以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10の構成の一例を示す。図1(a)、(b)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す上面図及び断面図である。本例において、印刷装置10は、印刷対象の媒体(メディア)50に対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタであり、ヘッド部12、ガイドレール14、主走査駆動部16、副走査駆動部18、プラテン20、プリヒータ22、プリントヒータ24、アフターヒータ26、及び制御部30を備える。
尚、以下に説明をする点を除き、印刷装置10は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、以下に説明をする構成に加え、印刷装置10は、印刷の動作等に必要な公知の構成等を更に有してよい。また、本例において、印刷装置10は、例えば、ロール状の媒体50を用いるロールツウロールプリンタである。
ヘッド部12は、媒体50に対してインク滴を吐出する部分(IJヘッドユニット)であり、キャリッジ100、複数のインクジェットヘッド102、及び複数の光源部104を有する。キャリッジ100は、ヘッド部12における他の構成を保持する保持部材である。
複数のインクジェットヘッド102は、インクジェット方式でインク滴を吐出する吐出ヘッドである。本例において、複数のインクジェットヘッド102のそれぞれは、互いに異なる色のインク滴を吐出して、各色のインクを媒体50上に付着させる。
また、より具体的に、複数のインクジェットヘッド102のそれぞれは、カラー印刷用のプロセスカラーの各色のインク滴を吐出する。プロセスカラーの各色とは、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色である。また、複数のインクジェットヘッド102は、所定の主走査方向(図中のY方向)に並べて配設されており、主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行うことにより、媒体50にインクを付着させる。また、本例において、それぞれのインクジェットヘッド102は、副走査方向(図中のX方向)と平行なノズル列方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有しており、主走査方向における一方及び他方の向きの双方向(両方向)の主走査動作を行う。
尚、用いるインクの色については、上記の構成や特定の色には限定されず、様々に変更可能である。例えば、YMCKの各色以外の色のインクを更に用いてもよい。この場合、ヘッド部12は、その色用のインクジェットヘッド102を更に有する。また、この場合、例えば、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の各色のインクを更に用いて、YMCKRGBカラーの基本色の組み合わせで色表現を行うことが考えられる。また、白色、クリア色、オレンジ色、パール色、金色、銀色、その他のメタリック色等の色材を添加した特色のインクを用いてもよい。
また、本例において用いるインク(インクジェット用インク)は、溶媒を揮発除去することで媒体50に定着する蒸発乾燥型のインクである。蒸発乾燥型のインクとしては、例えば、溶媒として有機溶剤を用いたインク(例えば、ソルベントインク等)を用いることが考えられる。また、インクとして、例えば、水性溶媒を含むインク(例えば、各種の水性インク等)を用いてもよい。また、本例で用いるインクは、更に、光源部104から照射される光を吸収して発熱するエネルギー線吸収剤を含んでいる。この場合、光源部104から照射される光は、エネルギー線の一例である。このようなインクを用いることに関する特徴については、後に更に詳しく説明をする。また、エネルギー線吸収剤以外について、本例のインクは、公知のインクと同一又は同様の成分を含んでよい。例えば、それぞれのインクジェットヘッド102で用いる各色のインクは、各色の色材(顔料又は染料等)を含む。
複数の光源部104は、エネルギー線照射部の一例である。本例において、複数の光源部104は、キャリッジ100により複数のインクジェットヘッド102と一体的に保持されており、主走査動作時にインクジェットヘッド102と共に移動する。また、これにより、複数の光源部104は、インクジェットヘッド102により媒体50上に吐出されたインクに対して、所定の波長の光を照射する。この場合、所定の波長の光は、エネルギー線の一例である。また、所定の波長の光としては、インクに含まれるエネルギー線吸収剤の吸収特性に合わせた波長の光を照射する。この場合、エネルギー線吸収剤の吸収特性に合わせた波長とは、例えば、エネルギー線吸収剤の光線吸収波長帯と少なくとも略一致している範囲の波長のことである。これにより、光源部104は、媒体50上のインクを加熱して、インク中の溶媒の少なくとも一部を揮発除去する。エネルギー線吸収剤の吸収特性と、光源部104の発光波長との組み合わせについては、光源部104が発生する光をエネルギー線吸収剤が有効に吸収するように選択することが好ましい。また、より具体的に、本例において、複数の光源部104のそれぞれは、所定の波長の紫外線又は赤外線を照射する。この場合、インクとしては、光源部104が発生する光(紫外線又は赤外線)を吸収する光吸収剤を含むインクを用いる。
尚、光源部104としては、オンオフ制御のできる光源を用いることが好ましい。より具体的に、光源部104としては、例えば、所定の波長の光を発生するLED(LED光線照射器)を好適に用いることができる。また、紫外線を発生する光源部104を用いる場合、例えば、400nm以下の波長範囲に最高出力波長を示すLED光線照射器を用いることが好ましい。また、赤外線を発生する光源部104を用いる場合、赤外、近赤外、中赤外、又は遠赤外等の赤外線を照射可能なLED光線照射器を用いることが好ましい。また、印刷装置10の構成の変形例において、複数の光源部104のそれぞれは、マイクロ波等のエネルギー線を照射してもよい。また、この場合、例えば、エネルギー線吸収剤を含まず、溶媒によりマイクロ波を吸収するインク等を用いてもよい。
また、本例において、光源部104は、プリントヒータ24等の加熱手段と共にインクを加熱することにより、インク中の溶媒を揮発除去する。また、複数の光源部104のそれぞれは、複数のインクジェットヘッド102に並びに対して主走査方向における一方側及び他方側のそれぞれに配設され、主走査動作時においてインクジェットヘッド102と共に移動する。この場合、主走査動作時において、複数の光源部104の一方はインクジェットヘッド102に対して移動方向の後方側に、他方は移動方向の前方側に位置することになる。そして、双方向の主走査動作においては、インクジェットヘッド102の移動の向きに応じて、インクジェットヘッド102よりも後方側になる光源部104により、媒体50上のインクへ紫外線等のエネルギー線を照射する。また、これにより、光源部104は、例えば、媒体50への着弾直後に媒体50上へのインクへエネルギー線を照射する。そして、媒体50上で滲みが発生する前にインクの粘度を高め、滲みの発生を抑える。
また、副走査方向における光源部104の幅は、インクジェットヘッド102のプリント幅と同じか、それを超える幅の領域へ紫外線等の光照射が可能な幅を用いることが好ましい。この場合、プリント幅とは、例えば、1回の主走査動作によりインクジェットヘッド102で印刷可能な領域の副走査方向における幅である。また、本例において、光源部104は、複数のインクジェットヘッド102と位置をずらして配設されることにより、媒体50においてインクジェットヘッド102と対向する領域の外にあるインクへエネルギー線を照射する。このように構成すれば、例えば、エネルギー線によりインクを加熱する影響や、蒸発した溶媒の影響をインクジェットヘッド102が受けることを適切に防ぐことができる。また、この場合、例えばインクジェットヘッド102と光源部104との間の距離を変化させることにより、媒体50への着弾後、エネルギー線が照射されるまでの時間を適切に調整できる。また、主走査方向における光源部104の幅を調整することにより、光源部104によりエネルギー線を照射する時間(連続照射時間)についても適切に調整できる。
また、本例において、光源部104は、例えば、溶媒の少なくとも一部を揮発除去することにより、媒体50上のインクの粘度について、少なくとも媒体50上で滲みが発生しない粘度に高める。この場合、滲みとは、例えば、異なる色のインクが混じり合うことで生じる色間滲み等である。また、滲みが発生しない粘度とは、例えば、インクが完全に乾燥して媒体50に定着するまでの間に滲みが発生しない粘度のことである。また、滲みが発生しないとは、求められる印刷の精度に応じた許容範囲内で実質的に滲みが発生しないことであってよい。また、より具体的に、光源部104は、エネルギー線の照射により、媒体50上のインクの粘度を、例えば50mPa・s以上、好ましくは100mPa・s以上、更に好ましくは200mPa・s以上に高める。
ガイドレール14は、主走査方向へ延伸するレール部材であり、主走査方向へのキャリッジ100の移動をガイドする。また、これにより、主走査動作時において、ガイドレール14は、ヘッド部12における各インクジェットヘッド102を主走査方向へ移動させる。
主走査駆動部16は、インクジェットヘッド102に主走査動作を行わせる駆動部である。本例において、主走査駆動部16は、ガイドレール14に沿ってキャリッジ100を移動させることにより、キャリッジ100に保持されたインクジェットヘッド102等を主走査方向へ移動させる。そして、印刷すべき画像を示す印刷データに基づいて移動中のインクジェットヘッド102にインク滴を吐出させることにより、インクジェットヘッド102に主走査動作を行わせる。また、主走査駆動部16は、更に、主走査動作時にインクジェットヘッド102と共に光源部104を移動させることにより、インクジェットヘッド102によるインク滴の吐出位置に合わせ、光源部104にエネルギー線を照射させる。
また、より具体的に、本例の主走査動作時において、主走査駆動部16は、それぞれのインクジェットヘッド102について、例えば主走査動作で印刷される領域の境界がギザ状になるように、ノズル列中の少なくとも一部のノズルからインク滴を吐出させつつ主走査方向へ移動させる。主走査動作時にインク滴を吐出するノズルの選択の仕方等については、後に更に詳しく説明をする。
副走査駆動部18は、インクジェットヘッド102に副走査動作を行わせる駆動部である。この場合、インクジェットヘッド102に副走査動作を行わせるとは、例えば、媒体50に対して相対的に副走査方向へインクジェットヘッド102を移動させることである。より具体的に、本例において、副走査駆動部18は、副走査方向と平行な搬送方向へ媒体50を搬送することにより、インクジェットヘッド102に副走査動作を行わせる。また、副走査駆動部18は、主走査動作の合間に媒体50を搬送することにより、次の回の主走査動作においてインクジェットヘッド102と対向する媒体50の領域を変更する。
プラテン20は、ヘッド部12と対向する位置に配設される台状部材であり、上面に媒体50を載置することにより、ヘッド部12と対向させて媒体50を支持する。また、本例において、プラテン20は、媒体50を加熱するヒータ(加熱ヒータ)であるプリヒータ22、プリントヒータ24、及びアフターヒータ26を内部に収容している。
プリヒータ22、プリントヒータ24、及びアフターヒータ26は、媒体50の背面側から媒体50を加熱する伝熱型の加熱手段であり、媒体50を介して媒体50上のインクを加熱することにより、インク中の溶媒を揮発除去して、インクを乾燥させる。光源部104に加えてこれらの加熱手段を用いることにより、インク中の溶媒をより適切に揮発除去して、インクの乾燥を一層促進できる。また、これにより、媒体50にインクをより適切に定着させることができる。
また、より具体的に、プリヒータ22は、媒体50を予備加熱するヒータであり、媒体50の搬送方向においてインクジェットヘッド102よりも上流側に配設されることにより、媒体50においてインク滴が着弾する前の領域を加熱する。プリヒータ22は、例えば、プリントヒータ24の位置の通過のみでは媒体50の温度を十分に昇温できない場合等に昇温時間不足を補う目的で設置される。そして、例えば厚い媒体50を用いる場合等に、必要に応じて、媒体50を加熱する。
プリントヒータ24は、インクジェットヘッド102と対向する位置において媒体50を加熱するヒータである。この場合、光源部104は、プリントヒータ24により加熱される媒体50上のインクにエネルギー線を照射することにより、プリントヒータ24と共に、インクに含まれる溶媒の少なくとも一部を揮発除去する。このように構成すれば、例えば、媒体50への着弾直後のインクから、インク中の溶媒をより適切に揮発除去できる。また、これにより、媒体50上で滲みが発生する前にインクの粘度をより適切に高めることができる。また、プリントヒータ24を用いることにより、例えば、媒体50を所定の初期温度に保ち、インクの蒸発乾燥速度を一定化することができる。更には、例えば、必要に応じてプリントヒータ24による加熱温度を変更することにより、蒸発乾燥速度の変更や調整等を行うことができる。
アフターヒータ26は、搬送方向においてインクジェットヘッド102よりも下流側に配設されるヒータであり、プリントヒータ24及び光源部104の位置を通過後の媒体50を更に加熱することにより、光源部104及びプリントヒータ24では除去しきれなかった溶媒を除去する。また、これにより、アフターヒータ26は、例えば、媒体50上のインクをより確実に乾燥させ、媒体50に定着させる。
制御部30は、印刷装置10の各部の動作を制御するための構成である。本例において、制御部30は、主制御部302、ノズル選択部304、吐出特性補正部306、及び代替ノズル設定部308を有する。主制御部302は、例えば印刷装置10のCPUであり、印刷装置10の全体の動作の制御を行う。
ノズル選択部304は、主走査動作で印刷される領域の境界がギザ状になるようにノズルの選択を行う構成である。本例において、ノズル選択部304は、主走査動作時の各タイミングにおいて、それぞれのインクジェットヘッド102におけるノズル列の一部に、連続して並ぶ予め設定された数の複数のノズルを選択する。また、主走査動作時にインクジェットヘッド102が主走査方向へ移動するのに合わせて、選択するノズルを順次変更する。ノズル選択部304により行うノズルの選択の仕方については、後に更に詳しく説明をする。
吐出特性補正部306は、それぞれのインクジェットヘッド102におけるそれぞれのノズルの吐出特性を個別に補正する構成である。本例において、吐出特性補正部306は、ノズルにインク滴を吐出させる駆動信号の実効電圧等を個別に調整することにより、それぞれのノズルの吐出特性を調整する。また、これにより、各ノズルが吐出するインク滴の容量が一定になるように、吐出特性の補正を行う。
また、より具体的に、本例において、吐出特性補正部306は、例えば駆動信号のパルス幅をノズル毎に個別に設定すること等により、駆動信号の実効電圧等を個別に調整し、吐出特性の補正を行う。また、これにより、例えば、従来の方法と比べて小さな規模の回路構成を用いて、吐出特性の補正を行う。吐出特性の補正を行う方法についても、後に更に詳しく説明をする。
代替ノズル設定部308は、異常ノズルに対する代替処理(欠陥ノズルのリカバリ処理)の設定を行う構成である。この場合、異常ノズルとは、正常ノズル以外のノズルのことである。また、正常ノズルとは、吐出特性が予め設定された正常範囲内にあるノズルのことである。また、異常ノズルに対する代替処理とは、異常ノズルを使用せずに印刷を行うように、異常ノズルの代わりにインク滴を吐出するノズルである代替ノズルを設定することである。また、本例において、代替ノズル設定部308は、吐出特性補正部306で吐出特性を補正しても正常ノズルにならないノズルについて、異常ノズルとして扱い、代替ノズルを設定する。代替ノズル設定部308により行う代替処理についても、後に更に詳しく説明をする。以上のような各種の制御を行うことにより、例えば、媒体50に対する印刷を適切に行うことができる。
尚、制御部30のおける各構成は、説明の便宜上、制御部30の機能毎に対応する構成を分けたものである。実際の構成においては、例えば、物理的に一つの構成で複数の機能的な構成を実現してもよい。例えば、主制御部302、ノズル選択部304、吐出特性補正部306、及び代替ノズル設定部308の全ての機能について、印刷装置10のCPUで実現すること等も考えられる。
続いて、印刷装置10のより詳細な構成や、本例において行う印刷の動作の様々な特徴について、説明をする。先ず、本例において用いるインクジェットヘッド102の構成の例について、説明をする。
図2は、インクジェットヘッド102の構成の例を示す図である。図2(a)は、本例において用いるインクジェットヘッド102の構成の一例を示す図であり、1色分のインクジェットヘッド102におけるノズル202の配置の一例を示す。
上記においても説明をしたように、本例において、インクジェットヘッド102は、副走査方向へ複数のノズル202が並ぶノズル列204を有する。また、ノズル列204において、複数のノズル202は、一定のノズル間隔(ノズルピッチ)で一列に並んでいる。
また、より具体的に、本例において用いるインクジェットヘッド102は、ノズル列204におけるノズル間隔に対応する解像度が最終的な印刷の解像度(プリント画像の解像度)と等しくなっている高解像度ヘッドである。この場合、ノズル間隔に対応する解像度が最終的な印刷の解像度と等しいとは、ノズル列204を構成する複数のノズル202の並びの副走査方向における間隔がプリント画像の副走査方向ドット間隔と等しいことである。この場合、プリント画像とは、印刷の成果物となる印刷結果の画像のことである。また、プリント画像の副走査方向ドット間隔とは、プリント画像の印刷解像度における副走査方向でのドット間隔のことである。印刷解像度とは、例えば、印刷が完了した時点で媒体上に形成されるインクのドットの並びの解像度のことである。また、副走査方向ドット間隔は、印刷解像度で並ぶインクのドットの副走査方向におけるドット間隔と考えることもできる。また、この場合、印刷解像度とは、例えば、印刷装置10において設定可能な最高解像度であってよい。
このような高解像度ヘッドを用いることにより、例えば、マルチパス方式での印刷を行わなくても、高い解像度での印刷を適切に行うことができる。また、本例においては、更に、各回の主走査動作で、インクジェットヘッド102は、主走査方向における解像度も印刷解像度と等しくなるように、インク滴を吐出する。より具体的に、本例において、主走査駆動部16(図1参照)は、例えば、同一のノズル202により主走査方向へ連続して並ぶ複数のドットを形成する場合のドットの間隔が主走査方向ドット間隔と等しくなるように、インクジェットヘッド102に主走査動作を行わせる。また、これにより、主走査駆動部16は、主走査解像度と印刷解像度とが等しくなるように、インクジェットヘッド102に主走査動作を行わせる。この場合、主走査ドット間隔とは、例えば、印刷解像度で並ぶインクのドットの主走査方向における間隔のことである。また、主走査解像度とは、1回の主走査動作でインクジェットヘッド102により媒体上に形成するインクのドットの並びの解像度のことである。また、1回の主走査動作でインクジェットヘッド102により媒体上に形成するインクのドットの並びとは、例えば、1色のインク用のインクジェットヘッド102で形成するインクのドットの並びのことである。また、インクのドットの並びの解像度とは、例えば、設計上の解像度であってよい。
また、より具体的に、ノズル列204におけるノズル202の解像度は、300dpi以上にすることが好ましい。この場合、ノズル202の解像度とは、ノズル202の間隔に対応する解像度のことである。また、ノズル202の解像度は、より好ましくは400dpi以上、更に好ましくは600dpi以上、更に好ましくは1200dpi以上である。このように構成すれば、例えば、高画質の印刷をより適切に行うことができる。また、インクジェットヘッド102としては、例えば、ピエゾ方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドを好適に用いることができる。このように構成すれば、例えば、ノズル202の解像度をより適切に高めることができる。
ここで、本例においては、上記のような高解像度ヘッドを用いることにより、マルチパス方式での印刷を行わなくても、高い解像度で適切に印刷を行うことができる。また、後に更に詳しく説明をするように、本例において、それぞれのノズル202の吐出特性は、個別に補正がされている。また、代替ノズル設定部308(図1参照)で代替ノズルを設定することにより、補正可能な範囲を超えた異常ノズルが存在する場合にも、異常ノズルの影響を抑えることができる。そのため、本例においては、ノズル202の吐出特性のバラツキを平均化する目的でのマルチパス方式での動作も行わなくてよい。従って、本例においては、例えば、マルチパス方式での動作を行うことなく、高い解像度での印刷を適切に行うことができる。また、マルチパス方式で印刷を行う場合にも、例えば従来の構成と比べ、印刷のパス数を大幅に低減することができる。そのため、本例によれば、例えば、高い品質(高画質)の画像を高速に印刷することができる。
また、上記のように、本例においては、例えば1個のインクジェットヘッド102のみで、上記のような高解像度ヘッドを実現している。しかし、印刷装置10の構成の変形例においては、1色のインク用に複数のインクジェットヘッド102を用い、複数のインクジェットヘッド102を組み合わせることで、高解像度ヘッドを実現してもよい。
また、この場合、同じ色のインク用に複数のインクジェットヘッド102を組み合わせた構成について、仮想的な1個のインクジェットヘッドと考えてもよい。また、このように考えた場合、この仮想的な1個のインクジェットヘッドにより1回の主走査動作で形成するインクのドットの並びの解像度について、主走査解像度と考えてよい。また、仮想的な1個のインクジェットヘッドを構成する複数のインクジェットヘッド102に含まれる複数のノズル列204を合わせた仮想的なノズル列に対し、ノズルの間隔等を考えてよい。
図2(b)、(c)は、このような変形例におけるインクジェットヘッド102の構成の例を示す。図2(b)は、同じ色のインクに対して2個のインクジェットヘッド102を用いる構成の一例を示す。
この場合、2個のインクジェットヘッド102は、ノズルの間隔の半ピッチ分だけ副走査方向における位置をずらして配設されている。また、それぞれのインクジェットヘッド102におけるノズル202は、図2(a)に示した場合の2倍の間隔でノズル列方向へ並んでいる。そのため、複数のノズル列204の各ノズル202の位置を図中のX‐X線方向に投影した場合、複数のノズル列204を合わせた仮想的なノズル列におけるノズル202の解像度は、図2(a)を用いて説明をした場合と同様に、副走査方向における印刷解像度と等しくなる。そのため、この場合も、高解像度ヘッドを適切に実現できる。
また、同じ色のインク用のインクジェットヘッド102の個数は、更に多くしてもよい。図2(c)は、同じ色のインクに対して4個のインクジェットヘッド102を用いる構成の一例を示す。
この場合、4個のインクジェットヘッド102は、ノズルの間隔の1/4ピッチ分だけ副走査方向における位置を順次ずらして配設されている。また、それぞれのインクジェットヘッド102におけるノズル202は、図2(a)に示した場合の4倍の間隔でノズル列方向へ並んでいる。そのため、この場合も、複数のノズル列204の各ノズル202の位置を図中のX‐X線方向に投影すると、複数のノズル列204を合わせた仮想的なノズル列におけるノズル202の解像度は、図2(a)を用いて説明をした場合と同様に、副走査方向における印刷解像度と等しくなる。そのため、この場合も、高解像度ヘッドを適切に実現できる。
続いて、本例において用いるインクの特徴や、媒体へインクを定着させる方法等について、説明をする。上記においても説明をしたように、本例においては、インクとして、例えば、蒸発乾燥型のインクを用いる。そして、この場合、高解像度ヘッドを用いる構成では、インクの滲み等の問題を抑えることが重要になる。
ここで、従来のインクジェットプリンタの構成において、蒸発乾燥型のインクとしては、例えば水性顔料インクやラテックスインク等の水性系の蒸発乾燥型インクや、ソルベントインク等の非水系の蒸発乾燥型インク等が広く用いられている。また、シリアルプリンタでインクの滲みの防止(滲み止め)を行ってインクを乾燥定着させるための方法としては、例えば、受像層(受容層)の形成、プリントヒータの採用、及びマルチパス方式(マルチパス走査)の採用のいずれか又はこれらの組み合わせによって行っている。
この場合、受像層の形成とは、印刷対象の媒体(被プリントメディア)にインクの受像層を形成し、インクの溶媒を急速に吸収させて滲みを止める方法である。しかし、この方法は、使用可能な媒体が特定の媒体に限定されることになる。そのため、様々な媒体を用いるためには、受像層の形成することなく滲みを止め得る構成が望まれる。
また、プリントヒータの採用とは、媒体をプリントヒータで加熱して滲みを止める方法である。この場合、例えば、アフターヒータとして各種のヒータや赤外線ランプ等のアフター加熱手段を用いて、インクを乾燥定着させる。しかし、プリンタヒータのみでインクの滲みを抑えようとすると、ヒータの加熱温度が高くなり、様々な問題が生じる場合がある。より具体的に、この場合、例えば、輻射熱の影響でインクジェットヘッドのノズル面におけるインクが乾燥する問題や、蒸発したインクがノズル面に付着する問題が生じるおそれがある。そのため、従来のシリアルプリンタの構成においては、ある程度のパス数以上でのマルチパス方式の採用が実質的に必須である。
マルチパス方式とは、例えば、媒体において印刷が行われる被印刷領域の各位置に対して複数回の主走査動作を行う方式であり、例えば、インクジェットヘッドのプリント幅分の距離をP回の副走査動作で分割移動することにより、各位置に対して複数回の主走査動作を行う。また、従来の構成において、上記のPの値(パス数)は、通常、8〜64程度に設定する。
マルチパス方式を採用することにより、例えば100%の濃度で領域を塗りつぶすベタプリントを行う場合において、1回の主走査動作で形成するインクのドットの密度について、プリント画像の印刷解像度に対応する密度と比べて、1/Pに低減することができる。また、これにより、単位時間に単位面積に対して着弾するインクの密度を低下させ、滲みの発生を抑えることができる。また、この場合、上記においても説明をしたように、ノズルの吐出特性のバラツキを平均化することができる。また、これにより、例えば、ノズルの吐出特性のバラツキにより筋状の斑(筋斑)等の発生を抑えて、高画質な印刷を行うことも可能にしている。
また、従来のシリアルプリンタで印刷を行う場合、印刷速度を高速する場合、濃い色のカラー印刷を行う場合、両面印刷を行う場合等の様々な場合に、単位時間及び単位面積あたりインクの吐出量(着弾量)が増え、滲みが発生しやすくなる。そのため、このような場合には、パス数を8以上とするマルチパス方式で印刷を行うことが一般的である。
一方、本例においては、上記においても説明をしたように、高解像度ヘッドを用いることで、少ないパス数での印刷を行うことができる。そして、この場合、パス数を多くする従来の構成とは前提となる条件が全く異なるため、上記のような方法を用いるのみでは、インクの滲み等を十分に抑えることが難しくなる場合がある。
より具体的に、本例の構成の場合、例えば多くのパス数のマルチパス方式で印刷を行う場合と比べ、1回の主走査動作で単位面積に対して吐出するインクの量が多くなる。そして、単位面積あたりのインクの量が多くなると、通常、インクの滲み等の問題が発生しやすくなる。特に、蒸発乾燥型のインクを用いる場合、このような問題が発生しやすいと考えられる。そのため、印刷のパス数を少なくしようとする場合において、単に高解像度ヘッドを用いるのみでは、例えばインクの乾燥速度が不足するおそれがある。また、その結果、パス数を少なくしても、適切に印刷速度を高速化できないおそれがある。
これに対し、本例においては、上記のように、所定のエネルギー線に応じて発熱するエネルギー線吸収剤を含むインクと、そのエネルギー線を発生する光源部104(図1参照)とを組み合わせて用いることにより、インクを急速に乾燥させる構成を実現している。また、このような新しい乾燥方式を導入することにより、パス数を少なくすることで単位時間及び単位面積あたりインクの吐出量が多くなった場合にも、滲みの発生を適切に抑えることが可能になっている。
図3は、本例のインクを用いることに関する特徴について説明をする図である。図3(a)は、主走査動作時にインクを乾燥させる動作の一例を示す。
本例において用いるインクは、上記のように、エネルギー線吸収剤を含むインクである。また、より具体的に、このようなエネルギー線吸収剤としては、例えば、紫外線又は赤外線の波長域にのみ強い吸収特性を有する機能性色材等を好適に用いることができる。このような機能性色材は、例えば紫外線吸収剤又は赤外線吸収剤等の光線吸収剤であってよい。この場合、本例において用いるインクについて、例えば、光吸収剤添加インクと考えることができる。また、このインクは、例えば、全体重量の40重量%以上が溶媒成分であり、主成分を構成する溶媒の蒸発により滲みが止まり、かつ乾燥して高粘度化するインクである。また、紫外線吸収剤や赤外線吸収剤については、例えば、水又は有機溶剤等の溶媒に溶解添加するか、溶媒中や溶媒中の樹脂中に添加することが考えられる。
また、より具体的に、紫外線を発生する光源部104を用いる場合、例えば、ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン紫外線吸収剤、高分子紫外線吸収剤、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、フォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、及びチオキサントン系等から選ばれる紫外線吸収剤を溶媒に対して0.01〜10重量%程度添加したインクを用いることが考えられる。また、このような紫外線吸収剤としては、無色の物質が多く知られている。そのため、この場合、好適な紫外線吸収剤をより容易に入手することができる。また、紫外線吸収剤として、上記以外に、例えば、各種のトリアジン系紫外線吸収剤、液状紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、又はベンゾイミダゾール系紫外線吸収剤等を用いることも考えられる。
また、赤外線を発生する光源部104を用いる場合、赤外線吸収剤として、例えば、アントラキノン系、フタロシアニン系、ジイオニューム塩系、アントラキノン系、ポリメタン系、オクタチオフェニールフタロシアニン誘導体、ペリミジン系スクアリリウム、ナフタロシアニン系、又はスクアリリウム系の物質のような、可視光域に大きな吸収を持たず、かつ使用する光源部104の発光波長に相当する赤外波長に対して選択的な大きな吸収特性を有する機能性有機系色材を好適に用いることができる。
また、図1等を用いて上記においても説明をしたように、本例においては、インクジェットヘッド102(図1参照)と対向する位置で裏面側から媒体50(図1参照)を加熱するプリントヒータ24(図1参照)等を更に用いている。この場合、プリントヒータ24は、例えば、媒体50を25〜70℃程度に加熱する。このように構成すれば、例えば図3(a)に示すように主走査動作を行って印刷を行う場合において、インクの乾燥を適切に促進することができる。また、例えば、光源部104により紫外線等の光照射を行う前の初期条件を適切に一定化することができる。また、この構成については、例えば、プリントヒータ24を第1の加熱手段と考えた場合に第2の加熱手段として光源部104を更に用いて、媒体50上のインクを加熱している構成と考えることができる。
また、プリントヒータ24による加熱温度については、プリントヒータ24のみで加熱を行う場合等と比べ、低い温度に設定してもよい。例えば、プリントヒータ24による媒体50の加熱温度については、50℃以下にすることが好ましい。また、この温度は、45℃以下(例えば30〜45℃程度)にすることがより好ましい。このように構成すれば、例えば、インクジェットヘッド102においてインクが乾燥すること等を適切に防ぐことができる。
また、この場合、光源部104は、主走査動作時にインクジェットヘッド102と共に移動することにより、媒体50上に着弾したインクの面(インク面)に相対して、着弾直後(プリント直後)又は滲みを抑えるという目的に合う一定時間内に、媒体50上のインクへ光照射を行う。この場合、光源部104が照射する光(紫外線等)の強度(光照射強度)については、主走査方向における光源部104の幅や、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動速度等に応じて設定することが好ましい。具体的に、光照射強度については、例えば、0.2W/cm2〜20W/cm2程度にすることが考えられる。
このように構成した場合、図3(a)に示すように、インクジェットヘッド102と対向する領域では、プリントヒータ24の加熱により、インク中の溶媒は、ゆっくりと蒸発する。また、この場合、プリントヒータ24による加熱を低温で行うことにより、インクジェットヘッド102が受ける熱輻射の影響を弱めることもできる。
また、光源部104により光照射がされる領域では、光照射により高温加熱を行うことができる。また、これにより、例えば、急速に溶媒を蒸発させ、インクを高粘度化することができる。また、この場合、インクジェットヘッド102と対向する領域の外へ光照射を行うことにより、高温の輻射熱がインクジェットヘッド102へ影響することを防ぐこともできる。
また、この場合、例えば、媒体50の各位置へインクジェットヘッド102からインク滴を吐出した直後(プリント直後)において、媒体50上で滲みが顕在化する前に光源部104で光照射を行い、媒体50上のインクを瞬間加熱する。また、これにより、インクに含まれる水や溶剤等の溶媒を蒸発させて、インクを乾燥させる。より具体的に、本例においては、このような工程を行うことにより、例えば、インクの溶媒成分の40%以上が蒸発し、インクの粘度が上昇し、滲みが止まると考えられる。そのため、本例によれば、例えば、パス数が2又はそれ以下になる条件のように、少ないパス数で印刷を行う場合にも、滲みの発生等を適切に抑えることができる。
尚、本例においては、上記においても説明をしたように、インクジェットヘッド102の通過後の領域に対して光源部104で光照射を行うことにより、インクを高温に加熱する。また、この場合、インクジェットヘッド102と対向する領域の外へ光照射を行うことで、加熱の影響がインクジェットヘッド102に及ぶことを適切に防げるため、光源部104によるインクの温度を十分に高めることができる。より具体的に、光源部104は、インクの温度が100℃程度又はそれ以上になるようにインクを加熱することが好ましい。このように構成すれば、例えば、短時間でインクを適切に乾燥させることができる。
また、インクが加熱される温度については、突沸等で液体状のインクが飛散することのない範囲に設定することが好ましい。また、インクを蒸発させるためにインクを加熱するための時間の調整については、例えば、主走査方向における光源部104の幅を調整すること等で行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、インクの乾燥時間を適切に確保できる。
また、インクの加熱を短時間で効率的に行うためには、例えば、媒体50の各位置に対し、媒体50の放熱の時定数よりも連続照射時間が短くなるように光照射を行うことが好ましい。より具体的に、この場合、光源部104を移動させつつ光照射を行うことにより、同じ位置に対する連続照射時間が媒体50の放熱の時定数よりも短くなるようにすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、媒体50やインクの過熱を防ぎつつ、インクをより適切に乾燥させることができる。
また、本例のようにしてインクを乾燥させる場合、例えば媒体50上の同じ位置へ複数回の主走査動作を行う場合も、各回の主走査動作で吐出するインクについて、同様に乾燥させることができる。この場合、1回目の主走査動作を行った後、例えば次の回の主走査動作でインクが同じ領域に着弾しても、先の回の主走査動作で吐出されたインクは乾燥しているために、その回の主走査動作で吐出したインクのみに対し、先の回の主走査動作時と同様に光源部104等を用いて、乾燥させればよい。そのため、例えば2回目の主走査動作でも、滲みが発生することはない。
また、本例においては、短時間でインクを乾燥させることにより、例えば浸透性(吸収性)の媒体50を用いる場合において、媒体50上に残るインクの厚さを十分に厚くすること等も可能になる。この場合、浸透性の媒体50とは、例えば布や紙等のように、内部にインクを吸収する性質の媒体50のことである。浸透性の媒体50としては、例えばTシャツ等の布製品を用いることもできる。また、これらの浸透性の媒体50は、例えば、受像層を設けていない媒体50であってよい。
図3(b)は、浸透性の媒体50に対する印刷結果の一例を示す。この場合、媒体50の内部に浸透する前にインクを瞬間的に高粘度化させることにより、滲みが発生しやすい媒体50を用いる場合にも、滲みの発生を適切に抑えることができる。また、この場合、図中に示すように、媒体50の内部に多くのインクが浸透することを適切に防ぐことができる。また、これにより、媒体50内に浸透するインクの深さ(浸透深さ)を抑制し、媒体50の表面に多くのインクを残すことができる。また、この場合、表面に残るインクは、色材等を含んだ状態で乾燥し、固体することにより、印刷される画像(インク像)を構成する。そのため、本例によれば、例えば、浸透性の媒体50を用いる場合にも、媒体50の表面に十分な量のインクを残し、高濃度の印刷を適切に行うことができる。
また、媒体50としては、浸透性の媒体50に限らず、媒体50内にインクが浸透しない非浸透性(非吸収性)の媒体50を用いることもできる。また、非浸透性の媒体50としては、例えば、各種の非浸透性のプラスチックフィルムや、塩化ビニルシート等の媒体50を好適に用いることができる。より具体的には、例えば、ポリエステルフィルム、アクリル、ABS、ポリプロピレン等の媒体50を用いることが考えられる。また、金属やガラス等の媒体50を用いることも考えられる。また、これらの非浸透性の媒体50は、例えば、表面にコート加工等がされていないノンコート媒体であってよい。また、上記以外にも、インクジェット方式で印刷が可能な様々な媒体を用いることが考えられる。例えば、媒体50として、木材、皮、セラミック等の媒体を用いること等も考えられる。
図3(c)は、非浸透性の媒体50に対する印刷結果の一例を示す。浸透性の媒体50を用いる場合、本例のように高速にインクを乾燥させても、例えば図3(b)に示したように、媒体50の内部にわずかな量のインクが浸透することになる。これに対し、非浸透性の媒体50を用いる場合、媒体50の内部にインクが全く浸透しないため、表面により多くのインクが厚く残ることになる。そのため、この場合、より高濃度の印刷をより適切に行うことができる。
また、非浸透性の媒体50を用いる場合、従来の構成で蒸発乾燥型のインクを用いると、滲みの問題が発生しやすいと考えられる。そのため、従来、非浸透性の媒体50と蒸発乾燥型のインクを組み合わせる場合も、パス数を少なくして高速に印刷を行うことは困難であった。これに対し、本例においては、プリント直後に瞬間的にインクを乾燥させることにより、滲みの発生を適切に抑えることができる。そのため、従来の構成では実現できなかった少ない回数のパス数でも、より適切に印刷を行うことができる。また、これにより、印刷の速度を適切に高速化できる。
尚、光源部104の具体的な構成や、使用するインクや媒体50等については、上記において説明をした構成に限らず、様々な選択や変更が可能である。例えば、光源部104の具体的な構成については、使用するインクに合わせた波長の光照射が可能な様々な構成を用いることが可能である。より具体的には、上記においても説明をしたように、紫外線用のLED(UVLED)や、近赤外線等の赤外線用のLED(近赤外線LED等)を用いることが考えられる。また、光源部104としては、例えばフラッシュランプのように、幅広い波長の発光を行う光源(フラッシュランプ加熱ユニット等)を用いてもよい。この場合も、その発光エネルギーの一部をインクに吸収させることにより、インクを適切に瞬間乾燥させることができる。
また、光源部104による光照射は、連続的な発光により行ってもよく、例えば、光源部104の移動距離に応じて間歇発光させてもよい。また、光源部104としては、LED等に限らず、例えば半導体レーザ等のレーザ光源を用いてもよい。この場合、例えばレーザ光を適宜ビーム成形して、インクジェットヘッドの幅に合わせて光照射を行うことが好ましい。また、この場合、より具体的には、例えば、赤外線発光を行う高出力半導体レーザ等を用いることが考えられる。また、光源部104の発光強度については、例えば、印刷速度に応じて適宜変化させてもよい。この場合、例えば、印刷速度を早くする場合には発光強度を大きくする等のように調整を行い、必要な発光強度で光源部104を発光させることが好ましい。
また、図1等に示したように、本例においては、主走査方向におけるインクジェットヘッド102の両側に光源部104を配設している。このように構成すれば、例えば、双方向の主走査動作をより適切に行うことができる。また、印刷装置10の構成の変形例において、例えば片方向の主走査動作のみを行う場合等には、主走査方向におけるインクジェットヘッド102の一方側のみに光源部104を配設してもよい。
また、本例において用いる媒体50としては、上記において説明をした媒体50に限らず、インクジェット方式で印刷が可能な様々な媒体50を用いることができる。例えば、木材、皮、セラミック等の媒体50を用いてもよい。また、例えば、受像層を形成した様々な媒体50を用いることも考えられる。また、直接印刷を行うことで最終的に成果物となる媒体50に限らず、例えば、他の媒体への転写に使用する媒体50を用いること等も考えられる。
また、上記において説明をしたように、本例において、インクとしては、蒸発乾燥型のインクを用いる。しかし、印刷装置10の構成の変形例においては、例えば、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インク等を用いてもよい。また、紫外線硬化型インクを溶媒で希釈した溶媒希釈型UV硬化インク(ソルベントUVインク、SUVインク)等を用いてもよい。
図3(d)は、印刷装置10の構成の変形例における動作の一例を示す。紫外線硬化型インクや溶媒希釈型UV硬化インクを用いる場合には、例えば、紫外線を照射する光源部104を用いて、媒体50上に紫外線を照射して、媒体50上のインクを完全に硬化させる。この場合も、媒体50への着弾後にインクを短時間で媒体50に定着させることにより、滲みの発生を適切に抑えることができる。
続いて、本例において各ノズルの吐出特性を補正する方法について、説明をする。上記においても説明をしたように、本例においては、それぞれのインクジェットヘッド102のそれぞれのノズルに対し、吐出特性の補正を個別に行う。また、これにより、ノズルの吐出特性のバラツキにより発生する筋斑等を軽減する目的でのマルチパス方式の動作を不要にしている。
また、より具体的に、本例において、各ノズルの吐出特性の補正は、各ノズルが吐出するインク滴の容量が一定になるように行う。この場合、インク滴の容量が一定にするとは、例えば、求められる印刷の品質等に応じて、実用上支障のない程度にバラツキを抑えることであってよい。また、このような補正を行うために、本例においては、それぞれのノズルを用いて主走査方向へ延伸する直線を描き、その線幅を測定することで各ノズルの吐出特性を測定する。そこで、先ず、線幅の測定により各ノズルの吐出特性を測定する方法について、説明をする。
図4は、線幅に基づいて各ノズルの吐出特性を測定する動作の一例を簡略化して示す図である。図において、符号Aを付した部分は、一列のノズル列中に並ぶ複数のノズルを簡略化して示している。
本例において、各ノズルの吐出特性を測定する場合、各ノズルにより、主走査方向へ延伸する直線を描かせる。この場合、1回の主走査動作において、各ノズルに対し、主走査方向へおいて連続する領域へ連続してインク滴を吐出させることで、複数のインクのドットの並びにより構成される直線を描かせる。
この場合、例えばノズル列におけるノズルの間隔が十分に大きければ、図中に符号B−1を付して示す全列プリントのように、ノズル列中の全てのノズルに同時に直線を描かせてもよい。しかし、本例のように、高解像度ヘッド(例えば、ノズルの間隔が600dpiに対応する間隔以下のインクジェットヘッド等)を用いる場合、全列プリントを実行すると、隣接する直線を区別するのが難しくなるおそれがある。例えば、全列プリントの結果に対し、図中のX1−X1線に沿って光学濃度分布を測定した場合、図中に符号C−1を付して示した結果のように、各直線の境界が不明確になる場合がある。
そのため、このような場合には、図中に符号B−2、B−3を付して示す奇数列プリント及び偶数列プリントのように、ノズル列中の全てのノズルを奇数番目のノズル(奇数列)と偶数番目のノズル(偶数列)との2回に分けて、描かれる直線が一本おきになるように直線を描くことが好ましい。このように構成すれば、例えば、それぞれの直線の線幅をより確実かつ高精度に測定できる。
また、このようにして直線を描いた後には、例えば光学的な線幅検出手段(例えば、ラインイメージセンサや2次元イメージセンサ等のイメージセンサ)等を用いて光学的に線幅を測定する。この線幅検出手段としては、例えば印刷装置10に内蔵したセンサ等を好適に用いることができる。また、各ノズルにより描かれる直線は、上記のように、インクのドットの並びである。そのため、測定される線幅は、例えばインクのドットの直径(又は直径の平均値)を反映する。また、インクのドットの直径は、インク滴の容量を反映する。そのため、描かれる直線の線幅を測定することにより、例えば、その直線を描いたノズルから吐出されるインク滴の容量を把握することができる。
より具体的に、例えば、奇数列プリントの結果に対し、例えば図中のX2−X2線に沿って光学濃度分布を測定した場合、図中に符号C−2を付して示した結果のように、各直線の線幅や位置を適切に算出できる。また、図においては、ノズル列の一旦側から3番目のノズルについて、インク滴の容量が小さくなっている場合を図示している。そのため、光学濃度分布の測定結果においては、このノズルの対応する位置で測定される線幅(ΔXnc等)について、他の正常なノズルに対応する線幅(ΔX0c)よりも狭くなっている。
以上のようにして、本例によれば、例えば、各ノズルから吐出されるインク滴の容量のバラツキを適切に測定できる。また、これにより、各ノズルの吐出特性のバラツキを適切に測定できる。また、本例においては、このようにして測定された吐出特性のバラツキに基づき、各ノズルの吐出特性の補正を行う。そこで、続いて、吐出特性を補正する具体的な方法について、更に詳しく説明をする。
インクジェット方式で印刷を行う場合、各ノズルに対して駆動信号を供給することにより、各ノズルにインク滴を吐出させる。この場合、ノズルに対して駆動信号を供給するとは、例えば、ノズルの位置に配設された駆動素子(ピエゾ素子等)に駆動信号を供給することである。
図5は、駆動信号の一例を示す。駆動信号としては、例えば、プル・プッシュ・プル型(又はプル・プッシュ型)の駆動を行う駆動信号が広く用いられている。この場合、例えば、図中に波形Aと示したタイミングにおいて、ノズルの内部にインクを引き込むように駆動信号の電圧を設定する。続いて、図中に波形Bと示したタイミングにおいて、ノズルからインクを押し出すように、駆動信号の電圧を反転させる。また、その後、図中に示すように、再度インクを引き込むように電圧を変化させる。このように構成すれば、例えば、ノズルからインクを適切に吐出させることができる。
また、本例においては、更に、駆動信号において各ノズルへ加える実効的な電圧(実効電圧)等を変化させることにより、ノズル単位での吐出特性(吐出量)の補正を行う。より具体的に、この場合、例えば、各ノズルに対して測定される線幅が一定になるように各ノズルへ加える駆動信号の実効電圧等を変化させ、吐出条件を調整する。また、これにより、各ノズルのインクの吐出量のバラツキを直接補正して、ノズルの吐出特性のバラツキの影響を抑える。
ここで、従来の公知の方法を用いる場合、ノズル毎の吐出特性を補正しようとすると、必要な回路規模が極めて大きくなり、実用化が困難であった。これに対し、本例においては、従来とは異なる方法により、駆動信号の実効電圧等を調整することで、回路規模を実現可能なレベルに抑えている。そのため、本例によれば、ノズル毎の吐出特性の補正をより適切に行うことができる。
尚、吐出特性の補正は、例えば、印刷装置10の調整時等に予め行うことが好ましい。また、印刷装置10の構成によっては、例えば、予め取得した補正用のパラメータ等に基づき、印刷の動作中に補正を行ってもよい。
図6及び図7は、駆動信号の実効電圧等の変え方の例を示す。図6は、実効電圧の変え方の一例を示す図であり、鋸歯状波パルス等を用いて実効電圧を変調することで吐出特性の補正を行う場合について、インクジェットヘッド及び駆動回路の等価回路の一例をモデル化して示す。図中に示すように、インクジェットヘッド及び駆動回路の各部は、コンデンサ、コイル、及び抵抗等を用いた等価回路で表現することができる。
そして、図6に示した場合においては、各ノズルに共通に用いる信号として鋸歯状波パルス信号を発生させ、そのパルス幅をノズル毎に変化させた信号を駆動信号として各ノズルへ供給する。また、これにより、各ノズルに供給される駆動信号の実効電圧を調整する。また、この場合、各ノズルに対応するピエゾ素子には、図中に示すように実効電圧が変化した駆動信号が供給される。
より具体的に、この構成において、全てのノズルに対して共通に供給する鋸歯状波は、時間と共に電圧値が変化する波形の信号である。そして、この場合、この信号を各ノズルに加える時間であるパルス幅を変化させると、各ノズルに対して供給される電圧の最大値が変化する。また、その結果、各ノズルに供給される実効電圧に差が生じることになる。例えば、図中に示すように、パルス幅をT0からT1に変化させると、ノズルに供給される最大電圧はV0からV1に変化する。そのため、このように構成した場合、ノズル毎にパルス幅を異ならせることにより、各ノズルに供給される駆動信号の実効電圧を変化させることができる。また、この場合、例えば図4等を用いて説明をした線幅の測定結果に基づいてパルス幅を調整することにより、各ノズルからのインク滴の吐出量が一定になるように吐出特性の補正を行うことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、各ノズルの吐出特性のバラツキを適切に補正できる。また、これにより、吐出特性のバラツキを適切に抑えることができる。
また、各ノズルに供給される駆動信号の電圧は、例えば、電源電圧の切り替えで行うことも考えられる。図7は、電源電圧の切り換えにより吐出特性の補正を行う場合について、インクジェットヘッド及び駆動回路の等価回路の一例をモデル化して示す。
この場合、図中に示すように、各ノズルに供給する電圧を切り換える回路(駆動電圧選択切換回路)と、互いに異なる複数種類の電源電圧を用意して、各ノズルへ供給する駆動信号の電圧を直接的に変化させる。また、この場合、例えば、各ノズルに対し、吐出特性のバラツキをより軽減できる電圧を選択することで、吐出特性の補正を行うことができる。そのため、このように構成した場合も、例えば、各ノズルの吐出特性のバラツキを適切に補正できる。
また、図6及び図7等を用いて説明をした構成は、例えば、ノズル毎の吐出特性を補正するための従来公知の方法等と比べ、より小さな回路規模で実現が可能である。そのため、これらのように構成すれば、例えば、実現可能な構成により、各ノズルのバラツキの影響を大幅に低減できる。また、これにより、例えば、高解像度ヘッドを用い、少ないパス数での印刷を行う場合にも、筋斑等の発生を適切に抑えることができる。
ここで、シリアルプリンタにおいて、高品質(高精彩、高精細)な印刷を行おうとする場合、上記においても説明をしたように、筋斑等の問題の他に、インクジェットヘッドの端部に発生するバンド縞(バンディング)等の問題を抑えることも必要になる。そして、バンド縞は、ノズルの吐出特性のバラツキを抑えた場合にも生じる場合がある。そのため、吐出特性の補正を行うのみでは、バンド縞の問題を完全に解決できない場合もある。
これに対し、本例においては、上記のような吐出特性の補正を行うことに加え、いわゆるギザ法を発展させた方法を更に用い、各回の主走査動作で印刷される領域の境界がギザ状になるようにすることで、バンド縞の問題についても適切に抑えている。そこで、以下、この点について、更に詳しく説明をする。
尚、以下においては、説明を簡略化するため、1個のインクジェットヘッドが有するノズルの数Nを16個と少なくした場合の例を用いて、説明をする。実際の構成の印刷装置において、ノズルの数Nは、より多く、例えば数百個以上等であってよい。また、説明の便宜上、先ず、各回の主走査動作で印刷される領域の境界をずらさない場合(ギザ法を用いない場合)の動作について、説明をする。
図8は、ギザ法を用いない場合の印刷の動作の一例を示す図であり、1色分の1個のインクジェットヘッド102としてノズルの数N=16のインクジェットヘッド102を用いて、1パスでの印刷を行う場合の動作の一例を示す。この場合、1パスでの印刷とは、媒体の各位置に対して1回の主走査動(1回走査)作のみを行って印刷を行う動作のことである。
図中に示すように、単純に1パスで印刷を行った場合、主走査動作でのインクジェットヘッド102の移動方向であるY方向へ延伸する直線上(Y軸上)に各位置でのインクジェットヘッド102の端部が揃うことになる。また、これにより、端部の影響が明確になり、バンド縞が目立つことになる。
ここで、図8では、ベタプリントを行う場合(全ベタプリントデータの場合)について、各ノズルからインク滴を吐出する位置(プリント列)を連続線で示している。そして、主走査動作時において、Y方向の各位置に対し、インクジェットヘッド102の全てのノズルからインク滴を吐出している。そのため、バンド縞は、X方向においてノズル列長と等しい間隔で現れる。
これに対し、主走査動作時の各タイミングにおいてノズル列中の一部の範囲のノズルのみを選択し、選択するノズルの範囲を主走査動作中に順次ずらしていけば、インクジェットヘッド102の端部の位置がY方向へ延伸する直線上に揃うことを防ぐことができる。
図9は、インクジェットヘッド102の端部の位置を単純にずらす場合の動作の一例を示す図であり、1色分の1個のインクジェットヘッド102について、間に副走査動作を挟んで行う3回分の主走査動作の一例を示す。また、図示した場合において、主走査動作中の各タイミングでは、全てのノズルのうちの半分(50%)のみを用いて、インク滴を吐出する。より具体的に、この場合、各タイミングで16個のノズルのうちの8個を用いる50%の印字率で主走査動作を行う。
また、この場合、8個のノズルとして、連続して並ぶ8個のノズルを選択して、選択するノズルの範囲を順次ずらしていく。より具体的に、図示した動作の場合、各タイミングにおいて、ノズル列の中から連続して並ぶ8個のノズルを選択する。そして、主走査動作中に1回インク滴を吐出する毎に、選択する8個のノズルの範囲を副走査方向の一方の向きへ1個ずつずらしていく。また、このずらし動作について、8回のインク滴の吐出を1回の周期にして、1周期分のずらしが完了する毎に、最初と同じ8個のノズルを選択する。また、主走査動作を行う間、以上の動作を繰り返す。
また、この場合、副走査動作での送り量について、1回に選択するノズルの範囲の副走査方向における幅と同じに設定する。そのため、この場合、副走査動作での送り量は、ノズル列長の半分になる。この場合、副走査動作での送り量とは、主走査動作の合間に行う1回の副走査動作において媒体に対して相対的にインクジェットヘッド102を移動させる距離のことである。
ここで、インクジェットプリンタにおいて、印刷のパス数は、例えば、ノズル列長を副走査動作の送り量で除した値と考えることができる。そして、この場合、図中に示した動作においては、パス数が2になっている。そのため、このような動作について、一般化して考えた場合、N個のノズルから副走査方向へ連続して並ぶN/2(=K)個のノズルを選択して、2パスで印刷を行う動作と考えることができる。また、パス数については、例えば、媒体の各位置の上をインクジェットヘッド102が通過する主走査動作の回数等と考えることもできる。
また、図示したような印刷の動作においては、このような形式的なパス数ではなく、例えば、実効的なパス数(実効パス数)を考えることもできる。より具体的に、図示した動作の場合、インク滴を吐出する各タイミングにおいて、インクジェットヘッド102は、ノズル列を構成するノズルのうち、選択されている一部のノズルからのみインク滴を吐出する。そのため、選択されているノズルが並ぶ範囲の副走査方向における幅(ノズル選択幅)について、実効的なノズル列長と考えることもできる。
そして、この場合、実効的なノズル列長に基づき、実効パス数を考えることもできる。より具体的に、実効パス数については、例えば、ノズル選択幅を副走査動作の送り量で除した値と定義することができる。そして、このように実効パス数を定義した場合、図示した動作における実効パス数は1になる。そのため、図示した動作については、実効的に1パスでの動作を行っていると考えることもできる。また、実際、実効パス数が1である場合、各回の主走査動作において、インクジェットヘッド102は、1パスでの印刷を行う場合と同様に、最終的な印刷の解像度と同じ解像度で印刷を行う。
また、上記のように、インクジェットヘッド102の端部の位置を順次ずらした場合、図から明らかなように、インクジェットヘッド102の端部の位置がY方向へ延伸する直線上に揃うことはない。そのため、例えば図8に示した場合等と比べると、バンド縞を目立たなくすることができる。
しかし、この場合も、インクジェットヘッド102の端部の位置は、Y方向に対する斜め方向へ順次ずれることになる。また、その結果、斜め方向へ延伸する境界(パスの境界)に対応するバンド縞が現れるおそれがある。そのため、より適切にバンド縞等の発生を抑えるためには、単純にインクジェットヘッド102の端部の位置をずらすのではなく、より適切な方法で端部の位置をずらすことが好ましい。
これに対し、バンド縞等の発生をより適切に抑えるためには、例えば、ノズル列の全幅にわたってノズルの選択範囲をずらし、かつ、選択するノズルを変更する前後での選択範囲の平均ズレ量(隣り合うノズル間の平均距離)をより大きくするようにノズルの選択を行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、パスの境界が直線上に揃うことを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、バンド縞等の発生をより適切に抑えることができる。
尚、選択するノズルを変更することで端部のノズルの位置をずらす場合において、各回の選択の前後での副走査方向における位置のズレ量(プリント端部間距離)については、例えば、人間の視覚特性を考慮して設定することが好ましい。この場合、例えば、距離250mm離れた位置から明視で見た場合に境界を構成する線(プリント線)を構成する端部が連結して見えなくなる距離以上に、プリント端部間距離を離すことが好ましい。また、より具体的に、プリント端部間距離については、例えば85μm(約300dpi相当)以上、より好ましくは170μm(約150dpi相当)以上離すことが考えられる。このように構成すれば、例えば、境界を構成する各端部が連続的につながって見えないため、例えば端部付近に何らかの異常等が発生している場合にも、異常部分が連続的につながって見えることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、端部の位置に斑等の画像異常が視認されることを適切に防ぐことができる。
図10は、ノズル選択部304(図1参照)によるノズルの選択の仕方の一例を示す図であり、パスの境界が直線上に揃わないようにノズルを選択する場合の動作の一例を示す。この場合、パスの境界とは、例えば、選択範囲の端部の画素により形成される部分のことである。
尚、以降の説明においても、説明の簡略化のため、1個のインクジェットヘッド102におけるノズルの数Nは16とする。また、同時に選択するノズルの数Kは8(K=1/2N、50%プリント)として、2パスでの印刷の動作を行うとする。また、この場合、選択するノズルの数Kは、副走査方向に連続して並ぶノズルの数であり、主走査動作の各タイミングで同時にインク滴を吐出可能にするノズルの数(同時最大プリント数)に相当する。
この場合も、主走査動作中において、ノズル選択部304は、各タイミングで選択するノズルの数が同数になるようにしつつ、選択するノズルの範囲を順次変更する。より具体的に、図示した場合、ノズル選択部304は、各タイミングにおいて、ノズル列を構成する全てのノズルである16個のノズルのうちの半数の8個のノズルを選択する。また、選択した前記ノズルが一回インク滴を吐出する毎に、選択するノズルを変更する。
更に、この場合、図中に示すように、選択するノズルの範囲が副走査方向の前後方向へギザ状にずれるようにノズルの選択を行う。また、これにより、選択範囲の端のノズルの位置を副走査方向において分散させる。また、この場合、図示した場合のように、ノズル列長の全幅にわたって選択するノズルの範囲をずらしつつ各回の主走査動作を行うことにより、各回の主走査動作中において、端のノズルの副走査方向における位置について、選択可能な範囲の中で均一に分散させることが好ましい。
このように構成すれば、例えば、各回の主走査動作で印刷される領域の境界をノズル列長の全幅にわたってギザ状に変化させる方式(全幅分散ギザ方式)で適切に印刷を行うことができる。また、これにより、例えば、パスの境界が直線上に揃うことを防ぎ、ギザギザに入り込ませることができる。そのため、本例によれば、例えば、境界をぼかし、バンド縞等の発生をより適切に抑えることができる。
また、上記においても説明をしたように、本例においては、各ノズルの吐出特性が補正されたインクジェットヘッドを用いることにより、例えば多くのパス数でのマルチパス方式での動作を行わなくても、吐出特性のバラツキに起因する筋斑等を適切に抑えることができる。そのため、本例によれば、更に、2パス以下のパス数で印刷を行う場合にも、高品質な印刷を適切に行うことができる。
また、この場合において、光源部104(図1参照)を用いてインクを加熱する構成を用いることにより、各回の主走査動作で単位面積に対して吐出するインクの量が多い場合でも、滲みの発生等を適切に抑えることができる。また、これにより、例えば主走査動作時のインクジェットヘッド等の移動速度を低下させることなく、高速に印刷を行うことができる。すなわち、本例によれば、上記の各特徴を組み合わせて用いることにより、印刷速度の高速化と印刷結果の高画質化とを適切に両立することができる。また、これにより、例えば、シリアルプリンタで2パス以下での高品質な印刷が可能な方式(高速高精細シリアルプリント方式)を適切に実現できる。
ここで、上記のように、本例においては、選択範囲の端のノズル位置を均一に分散させることにより、バンド縞等の発生を抑えている。この場合、端のノズル位置を均一に分散させるとは、バンド縞等の発生を抑える効果が得られる範囲で、実質的に均一に分散させることであってよい。
また、ノズル列の全幅にわたってノズルの選択範囲をずらすとは、例えば、実質的にノズル列の全幅にわたってノズルの選択範囲をずらすことであってよい。より具体的に、例えば、ノズルを選択する動作の制御や、選択の仕方の周期等の都合に合わせ、一部のノズルを除いた範囲の全幅にわたってノズルの選択範囲をずらしてもよい。例えば、図10に示した場合においては、ノズルの選択の仕方を繰り返す周期、ノズルの数N、選択するノズルの数N/2、及びノズルの選択の仕方等の関係により、16番目のノズルを使用しないで印刷の動作を行っている。この場合、n(nは、1以上の整数)番目のノズルとは、ノズル列の一方側(例えば、図中の上側)からn番目のノズルのことである。この場合も、実質的にノズル列の全幅にわたってノズルの選択範囲をずらすことにより、バンド縞等の発生を適切に抑えることができる。
また、ノズルの選択の仕方については、図10等に示した場合に限らず、様々に変更可能である。例えば、選択するノズルの変更について、1回インク滴を吐出する毎ではなく、所定の複数回のインク滴を吐出する毎に行ってもよい。この場合、主走査動作時において、ノズル選択部304は、例えば、選択されているノズルが予め設定された回数だけインク滴を吐出する毎に、選択するノズルを変更する。
また、選択するノズルの選び方等についても、様々に変更可能である。そして、この場合、選択するノズルを変更する前後での選択範囲の平均ズレ量(隣り合うノズル間の平均距離)が最大化するように、選択するノズルの範囲を離散的に変更することが好ましい。このように構成すれば、例えば、端部に生じる斑等が一定の方向に揃うことをより適切に防ぐことができる。また、このようなノズルの選択の仕方については、例えば、ノズル列の中から選択するノズルの範囲の端間の距離が統計的に最も離れるようにノズルの選択を行う方法と考えることもできる。
図11は、隣り合うノズル間の平均距離を最大化するようにノズルを選択する動作の一例を示す図であり、選択範囲の平均ズレ量を最大化するためのノズルの選択の仕方(連続プリントする上端部の平均距離の最大値の求め方)の一例を示す。また、この図は、ノズル選択部304(図1参照)によるノズルの選択の仕方について説明をする図であり、1個のインクジェットヘッド102のノズル列に並ぶノズルの数Nが16であり、ノズル選択部304で同時に選択するノズルの数Kが1/2N(=8)の場合の例(K=8の場合のギザパターンの最適化分散理論と適用方法)である。また、以下において説明をする関係は、例えば、2パス目に同じ領域に対して主走査動作を行う9〜18番目の範囲における端部の配置についても同様に成立する。
図11(a)は、ノズル列における1〜8番目のノズルに対応する番号を円周上にふったグラフである。この1〜8番目のノズルは、ノズル選択部304により同時に選択される範囲の端のノズルを示している。また、図示した場合においては、円周方向へ8分割した円を用いて、8回の選択をする周期でノズルの選択を繰り返す場合の例を示している。より一般化して考える場合には、端のノズルの位置として選択可能なノズルの範囲に合わせた数(例えばK)で分割した円を用いることが考えられる。
上記において説明をした印刷の動作のように、ノズル列における半数(50%)のノズルを同時に選択して、2パスでの印刷の動作を行う場合、ノズル列における隣接するノズル間の距離をLとすると、選択するノズルの範囲の端間の距離(2パスの時の隣接するノズル端部間の距離)の最大値は、1/2(K*K)L=(8*8)L÷2=32Lになる。この距離は、各画素間の距離の総和に相当する。
また、平均距離の最大値は、32L÷8=4Lになる。この平均距離の最大値は、ノズルの選択の仕方を繰り返す周期をKと等しくした場合において、1/2(K*K)L÷K=1/2*K*Lに等しくなる。そのため、ノズルの選択の仕方については、例えば、隣り合うノズル間の平均距離が1/2*K*Lにできるだけ近くなるように行うことが好ましい。
また、この場合、選択するノズルの範囲の決め方(プリント順)については、例えば、対角線上にあるブロックの出現順序に関し、閾値の総計が同じか、差が最小になるように行う。この場合、閾値とは、の隣接するノズル端部間の距離のことである。また、この場合、偶数順は対角線上に選び、奇数順は自分の属する半径側の最も離れた場所に選ぶと、確率的に隣り合う成分が離れた閾値になる。
そして、この場合において、隣り合う閾値の差の合計が最大になるように選択を行うことが好ましい。図11(a)においては、この合計が32Lになる場合の例を示している。また、実用上は、必ずしも最大にならなくても、できるだけ最大に近づくように選択を行うことが考えられる。
このように構成すれば、例えば、端部のノズルの位置を分散させる最適化条件を適切に求めることができる。また、これにより、例えば、主走査動作で印刷される領域の境界をギザ状に変化させる効果をより適切に得ることができる。また、このような最適化条件に近づくように端部のノズルの位置を分散させることにより、例えば、隣り合うノズル間の平均距離を適切かつ十分に大きくすることができる。また、これにより、例えば、バンド縞等の発生等を適切に抑えることができる。
図11(b)は、ノズルの選択の仕方の一例を示す図であり、交互配置及び単純昇順配置のそれぞれについて、ノズルの選択の仕方の例を示す。図中において、丸で囲んだ数字は、選択範囲における一方の端のノズルの位置を示している。また、単純昇順配置とは、例えば図9に示した場合のように、単純に一方向へ順次選択範囲をずらす方法である。また、交互配置とは、図中の示すように、選択するノズルの範囲が副走査方向の前後方向へ順番にずれるように、ノズルの選択を行う方法である。この場合、より具体的に、各回の主走査動作中において、選択するノズルがノズル列中で占める領域が副走査方向の前方及び後方のそれぞれへ交互にずれるように、ノズル選択部304は、選択するノズルを複数回変更する。このような交互配置を用いることにより、例えば単純昇順配置を行う場合と比べ、隣り合うノズル間の平均距離を適切に大きくできる。また、これにより、例えば、バンド縞等の発生を適切に抑えることができる。
ここで、上記のように、K=8の場合において、隣り合うノズル間の平均距離の最大値は、4Lになっている。そして、このような関係について、より一般化して考えた場合、1回の主走査動作を行う間の端部移動量の平均値について、ノズル選択幅の半分になるようにノズルの選択を行う関係であると考えることもできる。この場合、端部移動量の平均値とは、例えば、隣り合うノズル間の平均距離に相当する値のことである。また、端部移動量とは、例えば、ノズル選択部304が選択する複数のノズルを変更する場合の変更前の端部ノズル位置と、変更後の端部ノズル位置との間の副走査方向における距離のことである。また、端部ノズル位置とは、例えば、ノズル選択部304により選択されている複数のノズルにおける端のノズルの副走査方向における位置のことである。
また、上記においても説明をしたように、隣り合うノズル間の平均距離については、必ずしも完全に最大化しなくても、最大値に近い値にまで十分に大きくすればよい。より具体的に、隣り合うノズル間の平均距離については、例えば最大値の70%以上、好ましくは80%以上にすることが考えられる。また、この場合、選択するノズルの範囲が副走査方向の前後方向へ順番にずれるように交互配置でノズルを選択し、かつ、ノズルの選択範囲をノズル列の全幅にわたって均一にずらして、端部ノズル位置を十分に分散させることが好ましい。
図12は、交互配置でノズルを選択し、かつ、ノズルの選択範囲をノズル列の全幅にわたって均一にずらして印刷を行う動作の一例を示す。図示したようにノズルの選択を行うことにより、隣り合うノズル間の平均距離を適切かつ十分に大きくすることができる。また、これにより、例えば、また、これにより、例えば、バンド縞等の発生を適切に抑えることができる。
また、図12に示した場合においても、図9〜図11を用いて説明をした場合と同様に、8回の選択をする周期でノズルの選択を繰り返している。しかし、この場合、選択するノズルを変更するパターンの周期である8回のインク滴の吐出に加え、1回の周期毎に、端のノズルの位置を1ノズル分だけ副走査方向における前後へ順番にずらしている。すなわち、この場合、N個のノズルのうちの半分であるN/2個のノズルを1回に選択し、かつ、選択するノズルの範囲(ブロック)について、1周期毎に、端部を1ノズル分だけ前後にずらしている。このように構成すれば、例えば、選択範囲の端のノズルの副走査方向における位置について、より均一に分散させることができる。
また、このように構成した場合、ノズル列における両端のノズルである1番目と16番目のノズルについて、他のノズルと比べて1/2の位置(出現確率)へインク滴を吐出することになる。そのため、この場合、例えば図9に示した場合等と異なり、16番目のノズルも使用して印刷を行うことができる。また、これにより、例えば、ノズル列中の全てのノズルをより適切に使用することができる。
また、インクジェットヘッドにおいて、ノズル列の端にあるノズルは、他のノズルと比べ、周囲の空気の流れの影響を受けやすい場合がある。これに対し、この場合、ノズル列における両端のノズルについて、他のノズルよりも少ない位置へインク滴を吐出させている。そのため、この場合、この点でも、印刷の品質を高めることができる。
続いて、代替ノズル設定部308(図1参照)により行う代替処理について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例においては、例えば、ノズル列における半分のノズルを各タイミングで選択して、2パスで印刷を行う。また、この場合、ノズル選択幅を副走査動作の送り量で除した値で定義される実効パス数で考えると、1パスで印刷をしていると考えることもできる。
ここで、例えば従来の構成において、1パスで印刷を行う場合、ノズル列中の全てのノズルを常に使用して印刷を行うことになる。そして、この場合、ノズル列におけるいずれかのノズルが異常ノズルであると、適切に印刷を行えなくなる。そのため、この場合、いずれかのノズルで吐出不良等が発生すると、インクジェットヘッドを交換すること等が必要になる。また、その結果、装置の稼働率が低下することになる。
これに対し、本例においては、従来の構成により1パスでの印刷を行う場合とは異なり、同時にインク滴を吐出させる複数のノズルとして、ノズル列中の一部のノズルのみを選択する。また、選択するノズルについて、ノズル列の全幅にわたってずらしながら、ギザ方式で印刷を行う。そして、このようにして印刷を行うために、副走査動作時の送り量は、ノズル列長よりも小さくなっている。また、これにより、異常ノズルの代わりに他のノズルにインク滴を吐出させる代替処理が可能になっている。
図13は、本例において行う代替処理の一例を示す図であり、ノズル列中のいずれかのノズル202が異常ノズルである場合に他のノズル202で代替処理を行う動作の一例を示す。また、図示した場合においては、ノズル列の一方の端から3番目(図中の上から3番目)のノズル202が異常ノズルである場合の例を示している。このノズル202は、図中で符号Aを付して示しているノズル202であり、例えば吐出しない異常(不吐出)や飛行曲がり等の吐出異常を発生している。
また、この場合、代替ノズル設定部308(図1参照)は、この異常ノズルに対し、代わりにインク滴を吐出する代替ノズルを設定する。より具体的に、図示した場合において、代替ノズル設定部308は、符号Aを付した異常ノズルに対し、ノズル列の一方の端から11番目(図中の上から11番目)のノズル202を代替ノズルに設定する。この代替ノズルは、図中で符号Bを付して示しているノズル202である。
ここで、代替ノズル設定部308は、本来であれば異常ノズルでインク滴を吐出すべき位置(吐出位置)へインク滴を吐出可能なノズル202を選択して、代替ノズルに設定する。この場合、本来であれば異常ノズルでインク滴を吐出すべき位置とは、例えば、その異常ノズルの位置のノズル202が正常ノズルであった場合にインク滴を吐出する画素の位置のことである。また、代替ノズルは、その位置を異常ノズルが通過する主走査動作とは異なる回の主走査動作においてその位置を通過するノズル202であり、当該異なる回の主走査動作において、本来であれば異常ノズルでインク滴を吐出すべき位置へインク滴を吐出する。この場合、ノズルがある位置を通過するとは、例えば、主走査動作中にその位置へインク滴を吐出可能な状態になることである。また、より具体的に、例えば図示した場合、符号Aを付した異常ノズルが1回目の主走査動作中に本来であればインク滴を吐出する位置に対し、図中で模様を変えて示したように、符号Bを付したノズル202が、例えば2回目の主走査動作中にインク滴を吐出する。
また、本例においては、更に、このような代替処理が可能なように、ノズル列中の各ノズル202に対し、そのノズル202が異常ノズルであった場合に設定すべき代替ノズルの位置を予め対応付ける。また、この場合、ノズル選択部304(図1参照)により同時に選択をしないノズル202の中から代替ノズルを選択する。これにより、ノズル列における少なくとも一部のノズルの中に異常ノズルが存在する場合、代替ノズル設定部308は、例えば、その異常ノズルと同時にノズル選択部304に選択されないノズル202の中から、本来であれば異常ノズルでインク滴を吐出すべき位置へインク滴を吐出可能なノズル202を選んで、代替ノズルを設定する。また、この場合、主走査駆動部16(図1参照)は、例えば、異常ノズルからインク滴を吐出させずにインクジェットヘッド102に主走査動作を行わせ、かつ、本来であれば異常ノズルでインク滴を吐出すべき位置に対し、他の回の主走査動作において代替ノズルにインク滴を吐出させる。
このように構成すれば、例えば、実効パス数が1である場合等のように少ないパス数で印刷を行う場合にも、代替処理を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、ノズル列中のいずれかの位置のノズル202が故障した場合等にも、他の正常ノズルを用いて適切に印刷を行うことができる。そのため、本例によれば、例えば、このような場合にも印刷の動作を停止することなく、連続プリントを行うこと等もできる。また、これにより、例えば、印刷装置10(図1参照)の信頼性や安定性等を適切に高めることができる。
尚、本例においては、ノズル列中の一部のノズル(例えば、50%のノズル)を選択し、かつ、ノズル列の全幅にわたって選択範囲をずらしながら少ないパス数(例えば2パス)で印刷を行うという特性を活かして、上記のような代替処理を行っている。より具体的に、本例においては、副走査動作での送り量とノズル列長との関係で決まるパス数が2であり、かつ、実効パス数が1になる状態で印刷を行うことにより、高速で印刷を行いながら、各吐出位置に対して複数のノズル202が通過する構成を実現している。また、各吐出位置に対して複数のノズル202が通過する構成を利用して、印刷の速度を低下させることなく、代替処理を実現している。そのため、本例によれば、例えば、高速な印刷と信頼性の向上等とを適切に両立することができる。
また、上記においても説明をしたように、本例において、代替ノズル設定部308は、吐出特性補正部306で吐出特性を補正しても正常ノズルにならないノズルについて、異常ノズルとして扱い、代替ノズルを設定する。そのため、本例によれば、例えば、吐出特性の異常性が大きな異常ノズル(例えば不吐出ノズル等)が存在する場合にも、吐出特性のバラツキの影響をより適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、筋斑の発生等を適切に抑えることができる。また、この場合、吐出特性の補正と代替処理とを行うことにより、パス数の多いマルチパス方式で印刷を行わなくても、高画質な印刷をより適切に行うことができる。そのため、本例によれば、例えば、高速化と高画質化とより適切に両立することができる。
また、上記のように、本例においては、ノズル列中の各ノズル202について、そのノズル202が異常ノズルであった場合に設定すべき代替ノズルの位置を予め対応付けておく。この場合、ノズル列中の全てのノズルに対し、代替ノズルを対応付けておくことが好ましい。しかし、例えば印刷装置10の構成によっては、動作や制御の条件等により、一部のノズル202に対応する代替ノズルが存在しない場合も考えられる。そのため、このような場合には、一部のノズル202を除いた他のノズル202についてのみ、代替ノズルを対応付けてもよい。この場合、例えば、ノズル列中の90%以上のノズル202に対して代替ノズルを対応付けることが好ましい。また、この構成については、例えば、副走査方向における90%以上の位置(吐出位置)に対し、2個以上(2種以上)のノズルが通過する構成と考えることができる。また、代替ノズルを対応付けることが可能なノズル202の割合は、好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上である。
以上のように、本例においては、個々の技術のみでは実現できなかった印刷速度の高速化と印刷結果の高画質化等との両立について、様々な技術を組み合わせることで初めて実現している。また、これにより、いわばバンディングレス高速瞬間乾燥2パスプリント方式で印刷を行う印刷装置10を実現している。
より具体的に、本例においては、例えば、多くのパス数でのマルチパス方式での印刷を行わなくてもバンド縞の発生等を抑え得るため、例えば従来の構成によりマルチパス方式で印刷を行う場合等と比べ、大幅(例えば、4〜32倍程度)に印刷速度を高速化することができる。また、この場合、光源部104(図1参照)を用いてインクを高速に乾燥させることにより、少ないパス数で高速に印刷を行う場合においても、滲みの発生等を適切に抑えることができる。また、吐出特性補正部306により各ノズルの吐出特性を補正できるため、ノズルの吐出特性のバラツキの影響を適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、吐出特性のバラツキの影響による斑等を残して吐出特性の平均化を行う従来のマルチパス方式での動作と比べ、より高い品質の印刷を適切に行うことができる。また、この場合、少ないパス数での吐出特性の影響を適切に抑えることができるため、印刷速度をより適切に高速化できる。また、この場合、選択するノズルの範囲を変更する特徴等を活かして異常ノズルに対する代替処理を行うことにより、印刷装置10の信頼性や安定性を適切に高めることができる。
また、この場合、更に、多くのパス数での印刷を行う必要がないため、副走査方向におけるインクジェットヘッド102の幅を小さくすること等も可能になる。より具体的に、この場合、例えば、印刷速度を同一にする条件で比べると、従来の構成においてスタガ方式のインクジェットヘッド等を用いる場合と比べ、インクジェットヘッドの幅を数分の1以下にすることができる。そのため、本例によれば、例えば、印刷装置10の小型化等も可能になる。また、本例においては、光源部104を用いてインクを高速に乾燥させることにより、例えば伝熱型の加熱手段のみを用いてインクを乾燥させる場合と比べ、インクを乾燥させるために消費する電力を抑えることもできる。
続いて、印刷装置10により行う印刷の動作の変形例や、印刷の動作に関する補足事項等について、説明をする。上記においても説明をしたように、本例においては、いわゆるギザ法を発展させた方法を用い、各回の主走査動作で印刷される領域の境界がギザ状になるように、主走査動作中にノズルの選択範囲を変化させている。また、これにより、例えば2パス等の少ないパス数で印刷をする場合においても、バンド縞等の発生を適切に抑えている。そして、この境界の変化のさせ方については、上記において説明をした場合に限らず、様々に変更が可能である。
また、上記においては、ノズルの選択の仕方を繰り返す周期について、主に、ノズル選択部304により同時に選択されるノズルの数と同一にする場合について、説明をした。より具体的に、例えば、図10等に示した動作の場合、ノズル選択部304により同時に8個(N/2個)のノズルを選択し、かつ、8回(N/2回)のインク滴を1周期にしてノズルの選択の仕方を繰り返している。しかし、この周期については、例えば、ノズル選択部304により同時に選択されるノズルの数と異ならせてもよい。
図14は、印刷装置10により行う印刷の動作の変形例を示す図であり、ノズルの選択の仕方を繰り返す周期と、ノズル選択部304により同時に選択されるノズルの数とを異ならせた場合の動作の一例を示す。この場合も、上記において説明をした場合と同様に、ノズル選択部304は、ノズル列における半数(50%)のノズル202を同時に選択する。より具体的に、図示した場合において、ノズル選択部304は、ノズル列を構成する16個のノズル202のうち、連続して並ぶ8個のノズル202を同時に選択する。また、選択したノズル202が1回インク滴を吐出する毎に、選択するノズル202を変更する。
また、この場合、ノズルの選択の仕方を繰り返す周期については、ノズル選択部304により同時に選択されるノズルの数よりも多くする。このように構成すれば、例えば、1回の周期内で選択範囲の端のノズルの位置をより多様に変化させることができる。また、これにより、例えば、端のノズルの副走査方向における位置をより均一に分散させることができる。また、図示した場合において、この周期は、ノズル選択部304により同時に選択されるノズルの数よりも1だけ多い回数になっている。より具体的に、この場合、この周期は、ノズル列を構成する全ノズルの数Nの半分よりも1だけ多い回数(N/2+1)である。このように構成すれば、例えば、端のノズルの副走査方向における位置をより適切かつ均一に分散させることができる。
また、その他の特徴についても、様々に変更することができる。例えば、上記においては、印刷のパス数について、主に、2パスにする場合を説明した。しかし、パス数についても、様々に変更可能である。より具体的に、例えば、パス数を3以上にして印刷を行うこと等が考えられる。この場合、ノズル列を構成するノズルの数(総ノズル数)のうちの1/3や1/4のノズルを同時に選択して、ノズル列の全幅にわたって選択範囲を分散させつつ、3パスや4パス等で印刷を行う。
この場合も、各ノズルに対する吐出特性の補正、各回の主走査動作で印刷される領域の境界をギザ状にさせること、及び異常ノズルに対する代替処理等を上記において説明をした場合と同一又は同様に行うことにより、高品質な印刷を適切に行うことができる。また、例えば従来の構成と比べてより少ないパス数で印刷を行うことにより、印刷速度を適切に高速化できる。また、この場合、例えば、従来の構成において蒸発乾燥型のインクを用いると滲みの問題が生じるパス数以下のパス数(例えば8パス以下、好ましくは4パス以下)で印刷を行うことが考えられる。
また、印刷のパス数については、1より大きく、2未満にしてもよい。この場合も、例えば、各回の主走査動作で印刷される領域の境界をギザ状にさせること等により、バンド縞の発生等を適切に抑えることができる。また、より具体的に、パス数を2未満にする場合、ノズル選択部304は、例えば、1色分の1個のインクジェットヘッド102のノズル列を構成するN個のノズルの中から、例えば、連続する0.95N〜1/2N個のノズルを同時に選択する。
尚、ノズルの数が多いインクジェットヘッドを用いる場合、境界をずらす範囲(プリント端部の画素間の距離)を大きくすることが可能であるため、パス数を2未満にしても、境界をずらして重複させる幅を十分に確保することができる。この場合、例えば、64個のノズル分以上の距離において、境界をずらして重複させることが好ましい。例えば、総ノズル数が512個のインクジェットヘッドを用いる場合には、両端の64個のノズルを合わせた128個のノズルの分以上に対して境界が重複するように主走査動作を行えばよい。この場合、例えば、128÷512=1/4のみを重複させて主走査動作を行うことで、バンド縞の発生等を抑えることができる。また、これにより、例えば、2パスでの印刷を行う場合と比べて、印刷の速度を1.6倍程度高速化できる。
また、印刷速度の高速化と印刷結果の高画質化とを両立する観点で考えた場合、副走査動作での送り量とノズル列長との関係で決まるパス数については、上記においても説明をしたように、2程度にすることが好ましい。この場合、ノズル選択部304は、ノズル列中のノズルのうちの略50%のノズルを同時に選択する。また、この場合、送り量とノズル選択幅との関係で決まる実効パス数については、1程度にすることが好ましい。
また、上記においては、選択するノズルの範囲をずらす場合の最小のずらし量について、1個のノズル分の距離にする場合について、説明をした。しかし、最小のずらし量については、複数個のノズル分の距離を単位にして行ってもよい。この場合、最小のずらし量については、1〜4個のノズル分の距離を単位にすることが好ましい。そのため、例えば、複数の個のノズル単位(例えば、2〜4個のノズル単位等)を最小単位にして、選択範囲をずらしてもよい。また、上記においても説明をしたように、選択するノズルを変更するタイミングについても、1回のインク滴が吐出される毎に限らず、例えば、複数回(例えば2〜4回程度)のインク滴が吐出される毎にしてもよい。
また、上記においては、説明の簡略化のため、主に、1個のインクジェットヘッドにおけるノズル列を構成するノズルの数Nを16として、印刷の動作等を説明した。しかし、上記においても説明をしたように、実際の構成の印刷装置10において、ノズルの数Nは、より多くてもよい。また、ノズルの数Nが小さい場合、選択範囲の変更前後での端のノズルの位置に対応する画素間の距離も短くなる。そして、この画素間の距離が短くなると、各回の主走査動作で印刷される領域の境界をギザ状にする効果が小さくなるおそれがある。そのため、実際の構成の印刷装置10において、ノズルの数Nは、より多く、例えば、32以上にすることが好ましい。ノズルの数Nは、より好ましくは64以上、更に好ましくは128以上である。
また、上記においては、印刷装置10の動作について、主に、主走査動作時の各タイミングにおいてノズル列中に連続して並ぶ複数のノズルを選択して、いわゆるギザ法を発展させた方法で印刷を行う動作について、説明をした。また、この場合において、エネルー線吸収剤を含む蒸発乾燥型のインクを用いることで、少ないパス数での高速な印刷を行い得ること等を説明した。しかし、エネルー線吸収剤を含む蒸発乾燥型のインクを用いる特徴に着目した場合、必ずしもギザ法を発展させた方法に限らず、他の方法で高速な印刷を行うこと等も考えられる。そこで、以下、印刷装置10の動作の変形例として、上記において説明をした場合とは異なる印刷の動作について、説明をする。
図15及び16は、印刷装置10の動作の変形例について説明をする図であり、ギザ法を発展させた方法以外の方法で印刷を行う場合の印刷装置10の動作の一例を示す。図15は、本変形例において各回の主走査動作でインク滴を吐出する吐出位置(着弾位置)の例を示す。
また、以下に説明をする点を除き、本変形例における印刷の動作は、図1〜14を用いて上記において説明をした動作(以下、ギザ法の動作という)と同一又は同様である。より具体的に、以下において説明をする印刷の動作は、例えば、図1等を用いて説明をした印刷装置10と同一又は同様の基本構成を有する印刷装置で実行することができる。また、本変形例においても、インクジェットヘッドとしては、ノズル列におけるノズル間隔に対応する解像度が最終的な印刷の解像度(プリント画像の解像度)と等しくなっている高解像度ヘッドを用いる。
また、以下において詳しく説明をするように、本変形例においても、2パス以下等の少ないパス数での印刷を行う。そして、この場合、単位時間に単位面積に対して着弾するインクの量が多くなるため、例えば、従来のプリントヒータ等のヒータのみでインクを加熱する構成のような、インクを乾燥させるために時間がかかる構成の場合、インクを乾燥させるまでに滲みが発生しやすくなる。そのため、本変形例においても、インクとして、所定のエネルギー線に応じて発熱するエネルギー線吸収剤を含む蒸発乾燥型のインクを用いる。また、これにより、例えば、媒体50への着弾後に速やかにインクを乾燥させて、インクの滲みを防止する。また、この場合、このようなインクとしては、例えば、エネルギー吸収剤として紫外線吸収剤を含むインク(UV瞬間乾燥インク)や、エネルギー吸収剤として赤外線吸収剤を含むインク(赤外線瞬間乾燥インク)等を好適に用いることができる。また、このようなインクとしては、例えば図1〜14等を用いて上記において説明をしたインク等を好適に用いることができる。また、この場合、インクが含むエネルギー線吸収剤(紫外線吸収剤又は赤外線吸収剤等)の特性に対応するエネルギー線(紫外線又は赤外線等)を印刷装置10のおける光源部104(図1参照)から照射することにより、インクを乾燥させる。また、本変形例においても、上記において説明をした場合と同一又は同様にして、各ノズルの吐出特性の補正や異常ノズルに対する代替処理(欠陥ノズルのリカバリ処理)を行うことが好ましい。このように構成すれば、例えば、少ないパス数での印刷の動作をより適切に行うことができる。
一方、本変形例において、各回の主走査動作でインク滴を吐出する位置の選択の仕方については、ギザ法の動作と異ならせる。より具体的に、上記においても説明をしたように、ギザ法の動作においては、主走査動作時の各タイミングにおいて、それぞれのインクジェットヘッドにおけるノズル列の一部に、連続して並ぶ予め設定された数の複数のノズルを選択して、選択したノズルにインク滴を吐出させる。これに対し、本変形例においては、連続して並ぶ複数のノズルではなく、マルチパス方式の動作において重複走査をする部分が補集合関係となるように主走査動作時の各タイミングでノズルを選択して、2パス以下の少ないパス数(例えば、2パス)での印刷を行う。この場合、重複走査をする部分とは、媒体上において複数回(例えば、2回)の主走査動作を行う領域に対応する部分のことである。また、補集合関係となるようにノズルを選択するとは、重複走査をする部分に対し、各回の主走査動作において一部の吐出位置へインク滴を吐出し、かつ、複数回の主走査動作を行うことで全ての吐出位置へインク滴を吐出するように、ノズルを選択することである。
より具体的に、図15においては、2パスでの印刷を行う場合について、各回の主走査動作でインク滴を吐出する吐出位置に対応するインクのドットの並びの例を模式的に示している。また、図中においては、各回の主走査動作でインク滴を吐出する位置を区別しやすいように、連続して行う4回の主走査動作について、奇数番目の主走査動作でインク滴を吐出する吐出位置に対応するドットとして黒く塗りつぶした円を描き、偶数番目の主走査動作でインク滴を吐出する吐出位置に対応するドットとして網掛け模様の円を描くことで、各回の主走査動作時に各タイミングで選択するノズルに対応するパターンであるプリントドットの補集合関係位置を示している。また、各回の主走査動作時の副走査方向におけるインクジェットヘッドの位置については、図の左側に、ヘッドの走査位置として図示している。また、図15においては、副走査方向におけるノズル列の幅をW、ノズル列を構成するノズルの数をNとして、2パスでの印刷を行う場合の動作を図示している。また、図示の便宜上、ノズルの数Nは、16にしている。実際の印刷装置の構成において、ノズル列を構成するノズルの数Nは、より多く(例えば数百個以上等に)することが好ましい。
また、この場合、各回の主走査動作の合間に行う副走査動作では、ノズル列中の半分(N/2)のノズルに対応する幅W/2だけ、媒体に対して相対的に副走査方向へインクジェットヘッドの位置をずらす。また、これにより、媒体の各位置に対し、副走査方向へ2回の重複走査を行う。また、この場合において、図中に示すように、各回の主走査動作で形成されるインクのドットの集合が補集合関係になるように、各回の主走査動作の各タイミングでのノズルの選択を行う。この場合、インクのドットの集合が補集合関係になるとは、例えば、予め設定された最高濃度である100%の濃度で全ベタの画像を印刷する場合において、主走査方向へ並ぶインクのドットについて、1回目の主走査動作で形成されるインクのドットと、2回目の主走査動作で形成されるインクのドットとを合わせた集合が、全ての吐出位置(100%)を含む集合になることである。また、100%の濃度とは、例えば、印刷の解像度に応じて設定される全ての吐出位置へ1回ずつインク滴を吐出した場合の印刷の濃度のことである。
また、本変形例においては、各タイミングでのノズルの選択の仕方について、単に補集合関係になるのではなく、インクジェットヘッドの両端付近での印字率が中央付近(中心部)よりも低くなるように、選択を行う。この場合、インクジェットヘッドの両端及び中央とは、ノズル列における両端及び中央のことである。
図16は、本変形例における印字率について更に詳しく説明をする図である。図16(a)は、図15に示したヘッドの走査位置と、プリントドットの補集合位置関係の一部とを示す。図16(b)は、1回の主走査動作においてインク滴を吐出する吐出位置の例を示す図であり、100%の濃度での印刷を行う場合について、1回の主走査動作でインクを吐出する吐出位置に対応するドットのパターンを抜き出して示している。また、より具体的に、図16(b)において、符号Aを付した破線に囲まれている部分に含まれる黒塗りの円は、奇数番目の主走査動作での吐出位置の例を示す。また、符号Bを付した破線に囲まれている部分に含まれる網掛けの円は、偶数番目の主走査動作での吐出位置の例を示す。
図16(c)は、各回の主走査動作に対応する印字率の例を示す。また、図16(c)に示す例において、印字率とは、各回の主走査動作において各ノズルからインク滴を吐出する吐出位置の比率のことである。この場合、各ノズルからインク滴を吐出する吐出位置の比率とは、例えば、印刷の解像度の間隔で主走査動作へ並ぶ全ての吐出位置に対し、各ノズルで実際にインク滴を吐出する吐出位置の割合のことである。また、図16(c)においては、図16(a)に示す4回の主走査動作のうち、1回目の主走査動作に対応する印字率を実線で示し、他の回の主走査動作に対応する印字率を破線で示している。
図中に示すように、本変形例においては、ノズル列中の各ノズルの印字率について、インクジェットヘッドの両端付近での印字率が中央付近よりも低くなるように設定する。また、この場合において、印字率の変化について、急な変化点を持たないように設定することが好ましい。より具体的に、印字率については、インクジェットヘッドの両端から中央に向かうに従って漸増するように設定することが考えられる。また、この場合、印字率について、例えば図中に示すように、直線状に変化させることが考えられる。また、この場合、各回の主走査動作に対応する印字率は、副走査方向の位置に違いに応じて、補集合関係になるように、位相をずらして変化することになる。また、より具体的に、図中に示す場合において、各ノズルに対応する印字率は、インクジェットヘッドの一方の端部(前側の端部)から中心部へ向かって、1/8から8/8に直線的に増加している。また、その後ろ側では、他方の端部(後側の端部)へ向かって、7/8から0/8に直線的に減少している。
また、図16(b)に示すように、本変形例においては、奇数番目(例えば、1番目)の主走査動作での吐出位置と、偶数番目(例えば、2番目)の主走査動作での吐出位置とが、同じパターンになっている。また、このパターンは、N/2のノズル分の幅である2/2だけ副走査方向における位置をずらした2回の主走査動作の間で、印字率が増加する部分と減少する部分とが補集合関係になり、合計の印字率が1になるように設定されている。そのため、本変形例によれば、例えば、2パスの動作により、解像度に応じた全ての吐出位置がインクのドットで埋められることになる。また、このように構成した場合、例えば、インクジェットヘッドの端部付近での印字率が低いため、印刷結果において、インクジェットヘッドの端部の影響が明瞭に現れなくなる。そのため、例えば、端部の影響でバンディングが目立つこと等を適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、シリアルプリンタの構成において、少ないパス数での高速な印刷を適切に実現できる。
尚、本変形例の印刷の動作については、補集合関係により各吐出位置に対して2パスで排他的に印刷を行う構成(排他的2パスプリント)等と考えることもできる。また、上記のように、図15及び図16においては、インクジェットヘッドのノズルの数Nが16と少ない場合について、補集合関係の例等を示している。また、Nが更に大きな数のインクジェットヘッドを用いる場合にいても、ノズルの数Nの半分(N/2)ずつで上記と同様の補集合関係になるようにノズルを選択することで、上記と同様の効果を適切に得ることができる。また、図示は省略したが、印字率の変化については、直線状に限らず、曲線状に変化させてもよい。この場合、例えば、両端付近での印字率が低く、中央付近での印字率が高くなるように、例えば正弦波等の波状に印字率を変化させること等が考えられる。
また、図15及び16においては、各回の主走査動作に対応する吐出位置のパターンについて、主走査方向におけるパターンの周期(繰り返しの数)Kについて、KがN/2と等しくなる場合の例を図示した。しかし、周期Kについては、N/2以外に設定すること等も考えられる。この場合、インクジェットヘッドの端部に50%を超える高密度のパターンが現れない範囲に設定することが好ましい。インクジェットヘッドの端部に50%を超える高密度のパターンが現れない範囲とは、例えば、端部での印字率が50%を超えないことである。
図17及び図18は、印刷装置10の動作の更なる変形例について説明をする図であり、上記と同様に補集合関係になるようにインク滴を吐出する場合において、主走査方向におけるパターンの周期を異ならせた動作の一例を示す。また、より具体的に、図17においては、図15と同様にして、ヘッドの走査位置と、プリントドットの補集合関係位置とを示す。図18は、本変形例における印字率について更に詳しく説明をする図である。図18(a)は、図17に示したヘッドの走査位置と、プリントドットの補集合位置関係の一部とを示す。図18(b)は、1回の主走査動作においてインク滴を吐出する吐出位置の例を示す図である。図18(b)において、符号Aを付した破線に囲まれている部分に含まれる黒塗りの円は、奇数番目の主走査動作での吐出位置の例を示す。また、符号Bを付した破線に囲まれている部分に含まれる網掛けの円は、偶数番目の主走査動作での吐出位置の例を示す。図18(c)は、各回の主走査動作に対応する印字率の例を示す。
また、より具体的に、本変形例においては、主走査方向におけるパターンの周期について、ノズル列中のノズルの数の半分(N/2)よりも一つ多くして、9個にしている。そして、印字率について、図18(c)に示すように、インクジェットヘッドの両端から対照的に、中央に向かって、1/9から8/9まで、直線状に徐々に増加させている。このように構成した場合も、補集合関係を満たすようにノズルを選択し、かつ、インクジェットヘッドの端部付近での印字率を低くすることにより、バンディングを抑えつつ、少ないパス数での印刷を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、シリアルプリンタの構成において、少ないパス数での高速な印刷を適切に実現できる。
また、上記においては、主に、インクジェットヘッドの端部から中央付近へ向けて徐々に印字率が高くなるようにノズルを選択する場合の動作について、説明をした。しかし、補集合関係を満たし、かつ、端部付近の印字率を低くできるのであれば、印字率の設定について、上記において説明をした設定に限らず、様々に変更が可能である。
図19及び図20は、印字率の設定について更に詳しく説明をする図であり、補集合関係を満たし、かつ、端部付近の印字率を低くできる印字率の様々な例を示す。これらの図においては、各回の主走査動作時の副走査方向におけるインクジェットヘッドの位置と、印字率との関係を示している。また、図中の横軸は、インクジェットヘッドにおけるノズル列方向と平行な副走査方向の位置を示す。この場合、主走査方向は、図面を示す紙面に垂直な方向になる。
図19は、図15〜18を用いて説明をした動作と同様に行った印字率の設定と、印刷の動作の例とを示す。図19(a)は、印字率の設定の例を示す。図19(b)は、連続する2回の主走査動作における印字率の設定の例を示す。図19(c)は、補集合関係の状態の一例を示す。
この場合、上記においても説明をしたように、直線的に増加する一つの部分と、減少する一つの部分とを含む山状のピークを有し、かつ、山状の波の前部と後部とで補集合関係が得られるように印字率を設定する。また、この場合、パス幅Wpをヘッド幅Wの1/2にして、各回の主走査動作を行った後、副走査動作によりインクジェットヘッドの幅(ヘッド幅)の1/2だけ副走査方向へインクジェットヘッドを移動させ、次の主走査動作を行う。また、これにより、図19(b)に示すように、連続する2回の主走査動作での合計の印字率を100%にする。このように構成すれば、例えば、図19(c)に示すように、補集合関係を満たし、かつ、端部付近の印字率を低くできる印字率を適切に設定できる。
また、印字率の設定については、例えば、複数の山状のピークを有するように設定をすること等も考えられる。図20(a)は、印字率の設定の他の例を示す。図20(b)は、図20(a)のように印字率を設定する場合について、補集合関係の状態の一例を示す。この場合、図20(a)に示すように、ヘッド幅Wの範囲内に3つのピークを有するように印字率の設定を行う。また、この場合も、パス幅Wpをヘッド幅Wの1/2にして、各回の主走査動作及び副走査動作を行う。このように構成した場合も、例えば、図20(b)に示すように、補集合関係を満たし、かつ、端部付近の印字率を低くできる印字率を適切に設定できる。
また、ヘッド幅W内における印字率のピークの数は、更に多くしてもよい。図20(c)は、印字率の設定の更なる他の例を示す。図20(d)は、図20(c)のように印字率を設定する場合について、補集合関係の状態の一例を示す。この場合、図20(c)に示すように、ヘッド幅Wの範囲内に5つのピークを有するように印字率の設定を行う。また、この場合も、パス幅Wpをヘッド幅Wの1/2にして、各回の主走査動作及び副走査動作を行う。このように構成した場合も、例えば、図20(d)に示すように、補集合関係を満たし、かつ、端部付近の印字率を低くできる印字率を適切に設定できる。
尚、上記の各例等からわかるように、印字率について補集合関係を満たすように設定するためには、例えば、各回の主走査動作時の副走査方向におけるインクジェットヘッドの位置に応じて位相をずらした場合に副走査方向における各位置での各回の主走査動作に対応する印字率の和が100%になるように、印字率の設定を行うことが考えられる。また、この場合、例えば、ヘッド幅Wの中に奇数個のピークを有し、補集合関係を満たすような周期的な波形状に印字率を設定すること等が考えられる。この場合、奇数個のピークが補集合関係を満たすとは、例えば、副走査方向においてピークの並びの中心まで移動させた状態と移動前の状態とを合わせた状態が100%の濃度の状態になるように、互いに補集合になる関係を満たすことである。このように構成すれば、例えば、少ないパス数で印刷を行う場合にも、バンディングが目立つこと等を適切に抑えることができる。
また、上記においては、少ないパス数で適切に印刷を行うために好ましい特徴に関し、主に、エネルギー吸収剤を含むインクを用いることや、各回の主走査動作時の印字率の設定等について、説明をした。しかし、高品質の印刷をより適切に行うためには、各ノズルの吐出特性を考慮した補正や代替処理(欠陥ノズルのリカバリ処理)等を更に行うことが好ましい。
より具体的に、従来のパス数の多いマルチパス方式で印刷を行う場合、上記においても説明をしたように、主走査方向へ並ぶインクのドットを多数の異なる回の主走査動作(パス)で形成することになるため、ノズルの吐出特性を平均化することができる。また、これにより、例えば、ノズルの吐出特性のバラツキの影響を抑えることができる。これに対し、例えば2パス以下等の少ないパス数での印刷を行う場合、従来の構成と比べ、吐出特性を平均化できる程度が少なくなる。そのため、このような場合には、ノズルの吐出特性のバラツキ自体を予め小さくすることが望ましい。
また、ノズルの吐出特性のバラツキを小さくするためには、例えば、ノズルの吐出特性を予め測定して、吐出特性の補正を行うことが考えられる。また、吐出特性の測定の仕方については、例えば、ノズル毎の吐出斑の状態を検出すること等が考えられる。また、その方法としては、例えば、図4等を用いて上記において説明をした方法と同一又は同様にして、各ノズルにより描いた直線の線幅や、各ノズルにより形成されるインクのドットのサイズの平均値から状態を検知すること等が考えられる。また、この場合、吐出特性の測定結果に基づき、吐出特性の補正を行うことが考えられる。また、このような補正の方法としては、例えば、図5〜7等を用いて説明をした方法と同一又は同様にして、各ノズルへ供給する駆動信号の実効電圧を調整すること等が考えられる。
また、補正可能な範囲を超えた異常ノズル(吐出不良のノズル)が存在する場合には、例えば図18等を用いて説明をした動作と同様にして、異常ノズルに対する代替処理(欠陥ノズルのリカバリ処理)を行うことが好ましい。より具体的に、少ないパス数で印刷を行う場合、異常ノズルをそのまま使用して印刷を行うと、印刷結果の画質が大きく低下するおそれがある。これに対し、上記において説明をしたような、高解像度ヘッドと補集合関係とを利用して2パスでの印刷を行う構成の場合、いずれかの位置のノズルが異常ノズルになった場合でも、印刷速度の低下無しに、又は速度低下を最小化して、故障している異常ノズルに対し、他の正常ノズルでの代替処理を行うことができる。また、これにより、異常ノズルが存在する場合にも、画質の低下を適切に抑えることができる。
図21は、異常ノズルに対する代替処理の一例を示す図であり、インクジェットヘッドの一端側(前端側)から数えて12番目のノズルが異常ノズルになっている場合について、代替処理の動作の一例を示す。図21(a)は、ヘッドの走査位置と、プリントドットの補集合位置関係の一部とを示す。図21(b)は、1回の主走査動作においてインク滴を吐出する吐出位置の例を示す図である。図中においては、異常ノズルである12番目のノズルが本来インク滴を吐出すべき吐出位置に対応するドットついて、塗りつぶしを行わない円(白丸)を描いて示している。この場合、12番目のノズルが本来インク滴を吐出すべき吐出位置とは、12番目のノズルが正常なノズルであった場合にインク滴を吐出する吐出位置のことである。
高解像度ヘッドと補集合関係とを利用して2パスでの印刷を行う構成の場合、上記において説明をしたように、解像度に応じて設定される全ての吐出位置について、奇数番目の主走査動作と、偶数番目の主走査動作とでインクジェットヘッドが通過する。また、各吐出位置に対してインク滴を吐出可能なノズルに着目した場合、この2回の主走査動作において、その吐出位置に対してインク滴を吐出可能になるノズルは、異なるノズルになる。より具体的に、図中に示した場合、1回目の主走査動作で12番目のノズルが通過する吐出位置に対し、2回目の主走査動作では、4番目のノズルが通過することになる。そのため、この場合、12番目のノズルが本来インク滴を吐出すべき吐出位置に対し、他の回の主走査動作時に4番目のノズルでインク滴を吐出することが可能になる。このように構成すれば、例えば、高解像度ヘッドと補集合関係とを利用して2パスでの印刷を行う場合にも、代替処理を適切に行うことができる。また、これにより、印刷の速度を低下させずに異常ノズルの影響による画質の低下を抑え、高い品質の印刷をより適切に行うことができる。
尚、図21(b)において、符号Aを付した破線に囲まれている部分に含まれる黒塗りの円は、初回の主走査動作での吐出位置の例を示す。また、この場合、白丸で示す吐出位置については、異常ノズルに対応する吐出位置であるため、インク滴を吐出しない。また、符号Bを付した破線に囲まれている部分に含まれる網掛けの円は、偶数番目(4番目)の主走査動作での吐出位置の例を示す。この場合も、異常ノズルに対応する吐出位置に対しては、インク滴を吐出しない。また、上記においても説明をしたように、図中に示す代替処理の動作では、12番目のノズルの代わりに、4番目のノズルによりインク滴の吐出を行う。そのため、符号Bを付した破線に囲まれている部分においては、代替処理のために4番目のノズルでインク滴を吐出する吐出位置について、網掛け模様の円を描いて示している。
また、上記のような代替処理については、例えば、2パスの動作において媒体の各位置に対して行う2回の主走査動作のうち、一方の主走査動作時に異常ノズルを使用せずに、他方の主走査動作時に他の正常なノズルで代替させ、その正常なノズルにより100%の印字率でのインク滴の吐出を行わせる構成等を考えることもできる。この場合、正常なノズルにより100%の印字率でのインク滴の吐出を行わせるとは、例えば、ベタ印字等を行う場合の最大の印字率が100%になるように正常ノズルにインク滴を吐出することである。
また、このような方法で代替処理を行う場合も、奇数番目の主走査動作と、偶数番目の主走査動作とで同じ吐出位置を通過するノズルが両方とも異常ノズルになった場合には、インクジェットヘッドを交換することが好ましい。しかし、この場合も、上記のような代替処理を行うことにより、インクジェットヘッドの交換までの期間を適切に長期化できる。
以上のように、図15〜21等を用いて説明をした各変形例においても、上記の各技術を組み合わせることで、例えばシリアル方式で印刷を行う構成において、高い信頼性及び高速性を適切に実現できる。また、これにより、例えば、インクジェット方式で印刷を行う場合において、より適切に印刷を行うことができる。
尚、補集合関係を満たす印字率の設定については、上記においても説明をしたように、様々な設定を用いることができる。そして、これらの場合も、例えば、2パスの動作において媒体の各位置に対して行う2回の主走査動作を利用して、上記と同様に代替処理を行うことができる。また、例えば、図20(c)、(d)に示した場合のように、多数のピークを有する波形状に印字率を設定する場合には、奇数番目の主走査動作と、偶数番目の主走査動作とで同じ吐出位置を通過するノズルが両方とも異常ノズルになった場合にも、副走査動作での送り量を調整して、インクジェットヘッドを継続使用することができる。この場合、例えば、上記の両方の異常ノズルのうち、インクジェットヘッドの端部に近いノズルに着目して、そのノズルを含むピーク部分と、その外側(端部側)のノズルを不使用にして、それ以外のノズルを用いて印刷を行うことが考えられる。また、この場合、不使用にしたノズル以外のノズルの範囲に合わせて、副走査動作時の送り量を調整する。
続いて、上記において説明をした各構成に関する更なる変形例の説明や、補足説明等を行う。図22は、補集合関係を満たす印字率の設定に関する変形例について説明をする図である。図22(a)は、印字率の設定の変形例について、ヘッド幅と副走査動作時の移動距離との関係の一例を示す。図22(b)は、本変形例における主走査動作間(パス間)での補集合関係を示す。
上記においては、補集合関係を満たす印字率の設定について、主に、ノズル列の全体が補集合関係を満たすように印字率を設定する場合について、説明をした。しかし、例えばより高速に印刷を行いたい場合や、ヘッド幅が大きい場合等には、例えば図22(a)に示すように、インクジェットヘッドの両端付近についてのみ補集合関係を満たすように印字率を設定すること等も考えられる。この場合、例えば図22(b)に示すように、インクジェットヘッドの両端付近でインク滴を吐出する部分に対してのみ、補集合関係を満たすような複数回(例えば2回)の主走査動作を行い、他の部分については、高解像度ヘッドの特性を利用して、各回の主走査動作において1パスの動作(100%の印字率の動作)で印刷を行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、パス数を2未満にして、より高速な印刷を行うことができる。より具体的に、図22に示す場合において、パス数は1.25パス相当になっており、極めて高速な印刷が可能になっている。
尚、このような高速な印刷は、インクジェットヘッドにおいて異常ノズルが存在しない場合に好適に行うことができる。この場合、特に、補集合関係を満たすように印字率を設定する端部付近以外の部分において、異常ノズルが存在しないことが望ましい。
また、上記においては、主に、予め設定された固定のパターンで印字率の設定を行う場合の動作について、説明をした。しかし、印字率の設定については、より柔軟に、様々な条件に応じて可変に設定してもよい。より具体的に、例えば、ノズル列方向において印字率を増減させる波形の周期等については、固定ではなく、印刷装置10において使用する媒体やインクの種類等に応じて変更してもよい。また、主走査方向における印字率の変化のさせ方や、印字の仕方のパターンについても、印刷の目的等に応じて可変にすることが考えられる。また、例えば、1回の主走査動作中に自動的にパターンを変化させることで、同じパターンが繰り返されないようにすること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、印刷結果においてパターンが視認されて目立つこと等をより適切に防ぐことができる。
また、印刷装置10の具体的な構成等についても、様々に変更が可能である。図23は、印刷装置10の構成の変形例を示す上面図であり、印刷装置10の要部の構成一例を示す。以下において説明をする点を除き、図23において、図1〜22と同じ符号を付した構成は、図1〜22における構成と同一又は同様の特徴を有してよい。
また、より具体的に、本変形例の印刷装置10は、図1等を用いて説明をした印刷装置10の構成に加え、パターン読取部32を更に備える。パターン読取部32は、媒体50に描かれたパターン(吐出斑検出用パターン60)を読み取るセンサ(光学センサ)であり、各インクジェットヘッド102の各ノズルの吐出特性の測定時において、ヘッド部12における各インクジェットヘッド102により描かれる吐出斑検出用パターン60を読み取る。また、これにより、パターン読取部32は、例えば、吐出斑検出手段として機能する。パターン読取部32としては、例えば、ラインイメージセンサや2次元イメージセンサ等を好適に用いることができる。
また、この場合、吐出斑検出用パターン60は、例えば、各インクジェットヘッド102の各ノズルにより描かれる直線の線幅の測定等を行うためのパターン(テストプリントパターン)である。また、本変形例においては、吐出斑検出用パターン60で読み取った線幅等に基づき、例えば制御部30において、ノズル毎のドットサイズのバラツキの大きさを検出する。また、この検出結果に基づき、ノズル毎の吐出量の補正を行う。これにより、本変形例においても、制御部30は、ノズルの吐出特性の違いにより生じる斑(ノズル斑)を補正する吐出特性補正部としての動作を行う。
また、本変形例においても、制御部30は、図1を用いて説明をした構成と同一又は同様に、ノズルの代替処理の動作を制御する代替ノズル選択部としての動作等も行う。また、各タイミングでインクを吐出するノズルを選択するノズル選択部としての動作や、印刷装置10の全体の動作の制御等も行う。この場合、制御部30は、例えば図1に示した制御部30と同様に、主制御部302、ノズル選択部304、吐出特性補正部306、及び代替ノズル設定部308(図1参照)等を有してよい。また、本変形例において、制御部30は、印刷装置10の各部の動作を制御することにより、上記においても説明をしたように、補集合関係により各吐出位置に対して2パスで排他的に印刷を行う動作の制御等を行う。また、本変形例の印刷装置10により、例えば、図1〜14を用いて説明をした印刷の動作を実行すること等も考えられる。
また、印刷装置10の構成については、図23に示した構成等に限らず、更に変形を行うこと等も考えられる。例えば、図23においては、ヘッド部12の構成として、複数のインクジェットヘッド102の並びに対する主走査方向の一方側のみに光源部104を配設した構成を図示している。しかし、ヘッド部12の構成については、例えば図1に示した構成等のように、複数のインクジェットヘッド102の並びに対する主走査方向の両側に光源部104を配設してもよい。また、図23においては、ガイドレール14について、ヘッド部12を主走査方向へ移動させる駆動系の構成の一例を図示している。しかし、駆動系等の具体的な構成についても、様々に変更が可能である。
続いて、上記において説明をした各構成や印刷の動作に関連する補足説明等を行う。先ず、上記の各構成や印刷の動作において使用するインクの特徴について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、2パス以下等の少ないパス数で印刷をする場合、インクの滲みを適切に防ぐためには、エネルギー線吸収剤を含むインクを用いることが考えられる。また、この場合、エネルギー線として紫外線を用い、紫外線吸収剤を含むインクを用いること等が考えられる。この点に関し、紫外線に対して反応するインクとしては、従来から、紫外線の照射に応じて硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)が広く用いられている。しかし、媒体50への定着のさせ方等の特徴に着目すれば明らかなように、紫外線吸収剤を含む蒸発乾燥型のインクは、紫外線硬化型インクと基本的な構成が異なるインクである。また、このような特徴の違いに関連して、例えば紫外線吸収剤に対応する物質の好ましい含有量等についても、紫外線吸収剤を含む蒸発乾燥型のインクと、紫外線硬化型インクとでは、異なっている。
図24は、紫外線の照射によりインクを乾燥させる条件等について説明をする図であり、紫外線の照射によりインクを瞬間的に乾燥させるための条件(UV瞬間乾燥条件)について、公知の紫外線硬化型インク等でインクを硬化させる場合の条件(UV硬化条件)と比較して示す。また、図中に示したグラフにおいて、実線で示した曲線は、紫外線の照射によりインクを瞬間的に乾燥させる場合について、紫外線を照射するエネルギー(UV照射エネルギー)と、グラフの右側に示したインクの温度との関係の例を示す。この場合、紫外線を照射するエネルギーとは、UVLED等の紫外線光源を用いて媒体上のインクに照射する紫外線のエネルギー(単位面積あたりのエネルギーの大きさ)である。また、破線で示した曲線は、公知の紫外線硬化型インク等に関し、紫外線を照射するエネルギーと、グラフの左側に示した硬化度との関係の例を示す。
上記の説明等からも明らかなように、紫外線の照射によりインクを瞬間的に乾燥させる場合、紫外線の照射により生じる現象は、紫外線硬化型インク等を硬化させる場合等と全く異なるものである。そのため、紫外線を照射するエネルギーの好ましい範囲についても、両者は異なっている。より具体的に、紫外線硬化型インク等を硬化させる場合、紫外線を照射するエネルギーの好ましい範囲は、図中に示すように、例えば100〜200mJ/cm2程度(0.1〜0.2Joule/cm2程度)である。これに対し、紫外線の照射によりインクを瞬間的に乾燥させる場合、紫外線を照射するエネルギーの好ましい範囲は、例えば800〜1500mJ/cm2程度(0.8〜1.5Joule/cm2程度)である。そのため、紫外線の照射によりインクを瞬間的に乾燥させる場合には、紫外線硬化型インク等を硬化させる場合と比べ、10倍程度の大きなエネルギーを照射することが好ましいといえる。
ここで、紫外線の照射によりインクを瞬間的に乾燥させる場合、インク中の溶媒が蒸発している間、インクの温度上昇は、溶媒の沸点付近で止まることになる。しかし、インクが完全に乾燥した後も紫外線を照射し続けると、インクの温度が大きく上昇して、インク又は媒体の焼けや焦げが発生するおそれがある。そのため、紫外線の照射によりインクを瞬間的に乾燥させる場合には、このような焼けや焦げが発生しないように、インクを加熱することが必要になる。そして、このようにインクを加熱するためには、例えば、インクの表面のみが乾燥すること等を防いで、インクの全体をできるだけ同時に加熱することが好ましい。また、この場合、インクの表面のみが乾燥することを防ぐためには、インク中の紫外線吸収剤の含有量について、以下において説明をするように、例えば紫外線硬化型インク等における開始剤の含有量等よりも少なくすることが好ましいと考えられる。
より具体的に、上記においても説明をしたように、紫外線の照射によりインクを乾燥させる場合、単位面積あたりのエネルギーが大きな強い紫外線を照射することで、インクを瞬間的に乾燥させることが好ましい。しかし、紫外線吸収剤の濃度が高い場合、媒体50上のインクに照射される紫外線(UV光)の吸収は、インク層の表面付近のみに集中して生じることになる。そして、この場合、照射される強い紫外線により、インク層の表面のみの温度が急速に上昇して、インク層の表面のみが乾燥することになる。また、この場合、インク層の内部は乾燥していないため、インクを完全に乾燥させるためには、更に紫外線を照射することが必要になる。しかし、インク層の表面における溶媒が蒸発した状態で更に強い紫外線を照射すると、焦げ等が発生しやすくなる。また、この場合、インク層の状態は、表面のみが乾燥することで、例えば、表面に皮膜が形成されたような状態になる。そして、この場合、この皮膜がインク層の内部のインクを覆うことで、内部のインクにおける溶媒の乾燥を阻害することになる。そのため、この場合、インク層の表面が乾燥した後に紫外線を照射し続けても、内部に溶媒が残った状態が長く続き、インクを短時間で乾燥させることが難しくなる。
これに対し、紫外線吸収剤の濃度が低い場合、インク層の表面で吸収される紫外線の量が減るため、インク層の内部にまで紫外線が到達することになる。そして、この場合、紫外線は、インク層の全体で吸収されることになる。また、その結果、インク層の温度は、全体的により均一に上昇することになる。このように、紫外線吸収剤の濃度を低くした場合、インク層の全体を均一かつ適切に加熱することができる。また、これにより、例えば、強い紫外線を照射して、インク層の全体を瞬間的に適切に乾燥させることが可能になる。また、より具体的に、インク中の紫外線吸収剤の含有量については、インクの全重量に対し、例えば0.01〜10重量%にすることが考えられる。また、紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.05〜2重量%、更に好ましくは、0.05〜1重量%、特に好ましくは0.1〜0.4重量%である。
尚、上記においても説明をしたように、紫外線を吸収する物質は、例えば重合の開始剤等として、公知の紫外線硬化型インク等にも含まれている。しかし、紫外線の照射によりインクを瞬間的に乾燥させる場合における紫外線吸収剤の含有量の好ましい範囲は、紫外線硬化型インク等における開始剤等の含有量の好ましい範囲と異なっている。より具体的に、紫外線の照射によりインクを乾燥させる場合、上記においても説明をしたように、インク中に溶媒が残っている間、インクの温度上昇は、溶媒の沸点付近で止まることになる。そのため、この場合、強い紫外線を照射しても、インクの焦げ等を適切に防ぐことができる。これに対し、紫外線硬化型インク等に紫外線を照射する場合、強い紫外線を照射すると、直ちに温度が大きく上昇して、インクの焦げ等が発生しやすくなる。
そのため、紫外線硬化型インク等に紫外線を照射する場合には、通常、図中のグラフにおいてUV硬化条件として示すように、より弱い紫外線を照射することになる。そして、この場合、紫外線の照射によりインクを適切に硬化させるためには、重合の開始剤の濃度を十分に高くすることが必要になる。また、この場合、照射する紫外線のエネルギーが小さいため、表面近くのみに紫外線の吸収が集中しても、インクの焦げ等は発生しない。また、紫外線硬化型インクについて、例えばラジカル重合タイプのインクを用いる場合には、周囲の酸素によって生じる硬化不良を避けるためにも、インク層の表面を初期に硬化させることが好ましい。このように構成すれば、例えば、硬化の感度を適切に上昇させることができる。また、この場合、この点でも、重合の開始剤の濃度を高くすることが好ましくなる。
このように、紫外線の照射によりインクを瞬間的に乾燥させる場合の紫外線吸収剤の含有量についての好ましい範囲と、紫外線硬化型インクにおける重合の開始剤についても好ましい範囲とは、求められる条件の違いに応じて、異なったものになる。また、その結果、紫外線の照射によりインクを瞬間的に乾燥させる場合の紫外線吸収剤の含有量は、紫外線硬化型インクにおける重合の開始剤の含有量と比べ、上記のように、少なくすることが好ましくなっている。
また、上記においても説明をしたように、上記の各構成や印刷の動作で使用するインクとしては、紫外線吸収剤を含む蒸発乾燥型のインク(UV瞬間乾燥インク)以外のインクを用いることも考えられる。より具体的には、例えば、上記においても説明をしたように、赤外線吸収剤を含む蒸発乾燥型のインク(赤外線瞬間乾燥インク)、紫外線硬化型インク、又はソルベントUVインク等を用いること等も考えられる。
また、2パス以下等の少ないパス数で印刷する場合においても、例えば1色のインクでベタ印字を行う場合等には、滲みが問題にならない。例えば、下地の形成や保護層(クリアコート層等)の形成に用いるインクの場合、滲みの問題を考慮せずにインクを選ぶこと等も可能である。そのため、このような場合には、瞬間的に乾燥させることが可能なインクに限らず、公知の様々な蒸発乾燥型のインク(例えば、ラテックスインクやソルベントインク等)を用いること等も考えられる。
また、上記においては、インクジェットヘッドの構成の例について、ピエゾ方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドを用いる場合について、説明をした。しかし、インクジェットヘッドについては、ピエゾ方式に限らず、例えばサーマル方式のインクジェットヘッドを用いてもよい。
また、上記においても説明をしたように、本例においては、光源部104(図1参照)を用いることにより、インクを短時間で乾燥させ、滲みの発生を抑えている。また、印刷装置10の構成の変形例においては、光源部104に加え、滲みをより適切に抑えるための構成を併用してもよい。より具体的には、例えば、YMCKRGBの7色のインクを用いる構成(7色分版方式)を用いることにより、様々な色を表現するために混ぜる色数を減らすこと等が考えられる。このように構成した場合、例えば、単位面積に対して吐出するインクの量を低減して、滲みの発生をより適切に抑えることができる。
また、複数のインクジェットヘッドの配置として、上記において説明をした構成以外の配置を用いること等も考えられる。例えば、異なる色用のインクジェットヘッドについて、副走査方向における位置をずらして配設し、各色のインクを媒体上の各位置に時間をずらして着弾させる方式(色順次方式)を用いること等も考えられる。また、7色分版方式及び色順次方式の両方を用いてもよい。これらのように構成すれば、例えば、インクの滲みをより適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、高速な印刷をより適切に行うことができる。また、印刷の解像度等についても、様々に変更可能である。
また、上記においては、印刷の動作について、主に、パス数を2にした動作(2パスの動作)について、説明をした。しかし、印刷の動作の変形例においては、2パス以外のパス数での印刷を行ってもよい。例えば、印刷に求められる条件等に応じて、3以上のパス数等で印刷を行ってもよい。また、2パス以外のパス数で印刷を行う場合にも、上記において説明をした各特徴を有するように印刷の動作を行うことが好ましい。
また、上記においては、主に、カラー印刷を行う印刷装置10の構成について、説明をした。しかし、上記において説明をした様々な特徴は、印刷装置10以外の装置に適用すること等も考えられる。より具体的には、例えば、接着剤等の各種薬剤を塗布するインクジェット方式で塗布装置や、インクジェット法により造形物を造形する立体物造形装置(3Dプリンタ)等のような、インクジェットヘッドを用いる各種の応用分野の装置に適用すること等も考えられる。