−1)を含み、液状重合体(C)における該単量体単位(b−1)の含有量が1〜40質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
  5. 液状重合体(C)のガラス転移温度(Tg)が−100〜−36℃である、請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
  6. 液状重合体(C)のゲル浸透クロマトグラフィーで求めたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が2,000〜50万である、請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
  7. 液状重合体(C)の分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜4.0である、請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
  8. スチレンブタジエンゴム(A)の溶解度パラメータδA、天然ゴム(B)の溶解度パラメータδB、及び液状重合体(C)の溶解度パラメータδCが、さらに下記式(2)を満たす、請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物。
    {|δA−δC|/|δA−δB|}<0.80 (2)
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のゴム組成物を少なくとも一部に用いたタイヤ。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載のゴム組成物を少なくとも一部に用いた冬用タイヤ。
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