以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、車両に搭載される電源システムを述べるが、これは説明のための例示である。複数の電池セルを有する二次電池ブロックを含む電源システムであれば、車両に搭載される以外の用途であってもよい。例えば、据置型の電源システムでもよい。
以下で述べる形状、寸法、配置数、配置関係、温度等は、説明のための例示であって、電源システムの仕様等に合わせ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、車両に搭載される電源システム10の構成図である。電源システム10は、二次電池ブロック12と、電力変換器ブロック14と、制御装置60と、記憶部70とを含む。図1には、電源システム10の構成要素ではないが、電力変換器ブロック14に接続される充放電装置16を示す。
二次電池ブロック12は、リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bとが交互にあるいは複数個おきに熱伝導部材25を挟みながら1列に整列して配置され、電力変換器ブロック14を介して電気的に直列接続された組電池である。図1で整列方向を矢印で示す。二次電池ブロック12は、複数のリチウムイオン電池セル20aと複数のニッケル水素電池セル20bを直列接続することで、車両に搭載される電気機器に必要な高電圧、大電流を出力可能とした高圧電池である。
図1は、整列配置の両端側の部分として、4個のリチウムイオン電池セル20a、4個のニッケル水素電池セル20b、6個の熱伝導部材25のみを示す。リチウムイオン電池セル20aの配置数とニッケル水素電池セル20bの配置数は、電源システム10の仕様によって定められる。以下では、二次電池ブロック12は、30個のリチウムイオン電池セル20a、30個のニッケル水素電池セル20b、59個の熱伝導部材25を有するものとするが、これは説明のための例示である。
図1では、整列方向の一方端にリチウムイオン電池セル20aを配置し、他方端にニッケル水素電池セル20bを配置しているので、リチウムイオン電池セル20aの配置数とニッケル水素電池セル20bの配置数とが同数である。場合によっては、他方端にさらにもう1個のリチウムイオン電池セル20aを配置し、(リチウムイオン電池セル20aの配置数)=31、(ニッケル水素電池セル20bの配置数)=30としてもよい。あるいは、(リチウムイオン電池セル20aの配置数)=30のままで、他方端の1個のニッケル水素電池セル20bを省略し、(ニッケル水素電池セル20bの配置数)=29としてもよい。これらと逆に、一方端にさらにもう1個のニッケル水素電池セル20bを配置し、(リチウムイオン電池セル20aの配置数)=30、(ニッケル水素電池セル20bの配置数)=31としてもよい。あるいは、(ニッケル水素電池セル20bの配置数)=30のままで、一方端の1個のリチウムイオン電池セル20aを省略し、(リチウムイオン電池セル20aの配置数)=29としてもよい。
電源システム10の仕様によっては、リチウムイオン電池セル20aの配置数と(ニッケル水素電池セル20bの配置数の比を、1以外の予め定めた値としてもよい。例えば、(リチウムイオン電池セル20aの配置数):(ニッケル水素電池セル20bの配置数)=2:1としてもよい。2:1は例示であって、これ以外の比でも構わない。例えば、3:1や1:2等でもよく、配置数が整数であれば、比は整数比でなくてもよい。例えば、(リチウムイオン電池セル20aの配置数=43):(ニッケル水素電池セル20bの配置数=17)等であってもよい。これらの場合には、リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bとが複数個おきに配置されることがあるが、その場合でも、個別の電池セルの間にはそれぞれ熱伝導部材25を挟む。例えば、(リチウムイオン電池セル20a)−(熱伝導部材25)−(リチウムイオン電池セル20a)−(熱伝導部材25)−(ニッケル水素電池セル20b)−(熱伝導部材25)のように、1列に整列して配置する。以下では、(リチウムイオン電池セル20aの配置数)=(ニッケル水素電池セル20bの配置数)=30とする。リチウムイオン電池セル20aの配置数とニッケル水素電池セル20bの配置数の比が1以外の場合については、変形例として後述する(図7参照)。
リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bは、いずれも略矩形の側壁を有する薄板状の電池である。図1では、リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bは、それぞれの薄板状の厚さ方向を揃えて、1列に整列される。つまり、厚さ方向が整列方向である。
リチウムイオン電池セル20aは、内部に電解液を含む缶体の外形を備え、正極端子22aと負極端子24aとを有する。電解液にはリチウム塩が含まれ、充電条件によっては、負極側にリチウム析出が生じることがあるので、充電電力に制限が加えられる。
ニッケル水素電池セル20bは、内部に電解液を含む缶体の外形を備え、正極端子22bと負極端子24bとを有する。電解液には水酸化カリウム水溶液が含まれ、充電が続くと正極で酸素が発生して負極で水と反応する副反応が生じ、缶体の内部圧が上昇し、発熱する。これを考慮して、高温側では充電電力に制限が加えられる。
リチウムイオン電池の単位セルの正極端子22aと負極端子24aとの間の端子間電圧は、約3V〜4V程度で、ニッケル水素電池の単位セルの正極端子22bと負極端子24bとの間の端子間電圧は、約1V〜1.5V程度である。これらをそのままリチウムイオン電池セル20a、ニッケル水素電池セル20bとして用いるが、場合によっては、複数個の単位セルを組み合わせる等によって、端子間電圧を揃えたリチウムイオン電池セル20a、ニッケル水素電池セル20bとしてもよい。
図2は、リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bのそれぞれについてのWin/Wout特性図である。横軸は電池温度で、紙面上で左方向が低温側、右方向が高温側である。縦軸は、充放電電力の制限における許容値を示す許容入出力値である。許容入出力値は、充電電力の許容値を許容入力値Winで示し、放電電力の許容値を許容出力値Woutで示す。ここでは、出力(放電)値を正の値で示し、入力(充電)値を負の値で示す。
図2において、実線は、リチウムイオン電池セル20aの電池温度に関するWin/Wout特性図であり、破線は、ニッケル水素電池セル20bの電池温度に関するWin/Wout特性図である。図2に示されるように、リチウムイオン電池セル20aもニッケル水素電池セル20bも、電池温度が温和な環境下ではWinもWoutもほぼ一定値であるが、電池温度が低温及び高温の環境下では、WinもWoutも制限される。リチウムイオン電池セル20aにおいて特に低温の環境下でWinが制限されるのは、リチウム析出を抑制するためである。また、ニッケル水素電池セル20bにおいて特に高温の環境下でWinが制限されるのは、副反応による発熱を抑制するためである。このように、リチウムイオン電池セル20aもニッケル水素電池セル20bも、それぞれ充放電に制限が加えられる。
図1に戻り、熱伝導部材25は、リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bの間に密着して配置され、リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bとの間の温度差を小さくするように熱を伝導する部材である。図1では、リチウムイオン電池セル20a、ニッケル水素電池セル20b、熱伝導部材25のいずれも、整列方向に垂直な方向の形状を矩形とし、矩形形状の大きさも同じである。これらは、熱伝導の効率化を図る例示であり、二次電池ブロック12の仕様に応じて適宜変更が可能である。かかる熱伝導部材25には、熱伝導性の良好なプラスチック板を用いる。これに代えて、絶縁コーティングを施した金属板を用いてもよい。
拘束板26,27は、二次電池ブロック12の整列方向の両端部にそれぞれ配置される平板である。拘束バンド28,29は、二次電池ブロック12の端子側において、拘束板26,27の間を結合する細長い部材である。同様に、拘束バンド30,31は、二次電池ブロック12の端子側とは反対側の底面側において、拘束板26,27の間を結合する細長い部材である。これらの結合によって、リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bとにおいて充放電による厚さの変化が生じても、二次電池ブロック12の整列方向の両端部の間隔は、ほぼ所定値に維持される。
電池温度情報18は、二次電池ブロック12の温度を電池温度として、電池温度に関する情報である。電池温度は、二次電池ブロック12の代表温度を検出できる部位に設置された温度検出手段の検出データをそのまま用いることができる。これに代えて、二次電池ブロック12の複数部位にそれぞれ温度検出手段を設け、これらの検出データに基づき予め定めた推定方法に従って算出された値を、電池温度としてもよい。電池温度情報18は、適当な信号線を介し、電池温度データとして制御装置60に伝送される。
電力変換器ブロック14は、二次電池ブロック12を構成するリチウムイオン電池セル20aの両端子、及びニッケル水素電池セル20bの両端子にそれぞれ個別に接続された複数の電力変換器32を含む。複数の電力変換器32の総数は、{(リチウムイオン電池セル20aの配置数)+(ニッケル水素電池セル20bの配置数)}である。図1では、(リチウムイオン電池セル20aの配置数=30)で、(ニッケル水素電池セル20bの配置数=30)であるので、電力変換器ブロック14は、60個の電力変換器32を含む。
60個の電力変換器32はすべて同じ構成であり、リチウムイオン電池セル20aの両端子またはニッケル水素電池セル20bの両端子に接続される端子34,36と、端子34,36の反対側に設けられる端子38,40とを有する。60個の電力変換器32のうち、リチウムイオン電池セル20aの両端子に接続されるものと、ニッケル水素電池セル20bの両端子に接続されるものとでは動作が異なる。この2種類の動作を区別するため、リチウムイオン電池セル20aの両端子に接続されるものを電力変換器32aとし、ニッケル水素電池セル20bの両端子に接続されるものを電力変換器32bと呼ぶ。
電力変換器ブロック14では、1つの電力変換器32の端子40が隣りの電力変換器32の端子38に接続され、これが繰り返されて、複数の電力変換器32が互いに電気的に直列接続される。図1では、二次電池ブロック12において、整列方向の一方端から他方端に向かって、リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bとが互いに交互に配置される。これに対応し、電力変換器ブロック14において、整列方向の一方端から他方端に向かって、電力変換器32aと電力変換器32bとが互いに交互に配置され、端子38,40を用いて互いに電気的に直列接続される。
複数の電力変換器32が直列接続された両端部には、外部の充放電装置16が接続される一方側端子50と他方側端子52とが設けられる。図1では、整列方向の一方端の電力変換器32aの端子38が引き出されて一方側端子50となり、整列方向の他方端の電力変換器32bの端子40が引き出されて他方側端子52となる。
電力変換器32a,32bの内部構成は同じであるので、整列方向のほぼ中央位置に配置される1つの電力変換器32aに代表させてその内部構成を図3に示す。電力変換器32aは、小型のDCDCコンバータである。電力変換器32aは4つの端子34,36,38,40を有する。1つの電力変換器32aは、1つのリチウムイオン電池セル20aに対応して配置され、電力変換器32aの端子34は、リチウムイオン電池セル20aの正極端子22aに接続され、端子36は、リチウムイオン電池セル20aの負極端子24aに接続される。
電力変換器32aは、内部にコイル42、2つのスイッチング素子44,46、コンデンサ48を含む。コイル42とスイッチング素子44は互いに直列接続されて、端子36と端子38との間に配置される。スイッチング素子46は、コイル42とスイッチング素子44の接続点と、端子36との間に配置される。コンデンサ48は、端子38と端子40との間に設けられる。
スイッチング素子44,46は、それぞれ制御装置60の制御の下で動作する半導体トランジスタと、半導体トランジスタに逆接続されたダイオードとを含む。半導体トランジスタに逆接続されたダイオードとは、半導体トランジスタがオンのときに流れる電流の方向の逆方向に電流が流れるように接続されたダイオードである。図3では、半導体トランジスタにNチャネル型のMOSトランジスタを用いるので、Nチャネル型のMOSトランジスタのドレインにダイオードのカソードが接続され、Nチャネル型のMOSトランジスタのソースにダイオードのアノードが接続される。
電力変換器ブロック14における電力変換器32aの動作を以下に述べる。図3に示すように、コンデンサ48の両端電圧をVOUT、コンデンサ48の充放電電流をIOUTとし、リチウムイオン電池セル20aの両端電圧をVB、リチウムイオン電池セル20aの充放電電流をIBとする。電力変換器32aの両側に配置されるのは電力変換器32bであるが、電力変換器32aの左隣に配置される電力変換器32bの端子40と電力変換器32aの端子38とが互いに電気的に接続される。また、電力変換器32aの端子40と電力変換器32aの右隣に配置される電力変換器32bの端子38とが互いに電気的に接続される。これが繰り返されるので、電力変換器ブロック14においては、60個のコンデンサ48が直列接続される。これによって、60個の電力変換器32は、交流的に直列接続される。60個のコンデンサ48において、IOUTは同じ値であり、この例では二次電池ブロック12の充放電電力は充放電装置16とのみやり取りされるため、充放電装置16からの充電電流または充放電装置16への放電電流と同じ値である。
電力変換器32aにおいて内部損失がないとして、(VOUT×IOUT)=(VB×IB)である。これを書き直すと、IB={(VOUT×IOUT)/VB}となるので、VOUTを制御することで、リチウムイオン電池セル20aの充放電電流IBを制御できる。これは、ニッケル水素電池セル20b用の電力変換器32bについても同じである。したがって、60個の電力変換器32について、それぞれのコンデンサ48の両端電圧VOUTを個別に制御することで、30個のリチウムイオン電池セル20aの充放電電流IBと、30個のニッケル水素電池セル20bの充放電電流IBとを個別に制御できる。電力変換器32の充放電動作は、コイル42と2つのスイッチング素子44,46を有する一般的な昇圧コンバータと同じ制御方法で制御できる。なお、電力変換器32aの出力は、Wout(またはWin)=VOUT×IOUTであり、リチウムイオン電池セル20aの充放電電流はVOUTに比例して変化する。
すなわち、スイッチング素子44がオンする時間である充電時間TCに応じてリチウムイオン電池セル20aを充電することができ、スイッチング素子46がオンする時間である放電時間TDに応じてリチウムイオン電池セル20aを放電させることができる。なお、スイッチング素子46がオンすることでコイル42に電流が流れてここにエネルギが蓄えられ、スイッチング素子46がオフすることでコイル42からの電流がスイッチング素子の逆接続されたダイオードを介し、コンデンサ48に向けて流れる。1つのリチウムイオン電池セル20aについて充電と放電とは同時に生じないので、スイッチング素子44がオンするときはスイッチング素子46がオフされ、スイッチング素子46がオンするときはスイッチング素子44がオフされる。なお、スイッチング素子44,46が同時にオンする時間があると、端子38,40の間が短絡して過大な貫通電流が流れるので、スイッチング素子44,46のオンオフの切替において、スイッチング素子44,46が共にオフするデッドタイム時間tdを設ける。
ここで、充放電制御のサイクル時間Tとすると、サイクル時間Tのうちで(TC/T)の時間で充電が行われ(TD/T)の時間で放電が行われる。(TC+TD+td)=Tの関係を用いると、TD={T−(TC+td)}である。そこで、充電時間比率である(TC/T)を電力変換器32aの充電動作におけるデューティ比Daと呼ぶと、サイクル時間Tのうちでデューティ比Daに相当する時間にスイッチング素子44がオンする。スイッチング素子46がオンする時間はTD=(T−TC−td)であるので、サイクル時間Tのうちで{(T−TC−td)/T}={1−Da−(td/T)}に相当する時間にスイッチング素子46がオンする。
したがって、デューティ比Daが大きくなるほど、リチウムイオン電池セル20aへの充電電力が大きくなり、デューティ比Daが小さくなるほど、リチウムイオン電池セル20aからの放電電力が大きくなる。リチウムイオン電池セル20aについて、充電電力及び放電電力と、デューティ比Daとの関係を予め求めておけば、デューティ比Daを制御することで、リチウムイオン電池セル20aにおける充電電力と放電電力とを制御できる。
ニッケル水素電池セル20bについても同様である。すなわち、電力変換器32bにおける充電時間比率である(TC/T)を電力変換器32bの充電動作におけるデューティ比Dbと呼ぶと、デューティ比Dbを制御することで、ニッケル水素電池セル20bにおける充電電力と放電電力とを制御できる。
リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bとは電池特性が互いに相違する。例えば、同じ充電電力を充電するときのデューティ比Daとデューティ比Dbとは異なることがあり、同じ放電電力を放電するときのデューティ比Daとデューティ比Dbも異なることがある。また、リチウムイオン電池セル20aのWin/Wout特性とニッケル水素電池セル20bのWin/Wout特性とが異なることに応じて、電力変換器32aのデューティ比Da及び電力変換器32bのデューティ比Dbの設定が異なる。その詳細については後述する。
図1に戻り、充放電装置16は、電力変換器ブロック14の一方側端子50と他方側端子52との間に並列に接続される。充放電装置16は、電力変換器ブロック14を介して二次電池ブロック12に充電電力を供給する充電電源と、電力変換器ブロック14を介して二次電池ブロック12から放電電力の供給を受け取る放電負荷とを含む装置である。充放電装置16は、回転電機54とインバータ56とを含む。回転電機54は、車両の駆動源となるモータ・ジェネレータ(MG)である。モータ・ジェネレータは、二次電池ブロック12から電力が供給されるときはモータとして機能し、車両の制動時には発電機として機能する三相同期型の回転電機である。インバータ56は、二次電池ブロック12の直流電力と回転電機54の三相交流電力との間で交直変換を行う回路である。交直変換は、二次電池ブロック12の直流電力から回転電機54の三相交流電力への変換、及び、回転電機54の三相交流電力から二次電池ブロック12の直流電力への変換を含む。インバータ56は、複数のスイッチング素子と複数のダイオードとを含む。
充放電装置16として、回転電機54とインバータ56の組合せに代えて、あるいはこれに加えて、蓄電装置等の直流電源、商用電源等の交流電源、電気機器等の負荷装置等を用いることができる。例えば、車両が、充電ステーション等から電力供給を受けるプラグイン型のハイブリッド車両の場合は、充放電装置16として、充電ステーション等における電源装置が用いられる。また、車両とは別の外部負荷に電力を供給することができる電力出力ポートを有する車両では、車両とは別の外部負荷が充放電装置16における放電負荷となる。
車両状態情報58は、車両のユーザ操作子であるアクセル、ブレーキ等の操作状態や、図示しない車両制御装置によって制御された車両の走行状態等に関する情報である。車両状態情報58は、適当な信号線を介して制御装置60に伝送され、要求電池電力の算出に用いられる。
制御装置60に接続される記憶部70は、制御装置60が実行するプログラムを格納し、演算の途中データを一時的に記憶する装置である。さらに、制御装置60において、リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bのそれぞれの使用比率の決定に用いられる使用比率マップデータ73を含む使用比率関係ファイル72を記憶する。
二次電池ブロック12は、電池セルとして、リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bの2種類を含むので、これらの間での要求電池電力の負担割合を使用比率Rと呼ぶ。使用比率マップデータとは、電池温度が温和な環境下における使用比率を基準として、低温の環境下、及び高温の環境下のそれぞれにおける使用比率を基準の使用比率からどのように増減させるかを示すデータである。使用比率マップデータは、電池温度に関する使用比率をマップ化したデータである。
マップ化に代えて、電池セルの種類ごとの使用比率を、電池温度及び要求電池電力の関数形に数式化して記憶してもよく、電池セルの種類、電池温度、及び要求電池電力を入力して使用比率が出力されるROM化によって記憶してもよい。
図4は、使用比率マップデータ73の一例を示す図である。使用比率マップデータ73は、(a)のリチウムイオン電池セル20aの使用比率マップデータと、(b)のニッケル水素電池セル20bの使用比率マップデータとを含む。(a),(b)のいずれにおいても、横軸は電池温度、縦軸は使用比率、パラメータは要求電池電力である。
(a)のマップデータによれば、リチウムイオン電池セル20aの電池温度が中間温度範囲では使用比率が一定のR1でこれが基準となる。低温時では、使用比率を電池温度が低温になるに連れてR1より次第に低減させ、電池要求電力が大になるに連れてR1からの使用比率の低減程度を拡大させる。これに対し、高温時では、使用比率を電池温度が高温になるに連れてR1より次第に増加させ、電池要求電力が大になるに連れてR1からの使用比率の増加程度を拡大させる。
(b)のマップデータによれば、ニッケル水素電池セル20bの電池温度が中間温度範囲では、使用比率が一定のR2でこれが基準となる。低温時では、使用比率を電池温度が低温になるに連れてR2より次第に増加させ、電池要求電力が大になるに連れてR2からの使用比率の増加程度を拡大させる。これに対し、高温時では、使用比率を電池温度が高温になるに連れてR2より次第に低減させ、電池要求電力が大になるに連れてR2からの使用比率の低減程度を拡大させる。
リチウムイオン電池セル20aにおいて基準となる使用比率R1と、ニッケル水素電池セル20bにおいて基準となる使用比率R2は、要求電池電力について、リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bの間での負担割合を示す。例えば、要求電池電力の全てを30個のリチウムイオン電池セル20aのみで賄うときは、R1=1.0で、R2=0であり、要求電池電力の全てを30個のニッケル水素電池セル20bのみで賄うときは、R1=0で、R2=1.0である。要求電池電力の70%を30個のリチウムイオン電池セル20aで負担し、30%を30個のニッケル水素電池セル20bで負担するときは、R1=0.7で、R2=0.3である。このように、(R1+R2)は、車両における要求電池電力と同じとする。これによって、電池温度が低温時及び高温時において過渡的に使用比率の変更が行われた後の中間温度範囲では、電源システム10の全体として、車両における要求電池電力を確保できる。実際のR1、R2の比率は、リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bの電池容量と発熱特性によって定められる。必ずしもR1=R2となるとは限らないが、R1=R2とすることもできる。以下では、R1=R2=0.5とする。
(a),(b)の内容を換言すれば、低温時においては、充放電制限が行われるリチウムイオン電池セル20aの使用比率をR1から低減させ、充放電制限が少ないニッケル水素電池セル20bの使用比率をR2から増加させる。高温時においては、充放電制限が行われるニッケル水素電池セル20bの使用比率をR2から低減させ、充放電制限が少ないリチウムイオン電池セル20aの使用比率をR1から増加させる。これにより、低温時及び高温時において、充放電制限が少ない電源システム10とできる。
これらのマップデータの横軸の電池温度について、中間温度範囲、低温時、高温時の区別は、図2で述べたWin/Wout特性図の温度依存性における温和な温度の環境下、低温の環境下、高温の環境下にそれぞれ対応する。一例を挙げると、「中間温度範囲」の温度は+30℃、「低温時」の温度範囲の温度は、−10℃、「高温時」の温度範囲の温度は、+50℃である。これらの温度は例示であって、リチウムイオン電池セル20a、ニッケル水素電池セル20bの仕様等によって適宜変更される。
図4において、低温時及び高温時において使用比率を低減または増加させる特性は、電池温度に対し直線的に変化するものとしたが、これは例示であって、図2のWin/Wout特性の非線形性に対応して、非線形性としてよい。
図1に戻り、制御装置60は、電力変換器ブロック14における複数の電力変換器32a,32bの動作を個別に制御し、二次電池ブロック12の電池温度に関わらず、二次電池ブロック12の充放電制限を少なくする。かかる制御装置60は、車両の搭載に適したコンピュータが用いられる。
制御装置60は、車両状態情報58から伝送されるデータを用いる要求電池電力算出部62と、電池温度情報18から伝送されるデータと記憶部70の使用比率関係ファイル72を用いる使用比率決定部64を含む。さらに、使用比率に基づいて、リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bに対する要求電力を算出し、これに基づいて、電力変換器32a,32bについてのデューティ比を算出するデューティ比算出部66を含む。また、算出されたデューティ比で電力変換器ブロック14の動作を制御する電力変換器動作制御部68を含む。これらの機能は、コンピュータである制御装置60に、ソフトウェアを実行させることで実現される。具体的には、電源システム制御プログラムを制御装置60に実行させることで実現される。
上記構成の作用効果、特に制御装置60の各機能の内容と、記憶部70に記憶される使用比率関係ファイル72とについて、図5を用い詳細に説明する。図5は、電池温度に対して充放電制限を少なくする制御手順を示すフローチャートである。各手順は、電源システム制御プログラムの各処理手順に対応する。図5に示す一連の処理手順は、制御装置60において所定の演算周期毎に呼出され、実行される。
車両の動作システムが立ち上がると、電源システム制御プログラムも立ち上がり、初期化が行われる。次いで、車両状態情報58を取得し、現在の車両状態における要求動力から電源システム10に対して要求される電力である要求電池電力の算出が行われる(S10)。この処理手順は、制御装置60の要求電池電力算出部62の機能によって実行される。要求電池電力の単位はkWである。次に、伝送されてくる電池温度情報18に基づいて二次電池ブロック12の代表温度である電池温度を取得する(S12)。S10とS12の処理順序は逆でもよい。
次に、S10で算出された要求電力と、S12で取得した電池温度を検索キーとして、記憶部70の使用比率関係ファイル72における使用比率マップデータ73を検索する。これにより、リチウムイオン電池セル20aの使用比率と、ニッケル水素電池セル20bの使用比率を求める(S14)。この処理手順は、制御装置60の使用比率決定部64の機能によって実行される。
一例として、電池温度が「低温時」の−10℃とし、車両のアクセル操作が加速要求の状態等で、通常安定走行時よりも要求電力がやや大きめの場合の使用比率を、図4(a),(b)に黒丸マークで示す。この例では、電池温度が「中間温度範囲」にある+30℃のときにR1=R2=0.5として、リチウムイオン電池セル20aの使用比率は、R1=0.5より小さめとされ、ニッケル水素電池セル20bの使用比率は、R2=0.5より大きめとされる。
なお、比較のため、電池温度が「高温時」の+50℃とし、要求電力が黒丸マークの例と同じとしたときの使用比率を、図4に白丸マークで示す。この例では、R1=R2=0.5として、リチウムイオン電池セル20aの使用比率は、R1=0.5より大きめとされ、ニッケル水素電池セル20bの使用比率は、R2=0.5より小さめとされる。また、電池温度が「中間温度範囲」にある+30℃のときは、通常安定走行時から要求電力が変化しても使用比率はR1=R2=0.5から変化しない。そのことをX印マークで示す。
図5に戻り、S14でリチウムイオン電池セル20aの使用比率と、ニッケル水素電池セル20bの使用比率とが定まると、これらにS10で算出された要求電池電力を乗じる。これによって、リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bとに対する要求電力がそれぞれ算出される(S16)。
使用比率は電池温度によって変化するが、「中間温度範囲」では(リチウムイオン電池セル20aの使用比率)+(ニッケル水素電池セル20bの使用比率)}=1.0であるので、要求電池電力を満たしている。「低温時」においてはリチウムイオン電池セル20aの使用比率よりもニッケル水素電池セル20bの使用比率が大きいので、リチウムイオン電池セル20aに対する要求電力よりもニッケル水素電池セル20bに対する要求電力の方が大きい。一方で、高温時においてはリチウムイオン電池セル20aの使用比率よりもニッケル水素電池セル20bの使用比率が小さいので、リチウムイオン電池セル20aに対する要求電力の方がニッケル水素電池セル20bに対する要求電力よりも大きい。
リチウムイオン電池セル20aとニッケル水素電池セル20bとに対する要求電力が算出されると、これらに対応する電力変換器32aのデューティ比Daと、電力変換器32bのデューティ比Dbが算出される(S18)。具体的には、充電電力及び放電電力と、デューティ比Da,Dbとの関係を用いて、「中間温度範囲」、「低温時」、「高温時」のそれぞれの要求電力に相当する充電電力または放電電力に対応するデューティ比Da,Dbを求める。この処理手順は、制御装置60のデューティ比算出部66の機能によって実行される。
デューティ比Da,Dbが求められると、30個の電力変換器32aのそれぞれにデューティ比Daを適用し、30個の電力変換器32bのそれぞれにデューティ比Dbを適用して、電力変換器ブロック14の動作を制御する(S20)。具体的には、各電力変換器32aにおいて、充放電制御のサイクル時間Tのうちでデューティ比Daに相当する時間にスイッチング素子44をオンさせ、{1−Da−(td/T)}に相当する時間にスイッチング素子46をオンさせる。同様に、各電力変換器32bにおいて、充放電制御のサイクル時間Tのうちでデューティ比Dbに相当する時間にスイッチング素子44をオンさせ、{1−Db−(td/T)}に相当する時間にスイッチング素子46をオンさせる。この処理手順は、制御装置60の電力変換器動作制御部68の機能によって実行される。
S16の算出によれば、電源システム10に対する要求電池電力を満たす条件の下で、低温時においてはリチウムイオン電池セル20aに対する要求電力よりもニッケル水素電池セル20bに対する要求電力が大きい。これを満たすデューティ比Da,Dbで電力変換器32a,32bが動作する。したがって、低温時においては、充放電制限の少ないニッケル水素電池セル20bに対する充放電電力が大きくなり、これによって発熱を促し、その発熱を熱伝導部材25を介してリチウムイオン電池セル20aに伝達して、電池温度を昇温できる。
一方、高温時においてはリチウムイオン電池セル20aに対する要求電力の方がニッケル水素電池セル20bに対する要求電力よりも大きく、これを満たすデューティ比Da,Dbで電力変換器32a,32bが動作する。したがって、高温時においては、充放電制限の少ないリチウムイオン電池セル20aに対する充放電電力が大きくなり、ニッケル水素電池セル20bに対する充放電電力が抑えられる。これによって発熱量を抑制できる。また、発生した熱を熱伝導部材25を介してリチウムイオン電池セル20aに伝達して電池温度上昇を抑制できる。
S20の処理が済むと、次の制御周期でS10に戻る。例えば、次の制御周期におけるS10の要求電池電力算出が前回の制御周期のときと同じ値のときは、次の制御周期のS12において取得される電池温度は、前回のS14からS20の処理の効果として、前回よりも中間温度範囲の側に移行している。
上記において、S14で用いた使用比率マップデータ73は、充放電電力についての使用比率を示すものである。したがって、電池要求電力が充電電力であっても放電電力であっても、同じ使用比率マップデータ73を用いることができる。
ここで図2のWin/Wout特性図によれば、Win特性の方がWout特性よりも低温時及び高温時の制限が大きい。これを考慮して、図6は、電池要求電力が充電電力か放電電力であるかに応じて、使用比率を変更できる使用比率マップデータ74である。使用比率マップデータ74は、記憶部70の使用比率関係ファイル72に含まれ、S16の実行の際に、使用比率関係ファイル72の一覧を表示させて選択を行う等の方法で、読み出すことができる。
使用比率マップデータ74は、マップデータを4つ有する。(a),(b)は充電用で、(c),(d)は放電用であり、(a),(c)がリチウムイオン電池セル20aに対するマップデータであり、(b),(d)がニッケル水素電池セル20bに対するマップデータである。各マップデータにおける横軸、縦軸、パラメータ、R1,R2、黒丸マーク、白丸マーク、X印マークの内容は、図4と同じである。
図6において、充電用の(a),(b)のマップデータは、図4(a),(b)と同じであるが、放電用の(c),(d)のマップデータは、図4(a),(b)と異なる。放電用の(c)においては、「低温時」の部分が充電用の(a)と異なるが、その他の部分は(a)と同じである。放電用の(d)においては、「高温時」の部分が充電用の(b)と相違するが、その他の部分は(b)と同じである。
すなわち、図6の(c)に示すように、リチウムイオン電池セル20aの「低温時」においては、電池要求電力が大になるにつれ、R1からの使用比率の低減程度が拡大されるが、その拡大の程度が図4(a)よりも大きい。換言すれば、要求電池電力の増加程度が充電時と放電時で同じ大きさであっても、R1からの使用比率の低減程度は、充電時の方が大きい。一方、(d)に示すように、ニッケル水素電池セル20bにおける「低温時」の部分は、(b)の「低温時」の部分と同じままである。
また、図6の(d)に示すように、ニッケル水素電池セル20bの「高温時」においては、電池要求電力が大になるにつれ、R2からの使用比率の低減程度が拡大されるが、その拡大の程度が図4(b)よりも大きい。換言すれば、要求電池電力の増加程度が充電時と放電時で同じ大きさであっても、R2からの使用比率の低減程度は、充電時の方が大きい。一方、(c)に示すように、リチウムイオン電池セル20aにおける「高温時」の部分は、(b)の「高温時」の部分と同じままである。
図5のS16において、要求電池電力が充電用か放電用かを区別し、図6の使用比率マップデータ74を用いることで、「低温時」及び「高温時」における充放電制限をより少なくすることができる。
上記では、リチウムイオン電池セル20aの配置数とニッケル水素電池セル20bの配置数を同じとしたが、車両の仕様によっては、この配置数の比を1以外とすることができる。例えば、スポーツカーや酷暑地域向け仕様車等では、「高温時」の充放電制限をより少なくするために、(リチウムイオン電池セル20aの配置数)>(ニッケル水素電池セル20bの配置数)とすることが好ましい。一方、寒冷地域向け仕様車等では、(リチウムイオン電池セル20aの配置数)<(ニッケル水素電池セル20bの配置数)とすることが好ましい。これらの場合には、リチウムイオン電池セル20aの配置数とニッケル水素電池セル20bの配置数の比に応じて、「中間温度範囲」における使用比率であるR1,R2を変更する。
図7は、「高温時」の充放電制限をより少なくするために、リチウムイオン電池セル20aの配置数を30個から40個に増やし、ニッケル水素電池セル20bの配置数を30個から20個に減らした場合の使用比率マップデータ75を示す図である。ここでは、比較のために、(リチウムイオン電池セル20aの配置数)=(ニッケル水素電池セル20bの配置数)=30個に対応する図4の使用比率マップデータ73を並べて示す。使用比率マップデータ75は、記憶部70の使用比率関係ファイル72に含まれ、S16の実行の際に、使用比率関係ファイル72の一覧を表示させて選択を行う等の方法で、読み出すことができる。
この場合、リチウムイオン電池セル20aの配置数を30個から40個に増やすので、使用比率マップデータ75の(e)に示すように、「中間温度範囲」の使用比率を図4(a)のR1より大きいR3に変更する。これに応じて、全体のマップデータも図4(a)のマップデータを使用比率の大の方向にシフトさせる。一方、ニッケル水素電池セル20bは、配置数を30個から20個に減らすので、使用比率マップデータ75の(f)に示すように、「中間温度範囲」の使用比率を図4(b)のR2より小さいR4に変更する。これに応じて、マップデータの全体も、図4(b)のマップデータを使用比率の小の方向にシフトさせる。これによって、「高温時」のニッケル水素電池セル20bの充放電の制限をより少なくでき、酷暑地域向け仕様に適したものとできる。なお、R3=2R1とし、R4=(R2/2)=(R1/2)とすれば、使用比率マップデータ75の「中間温度範囲」における充放電電力は、図4の使用比率マップデータ73の「中間温度範囲」における充放電電力と同じになる。
「低温時」の充放電制限をより少なくする例としては、リチウムイオン電池セル20aの配置数を30個から20個に減らし、ニッケル水素電池セル20bの配置数を30個から40個に増やす。この場合には、リチウムイオン電池セル20aの使用比率マップとして、「中間温度範囲」の使用比率を図4(a)のR1より小さい値に変更する。これに応じて、全体のマップデータも図4(a)のマップデータを使用比率の小の方向にシフトさせる。一方でニッケル水素電池セル20bの使用比率マップとして、「中間温度範囲」の使用比率を図4(b)のR2より大きい値に変更する。これに応じて、マップデータの全体も、図4(b)のマップデータを使用比率の大の方向にシフトさせる。これによって、「低温時」のリチウムイオン電池セル20aの充放電制限をより少なくでき、寒冷地域向け仕様に適したものとできる。なお、変更後のそれぞれの「中間温度範囲」の使用比率の和を1.0とすれば、「中間温度範囲」における充放電電力は、図4の使用比率マップデータ73の「中間温度範囲」における充放電電力と同じになる。なお、図7に関連する配置数は、例示であって、車両の仕様に応じ、適宜変更が可能である。